説明

テラヘルツ波の測定装置及び測定方法

【課題】テラヘルツ波の測定において、テラヘルツ波との関連性が低い信号成分を抑制することが可能なテラヘルツ波の時間波形を取得するための装置及び方法を提供する。
【解決手段】テラヘルツ波の時間波形を取得するための装置及び方法において、第1の速度パターンにより遅延光学部103を駆動して第1の時間波形を取得し、第1の速度パターンと異なる第2の速度パターンにより遅延光学部103を駆動して第2の時間波形を取得する。第1の時間波形と第2の時間波形を平均して最終的な時間波形を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ波の測定装置及び測定方法に関する。特には、時間領域でのテラヘルツ波を測定する装置(THz-TDS装置、THz-Time Domain Spectroscopy装置)及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ波は、0.03THz以上30THz以下の範囲のうちの任意の周波数帯域の成分を有する電磁波である。この様な周波数帯域には、生体分子を始めとして、様々な物質の構造や状態に由来する特徴的な吸収が多く存在する。この様な特徴を活かして、非破壊にて物質の分析や同定などを行う検査技術が開発されている。また、X線に替わる安全なイメージング技術や高速な通信技術への応用が期待されている。
【0003】
一方、テラヘルツ波の時間波形は、多くの場合、サブピコ秒のパルス形状である。一般的に、この様なパルスを実時間で取得することは困難である。そのため、THz-TDS装置は、フェムト秒オーダのパルス幅を有する超短パルス光によってサンプリング計測を行っている。このテラヘルツ波のサンプリングは、テラヘルツ波を発生する発生部とテラヘルツ波を検出する検出部とに夫々到達する励起光の時間差を調整することで実現される。例えば、この時間差は、折り返し光学系を有するステージ(本明細書では遅延光学部とも呼ぶ)を励起光の伝搬経路に挿入し、励起光の折り返し量を調整することで取得する(特許文献1参照)。多くの場合、上記発生部又は検出部として、微小間隙を有するアンテナ電極パターンを半導体膜に設けた光伝導素子を用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-20268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
THz-TDS装置の測定感度が向上するに従い、遅延光学部に用いたステージの振動の影響が顕著になる。遅延光学部に用いるステージが振動すると、励起光の光軸が揺れる。この結果、光伝導素子の微小間隙に照射される単位面積あたりの光量が変化し、装置で再構築されるテラヘルツ波の時間波形に対し、この振動成分が重畳する。この様な時間波形をフーリエ変換すると、図6に示す様に、検出部が検出したテラヘルツ波のスペクトル623と共に、遅延光学部の振動による偽スペクトル624が現れる。例えば、テラヘルツ波の時間波形に数100Hzの振動成分が重畳すると、測定系の構成や遅延光学部の駆動状態にもよるが、典型的には4THz〜6THz付近に偽スペクトルが現れる。この様な偽スペクトルは、測定装置の測定帯域を制限し、分析性能を低下させる要因となる。この様に、遅延光学部の振動による影響を抑制することが、テラヘルツ波の測定装置に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、テラヘルツ波発生部とテラヘルツ波検出部とに夫々到達する励起光の時間差について、遅延光学部を用いて、励起光が伝搬する光路長によって調整し、時間領域分光法によりテラヘルツ波の時間波形を測定する本発明の方法は次のステップを含む。第1の速度パターンにより前記遅延光学部を駆動し、第1の時間波形を取得するステップ。前記第1の速度パターンと異なる第2の速度パターンにより前記遅延光学部を駆動し、第2の時間波形を取得するステップ。前記第1の時間波形と前記第2の時間波形を平均するステップ。また、上記課題に鑑み、時間領域分光法によりテラヘルツ波の時間波形を測定する本発明の装置は、次の構成要素を有する。テラヘルツ波を発生するための発生部。前記発生部で発生されたテラヘルツ波を検出するための検出部。前記発生部と前記検出部とに夫々到達する励起光の時間差について、前記励起光が伝搬する光路長によって調整するための遅延光学部。前記遅延光学部を駆動するための互いに異なる複数の速度パターンを提供するための駆動速度調整部。前記複数の速度パターンによって前記遅延光学部を駆動することで、各駆動の都度、前記検出部からの検出信号に基づき得られた複数の時間波形を平均するための処理部。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、遅延光学部を駆動する速度パターンを変化させて時間波形を取得し、平均している。速度パターンを変化させると、テラヘルツ波の時間波形を構築するためのサンプリングの時間間隔が変化する。この時、構築されるテラヘルツ波の時間波形は時間間隔に依存しないが、テラヘルツ波との関連性が低い信号成分の形状は変化する。この特徴を活かし、速度パターン毎に取得されるデータを平均することで、テラヘルツ波との関連性が低い信号成分を抑制する。このため、周波数スペクトルに重畳していた偽スペクトルが抑制され、測定帯域を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る測定装置の一例の概略構成図。
