説明

テトラフルオロプロペン及びブロモフルオロプロペンの共沸混合物様組成物

テトラフルオロプロペンとブロモフルオロプロペンの混合物は、許容可能な範囲内に沸点を有し、良好な化学安定性、低GWPを有し、かつ、本質的に非可燃性であるい組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、どちらも地球温暖化係数(GWP)が低く、非可燃性である、フルオロプロペン及びブロモフルオロプロペンの組成物、特にこれらの共沸混合物様組成物と、かかる組成物の使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 人間が気候変動に対して与える影響に関する懸念が1997年の日本、京都での国連会議で促された。結果として生まれた京都議定書は、大気中の温室効果ガスを、“気候システムに対する危険で人為的な干渉を防止し得るレベル”に安定化させようとするものである。
【0003】
[0003] ペルフルオロカーボン(PFC)、ハイドロフルオロカーボン化合物(HFC)、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン化合物(HCFC)などは、多様な産業上、商業上、消費者、公用の応用及び用途において広く使用されている。最近では、地球の大気と気候に対する潜在的な被害について懸念が増しており、一定のペルフルオロカーボン(PFC)、ハイドロフルオロカーボン化合物(HFC)、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン化合物(HCFC)などは、これらの化合物に付随する温室効果ガスの作用や比較的高い地球温暖化係数(GWP)のために、この点に関し少なくとも一部が、特に問題があると確認されている。これらの化合物は地球温暖化係数が比較的高いことに鑑み、GWPの高いこれらの化合物をこれらの用途、応用、及び前述の応用や用途に使用すべき組成物において置き換えるための、GWPがより低い代替化合物に関する活発な調査が行われている。
【0004】
[0004] 2005年2月16日付けの京都議定書の施行により、GWP組成物の使用を排除するか、又は大きく低減する必要性に拍車をかけている。したがって、地球温暖化を減らすように特に空調用途及び冷凍用途において使用するため、また、オゾン層破壊の潜在性を低くするための、新規なフルオロカーボン組成物及びハイドロフルオロカーボン組成物に関して継続的に調査がなされている。特に、本質的に不燃性であり、本質的に非毒性であり、大気に対して有害な影響を及ぼさないような新規な組成物に対する必要性が存在する。ハイドロフルオロオレフィン(HFO)プロペンは、そのような組成物のための候補として提唱されている。しかし、これらのHFOプロペンはASHRE(アメリカ暖房冷凍空調学会)基準によれば可燃性である。
【0005】
[0005] また、R−134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)及び他の同様なHFCの商業的な導入以来、コンプレッサーはそれらのすぐれた化学的安定性を利用するように設計されてきた。したがって、冷媒として使用するために設計される新規な低GWP組成物は、好ましくは、同様な安定性を有し、並びに不燃性であるべきであり、圧力を現在使用している冷媒と同様とするために、妥当な範囲内に沸点を有するべきである。こうした適する低GWP作動組成物を開発するという問題の解決策として数多くの組成物や混合物が提案されてきたが、沸点、化学的安定性、低GWP、及び不燃性の許容可能な組み合わせを有する組成物又は組成物の混合物は未だ開発されていない。例えば、二酸化炭素は、適当であり、低いGWPを有する冷媒の例であるが、その圧力は現在使用されている冷媒より有意に高い。この欠陥により、冷凍産業においてその使用を進めるようと試みる際に、深刻な問題が生ずる。したがって、沸点、化学的安定性、低GWP、及び不燃性の許容可能な組み合わせを有する組成物又は組成物の混合物を開発するための更に有意な必要性が存在する。単一成分の流体、又は、沸騰及び蒸発時に分画しない共沸の混合物の使用が望ましい。しかし、新規で、環境的に安全で、非分画性の混合物を特定することは、共沸混合物の形成は容易には予測可能でないことから、複雑である。
【0006】
[0006] 産業界は、代替物を提供し、環境的により安全なCFC及びHCFCの代用品と考えられる、新規なフルオロカーボンに基づく混合物を継続して求めている。特に関心が寄せられているのは、どちらもオゾン破壊係数が低く、地球温暖化係数が低い、フルオロオレフィンと他のフッ素化された化合物の両方を含有する混合物である。そのような化合物が本発明の主題である。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 本発明者は、テトラフルオロプロペンとブロモフルオロプロペンの共沸混合物様の混合物が本質的に不燃性であり、低いGWPを有し、そのうえ、適する沸点と、許容可能で良好な化学的安定性をもつことを発見した。本発明にしたがって、本発明者は、テトラフルオロプロペンとブロモフルオロプロペンの共沸混合物様の混合物が、許容可能な範囲内に沸点をもち、許容可能な化学的安定性を有する組成物を提供することを発見した。そのような組成物の中で好ましいのは、1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)又は1,1,1,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)などのテトラフルオロプロペン、又はそのようなテトラフルオロプロペンの混合物と、3,3,1,1,1−ペンタフルオロ−2−ブロモプロペン(BFO−1215B1)などのブロモフルオロプロペンとの組成物である。本発明者は、テトラフルオロプロペン及びブロモフルオロプロペンの共沸混合物様の組成物を形成することができることを発見した。したがって、本発明は、そのような共沸混合物様組成物を生成するのに有効量のテトラフルオロプロペン及びブロモフルオロプロペンを組み合わせることにより、かかる共沸混合物様の組成物を形成する方法も提供する。かかる組成物は、ASHRAE基準34(2004)により不燃性である。本発明の共沸混合物様組成物は、これらに限定されないが、冷凍、空調、ヒートポンプ、推進剤、起泡剤又は発泡剤、溶媒及び洗浄剤、及びエアロゾルにおける使用を含む多様な目的に有用である。共沸混合物様組成物は、本質的には、冷凍組成物や空調組成物として有用である。
