説明

ティシュペーパー塗布薬液の紙粉除去装置及び紙粉除去方法

【課題】薬液を循環使用する際に薬液に混入する紙粉を効率的に除去し、塗布液の粘度を安定化させ、塗布量のバラツキを抑制することができる装置および方法を提供する。
【解決手段】圧胴65Bと版胴64Aとの間を走行するティシュペーパーシートS2に、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式で、薬液を前記版胴64Aに乗せながら塗布するように構成した設備であって、前記版胴64Aに対向し接触させてブラシ27を設け、そのブラシ毛により前記薬液中の紙粉を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液塗布ティシュペーパーの製造工程において、塗布薬液の紙粉を除去する方法及び装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
表面に保湿剤や柔軟剤等の薬液を塗布した、ローションタイプとも言われるティシュペーパーはよく知られる(特許文献1)。
このような薬液塗布ティシュペーパーを製造するにあたり、柔軟剤やグリセリンを主原料とする保湿剤は高価であることから、廃棄は環境に与える影響を考慮して最小限とし、薬液塗布工程での薬液の利用効率をできるだけ高くするよう、塗布されなかった余剰の薬液は回収して再度塗布工程に供する、いわゆる薬液の循環使用を行うのが一般的である。
【0003】
しかし、塗布工程より回収された薬液中に、ペーパーシートから離脱したり飛散した紙粉が混入し、塗布時間に経過に伴って塗布薬剤中の紙粉量が増加して薬剤の粘度が増加して塗布量が増加し、塗布幅方向や流れ方向での塗布量のばらつきが大きくなる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−9121号公報
【特許文献2】特開2008−264564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、薬液塗布ティシュペーパーの製造工程において、薬液に混入する紙粉を効率的に除去し、結果として、塗布液の粘度を安定化させ、塗布量のバラツキを抑制することができる装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次記の通りである。
<請求項1記載の発明>
圧胴と版胴との間を走行するティシュペーパーシートに、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式で、薬液を前記版胴の版面に乗せながら塗布するように構成した設備であって、
前記版胴の版面に対向し接触させてブラシを設け、そのブラシ毛により前記版胴の版面に付着した紙粉を含有する前記薬液を前記版胴の版面から除去するように構成したことを特徴とするティシュペーパー塗布薬液の紙粉除去装置。
【0007】
(作用効果)
ティシュペーパー原紙に対して薬液、たとえば保湿剤及び又は柔軟剤を含有する薬液を塗布する場合、フレキソ印刷方式、グラビア印刷方式などのロール転写方式、またスプレー塗布、インクジェット方式などの非接触式塗布方法、あるいは浸漬などの公知の塗布方法をいずれも使用することができる。
これらの薬液付与形態において、塗布する薬液を外部に対し完全に密封することができるスプレー方式等の非接触式の薬液付与方法を除けば、ペーパーシートから離脱し、飛散する紙粉は塗布薬液中に混入する虞がある。
【0008】
特に、フレキソ印刷方式、グラビア印刷方式などのロール転写方式では、版が直接ティシュペーパーシートの表面に接触するため、粘性を持つ薬液によって、シート表面の紙粉が離脱し版に逆転写し、さらにロール表面を経由して塗布液槽に戻ることがある。
【0009】
薬液は安価ではないし、廃液とするとしても廃液処理による環境への影響もある。そこで、未塗布薬液は回収して再度塗布に供するのが望ましい。
しかし、ティシュペーパー原紙が走行する過程でロールとの擦れなどによって、飛散した紙粉が塗布薬液に混入し、回収した未塗布薬液の再利用を継続すると紙粉の含有量の増大に伴って徐々に薬液の粘度が高まり、ティシュペーパー原紙への塗布量が増大し、また塗布幅方向や流れ方向において塗布量のばらつきが生じる問題があった。
【0010】