【図2】速度パターンに含まれる駆動速度を説明する図。
【図3】本発明の測定装置及び方法の処理の一例を説明する図。
【図4】本発明の測定装置及び方法の動作の一例のフロー図。
【図5】本発明の測定装置及び方法の複数の速度パターンを説明する図。
【図6】本発明の課題を説明する図。
【図7】実施例1における速度パターンに含まれる駆動速度を説明する図。
【図8】実施例1における時間波形の測定結果を示す図。
【図9】実施例1における周波数スペクトルの測定結果を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
時間領域分光法によりテラヘルツ波の時間波形を取得する本発明の装置及び方法は、異なる速度パターンで遅延光学部を駆動して複数の時間波形を取得し、これらを平均することで最終的な時間波形を取得することを特徴とする。前記考え方に基づき、時間領域分光法によりテラヘルツ波の時間波形を取得するための本発明の装置及び方法の基本的な構成は、上述した構成を有する。
【0010】
以下、本発明の思想を実施し得る形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明のテラヘルツ波測定装置の一例の概略構成図である。図1の装置は、THz-TDS装置の既知の基本構成を踏襲しており、時間領域でテラヘルツ波の時間波形を測定する装置である。図1に示す様に、本装置は、発生部101、検出部102、遅延光学部103、駆動速度調整部104、処理部105、バイアス印加部106、電流検出部107、レーザ源108を含む。
【0011】
発生部101は、テラヘルツ波を発生する部分である。発生部101における発生原理として、瞬時電流を利用する手法と、キャリヤのバンド間遷移を利用する手法がある。瞬時電流を利用する手法としては、半導体や有機結晶の表面に励起光を照射してテラヘルツ波を発生する手法がある。この手法として、金属電極でアンテナパターンを半導体薄膜上に形成した素子(光伝導素子)に電界を印加した状態で励起光を照射する手法がある。また、PINダイオードが適用できる。また、利得構造におけるキャリヤのバンド間遷移を利用する手法としては、半導体量子井戸構造を用いる手法が適用できる。
【0012】
検出部102は、テラヘルツ波の電界強度を検出する部分である。検出部102における検出原理として、励起光照射時の光伝導性の変化より、テラヘルツ波の電界強度に対応した電流を検出する手法がある。この様な電流を検出する手法において、上述した光伝導素子が適用できる。また、電気光学効果を用いて電場を検出する手法や磁気光学効果を用いて磁場を検出する手法がある。電気光学効果を用いて電場を検出する手法としては、偏光スプリッター(直交偏光子)と電気光学結晶を用いた手法が適用できる。磁気光学効果を用いて磁場を検出する手法としては、偏光スプリッター(直交偏光子)と磁気光学結晶を用いた手法が適用できる。ここでは、発生部101と検出部102として、光伝導素子を用いる例で説明を行う。
【0013】
本実施形態において、レーザ源108は、超短パルスレーザ光を出力する部分である。上述した発生部101と検出部102は、この超短パルスレーザ光の照射によりキャリヤを半導体薄膜に励起することで動作する。このことから、本明細書では、この超短パルスレーザ光を励起光とも呼ぶ。図1に示す様に、励起光は、L1とL2の二つの光路に分岐される。本実施形態では、光路L1を通る励起光は発生部101に照射される。光路L2を通る励起光は、後述する遅延光学部103を介して検出部102に照射される。
【0014】
テラヘルツ波の時間波形は、多くの場合ピコ秒以下のパルス波形であるため、実時間での取得が困難である。そのため、上述した励起光によって、テラヘルツ波の時間波形をサンプリング計測する。発生部101のテラヘルツ波発生時と検出部102のテラヘルツ波検出時との間の遅延時間を調整する遅延部である遅延光学部103は、テラヘルツ波の時間波形を構成するデータについて、このサンプリングする位置を調整する部分である。具体的には、発生部101に照射する励起光に対し、検出部102に照射する励起光の到達時間を遅延させる。この発生部101と検出部102に夫々到達する励起光の時間差の調整手法は、励起光が伝搬する光路長を直接調整する手法と実効的な光路長を調整する手法がある。光路長を直接調整する手法としては、励起光を折り返す折り返し光学系とこの光学系を折り返し方向に動かす可動部とを用いる手法がある。実効的な光路長を調整する手法としては、励起光が伝搬する光路中の時定数(屈折率)を変化させる手法がある。図1は、1段の折り返し光学系と可動部としての直動ステージとを用いる例を示している。ここでは、可動部の動作は、後述する駆動速度調整部104によって制御される。可動部によって折り返し光学系の位置を調整することで、レーザ源108から検出部102に至る光路長L2が変化する。この光路長の変化を利用して、発生部101と検出部102とに夫々到達する励起光の時間差を、光路長差L2-L1より換算して調整する。この可動部の駆動速度が速ければ、テラヘルツ波の時間波形の取得時間は短くなる。
