説明

テトラアルキルアンモニウム塩水溶液の製造方法

【課題】TAA水酸化物含有現像廃液を陽イオン交換樹脂が充填された充填塔に通液して、TAAイオンを該樹脂に吸着させ、次いで樹脂に酸を接触させて、樹脂に吸着されたTAAイオンを脱離させて、高濃度のTAA塩水溶液を得る際に、該現像廃液中のTAAイオンを漏洩させることなく、効率的に、高濃度のTAA塩水溶液を製造する方法を提供する。
【解決手段】複数の充填塔からなる充填塔ラインを形成し、該充填塔ラインの塔数nを、所定の数以上とし、最上流の充填塔ラインに目標吸着率までTAAイオンを吸着させたとしても、最下流の充填塔ラインからTAAイオンが漏洩しない構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽イオン交換樹脂を用いたテトラアルキルアンモニウム塩水溶液の新規な製造方法に関する。詳しくは、テトラアルキルアンモニウム水酸化物(以下、テトラアルキルアンモニウムをTAAと略称する)を含有する現像廃液を、陽イオン交換樹脂が充填された充填塔に通液して、TAAイオンを陽イオン交換樹脂に吸着させ、次いで陽イオン交換樹脂に酸を接触させて、陽イオン交換樹脂に吸着されたTAAイオンを溶離させて、高濃度のTAA塩水溶液を得る際に、陽イオン交換樹脂への吸着時にTAAイオンが充填塔から漏洩するのを防止し、充填塔中の陽イオン交換樹脂に効率的にTAAイオンを吸着させるTAA塩水溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、及び液晶製造工程において、ウエハー、ガラス等の基板上にパターンを形成する場合、基板表面に形成した金属層にノボラック樹脂、ポリスチレン樹脂等からなる、ネガ型或いはポジ型のレジストを塗布し、これに、該パターン形成用のフォトマスクを介して露光し、未硬化部分或いは硬化部分に対して、TAA水酸化物を主成分とする現像液を使用して現像後、エッチングを行って上記金属層にパターンを形成する現像工程が行われており、該工程において、TAA水酸化物を含有する現像工程廃液が排出される。
【0003】
また、現像液による現像後には、基板上に残存する現像液を除去する為に超純水による洗浄が行われており、かかる洗浄工程後には、TAA水酸化物を含有する洗浄工程廃液が排出される。これら現像廃液及び洗浄工程廃液は、通常、それぞれ混合された後、TAA水酸化物含有現像廃液として排出されている。近年、半導体、及び液晶の生産量が増大するにつれて、上記現像液の消費量が増加しており、TAA水酸化物含有現像廃液の排出量も増加している。最近では、このTAA水酸化物含有現像廃液よりTAA水酸化物を回収、精製して再利用するTAA水酸化物の回収方法が提案されている。
【0004】
上記現像工程廃液と洗浄工程廃液とを混合して排出される、TAA水酸化物含有現像廃液中のTAA水酸化物濃度は、通常100〜10,000ppm程度と低濃度である。
【0005】
従って、TAA水酸化物含有現像廃液から、効率良くTAA水酸化物を回収、精製して高濃度のTAA水酸化物含有溶液を得るためには、上記廃液中のTAA水酸化物濃度を高める濃縮手段が不可欠である。
【0006】
上記濃縮手段として、例えば、現像廃液中のTAA水酸化物を陽イオン交換樹脂等の陽イオン交換体に接触させて、TAAイオンを陽イオン交換体に吸着させ、次いで酸水溶液を陽イオン交換体に接触させて、TAAイオンを該樹脂より溶離させてTAA塩水溶液を得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
或いは、TAA水酸化物を含むフォトレジスト廃液を、イオン交換樹脂を充填した複数の吸着槽に直列に通流させてTAAイオンを該樹脂に吸着させた後、前記複数の吸着槽に再生液を並列に通流して前記TAAイオンを前記イオン交換樹脂から溶離する方法も提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
上記特許文献1及び2に記載の方法は、水への溶解度がTAA水酸化物より、TAA塩の方が高いことを利用するものである。すなわち、酸によるTAAイオンの溶離が、陽イオン交換樹脂に接触させた上記現像廃液よりも少量で可能であるため、結果として現像廃液よりも高濃度のTAAイオンを含有するTAA塩水溶液を得ることが可能である。
【0009】
そして、得られたTAA塩水溶液は、電気分解等によりTAA水酸化物の水溶液に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−142649号公報
【特許文献2】特開2004−066102公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、本発明者らが、上記特許文献1に記載の方法の追試を行ったところ、充填塔に充填された陽イオン交換樹脂の総交換容量に対し、十分なTAAイオンの吸着がなされず、TAA水酸化物含有現像廃液からのTAAイオンの回収を効率的に行うという点で課題があることが判明した。
【0012】
すなわち、陽イオン交換樹脂を充填した充填塔にTAA水酸化物含有現像廃液を通液し、該充填塔より排出される排出液中のTAAイオンの経時変化を追跡したところ、充填した陽イオン交換樹脂の総交換容量のおよそ半分がTAAイオンに交換された時点から、排出液中にTAAイオンが検出され始め、排出液中へのTAAイオンの漏洩が生じてしまう。
【0013】
さらに、TAA水酸化物含有現像廃液の通液を継続すると、通液した現像廃液中のTAAイオンの一部は充填塔中の陽イオン交換樹脂に吸着されるが、排出液中に漏洩するTAAイオンの量も増加し、陽イオン交換樹脂の交換率(陽イオン交換樹脂の総交換容量に対する、吸着したTAAイオンの量)が増加するにつれて、通液した現像廃液中のTAAイオンの吸着率(すなわち、通液した現像廃液中の総TAAイオン量に対する、吸着されたTAAイオン量の割合)が大きく低下することが判明した。
【0014】
以上の追試からも明らかなように、充填塔から排出される排出液中にTAAイオンが漏洩した時点で、TAAイオン含有現像廃液の供給を停止し、酸水溶液を通液することで、該現像廃液中のTAAイオンをロスすることなく、TAA塩水溶液の回収を行うことが可能であるが、1回の吸着処理で回収できるTAA塩水溶液の量が少なくなる。
【0015】
或いは、TAAイオンの吸着量が、充填した陽イオン交換樹脂の総交換容量の80〜90%程度となるまでTAA水酸化物含有現像廃液の通液を継続した場合には、1回の吸着処理で回収できるTAA塩水溶液の量は多くなるが、同時に排出液中に漏洩するTAAイオンの量も増加し、通液したTAA水酸化物含有現像廃液からのTAAイオンの回収率は大きく低下してしまう。
【0016】
このように、上記特許文献1に記載の方法により、通液したTAAイオン含有現像廃液中のTAAイオン濃度よりも高濃度のTAA塩水溶液を得ることは可能であるが、TAAイオン含有現像廃液からのTAAイオンの回収を効率的に行うという点で課題があることが判明した。
【0017】
