説明

テラヘルツ波発生装置

【課題】混在している赤外線レーザ光と微弱なテラヘルツ波から赤外線レーザ光を除去して、テラヘルツ波を高効率に取り出す。
【解決手段】テラヘルツ波濾波材の赤外線レーザ光入射側表面に、赤外線レーザ光の波長程度の粗さの赤外光散乱層を形成したテラヘルツ波濾波器を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強力な赤外光と微弱なテラヘルツ波が混在する電磁波から、赤外光を除去してテラヘルツ波を高効率に取り出すテラヘルツ波濾波器を備えたテラヘルツ波発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、強力な赤外光と微弱なテラヘルツ波が混在する電磁波から広帯域に亘ってテラヘルツ波を取り出すために、例えば、高抵抗Ge結晶とポリエチレン膜を多重に組み合わせたり、厚いGe結晶やポリエチレンコンパウンドを用いて赤外光の除去を図っていた。
【特許文献1】特開2008−306692号公報
【非特許文献1】電子情報通信学会誌 2006.No.6.Vol.89.454頁
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の方法では赤外光の除去に伴ないテラヘルツ波の減衰も大きくなって高効率にテラヘルツ波を取り出すことが難しいという問題があった。
本発明においては、単純な構成の高効率テラヘルツ波濾波器を用いることで問題点を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、赤外光を非線形光学結晶に導入してテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生装置において、周波数の異なる二つの赤外線レーザ光源と、該レーザ光を非線形光学結晶の中で合成し位相整合することで差周波のテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発振器と、テラヘルツ波濾波材の該レーザ光入射側表面に、該レーザ光の波長程度の粗さの赤外光散乱層を形成したテラヘルツ波濾波器を備えていることを特徴とする。
【0005】
この発明によれば、赤外光散乱層でレーザ光が強く散乱され、更に、テラヘルツ波濾波材で赤外光成分が除去されるので、赤外光の混入が極めて少ないテラヘルツ波発生装置が実現する。
【0006】
請求項2記載の発明は、赤外光散乱層と重ねて所定周波数のテラヘルツ波散乱層を形成したテラヘルツ波濾波器を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、赤外光に加えて短波長のテラヘルツ波を除去するために、例えば、散乱させるテラヘルツ波と同等サイズのポリエチレン粉末のテラヘルツ波散乱層を形成するので、高効率のより長波長のテラヘルツ波発生装置が実現する。
【発明の効果】
【0008】
この発明を利用すると、例えば、GaSeのように結晶から出力する赤外光とテラヘルツ波がほぼ同一光軸上にある場合でも、赤外光が充分除去され、所望のテラヘルツ波は殆んど減衰しないテラヘルツ波発生装置が実現されるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
単純な構成のテラヘルツ波濾波器を用いて、テラヘルツ波を殆んど減衰させないで混入している強力な赤外光は除去するという目的を実現した。
【実施例1】
【0010】
一般的に、散乱係数の波長λと散乱粒子の大きさDに関わるサイズパラメータαは、下記の数式1で表される。
【0011】
【数1】

ここで、α≪1はレイリー散乱、α≒1はミー散乱、α≫1は幾何光学近似で表現される。
例えば、ポリエチレン樹脂の粒径が2μm、赤外光波長が2μm、テラヘルツ波の波長が1THzで300μmとすると、赤外光の場合はα≒1でミー散乱、テラヘルツ波の場合はα≪1でレイリー散乱の理論で扱われ、レイリー散乱の散乱係数Ksは、散乱粒子の大きさD、粒子数n、波長λとして、下記の数式2で表される。
【0012】
【数2】

【0013】
図1は請求項1に関する本発明による実施例の模式図である。
周波数f1のCrFレーザ装置Aと、周波数f2のラマンシフタBから出力した赤外光がビームコンバインCで同軸上に合い、非線形光学結晶DのGaSeから差周波(f1−f2)のテラヘルツ波Hが出力する。
この場合、テラヘルツ波に混合している赤外光Iは、この赤外光の波長程度の粗さにラッピング加工されたGeウェハEの表面に形成されている赤外光散乱層Fで殆んどが散乱光Gとなるので、純度の高いテラヘルツ波Hがテラヘルツ波濾波器Sから出てくる。
【0014】
図2は請求項2に関する本発明による実施例の模式図であり、記号は図1と同様である。
テラヘルツ波散乱層Jは、散乱させる短波長のテラヘルツ波と同等サイズのポリエチレン粉末で形成されているので、赤外光と短波長のテラヘルツ波が散乱光Gとなりより長波長のテラヘルツ波濾波器Sが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 赤外光散乱層をテラヘルツ波濾波器に備えた本発明の実施例1の説明図
【図2】 赤外光散乱層とテラヘルツ波散乱層をテラヘルツ波濾波器に備えた本発明の実施例2の説明図
【符号の説明】
【0016】
A CrFレーザ装置
B ラマンシフタ
C ビームコンバイン
D 非線形光学結晶
H テラヘルツ波
I 赤外光
E Geウェハ
F 赤外光散乱層
G 散乱光
J テラヘルツ波散乱層
S テラヘルツ波濾波器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外光を非線形光学結晶に導入してテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生装置において、周波数の異なる二つの赤外線レーザ光源と該レーザ光を非線形光学結晶の中で合成し位相整合することで差周波のテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発振器と、テラヘルツ波濾波材の該レーザ光入射側表面に、該レーザ光の波長程度の粗さの赤外光散乱層を形成したテラヘルツ波濾波器を備えていることを特徴とするテラヘルツ波発生装置
【請求項2】
赤外光散乱層と重ねて所定周波数のテラヘルツ波散乱層を形成したテラヘルツ波濾波器を備えていることを特徴とする請求項1記載のテラヘルツ波発生装置

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate