説明

テキスタイル処理用シリケートシェルのマイクロカプセル

シリコーンテキスタイル処理剤の懸濁シリケートシェルのマイクロカプセルを含有する組成物を開示する。かかる組成物は、疎水性、柔軟性および難燃特性をもたらすテキスタイル処理剤として特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンテキスタイル処理組成物を含有するシリケートシェルのマイクロカプセルおよびそのテキスタイル処理への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マットレスカバー、カーテン、防護服、テント等としての使用向きのテキスタイルは、よく「工業用テキスタイル」と称される。ファッション用テキスタイル(例えば、衣服用のもの)と違い、工業用のものはその安全性および耐久性に関して厳しい要件を満たさなければならない。第一に、これらは難燃性でなければならず、その特性が一般に表面処理によって得られ、例えばDIN4102−B2としての規格で標準化されている。第二に、これらテキスタイルは疎水性、すなわち水を通してはならない。また、疎水性は多数の洗濯サイクル後も保持されなければならないが、それ自体明らかでない。第3に、防護服に用いるテキスタイルには、追加の基準、すなわち柔軟性が要求される。さらに、工業用テキスタイルの製造は、例えばOEKO TEX STANDARD 100としての環境保護の基準を順守しなければならない。後者は、一般に環境およびヒトの健康にとって危険であると考えられる膨大な数の化学薬品の使用をテキスタイルの製造および調整中に禁止する。
【0003】
従って、環境および/またはヒトの健康に悪影響を及ぼさない化学薬品を用いながら、疎水性、柔軟性および難燃特性をもたらす工業用テキスタイル処理用の組成物および方法を開発する必要がある。
【0004】
欧州特許出願公開第941761号は、オルガノポリシロキサンシェルおよびコア物質を有するマイクロカプセルの製造方法を開示し、この場合シェルを最大4個のシリコン原子を有するオルガノシランおよび/またはその縮合生成物の加水分解および重縮合により現場で形成する。国際公開第03/066209号は、テトラアルコキシシランのエマルジョン重合生成物のシェル内にカプセル化された日焼け止め剤のような親油性化粧品、化学、生物または医薬活性物質組成物を開示する。国際公開第2008/002637号は、油相およびカチオン界面活性剤の水溶液を混合して水中油型エマルジョンを形成し、テトラアルコキシシランを含む水反応性シリコン化合物をエマルジョンに添加してテトラアルコキシシランを油/水界面で縮合および重合することによりマイクロカプセルを製造する方法を開示する。カチオン界面活性剤の量は油相に対して0.1〜0.3質量%であり、マイクロカプセルのシェル厚は少なくとも18nmである。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、工業用テキスタイルに適用すると難燃特性を保持したまま柔軟性および疎水性のような利点をもたらすシリコーン含有マイクロカプセルを見出した。これら利点はテキスタイルの洗濯後も持続する。さらに、本組成物の柔軟性および疎水性の利点はテキスタイルの難燃特性と両立し得る。
【0006】
本発明は、シリコーンテキスタイル処理組成物の懸濁シリケートシェルのマイクロカプセルを含む組成物に関し、ここでシリケートシェルのマイクロカプセルが
I)シリコーンテキスタイル処理組成物を含有する油相およびカチオン界面活性剤の水溶液を混合して水中油型エマルジョンを形成し、
II)水反応性シリコン化合物を該水中油型エマルジョンに添加し、該水反応性シリコン化合物が該エマルジョンの油/水界面で重合して、シリコーン処理組成物を含有するコアおよびシリケートシェルを有するマイクロカプセルを形成することにより得られる。
【0007】
本発明は更に、テキスタイルにシリコーンテキスタイル処理組成物の懸濁シリケートシェルのマイクロカプセルを含む組成物を塗布することによるテキスタイルの処理方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、テキスタイル処理用の組成物および方法を提供する。該組成物は、シリコーンテキスタイル処理組成物コアを含有するシリケートシェルのマイクロカプセルの水性懸濁液である。シリコーンテキスタイル処理組成物の懸濁シリケートシェルのマイクロカプセルを含有する組成物は
I)シリコーンテキスタイル処理組成物を含有する油相およびカチオン界面活性剤の水溶液を混合して水中油型エマルジョンを形成し、
II)水反応性シリコン化合物を該水中油型エマルジョンに添加し、該水反応性シリコン化合物がエマルジョンの油/水界面で重合して、シリコーン処理組成物を含有するコアおよびシリケートシェルを有するマイクロカプセルを形成することにより得ることができる。
【0009】
ステップIは、シリコーンテキスタイル処理組成物を含有する油相およびカチオン界面活性剤の水溶液を混合して水中油型エマルジョンを形成することを含む。
【0010】
シリコーンテキスタイル処理組成物は、テキスタイル処理の業界で既知のあらゆるシリコーンまたはオルガノポリシロキサンを含有することができる。本明細書で用いる処理とは、テキスタイルの「手触り」もしくは物理的な表面特性を多少なりともコンディショニング、疎水化、柔軟化、または修飾することを含む。
【0011】
一般に、シリコーンテキスタイル処理組成物は、マイクロカプセルを調製する方法のステップIのように水中油型エマルジョンの形成を可能にするような疎水性液である。
【0012】
シリコーンテキスタイル処理組成物は、単一のオルガノポリシロキサンまたは種々のオルガノポリシロキサンの混合物を含有することができる。オルガノポリシロキサンは、(RSiO0.5)、(RSiO)、(RSiO1.5)または(SiO)シロキシ単位から独立して選択したシロキサン単位を含有するポリマーであり、式中のRは任意の一価有機基とすることができる。Rがオルガノポリシロキサンの(RSiO0.5)、(RSiO)、(RSiO1.5)または(SiO)シロキシ単位においてメチル基である場合、シロキシ単位はそれぞれ通常M、D、T、およびQ単位と称する。本発明のシリコーン処理組成物に有用なオルガノポリシロキサンは、(RSiO0.5)、(RSiO)、(RSiO1.5)または(SiO)シロキシ単位の任意の組み合わせを有することができる。オルガノポリシロキサンは、環状、線状または分岐構造を有することができる。オルガノポリシロキサンは揮発性で、低粘度流体から高粘度流体/ゴムまでの異なる粘度を有し、弾性か、または樹脂状とすることができる。固体または高粘度オルガノポリシロキサンがシリコーン処理組成物中に含まれるべき場合、ステップIの水中油型エマルジョンの調製用疎水性液(すなわち油相)をもたらすようにかかるオルガノポリシロキサンを低粘度液中で分散または可溶化することができる。
【0013】
シリコーン処理組成物は、シロキサン樹脂を含有することができる。本明細書で用いる「シロキサン樹脂」とは、上述したようなTまたはQ単位の少なくとも1個含有するあらゆるオルガノポリシロキサンを指す。一般に、シロキサン樹脂は少なくとも10個のTまたはQシロキシ単位を含有する。よって、本発明に有用なシロキサン樹脂は、式Mの任意のオルガノポリシロキサン(またはオルガノポリシロキサンの混合物)とすることができ、ここでx、y、z、wは対応する単位のモル%を表すが、ただしx+y+z+w=100%であり、z+w>10、あるいはz+w>30、あるいはまた50より大きい。シロキサン樹脂は、OH基またはSi原子に結合したOH基(例えばアルコキシ)に対し加水分解可能な基を含有することができる。一般に、0.5〜20(モル)%のSi原子がOHまたは加水分解性基を有するはずである。
【0014】
シロキサン樹脂は、シルセスキオキサン、DT、またはMQ樹脂として当業界で既知のものから選択することができる。
【0015】
一つの実施形態において、シロキサン樹脂はMQシロキサン樹脂である。MQシロキサン樹脂は、MおよびQシロキシ単位を含有する樹脂として既知である。これらは多くの文献に記載され、市販されている。本組成物に有用な代表的MQ樹脂は、(CHSiO1/2単位対SiO4/2単位の比が0.4:1〜1.2:1である基本的に(CHSiO1/2単位およびSiO4/2単位からなるものか、または該MQ樹脂と他の有機シリコン化合物との縮合物である。あるいはまた、MQ樹脂は、基本的に約0.75:1のモル比で(CHSiO1/2単位およびSiO単位からなるシロキサン樹脂コポリマーである。かかる物質の非限定的な例としては、ダウコーニングコーポレーション(ミシガン州ミッドランド)のDC5−7104がある。