なお、特許文献2に記載の方法は、TAA水酸化物含有現像廃液を、複数の吸着槽に直列に通流させるものの、吸着されたTAAイオンの溶離は、複数の吸着槽に対し同時に行っている。従って、該現像廃液を最初に接触させる吸着槽中の陽イオン交換樹脂の交換率は向上するものの、第2以下の吸着槽中の陽イオン交換樹脂の交換率は、依然として低く、TAA水酸化物含有現像廃液からのTAAイオンの回収を効率的に行うという点でなお課題があった。
【0018】
そこで、本発明は、TAA水酸化物含有現像廃液を陽イオン交換樹脂が充填された充填塔に通液して、TAAイオンを該樹脂に吸着させ、次いで樹脂に酸を接触させて、樹脂に吸着されたTAAイオンを溶離させて、高濃度のTAA塩水溶液を得る際に、該現像廃液中のTAAイオンを漏洩させることなく、効率的に、高濃度のTAA塩水溶液を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った。まず、本発明者等は、TAAイオンを吸着させる陽イオン交換樹脂を充填した充填塔が目標交換率(陽イオン交換樹脂の総交換容量に対する、吸着したTAAイオン量の割合)となるまで、該充填塔にTAA水酸化物含有現像廃液を通液した。その際に、該充填塔からTAAイオンの漏洩が生じるまでに該充填塔に吸着されるTAAイオン量(「貫流交換容量」)、および、上記充填塔が上記目標交換率となるまでに、「充填塔から漏洩するTAAイオンの漏洩量」を確認した。
【0020】
次いで、上記陽イオン交換樹脂が充填された充填塔と同一または実質的に同一の充填塔を複数準備し、これらを直列に連結して、充填塔ラインを形成し、現像廃液を通液する側の最上流の充填塔が目標交換率となるまで吸着処理を行ったとしても、最下流の充填塔よりTAAイオンが漏洩しないような、充填塔の本数について検討した。
【0021】
その結果、上記した、「充填塔から漏洩するTAAイオンの漏洩量」/「貫流交換容量」+1本(但し、小数点以下は切り上げ)からなる充填塔ラインによって、最下流の充填塔よりTAAイオンを漏洩させないで、最上流の充填塔を目標交換率となるまで吸着処理ができることを見出した。
【0022】
さらに、前記目標交換率を充填塔の貫流交換容量を超える程度に設定して、該目標交換率となった最上流の充填塔を、充填塔ラインから切り離し、切り離された充填塔に、酸水溶液を通液して、TAAイオンの溶離を行った場合、一つの充填塔を用いて、該充填塔に現像廃液を通液させ、TAAイオンの漏洩が生じた時点で現像廃液の通液を停止(貫流交換容量で停止)して、TAAイオンの溶離を行った場合と比較して、1本の充填塔当たりのTAA塩水溶液の製造量が大きく向上し、TAA塩水溶液が効率的に得られるという知見を得た。
【0023】
そして、TAAイオンを溶離した後の充填塔は、上記最上流の充填塔の下流側に直接連結されていた充填塔を最上流とする充填塔ライン(残存充填塔ライン)の最下流に接続させて新たな充填塔ラインを形成する。該新たな充填塔ラインを用いて、TAAイオンの吸着工程、及び吸着されたTAAイオンの溶離工程を繰り返すことで、前記本数の充填塔で効率良くTAA塩水溶液を製造することが可能であることを見出し、以下の本発明を完成させた。
【0024】
すなわち本発明は、陽イオン交換樹脂が充填された同一または実質的に同一の複数の充填塔が直列に連結されてなる初期充填塔ラインに、TAA水酸化物を含有してなる原料水溶液を通液して、前記初期充填塔ラインの最上流の第一充填塔が貫流交換容量を超える目標交換率となるまで、前記陽イオン交換樹脂にTAAイオンを吸着させる吸着工程(S1)と、
前記吸着工程によって目標交換率となるまでTAAイオンを吸着した前記第一充填塔を前記初期充填塔ラインから切り離し、該切り離した第一充填塔に酸水溶液を通液することによって吸着したTAAイオンをTAA塩の水溶液として溶離すると共に前記第一充填塔に充填された陽イオン交換樹脂を再生する溶離・再生工程(S2)とを含んでなるTAA塩水溶液の製造方法であって、
前記初期充填塔ラインにおいて直列に連結させる充填塔の数を、下記式(1)
n={1+(第一充填塔が目標交換率となるまでのTAAイオン漏洩量(mol)))/(第一充填塔の貫流交換容量(mol))}(但し、小数点以下は切り上げ)・・・(1)
から求められる整数n以上として前記吸着工程における前記初期充填塔ラインの最下流の充填塔のTAAイオン吸着量を貫流交換容量未満とし、
前記溶離・再生工程(S2)後に再生された第一充填塔を、前記第一充填塔が切り離されて残った残存充填塔ラインの最下流に接続し、前記吸着工程開始時において前期第一充填塔の下流側に直接接続された第二充填塔を最上流の充填塔とする新たな充填塔ラインを形成し、該新たな充填塔ラインを用いて前記吸着工程(S3)および前記溶離・再生工程(S4)を繰り返す、TAA塩水溶液の製造方法である。
【0025】
「同一または実質的に同一の複数の充填塔」とは、TAAイオンの総交換容量が同一、または、実質的に同一(総交換容量が±10%、好ましくは±5%の差異)の充填塔をいう。なお、本発明の充填塔ラインを形成する複数の充填塔は、好ましくは、それぞれ同一の陽イオン交換樹脂が充填され、L/Dが同一である充填塔であり、より好ましくは、すべてが同一の充填塔(陽イオン交換樹脂の種類、充填量、充填するカラムが同一)である。
【0026】
上記発明においては、初期充填塔ラインの最上流の充填塔を第一充填塔、その下流側に直接接続された充填塔を第二充填塔と名づけているが、後の吸着工程(S3)での新たな充填塔ラインでは最上流の充填塔は第二充填塔となっており、さらに後の吸着工程(S4)での新たな充填塔ラインでは最上流の充填塔は、第二充填塔のさらに下流側の充填塔となっている。つまり、本発明では、充填塔ラインの最上流の充填塔が目標交換率となったら、これを切り離し、直近の下流側の充填塔を最上流の充填塔とする残存充填塔ラインを形成し、切り離した充填塔を再生後、上記残存充填塔ラインの最下流側に設置し、新たな充填塔ラインを形成し吸着工程を行う、という処理を繰り返す方法である。
【0027】
充填塔の「交換率」とは、充填塔に充填された陽イオン交換樹脂の総交換容量(mol)に対する、該充填塔に吸着されたTAAイオン量(mol)の割合をいい、「目標交換率」とは、その目標値をいう。
【0028】
充填塔の「貫流交換容量」とは、該充填塔のみに原料水溶液を供給し、該供給を開始してから、該充填塔からTAAイオンの漏洩が始まるまでに、該充填塔中の陽イオン交換樹脂に吸着されたTAAイオン量(mol)である。
【0029】
充填塔の目標交換率が貫流交換容量を超えるとは、充填塔が貫流交換容量となった際における該充填塔の交換率よりも、目標交換率を高く設定するということである。
【0030】
また、上記TAA塩水溶液の製造方法において、前記初期充填塔ラインを構成する充填塔の数を前記整数n+1とし、前記最上流の第一充填塔の溶離・再生工程を行っている間に、該第一充填塔を切り離した残存充填塔ラインに原料溶液を通液し、該残存充填塔ラインの最下流の充填塔におけるテトラアルキルアンモニウムイオン吸着量が貫流交換容量に達する前に、再生した第一充填塔を該残存充填塔ラインの最下流に接続することで、所定の目標交換率まで吸着された充填塔からのTAAイオンの溶離と、TAA水酸化物現像廃液の充填塔ラインへの供給を同時に行うことが可能であり、TAA水酸化物含有現像廃液からのTAA塩水溶液の製造を連続的に行うことが可能であり、特に好ましい。
【0031】
また、上記TAA塩水溶液の製造方法において、前記吸着工程における目標交換率は、70〜90%であることが好ましい。該目標交換率が70%よりも低い場合は、溶離工程で回収されるTAA塩溶液の濃度が薄くなるため好ましくなく、90%を超える場合には、目標交換率となるまでに必要な原料水溶液の供給量が増大し、処理コストが上昇してしまう虞があり、また、初期充填塔ラインを形成する充填塔の本数が増大し、イニシャルコストが上昇してしまう虞がある。
【0032】
また、上記TAA塩水溶液の製造方法において、前記溶離・再生工程を、通液した酸水溶液の酸が排出するまでの第一溶離・再生工程、および、該酸が排出された以降の第二溶離・再生工程からなるものとし、該第一溶離・再生工程において得られる水溶液を目的物であるTAA塩水溶液とすることが好ましい。得られたTAA塩水溶液に、酸が含まれていると、該酸を中和する工程が必要となり、処理効率が悪くなる。よって、第一溶離・再生工程により得られた酸を含まないTAA塩水溶液を目的物とすることにより、より効率的にTAA塩水溶液を製造することができる。
【0033】
また、上記TAA塩水溶液の製造方法において、前記溶離再生工程における、第一溶離・再生工程から第二溶離・再生工程への切り替えを、排出液の導電率をモニターすることにより行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、充填塔の貫流交換容量と、該充填塔から漏洩するTAAイオンの漏洩量を基にして決定される本数の充填塔を用いることで、充填塔ラインの最下流の充填塔から排出される排出液中にTAAイオンが漏洩することなく、充填塔へのTAAイオンの吸着を高い交換率で行うことが可能である。これにより、充填塔1本当たりのTAA塩水溶液の製造量が向上し、効率的に高濃度のTAA塩水溶液を製造することができる。
【0035】
また、本発明のTAA塩水溶液の製造方法において、上記本数+1本の充填塔を用いることで、所定の目標交換率まで吸着された充填塔からのTAAイオンの溶離と、TAA水酸化物現像廃液の充填塔ラインへの供給を並行して行うことが可能であり、TAA塩水溶液を連続して製造することができ、さらに効率良くTAA塩水溶液を製造することが可能である。
【0036】
さらに、本発明の製造方法では、直列に接続された全ての充填塔に対し、同じ目標交換率までTAAイオンを吸着させ、その溶離を行うことから、それぞれの充填塔中の陽イオン交換樹脂は均等に使用される。よって、充填塔中の陽イオン交換樹脂の使用期間の長期化が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のTAA塩水溶液の製造方法の概要を示すブロック図である。
【図2】本発明のTAA塩水溶液の製造方法における、好ましい態様を示すフロー図である。
【図3】本発明のTAA塩水溶液の製造方法における、別の好ましい態様を示すフロー図である。
【図4】排出液中のTAA塩化物(TMAC1)および塩化水素(HCl)の濃度、ならびに、排出液の導電率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<原料水溶液>
本発明のTAA塩水溶液の製造方法においては、TAA水酸化物を含有してなる原料水溶液(以下、単に「原料水溶液」と云う場合がある。)を充填塔ラインに通液して、該充填塔ライン中の陽イオン交換樹脂にTAAイオンを吸着させる。
【0039】
上記原料水溶液中のTAA水酸化物とは、TAAイオンの対イオンが水酸化物イオンである化合物であり、TAA水酸化物は、原料水溶液中で解離してTAAイオンと水酸化物イオンの状態で存在している。上記TAA水酸化物としては、工業的に入手可能なものであれば特に制限されず種々のTAA水酸化物を用いることが可能である。該TAA水酸化物としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等を挙げることができる。上記水酸化TAAの中でも、半導体製造工程における現像液として広く用いられている点で水酸化テトラメチルアンモニウムが好適に使用できる。
【0040】
また、原料水溶液は、TAA水酸化物の水溶液からなるものであれば特に制限されない。原料水溶液として具体的には、公知の製造方法によって得られた水酸化TAA水溶液、及び、半導体デバイス(LSI、VLSI等)、プリント基板や液晶ディスプレイ(LCD)等の電子部品の製造工程における現像工程や洗浄工程より排出される廃液(以下、それぞれを現像工程廃液、洗浄工程廃液と言う場合がある。)等が挙げられる。現像工程廃液や洗浄工程廃液は通常混合されて現像廃液として排出される(以下、現像工程廃液と洗浄工程廃液との混合廃液を「現像廃液」と言う場合がある。)。これらの原料水溶液の中でも、現像廃液は、本発明のTAA塩の製造方法により、該廃液中のTAAイオンを回収し、再利用することが可能であるという点から好適である。
【0041】
上記原料水溶液中のTAA水酸化物の濃度については、特に制限なく、種々のTAA水酸化物濃度の原料水溶液を使用することが可能である。例えば、前記現像工程にて排出される現像工程廃液中のTAA水酸化物の濃度は、通常1.0〜5.0質量%程度であるが、洗浄工程において現像液の5〜100倍の量の純水が使用されるため、多量の洗浄工程廃液が発生し、これが現像工程廃液と混合されるため、半導体、及び液晶製造工程より排出される現像廃液中のTAA水酸化物濃度は、通常100〜10,000ppm程度である。中でも、液晶ディスプレイ製造工程から排出される現像廃液は、TAA水酸化物濃度が100〜5000ppmとなる場合が多く、本発明の製造方法はこのようなTAA水酸化物濃度の低い現像廃液からTAA塩水溶液を製造するのに特に好適である。
【0042】
上記現像廃液には、半導体・液晶製造工程における、金属層や配管材料等から溶出する微量の金属成分が含まれている。上記金属成分の濃度については、例えば、半導体製造工程において排出されるTAA水酸化物含有現像廃液では0.1〜50ppb、液晶製造工程から排出されるTAA水酸化物含有現像廃液では1〜100ppb程度である。
【0043】
また、前記のとおり、上記現像廃液には、ノボラック樹脂、ポリスチレン樹脂等のフォトレジスト由来の有機物、および微量の有機溶媒、界面活性剤等の有機物(以下、これらの有機物を、まとめて「有機物」と総称する場合がある。)が溶解している。TAA水酸化物濃度が1質量%以下の現像廃液中に溶解している有機物の濃度は、通常COD換算で数〜数百ppm程度である。
【0044】
<陽イオン交換樹脂>