【0008】
[0008] 本発明の共沸混合物様組成物は、任意の適するテトラフルオロプロペンと適するブロモフルオロプロペンを含むことができる。適するテトラフルオロプロペンとしては、これらに限定されないが、1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、又は1,1,1,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、又はかかるテトラフルオロプロペンの混合物が挙げられる。適するブロモフルオロプロペンとしては、これらに限定されないが、1−ブロモ−1,1−ジフルオロ−2−プロペン(CH=CHCFBr);2−ブロモ−1,1,1−トリフルオロ−2−プロペン(CH=CBrCF);1−ブロモ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(BrCH=CHCF);3−ブロモ−1,1,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(CF=CHCFBr);2,3−ジブロモ−3,3−ジフルオロ−1−プロペン(CH=CBrCBrF);1,2−ジブロモ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(BrCH=CBrCF);2−ブロモ−1,1,1−トリフルオロ−2−プロペン(CFCHBr=CH);及び3,3,1,1,1−ペンタフルオロ−2−ブロモプロペン(CFCBr=CF)が挙げられ、3,3,1,1,1−ペンタフルオロ−2−ブロモプロペン(BFO−1215B1)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0009] 本発明は、許容可能な沸点を有する、低GWPで、本質的に不燃性で、化学的に安定な組成物を提供する。この組成物は、共沸混合物様で、定沸性の組成物である。テトラフルオロプロペン、例えば、HFO−1234zeは可燃性であるが、そのようなテトラフルオロプロペンを含有する本発明の組成物は不燃性である。
【0010】
[0010] 本明細書中で使用するように、「共沸混合物様」という用語は、その広い意味において、厳密に共沸混合物である組成物と、共沸混合物のようにふるまう組成物の両方を含むように意図している。基本的原理から、流体の熱力学的状態は、圧力、温度、液体組成、及び気体組成により定義される。共沸混合物は、規定された圧力及び温度において液体組成と気体組成が等しい、二種又はそれより多い成分の系である。実際には、これは、共沸混合物の各成分が定沸であり、相変化の間に分離できないことを意味する。
【0011】
[0011] 本発明の共沸混合物様組成物は、新規な共沸混合物様の系を形成しない追加の成分、又は第一の蒸留カット中にはない追加の成分を含んでもよい。第一の蒸留カットは、蒸留塔が全還流条件下で定常状態運転を示した後に採取される第一カットである。本発明の外部であるために、ある成分の添加により新規な共沸混合物様の系を形成するかを決定するひとつのやり方は、非共沸の混合物をその別々の成分へと分離することが予期される条件下で、その成分を伴う組成物の試料を蒸留することである。追加の成分を含有する混合物が非共沸混合物様である場合、追加の成分は共沸混合物様の成分から分画されることになる。混合物が共沸混合物様である場合、一部の限られた量の第一蒸留カットが得られ、これは、混合物成分のすべてを含有しており、定沸であり、単一物質のようにふるまう。
【0012】
[0012] このことから、共沸混合物様組成物の別の特徴は、共沸混合物様又は定沸であり、同じ成分を種々の割合で含有する一定の範囲の組成が存在するということになる。そのような組成はすべて、“共沸混合物様”及び“定沸”という用語により包含されると意図している。例として、異なる圧力において、組成の沸点が変動するように、所与の共沸混合物の組成が少なくともわずかに変動することはよく知られている。したがって、A及びBの共沸混合物は独特のタイプの関係を示すが、温度及び/又は圧力に依存して組成は変動し得る。共沸混合物様組成物については、共沸混合物様であり、同じ成分を種々の割合で含有する一定の範囲の組成が存在するということになる。そのような組成はすべて、本明細書中で使用するように、共沸混合物様という用語により包含されると意図している。
【0013】
[0013] 共沸混合物の形成を予測するのが不可能であることは、当技術分野においてはよく認識されている。(どちらも参照により本明細書中に援用する、米国特許第5,648,017号(カラム3、64〜65行)及び米国特許第5,182,040号(カラム3、62〜63行)を参照のこと。)出願人は、予想外に、テトラフルオロプロペン及びブロモフルオロプロペン、特に、HFO−1234yf又はHFO−1234zeとBFO−1215B1とが、共沸混合物様組成物を形成することを発見した。
【0014】