【0016】
別の実施形態において、シロキサン樹脂はDT樹脂である。本組成物に有用な代表的DT樹脂は、基本的に(CHSiO2/2単位および(CH)SiO3/2単位からなるもので、この場合(CHSiO2/2単位対(CH)SiO3/2単位の比が0.5:2〜2:0.5である。本発明者らは、CH基の1〜20%を1個または2個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換すると、より良好な耐久性結果が得られることを見出した。有用なDT樹脂の非限定的な例としては、DC3037およびDC3074(ダウコーニングコーポレーション、ミシガン州ミッドランド)が挙げられる。
【0017】
シリコーン処理組成物は、ポリジアルキルシロキサン流体を含有することができる。ポリジアルキルシロキサン流体は、主に式[R’SiO]のDシロキシ単位を有する任意のオルガノポリシロキサンとすることができ、式中のR’は1〜30個の炭素原子を有するアルキル基を表す。繰り返しDシロキシ単位の数は重合度とみなされ、変わり得る。然るに、重合度はポリジアルキルシロキサンが25℃で液体であるようなものである。
【0018】
さらなる実施形態において、ポリジアルキルシロキサン流体は、25℃で10〜100,000mm/s、あるいは25℃で60〜60,000mm/s、あるいは25℃で100〜50,000mm/sの範囲の粘度を有するトリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン流体から選択される。代表的な市販のポリジメチルシロキサン流体としては、Dow Corning(登録商標)200流体(ダウコーニングコーポレーション、ミシガン州ミッドランド)が挙げられる。
【0019】
別の実施形態において、ポリジアルキルシロキサン流体は、25℃で10〜100,000mm/s、あるいは25℃で60〜60,000mm/s、あるいは25℃で100〜50,000mm/sの範囲の粘度を有するシラノール末端ポリジメチルシロキサン流体から選択される。
【0020】
別の実施形態では、シリコーン処理組成物がシロキサン樹脂およびポリジアルキルシロキサン流体の混合物を含有する。シロキサン樹脂およびポリジアルキルシロキサン流体については上記と同じである。ポリジアルキルシロキサン流体対シロキサン樹脂の質量比は変わり得るが、通常0.5/1〜4/1、あるいは1/1〜3/1である。
【0021】
シリコーン処理組成物をカチオン界面活性剤の水溶液と混合して水中油型エマルジョンを形成する。
【0022】
カチオン界面活性剤は、水酸化オクチルトリメチルアンモニウム、水酸化ドデシルトリメチルアンモニウム、水酸化へキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化オクチルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化デシルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化ジドデシルジメチルアンモニウム、水酸化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、水酸化タロートリメチルアンモニウムおよび水酸化ココトリメチルアンモニウムのような第四級水酸化アンモニウム並びにこれらの物質の対応する塩、脂肪族アミンおよび脂肪酸アミドならびにその誘導体、塩基性ピリジニウム化合物、ベンズイミダゾリンの第四級アンモニウム塩基およびポリプロパノールポリエタノールアミンであってもよいが、このカチオン界面活性剤のリストに限定されない。好適なカチオン界面活性剤は塩化セチルトリメチルアンモニウムである。
【0023】
カチオン界面活性剤は、コカミドプロピルベタイン、ヒドロキシ硫酸コカミドプロピル、ココベタイン、ココアミド酢酸ナトリウム、ココジメチルベタイン、N−ココ−3−アミノ酪酸およびイミダゾリニウムカルボキシル化合物のような両性界面活性剤から選択することができるが、この両性界面活性剤のリストに限定されない。
【0024】