【0015】
バイアス印加部106は、発生部101を駆動するためのバイアスを供給する部分である。発生部101として光伝導素子を用いる場合、アンテナパターンを含む金属電極に電圧を印加する。特に、後述する電流検出部107がロックイン検出系を含む場合、バイアス印加部106が供給する電圧を、ロックイン検出系の参照信号と同等の周波数で変調させる。ロックイン検出を行う場合、変調方法は、バイアス印加部106によりバイアスを変調する態様だけでなく、光チョッパーを用いて励起光を変調する態様も採用可能である。後者の態様のときは、バイアス印加部106は、直流バイアスを光伝導素子に印加する。
【0016】
電流検出部107は、電流信号を測定可能なレベルの電圧信号に変換する部分である。検出部102として光伝導素子を用いる場合、電流検出部107は、検出部102から出力される電流信号を電圧信号に変換する。この電流信号を電圧信号に変換する変換率を電流電圧変換率と呼ぶ。電流電圧変換率は、電流検出部107に入力される電流信号に対する電流検出部107の出力が回路の定格を越えて飽和しない範囲で選択される。測定装置のS/N比を向上させるためには、この電流電圧変換率は大きい程良い。前述した様に、検出部102から出力される信号が微小な場合、電流検出部107は、ロックイン検出系を含むことがある。具体的には、電流電圧変換を担う回路の後段にロックイン検出系が配置される。ロックイン検出系を含む場合、電流電圧変換を担う部分の回路の出力は、ロックイン検出系の入力定格を超えない範囲に調整する。尚、この電流検出部107は必須ではなく、検出部102の信号に応じて、これを処理部105が処理し易い信号に調整し得る手段に置き換えることができる。
【0017】
処理部105は、テラヘルツ波の時間波形を構築し測定データを作成する部分である。遅延光学部103による光路長の変化量と電流検出部107の出力を参照し、時間波形を構築する。より詳細には、光路長の所定の変化量毎に電流検出部107の出力をプロットして時間波形を構築する。この光路長の変化量が、測定データの時間間隔tに相当する。そして、測定データの強度データ列として、時間間隔tでプロットされたデータが格納される。測定装置のS/N比を改善するために、測定点毎に、遅延光学部103を構成する直動ステージの位置を止め(或いは、止まっていると見做せるくらい直動ステージを低速駆動し)、電流検出部107の出力を平均化し、時間波形を構築する手法がある。この手法は、ステップスキャン方式とも呼ばれる。また、遅延光学部103を構成する直動ステージを高速駆動し、時間波形を複数回取得し、処理部105で測定データの強度データ列の各要素を平均化する手法がある。この手法は、ラピッドスキャン方式とも呼ばれる。この様に、この時間波形は複数回取得される。処理部105は、複数の時間波形を構築するデータを平均し、信号のS/N比の向上を狙う。
【0018】
周波数領域のスペクトルデータを出力する場合、処理部105は、測定データを参照し、テラヘルツ波の時間波形をフーリエ変換してスペクトルデータを取得する。THz-TDS装置を分析装置として用いる場合は、サンプル(検体)にテラヘルツ波を照射した時の時間波形の変化を求める。すなわち、発生部101で発生されたテラヘルツ波を検体に照射し、検体を透過或いは該検体で反射したテラヘルツ波を検出部102で検出し、得られた時間波形を用いて検体の情報を取得する。また、処理部105は、サンプルと該サンプルに照射されるテラヘルツ波の相対的な位置をモニタすることで、サンプルの画像を取得することができる。以上の様な構成によって、THz-TDS装置は、遅延光学部103による励起光の光路長変化と、それに伴う電流検出部107の出力の変化をモニタし、検出部102に照射されるテラヘルツ波の時間波形を構築する。
【0019】
以上の構成は、THz-TDS装置として知られる一般的な構成である。本実施形態の装置は、これらの構成に対し駆動速度調整部104が加わる構成を有する。この駆動速度調整部104によって、上述したテラヘルツ波の時間波形の取得方法に本発明に特有な特徴が備わる。駆動速度調整部104は、遅延光学部103を構成する可動部の速度を管理し調整する部分である。特に、この可動部の速度は、測定される時間波形毎に管理される。例えば、可動部は、測定される時間波形毎に異なる速度で駆動される。また、可動部は、一つの時間波形を構成する過程においても、速度が変化することがある。本明細書では、これらの速度の変化の態様を速度パターンと称する。駆動速度調整部104は、この速度パターンを管理して提供する。