本発明のTAA塩水溶液の製造方法において、使用する陽イオン交換樹脂は、原料水溶液中に存在するTAAイオンを吸着できるものであれば特に制限されず、工業的に入手可能な陽イオン交換樹脂を用いることが可能である。かかる陽イオン交換樹脂としては、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン共重合物、アクリル酸−ジビニルベンゼン共重合物、メタアクリル酸−ジビニルベンゼン共重合物等の基体にスルホン酸基等の強酸基を導入した強酸性陽イオン交換樹脂、及び上記の基体にカルボキシル基、フェノール性ヒドロキシル基等の弱酸基を導入した弱酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。これらの陽イオン交換樹脂の中でも、吸着されたTAAイオンを容易に脱着できる点から弱酸性陽イオン交換樹脂を使用することが好ましい。
【0045】
強酸性陽イオン交換樹脂の具体例としては、ロームアンドハース社製のアンバーライトIR120B、アンバーライトIR124、三菱化学社製のダイヤイオンSK1B、ダイヤイオンPK228、住化ケムテックス社製デュオライトC255LFH、ランクセス社レバチットモノプラスS100、ピュロライト社ピュロライトC160等を挙げることができる。また、弱酸性陽イオン交換樹脂の具体例としては、ロームアンドハース社製のアンバーライトIRC76、三菱化学社製のダイヤイオンWK40L、住化ケムテックス社製デュオライトC433LF、デュオライトC476、ランクセス社レバチットCNP80WS、ピュロライト社ピュロライトC104等を挙げることができる。
【0046】
また、上記陽イオン交換樹脂の構造についても、特に制限されず、ゲル形、ポーラス形、ハイポーラス形等のいずれの構造の陽イオン交換樹脂も好適に使用することができる。特に、膨潤収縮強度に優れる点でハイポーラス形が好適である。
【0047】
上記陽イオン交換樹脂は、通常、対イオンが、水素イオン(H型)かナトリウムイオン(Na型)で市販されているが、Na型の陽イオン交換樹脂を用いた場合には、TAAイオンとのイオン交換により、Naイオンが排出され、TAAイオンを含む排出液中のNaイオンが増加する傾向がある。従って、陽イオン交換樹脂としては、H型を用いることが好ましい。なお、Na型で市販されている陽イオン交換樹脂を使用する場合には、使用に際して予め陽イオン交換樹脂に塩酸や硫酸等の酸を通液し、対イオンをH型に変換した後使用すればよい。
【0048】
また、上記H型の陽イオン交換樹脂、及びNa型を酸によりH型とした陽イオン交換樹脂は、TAAイオンを含有する現像廃液を接触させる前に、超純水で十分洗浄しておくことが好ましい。
【0049】
上記処理廃液中へのNaイオンの混入を防止するという観点から、超純水で洗浄する際に、上記陽イオン交換樹脂から排出される水中のナトリウム溶出量が100ppb以下であることが好ましい。水中のナトリウム溶出量が、100ppbを超える場合には、上記酸の通液によるH型への置換、及び超純水による洗浄を、水中のナトリウム溶出量が、100ppb以下となるまで行えば良い。
【0050】
<充填塔へのTAAイオンの吸着工程>
本発明のTAA塩水溶液の製造方法において、上記陽イオン交換樹脂は、充填塔に充填されて使用される。充填塔に充填されたH型に変換した陽イオン交換樹脂の高さ(L)と樹脂塔の直径(D)との比(L/D)、及び、原料水溶液の通液速度は、陽イオン交換樹脂の交換基の交換容量や、原料水溶液中のTAA水酸化物濃度、或いは、TAA塩水溶液の製造量等を勘案して適宜決定すればよい。例えば、原料水溶液のTAA水酸化物濃度が0.001〜1質量%である現像廃液であれば、充填塔に充填された陽イオン交換樹脂の高さ(L)と樹脂塔の直径(D)との比(L/D)が0.5〜30、現像廃液の空間速度(SV)を1〜150h−1の範囲で適宜設定すれば良い。
【0051】
なお、充填塔内に充填された陽イオン交換樹脂へのTAAイオンの吸着が進むにつれて、陽イオン交換樹脂の体積が膨潤し、充填塔内の陽イオン交換樹脂の高さが増加する。従って、前記目標吸着率までTAAイオンが吸着された際の陽イオン交換樹脂の体積を勘案して、充填塔への陽イオン交換樹脂の充填を行えば良い。
【0052】
なお、原料水溶液が現像廃液である場合、前述のとおり、該現像廃液には、レジスト由来の樹脂等の有機物が含有されている。該現像廃液中のTAAイオンが陽イオン交換樹脂に吸着されるに伴い、充填塔を通過する現像廃液のpHが中性に近くなり、このようなpH変化に伴って上記有機物の溶解度が下がり、陽イオン交換樹脂の表面、および細孔中に該有機物が析出して残存する場合がある。
【0053】
かかる場合には、上記現像廃液を、陽イオン交換樹脂を充填した充填塔に接触させた後、有機物を溶出させるために、アルカリを接触させることで、析出した有機物を溶解、洗浄することが可能である。このように、溶離・再生工程前に、陽イオン交換樹脂に析出した有機物を洗浄しておけば、酸を添加して陽イオン交換樹脂からTAAイオンを溶離させて得られたTAA塩水溶液中の有機物の含有量が少なくなり、純度の高いTAA塩水溶液が得られる点で特に好ましい。
【0054】
なお、充填塔を洗浄するのに用いる上記アルカリとしては、金属イオンの混入を避ける観点から、水酸化TAA溶液を用いることが好ましく、特に不純物の混入を避けるという観点から、陽イオン交換樹脂に吸着させたTAAイオンと同じTAAイオンを含有する水酸化TAA水溶液を用いることが好ましい。
【0055】
<吸着されたTAAイオンの溶離・再生工程>
陽イオン交換樹脂に吸着されたTAAイオンは、該樹脂に酸を接触させることにより、溶離させることができる。かかる陽イオン交換樹脂に接触せしめる酸としては、水溶液の状態で水素イオンが生成するものであれば特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸等の鉱酸水溶液が例示される。上記の酸のうち、工業的に安価で入手可能な点、及び濃度調整が容易な点から、塩酸水溶液が最も好適である。上記塩酸の濃度及び使用量については、吸着されたTAAイオンを溶離するのに十分な濃度及び量であれば特に限定されないが、通常は上記陽イオン交換樹脂に、1〜20質量%の塩酸水溶液を1〜10(L/L−樹脂)接触させれば十分である。
【0056】
なお、酸を接触させた充填塔中の陽イオン交換樹脂は、対イオンがH型となっており、特に該樹脂の洗浄を行うことなく、再生後の該充填塔をTAAイオンの吸着工程に供することが可能である。
【0057】
<初期充填塔ラインの本数の決定>
本発明のTAA塩水溶液の製造方法では、陽イオン交換樹脂が充填された同一または実質的に同一の複数の充填塔が直列に連結された初期充填塔ラインを形成し、該初期充填塔ラインに、前記原料水溶液を接触させることが特徴である。
【0058】
なお、「同一または実質的に同一の複数の充填塔」とは、TAAイオンの総交換容量が同一、または、実質的に同一(総交換容量が±10%、好ましくは±5%の差異)の充填塔をいう。なお、本発明の充填塔ラインを形成する複数の充填塔は、好ましくは、それぞれ同一の陽イオン交換樹脂が充填され、L/Dが同一である充填塔であり、充填塔ラインの管理が簡便になるという観点から、より好ましくは、すべてが同一の充填塔(陽イオン交換樹脂の種類、充填量、充填するカラムが同一)である。
【0059】
また、後述するように、上記初期充填塔ラインを用いて、後に説明するように、原料水溶液中のTAAイオンの吸着、脱離を繰り返すと、充填塔内の一部の陽イオン交換樹脂が劣化する等により、それぞれの充填塔の間で総交換容量が相違してくる場合もある(場合によっては、±10%以上の相違が生じる場合もある。)が、この場合においても、各充填塔は実質的に同一であるとみなす。
【0060】
ここで、充填塔におけるTAAイオンの交換率とは、充填塔に充填された陽イオン交換樹脂の総交換容量に対して、該樹脂の対イオンがH型からTAA型に交換された割合を示し、下記式(2)から求めることができる。
【0061】
{(充填塔に接触させたTAA水酸化物の総量(mol))−(充填塔から排出されたTAAイオン量(mol))}/(充填塔に充填された陽イオン交換樹脂の総交換容量(mol))・・・(2)
【0062】
式(2)中、充填塔に接触させたTAA水酸化物の総量は、原料水溶液中のTAA水酸化物のモル濃度と、該溶液の充填塔への供給量から算出することが可能である。また、充填塔から排出されたTAAイオン量は、充填塔から排出された排出液中のTAAイオン濃度をイオンクロマトグラフィーにより分析することで求めることが可能である。
【0063】
そして、本発明の製造方法では、上記充填塔ラインの最上流に位置する充填塔、すなわち初期充填塔ラインでは第一充填塔の目標交換率を第一充填塔の貫流交換容量を超える程度に設定し、該目標交換率となるまで、上記充填塔ラインに原料水溶液を通液する。充填塔に該充填塔の貫流交換容量を超えるまで、原料水溶液を通液した場合は、排出液中に、TAAイオンが流出してしまう。本発明では、以下に説明するように、所定の数nの充填塔を直列に接続して充填塔ラインを形成することにより、排出液中にTAAイオンが流出するのを防止して、TAAイオンを効率的に吸着し、TAA塩水溶液を効率的に製造することができる。
【0064】
なお、上記目標交換率は、70〜90%で設定することが好ましい。目標交換率が70%よりも低い場合は溶離工程で回収されるTAA塩水溶液の濃度が薄くなる。また、TAAイオンの交換率が向上するにつれて、陽イオン交換樹脂の吸着効率、すなわち、充填塔へ供給した原料水溶液中のTAAイオンが陽イオン交換樹脂に吸着される割合が低下し、TAAイオンの漏洩量が急増する傾向がある。従って、目標交換率が90%を超える場合には、目標交換率となるまでに必要な原料水溶液の供給量が増大し、原料水溶液の処理コストが上昇してしまう虞があるばかりでなく、最下流の充填塔からのTAAイオンの漏洩を防止するために、初期充填塔ラインを形成する充填塔の本数が増大し、イニシャルコストが大きくなってしまう。特に、原料水溶液の処理コストと、初期充填塔ラインを形成するためのイニシャルコストの観点から、上記目標交換率を80〜90%の範囲で設定することが好ましい。
【0065】
初期充填塔ラインの最上流の充填塔からの排出液は、該充填塔に直列に連結された第二以下の充填塔に順次通液させる。従って、最上流の充填塔からの排出液中にTAAイオンが含有している場合には、該排出液中のTAAイオンは、第二以下の充填塔に充填された陽イオン交換樹脂に順次吸着される。本発明の製造方法では、初期充填塔ラインを形成する充填塔の本数を下記式(1)から求められる整数n以上(但し、該式から求まる値が整数でない場合は、小数点以下を切り上げて整数とする。)とすることが特徴である。
【0066】
n={1+(第一充填塔が目標交換率となるまでの該第一充填塔からTAAイオンが漏洩した量(mol))/(第一充填塔の貫流交換容量(mol))}・・・(1)
【0067】
初期充填塔ラインを形成する充填塔の本数を上記の本数(n以上)とすることで、最上流の充填塔のTAAイオンの交換率が上記目標交換率となるまでのTAAイオンの吸着処理を、最下流の充填塔よりTAAイオンが漏洩することなく行うことが可能である。
【0068】
初期充填塔ラインを形成する充填塔ラインの本数は、上記整数n以上であれば特に制限されず、製造装置の大きさ等を勘案して適宜決定すればよい。しかしながら、充填塔ラインの本数が多すぎても、1回のTAAイオンの吸着工程において、TAAイオンの吸着に関与しない充填塔が増加し、工業的に効率的とは言えないため、充填塔ラインを形成する充填塔の本数は、上記整数n〜n+2の範囲で適宜設定することが好ましい。
【0069】
特に、充填塔ラインの本数をn+1とした場合には、後述するように所定の目標交換率となった充填塔の溶離・再生工程と、原料水溶液を残存充填塔ラインへ供給する吸着工程とを並行して行うことが可能である。よって、原料水溶液の処理を連続的に行うことが可能であり、連続的にTAA塩水溶液を製造することが可能であるため、特に好ましい。
【0070】
ここで、充填塔の「貫流交換容量」とは、該充填塔に原料水溶液を供給し、該供給を開始してから、該充填塔からTAAイオンの漏洩が始まるまでに、該充填塔中の陽イオン交換樹脂に吸着されたTAAイオン量(mol)である。
第一充填塔の貫流交換容量(mol)、及び、該第一充填塔が目標交換率となるまでに該第一充填塔からTAAイオンが漏洩した量(mol)は、以下の方法により求めることが可能である。
【0071】
最初に、初期充填塔ラインを形成する充填塔と同一又は実質的に同一の充填塔を用意し、該充填塔に原料水溶液を供給する。ここで用いる原料水溶液は、上述の原料水溶液を特に制限なく用いることが可能である。
【0072】
なお、原料水溶液として、上記した現像廃液を用いた場合、該現像廃液中に含有される金属イオンの存在によって、前記貫流交換率、及びTAAイオン漏洩量が正確に求められないことが懸念される。しかしながら、前述のとおり、現像廃液中のTAA水酸化物に対する金属イオンの割合は1%以下に過ぎず、現像廃液中の金属イオンの存在を無視することが可能である。従って、上記貫流交換率、及びTAAイオン漏洩量の決定に用いる原料水溶液として、該現像廃液を用いても何ら差し支え無い。
【0073】
上記原料水溶液を充填塔に供給し、充填塔より排出された排出液を経時的にサンプリングし、該排出液中のTAAイオン濃度を、イオンクロマトグラフィーにより分析する。排出液中にTAAイオンが初めて検出された時点までに、充填塔に供給された原料水溶液量と、該原料水溶液のTAAイオンのモル濃度から、貫流交換容量を算出することができる。また、前記式(2)により該充填塔中の陽イオン交換樹脂の交換率を求めることも可能である。さらに、原料水溶液の通液、及び、排出液の分析を充填塔中の陽イオン交換樹脂の交換率が、目標交換率となるまで継続し、目標交換率となった時点の排出液の分析から、上記TAAイオン漏洩量を求めることができる。
【0074】
<TAA塩水溶液の製造方法>
本発明のTAA塩水溶液の製造方法は、上記方法によって求められた本数で形成される初期充填塔ラインに、前記原料水溶液を通液して、当該充填塔ラインの最上流に位置する第一充填塔に目標交換率までTAAイオンを吸着させる吸着工程と、当該吸着工程によって所定量のTAAイオンを吸着した該第一充填塔を前記初期充填塔ラインから切り離し、当該第一充填塔に酸水溶液を通液することによって吸着したTAAイオンをTAA塩の水溶液として溶離すると共に当該第一充填塔に充填された陽イオン交換樹脂を再生する溶離・再生工程とを含む方法であって、前記吸着工程における前記初期充填塔ラインの最下流の充填塔のTAAイオン吸着量を貫流交換容量未満とし、前記溶離・再生工程後の再生された第一充填塔を、初期充填塔ラインから第一充填塔が切り離されて残った残存充填塔ラインの最下流に接続し、第一充填塔の下流側に直接接続された第二充填塔を最上流の充填塔とする新たな充填塔ラインを形成し、該新たな充填塔ラインにて吸着工程および溶離・再生工程を繰り返す方法である。
【0075】
以下、本発明の製造方法について、好ましい形態を図2に基づいて説明するが、本発明の製造方法は図2の形態に限定されるものではない。図2は、各充填塔における目標交換率を80%とし、前記式(1)より求められた整数nが2である場合において、初期充填塔ラインを2本の充填塔で形成した場合のフロー図である。
【0076】
図2では、初期充填塔ラインにおける第一充填塔を(A)塔とし、第二充填塔を(B)塔として表示した。まず、初期充填塔ラインの(A)塔側から原料水溶液の通液を行い、(A)塔におけるTAAイオンの吸着が目標交換率に達するまで通液を継続する(TAAイオンの吸着工程)。(A)塔から排出された排出液は、直列に連結された下流の(B)塔に通液する。この時、(B)塔におけるTAAイオンの交換量は貫流交換容量以下であるので、(B)塔から排出される排出液にTAAイオンが漏洩することはない(ステップ1)。
【0077】
次に、初期充填塔ラインから(A)塔を切り離し、(A)塔に酸水溶液を通液し、TAAイオンの溶離を行い、TAAイオンをTAA塩化物水溶液として回収する。この時(B)塔は残存充填塔ラインとして待機しておく(ステップ2)。
【0078】
TAAイオンの溶離が終了した(A)塔の陽イオン交換樹脂は、対イオンがH型となっており、TAAイオンの溶離と共に、(A)塔の再生工程が終了する。そこで、溶離・再生工程終了後の(A)塔は、残存充填塔ラインである(B)塔の最下流に接続し、(B)塔を第一充填塔とした新たな充填塔ラインを形成する。そして、(B)塔におけるTAAイオンの吸着が目標交換率に達するまで(B)塔に原料水溶液を通液し、新たな充填塔ラインによるTAAイオンの吸着工程を行う(ステップ3)。
【0079】
ステップ3の吸着工程後、該充填塔ラインから(B)塔を切り離し、(B)塔に酸水溶液を通液し、TAAイオンの溶離を行い、TAA塩化物水溶液を回収する。この時(A)塔は残存充填塔ラインとして待機しておく(ステップ4)。
【0080】
このように、上記のステップ1〜4を繰り返すことにより、2本の充填塔を用いて、効率良くTAA塩水溶液を製造することが可能である。
【0081】
<本発明の製造方法におけるその他の態様>
また、本発明のTAA塩水溶液の製造方法では、上記充填塔ラインを形成する充填塔の本数をn+1とすることで、上記溶離・再生工程を行っている間に、残存充填塔ラインに原料溶液を通液し、該残存充填塔ラインの最下流の充填塔におけるTAAイオン吸着量が該最下流の充填塔の貫流交換容量に達する前に、再生された充填塔を該残存充填塔ラインの最下流に接続することが可能であり、これにより、目標交換率に達した最上流の充填塔の溶離・再生工程と、残留充填塔ラインへの原料水溶液の供給することによる吸着工程とを、それぞれ並行して行うことができ、連続的にTAA塩水溶液を製造することが可能である。
【0082】
以下、n+1本の充填塔により初期充填塔ラインを形成する本発明のTAA塩水溶液の製造方法について、図3に基づいて説明するが、該図3は本発明の一形態を例示したにすぎず、本発明は図3の形態に限定されるものではない。
【0083】
図3は、図2と同様、各充填塔の目標交換率を80%とし、前記式(1)より求められた整数nが2である場合のフロー図であり、充填塔ラインを2+1本である、3本の充填塔により形成している。
【0084】
図3では、初期充填塔ラインの第一充填塔を(A)塔とし、以下の充填塔をそれぞれ(B)塔、(C)塔としている。上記図2と同様、初期充填塔ラインの(A)塔に、原料水溶液を通液し、(A)塔におけるTAAイオンの吸着が目標交換率に達するまで、TAAイオンの吸着工程を行う。(A)塔から排出された排出液は、直列に連結された(B)塔に通液する。この時、(B)塔におけるTAAイオンの交換量は貫流交換容量以下であり(B)塔から排出される排出液にTAAイオンが漏洩することはない。従って、(C)塔は待機させておく(ステップ1)。なお、C塔に、(B)塔からの排出液を通液させても何ら問題はない。
【0085】
次に、初期充填塔ラインから(A)塔を切り離し、(A)塔に酸水溶液を通液し、TAAイオンの脱離を行い、TAAイオンをTAA塩化物水溶液として回収する。同時に、(B)塔−(C)塔で形成された、(B)塔を最上流とする新たな充填塔ラインに、原料水溶液を通液し、(B)塔におけるTAAイオンの吸着が目標交換率に達するまで、TAAイオンの吸着工程を行う。この時、(C)塔におけるTAAイオンの交換量は貫流交換容量以下であり(C)塔から排出される排出液にTAAイオンが漏洩することはない。またTAAイオンの溶離が終了した(A)塔の陽イオン交換樹脂は、対イオンがH型となっており、TAAイオンの溶離と共に、(A)塔の再生工程は終了している(ステップ2)。
【0086】
ステップ2の終了後、充填塔ラインから(B)塔を切り離し、(B)塔に酸水溶液を通液し、TAAイオンの溶離を行い、TAAイオンをTAA塩化物水溶液として回収する。同時に、(C)塔−(A)塔で形成された、(C)塔を最上流とする新たな充填塔ラインに、原料水溶液を通液し、(C)塔におけるTAAイオンの吸着が目標交換率に達するまでTAAイオンの吸着工程を行う。この時、(A)塔におけるTAAイオンの交換量は貫流交換容量以下であり(A)塔から排出される排出液にTAAイオンが漏洩することはない。またTAAイオンの溶離が終了した(B)塔の陽イオン交換樹脂は、対イオンがH型となっており、TAAイオンの溶離と共に、(B)塔の再生工程が終了している(ステップ3)。
【0087】
ステップ3の終了後、充填塔ラインから(C)塔を切り離し、(C)塔に酸水溶液を通液し、TAAイオンの溶離を行い、TAAイオンをTAA塩化物水溶液として回収する。同時に、(A)塔−(B)塔で形成された、(A)塔を最上流とする新たな充填塔ラインに原料水溶液を通液し、(A)塔におけるTAAイオンの吸着が目標交換率に達するまでTAAイオンの吸着工程を行う(ステップ4)。
【0088】
以下、ステップ2〜4を繰り返すことで、所定の目標交換率までTAAイオンが吸着された各充填塔からのTAAイオンを溶離させる溶離・再生工程と、原料水溶液を各充填塔ラインへ供給する吸着工程とを並行して行うことが可能であり、連続して、TAA塩水溶液を製造することができる。
【0089】
<溶離・再生工程>
本発明のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液の製造方法においては、溶離・再生工程を二段階に分けて行うことができる。上記したように溶離・再生工程は、充填塔ラインの上流側の充填塔が、目標交換率までTAAイオンを吸着した際に、該上流側の充填塔を充填塔ラインから切り離し、該切り離した充填塔に酸水溶液を通液することにより、該充填塔に吸着されたTAAイオンをTAA塩水溶液として溶離する工程である。
【0090】
図4に、溶離・再生工程において、充填塔の目標交換率を80%とした場合において、排出液の容量に対する、排出液中のHCl濃度およびTAA塩(TMACl(TMAC))濃度を測定したグラフである。図4によると、まずTMAClのみが溶離し、その後、HClの流出が始まりTMAClとHClとの混合溶液が流出している。
【0091】
排出液中にHClが含まれていると、該排出液を中和する必要があり、工程が増えてしまうため好ましくない。よって、本発明の好ましい形態においては、溶離・再生工程を、通液した酸水溶液の酸が排出するまでの第一溶離・再生工程、および、酸が排出された以降の第二溶離・再生工程の二つに分け、第一溶離・再生工程により得られる酸が含まれていない排出液を、目的物であるTAA塩水溶液とする。なお、第二溶離・再生工程により排出された酸およびTAA塩を含む水溶液は、後の溶離・再生工程において使用する酸水溶液として使用することができ、これにより再生したTAA塩を無駄なく、分取することができる。
【0092】
図4に、排出液の導電率を示したが、まず、TAA塩(TMACl)の溶出と共に排出液の導電率が上昇して、排出液中の該TMACの濃度が安定化すると共に、排出液の導電率も安定するが、その後、HClが流出すると排出液の導電率が急上昇する。この現象を利用して、排出液の導電率をモニタリングすることにより、上記の第一溶離・再生工程から、第二溶離・再生工程への切り替えを行うことができる。
【0093】
<その後の処理>
上記本発明のTAA塩水溶液の製造方法によって、高濃度で高純度のTAA塩水溶液を得ることが可能である。本発明の製造方法によって得られるTAA塩水溶液中のTAAイオン濃度は、酸水溶液の濃度、或いは、陽イオン交換樹脂の性能にもよるが、TAA水酸化物濃度が0.001〜1質量%の原料水溶液を用いた場合、通常、2〜40質量%のTAA塩水溶液を得ることが可能である。
【0094】
また、得られたTAA塩水溶液は、公知の手段によってTAA水酸化物とすることが可能である。かかる手段としては、電気透析、電気分解等が挙げられる。
さらに、電気透析や電気分解に供する前に、TAA塩水溶液の精製や濃縮を行う事も可能である。TAA塩水溶液の精製方法としては、該水溶液を陽イオン交換樹脂、及び/又はキレート樹脂に接触させて、TAA塩水溶液中の金属イオン成分を除去する方法、TAA塩水溶液を、活性炭等の吸着剤、或いは陰イオン交換樹脂に接触させて、フォトレジスト等の有機物を除去する方法等が挙げられる。
また、TAA塩水溶液の濃縮方法としては、具体的には、電気透析、蒸発缶、逆浸透膜により濃縮する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0095】
本発明を具体的に説明するため以下実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、液晶工場より排出された水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHと略称する。)含有廃液を試料液として使用した。
また、pHはpH電極法(測定装置:HM−30R(東亜ディーケーケー株式会社製))により、TMACl(TMAC)濃度はTMAイオン濃度をイオンクロマトグラフ法(測定装置:DX120(ダイオネクス社))により測定して換算した。HCl濃度はCl濃度をイオンクロマトグラフ法(測定装置:DX320(ダイオネクス社))により測定してTMAイオンと対となるClイオン以外の過剰なClイオンをHCl濃度として換算した。
【0096】
<実施例1>
(充填塔の本数の決定)
交換容量4.4mol/Lの弱酸性陽イオン交換樹脂DIAION WK40L(三菱化学社製)1000mlを直径50mmのカラムに充填し総交換容量を4.4molとして、樹脂高さを500mmとした。
上記充填塔に、BV=2000(L/L−樹脂)の試料液(TMAH濃度:0.045質量%)を、SV(空間速度)=100h−1で通液し、TMAイオンの吸着を行った。
この時、排出液中にTMAイオンが検出された点は、BV=430(L/L−樹脂)であり、貫流交換容量は2.12molとなった。この時、貫流点での交換率は48.2%であった。次に、目標吸着率を80%とした場合の通液量はBV=1000(L/L−樹脂)であり、この時の処理排水中に含まれるTMAイオンの総量(TMAイオン漏洩量)は1.48molであった。これより、式(1)から求められるnは2であり、必要充填塔数は2塔と決定した。
【0097】
(吸着工程(第一充填塔→第二充填塔))
上記充填塔と同一の充填塔を準備して2塔直列に設置し初期充填塔ラインとした。上流側を第一充填塔、下流側を第二充填塔とした。第一充填塔の目標交換率を80%に設定して、0.045質量%のTMAH現像廃液をBV=1000(L/L−樹脂)で、該充填塔ラインに通液した。この時、第二充填塔からの排出液には、TMAイオンの漏洩は認められなかった。
【0098】
(第一充填塔の溶離・再生工程)
次に、第一充填塔を切り離し、溶離液として6000mlの1N−HClをSV=3h−1で、第一充填塔に通液し、吸着したTMAイオンを塩化テトラメチルアンモニウム(以下、TMACとして略称する。)として溶出させた。排出液は、分取して2つの液に分別した。はじめの1000mlを第1の分別液とした。該第1分別液は、TMACを含んでおらず、廃液として処理した。次の5000mlは第2の分別液とした。該第2分別液は、7.3質量%(0.67mol/l)のTMACと0.02質量%(0.01mol/l)のHClを含んでいた。この第2分別液は、所望のTMAC溶液であった。
【0099】
(吸着工程(第二充填塔→第一充填塔))
第一充填塔の溶離・再生工程終了後、第二充填塔から第一充填塔へ通液できるように、上流側を第二充填塔、下流側を第一充填塔とした充填塔ラインを形成した。0.045質量%のTMAH現像廃液をBV=700(L/L−樹脂)で通液を行なったところ、第二充填塔の交換率は80%に達した。この時、第一充填塔からの排出液には、TMAイオンの漏洩は認められなかった。
【0100】
(第二充填塔の溶離・再生工程)
次に、第二充填塔を切り離し、溶離液として6000mlの1N−HClをSV=3h−1で、第二充填塔に通液し、吸着したTMAイオンをTMACとして溶出させた。排出液は、分取して2つの液に分別した。はじめの1000mlを第1の分別液とした。該第1分別液は、TMACを含んでおらず、廃液として処理した。次の5000mlは第2の分別液とした。該第2分別液は、7.3質量%(0.67mol/l)のTMACと0.02質量%(0.01mol/l)のHClを含んでいた。この第2分別液は、所望のTMAC溶液であった。
それぞれの充填塔の回収率(%)は、「分別液中のTMACの量(mol)/充填塔中の陽イオン交換樹脂に吸着したTMA量(mol)」から求めた。第一充填塔および第二充填塔共に、94.6%であった。
【0101】
<実施例2〜11>