上述したカチオン界面活性剤を、単独でまたは組み合わせて用いることができる。カチオンまたは両性界面活性剤を水に溶解し、生成した水溶液をステップI)の水中油型エマルジョンの水相または連続相中の成分として用いる。
【0025】
水中油型エマルジョン形成中のカチオン界面活性剤の濃度は、用いる油相濃度の0.1質量%〜0.3質量%とすべきである。
【0026】
水中油型エマルジョン形成中に補助界面活性剤、とくに非イオン性界面活性剤を添加することができる。適切な非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール長鎖(12〜14C)アルキルエーテルのようなポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタンエーテル、ポリオキシアルキレンアルコキシレートエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、エチレングリコールプロピレングリコールコポリマー、ポリビニルアルコールおよびアルキルポリサッカリド、例えば米国特許第5,035,832号に記載されるような構造R−O−(RO)−(G)を有する物質があり、式中のRは直鎖もしくは分岐アルキル基、直鎖もしくは分岐アルケニル基またはアルキルフェニル基を表し、Rはアルキレン基を表し、Gは還元糖を表し、mは0または正の整数を表し、nは正の整数を表すが、この非イオン性界面活性剤のリストに限定されない。
【0027】
シリコーンテキスタイル処理組成物を含有する油相およびカチオンまたは両性界面活性剤の水溶液を一緒に混合して水中油型エマルジョンを形成する。混合およびエマルジョン形成はエマルジョン分野で既知のあらゆる技術を用いて行うことができる。一般に、油相およびカチオンまたは両性界面活性剤の水溶液を単純な撹拌技術を用いて混合し、エマルジョンを形成する。次に、テトラアルコキシシランの添加前に、当業界で既知の任意の乳化装置により水中油型エマルジョンの粒径を小さくすることができる。本発明に有用な乳化装置としては、ホモジナイザー、ソノレーター、ローターステータータービン、コロイドミル、マイクロ流動化装置、ブレード、へリックスおよびこれらの組み合わせを挙げることができるが、この乳化装置のリストに限定されない。このさらなる処理ステップは、出発カチオン水中油型エマルジョンの粒径を0.2〜500マイクロメーターの範囲の値まで低減し、代表的な粒径は0.5マイクロメーター〜100マイクロメーターの範囲である。
【0028】
エマルジョン中の油相対水相の質量比は、一般に40:1〜1:50とすることができるが、水相の割合が高いことはとくにマイクロカプセルの懸濁液を形成する際に経済的に不利である。通常、油相対水相の質量比は2:1〜1:3である。油相組成物が著しく粘稠な場合、位相反転処理を用い、油相を界面活性剤および少量、例えば油相に対し2.5〜10質量%の水と混合し、せん断されると水中油型エマルジョンに反転する油中水型エマルジョンを形成することができる。次に、追加の水を添加して、エマルジョンを所要の濃度まで希釈することができる。
【0029】
ステップII)は、水反応性シリコン化合物を水中油型エマルジョンに添加することを含む。
【0030】
マイクロカプセルを形成するためコンディショニング剤のエマルジョンに添加する水反応性シリコン化合物は、重合してケイ素含有ネットワークポリマーを形成することができるあらゆるケイ素化合物とすることができる。かかるケイ素化合物は、一般に1分子当たり平均3個以上のケイ素結合加水分解性基を有する。加水分解性基は、珪素に結合したアルコキシ基であるのが好ましいが、アセトキシのような代替ヒドロキシ基を用いることができる。好適なアルコキシ基は、1〜4個の炭素原子を有するもので、とくにエトキシおよびメトキシ基である。
【0031】
水反応性シリコン化合物は、例えばテトラアルコキシシランまたはテトラアルコキシシランおよびアミノもしくは第四級アンモニウム置換アルキル基を有するアルコキシシランの混合物を含むことができる。テトラアルコキシシランは、例えばモノマー形態でまたは液状部分縮合物として用いることができるテトラエトキシシラン(TEOS)とすることができる。
【0032】
テトラアルコキシシランは、少なくとも1個、通常少なくとも2個、あるいは3個のSi−OH基またはケイ素に結合した加水分解性基を有する一つ以上の他の水反応性ケイ素化合物、例えばメチルトリメトキシシランのようなアルキルトリアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシランの液状縮合物、または(置換アルキル)トリアルコキシシランと併せて用いることができる。
【0033】
水反応性シリコン化合物はまた、アミノまたは第四級アンモニウム置換アルキル基を有するアルコキシシランを含むことができる。これらは、置換アルキル基を含有するトリアルコキシシラン、アミノアルキルトリアルコキシシランおよび四級化アミノアルキルトリアルコキシシランを含む。四級化アミノシランの1つの好適なタイプは式R’−Si−A−NR”を有し、式中の基R’は1個または2個の炭素原子を有するアルコキシ基、基R”は1〜18個の炭素原子を有するアルキル基、Aはnが1〜18の整数である式C2nの二価有機基である。
【0034】
本発明においてアルコキシシランとして有用なアミノアルキルトリアルコキシシランおよび四級化アミノアルキルトリアルコキシシランの代表的で非限定的な例としては、次式
(CHO)SiCHCHCHNH
(CHCHO)SiCHCHCHNH
(CHCHO)SiCHCHCHNHCHCHNH
(CHO)SiCHCHCH(CH(CH17CHCl
を有するものが挙げられる。
【0035】
水反応性シリコン化合物は、例えば10〜100質量%のテトラアルコキシシランおよび0〜90%のトリアルコキシシラン、例えば10〜95%のテトラアルコキシシランおよび5〜90%のトリアルコキシシラン、とくにアミノまたは第四級アンモニウム置換アルキル基を有するアルコキシシランを含むことができる。本発明者らは、四級化アミノアルキルトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランとの混合物が上述したようなシリコーンテキスタイル処理組成物のカプセル化にとくに効果的であることを見出した。
【0036】
テトラアルコキシシランと、トリアルコキシシラン、例えばアミノまたは第四級アンモニウム置換アルキル基を有するトリアルコキシシランとを通常水中油型エマルジョンと接触する前に混合するので、テトラアルコキシシランおよびトリアルコキシシランの混合物がエマルジョンに添加される。あるいはまた、テトラアルコキシシランおよびトリアルコキシシランを別々ではあるが同時に水中油型エマルジョンに添加するか、または連続して水中油型エマルジョンに添加することができる。これらを連続して添加する場合、アミノまたは第四級アンモニウム置換アルキル基を有するトリアルコキシシランの前にテトラアルコキシシランを添加するのが好ましい。
【0037】
水反応性シリコン化合物がエマルジョンの油/水界面で重合して、シリコーン処理組成物を含有するコアおよびシリケートシェルを有するマイクロカプセルを形成する。
【0038】
油/水界面でのテトラアルコキシシランの重合は、通常酸性、中性または塩基性pHで行うことができる縮合反応である。水反応性化合物がテトラアルコキシシランおよびトリアルコキシシラン、例えばアミノまたは第四級アンモニウム置換アルキル基を有するアルコキシシランの混合物である場合、両方のシランが一緒に共重合する。
【0039】
縮合反応は、通常大気温度および大気圧で行われるが、高温、例えば95℃までの温度、および高圧または低圧、例えば真空下で行って、縮合反応中に生成した揮発性アルコールを揮散させることができる。
【0040】
油相のカプセル化は、縮合反応用の任意の触媒なしに行うことができる。しかしながら、触媒の使用が好ましい場合がある。テトラアルコキシシランの重合を促進するのに既知の任意の触媒をステップIIに添加してマイクロカプセルのシェルを形成することができる。触媒は、油溶性有機金属化合物、例えば有機スズ化合物、とくにジメチルスズジ(ネオデカノエート)、ジブチルスズジラウレートもしくはジブチルスズジアセテートのようなジ有機スズジエステル、またはあるいはオクタン酸第一スズのようなカルボン酸スズ、またはテトラブチルチタネートのような有機チタニウム化合物とすることができる。有機スズ触媒は、例えば水反応性シリコン化合物に対して0.05〜2質量%で用いることができる。有機スズ触媒は、中性pHで効果的な触媒作用の利点を有する。触媒を乳化前に油相成分と混合することができ、その理由は乳化油相液滴の表面で水反応性シリコン化合物の縮合が促進されるからである。或いはまた、触媒をエマルジョンに水反応性シリコン化合物の添加前に、若しくはテトラアルコキシシランと同時に、またはテトラアルコキシシランの添加後に添加して、生成したケイ素ベースポリマーのシェルを硬化し、より不浸透性にすることができる。触媒は、用いる場合、未希釈のまま、若しくは炭化水素、アルコール又はケトンのような有機溶剤の溶液として、またはエマルジョンもしくは懸濁液のような多相系として添加することができる。
【0041】
本発明の方法は、上述したようなシリコーンテキスタイル処理組成物の懸濁シリケートシェルのマイクロカプセルを含む組成物をテキスタイルに塗布することを備える。塗布量は、処理組成物の「手触り改善」に効果的な量であり、繊維および/またはテキスタイルに任意の便利な方法により塗布される。本発明のための手触りとは、織物の柔軟性および滑らかさを意味する。例えば、処理組成物をパディング、浸漬、噴霧またはエグゾースティングにより塗布することができる。処理組成物を繊維および/または織物に塗布した後、これを熱により乾燥することができる。
【0042】
テキスタイル処理組成物を繊維および/またはテキスタイルに、繊維またはテキスタイルの製造中、若しくはその後本発明の好適な方法であるパディングにより塗布することができる。パディング浴におけるシリコーン処理組成物の好適な濃度は、5〜200g/L、より好適には20〜150g/L、さらにより好適には40〜120g/Lの範囲内である。塗布後、担体(もしあれば)を処理組成物から、例えば該組成物を大気温度または高温で乾燥することにより除去することができる。
【0043】
本処理組成物とともに助剤を添加して、該処理組成物のテキスタイル表面への堆積および/または付着を向上させることができる。これら助剤は、オルガノポリシロキサンの縮合反応を行うのに既知のあらゆる触媒、例えば酸または塩基から選択することができる。これに関して、アミン化合物を触媒として添加することができる。
【0044】
助剤は、「結合剤」とみなされるもの、とくにオルガノシラン結合剤から選択することができる。これらは有機官能性アルコキシシロキサンであってもよい。本発明において助剤として有用である代表的な有機官能性アルコキシシランとしては、DC Z6020、Z6030、Z6040、9−6346(ダウコーニングコーポレーション、ミシガン州ミッドランド)が挙げられる。
【0045】
本処理組成物とともに追加の助剤を添加して、処理したテキスタイルまたは織物へのさらなる向上をもたらすことができる。これら追加の助剤は、テキスタイルに撥水性または撥油性をもたらすための当業界で既知の任意の組成物であってもよい。例となる処理剤としては、各種フッ化炭素油のようなフッ化炭素系化合物、またはフッ化炭素系ポリマーが挙げられる。
【0046】
本開示組成物で処理することができる繊維およびテキスタイルとしては、綿、絹、麻および羊毛のような天然繊維、レーヨンおよびアセテートのような再生繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンおよびポリプロピレンのような合成繊維、これらの組み合わせ、および混紡が挙げられる。繊維の形態としては、糸、フィラメント、麻くず、糸、織布、ニット材料、不織布材料、紙、カーペットおよび革を挙げることができる。
【0047】
本発明の組成物および方法は、工業用難燃性テキスタイルを処理するのにとくに有用である。こうした難燃剤の代表的な非限定的例としては、Piruvatex(登録商標)またはTrevira(登録商標)CSが挙げられる。後者は、本質的に難燃性のポリエステルである。難燃特性は、DIN4102−B2のような工業標準化規格に従って評価することができる。
【実施例】
【0048】
下記の実施例は本発明を当業者に例示することを目的とするもので、特許請求の範囲に記載した本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。すべての測定および実験は、とくに指示のない限り、23℃で行った。
【実施例1】
【0049】
