説明

ティルト式ケーブルダクト

【課題】制御盤内部のように限られた空間の内部を有効に利用することができ、使用するデバイスの種類及び大きさが同じである条件においては、制御盤などの大きさを小型化可能なティルト式ケーブルダクトを提供する。
【解決手段】外部にデバイスを固定可能であり、内部がデバイスに接続するケーブルを敷設するためのケーブル敷設部を構成しているケーブルダクトについて、デバイスの取り付け手段を有する前板11と、前板の下端部又は上端部の後方に位置する底板12又は上板と、底板又は上板の後端部の上方又は下方に位置する背板13とを有するダクト本体10を具備し、前板11は、ケーブル敷設部18を遮蔽した状態から露出可能にするためにティルト可能にヒンジ結合されており、少なくとも上記前板、底板又は上板の何れかはケーブルを通すためのケーブル通し窓16を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部にデバイスを固定することが可能であり、かつそれらのデバイスに接続するケーブルを敷設するためのケーブル敷設部を内部に有するティルト式ケーブルダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
制御盤や配電盤などには、各デバイスに接続された無数の配線類(以下、「ケーブル」という。)があり、例えば小型の工作機械でも、従来は制御盤の内部に100メートル以上のケーブルが使われている。ケーブルの敷設には、ケーブルダクトと通称される部材を使用しているが、従来の制御盤に使われているケーブルダクトは制御機器をダクトとは別に制御盤内に設置する、いわばダクト別置き型と称すべき構造である。この構造の場合、図13に示したように、デバイスdには入力側と出力側の端子tが通常上下に配置されているので、1個のデバイスdに対して上下2個の横方向のケーブルダクトh、hが必要になる。また、各横方向のケーブルダクトに敷設したケーブルを上下に取り回すために、最小限度2個の縦ダクトv、vを必要とするのでこれに要するスペースの無駄も無視できない。その結果、制御盤内部の面積の30〜40パーセントを縦、横のケーブルダクトh、vが占有することになり、その上、ケーブルダクトの正面の前板fは単なる蓋であるため前板表面はデッドスペースとなる。
【0003】
この無駄を解消するために、前板fをデバイス取り付け箇所に利用するダクト組み込み型というべき改良型が考案され、上記ダクト別置き型におけるデッドスペースの有効利用が図られた(図14)。しかし、ダクトの前板fに取り付けたデバイスdのケーブルをダクト上部の開口部からダクト内部に引き込むため、上段のダクトとの間に作業隙間sを設けることが不可欠であり、小型化ないし省スペースの観点から大差が出ないという指摘がある。さらに、致命的なことは、上下のケーブルダクトの間隔を相当空けないとケーブルダクトの内部を底部まで見ることができない点である。この点はダクト組み込み型に限ったことではないが、保守の面においてユーザーに負担を強いることになっており、問題がある。
【0004】
先行技術として、例えば特公昭53−27480号を挙げることができるが、これは前述のダクト別置き型に属する例であり、また、実開昭62−161527号はダクト組み込み型に属する例であるといって良い。より最近のものでは特開2002−95131号があり、端子台の配置スペースを不要としたケーブルダクトを実現することを課題とし、ケーブルダクト本体にケーブルダクトカバーを引き出して作業を行い、作業終了後にはケーブルカバーをケーブルダクト本体に押し入れることによって元の状態に戻すことを可能にしている。しかしながら、ケーブルカバーをケーブル本体に対して引き出し或いは押し込み可能に設けるための具体的構成は示されていないが、引き出しと押し込みを可能にする機械的構造が必要である。また、ケーブルはケーブルカバー部分を通してのみ取り出せるに過ぎない。
【0005】
【特許文献1】特公昭53−27480号
【特許文献2】実開昭62−161527号