実施例2〜11では、表1に示したように目標交換率をそれぞれ50〜95とした他は、実施例1と同様にして、nを算出し、充填塔ラインの塔数を決定して、TMAH試料液を通液してTMAイオンを吸着させ、TMACを製造した。結果を表1に示した。
【0102】
<比較例1>
(吸着工程)
実施例1と同様の条件にて、目標吸着率を45%と設定して0.045質量%のTMAH現像廃液をBV=400(L/L−樹脂)で通液を行なった。
(第一充填塔の溶離・再生工程)
第一充填塔に、溶離液として6000mlの1N−HClをSV=3h−1で通液し、吸着したTMAイオンをTMACとして溶出させた。溶出液は、分取して2つの液に分別した。はじめの1000mlを第1の分別液とした。該第1分別液は、TMACを含んでおらず、廃液として処理した。次の5000mlは第2の分別液とした。該第2分別液は、3.4質量%(0.37mol/l)のTMACと2.21質量%(0.61mol/l)のHClを含んでいた。
比較例1は、実施例1の目標吸着率を80%から45%に変更した例であるが、最終的に得られたTMAC溶液は濃度が低く、HClを多量に含んでいた。
【0103】
【表1】

【0104】
<実施例12(メリーゴーランド運転)>
(樹脂塔本数の決定)
上記実施例1と同様の、充填塔および試料液を使用し、同様に、目標吸着率を80%と設定した場合、必要充填塔数nは2本であり、連続的に吸着処理を行なうため、n+1の3塔からなる充填塔ラインとした。
【0105】
(吸着工程(第一充填塔→第二充填塔))
実施例1と同様に、上流側に第一充填塔および下流側に第二充填塔を設置し、充填塔ラインを形成した。2塔直列に設置した樹脂塔にて、吸着処理を行なった。この時、第三充填塔は待機とした。
【0106】
(吸着工程(第二充填塔→第三充填塔))
第一充填塔の吸着終了後、第一充填塔を切り離し、第二充填塔から第三充填塔へ通液できるように、直列に設置し、新たな充填塔ラインを形成した。該新たな充填塔ラインに0.045質量%のTMAH現像廃液をBV=700(L/L−樹脂)で、通液を行なったところで、第二充填塔の交換率80%に達した。この時、第三充填塔からの排出液には、TMAイオンの漏洩は認められなかった。
【0107】
(第一充填塔の溶離・再生工程)
上記吸着工程(第二充填塔→第三充填塔)と並行して、第一充填塔の溶離・再生工程を行った。溶離液として6000mlの1N−HClをSV=3h−1で、第一充填塔に通液し、吸着したTMAイオンをTMACとして溶出させた。溶出液は、分取して2つの液に分別した。はじめの1000mlを第1の分別液とした。該第1分別液は、TMACを含んでおらず、廃液として処理した。次の5000mlは第2の分別液とした。該第2分別液は、7.3質量%(0.67mol/l)のTMACと0.02質量%(0.01mol/l)のHClを含んでいた。この第2分別液は、所望のTMAC溶液であった。
【0108】
本実施例では、上記の吸着工程(第二充填塔→第三充填塔)において、第二充填塔が目標交換率に達するよりも先に、第一充填塔の溶離・再生工程が終了する。よって、第二充填塔が目標交換率に達して、吸着工程(第二充填塔→第三充填塔)が終了次第、再生した第一充填塔を、第三充填塔の下流側に接続して、新たな充填塔ライン(第三充填塔→第一充填塔)を形成し、該充填塔ライン(第三充填塔→第一充填塔)を用いた吸着工程を直ぐに行うと共に、並行して目標交換率に達した第二充填塔の溶離・再生工程を行うことができ、連続的に、TMAC溶液の製造を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン交換樹脂が充填された同一または実質的に同一の複数の充填塔が直列に連結されてなる初期充填塔ラインに、テトラアルキルアンモニウム水酸化物を含有してなる原料水溶液を通液して、前記初期充填塔ラインの最上流の第一充填塔が貫流交換容量を超える目標交換率となるまで、前記陽イオン交換樹脂にテトラアルキルアンモニウムイオンを吸着させる吸着工程と、
前記吸着工程によって目標交換率となるまでテトラアルキルアンモニウムイオンを吸着した前記第一充填塔を前記初期充填塔ラインから切り離し、該切り離した第一充填塔に酸水溶液を通液することによって吸着したテトラアルキルアンモニウムイオンをテトラアルキルアンモニウム塩の水溶液として溶離すると共に前記第一充填塔に充填された陽イオン交換樹脂を再生する溶離・再生工程とを含んでなるテトラアルキルアンモニウム塩水溶液の製造方法であって、
前記初期充填塔ラインにおいて直列に連結させる充填塔の数を、下記式
n={1+(第一充填塔が目標交換率となるまでのテトラアルキルアンモニウムイオン漏洩量(mol)))/(第一充填塔の貫流交換容量(mol))}(但し、小数点以下は切り上げ)・・・(1)
から求められる整数n以上として前記吸着工程における前記初期充填塔ラインの最下流の充填塔のテトラアルキルアンモニウムイオン吸着量を貫流交換容量未満とし、
前記溶離・再生工程後に再生された第一充填塔を、前期第一充填塔が切り離されて残った残存充填塔ラインの最下流に接続し、前記吸着工程開始時において前期第一充填塔の下流側に直接接続された第二充填塔を最上流の充填塔とする新たな充填塔ラインを形成し、該新たな充填塔ラインを用いて前記吸着工程および前記溶離・再生工程を繰り返す、テトラアルキルアンモニウム塩水溶液の製造方法。
【請求項2】
前記初期充填塔ラインを構成する充填塔の数を前記整数n+1とし、前記最上流の第一充填塔の溶離・再生工程を行っている間に、該第一充填塔を切り離した残存充填塔ラインに原料溶液を通液し、該残存充填塔ラインの最下流の充填塔におけるテトラアルキルアンモニウムイオン吸着量が貫流交換容量に達する前に、再生した第一充填塔を該残存充填塔ラインの最下流に接続する、請求項1に記載のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液の製造方法。
【請求項3】
前記吸着工程における目標交換率が、70〜90%である、請求項1または2に記載のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液の製造方法。
【請求項4】
前記溶離・再生工程が、通液した酸水溶液の酸が排出するまでの第一溶離・再生工程、および、該酸が排出された以降の第二溶離・再生工程、からなり、該第一溶離・再生工程において得られる水溶液を目的物であるテトラアルキルアンモニウム塩水溶液とする、請求項1〜3のいずれかに記載のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液の製造方法。
【請求項5】
前記溶離再生工程における、第一溶離・再生工程から第二溶離・再生工程への切り替えを、排出液の導電率をモニタリングすることにより行う、請求項4に記載のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−30208(P2012−30208A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174214(P2010−174214)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】