31gのDC593流体(25℃で100mm/sの粘度を有するポリジメチルシロキサン流体(PDMS)とMQ樹脂との67/33の質量比での混合物)を、29%の塩化セトリモニウムの溶液0.4g、ラウリルアルコールエトキシレート(3EQ単位)0.2gおよび2.5MのHCl0.2gを含有する水59g中で乳化した。生成したエマルジョンは、せん断の印加レベルに応じて4〜10ミクロンの範囲内のメジアン粒径D(v,0.5)を有するものとして特徴づけられた。次いで、TEOSの混合物9.2gを適度な撹拌下添加し、18時間重合した。樹脂、すなわちPDMS混合物のコアと、重合Siネットワークからなるシェルとを含有するカプセルを得た。粒径測定は英国のMalvern Instruments Ltd.の「Mastersizer 2000」を用いるレーザー回折法により行った。(粒径測定についてのさらなる情報は、“Basic Principles of Particle Size Analytics”,Dr. Alan Rawle, Malvern Instruments Limited, WR14 1XZ,英国および“Manual of Malvern Particle Size Analyser”に記載されている。)とくに、取扱説明書第MNA0096号、第1.0版、1994年11月を参照する。本発明で示されたすべての粒径はD(v,0.5)による平均粒径であり、Malvern Mastersizerで測定される。
【実施例2】
【0050】
実施例1の組成物を種々のテキスタイル(Piruvatex(登録商標)またはTrevira(登録商標)CSで処理した綿)に塗布した。該テキスタイルを標準的なパディング機を用いて処理した。実施例1の製剤を50g/Lで水中に希釈し、パディング機に入れた。パディング後、織物を120℃で5分間乾燥し、試験前に室温および制御された湿度で24時間放置した。難燃特性をDIN4102−B2に従って試験し、以下の表1は綿織物についての結果を示す。
【0051】
【表1】

【実施例3】
【0052】
試料1〜17を実施例2に記載したように綿およびポリエステル織物に塗布した。試料1〜3は参照のための対照実験である。試料4〜16は比較のために用いた代表的なシリコーン物質である。これらは本発明の範囲外である。試料17は実施例1に記載した物質である。
【0053】
処理したテキスタイルを乾燥後、
1.柔軟性−テキスタイル表面の手触りの評価
2.DIN4102−B2に従う難燃性
3.物質の環境への優しさ、すなわち無溶剤および/または取り扱いやすさ
について評価した。結果を表2にまとめる。
【0054】
【表2】

【実施例4】
【0055】
ここにM1〜M19と記載したさまざまな組成物を実施例1に記載したプロセスに従って調製した。すべての組成物において、DC593流体またはシリコーン樹脂およびポリシロキサンもしくはポリシロキサン流体の混合物を用いた。組成物を表3に記載する。TEOSおよび3−(トリメトキシシリル)−プロピル−N,N−ジメチル−オクタデシルアンモニウムクロリド(メタノール中72質量%、略称N1)の混合物(異なる質量比)を用いてシリケートシェルのマイクロカプセルを調製した。シランを適度な撹拌下で添加し、18時間重合させた。物質M5およびM19は非カプセル化エマルジョン(すなわち、TEOSもN1も添加されない)である。従って、M5およびM19は本発明の範囲外である。
【0056】
かかる組成物を実施例2に記載した手順に従ってポリエステル綿およびTervira(ポリエステル)難燃性織物に塗布した。次に、織物を米国テキスタイル化学技術・染色技術協会(AATCC22)により記述された標準的な噴霧試験に従って疎水性について試験した。難燃特性は実施例2に記載したように評価した。以下の表記を用いて柔軟性を表わす。
「○」=いくらか
「+」=いくらか、許容範囲
「++」=良好
「+++」=極めて良好
結果を表3にまとめる。
【0057】
【表3−1】

【表3−2】

【実施例5】
【0058】
種々のテキスタイルを、実施例2に記載した方法を用いて、実施例3のM16およびM17で処理した。一部の例では、固着増強剤をパディング浴に添加した。処理の耐久性は、多数の洗濯後に疎水性の保持によって評価した。後者は、フロントローディングの欧州式洗濯機で、市販の洗剤および特定のタイプのテキスタイルについて標準的な洗濯プログラムを用いて行った。結果を表4にまとめる。
【0059】
【表4】

【実施例6】
【0060】
(他のテキスタイル処理組成物との親和性)
