テンショナ用の自己増力ブレーキ
ブレードシュー(106)と、少なくとも1つのブレードスプリング(112)と、ランプ(122)と、ブレーキ(132)とを含むテンショナが提供される。このブレードシューは、湾曲したチェーン摺動面と、このチェーン摺動面と反対側の下側と、基部に枢動可能に結合された基端と、末端とを有する。このランプは、基部に固定され、ブレードシューのチェーン摺動面又は下側と接触させるためのランプ表面(122a)を有する。このブレーキは、基部に枢動可能に固定された自己増力ブレーキであり、ある方向においてブレードシューの末端の移動を制限し、かつ反対方向の移動を許容するために、チェーン摺動面の末端部(106c)、ブレードスプリング、又はブレードシューの下側と接触させるための摩擦接触面(132a)を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンショナの分野に関する。より詳細には、本発明は、テンショナ用の自己増力ブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
チェーン駆動装置の用途には、チェーンの動きを制御するために緊張力を保つためのテンショニング装置が必要とされる。ブレードスプリングテンショナは、チェーン駆動装置に緊張力をかけるために用いられることが多く、従来のブレードスプリングテンショナは、両方の移動方向に同様の減衰力をかける。チェーンテンショナがチェーン駆動装置によって圧縮されているとき、そしてテンショナがシステムの弛みを取り除くために延びているとき、高い減衰が望ましい。
【0003】
米国特許第5,935,032号明細書には、ベルト用の滑車式テンショナ(wheeled tensioner)が開示されている。ベルトからの緊張力が滑車式のテンショニングプーリ(wheeled tensioning pulley)を押圧すると、弧状面を備えた端部を有する第1の枢支アームがばねを圧縮し、このばねは、可動シューを備えた端部を有する第2の枢支アームを移動させ、シューの凸型弧状摩擦面と第1のピボットアームの弧状面との間に摩擦を生じさせる。
【0004】
米国特許第6,699,148号明細書には、ベルト用の自動調整式接触機構が開示されており、このベルト用の自動調整式接触機構は、ベルトとともに、低摩擦面を有する接触シューと、制御された力プロファイルで、シューの低摩擦面をベルトに対して偏倚させるための機構とを含む。シューは、第1の枢支継ぎ手を介してレバーアームに取り付けられる。第1の枢支継ぎ手は、シューを、ベルトと整列してベルトと平行な状態に保つ。第2の枢支部は、レバーをベルト駆動システムに連結する。
【0005】
特開平06−193693号公報には、ブレードテンショナが開示されており、このブレードテンショナの基端には、揺動支点、及びカム面と円筒孔部との間の間隔に形成されたくさび形空間がある。摩擦部材及びばね部材が、各くさび形空間に装備されている。チェーンの緊張力が増大すると、摩擦部材は、くさび形空間の狭小部に押し込まれ、チェーンガイドのいかなる揺動も防止される。
【0006】
特開2001−355688号公報には、摩擦材がブレードシューの末端に設けられ、ブラケットの摺動面に接触して、減衰力を増大させる第1の実施形態が開示されている。別の実施形態では、摩擦面がブラケットの摺動面に設けられる。代替的な実施形態では、摩擦面は、ブレードシューの端部とブレードスプリングとの間の湾曲した端部に設けられる。
【0007】
特開平08−336809号公報には、モータがオフにされるとチェーンソーの刃の回転を停止する、付勢される(energized)ブレーキが開示されている。このブレーキ装置は、ハンドガードによって操作可能な、一端でブレーキドラムを取り巻くブレーキバンドを含み、作動されると、ブレーキドラムがブレーキバンドによって締め上げられて、チェーンが停止されるようになっている。同時に、ワイヤが、ブレーキシューと接触しているコイルスプリングを付勢し、そのため、スイッチがオフにされると、ワイヤは、コイルスプリングひいてはブレーキシューを付勢し、シューをブレーキドラムに係合させるようになっている。スイッチがオンにされると、ブレーキシューはコイルスプリングに抗して、シューはブレーキドラムに係合しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、ブレードシューの伸長時よりむしろブレードシューの圧縮時のブレードテンショナの減衰を増大させる自己増力ブレーキが当該技術分野で求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ブレードシューと、少なくとも1つのブレードスプリングと、ランプ(ramp)と、ブレーキとを含むテンショナが提供される。このブレードシューは、湾曲したチェーン摺動面と、チェーン摺動面と反対側の下側と、基部(ground)に枢動可能に結合された基端と、末端とを有する。このランプは、基部に固定され、ブレードシューのチェーン摺動面又は下側と接触させるためのランプ表面を有する。このブレーキは、基部に枢動可能に固定された自己増力ブレーキであり、ある方向においてブレードシューの末端の移動を制限し、かつ反対方向の移動を許容するために、チェーン摺動面の末端部、ブレードスプリング、又はブレードシューの下側と接触させるための摩擦接触面を有する。
【0010】
ブレードシューと接触しているチェーンストランドの半径が増大すると、ブレードシューが圧縮され、その末端は、基端及びチェーンストランドからさらに離れるように移動し、ランプと自己増力ブレーキとの間でさらに摺動する。ブレーキの摩擦接触面は、チェーン摺動面の末端部、ブレードシューの下側面、及び少なくとも1つのブレードスプリングと接触し、ブレードシューの末端がチェーンから離れる向きに動くのを制限し、かつ反対方向の移動を許容する。
【0011】
摩擦接触面は、さらに、その表面に摩擦材が結合されていてもよい。
【0012】
別の実施形態では、摩擦接触面は、チェーン摺動面の末端部の歯と嵌合する歯を有していてもよい。