他方、薬液を浸漬方式又はスプレー塗布で塗布する場合には、幅方向及び流れ方向において塗布量のばらつきを生じ易い。この点においてフレキソ印刷方式及びグラビア印刷方式は、幅方向及び流れ方向において塗布量を安定して塗布することができる利点を有する。
しかるに、フレキソ印刷方式ではアニロックスロールからの薬液を受けてシートに転写塗布する版胴の版凸部の表面に紙粉が付着する、もしくは版凹部に紙粉を詰まらせるようになる。このように版に紙粉が詰まること自身が部分的な、あるいは品質に影響を与えるような塗布むらになる。
【0011】
一方では、版面からアニロックスロール表面に紙粉が逆に転移し、さらにアニロックスロール表面からチャンバー内の薬液に移ったり、あるいはディップロール表面に紙粉が転移し最終的に薬液槽に紙粉が移動する。
そして、薬液中の紙粉の濃度が増加するとともに塗布薬液の粘度は増加し、塗布時間が経過すると版から紙への塗布量が増加していく傾向にある。また薬液の粘性が増加すると、薬液は幅方向に均等にロール間で転移しにくく、よって幅方向の塗布量のばらつきが増加する。
【0012】
グラビア印刷方式においても同様に薬液を受けてシートに転写塗布する版胴の版の凹部に紙粉を詰まらせ、ひいては薬液の粘度を増加させるようになり、上記のような流れ方向、幅方向の塗布量のばらつきを生じることになる。
【0013】
本発明においては、最終的にシートに薬液を転写塗布する版胴において、版胴に対向し接触させてブラシを設け、そのブラシ毛により紙粉を含有する前記薬液を前記版胴から除去するように構成したから、版胴の版面における薬液中の紙粉の目詰まりを防止できる。その結果、塗布量が経時で増加したり、流れ方向、幅方向の塗布量のばらつきを生じる危険性を解消できる。
【0014】
<請求項2記載の発明>
前記シートは圧胴と版胴との間を上下方向に走行する構成であり、前記ブラシは版胴の下方に設けられた請求項1記載のティシュペーパー塗布薬液の紙粉除去装置。
【0015】
(作用効果)
版胴の下方にブラシを設けて紙粉含有液を版胴から除去するようにしたので、除去した紙粉含有液が巻き上がり飛散することを防止でき、もって、シートへの付着を防止できる。
【0016】
<請求項3記載の発明>
前記ブラシは版胴の下方に設けられ、前記ブラシの下方に薬液の回収受け容器を設けた請求項2記載のティシュペーパー塗布薬液の紙粉除去装置。
【0017】
(作用効果)
ブラシの下方に薬液の回収受け容器を設けると、薬液の垂れ落ちを防止でき、回収が可能となる。
【0018】
<請求項4記載の発明>
前記ブラシに向かってエアを噴射し紙粉をブラシ毛から分離するエア噴射手段を設けた請求項3記載のティシュペーパー塗布薬液の紙粉除去装置。
【0019】
(作用効果)
ブラシに向かってエアを噴射し紙粉をブラシ毛から分離するエア噴射手段を設けると、紙粉を含む含有液を吹き飛ばすことにより、紙粉をブラシ毛から分離することができる。その結果、版胴における薬液中の紙粉の堆積又は目詰まりを防止できるのである、
【0020】
<請求項5記載の発明>
さらに、前記薬液の回収受け容器に回収した薬液から紙粉分を分離する紙粉分離手段と、紙粉を分離した薬液を再利用する薬液返送手段とを有する請求項3記載のティシュペーパー塗布薬液の紙粉除去装置。
【0021】
(作用効果)
さらに、前記薬液の回収受け容器に回収した薬液から紙粉分を分離する紙粉分離手段と、紙粉を分離した薬液を再利用する薬液返送手段とを有することで、分離薬液の再利用が可能となる。
【0022】
<請求項6記載の発明>
上記請求項のいずれか1項に記載のティシュペーパー塗布薬液の紙粉除去装置を使用して、ブラシのブラシ毛に付着する前記薬液中の紙粉を除去することを特徴とするティシュペーパー塗布薬液の紙粉除去方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、最終的にシートに薬液を転写塗布する版胴において、版胴の版面に対向し接触させてブラシを設け、そのブラシ毛により紙粉を含有する薬液を前記版胴の版面から除去するように構成したから、前記版胴の版面における薬液中の紙粉の目詰まりを防止できる。 また、薬液に混入する紙粉を効率的に除去できる結果として、塗布液の粘度を安定化させ、塗布量のバラツキを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る薬液の紙粉除去装置及び配管の一例を示すフロー図である。