物質M17を、単独でまたは市販のフルオロカーボンPYMAGARD USD(PYMAG,S.A.、スペイン、バルセロナ)と組み合わせて、パディング機を用いて綿およびポリエステル綿織物に塗布した。M17およびフルオロカーボンを質量比1:2で混合した。M17とフルオロカーボンとの極めて良好な親和性が見られた。乾燥織物を疎水性および柔軟性について上記の方法で試験した。撥油性をAATCC試験法118−2002に従って測定した。この方法は、標準的な試験液(選択された一連の炭化水素)の滴を異なる表面張力で織物表面上に置き、ウエッティング、ウィッキングおよび接触角を観察することからなる。次に、テキスタイルを1〜6でランク付けしたが、より大きい数は織物がより大きい撥油性を有することを示す。結果を表5に示す。物質FCはフルオロカーボン単独であり、織物にまったく柔軟性をもたらさなかった。
【0061】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンテキスタイル処理組成物の懸濁シリケートシェルのマイクロカプセルを含む組成物であって、該シリケートシェルマイクロカプセルがI)シリコーンテキスタイル処理組成物を含有する油相およびカチオン界面活性剤の水溶液を混合して水中油型エマルジョンを形成し、II)水反応性シリコン化合物を該水中油型エマルジョンに添加して、該水反応性シリコン化合物を該エマルジョンの油/水界面で重合し、シリコーンテキスタイル処理組成物を含有するコアおよびシリケートシェルを有するマイクロカプセルを形成することにより得られることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記シリコーン処理組成物がシラノール末端ポリジアルキルシロキサン流体を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記シリコーン処理組成物がa)シロキサン樹脂およびb)ポリジアルキルシロキサン流体を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリジアルキルシロキサン流体対シロキサン樹脂の質量比が0.5/1〜4/1である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記シロキサン樹脂がDT樹脂である請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記シロキサン樹脂がMQ樹脂である請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記水反応性シリコン化合物がテトラエトキシシランを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
フルオロカーボンをさらに含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物をテキスタイルに塗布することを特徴とするテキスタイルの処理方法。
【請求項10】
前記テキスタイルにオルガノポリシロキサン縮合触媒または結合剤から選択された助剤を塗布することをさらに備える請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記テキスタイルにフルオロカーボンから選択された助剤を塗布することをさらに備える請求項9に記載の方法。
【請求項12】
テキスタイルの表面特性をコンディショニング、疎水化または柔軟化する際のシリコーンテキスタイル処理組成物の使用であって、該シリコーンテキスタイル処理組成物を該シリコーンテキスタイル処理組成物を含有するコアおよびシリケートシェルを有するシリケートシェルのマイクロカプセルとして用いる琴を特徴とする使用。

【公表番号】特表2012−505976(P2012−505976A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532244(P2011−532244)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/060817
【国際公開番号】WO2010/045440
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】