[0014] 一定の好ましい態様にしたがえば、本発明の共沸混合物様組成物は、有効量のテトラフルオロプロペン(HFO−1234)及びブロモフルオロプロペン(BFO)を含み、好ましくは本質的にこれらからなる。本明細書中で使用する“有効量”という用語は、他の成分と組み合わせたときに本発明の共沸混合物様組成物の形成をもたらす各成分の量をいう。好ましくは、本発明の組成物は、得られる組成物が、低GWPを有し、化学的に安定であり、そして定沸又は共沸混合物様であるように、任意の適する量のテトラフルオロプロペン及びブロモフルオロプロペンを含む。ブロモフルオロプロペンの量は、組成物を本質的に不燃性にし、低GWP、許容可能な沸点、及び許容可能な化学的安定性を有するような量であることが更に好ましい。そのような量は、一般的には、重量基準で、約100%未満〜約30%、好ましくは約99%〜約40%、より好ましくは約99%〜約50%、更により好ましくは約99%〜約60%のテトラフルオロプロペンと、重量基準で、約0%より多く約70%まで、好ましくは約1%〜約50%、更により好ましくは約1%〜約40%のブロモフルオロプロペンとを含み、好ましくは本質的にこれらからなる。重量パーセントは、これらのふたつの成分の合計重量に基づく。好ましいテトラフルオロプロペンは、1,1,1,2−テトラフルオロプロペン、1,1,1,3−テトラフルオロプロペン、及びこれらの混合物であり、ブロモフルオロプロペンは、好ましくは、3,3,1,1,1−ペンタフルオロ−2−ブロモプロペンである。テトラフルオロプロペンの混合物を使用する場合、HFO−1234ze(トランス−及びシス−1,1,1,3−テトラフルオロプロペン、より特定的にはトランス−1,1,1,3−テトラフルオロプロペン)は、主要なテトラフルオロプロペンであるHFO−1234yf(1,1,1,2−テトラフルオロプロペン)に対して副次的な成分である。HFO−1234zeの量は、組成物の共沸混合物の性質が影響されないような量である。一般的には、テトラフルオロプロペンの混合物中HFO−1234zeの最大量は、約5重量%であり、より好ましくは約3重量%、更により好ましくは約1重量%以下であり、HFO−1234yfはテトラフルオロプロペン混合物の残りの重量%である。
【0015】
[0015] 約14.42psiaの圧力にて組成物の沸点は、組成物中のテトラフルオロプロペン成分の量とタイプにより変動する。HFO−1234yfを含有する組成について、組成物の沸点範囲は、約−29.2℃〜約−20℃であると予測することができる。HFO−1234zeを含有する組成について、組成物の沸点範囲は、約−18.6℃〜約−10℃であると予測することができる。本明細書中に説明した組成物は、好ましくは、約14.42psiaの圧力において約−10℃〜約−29.2℃の沸点を有する。本発明の組成物は、低GWP、一般的には約20未満のGWPを有する。
【0016】
[0016] 本発明の共沸混合物様組成物は、有効量のテトラフルオロプロペン及びブロモフルオロプロペンを組み合わせることにより生成することができる。二種又はそれより多い成分を組み合わせて組成物を形成するための、当技術分野において既知の多種多様な方法のうち任意のものを本方法において使用するために適合させて、共沸混合物様組成物を生成する。例えば、テトラフルオロプロペン及びブロモフルオロプロペン、例えば、HFO−1234yf及びBFO−1215B1などを、バッチ又は連続反応及び/又はプロセスの一部として、あるいは、ふたつ又はそれより多いそのような工程の組み合わせを介して、混合、ブレンド、又は、手及び/又は機械で別のやり方で接触させる。本明細書中の開示に照らして、当業者であれば、過度な実験をすることなく本発明にしたがって容易に共沸混合物様組成物を調製することができるだろう。
【0017】
[0017] 本発明の組成物は、安定化剤、金属不動態化剤、腐食抑制剤、などをはじめとする、種々の任意の添加剤のうち任意のものを更に含んでもよい。
[0018] 一定の態様にしたがえば、本発明の組成物は、安定化剤を更に含む。本発明の組成物を安定化させるのに適する種々の化合物のうち任意のものを使用することができる。一定の好ましい安定化剤の例としては、少なくとも一種のフェノール組成物と、芳香族エポキシド、アルキルエポキシド、アルケニルエポキシド、及びこれらの二種又はそれより多い組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種のエポキシドとを含む、安定化剤組成物が挙げられる。
【0018】
[0019] 種々のフェノール化合物のうち任意のものが、本発明の組成物において使用するのに適している。本明細書中で使用する“フェノール化合物”という用語は、一般に、任意の置換又は非置換のフェノールをいう。適するフェノール化合物の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール;2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール;トコフェロールなどをはじめとするアルキル化モノフェノール、t−ブチルヒドロキノン;ヒドロキノンの他の誘導体などをはじめとするヒドロキノン及びアルキル化ヒドロキノン、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などをはじめとする水酸化チオジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);2,2−又は4,4−ビフェニルジオールの誘導体;2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール);2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)をはじめとするアルキリデン−ビスフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)をはじめとする2,2−又は4,4−ビフェニルジオール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール;4,4−チオビス(6−ブチル−m−クレゾール)などをはじめとするヘテロ原子を含むビスフェノール、アシルアミノフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィドなどをはじめとするスルフィド、ならびに、フェノリックUV吸収・光安定化剤などの、一種又はそれより多い置換又は非置換の環式、直鎖、又は分枝の脂肪族置換基、含むフェノールが挙げられる。一定の好ましいフェノールとしては、トコフェロールなどのアルキル化モノフェノール、BHT、ヒドロキノンなどが挙げられる。一定の特に好ましいフェノールとしては、トコフェロールなどが挙げられる。殆どのフェノールは商業的に入手可能である。単一フェノール化合物及び/又は二種若しくはそれより多いフェノールの混合物を本発明の組成物中に使用することができる。種々のエポキシドのうち任意のものが本発明の組成物において使用するのに適している。単一の芳香族エポキシド及び/又は二種若しくはそれより多い芳香族エポキシドの混合物を本発明の組成物中において使用することができる。
【0019】
[0020] 適する芳香族エポキシドの例としては、以下の式(I)により定義されるものが挙げられる。
【0020】
【化1】

【0021】
式中、Rは、水素、ヒドロキシル、アルキル、フルオロアルキル、アリール、フルオロアリール、又は
【0022】
【化2】

【0023】
であり、Arは、置換又は非置換のフェニレン部位又はナフチレン部位である。一定の好ましい式Iの芳香族エポキシドとしては、Arが、フェニレンであるもの、又は、Arが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アリールアルキル、ヒドロキシル、ヘテロ原子部位などをはじめとする、ひとつ若しくはそれより多い置換基で置換されたフェニレンであるものが挙げられる。適する式Iの化合物の例は、Arが、ブチルフェニルグリシジルエーテル;ペンチルフェニルグリシジルエーテル;ヘキシルフェニルギリシジルエーテル;ヘプチルフェニルグリシジルエーテル;オクチルフェニルグリシジルエーテル;ノニルフェニルグリシジルエーテル;デシルフェニルグリシジルエーテル;グリシジルメチルフェニルエーテル;1,4−ジグリシジルフェニルジエーテル;4−メトキシフェニルグリシジルエーテル;これらの誘導体などをはじめとする、非置換又は置換のフェニレンである。
【0024】
[0021] 一定の他の好ましい式Iの芳香族エポキシドとしては、Arが、ナフチレンであるもの、又は、Arが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アリールアルキル、ヒドロキシル、ヘテロ原子部位などをはじめとする、ひとつ若しくはそれより多い置換基で置換されたナフチレンであるものが挙げられる。適する式Iの化合物の例としては、Arが、ナフチルグリシジルエーテル;1,4−ジグリシジルナフチルジエーテル;これらの誘導体などをはじめとする、非置換又は置換のナフチレンであるものが挙げられる。
【0025】
[0022] 他の適する芳香族エポキシドの例としては、2,2’[[[5−ヘプタデカフルオロオクチル]1,3−フェニレン]ビス[[2,2,2−トリフルオロメチル]エチリデン]オキシメチレン]ビスオキシランなどといった、ビスオキシランが挙げられる。
【0026】
[0023] 一定の好ましい態様において、本発明において使用するための芳香族エポキシドは、Arが、フェニレン、置換フェニレン、ナフチレン、又は置換ナフチレンである、式Iのエポキシドを含む。より好ましくは、芳香族エポキシドは、Arが、フェニレン、又は置換フェニレンである、式Iのエポキシドを含む。一定のより好ましい芳香族エポキシドの例としては、ブチルフェニルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0027】
[0024] 種々のアルキルエポキシド及び/又はアルケニルエポキシドのうち任意のものが、本発明の組成物において使用するのに適している。適するアルキルエポキシド及びアルケニルエポキシドの例としては、式IIのものが挙げられる。
【0028】
【化3】

【0029】
式中、Ralkは、置換又は非置換のアルキル又はアルケニル基である。一定の好ましい式IIのエポキシドは、Ralkが、約1個〜約10個の炭素原子、より好ましくは約1個〜約6個の炭素原子を有するアルキル基であり、アルキル基が、置換されていないか又は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アリールアルキル、ヒドロキシル、ヘテロ原子部位などをはじめとする、ひとつ若しくはそれより多い置換基で更に置換された、アルキルエポキシド化合物を含む。そのような好ましい式IIのアルキルエポキシドの例としては、n−ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルなど、並びに、フッ素化された及び過フッ素化されたアルキルエポキシドなどが挙げられる。一定のより好ましいアルキルエポキシドは、ヘキサンジオールジギリシジルエーテルなどを含む。
【0030】
[0025] 一定の他の好ましい式IIのエポキシドは、Ralkが、約1個〜約10個の炭素原子、より好ましくは約1個〜約6個の炭素原子を有するアルケニル基であり、アルケニルが、置換されていないか又は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アリールアルキル、ヒドロキシル、ヘテロ原子部位などをはじめとする、ひとつ若しくはそれより多い置換基で更に置換された、アルケニルエポキシド化合物を含む。そのような好ましい式IIのアルケニルエポキシドの例としては、アリルグリシジルエーテル、フッ素化及び過フッ素化されたアルケニルエポキシドなどが挙げられる。より好ましいアルケニルエポキシドとしては、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。単一のアルキルエポキシド又はアルケニルエポキシド、及び/又は、これらの二種又はそれより多い組み合わせを本発明の組成物において使用することができる。
【0031】
[0026] 一定の他の好ましい態様において、本発明の組成物において酸捕集剤(acid scavenger)として使用するためのアルキルエポキシドは、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルを含む。本発明において使用するのに適するポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの例としては、ヨーロッパのSACHEMから商業的に入手可能なエーテルが挙げられる。
【0032】
[0027] 更に、一定の態様において、本発明において使用するためのエポキシドは、芳香族、アルキル、及び/又は、アルケニル置換基の二種又はそれより多い組み合わせを含む。そのようなエポキシドは、一般に“多置換エポキシド”と呼ばれる。
【0033】
[0028] 一定の好ましい態様にしたがえば、本発明において使用するための安定化剤は、少なくとも一種のフェノール化合物と、少なくとも一種の芳香族、アルキル、又はアルケニルエポキシドとの組み合わせを含む。適する組み合わせの例としては、トコフェロール及びアリルグリシジルエーテル、BHT及びグリシジルブチルエーテル、を含む安定化剤などが挙げられる。一定の特に好ましい組み合わせとしては、トコフェロール及びアリルグリシジルエーテルを含む安定化剤などが挙げられる。
【0034】
[0029] 任意の適する相対量の少なくとも一種のフェノール化合物と、少なくとも一種の芳香族、アルキル、又はアルケニルエポキシドとを、好ましい安定化剤において使用することができる。例えば、フェノール化合物対芳香族又はフッ素化アルキルエポキシドの重量比は、約1:99〜約99:1であることができる。一定の好ましい態様において、フェノール化合物対芳香族、アルキル、アルケニル、多置換、又はフッ素化アルキルエポキシドの重量比は、約30〜約1、より好ましくは約7〜約1、より好ましくは約2〜約1、更により好ましくは約1:1である。
【0035】
[0030] 任意の適する有効量の安定化剤を本発明の組成物において使用することができる。本明細書中で使用するように、“有効な安定化量”という用語は、組成物に添加した場合に、その組成物が同じ又は同様の条件下で元の組成物に対してよりゆっくり、及び/又はより少ない程度に分解する、安定化された組成物をもたらす、本発明の安定化剤の量をいう。一定の好ましい態様において、安定化剤の“有効な安定化量”は、組成物に添加した場合に、その組成物が、標準試験であるSAE J1662(1993年6月発行)及び/又はASHRAE 97−1983Rの少なくとも一方、又は両方の条件下で、元の組成物に対してよりゆっくり、及び/又はより少ない程度に分解する、安定化された組成物をもたらす、本発明の安定化剤の量を含む。一定のより好ましい態様において、安定化剤の“有効な安定化量”は、組成物に添加した場合に、その組成物が、標準試験であるSAE J1662(1993年6月発行)及び/又はASHRAE 97−1983Rの少なくとも一方の条件下で、ジクロロジフルオロメタン(R−12)を含む匹敵する組成物の鉱油中での安定性より良好でない場合は少なくとも同程度によい安定性を有する、組成物をもたらす量を含む。本発明において使用するための一定の好ましい安定化剤の有効量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、約0.001〜約10重量%、より好ましくは約0.01〜約5重量%、更により好ましくは約0.3〜約4重量%、更により好ましくは約0.3〜約1重量%を含む。
【0036】
[0031] 一定の好ましい態様において、本発明の組成物は、更に潤滑剤を含む。種々の慣用的な潤滑剤のうち任意のものを本発明の組成物において使用することができる。潤滑剤について重要な要件は、冷凍系において使用する場合、コンプレッサーが潤滑されるように、系のコンプレッサーに潤滑剤が充分に戻らなければならないということである。したがって、任意の所与の系について潤滑剤の適性は、部分的には冷媒/潤滑剤の特徴により決められ、また部分的には使用することが意図される系の特徴により決められる。適する潤滑剤の例としては、鉱油、アルキルベンゼン、ポリオールエステルが挙げられ、ポリアルキレングリコール、PAG油などが含まれる。鉱油は、パラフィン油又はナフテン油を含むもので、商業的に入手可能である。商業的に入手可能な鉱油としては、WitcoからのWitcol LP 250(登録商標)、Shrieve ChemicalからのZerol 300(登録商標)、WitcoからのSunisco 3GS、及びCalumetからのCalumet RO15が挙げられる。商業的に入手可能なアルキルベンゼン潤滑剤としては、Zerol 150(登録商標)が挙げられる。商業的に入手可能なエステルとしては、Emery 2917(登録商標)及びHatcol 2370(登録商標)として入手可能なネオペンチルグリコールジペラルゴネートが挙げられる。他の有用なエステルとしては、リン酸エステル、二塩基酸エステル、及びフルオロエステルが挙げられる。好ましい潤滑剤としては、ポリアルキレングリコール及びエステルが挙げられる。一定のより好ましい潤滑剤としては、ポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0037】
[0032] 本発明の組成物は、多種多様な応用において有用性を有する。例えば、本発明のひとつの態様は、本発明の共沸混合物様組成物を含む冷媒に関する。
[0033] 本発明の冷媒は、空調、冷凍、ヒートポンプ、HVAC系などをはじめとする、多種多様な冷凍系のうち任意のものにおいて使用することができる。一定の好ましい態様において、本発明の冷媒は、例えば、HFC−134aなどのHFC冷媒とともに使用するために当初設計された冷凍系において使用する。本発明の好ましい冷媒は、慣用的なHFC冷媒と同程度に低いか、又はこれより低いGWP、及びそのような冷媒と同程度に高いか、又はこれより高い容量をはじめとする、HFC−134a及び他のHFC冷媒の所望な特徴のうち多くを示す傾向がある。本発明の冷媒組成物は、物品を冷却するために使用することができ、それは、冷却すべき物品の近傍で本発明の冷媒を蒸発させることを含む。同様に、本発明の冷媒組成物は、物品を加熱するために使用することができ、それは、加熱すべき物品の近傍で本発明の冷媒を凝縮させることを含む。
【0038】
[0034] 一定の他の態様において、本発明の冷媒は、当初CFC冷媒とともに使用するために設計された冷凍系において使用する。本発明の好ましい冷媒は、鉱油、シリコーン油、ポリアルキレングリコール油などの、CFC冷媒ともに慣用的に使用される潤滑剤を含有する冷凍系において使用することができ、又は、HFC冷媒とともに伝統的に使用される他の潤滑剤とともに使用することができる。本明細書中で使用するように、“冷凍系”という用語は、一般に、冷媒を使用して冷却を提供する、任意の系又は装置、あるいは、そのような系又は装置の任意の部分又は部をいう。そのような冷凍系としては、例えば、空調、電気冷蔵庫、冷蔵室、輸送冷凍系、商業的な冷凍系などが挙げられる。