【図2】フィルターベルト、メッシュベルトの上方走行面押し下げ部分の幅方向断視図である。
【図3】フィルターベルトの上方走行面上のフィルター押し下げロールの配置を模式的に示す平面図である。
【図4】図1の要部説明図である。
【図5】ブラシロールの正面図である。
【図6】他の例のブラシロールを部分的に示す正面図である。
【図7】本発明に係る薬液の紙粉除去装置及び配管の別の一例を示すフロー図である。
【図8】プライマシンでの薬液塗布例の概要説明図である。
【図9】フレキソ塗布に係る装置の一例を示す概略図である。
【図10】グラビア塗布に係る装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(薬液塗布ティシュー製造工程の一例)
図8に、プライマシンにおいて薬液を塗布して得られるティシュペーパーの製造工程の例を示す。
抄紙機において抄紙された原紙は、連続シートとして、クレープを施し、カレンダー処理を施したうえで、これを巻き取り、一次原反ロールJR(一般的にジャンボロールともいわれている)とされる。
【0026】
連続シートS11,S12は積層ローラー51で積層されて2プライとされ、必要に応じてプライマシンカレンダー52でカレンダー処理され、薬液付与手段53に送られる。薬液付与は各プライの片面側のみより行われ、薬液を付与されていない面同士が重ね合わされて、後にプライ固定を施されるのが好ましい。薬液塗布の方法は、フレキソ塗布又はグラビア塗布によるなど公知の塗布方法をいずれも使用することができる
【0027】
薬液を塗布された2プライの連続シートは、コンタクトエンボスコロ54B及びコロロール54Aに供され、コンタクトエンボス(ナーリング)処理を施すことにより固定されることが好ましい。コンタクトエンボスは、両側部から紙幅に対して1/10〜1/20の位置に幅1〜10mmで縦方向に一様に施されるのが好ましい。プライを接着剤等で固定するなど、公知の方法のいずれを使用してもよいが、接着剤を使用する場合、肌触りが固くなりやすい、薬液付与時に剥がれやすい、等の問題があるため、コンタクトエンボスの使用がより好ましいといえる。
【0028】
コンタクトエンボスを付与した2プライの連続シートは、直接ロータリー式インターフォルダ等に供されて折り加工を施された後に製品サイズに裁断されるか、または、スリッター55により製品幅にカットされた後、ワインディングドラム56により巻き取り二次原反ロールRとされ、折り加工が施され、紙箱への収納がなされる。
なお、本形態ではコンタクトエンボス前に薬液を付与する構成をとっているが、コンタクトエンボス後に薬液を付与する構成としてもよい。
【0029】
上述の二次原反ロールは、特にティシュペーパー製品においては折り加工工程に供される。折り加工工程としては、ロータリー式インターフォルダ、マルチスタンド式インターフォルダ等公知の方法を使用することができるが、生産性の高いマルチスタンド式インターフォルダの使用がより好ましい。
【0030】
なお、2プライのティシュペーパーの製造工程を例示したが、本発明に係る薬剤中の紙粉除去装置から供給される薬液は、他の製造工程にも有効に使用できるものであり、上記の製造工程への使用に限定されるものではない。
【0031】
(薬液塗布工程−フレキソ塗布の一例)
薬液塗布工程としては、公知の塗布手段をいずれも使用することができるが、塗布面全体にムラなく薬液塗布を行うグラビア塗布、フレキソ塗布等の印刷方式の使用が好ましい。
【0032】
薬液塗布工程のうち、特にドクターチャンバー61を備えたフレキソコーターを使用すると、安定した塗布量で薬液を供給することができるため、より好ましい。
【0033】
図8及び図9にフレキソ印刷方式におけるドクターチャンバー形式の一例を示す。図9に示すように一方のドクターチャンバー形式とされる薬液塗布部53Aは、薬液の入っているドクターチャンバー61Aが、回転可能なアニロックスロール63Aと対向して配置されていて、ドクターチャンバー61Aからアニロックスロール63Aに薬液を受け渡すようになっている。また、このアニロックスロール63Aと接し且つ積層連続シートS2の一面とも接する版胴ロール64Aが回転可能に設置されていて、このアニロックスロール63Aから版胴ロール64Aに薬液を受け渡すようになっている。さらに、積層連続シートS2を挟んでこの版胴ロール64Aと対向している圧胴ロール65Aとで積層連続シートS2に圧力を付与しつつ、版胴ロール64Aから積層連続シートS2に薬液を塗布するようになっている。
【0034】
そして、本形態では、この薬液塗布部53Aがコンタクトエンボス手段54のコロ54Aと対向し且つ、前述のワインディングドラム56Aとも対向する積層連続シートS2の面側に位置している。尚、前述のドクターチャンバー61Aに対して薬液を塗布する供給ポンプ(図示しない)及び、このドクターチャンバー61Aから薬液を戻すための排出供給ポンプ(図示しない)が、ドクターチャンバー61Aに設置されている。
【0035】
他方、図9に示すように他方のドクターチャンバー形式とされる薬液塗布部53Bは、薬液の入っているドクターチャンバー61Bが、回転可能なアニロックスロール63Bと対向して配置されていて、ドクターチャンバー61Bからアニロックスロール63Bに薬液を受け渡すようになっている。また、このアニロックスロール63Bと接し且つ積層連続シートS2の他の面とも接する版胴ロール64Bが回転可能に設置されていて、このアニロックスロール63Bから版胴ロール64Bに薬液を受け渡すようになっている。さらに、積層連続シートS2を挟んでこの版胴ロール64Bと対向している圧胴ロール65Bとで積層連続シートS2に圧力を付与しつつ、版胴ロール64Bから積層連続シートS2に薬液を塗布するようになっている。
【0036】
薬液の粘度によっては、版胴ロール64Bの版面に紙粉が付着しやすくなるという問題があることから、版胴ロール64B下部に紙粉除去手段27を設けることが好ましい。図1、図4の図示例では紙粉除去手段27として回転ブラシを使用している。この回転ブラシからなる紙粉除去手段27に対し、回転ブラシに向かってエアを噴射し紙粉をブラシ毛から分離するエア噴射手段28を設けることができる。
【0037】
そして、本実施の形態では、この薬液塗布部53Bがコロ54Aと非対向とされ且つ、前述のワインディングドラム56Aとも非対向となる積層連続シートS2の他の面側に位置している。尚、前述のドクターチャンバー61Bに対して薬液を塗布する供給ポンプ(図示しない)及び、このドクターチャンバー61Bから薬液を戻すための排出供給ポンプ(図示しない)が、ドクターチャンバー61Bにも設置されている。
【0038】
従って、積層連続シートS2の両面に薬液塗布部53A及び薬液塗布部53Bから薬液がそれぞれ塗布されるが、この際、薬液塗布部53Aによるコロ54Aと対向する積層連続シートS2の面側の塗布量を薬液塗布部53Bによる他の面側の塗布量に対して少なくしつつ、積層連続シートS2の両面からそれぞれ積層連続シートS2に対して薬液を塗布することができる。
【0039】
具体的には、片面毎の塗布量を変えるだけでなく、フレキソ版の線数を15〜40線程度、頂点面積率を20〜40%程度の薬液が飛散しない程度に粗くすることが考えられ、このようにすることで、塗布直後はドット柄が残り、瞬間的に塗布部分と未塗布部分ができるようになる。
【0040】
従って、本形態によれば、フレキソ印刷方式を用いることで版が樹脂であり弾力性があるため衛生用薄葉紙に多少の凹凸があっても印圧で調整可となるので、積層連続シートS2にシワが入り難くなる。他方、フレキソ印刷方式を用いることにより、加工速度が高速であっても塗布量を安定させることができ、また、一つのロールで幅広い薬液の粘度を安定的に塗布することができるようになる。具体的には、積層連続シートS2を700m/分以上とし、好ましくは900m/分以上の速度で搬送しつつ、薬液とされるローション剤を後述の範囲の塗布量で塗布する際にも、塗布が均一で蛇行無く積層連続シートS2を巻き取れるようになる。
【0041】
(薬液塗布工程−グラビア塗布の一例)
図10にグラビア塗布に係る装置の一例を示す。図10において、薬液溜めトレイ308からディップロール31が一定量の薬液を取り上げ、ディップロール31のセルに残った薬液は、グラビアロール32に移される。次いで、グラビアロール32に移された薬液は、掻取ブレード33によって掻き取られながら、積層シートS2の表面に同時に移される。
【0042】
(薬液の例)
本発明に係るティシュペーパーシートに塗布する薬液としては限定されるものではないが、好適に対象となる薬液の例について示す。