【0020】
図5は、駆動速度調整部104が管理する速度パターンの例を示す。詳細には、図5は経過時間に対する遅延光学部103の光路長変化を示している。つまり、経過時間に対する光路長変化を追尾することで、遅延光学部103を構成する可動部の駆動速度が求められる。光路長は或る変化量を境に折り返しているが、これは、可動部が往復運動していることを示す。図5において、この折り返し毎に速度パターンが定義されている。テラヘルツ波の時間波形は、速度パターン毎に処理部105で構築される。図5では、速度パターンがn個定義されているため、テラヘルツ波の時間波形はn回構築される。
【0021】
図5(a)は、測定される時間波形毎に管理される例を示したもので、各速度パターンがテラヘルツ波の時間波形の測定毎に等速に変化している。また、図5(b)は、測定される時間波形毎に異なる速度で駆動する例を示したもので、各速度パターンがテラヘルツ波の時間波形の測定毎に非等速に変化している。また、図5(c)は、速度パターン中に測定点に移動した後、一定の待機時間(光路長が変化しない時間であり、速度が0)を挟む例を示している。また、図5(c)は、可動部の往復運動について、折り返した後の速度パターンが異なっている例を示している。この往時と復時との速度パターンが異なる例は、これまで述べた速度パターンが測定毎に等速或いは非等速に変化する例にも適用できる。これまでのTHz-TDS装置では、これらの速度パターンが同じである。これに対し、本発明では、これらの速度パターンが、テラヘルツ波の時間波形の測定毎に異なっている点が特徴である。
【0022】
図2は、上述した速度パターンに含まれる速度について、好適な速度範囲を説明する図である。図2(a)は、速度パターンに含まれる最高速度Vmaxを説明する図である。詳細には、図2(a)は、遅延光学部103によって調整される励起光の光路長の変化速度に対する、テラヘルツ波の周波数スペクトルの帯域を示したものである。図2(a)において、横軸のXは、テラヘルツ波の時間波形をサンプリングする際、時間波形を構成する測定データの所定の時間間隔(図2(a)でpointと記す)に相当する光路長の変化量(m/point)である。この光路長の変化量を光速度で割った値が所定の時間間隔の値となる。τは、THz-TDS装置が有する時定数である。例えば、本装置がロックイン検出を行う場合、τはロックインアンプの時定数に対応することが多い。Vは、遅延光学部103によって調整される光路長の変化の速度である。従って、横軸のX/τ/V(Xをτで割り更にVで割ることを意味する)は、光路長の所定の変化量を達成する時間X/ Vをτで規格化した値を示す。光路長の変化の速度Vは、横軸の値が大きくなる程遅くなる。縦軸は、取得されるテラヘルツ波の電界強度の周波数スペクトルについて、電界強度が最も強い位置から-3dB変化する周波数帯域を示している。図2(a)では、バイアス印加部106の変調周波数を1KHzから100KHzまで変化させてデータをプロットしている。実線は、プロットされたデータから求められた近似曲線である。図2(a)によると、近似曲線を微分し、傾きの変化をみると、X/τ/V=5が変曲点となる。そして、X/τ/Vが10以上の領域で、傾きが0に安定に近似される。X/τ/Vが5を下回ると、光路長の変化の速度が装置の時定数τに対して過剰に速くなり、雑音が生じ易くなる。そして、テラヘルツ波の時間波形が正確に捉えきれなくなる可能性が高まる。このことより、速度パターンに含まれる最高速度Vmaxは、X/τ/Vmaxが5以上であることが望ましく、より好ましくは、10以上という条件を満たすのがよいと言える。この様に光路長の変化の最高速度に制限を与えてデータ取得時に測定装置が十分追随できる様にすれば、測定装置の時定数がテラヘルツ波の時間波形に及ぼす影響を抑制でき、テラヘルツ波の時間波形を安定に取得できる。また、図2(a)から、データが変調周波数にはあまり依存しないことも分かる。
【0023】
図2(b)は、速度パターンに含まれる最低速度Vminを説明する図である。図2(b)において、横軸は時間波形の取得に要する時間、縦軸はこの時間の発生確率である。本実施形態では、THz-TDS装置の測定に要する総測定時間を予測するために、平均速度Vaveを定める。平均速度Vaveは、操作者が定め、時間波形の取得に要する光路長の長さAを一つの時間波形の取得に要する平均時間で割ったものである。速度パターンに含まれる速度は、この平均速度Vaveを基準にして分布する。図2(b)の場合、測定装置が定める光路長Aを平均速度Vaveで調整するのに要する時間(A/Vave)を中心に、速度パターンに含まれる速度による測定時間が正規分布している。