【0039】
[0035] 一定の態様において、本発明の組成物は、HFC、HCFC、及び/又はCFC冷媒と、それとともに慣用的に使用される潤滑剤とを含有する冷凍系をレトロフィットするために使用することができる。好ましくは、本発明の方法は、置き換えるべき冷媒及び潤滑剤を含有する冷凍系を再充填することを伴い、(a)置き換えるべき冷媒を冷凍系から除去し、同時に前記系における潤滑剤の実質的な部分を保持し、そして(b)本発明の冷媒を系に導入する工程を含む。本明細書中に使用するように、“実質的な部分”という用語は、一般に、塩素を含有する冷媒を除去する前に、冷凍系に含有される潤滑剤の量の少なくとも50%(重量基準)である潤滑剤の量をいう。好ましくは、本発明にしたがった、系における潤滑剤の実質的な部分は、冷凍系において当初含有されていた潤滑剤の少なくとも約60%未満の量、より好ましくは少なくとも約70%の量である。本明細書中で使用するように、“冷凍系”という用語は、冷媒を使用して冷却を提供する、任意の系又は装置、又はそのような系又は装置の任意の部分又は部をいう。そのような冷凍系としては、例えば、空調、電気冷蔵庫、冷蔵室、輸送冷凍系、商業的な冷凍系など、が挙げられる。
【0040】
[0036] 広い範囲の既知の方法のうち任意のものを使用して、系に含有される主要な部分未満の潤滑剤を除去すると同時に、冷媒系から置き換えるべき冷媒を除去することができる。例えば、潤滑剤が炭化水素をベースとする潤滑剤である態様において、冷媒は、伝統的な炭化水素をベースとする潤滑剤と比較してかなり揮発性であることから(冷媒の沸点は一般に10℃未満である一方、鉱油の沸点は一般に200℃より高い)、液体状態の潤滑剤を含有する冷凍系から気体状態にある塩素を含有する冷媒をポンプで送ることにより、容易に除去工程を行うことができる。そのような除去は、オハイオ州のRobinairにより製造される回収系などの冷媒回収系の使用をはじめとする、当技術分野において既知の数多くのやり方のうち任意のもので行うことができる。別の態様では、気体の冷媒を空にした容器に引き込み除去するように、冷却し空にした冷媒容器を冷凍系の低圧側にくっつけることができる。更に、コンプレッサーを冷凍系にくっつけて、系から空にした容器へと冷媒を送ってもよい。上述の開示に照らせば、当業者であれば、塩素を含有する潤滑剤を冷凍系から容易に除去し、炭化水素をベースとする潤滑剤と、本発明にしたがった実質的に塩素を含有しない冷媒とをその中に有する冷凍系を提供することができる。
【0041】
[0037] 本発明の冷媒組成物を冷凍系に導入するためには、広い範囲の方法のうち任意のものを本発明において使用することができる。例えば、ひとつの方法は、冷媒容器を冷凍系の低圧側にくっつけて、冷凍系のコンプレッサーを始動して冷媒を系に引き込むことを含む。そのような態様において、冷媒容器は、系に入る冷媒組成物の量をモニターすることができるようなスケールで置くことができる。所望の量の冷媒組成物を系に導入したら、充填を停止する。別のやり方では、当業者に知られた広い範囲の充填ツールが商業的に入手可能である。したがって、上述の開示に照らせば、当業者は、過度な実験をすることなく本発明にしたがって容易に本発明の冷媒を冷凍系に導入することができる。
【0042】
[0038] 一定の他の態様にしたがえば、本発明は、本発明の冷媒を含む冷凍系、及び、本発明の組成物を凝縮及び/又は蒸発させることにより加熱又は冷却をもたらす方法を提供する。一定の好ましい態様において、本発明にしたがった物品を冷却するための方法は、本発明の共沸混合物様組成物を含む冷媒を凝縮し、その後、冷却すべき物品の近傍でこの冷媒組成物を蒸発させることを含む。
【0043】
[0039] 別の態様において、本発明の共沸混合物様組成物は、噴霧可能な組成物において、単独又は既知の推進剤と組み合わせて、推進剤として使用することができる。推進剤組成物は、本発明の共沸混合物様組成物を含み、より好ましくは本質的に本発明の共沸混合物様組成物からなり、更により好ましくは本発明の共沸混合物様組成物からなる。不活性試薬、溶媒、及び他の材料と一緒に噴霧されるべき活性試薬も噴霧可能な混合物中に存在してもよい。好ましくは、噴霧可能な組成物はエアロゾルである。適する噴霧すべき材料としては、限定されないが、脱臭剤、香料、ヘアスプレー、クレンザー、及び磨き剤などの化粧用材料、並びに抗ぜん息や抗口臭の薬剤などの医薬材料が挙げられる。
【0044】
[0040] 本発明の更に別の態様は、一種又はそれより多い本発明の共沸混合物様組成物を含む発泡剤に関する。他の態様において、本発明は、起泡可能な組成物、好ましくはポリウレタンフォーム及びポリイソシアヌレートフォーム組成物と、フォームを製造する方法を提供する。そのようなフォームの態様において、一種又はそれより多い本発明の共沸混合物様組成物を、起泡可能な組成物において発泡剤として含め、その組成物には、好ましくは、当技術分野においてよく知られているように、フォーム又はセル状の構造を形成するのに適切な条件下で反応し発泡することができる一種又はそれより多い追加の成分が含まれる。参照により本明細書中に援用される“Polyurethanes Chemistry and Technology,”Volumes I and II, Saunders and Frisch, 1962, John Wiley and Sons, New York, NYに記載されたものをはじめとする、当技術分野においてよく知られている方法のうち任意のものを使用し、又は本発明のフォーム態様にしたがって使用するために適合させることができる。
【0045】
[0041] 更に、一定の態様にしたがって、本発明の発泡剤は、ポリスチレンフォーム及び低密度ポリエチレンフォームをはじめとするポリエチレンフォームなどの熱可塑性フォームを発泡させるために使用される。そのような熱可塑性フォームを発泡させるための広い範囲の慣用的な方法のうち任意のものを本発明において使用するために適合させることができる。
【0046】