ティシュペーパーに付与する薬液の粘度は、加工速度を向上させる観点から、40℃で1〜700mPa・sとすることが好ましく、特に50〜400mPa・sとすることが好ましい。1mPa・sより小さいと薬液が飛散しやすくなり装置の汚損につながり、逆に700mPa・sより大きいと塗布量をコントロールしにくくなる。
【0043】
成分はポリオールを70〜90%、水分を1〜15%、機能性薬品を0.01〜22%含むものとすることが好ましい。
【0044】
ポリオールはグリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびその誘導体等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類を含む。
【0045】
機能性薬剤としては、柔軟剤、界面活性剤、無機および有機の微粒子粉体、油性成分などがある。柔軟剤、界面活性剤はティシューに柔軟性を与えたり表面を滑らかにする効果があり、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を適用する。無機および有機の微粒子粉体は表面を滑らかな肌触りとする。油性成分は滑性を高める働きがあり、流動パラフィン、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールを用いることができる。
【0046】
また機能性薬剤としてポリオールの保湿性を助けたり、維持させる薬剤として親水性高分子ゲル化剤、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、ヒアルロン酸若しくはその塩、セラミド等の1種以上を任意の組合せ等の保湿剤を加えることができる。
【0047】
また機能性薬剤として香料、各種天然エキス等のエモリエント剤、ビタミン類、配合成分を安定させる乳化剤、薬液の発泡を抑え塗布を安定させるための消泡剤、防黴剤、有機酸などの消臭剤を適宜配合することができる。さらには、ビタミンC、ビタミンEの抗酸化剤を含有させてもよい。
【0048】
上記成分のうち、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールを主成分とすることが、薬液の粘度、塗布量を安定させる上で好ましい。
薬液塗布時の温度は30℃〜60℃、好ましくは35℃〜55℃とすることが好ましい。
【0049】
(薬液の紙粉除去装置本体の構成)
本発明例の二次原反ロールは、ロータリー式インターフォルダではなく、生産性の高いマルチスタンド式インターフォルダによって折り加工を行なうことを想定している。
ロータリー式インターフォルダの場合には、その加工速度(シートの走行速度)が低いので、特開2008−245780号公報に記載のように、ロータリーシリンダー式加工機において、広幅のシート(たとえば2〜3m程度)を供給する過程で薬液を付与することが可能である。
しかるに、マルチスタンド式インターフォルダによるティシュペーパーの製造ラインは、たとえば700〜1400m/分と高速とすることが考えられる。その場合には、プライマシンにおいても、生産速度のマッチングのために同様の速度でプライ加工を行なうことが必要となる。かかる高速のプライマシンにおいて、たとえば薬液を、グラビア又はフレキソなどの方式で塗布する場合、主に高速で走行するシートと塗布用ロールとの摩擦で紙粉が大量の発生し、塗工薬液中に混入し、その濃度が変化し、塗布量のバラツキを招く。そこで、本発明では、圧胴と版胴との間を走行するティシュペーパーシートに、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式で、薬液を前記版胴に乗せながら塗布するように構成した設備、たとえばプライマシンにおいて、図1及び図4に典型的に示されているように、版胴(ロール)64Bの版面に対向し接触させて回転するブラシ27を設け、そのブラシ毛により紙粉を含有する薬液を版胴(ロール)64Bの版面から除去するように構成したものである。この時、版胴(ロール)64Bの版面の周速と回転するブラシの周速との差異は、版面の周速に対し±5〜10%程度であることが望ましい。周速差を設けることによって紙粉を効率的に除去することができるが、周速差が大きすぎるとブラシと版の磨耗が多くなる。
【0050】
版胴(ロール)64Bから除去した紙粉を含有する薬液は、サービスタンク23に集められ、再利用されるほか、紙粉分が紙粉除去装置本体1によって系外に排出される。
