説明

テトラフルオロプロペン系発泡剤組成物

本発明は、低い密度を有する発泡性熱可塑性樹脂組成物の調製において用いられる、テトラフルオロプロペン(HFO)と、二酸化炭素、水、アルカンおよびアルコールから選択された少なくとも1種の共発泡剤とを含む発泡剤組成物に関する。HFOには、シス−および/またはトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)またはそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。本発泡剤組成物は、R値が改善された低密度断熱用発泡体の製造において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い密度を有する発泡性熱可塑性樹脂組成物の調製において用いられる、テトラフルオロプロペン(HFO)と、二酸化炭素、水、アルカンおよびアルコールから選択された少なくとも1種の共発泡剤とを含む発泡剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラフルオロプロペン成分は、シス−および/またはトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)またはそれらの混合物から選択される。共発泡剤は、二酸化炭素、水、アルカン、エタノールなどのアルコールまたはそれらの混合物から選択される。発泡剤組成物は、R値特性が改善された低密度断熱用発泡体の製造において有用である。
【0003】
地球気候変動に対して絶えず続いている懸念により、高いオゾン層破壊係数(ODP)および高い地球温暖化係数(GWP)を伴う技術を代替する技術を開発する必要性が高まっている。非オゾン層破壊化合物であるヒドロフルオロカーボン(HFC)は、熱可塑性樹脂発泡体の製造においてクロロフルオロカーボン(CFC)およびヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)に代わる発泡剤として認識されてきたが、ヒドロフルオロカーボン(HFC)は、それでもなお顕著なGWPを有する傾向がある。
【0004】
HFO−1243zf、(シス/トランス)−HFO−1234ze、HFO−1234yfおよび(E/Z)−HFO−1225yeなどのヒドロフルオロオレフィンは、断熱用の押出ポリスチレン発泡体を含む熱可塑性樹脂発泡体の製造のための見込みある低GWP発泡剤として認識されてきた。
【0005】
テトラフルオロプロペンと、二酸化炭素、水、アルカンおよびアルコールから選択された少なくとも1種の共発泡剤とを含む発泡剤組成物が、断熱用発泡体のために特に有用である、より低い密度で良好な長期R値を有する独立気泡発泡体の製造を可能にし得ることが発見された。本発明は、拡大され調節された気泡サイズを有する低密度独立気泡発泡体の製造も可能にし得る。
【0006】
国際公開第2004/037913号パンフレット、国際公開第2007/002703号パンフレットおよび米国特許出願公開第2004119047号明細書は、臭素化化合物およびヨウ素化化合物を含む他の多くの材料の間で、多くのHFOおよびHCFOを含む一般式のハロゲン化アルケンを含む発泡剤を開示している。特定の例は、単独でまたはHFCと組み合わせてのいずれかでHFO、特にHFO−1234zeおよびHFO−1234yfを含むポリスチレンを発泡させる発泡剤組成物、およびHCFO−1233zdを含むPUR発泡のための発泡剤組成物に関して示されている。
【0007】
英国特許出願公開第950,876号明細書は、ポリウレタン発泡体の製造のための方法を開示している。この明細書は、150℃未満、好ましくは50℃未満の沸点を有するいずれの好適なハロゲン化飽和炭化水素またはハロゲン化不飽和炭化水素も発泡剤として使用できることを開示している。トリクロロフルオロエタン、クロロトリフルオロエタンおよび1,1−ジクロロ−2,2−ジフルオロエタンは、3,3,3−トリフルオロプロペンに加えて好適な発泡剤のリストの中で開示されている。
【0008】
カナダ国特許第2016328号明細書は、独立気泡ポリイソシアネート発泡体を調製する方法を開示している。ハロゲン化アルカンおよびアルケンを含む有機化合物発泡剤が開示され、ここで、アルケンはプロピレンであり、ハロゲン化炭化水素はクロロフルオロカーボンであることが可能である。リストされた多くの例示的化合物の中には、特定のペンタフルオロプロペン、テトラフルオロプロペンおよびジフルオロプロペンに加えて、1個の塩素および1〜3個のフッ素を含有する特定のクロロフルオロエチレンがある。
【0009】
米国特許出願公開第2008/135800号明細書は、ポリスチレン発泡のための発泡剤としてのHFO−1234zeの用途を開示している。実施例において示された発泡剤組成物は、100%トランス−HFO−1234ze、50重量%トランス−HFO−1234zeと50重量%HFC−245faおよび80重量%HFO−1234zeと20重量%HFC−245faを含む。発泡剤配合において1234zeを用いて示されたポリスチレン発泡体実施例の内、作られた最低密度は約5pcfであった。この特許出願は、水、CO2およびアルコールを共発泡剤として使用できることを開示しており、これらの共発泡剤を使用できた種々の組成範囲(例えば、水10%〜20%など)を請求している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2004/037913号
【特許文献2】国際公開第2007/002703号
【特許文献3】米国特許出願公開第2004119047号明細書
【特許文献4】英国特許出願公開第950876号明細書
【特許文献5】カナダ国特許第2016328号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/135800号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
断熱用発泡体の製造において、高い長期R値(断熱値)を維持する低密度発泡生成物を有することが望まれる。HFC−134aは長期R値を提供できるけれども、HFC−134aは、HCFC−142bまたはCHC−12を用いるのと同じ低密度に発泡体生成物を作るために十分にポリスチレンに可溶性ではない。HFC−134aが非常に高い核形成密度も有するため、HFC−134aにより作られた発泡体は非常に細かい気泡構造を有する傾向があり、それはすべての用途で望ましいとは限らない。HFC−152aおよびHFC−32は、HFC−134aを用いる場合よりも大きい気泡サイズを有する、より低い密度の発泡体を製造するために使用できるが、ポリスチレン中でのHFC−152aおよびHFC−32の高い拡散係数は、より速く老化し、同じ長期R値をもたない発泡体をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、テトラフルオロプロペンと、二酸化炭素、水、アルカンおよびアルコールならびにそれらの混合物から選択された少なくとも1種の共発泡剤とを含む、オゾン層をほとんど破壊せずかつ低GWPを有する発泡剤の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、断熱用発泡体として使用できる低い密度および改善された長期R値を有する発泡体の製造のために有用な発泡剤および発泡性樹脂組成物を開示している。本発明の好ましい実施形態において、テトラフルオロプロペンは、シス−および/またはトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)またはそれらの混合物から選択される。成分の共発泡剤は、二酸化炭素、水、1,1−ジフルオロエタン、アルカン、およびエタノールなどのアルコールならびにそれらの混合物から選択される。本発明の発泡剤混合物は、立方フィート当たり5ポンド(pcf)未満、望ましくは4.5pcf以下、好ましくは3pcf未満、なおより好ましくは2pcf未満、なおより好ましくは約1.5pcf〜約2pcfの密度を有する熱可塑性樹脂発泡体を提供する。
【0014】
発泡剤がHFO−1234zeと、二酸化炭素、水、アルカンおよびアルコールならびにそれらの混合物から選択された少なくとも1種の共発泡剤との組合せであり、発泡体密度が5pcf(80kg/m3)より低いことが可能、および約4pcf(64kg/m3)以下でさえあり得る場合、特にポリスチレンの低密度発泡体を製造できることが発見された。以前に実証されたよりも少ない全発泡剤を用いて、これを実施できることも発見された。10重量%未満の発泡剤を含有する発泡性樹脂組成物が5pcfより低い発泡体密度をなお達成できることが見出された。HFO−1234zeを用いた以前の研究は、HFO−1234zeを用いる時、密度5pcfほどの発泡体を達成するために10重量%〜14重量%の全発泡剤を用いることを開示した。共発泡剤を含めると、発泡体密度のいっそうの低下および発泡体の特性および/または加工性における改善を提供することが見出された。
【0015】
本発明の組成物は、約50重量%以上のテトラフルオロプロペン、好ましくは60重量%以上のテトラフルオロプロペンを含むことが可能である。テトラフルオロプロペンは、好ましくは1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、なおより好ましくは1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの主としてトランス異性体である。本組成物は、断熱用発泡体、特に厚さ約1/2インチ以上の切断された厚い発泡体の製造において有用であろう。
【0016】
本発明の好ましい組成物は、約5重量%超〜約90重量%のCO2、好ましくは50重量%超のCO2、より好ましくは約70重量%超のCO2を含み、残りの発泡剤の大部分は1234zeを含む。組成物は、約5重量%〜約40重量%未満のアルコール、好ましくはエタノール、および/または約2重量%未満〜約15重量%、好ましくは5重量%未満の水を場合により含有してよい。これらの組成物は、切断された薄い断熱用発泡体の製造において特に有用であろう。
【0017】
本発明の発泡体の連続気泡含有率は、特定の組成物および発泡剤の成分の比に応じて異なることが可能である。約0%〜約30%未満の連続気泡含有率ばかりか50%を上回る連続気泡含有率も達成可能である。断熱用発泡体および海洋浮揚などの用途の場合、約10重量%未満、最も好ましくは約5重量%未満の連続気泡含有率が望ましい。本発明の発泡体の平均気泡サイズは、約0.02mm〜約5mm、好ましくは約0.05〜約1mm、最も好ましくは約0.1〜約0.5mmの範囲であることが可能である。
【0018】
ポリマー発泡体の製造のために好ましい追加の発泡剤組成物は、5〜50重量%のCO2、好ましくは5〜25重量%のCO2と50重量%超の1234zeとを含む。組成物は、5〜約40重量%未満のアルコール、好ましくはエタノール、および/または15重量%未満の水、好ましくは5重量%未満の水を場合により含有してよい。本発明の一実施形態において、発泡剤組成物は、1重量%〜15重量%の間の水を場合により含有する。これらの発泡体は、切断された厚い断熱用発泡体の製造において特に有用であろう。
【0019】
水は、1234ze/CO2/水と1234ze/CO2/エタノール/水のブレンドための追加の発泡剤として用いることが可能である。水は、ブレンド中で約10重量%以下から用いることが可能である。
【0020】
本発明は、CO2リッチ配合の場合、1234zeが発泡体の寸法安定性を改善することを示している。エタノールは、密度を下げ、気泡サイズの拡大をもたらし、そして気泡サイズ均一性を改善するのを更に助けることが可能である。
【0021】
1234zeリッチ配合の場合、CO2は、1234ze単独より低い密度の発泡体の製造を可能にする。1234zeとCO2の組合せに添加されるエタノールは、さらにより低い密度の発泡体の製造を可能にするが、発泡体からの1234zeの透過性を増加させる場合があり、そこで、許容できる最適量が存在し、CO2またはエタノールのレベルは、おそらく他のレベルに応じて異なる。
【0022】
1234zeとHFC−152a(1,1−ジフルオロエタン)のブレンドも特に有用である。約25重量%〜約75重量%の1234zeのブレンドが好ましく、約50重量%の1234zeのブレンドが特に好ましい。全配合物中で約1〜3重量%のCO2を場合により伴う、および発泡剤配合物中の約10重量%、20重量%および30重量%のエタノールを場合により伴う1:3〜3:1の間、好ましくは1:2〜2:1の間の比での1234zeと152aの発泡剤ブレンドは本発明に従い有効である。
【0023】
1234zeと、アルカン、特にシクロペンタンを含むペンタン、ノルマルペンタン、イソペンタンおよびそれらの混合物とのブレンドは有用である。約50重量%の1234zeと、種々のペンタンおよび全配合物中の0〜3重量%のCO2とのブレンドは本発明に従い有効である。本発明の別の実施形態は、テトラフルオロプロペンと約5重量%〜約50重量%のアルカンとを含む発泡剤組成物である。
【0024】
本発明の別の実施形態において、上で記載されたブレンド中のテトラフルオロプロペンはHFO−1234yfである。
【0025】
本発明において記載された発泡体は、本質的に欠陥のない良好な表皮品質を有することが可能であり、気泡サイズ変動を一様にすることが可能である。発泡体欠陥には、特に、樹脂中の未溶解発泡剤によって引き起こされるようなガス孔および大きな空隙、ならびに発泡体表皮上の泡が挙げられる。
【0026】
本発明の別の実施形態は、樹脂を基準にして、約1pph(100部当りの部)超および約100pph未満の発泡剤組成物、好ましくは、樹脂を基準にして、約2pph超および約40pph未満、より好ましくは約3pph超および約25pph未満、なおより好ましくは約4pph超および約15pph未満の発泡剤組成物を含有する発泡性樹脂組成物である。
【0027】
発泡熱可塑性樹脂生成物を調製する方法は次の通りである。いかなる順序においても発泡性ポリマー組成物を含む成分を一緒にブレンドすることにより発泡性ポリマー組成物を調製する。典型的には、ポリマー樹脂を可塑化し、その後初期圧力で発泡剤組成物の成分中にブレンドすることにより発泡性ポリマー組成物を調製する。ポリマー樹脂を可塑化する一般方法は、発泡剤組成物中にブレンドするために十分にポリマー樹脂を軟化させるために十分にポリマー樹脂を加熱することを含む熱可塑化である。一般に、熱可塑化は、熱可塑性ポリマー樹脂のガラス転移温度(Tg)または結晶性ポリマーに関して溶融温度(Tm)付近またはそれ以上に熱可塑性ポリマー樹脂を加熱することを含む。
【0028】
本発明の一実施形態において、熱可塑性ポリマー組成物は、スチレン、エチレン、プロピレンおよびそれらの混合物を含有するポリマーを含む。本発明の好ましい実施形態において、熱可塑性ポリマー組成物は、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマーおよびそれらの混合物に限定されないが、それらを含むスチレンを含有するポリマーを含む。本発明の別の実施形態において、スチレン系熱可塑性ポリマー組成物は、約35重量%未満の共重合されたアクリロニトリルを含む。
【0029】
発泡性ポリマー組成物は、核剤、気泡調節剤、染料、顔料、充填剤、酸化防止剤、押出助剤、安定剤、帯電防止剤、難燃剤、IR(赤外線)減衰剤および断熱用添加剤などの追加の添加剤を含有することが可能である。核剤は、特に、タルク、炭酸カルシウム、安息香酸ナトリウムなどの材料、およびアゾジカルボンアミドまたは炭酸水素ナトリウムおよびクエン酸のような化学発泡剤を含む。IR減衰剤および断熱用添加剤は、特に、カーボンブラック、グラファイト、二酸化ケイ素、金属フレークまたは金属粉末を含むことが可能である。難燃剤は、特に、ヘキサブロモシクロデカンおよびポリ臭素化ビフェニルエーテルなどの臭素化材料を含むことが可能である。
【0030】
本発明の発泡体調製方法には、バッチ法、半バッチ法および連続法が挙げられる。バッチ法は、貯蔵可能状態で発泡性ポリマー組成物の少なくとも一部を調製することと、その後、いつか将来のある点で発泡性ポリマー組成物の当該部分を用いて発泡体を調製することとを含む。
【0031】
半バッチ法は、発泡性ポリマー組成物の少なくとも一部を調製することと、当該発泡性ポリマー組成物をすべて単一プロセスにおいて発泡体に断続的に発泡させることとを含む。例えば、本明細書において参照により援用される米国特許第4,323,528号明細書は、累積押出法を介してポリオレフィン発泡体を製造する方法を開示している。この方法は、1)熱可塑性樹脂材料と発泡剤組成物を混合して、発泡性ポリマー組成物を形成する工程と、2)発泡性ポリマー組成物が発泡することを可能にしない温度および圧力で維持された保持域に発泡性ポリマー組成物を押し出す工程(保持域は、発泡性ポリマー組成物が発泡するより低い圧力の域の中へのオリフィス開口を形成するダイ、およびダイオリフィスを閉じる開閉できるゲートを有する)と、3)周期的にゲートを開ける一方で、可動ラムによって機械的圧力を発泡性ポリマー組成物上に実質的に同時に加えて、発泡性ポリマー組成物をより低い圧力の域にダイオリフィスを通して保持域から排出する工程と、4)排出された発泡性ポリマー組成物が発泡することを可能にして、発泡体を形成する工程とを含む。
【0032】
連続法は、発泡性ポリマー組成物を形成し、その後、連続的な方式で当該発泡性ポリマー組成物を発泡させることを含む。例えば、ポリマー樹脂を加熱して溶融樹脂を形成することにより押出機中で発泡性ポリマー組成物を調製し、初期圧力で発泡剤組成物を溶融樹脂にブレンドして、発泡性ポリマー組成物を形成し、その後、発泡圧力でダイを通して当該発泡性ポリマー組成物を域に押し出し、発泡性ポリマー組成物が発泡体に発泡することを可能にする。望ましくは、発泡剤を添加した後およびダイを通して押し出す前に発泡性ポリマー組成物を冷却して、発泡体の特性を最適化する。例えば、熱交換機により発泡性ポリマー組成物を冷却する。
【0033】
本発明の発泡体は、シート、厚板、ロッド、チューブ、ビードまたはそれらのいずれかの組合せを含む想像できるいかなる発泡体であることも可能である。互いに結合される区別できる複数の縦方向発泡体部材を含む積層発泡体は本発明に含まれる。
【0034】
本発明の有利な特性を以下の実施例において参照しやすく記載することが可能である。以下の実施例は本発明を例示するが、本発明を限定しない。
【実施例】
【0035】
27mmの内部バレル直径および直径の40倍のバレル長さを有する逆回転二軸スクリュー押出機を用いて押出ポリスチレン発泡体を製造した。スクリューの設計は、発泡用途のために適していた。押出機バレル内の圧力をギヤ−ポンプで制御し、発泡剤が押出機内で溶解するように十分に高く設定した。押出機ダイは、6.35mmのギャップ幅を有する調節可能なリップスロットダイであった。汎用ポリスチレン樹脂(Total Petrochemicals PS−523W、MFI=11)を押出実験のために用い、約3.64kg/時間(8lb/hr)または約4.54kg/時間(10lb/hr)のいずれかの調節された速度で押出機に供給した。高圧送りポンプを用いて発泡剤を調節された速度でポリスチレン樹脂溶融物に送った。押出機内で、発泡剤を樹脂溶融物中で混合し溶解させて、発泡性樹脂組成物を製造した。発泡性樹脂組成物を適切な発泡温度に冷却し、その後、圧力低下により発泡が開始するダイから押し出した。幾つかの実施例において、タルクを核剤として用い、ポリスチレンと前もってブレンドしてポリスチレン中でタルク50重量%のマスターバッチを製造した。このマスターバッチのビードをポリスチレンペレットと混合して、各実験において所望のタルク重量%を達成した。
【0036】
樹脂供給口、注入器周りまたは圧力変換器口周り、アダプターフランジからなどの押出機からの発泡剤の重大な漏れがないことを検証するために携帯型ハロゲン化炭素検出器を用いた。押出機からの発泡剤の重大な漏れは、配合の不確実性または添加された発泡剤の量の過大評価をもたらす。すべての実施例において、発泡剤の漏れを検出しなかった。
【0037】
測定された典型的な発泡体特性は、密度、連続気泡含有率および気泡サイズを含む。密度は、ASTM D792に準拠して、または単純な水置換法を用いて測定し、連続気泡含有率は、ASTM D285−Cに準拠するガス比重びん法を用いて測定し、気泡サイズは、発泡体サンプル破面の走査電子顕微鏡(SEM)写真からの気泡径を平均することにより測定した。SEM画像は、気泡構造を観察するとともに連続気泡含有率を定性的に検査するためにも用いた。
【0038】
比較例1〜3:E−HFO−1234ze発泡剤による発泡体
4.54kg/m3の樹脂供給速度で、それぞれ5.9重量%、7.0重量%および7.9重量%の使用量で発泡剤としてE−HFO−1234ze(トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)を用いて比較例1〜3を製造した。得られた発泡体の密度および平均気泡サイズを表1において示している。発泡剤として本質的にE−HFO−1234zeを用いる時、5.9重量%より高い発泡剤の量の増加は、発泡体の密度の減少をもたらさなかった。発泡剤として用いられたE−HFO−1234zeの重量%が5.9重量%から7.0重量%、7.9重量%に増加するにつれて発泡体の欠陥も増加した。7.9重量%で、顕著により多いガス孔があった。
【0039】
【表1】

【0040】
比較例4:HFO−1234yf発泡剤による発泡体
4.54kg/m3の樹脂供給速度で、5.7重量%の使用量で発泡剤としてHFO−1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)を用いて比較例4を製造した。得られた発泡体は、71.6kg/m3(4.5pcf)の密度および15%より小さい連続気泡含有率を有していた。
【0041】
比較例5:HFC−134a/CO2発泡剤による発泡体
3.64kg/m3の樹脂供給速度で、発泡剤としてHFC−134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)および共発泡剤として二酸化炭素(CO2)を用いて比較例5を製造した。HFC−134aを5重量%の使用量で用い、CO2を1重量%の使用量で用いた。発泡体は、52.3kg/m3(3.26pcf)の密度、100マイクロメートルより小さい平均気泡サイズを有していたが、多くの欠陥およびガス孔を有していた。SEM画像は発泡体が高度に連続気泡であることを示した。
【0042】
実施例6:HFO−1234ze/CO2発泡剤による発泡体
E−HFO−1234zeをHFC−134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)の代わりに発泡剤として用いた以外は比較例5とほぼ同じ加工条件を用いて実施例6を同じ方式で製造した。二酸化炭素(CO2)を共発泡剤として用いた。E−HFO−1234zeを5.2重量%の使用量で用い、CO2を1重量%の使用量で用いた。発泡体は、55.6kg/m3(3.47pcf)の密度、100マイクロメートルより小さい平均気泡サイズを有し、まさに殆ど欠陥をもたなかった。これは、殆ど同じ加工条件および発泡剤の使用量で、発泡体の重大な欠陥があった比較例5とは異なっている。SEM画像は、発泡体が比較的高い連続気泡含有率を有するが、比較例5より均一な気泡構造を有することを示した。
【0043】
実施例7:HFO−1234ze/CO2発泡剤による発泡体
E−HFO−1234zeを4.5重量%の使用量で用いた以外は実施例6と同じ方式で実施例6を製造した。CO2を1重量%の使用量で用いた。発泡体は、55.5kg/m3(3.46pcf)の密度、100マイクロメートルより小さい平均気泡サイズを有し、明らかな欠陥をもたなかった。SEM画像は、発泡体が主として独立気泡であり、実施例6より低い連続気泡含有率を有することを示した。
【0044】
実施例8:HFO−1234ze/HFC−152a発泡剤による発泡体
E−HFO−1234zeおよびHFC−152a(1,1−ジフルオロエタン)を発泡剤として用いた以外は実施例6と同じ方式で実施例8を製造した。E−HFO−1234zeを5.0重量%の使用量で用い、HFC−152aを4.0重量%の使用量で用いた。発泡体は、50.6kg/m3(3.16pcf)の密度を有し、多少のガス孔をもっていた。
【0045】
実施例9:HFO−1234ze/HFC−152a/CO2発泡剤による発泡体
CO2を共発泡剤として用いた以外は実施例8と同じ方式で実施例9を製造した。E−HFO−1234zeを5.0重量%の使用量で用い、HFC−152aを4.0重量%の使用量で用い、CO2を0.6重量%の使用量で用いた。発泡体は、50.5kg/m3(3.15pcf)の密度を有し、多少のガス孔をもっていた。
【0046】
実施例10:HFO−1234ze/HFC−152a発泡剤による発泡体
E−HFO−1234zeを4.5重量%の使用量で用い、HFC−152aを1.8重量%の使用量で用いた以外は実施例6と同じ方式で実施例10を製造した。発泡体は、52.9kg/m3(3.30pcf)の密度を有し、明らかな欠陥をもたなかった。
【0047】
実施例11:HFO−1234ze/エタノール/CO2発泡剤による発泡体
発泡剤の組み合わせがE−HFO−1234ze、CO2および乾燥エタノール(EtOH)を含んでいた以外は実施例6と同じ方式で実施例11を製造した。E−HFO−1234zeを7.0重量%の使用量で用い、CO2を0.6重量%の使用量で用い、エタノールを2.0重量%の使用量で用いた。発泡体は、49.8kg/m3(3.11pcf)の密度を有し、50マイクロメートルより小さい平均気泡サイズを有し、まさに殆ど欠陥をもたなかった。
【0048】
実施例12:HFO−1234ze/エタノール発泡剤による発泡体
発泡剤の組み合わせがE−HFO−1234zeおよび乾燥エタノール(EtOH)のみを含んでいた以外は実施例11と同じ方式で実施例12を製造した。E−HFO−1234zeを7.1重量%の使用量で用い、エタノールを1.8重量%の使用量で用いた。発泡体は、50.7kg/m3(3.16pcf)の密度を有し、50マイクロメートルより小さい平均気泡サイズを有し、明らかな欠陥をもたなかった。
【0049】
実施例13:HFO−1234ze/シクロペンタン発泡剤による発泡体
E−HFO−1234zeおよびシクロペンタン(cC5)を発泡剤として用いた以外は実施例6と同じ方式で実施例13を作った製造した。E−HFO−1234zeを5.0重量%の使用量で用い、シクロペンタンを4.0重量%の使用量で用いた。発泡体は、40.2kg/m3(2.51pcf)の密度を有し、明らかな欠陥をもたず、大きい断面積を有し、拡大された気泡サイズ(250μmより大きい)をもっていた。SEM画像は、気泡構造が殆ど完全に独立気泡であることを示した。押出機ダイでの背圧は、〜970psigの実施例1〜12より顕著に低く、向上した加工性を示した。
【0050】
実施例6〜13および比較例1、2、3および5の結果を表2において示している。実施例は、本発明の発泡剤の組合せが、唯一の発泡剤としてテトラフルオロプロペンを用いた時より低い密度および/または大きい気泡サイズのポリスチレン発泡体の製造を可能にすることを示している。
【0051】
【表2】

【0052】
本発明は特定の実施形態を参照して本明細書において例示され説明されているが、添付の請求項が、示された詳細に限定されないことが意図されている。むしろ、当業者によってこれらの詳細において種々の改変がなされ得ることが予想され、こうした改変は、請求された主題の精神内および範囲内であってよく、これらの請求項はしかるべく解釈されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロプロペンと、二酸化炭素、水、アルカン、1,1−ジフルオロエタン、アルコールまたはそれらの混合物から選択された少なくとも1種の共発泡剤とを含む熱可塑性樹脂の発泡のための発泡剤組成物。
【請求項2】
前記アルコールがエタノールである請求項1に記載の発泡剤組成物。
【請求項3】
前記アルカンが、ペンタン、ブタンまたはそれらの混合物から選択される請求項1又は2に記載の発泡剤組成物。
【請求項4】
前記テトラフルオロプロペンがHFO−1234zeである請求項1〜3いずれか1項に記載の発泡剤組成物。
【請求項5】
前記HFO−1234zeが本質的にトランス異性体である請求項4に記載の発泡剤組成物。
【請求項6】
前記テトラフルオロプロペンがHFO−1234yfである請求項1〜3いずれか1項に記載の発泡剤組成物。
【請求項7】
約50重量%以上のテトラフルオロプロペンを含む請求項1〜6いずれか1項に記載の発泡剤組成物。
【請求項8】
約5重量%〜約90重量%の二酸化炭素を含む請求項1〜7いずれか1項に記載の発泡剤組成物。
【請求項9】
約5重量%〜約40重量%の間のエタノールを含む請求項2〜8いずれか1項に記載の発泡剤組成物。
【請求項10】
約1重量%〜約15重量%の間の水を含む請求項1〜9いずれか1項に記載の発泡剤組成物。
【請求項11】
それぞれ約1:3〜約3:1の比でテトラフルオロプロペンと1,1−ジフルオロエタンとを含む請求項1〜10いずれか1項に記載の発泡剤組成物。
【請求項12】
それぞれ約1:2〜約2:1の比でテトラフルオロプロペンと1,1−ジフルオロエタンとを含む請求項11に記載の発泡剤組成物。
【請求項13】
約5重量%〜約50重量%のアルカンを含む請求項1〜12いずれか1項に記載の発泡剤組成物。
【請求項14】
前記アルカンがペンタン、ブタンまたはそれらの混合物である請求項1に記載の発泡剤組成物。
【請求項15】
核剤、気泡調節剤、染料、顔料、充填剤、酸化防止剤、押出助剤、安定剤、帯電防止剤、難燃剤、IR減衰剤、断熱用添加剤およびそれらの混合物を更に含む請求項1〜14いずれか1項に記載の発泡剤組成物。
【請求項16】
テトラフルオロプロペンと、二酸化炭素、水、アルカン、アルコールまたはそれらの混合物から選択された少なくとも1種の共発泡剤とを含む発泡剤と熱可塑性樹脂とを含む発泡性樹脂組成物。
【請求項17】
約10重量%未満のテトラフルオロプロペンを含有する請求項16に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項18】
前記熱可塑性樹脂が、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマーまたはそれらの混合物から選択される請求項16又は17に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項19】
テトラフルオロプロペンと、二酸化炭素、水、アルカン、アルコールまたはそれらの混合物から選択された少なくとも1種の共発泡剤とを含む発泡剤組成物と発泡性樹脂とを含むアルケニル芳香族ポリマー発泡体。
【請求項20】
約1.5ポンド/立方フィートと約5ポンド/立方フィートとの間の密度を有する請求項19に記載のポリマー発泡体。
【請求項21】
約50%未満の連続気泡含有率を有する請求項19又は20に記載のポリマー発泡体。
【請求項22】
約0.02mm〜約5mmの平均気泡サイズを有する請求項19〜21いずれか1項に記載のポリマー発泡体。

【公表番号】特表2012−516381(P2012−516381A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548270(P2011−548270)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/022306
【国際公開番号】WO2010/088320
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
【Fターム(参考)】