[0042] 一定の他の好ましい態様にしたがえば、本発明は、流体の可燃性を低減するための方法であって、本発明の組成物を前記流体に添加することを含む方法を提供する。広い範囲の可燃性流体のいずれかに付随する可燃性を本発明にしたがって低減することができる。例えば、エチレンオキシドや、HFC−152a、1,1,1,−トリフルオロエタン(HFC−143a)、ジフルオロメタン(HFC−32)、プロパン、ヘキサン、オクタンなどを含む可燃性のハイドロフルオロカーボン及びハイドロカーボンなどの流体に付随する可燃性を、本発明にしたがって低減することができる。本発明の目的のために、可燃性流体は、ASTM E−681などの任意の標準的な慣用試験法により測定して、引火範囲を示す任意の流体であることができる。
【0047】
[0043] 任意の適する量の本発明の組成物を添加して、本発明にしたがって流体の可燃性を低減することができる。当業者であれば認識するであろうが、添加する量は、少なくとも部分的には、主題の流体が可燃性である程度やその可燃性を低減することが望まれる程度に依存する。一定の好ましい態様において、可燃性流体に添加する組成物の量は、得られる流体を不燃性にするために有効な量である。
【0048】
[0044] 本発明は、火炎を抑制する方法であって、火炎を本発明の組成物を含む流体と接触させることを含む方法を更に提供する。火炎を本発明の組成物と接触させるための任意の適する方法を使用することができる。例えば、本発明の組成物は、火炎上に噴霧、注入などすることができ、又は、火炎の少なくとも一部を組成物中に浸漬することができる。本明細書中の教示に照らして、当業者であれば、種々の慣用的な火炎抑制の装置及び方法を本発明において使用するために容易に適合させることができるだろう。
【0049】
[0045] 更に、特に医療の分野において使用するための、多くの物品、装置、及び材料は、患者や病院スタッフの健康と安全などの健康及び安全の理由から、使用の前に滅菌しなければならない。本発明は、滅菌すべき物品、装置、又は材料を本発明の化合物又は組成物と接触させることを含む、滅菌方法を提供する。そのような方法は、高温滅菌法、又は低温滅菌法のいずれかであることができる。一定の態様において、高温滅菌法は、好ましくは実質的にシールされたチャンバーにおいて、滅菌すべき物品、装置、又は材料を、本発明の化合物又は組成物を含む熱流体に約250〜約270°Fの温度で曝露することを含む。この方法は、通常約2時間未満で完了することができる。しかし、プラスチック製品や電気部品などの一部の物品は、そのような高温に耐えることができず、低温滅菌を必要とする。
【0050】
[0046] 本発明の低温滅菌は、約100〜約200°Fの温度で本発明の化合物又は組成物を使用することを伴う。本発明の化合物は、例えば、エチレンオキシド(EO)、ホルムアルデヒド、過酸化水素、二酸化塩素、及びオゾンをはじめとする、他の一般的な化学滅菌剤と組み合わせて、本発明の滅菌剤組成物を形成してもよい。
【0051】
[0047] 本発明の低温殺菌は、実質的にシールされた、好ましくは気密性のチャンバーで実施される、好ましくは少なくとも二段階のプロセスである。第一の工程(滅菌工程)において、洗浄し、気体透過性バッグに包んだ物品をチャンバーに入れる。次いで、真空を引くことにより、おそらくは空気を流れにより置換することにより、空気をチャンバーから排気する。一定の態様においては、流れをチャンバー中に注入して、好ましくは約30%〜約70%の範囲の相対湿度を達成することが好ましい。そのような湿度は、所望の相対湿度を達成した後にチャンバーに導入される滅菌剤の滅菌有効性を最大限にすることができる。滅菌剤が包みに透過し物品の間隙に到達するのに充分な時間の経過後に、滅菌剤と流れをチャンバーから排気する。
【0052】
[0048] このプロセスの好ましい第二の工程(通気工程)において、物品に通気して滅菌剤の残渣を除去する。そのような残渣を除去することは、本発明の実質的に非毒性の化合物を使用する場合においては任意であるが、毒性の滅菌剤の場合には特に重要である。典型的な通気プロセスとしては、空気洗浄、連続通気、及びこれらふたつの組み合わせが挙げられる。空気洗浄はバッチプロセスであり、通常は比較的短い期間、例えば12分間、チャンバーを排気し、次いで、大気圧又はそれより高い圧力で空気をチャンバーに導入することを含む。このサイクルを、滅菌剤の所望の除去が達成されるまで、任意の回数繰り返す。連続通気は、典型的には、空気をチャンバーの一方の側の入口から導入し、次いで、チャンバーの他の側の出口から出口にわずかな減圧を適用することにより抜き出すことを伴う。しばしば、このふたつのアプローチを組み合わせる。例えば、一般的なアプローチは、空気洗浄に次いで通気のサイクルを行うことを伴う。
【0053】
[0049] 本発明の組成物の他の使用としては、溶媒、洗浄剤などとしての使用が挙げられる。当業者であれば、過度な実験をすることなく本発明の組成物をそのような用途において使用するために適合させることができる。
【0054】
[0050] 本発明の共沸混合物様組成物の他の使用としては、溶媒、洗浄剤などとしての使用が挙げられる。当業者であれば、過度な実験をすることなく本発明の組成物をそのような用途において使用するために適合させることができる。
【0055】
[0051] 本発明を、これらに限定されないが、いかなるようにも限定することなく、説明に役立つと意図された以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0056】
[0052] 実施例1
頂部に凝縮器を備えた真空ジャケット付き管からなる沸点測定装置で、更に石英温度計を備えたものを使用する。約18gのHFO−1234yfを沸点測定装置に充填し、次いで、BFO−1215B1を少量の測定した量ずつ添加する。BFO−1215B1をHFO−1234yfに添加すると温度降下が観察され、これは二元系の最小沸点共沸混合物が形成されたことを示す。BFO−1215B1が約0より多く約56重量%までで、組成物の沸点は約1.2℃又はそれ未満の温度だけ変化した。表1に示す二元系混合物を検討し、組成物の沸点は約2℃未満変化した。組成物はこの範囲にわたって共沸混合物及び/又は共沸混合物様の特性を示す。