その具他例を説明すると次のとおりである。
図1は、本発明の薬液の紙粉除去装置と処理系統の一例を示すフロー図である。無端状の金属製メッシュベルト11がロール12、13に巻きかけられている。更に無端メッシュベルト11の上下前後を取り囲み、かつ外周テンションロール14を覆うように無端のフィルターベルト10が巻きかけられている。駆動回転ロール12はベルト駆動用減速機21に連結されており、ベルトの走行及び走行速度制御を可能としている。駆動回転ロール12の回転により、メッシュベルト11とフィルターベルトが駆動回転ロール12とブロックロール17に挟みこまれて移動する。
【0051】
フィルターベルト10は、ポリエステル等の樹脂製、金属製メッシュシート等、通常ベルト型濃縮機に使用されるものを使用できるが、後述するように押し下げによりベルト形状を一部変形させながら移動させるため、可橈性に優れた樹脂製のフィルターを使用することがより好ましい。薬液濾過は、特に薬液に混入する紙粉の除去を目的としており、紙粉の大きさは平均繊維長で0.3〜3.0mmであることから、フィルターは、網目が縦、横それぞれ20〜50本で、糸の太さ0.25〜0.8mmのものを使用することが好ましい。
【0052】
メッシュベルト11を省略し、フィルターベルト10を直接駆動回転ロール12に巻きかける形態とすることもできるが、フィルターベルトの形状を安定させ、かつフィルターベルトを確実に移動させるためにメッシュベルト11を使用することが好ましい。メッシュベルト11は、濾過機能を付加するものではないため、フィルターベルトに比して疎なメッシュを使用することが望ましい。メッシュベルトの素材は、ステンレス、アルミニウム、ポリエチレン等、水分の付着による錆びの生じにくいものとすることが好ましい。金属チェーンメッシュベルトは、上方走行面の押し下げにより凹部を形成する程度の可橈性を有することが好ましい。
【0053】
図2、図3に示すように、メッシュベルト11とフィルターベルトが重なる上方走行面のうち少なくとも2箇所(図示例では4箇所)がフィルター押し下げロール15により押し下げられることにより、凹部が形成される。押し下げ手段は、ロールに限られず、例えば角のない樹脂製の凸部によってもよいが、その場合、押し下げられた状態のフィルターベルトをそのまま移動させると、押し下げ手段とベルトの摩擦によりベルトが破損する恐れがある。
【0054】
押し下げ手段により形成された凹部は、被濾過薬液が薬液供給管より直接導入される薬液貯留部16となる。薬液貯留部には液量検知手段が備えられ(図示せず)、フィルターの目詰まりにより貯留量が一定量を超えるとフィルターベルトが移動する構成となっている。液量検知手段は、公知の液量検知手段のいずれを使用してもよく、ボールタップ、水位計、微圧センサ等、公知の液量検知機器をいずれも使用できる。
【0055】
フィルター押し下げロール15は、2か所以上備えるものとし、4か所以上備えることがより好ましい。フィルター押し下げロールの配置を図3に例示するが、フィルター押し下げロールを2つ以上使用し、かつフィルターベルト上面に凹部を形成する構成であれば、フィルター押し下げロールの配置は特に図示例に限定されるものではない。貯留量の多い凹部を上方走行面に形成するためには、最もフィルター側部側に位置するフィルター押し下げロールのフィルター幅方向側部からの距離aは、フィルターの幅方向の長さbの10〜50%、より好ましくは20〜35%とすることが好ましい。10%より側部に近い位置に配置すると凹部に深さを持たせることができず、また、50%より幅方向中央寄りとすると、フィルターベルト側部の撓みが大きくなり、凹部の形状及び容量が安定しにくい。
【0056】
フィルターが目詰まりを起こして薬液貯留部の液量が一定量を超えると、目詰まりを起こした部分が前方に移動し、目詰まりを起こしていない部分が新たな薬液貯留部を形成する。この際、凹部を形成していたフィルターが平坦となる部分において、フィルターに随伴して移動してきた薬液により側部から液漏れを生じる恐れがある。また、薬液が前方、及び下方へ移動すると、後述のバッチ操作による遠心分離に供する薬液量が増大し、バッチ操作の回数が増大し操作が煩雑となる。そのため、フィルターベルトの当該部分を横断するように、側面に断面を有するブロックロール17を備え、フィルター移動に随伴して移動する薬液を、新たに形成される薬液貯留部へ押し戻す構成とすることが望ましい。ブロックロール17は、表面が吸水性を備えたスポンジフォーム、ウレタンフォーム等で構成されており、駆動回転ロール12の上方に配されることが好ましい。ブロックロール17に吸収された薬液は、ブロックロール17と駆動回転ロール12との間に生じた押圧により、絞り出されるように薬液貯留部に押し出される。
【0057】
ブロックロール17を通過した後のフィルターベルトは、装置前方または装置下方において、エア噴射手段18からのエア噴射により、目詰まりを除去される構成とするのが望ましい。エア噴射手段18は、フィルターベルトの形成した内部空隙内に配置され、フィルター内部から外部の方向に向かって、目詰まりの要因となる紙粉と、フィルター表面に残存した薬液を吹き飛ばす構成とするのが好ましい。エア噴射手段18は、具体的にはエアコンプレッサー等を使用することができる。エア噴射により飛ばされた紙粉及び薬液は、薬液受け19に貯留された後、遠心分離手段22へ送られる。
【0058】
薬液貯留部のフィルターベルトを透過した薬液は、濾液受けパン20に貯留されたのち、サービスタンク23またはサービスタンク24(図7を参照)に送られる。
【0059】
(遠心分離手段)
薬液受け19に貯留された紙粉及び薬液は、遠心分離手段22おいて、更に固液分離がなされる。遠心分離は、下記の条件で行われるのが好ましい。
○バッグフィルター: 樹脂製、好ましくはポリエステル製
○メッシュサイズ:100〜400メッシュ
○1回あたりの分離試料量:1.0〜5.0kg
○回転数:2000〜500rpm
○分離時間:15〜45分
遠心分離により得られた分離済みの薬液は、サービスタンク23またはサービスタンク24(図7)へ送られる。
【0060】
(薬液のフローの形態)
薬液塗布工程から回収された紙粉を含む未塗布薬液は、遠心分離手段22に送られるか、または、ポンプP−2により返送され、スクリーン等で紙片等の大きな夾雑物を除去された後にサービスタンク23に貯留される。サービスタンク23の温度は、薬液の粘度を一定の範囲内に保つため、ヒータ26により20〜60℃とされることが好ましい。サービスタンク23内の未塗布薬液には、原液タンク25からポンプP−1により送られる原液薬液が付加されることが好ましい。ティシュペーパーに付加される薬液の品質を均一化するため、循環薬液と原液とを分けてラインに導入するのではなく、薬液を一体的に処理・使用することが好ましいためである。循環薬液と原液とは、4:1〜100:1の割合で混合されることが好ましい。
【0061】
サービスタンク23の薬液は、ポンプP−3により紙粉除去装置本体1の薬液貯留部16に供給され、フィルターベルト10により濾過処理される。濾液受けパン20に貯留した濾液は、ポンプP−4によりサービスタンク23に送られる。
【0062】
薬液受け19に貯留された薬液及び紙粉は、遠心分離手段22に供され、さらに分離処理されることが好ましい。分離された薬液はポンプP−5により、サービスタンク23に送られる。残存した分離パルプは廃棄物として処理される。
【0063】
サービスタンク23内の薬液はポンプP−6により薬液塗布工程に送られる。その際、薬液は過剰量送られ、余剰分は塗布装置(図示例ではドクターチャンバー61)から戻りポンプP−7により、再びサービスタンクに返送される。
【0064】
ポンプP−1〜P−7は、エアポンプ等、公知のポンプをいずれも使用できるが、薬液が気泡を生じると濾過工程における効率が低下するため、気泡を生じにくいギアポンプを使用することが好ましい。
【0065】
(薬液のフローの別の形態)
図7に、紙粉除去装置本体1と薬液塗布工程との配管の別の例を示す。図7に示すように、濾液受けパン20と薬液受け19に貯留した薬液は、サービスタンク23とは別のサービスタンク24に送られる構成としてもよい。この場合、薬液塗布工程において紙粉が混入した未塗布薬液と、紙粉をほとんど含まない濾液、分離液を混和することがないため、より紙粉の混入の少ない薬液を薬液塗布工程に供することができるため好ましい。しかし、薬液の濾過速度が薬液供給の律速となるため、薬液を安定的に供給するためには処理能力の高い大型装置、または複数台の装置を使用することが好ましい。
【0066】
この形態においては、原薬液はサービスタンク23に供給するのではなく、サービスタンク24から薬液塗布工程に供給される薬液に混入されるのが好ましい。
【0067】
未塗布薬液の粘度が700mPa・s以下(より好ましくは400mPa・s以下)の場合は、図1の形態を使用できるが、粘度が700mPa・sを超える場合には、当該粘度が200mPa・s未満に低下するまで、図7の形態に変更することが好ましい。
【0068】
(ブラシ27について)
前記のブラシ27としては、図5に示すように、ブラシ本体にブラシ毛を適宜の分散状態で植設したもののほか、図6に部分図として示すように、ブラシ本体軸27aに多数本のブラシ毛単位27bを、たとえば図示のように長さ方向に5列の単位で、周方向に適宜の間隔をおいて螺旋状に配置したものがより好適に使用できる。螺旋の条と条との間には植設がなされていない空間部分を設ける。
【0069】
図6の例では、紙粉の堆積が実質的にない理由は、螺旋の条と条との間が空間部分であるためと考えられる。
さらに発展的に、図6のブラシの回転方向は、右側面で時計回りにすると、紙粉を順次左側に集めるようにすることができる。版胴ロール64Bが長尺の場合、中央を境にして、図6に示す螺旋条を対称に植設し、紙粉を中央側から順次左側及び右側に集めるようにすることができる。
【0070】
なお、ブラシ27は、図4に回転方向を示すように、版胴ロール64Bの回転方向に追従するように回転させるのが望ましい。ブラシ27の回転周速は、版胴ロール64Bの回転周速に対し80%〜40%程度遅くするのが望ましい。
【0071】
さらに、図4が参照されるように、ブラシ27に向かってエアを噴射し紙粉をブラシ毛から分離するエア噴射手段28、たとえばノズルを設けることができる。28Aは圧空用ポンプである。
【符号の説明】
【0072】
1…紙粉除去装置本体、10…フィルターベルト、11…金属チェーンメッシュベルト、12…駆動回転ロール、13…内周テンションロール、14…外周テンションロール、15…フィルター押し下げロール、16…薬液貯留部、17…ブロックロール、18…エア噴射手段、19…薬液受け、20…濾液受けパン、21…減速機、22…遠心分離手段、23,24…サービスタンク、25…原液タンク、26…ヒータ、27…紙粉除去手段、28…エア噴射手段、P−1〜P−7…ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧胴と版胴との間を走行するティシュペーパーシートに、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式で、薬液を前記版胴の版面に乗せながら塗布するように構成した設備であって、
前記版胴の版面に対向し接触させてブラシを設け、そのブラシ毛により前記版胴の版面に付着した紙粉を含有する前記薬液を前記版胴の版面から除去するように構成したことを特徴とするティシュペーパー塗布薬液の紙粉除去装置。
【請求項2】
前記シートは圧胴と版胴との間を上下方向に走行する構成であり、前記ブラシは版胴の下方に設けられた請求項1記載のティシュペーパー塗布薬液の紙粉除去装置。
【請求項3】
前記ブラシは版胴の下方に設けられ、前記ブラシの下方に薬液の回収受け容器を設けた請求項2記載のティシュペーパー塗布薬液の紙粉除去装置。
【請求項4】
前記ブラシに向かってエアを噴射し紙粉をブラシ毛から分離するエア噴射手段を設けた請求項3記載のティシュペーパー塗布薬液の紙粉除去装置。
【請求項5】
さらに、前記薬液の回収受け容器に回収した薬液から紙粉分を分離する紙粉分離手段と、紙粉を分離した薬液を再利用する薬液返送手段とを有する請求項3記載のティシュペーパー塗布薬液の紙粉除去装置。
【請求項6】
上記請求項のいずれか1項に記載のティシュペーパー塗布薬液の紙粉除去装置を使用して、ブラシのブラシ毛に付着する前記薬液中の紙粉を除去することを特徴とするティシュペーパー塗布薬液の紙粉除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−194170(P2011−194170A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67252(P2010−67252)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】