【特許文献3】特開2002−95131号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、制御盤内部のように限られた空間の内部を有効に利用することができ、或いは、使用するデバイスの種類及び大きさが同じである条件において制御盤などの大きさを小型化可能なティルト式ケーブルダクトを提供することである。また、本発明の他の課題は、これまでのケーブルダクトに関する常識を廃してケーブルの引き出しを随所から可能とし、ケーブルダクト内部へのアプローチを容易化したティルト式ケーブルダクトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明は、外部にデバイスを固定することが可能であり、かつ内部がそれらのデバイスに接続するケーブルを敷設するためのケーブル敷設部を構成しているケーブルダクトについて、デバイスの取り付け手段を有する前板と、前板の下端部又は上端部の後方に位置する底板又は上板と、底板又は上板の後端部の上方又は下方に位置する背板とを有するダクト本体を具備し、前板は、底板又は上板の前端部にてケーブル敷設部を遮蔽した状態からケーブル敷設部を露出可能にするために、一部または全部がダクト本体にティルト可能にヒンジ結合されており、少なくとも上記前板、底板又は上板の何れかはケーブルを通すためのケーブル通し窓を有しているものとするという手段を講じたものである。
【0008】
上記の構成を有する本発明のティルト式ケーブルダクトは、その1個のダクト本体に関する限りにおいては、閉断面構造のダクト構造を有する必要がない。後述する図1の例におけるダクト本体はこの構成の具体例であり、上記のとおり前板、底板及び背板を有し、上板を有していない。しかしこの構成においても、複数個のダクト本体を上下に接して配置することによって(図15参照)、上段のダクトの底板が下段のダクトの上板を兼ね、或いは下段のダクト本体の上板が上段のダクト本体の底板を兼ねることとなり、閉断面構造のケーブルダクトを構成することができる。このように、本発明のティルト式ケーブルダクトを設置するときには、隣接する上段と下段のダクト本体の間隔を任意に決定することができ、最も密に配置するときには上段と下段のダクト本体を接しさせて配置することが可能である。
【0009】
ダクト本体の前板はデバイスの取り付け手段を有している。デバイスの取り付け手段としては、DINレールが一般的であるが、DINレールに限らないことは当然であり、例えば、ねじ止めによる直接取り付けを始めとする他の公知の取り付け手段を適用することも可能である。上板は、その前端部にてケーブル敷設部を遮蔽するが、遮蔽状態からケーブル敷設部を露出可能にするために、一部または全部がダクト本体にティルト可能にヒンジ結合するものとする。前板が上板にヒンジ結合されていることによってヒンジ軸を中心に前板を回転させ、ダクト本体の内部を露出させることができ、その結果、ケーブル敷設部に対するケーブルの引き出し、追加、点検等の作業及びそれらに関するチェックが容易になる。
【0010】
本発明では、少なくとも上記前板又は上板の何れかはケーブルを通すためのケーブル通し窓を有している。ケーブル通し窓は、ダクト本体内部のケーブル敷設部に敷設されるケーブルを引き出し、前板にデバイス取り付け手段を介して取り付けられたデバイスに接続するために、ケーブルを通す窓であり、通常上下に配置されるデバイスの入力側と出力側の端子に、ケーブル敷設部内部からケーブルを上下に引き出して接続することを可能とする。その結果、ケーブルを上下に引き出すために必要とされていた、最小限度2個の縦ダクトも不要となる。また、ケーブルのループを描くような迂回配線(ループ配線)が不要になり、EMC(Electro−Magnetic Compatibility)リスクはループ面積に比例するので、EMC対策上メリットが大きい。
【0011】
本発明におけるダクト本体として、デバイスを取り付ける手段を有する前板と、前板の下端部の後方に位置する底板と、前板の上端部の後方に位置する上板と、底板の後端部の上方かつ上板の後端部の下方に位置し、底板と上板の後端部を連絡する背板から成る、閉断面構造を有するものを含むことは当然である。この点は後述する例2以下に示している通りである。そして、前板、底板、上板及び背板の内の任意の板面にも、ケーブルを通すためのケーブル通し窓を具備することができる。なお、本発明において窓とは、四方が囲まれた閉じた開口、切り欠き状の開口を含むものとする。
【0012】
ダクト本体について、ケーブル敷設方向の端部が閉じた閉端部になっており、上記閉端部と摺動可能な側壁部がティルト可能な前板の端部に設けられ、かつ前板を所望のティルト位置に固定するために、上記閉端部と前板の側壁部に係合部を設けることは望ましい構成である。係合部によって、前板をあらかじめ設定された所望の角度に固定して置き、その間にケーブルダクト本体の内部に関する必要な作業が行えるからである。ダクト本体の前板を所望のティルト位置に固定するためには、ケーブル敷設方向の端部に突出して前板を受け支える受け支え部を設けた構成を取っても良い。また、前板のティルト方向に沿った円弧状の長孔を有する部材をダクト本体又は前板に取り付け、長孔にねじを通して締め付けることで、所望のティルト位置に前板を固定することも可能である。
【0013】
ダクト本体を鉄、アルミニウム又はそれぞれの合金ないしはその他の金属より成る金属板製とした場合には、密閉構造を取ることと相俟って、良好な電磁遮蔽効果が得られる。ダクト本体を上記金属板製とすることによって内部のケーブル群はシールド(電磁遮蔽)され、EMC対策として有効であり、また、ダクト本体の機械的強度もより高いものとなる。しかし本発明においては、プラスチック製或いはプラスチックと金属複合材製のダクト本体も使用することができる。
【0014】
また、ダクト本体を背板によって制御盤のキャビネット等の筐体に直接連結すると、それ自体が中板として機能するので、中板が不要になる。なお、中板は図13及び図14に符号pで示した部材であり、従来は不可欠とされていた。また、キャビネット等の筐体が不要な環境では、ダクト本体をそのまま設備機械に抱かせることができる。ダクト本体の取り付け手段として、背板に横長のボルト通し孔を設け、位置調節可能な取り付け手段とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記のように構成されかつ作用するものであり、隣接する上段と下段のダクト本体の間隔を任意に決定することができるから、制御盤内部のように限られた空間の内部を有効に利用することができ、或いは、使用するデバイス種類及び大きさが同じである条件において制御盤などの大きさを小型化可能なティルト式ケーブルダクトを提供することができる。
【0016】
また、本発明によれば、これまでのケーブルダクトに関する常識を廃して、任意の板面にケーブルを通すためのケーブル通し窓を設けることができ、かつ、どの段のダクト本体からも前板をティルトさせておいて、ケーブルを引き出し、敷設することができるので、ケーブル敷設部に対するケーブルの引き出し、追加、点検等の作業及びそれらに関するチェックを容易化可能なティルト式ケーブルダクトを提供することができる。
【0017】
また、本発明によれば、上段、下段のダクト本体はケーブル通し窓によって上下につながり得る形態であり、段の違うケーブルダクト同士の連結に従来は必要であった縦ダクトが不要となるから、縦ダクトの大きさ分だけ幅方向のスペースを節約できる。また、ループ配線の不要化によるEMC対策、背面のグリッド配線の実現が可能になる。
【0018】
また、本発明によれば、上記ケーブル配線の効率化によって、試算では30パーセントを超える配線長さの省略が可能になり、配線長さに比例して起こる不具合、特に経年変化によるリスクファクターの著しい低減、生産効率の向上が期待されるほか、制御盤等の小型化によるチェックエリア及び誤認の減少、占有面積の減少、室内から室外等への設置場所の変更等、多くのメリットがある。例えば、制御盤キャビネット等についてみると、その筐体の剛性(機械的強度)は鋼板長さの3乗に反比例するので30パーセントの小型化では、0.7の3乗分の1となり約2.9倍の剛性アップとなるから、剛性を同等とすると仮に2.3ミリ厚の鋼板が必要であった場合にはその下の規格の1.6ミリ厚の鋼板で良いことになり、約30パーセントの筐体重量軽減が実現し、材料費も下がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図示の実施形態を参照して、本発明をより詳細に説明する。図1〜図5は、本発明に係るティルト式ケーブルダクトの例1を示すもので、例1のダクト本体10は左右方向に細長く形成された任意の長さの前板11、底板12及び上下に短い背板13を有している。前板11はデバイスの取り付け手段14を有しており、その上端部において、ヒンジ部材15を用いて底板12の前端部に結合されており、底板12はケーブルを通すために形成された方形状のケーブル通し窓16を複数個長手方向に有しており、底板12の後端部には背板13の上端部が位置して一体化しており、背板13には取り付け位置調節のために横長に形成したボルト通し孔17が複数個長手方向に設けられている(図2参照)。
【0020】
例1のダクト本体10は上板を有していないが、前板11、底板12及び背板13によって囲まれるほぼ方形断面の空間がケーブル敷設部18である。また、背板13をダクト側取り付け部としてダクト本体10を制御盤のキャビネット等の筐体に連結するときに、上段のダクト本体10と下段のダクト本体10を接しさせて配置することによって、下段のダクト本体10の底板12が上段のダクト本体10の底板を兼ねることになる。図1、図2において、19は支持部材であり、ダクト本体10の左右両端部に取り付けられ、ケーブル敷設部18を遮蔽した直立状態にて、前板11を必要に応じて止めねじ11cによりねじ止めし、直立状態に固定することができるように雌ねじ穴11dを有している。
【0021】
上記の例1において、デバイスの取り付け手段14はDINレールであり、前板11と一体に形成されている。しかしながら、後述の例と同様に別々に用意されている前板11とデバイス取り付け手段14を一体に形成しても良いことは言うまでもない。なお、11aはケーブル通し窓であり、前板11の左右方向に複数個設けられている。例1の場合、前板11はケーブル敷設部18を遮蔽した図3Bの状態からケーブル敷設部18を露出可能にするために、全部が上記直立状態から前下方へ回転してケーブル敷設部18を開く状態を取り、これが前板11の前方へのティルトと呼ぶ動きに当たる。従って、例1では前板11の前方へのティルトによって、ケーブル敷設部18に対するケーブルの引き出し、点検等の作業に関するチェックを容易に行うことが可能になる。
【0022】
図6〜図8は、本発明に係るティルト式ケーブルダクトの例2を示すもので、例2のダクト本体20は左右方向に細長く形成された任意の長さの前板21、底板22、背板23及び上板24を有している。前板21は幅の狭い前板上部21aと幅の広い前板下部21bの上下に2分されており、それぞれ底板22の前端部と、底板24の前端部にヒンジ部材25a、25bを用いて結合され、また、前板上部21aには切り欠き状のケーブル通し窓26aが設けられており、前板下部21bには左右方向に長いケーブル通し窓26bが複数個設けられている。背板23には取り付け位置調節のためにボルト通し孔27が複数個長手方向に設けられている。
【0023】
例2では、底板22及び上板24にもケーブル通し窓28、29が左右方向に複数個設けられており、いずれのケーブル通し窓26a、26b、28、29からもダクト本体内部のケーブル敷設部30に通じることができるように構成されている。さらに例2のダクト本体20は、ケーブル敷設方向の端部が閉じた閉端部31になっている。なお、例2のケーブルダクトでは図示していないが、デバイスの取り付け手段として、例えばねじ止めのための雌ねじ部を前板21に設けることができる。
【0024】
例2において、前板上部21aと前板下部21bには、これらを所望のティルト位置に固定するために、係合部32a、32bを、ダクト本体の両側に設けている。係合部32a、32bとしては、上記閉端部31における前板上部21a、前板下部21bのヒンジ部を中心とした回転範囲の前端部に1箇所の凹部又は凸部33a、33bを設け、前板上部21a、前板下部21bにはそれぞれの左右方向の端部に扇形の側壁部34a、34bを設けるとともに、各側壁部34a、34bには数か所の凸部又は凹部35a、35bを設けて、凹部又は凸部33a、33bと凸部又は凹部35a、35bの凹凸係合によって、開閉位置で固定されるように構成されている。
【0025】
上記凹部又は凸部33a、33bと凸部又は凹部35a、35bの凹凸係合による位置決めによって、前板上部21aと前板下部21bが所望のティルト位置に固定されるもので、それによって前板上部21aと前板下部21bを押さえていなくても、ケーブル敷設部30に対するケーブルの引き出し、点検等の作業に関するチェックを容易に行えるようになる。このティルト角度は90度つまり直角程度開くことが理想であるが、開いたときの作業性と他との抵触を比較考量して、前閉(0度)、半開(30度)、全開(60度)のように設定する。
【0026】
図9〜図10は、本発明に係るティルト式ケーブルダクトの例3を示すものであるが、特に前板下部41bを所望のティルト位置に固定するために、ケーブル敷設方向の端部に突出して前板下部41bを受け支える受け支え部36を設けた例である。よって、例3のダクト本体40は例2のものと同様であり、左右方向に細長く形成された任意の長さの前板41、底板42、背板43及び上板44を有し、前板41は幅の狭い前板上部41aと幅の広い前板下部41bの上下に2分され、それぞれ上板42の前端部と、上板44の前端部にヒンジ部材45a、45bを用いて結合され、かつまた前板上部41aには切り欠き状のケーブル通し窓46aが設けられ、前板下部41bには左右方向に長いケーブル通し窓46bが複数個設けられている。背板43には取り付け位置調節のためにボルト通し孔47が複数個長手方向に設けられている。ケーブル通し窓28、29及びケーブル敷設部30については、例2と同様であるのでそれらの符号を援用して説明に代える。
【0027】
例3における受け支え部36は、ダクト本体40の閉端部37における前端部にて、ヒンジ部を中心とした回転半径方向前上方へ突出する突片部38に設けられており、ティルトして来た前板下部41bをその下面にて受け支えるもので、図示の例では前板下部41bの両側を支えるように設けられている。従って、例3では前閉(0度)及び半開(30度)の位置に凹凸係合による係合部39が設けられていれば良い。なお、例3における前板上部41aは例2と同様に扇形の側壁部48を設けるとともに、上記閉端部37と側壁部48との間に凹凸係合による係合部49を設けておけば良い。また、凹凸係合による係合部39、49は、例2における凹部又は凸部33a、33bと凸部又は凹部35a、35bの凹凸係合と全く同じ構成で良いので、ここでは説明を繰り返さない。
【0028】
図11は、本発明に係る例2のティルト式ケーブルダクトについて、デバイスの取り付け手段58として、DINレールを前板51の下部51bに取り付けた例4を示す。デバイスの取り付け手段58はDINレールとして示され、前板下部51bに取り付けられておりケーブル通し窓は塞がれているが、例1と同様にケーブル通し窓を設けることも当然可能である。前板上部51aについては塞いでしまう必要性はないので、ケーブル通し窓26aを例2、例3と同様に設けておいて良い。他の構成については、例2の場合と同じで良いので要部のみ説明する。ダクト本体50は前板51、底板52、背板53及び上板54を有しており、前板上部51a及び前板下部51bはそれぞれ底板52の前端部と、上板54の前端部にヒンジ部材55a、55bを用いて結合されている。また、ケーブル通し窓56、59は底板52と上板54に設けられ、背板53には取り付け位置調節のためにボルト通し孔57が複数個長手方向に設けられている。
【0029】
また、例4において、前板上部51aと前板下部51bには、これらを所望のティルト位置に固定するために、係合部64a、64bを、例2と同様にダクト本体の両側に設けている。係合部64a、64bとして、上記閉端部60における前板上部51a、前板下部51bのヒンジ部を中心とした回転範囲の前端部に1箇所の凹部又は凸部61a、61bを設け、前板上部51a、前板下部51bにはそれぞれの左右方向の端部に扇形の側壁部62a、62bを設けるとともに、各側壁部62a、62bには数か所の凸部又は凹部63a、63bを設けて、凹部又は凸部61a、61bと凸部又は凹部63a、63bの凹凸係合によって、開閉位置で固定されるように構成されている。
【0030】
上記した例2ないし例4では凹凸係合を前板21、41等の固定手段として示しているが、例えば前述したように円弧状の長孔を有する部材をダクト本体又は前板に取り付け、長孔にねじを通して締め付けることによって、所望のティルト位置に前板を固定するような公知の方法を用いて前板21、41等を固定することができる。さらに、ダクト本体20、40等を閉じた状態に、前板21、41等を固定するために、例1に示した支持部材19と、止めねじ11cを用いることができる。
【0031】
このような構成を有する本発明に係るティルト式ケーブルダクトは、図12に符号A、A′、A″を付して示したように、例えばダクト本体50を背板53によって制御盤のキャビネット等の筐体Cに、ボルト65、ナット66のような固定手段を用いて直接連結し(中板を必要とせずに)、取り付けることができる。上段及び下段のティルト式ケーブルダクトA、A′…を取り付ける間隔Lは広くも狭くも任意に選択することができる。図12の下段に示したように、任意の間隔で筐体Cに取り付けた本発明に係るティルト式ケーブルダクトA、A′…は、前板51bを所望の角度に開いてケーブル敷設部30の内部に敷設されているケーブル68の引き出し、点検等の作業及びそれらに関するチェックを自由に行うことができる。
【0032】
本発明に係るティルト式ケーブルダクトは、デバイス67が邪魔にならないように、ダクト本体10同士を接触させて配置することが可能である(図15参照)。図15において両用ダクトとあるのが本発明に係るティルト式ケーブルダクトA、A′、A″であり、それぞれの前板11にデバイス67を取り付け、各配線69a、69bをケーブル68から前板11のケーブル通し窓11a、11bを経て引き出し、デバイス67に接続している。図15は、本発明による省スペース効果が最大に発揮されている状態を示したものではあるが、図13及び図14と同一寸法で示したキャビネット70の外形と、ティルト式ケーブルダクトA、A′、A″の内部の比較において明らかであるように、本発明によれば従来のキャビネットの内部の正面面積を50パーセント以下に減少可能であることが分かる。
【0033】
この種のケーブルダクトにおいては、閉断面構造を有すること、及び本発明における前板のようなティルトする構造を持っていないこと、などがこれまでの常識であったといえる。これに対して本発明に係るティルト式ケーブルダクトがティルト式の開閉構造を持つということは、これまでの常識に挑戦するものであることになるが、その結果、制御盤内部のように限られた空間の内部を有効に利用してその小型化を図ることができ、ケーブル引き出し経路の画期的変更によってケーブル全長が著しく短縮され、材料コストの削減、故障率の低下、保守の容易化、設置面積の条件が広がる等、多くのメリットを期待できることになるものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係るティルト式ケーブルダクトは、例えば、一般産業機械、工作機械、半導体製造工場、通信機器中継局、回転寿司店ないし遊戯施設、あらゆる自動販売機、切符自動改札機の制御盤、或いは各種工場における電源用分電盤などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るティルト式ケーブルダクトの例1を示す斜視図である。
【図2】同上の前板を上方へティルトした状態の斜視図である。
【図3】同じく例1に関するもので、Aは図1に対応し、Bは図2に対応する断面図である。
【図4】同じく例1に関する平面図である。
【図5】同じく例1に関する正面図である。
【図6】本発明に係るティルト式ケーブルダクトの例2を示す斜視図である。
【図7】同上の横断面図である。
【図8】同じく例2に関するもので、Aは平面図、Bは正面図である。
【図9】本発明に係るティルト式ケーブルダクトの例3を示す横断面図である。
【図10】同じく例3に関するもので、Aは平面図、Bは正面図である。
【図11】本発明に係るティルト式ケーブルダクトの例4を示す斜視図である。
【図12】本発明に係るティルト式ケーブルダクトの適用例を示す断面図である。
【図13】従来のダクト別置き型構造を示すものでAは縦断面図、Bは正面図である。
【図14】従来のダクトダクト組み込み型構造を示すものでAは縦断面図、Bは正面図である。
【図15】本発明に係るティルト式ケーブルダクトを制御盤に適用したもので、Aは縦断面図、Bは正面図である。
【符号の説明】
【0036】
10、20、40、50 ダクト本体
11、21、41、51 前板
12、22、42、52 底板
13、23、43、53 背板
14 デバイス取り付け手段
15a、15b、25a、25b、45a、45b、55a、55b ヒンジ部材
16、26a、26b、28、29、46a、46b、56a、56b ケーブル通し窓
17、27、47、57 ボルト通し孔
18、30 ケーブル敷設部
19 支持部材
24、44、54 上板
31、37、60 閉端部
32a、32b、64a、64b 係合部
33a、33b、61a、61b 凹部又は凸部
34a、34b、62a、62b 側壁部
35a、35b、63a、63b 凸部又は凹部
36 受け支え部
38 突片部
39、49 係合部
67 デバイス
68 ケーブル
69a、69b 配線
70 キャビネット
A、A′、A″ 本発明に係るケーブルダクト
C 筐体
L 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部にデバイスを固定することが可能であり、かつ内部がそれらのデバイスに接続するケーブルを敷設するためのケーブル敷設部を構成しているケーブルダクトであって、
デバイスの取り付け手段を有する前板と、前板の下端部又は上端部の後方に位置する底板又は上板と、底板又は上板の後端部の上方又は下方に位置する背板とを有するダクト本体を具備し、
前板は、底板又は上板の前端部にてケーブル敷設部を遮蔽した状態からケーブル敷設部を露出可能にするために、一部または全部がダクト本体にティルト可能にヒンジ結合されており、
少なくとも上記前板、底板又は上板の何れかはケーブルを通すためのケーブル通し窓を有しているティルト式ケーブルダクト。
【請求項2】
ダクト本体は、デバイスを取り付ける手段を有する前板と、前板の下端部の後方に位置する底板と、前板の上端部の後方に位置する上板と、底板の後端部の上方かつ上板の後端部の下方に位置し、底板と上板の後端部を連絡する背板から成る閉断面構造を有し、
前板、底板、上板及び背板の内の任意の板面には、ケーブルを通すためのケーブル通し窓を有している請求項1記載のティルト式ケーブルダクト。
【請求項3】
ダクト本体は、ケーブル敷設方向の端部が閉じた閉端部になっており、上記閉端部と摺動可能な側壁部がティルト可能な前板の端部に設けられ、かつ前板を所望のティルト位置に固定するために、上記閉端部と前板の側壁部に係合部を設けた構成を有する
請求項1記載のティルト式ケーブルダクト。
【請求項4】
ダクト本体は、前板を所望のティルト位置に固定するために、ケーブル敷設方向の端部に突出して前板を受け支える受け支え部を設けた構成を有する
請求項2又は3記載のティルト式ケーブルダクト。
【請求項5】
ダクト本体は鉄、アルミニウム又はそれぞれの合金等より成る金属板製であり、電磁遮蔽効果を得るために密閉構造を取っている
請求項1記載のティルト式ケーブルダクト。
【請求項6】
ダクト本体の取り付け手段として、背板に横長のボルト通し孔を設けた構成を有する
請求項1記載のティルト式ケーブルダクト。
【請求項7】
デバイスの取り付け手段として、DINレールが前板に取り付けられている
請求項1記載のティルト式ケーブルダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−74962(P2010−74962A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240073(P2008−240073)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(509031497)エレンベルガー ウント ペンスケン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【Fターム(参考)】