【0057】
【表1】

【0058】
[0053] 実施例2
ASTM−E681の装置を使用して、HFO−1234yfとBFO−1215B1の混合物の可燃性を測定した。ASHRAE−34に記載された手順を使用して、60℃及び100℃にて混合物の可燃性を判断した。これにより、60℃では、混合物の臨界可燃性比(critical flammability ratio, CFR)はBFO−1215B1が8mol%、HFO−1234yfが92mol%であることが分かった。同様に、100℃では、混合物の臨界可燃性比(CFR)はBFO−1215B1が10mol%、HFO−1234yfが90mol%であることが分かった。
【0059】
[0054] 好ましい態様とその具体的な実施例を参照することにより本発明を詳細に説明してきたが、本開示及び特許請求の範囲から逸脱することなく修飾及び変更が可能であることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のテトラフルオロプロペン及びブロモフルオロプロペンを含む、共沸混合物様組成物。
【請求項2】
これら二成分の全重量に基づいて、テトラフルオロプロペンが約30%〜約100%未満であり、ブロモフルオロプロペンが約70%〜約1%より多い量である、請求項1記載の共沸混合物様組成物。
【請求項3】
これら二成分の全重量に基づいて、テトラフルオロプロペンが約40%〜約99%であり、ブロモフルオロプロペンが約60%〜約1%である、請求項1記載の共沸混合物様組成物。
【請求項4】
テトラフルオロプロペンが、1,1,1,2−テトラフルオロプロペン、1,1,1,3−テトラフルオロプロペン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の共沸混合物様組成物。
【請求項5】
テトラフルオロプロペンが、1,1,1,2−テトラフルオロプロペン、1,1,1,3−テトラフルオロプロペン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項3記載の共沸混合物様組成物。
【請求項6】
ブロモフルオロプロペンが、3,3,1,1,1−ペンタフルオロ−2−ブロモプロペンである、請求項4記載の共沸混合物様組成物。
【請求項7】
ブロモフルオロプロペンが、3,3,1,1,1−ペンタフルオロ−2−ブロモプロペンである、請求項5記載の共沸混合物様組成物。
【請求項8】
テトラフルオロプロペンが、1,1,1,2−テトラフルオロプロペンである、請求項6記載の共沸混合物様組成物。
【請求項9】
テトラフルオロプロペンが、1,1,1,2−テトラフルオロプロペンである、請求項7記載の共沸混合物様組成物。
【請求項10】
ASHRAE−34(2004)の非可燃性スタンダードを満たし、10又はそれ未満のGWPを有する、請求項1記載の共沸混合物様組成物。
【請求項11】
テトラフルオロプロペンが、1,1,1,2−テトラフルオロプロペン、1,1,1,3−テトラフルオロプロペン、及びこれらの混合物からなる群から選択され、ブロモフルオロプロペンが、3,3,1,1,1−ペンタフルオロ−2−ブロモプロペンである、請求項10記載の共沸混合物様組成物。
【請求項12】
1種又はそれより多い追加の成分を含み、該1種又はそれより多い追加の成分が、安定剤、金属不動態化剤、腐食防止剤、及び潤滑剤からなる群から選択される、請求項1記載の共沸混合物様組成物。
【請求項13】
請求項1記載の共沸混合物様組成物を含む作動流体であって、冷媒、発泡剤、噴霧可能な組成物、滅菌剤、推進剤、火炎抑制剤、及び溶媒からなる群から選択される、前記作動流体。
【請求項14】
請求項1記載の共沸混合物様組成物を含む冷媒。
【請求項15】
請求項14記載の冷媒を含む冷却系。
【請求項16】
請求項14記載の冷媒を冷却すべき物品の近傍で蒸発させることを含む、物品を冷却するための方法。
【請求項17】
請求項14記載の冷媒を加熱すべき物品の近傍で凝縮させることを含む、物品を加熱するための方法。
【請求項18】
噴霧すべき材料と、請求項1記載の共沸混合物様組成物を含む推進剤とを含む、噴霧可能な組成物。
【請求項19】
請求項1記載の共沸混合物様組成物を含む発泡剤。
【請求項20】
請求項19記載の組成物を含む発泡剤の存在下で発泡可能な組成物を発泡させることにより製造された独立気泡フォーム。
【請求項21】
発泡可能な組成物がポリウレタン、ポリイソシヌレート、ポリスチレン、ポリエチレン、及びこれらの混合物を含む、請求項20記載の独立気泡フォーム。
【請求項22】
請求項1記載の共沸混合物様組成物を含む火炎抑制剤を流体に添加することを含む、流体の可燃性を低減する方法。
【請求項23】
火炎を請求項1記載の共沸混合物様組成物を含む火炎抑制剤と接触させることを含む、火炎を抑制する方法。
【請求項24】
滅菌すべき物品を、請求項1記載の共沸混合物様組成物を含む滅菌剤と接触させることを含む、物品を滅菌する方法。
【請求項25】
請求項1記載の共沸混合物様組成物を含む発泡剤を発泡可能な組成物に添加することを含む、フォームを形成する方法。
【請求項26】
発泡剤が請求項1記載の共沸混合物様組成物を含む、ポリオールと発泡剤とのプレミックス。
【請求項27】
交換すべき冷媒と潤滑剤とを含有する冷却系を再充填するための方法であって、次の工程:(a)前記系における潤滑剤の実質的な部分を維持しながら、交換すべき冷媒を冷却系から除去する工程;及び(b)請求項14記載の冷媒を該冷却系に導入する工程を含む、前記方法。

【公表番号】特表2010−519401(P2010−519401A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551800(P2009−551800)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/054961
【国際公開番号】WO2008/106423
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】