すなわち、最高速度Vmaxでの駆動で要する最短測定時間(A/Vmax)と最低速度Vminでの駆動で要する最長測定時間(A/Vmin)との間で正規分布している。ここで、最低速度Vminは、Vmax・Vave/(2Vmax-Vave)で定義される。ただし、図5(c)に示した様に待機時間を挟む速度パターンの場合、Vminは待機時間を含まず、光路長が変化している時の最低速度と定義する。VmaxとVminは、平均測定時間と最短測定時間の時間差、平均測定時間と最長測定時間の時間差が大きくなる様に設定するのが望ましい。言い換えると、VaveとVmax、VaveとVminの速度差が大きくなる様に調整する。この様にVaveとVmaxとVminを設定すると、調整できる速度パターンの多様性が広がり、偽スペクトルの抑制効果の向上が期待できる。
【0024】
以上の様にVmaxとVminを定めることで、本実施形態の装置及び方法では、時間波形の取得に過剰な測定時間を要する状態が発生するのを防止する。すなわち、光路長の変化の速度パターンに含まれる駆動速度を、最高速度を参照して操作者が設定した平均速度を中心に分布させれば、テラヘルツ波の時間波形の取得に要する時間の目安が分かり、効率的な測定を実現することができる。ただし、これらの時間分布は正規分布に限らない。矩形状に分布するなど非正規分布でも構わず、平均測定時間を中心に分布する様に速度パターンが設定されればよい。速度パターンに含まれる速度分布は、第1の速度パターンと第2の速度パターンの形は異なるが、各速度パターンで同じ分布になる様に調整してもよい。この場合、途中で測定を中止しても、速度分布は均一になるという効果を奏する。また、第1の速度パターンから第nの速度パターンの全体を分析すると、図2(b)の様に速度が分布するという態様でもよい。
【0025】
複数の速度パターンは、予め決められていて、駆動速度調整部104に記憶されている態様でもよいが、操作者による平均速度の設定や最高速度と最低速度の決定などに基づき、場合に応じて、作成されるのがより好ましい。すなわち、駆動速度調整部104において、Vave、Vmax、Vminが決められた後、一定の条件の下に、複数の速度パターンを作成するのが好ましい。例えば、駆動速度調整部104は、速度パターンの作成ステップにおいて、速度パターンを1以上の時間領域に分割し、速度変化態様のグループの中から各時間領域での速度変化態様をランダムに又は或る条件下で決定して複数の速度パターンを作成する。この際、図2(a)、(b)のデータを参照して複数の速度パターンを作成する。速度変化態様のグループは、例えば、等速(1次関数)、正弦波状、2次関数などの速度変化態様を含んで、駆動速度調整部104に記憶される。
【0026】
次に、主に図1と図3と図4を用いて本実施形態の測定装置及び方法の動作ないしステップを説明する。図3は、装置及び方法の動作ないしステップに伴って処理部105に入力される信号と、処理部105から出力される信号を説明する図である。図4は、測定装置及び方法の動作フローを示している。図4において、テラヘルツ波測定装置が測定を開始すると、駆動速度調整部104は遅延光学部103を制御するための第1の速度パターンを設定する(S401)。遅延光学部103は、この第1の速度パターンに従って励起光の光路長を調整する。ここでは、図5(a)の様に、第1の速度パターンは、駆動速度Vで光路長が等速に変化するものとして説明する。この駆動速度Vの値が大きければ、光路長は急峻に変化し、駆動速度Vの値が小さければ、光路長は緩やかに変化する。処理部105は、この光路長の変化をモニタする。そして、予め定められた光路長の変化量毎に、電流検出部107の値を取得する。この行為をサンプリングと呼ぶ。
【0027】
図3(a)は、電流検出部107が出力する実時間の波形(例えば、電流検出部107の出力をオシロスコープで測定したときの波形)とサンプリング点の関係を示したものである。実時間の波形は、光路長を変化させる過程で発生する。詳細には、実時間波形の時間軸は、光路長の変化量と光路長を調整する速度から換算されている。例えば、テラヘルツ波パルスのピークが生じるピーク位置について、このピーク位置に達するまでの光路長の変化量は不変である。これと同じく、テラヘルツ波の時間波形の各位置と光路長の変化量の関係は、夫々対応付けられている。ただし、これらの位置に達するまでの時間は、光路長を調整する速度によるため、この速度が速い場合、実時間のテラヘルツ波の波形は、見かけ上、圧縮した様に見える。また、速度が遅い場合、実時間のテラヘルツ波の波形は上記波形に対して、間延びした様な波形になる。つまり、空間を伝搬するテラヘルツ波(T1やT2)に係わる信号成分は、適用される速度パターンによって、実時間の波形が伸縮したり形状が変化したりする。ここで、処理部105は、予め定められた光路長の変化量毎に電流検出部107の値を取得している。そこで、処理部105は、この所定の変化量を時間に換算(変化量を光速度で割って時間に換算)してデータをプロットすることで、図3(c)の様に速度パターンの影響を抑制した第1の時間波形211を取得することができる(S402)。
【0028】
第1の速度パターンによる時間波形を取得した後、駆動速度調整部104は、遅延光学部103を制御するための、第1の速度パターンとは異なる第2の速度パターンを設定する(S403)。ここでは、第2の速度パターンとして、第1の速度パターンに使用した駆動速度Vに対して駆動速度V/2で光路長が等速に変化するものとして説明する。この時、電流検出部107が出力する実時間の信号は、駆動速度が半分になったため、図3(b)の様に、第1の速度パターンによる信号に対し実時間軸で2倍広がった信号となる。上述した様に、処理部105は、予め定められた光路長の変化量毎に電流検出部107の値を取得する。このことから、この変化量に達するまでの時間が2倍かかる場合、サンプリング間隔も実時間軸上で2倍広がる。ここで、例えば、遅延光学部103の駆動に伴う定常的な振動成分等、測定装置を動作させることで発生する信号成分の波形は速度パターンの変化に鈍感である。図3(a)、(b)を見ると、速度パターンを変化させることで、空間を伝搬するテラヘルツ波(T1やT2)に係わる信号成分の形状は変化するが、測定装置の動作によって定常的に重畳する信号成分(遅延光学部103の振動など)の形状は、変化が乏しい。第2の速度パターンでも、処理部105は、予め定められた光路長の変化量毎に電流検出部107の値を取得している。よって、処理部105は、この変化量を時間に換算してデータをプロットすることで、図3(c)の様に速度パターンの影響を抑制した第2の時間波形212を取得することができる(S404)。
【0029】
この時、構築された第1の時間波形211と第2の時間波形212を比較すると、空間を伝搬するテラヘルツ波に係わる成分は、テラヘルツ波の時間波形の各位置と光路長の変化量の関係は対応が明らかなので同じ形状となる。ところが、実時間において速度パターンによらず定常的な信号波形を示す成分(図3(c)中の遅延光学部103の振動波形と表示されている部分)は、光路長の変化量との相関が小さい。そのため、サンプリング間隔の変化により、処理部105がデータを取得する位置が異なると、図3(c)の様に定常的な信号波形は速度パターンによって異なる時間波形となる。つまり、処理部105で構築される時間波形について、空間を伝搬するテラヘルツ波に関する信号成分は、速度パターンが変化しても波形の形状がほぼ一定である。これに対し、テラヘルツ波との相関が小さい信号成分は、速度パターンが変化すると、波形が変化する。
【0030】
第2の時間波形を取得した後、本測定装置は、時間波形の測定を継続するか否かを判断する(S405)。例えば、予め設定した測定回数に達した場合、時間波形の測定を終了する。或いは、後述する処理ステップで所望の特性(S/N比など)を満たすなど、終了条件を満たした時点で測定を終了する。時間波形の測定を継続する場合、第2の時間波形の測定に用いた第2の速度パターンを第1の速度パターンに再定義する(S406)。そして、駆動速度調整部104は、遅延光学部103を制御するための、第1の速度パターンとは異なる第2の速度パターンを設定し(S403)、時間波形の測定を行う。
【0031】
この様に測定された時間波形は、上述した様に処理部105で、光路長の変化量を時間に換算したデータに夫々再構築される。処理部105は、これらのデータを平均し、一つの時間波形として出力する(S407)。平均処理として、時間波形を構築するデータについて、同じ光路長変化量に対応するデータを加算し平均する処理がある。また、前処理を行ったデータについて平均する処理がある。前処理として、例えば、測定された時間波形のベースラインを補正する処理がある。また、FFTフィルタを施し特定の周波数領域の信号を抑制する処理や、ウェーブレット変換によってシステムノイズや測定環境の変動成分を抑制する処理が考えられる。また、時間窓を用いて特定の時間領域のデータを強調する処理が考えられる。この様に、処理部105は、複数の速度パターンによって遅延光学部を駆動することで、各駆動の都度、検出部からの検出信号に基づき得られた複数の時間波形を平均する。
【0032】
平均化されたデータは、必要に応じて処理部105で加工され提示される(S408)。例えば、周波数スペクトルを提示したい場合、平均化された時間波形のデータをフーリエ変換する。また、サンプルを動かして画像を取得する場合、測定箇所の座標を参照することで画像化を行う。
【0033】
以上の様な構成によって、本発明の装置及び方法はテラヘルツ波の時間波形の測定を行う。ここでは、速度パターンを変化させると、テラヘルツ波の時間波形を構築するためのサンプリングの時間間隔が変化する。この時、構築されるテラヘルツ波の時間波形は時間間隔に依存しないが、テラヘルツ波との関連性が低い信号成分の形状は変化する。この特徴を活かして、速度パターン毎に取得されるデータを平均することで、図3(d)の様に、従来の時間波形と比較して、テラヘルツ波との関連性が低い信号成分は抑制される。このため、周波数スペクトルに重畳していた偽スペクトルが抑制され測定帯域を広げることができる。
【0034】
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。すなわち、上記実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そこのコンピュータ(又はCPU、MPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。記憶媒体は、コンピュータに実行させるためのプログラムを格納できるものであれば何でもよい。こうした記憶媒体は、上記テラヘルツ波測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体である。
【0035】
以下、より具体的な実施例を説明する。
(実施例1)
本発明の実施例1を説明する。尚、これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。図1の装置構成について、本実施例では以下の様に構成する。発生部101と検出部102は、低温成長したガリウムヒ素膜にアンテナ電極がパターニングされた光伝導素子を用いる。レーザ源108は、チタンサファイアレーザを用いる。出力されるフェムト秒レーザ光のパルス幅は50フェムト秒であり、繰り返し周波数は80MHzである。遅延光学部103は、1段の折り返し光学系と直動ステージで構成する。折り返し光学系は、リトロリフレクターを用いる。直動ステージの移動量(時間波形の取得に要する光路長の長さA)は14mmである。直動ステージは、駆動速度調整部104が管理する速度パターンに従って駆動される。駆動速度調整部104と処理部105は、共通の演算処理装置で構成する。直動ステージを動かす場合、駆動速度調整部104は、ステージの駆動ドライバを介して直動ステージを制御する。また、処理部105は、電流検出部107の出力と、直動ステージの位置をモニタリングしている。
【0036】
電流検出部107は、電流電圧変換アンプとローパスフィルタで構成する。本実施例では、電流電圧変換アンプの変換率は1×10(V/A)である。ローパスフィルタのカットオフ周波数は8kHzである。バイアス印加部106は、低雑音の直流電圧源を用いる。本実施例では、バイアス印加部106は30Vの直流電圧を発生部101に印加する。また、テラヘルツ波を変調せずにテラヘルツ波の時間波形を構築する態様である。そのため、THz-TDS装置の時定数τは、電流検出部107の時定数が適用される。具体的には、ローパスフィルタの時定数0.125m秒(カットオフ周波数の逆数)が適用される。
【0037】
図7は、本実施例で用いた速度パターンを説明する図である。本実施例では、図7の様に最短測定時間から最長測定時間まで、平均測定時間を中心に同じ確率で分布する様に速度パターンを設定した。具体的には、図5(a)の様に、測定される時間波形毎に速度パターンが等速に変化する態様を適用している。本実施例では、時間波形の測定回数は100に設定している。
【0038】
遅延光学部103を駆動する平均速度Vaveは7mm/秒に設定した。この時、遅延光学部103の移動量Aは14mmであるので、一つのテラヘルツ波の時間波形を測定するために要する平均測定時間は、約2秒である。この時間波形は、4096点の測定点で構成される。各測定点の移動に要する遅延光学部103の移動量は3μmである。遅延光学部103は折り返し光学系であるため、光路長の変化量Xは6μm/pointである。上記実施形態でも説明した様に、X/τ/Vmaxは5以上である必要がある。本実施例のパラ―メータを用いるとVmaxは9.6mm/秒が上限となる。本実施例では、この上限の値を使用する。尚、場合によってVmaxは、上限を下回る値で使用することも可能である。VmaxとVaveからVminは、5.5mm/秒となる。これらの値より、図7において、平均測定時間は2秒、最短測定時間は約1.45秒、最長測定時間は約2.55秒となる。上述した様に、速度パターンは、この範囲内の測定時間で収まる様に時、間波形毎に選択される。
【0039】
図8は、本実施例の測定結果と比較例を示す図である。図8は、測定されたテラヘルツ波の時間波形の一部を示した図である。具体的には、テラヘルツ波の時間波形のうち、パルス波形が立ち上がる直前の時間波形である。ここで、横軸は、処理部105で構築された時間波形の時間軸を示している。縦軸は、電流検出部107の出力より、検出部102から出力される電流値を換算したものである。図8(a)は、比較のため、遅延光学部103を同じ速度パターンで駆動した結果である。具体的には、遅延光学部103を構成する直動ステージを速度Vmaxで等速駆動している。図8(b)は、本実施例の構成を適用した結果である。すなわち、速度パターンは、VminからVmaxの範囲において、測定する時間波形毎にランダムに選択されている。
【0040】
図8(a)と図8(b)の時間波形を比較すると、同じ速度パターンで測定した時間波形(図8(a))では、最大で振幅±0.015nA、周期1p秒弱の信号が検出されている。これに対して、測定波形毎に異なる速度パターンで測定した時間波形(図8(b))では、この周期的な信号が抑制されている様子が分かる。図9は、これらの時間波形の周波数スペクトルを示した図である。図9(a)は、同じ速度パターンで測定した時の周波数スペクトルである。図9(b)は、測定波形毎に異なる速度パターンで測定した時の周波数スペクトルである。これらのスペクトルを比較すると、同じ速度パターンで測定した場合のスペクトルには、10THz〜11THzに2つの偽スペクトルが観測される。これに対し、測定波形毎に異なる速度パターンで測定した場合のスペクトルには、この偽スペクトルがなくなり、平坦なノイズフロアを形成している様子が分かる。
【0041】
この様に、測定波形毎に速度パターンを変化させ、得られたデータを平均することで、従来の時間波形と比較して、テラヘルツ波との関連性が低い信号成分は抑制される。そして、周波数スペクトルに重畳していた偽スペクトルが抑制され、測定帯域を広げることができる。
【符号の説明】
【0042】
101…発生部、102…検出部、103…遅延光学部、104…駆動速度調整部、105…処理部、106…バイアス印加部、107…電流検出部、108…レーザ源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テラヘルツ波を発生する発生部とテラヘルツ波を検出する検出部とに夫々到達する励起光の時間差について、遅延光学部を用いて、前記励起光が伝搬する光路長によって調整し、時間領域分光法によりテラヘルツ波の時間波形を測定するテラヘルツ波測定方法であって、
第1の速度パターンにより前記遅延光学部を駆動し、第1の時間波形を取得するステップと、
前記第1の速度パターンと異なる第2の速度パターンにより前記遅延光学部を駆動し、第2の時間波形を取得するステップと、
前記第1の時間波形と第2の時間波形を平均するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記速度パターンを作成する作成ステップを含み、
該作成ステップにおいて、前記時間波形を構成する測定データの時間間隔に相当する光路長をX、当該測定方法を実行する装置の時定数をτとする時、前記速度パターンに含まれる光路長の変化の最高速度Vmaxを、X/ τ/Vmaxが5以上である条件を満たす様に決定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作成ステップにおいて、前記速度パターンの平均速度をVaveと設定する時、前記速度パターンに含まれる光路長の変化の最低速度VminをVmax・Vave/(2Vmax-Vave)と決定することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記作成ステップにおいて、前記速度パターンを1以上の時間領域に分割し、速度変化態様のグループの中から各時間領域での速度変化態様を決定して複数の速度パターンを作成することを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
時間領域分光法によりテラヘルツ波の時間波形を測定するテラヘルツ波測定装置であって、
テラヘルツ波を発生するための発生部と、
前記発生部で発生されたテラヘルツ波を検出するための検出部と、
前記発生部と前記検出部とに夫々到達する励起光の時間差について、前記励起光が伝搬する光路長によって調整するための遅延光学部と、
前記遅延光学部を駆動するための互いに異なる複数の速度パターンを提供するための駆動速度調整部と、
前記複数の速度パターンによって前記遅延光学部を駆動することで、各駆動の都度、前記検出部からの検出信号に基づき得られた複数の時間波形を平均するための処理部と、
を有することを特徴とする装置。
【請求項6】
前記発生部で発生されたテラヘルツ波を検体に照射し、
前記検体を透過或いは検体で反射したテラヘルツ波を前記検出部で検出し、
前記平均により得られた時間波形を用いて前記検体の情報を取得することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
請求項1から4の何れか1項に記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【請求項8】
請求項1から4の何れか1項に記載の方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−2793(P2012−2793A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175824(P2010−175824)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】