【0013】
あるいは、ブレードシューの下側及びランプ表面は、嵌合する歯を有していてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1a及び1bは、チェーン100を有するブレードテンショナの概略図を示す。スプロケット間の半径Rを有するチェーンストランドを有するチェーン100は、駆動スプロケット及び従動スプロケット(図示せず)の周りに巻かれる。テンショナは、基端106bと、末端106cと、弧状に湾曲したチェーン摺動面106aと、チェーン摺動面106aと反対側の下側面106eとを有する、高分子材料製のブレードシュー106を含む。ブレードシュー106は、ブレードシューの長さ方向に沿って(すなわち末端から基端へと)延在するブレードスプリング112を受け入れる。ブレードスプリング112は、単一のブレードスプリング又は複数のブレードスプリングからなっていてもよい。
【0015】
ブレードシュー106の基端106bは、ピン124によって基部120に枢支連結される。本明細書において使用される際に、「基部」という用語は、テンショニング装置が取り付けられかつチェーン駆動装置の軸中心線に対して不動である対象物又は一連の対象物として定義される。基部120は、エンジンブロック、ブラケット、トランスミッションケース、又はエンジンのフレームであってもよい。テンショナの様々な部分の、基部への連結は、2つの部分を固定し得る任意の方法によって行うことができる。ブレードシュー106の末端106cは、ランプ摺動面122aを有する、基部120に固定されたランプ122と、ブレーキ接触面又は摩擦接触面132aを有する自己増力ブレーキ132との間に受け入れられる。自己増力ブレーキ132は、ピン134によって基部120に枢支連結され、偏倚要素151(基部120と自己増力ブレーキ132との間のばねであり得る)によって、ブレードシューのチェーン摺動面106aと接触する向きに偏倚される。ブレーキ接触面132aは、ブレードシューのチェーン摺動面106aと接触する。ブレードシュー106の下側面106eは、図3aにも示されるように、ランプ122のランプ摺動面122aと接触する。チェーン摺動面106a上のストッパ130は、106のブレードシューが矢印150によって示される方向に移動する際に、ブレードシュー106の下側面106eをランプ摺動面122aと接触した状態に保つ。本装置の全ライフサイクルの間、ストッパ130又はランプのランプ摺動面122aのいずれかが常にブレードシュー106と接触している。
【0016】
図1aに示されるように、弧状に湾曲したチェーン摺動面106aと接触している、2つのスプロケット間のチェーンストランドの半径Rが増大するか又は延びると、ブレードシューは圧縮され、ブレードシューの末端106cは、ブレードシューの基端106bからさらに離れるように移動し、ブレードシュー106の末端106cのより多くの部分が、ランプ122のランプ摺動面122aとブレーキ132のブレーキ接触面132aとの間に受け入れられた状態になる。ブレードシュー106が矢印150の方向に移動すると、ブレーキ接触面132aとチェーン摺動面106aとの間の摩擦によりブレーキ132に自己増力し(self energize)、ブレードシューの減衰が増大される。
【0017】
図1bに示されるように、湾曲したチェーン摺動面106aと接触している、2つのスプロケット間のチェーンストランドの半径Rが減少又は短縮されると、ブレードシューの末端106cは、チェーン100及びブレードシューの基端106bに向かって移動し、ブレードシューを引っ込ませてチェーンストランドに緊張力をかけるようにする。ブレードシューの末端106cがチェーンに向かって移動すると、矢印150と反対方向、すなわち図1eに示される矢印153の方向におけるブレードシュー106の末端106cの移動により、ブレーキ132に力がかからず、減衰が低減され、ブレーキが、偏倚要素151に抗してピン134上でわずかに枢動され得る。
【0018】
図1c及び1dは、チェーンストランドの半径が増大したときの、自己増力ブレーキの図を示す。図1dを参照すると、変数は以下の通りである。
Rx及びRyは、X及びYそれぞれの反作用の力であり、
L1は、垂直力Nから枢支ピン134までの直交距離であり、
L2は、枢支ピン134からブレーキ接触面132aまでの直交距離であり、
Tsは、自己増力ブレーキを、ブレードシュー106と接触させるように偏倚させる偏倚要素151からのモーメントであり、そして
μは、摩擦係数である。
【0019】
自己増力する方向における自己増力ブレーキの力平衡
図1c及び1dを参照すると、X及びY方向の力の和は、以下の通りである。
【数1】
枢支部又はピンの周りのモーメントの和は以下の通りである。
【数2】
モーメント平衡Nを以下のように求める。
【数3】
式1.4は、L1>μL2の場合にのみ有効である。摩擦力はμNに等しいため、摩擦力は以下の通りである。
【数4】
L1−μL2が0に近付くと、摩擦力は増大し、より0に近付くにしたがい、より大きな力がかけられるが、ブレードシューの末端の移動をなお許容している。0においては、ブレードシューの末端を全く動かすことができないであろう。
【0020】
ブレードシューが延びて、末端106cがチェーンに向かって移動すると、矢印150と反対方向、すなわち矢印153の方向におけるブレードシュー106の末端106cの移動により、132のブレーキに力がかからず、ブレーキが、偏倚要素151に抗してピン134上でわずかに枢動され得る。自己増力ブレーキ132は、ランプ122のランプ摺動面122aの向こう側に位置合わせされる、すなわち真向こうに配置されるのが好ましい。ストッパ130が、ブレードシュー106が矢印150と反対方向に移動する際にブレードシュー106がランプ摺動面122aから離れるのを防ぐ。
【0021】
図1e及び1fは、チェーンストランドの半径が減少して、ブレードシュー106の末端106cが矢印150の方向と反対の矢印153の方向に移動しているときの、自己増力ブレーキの図を示す。図1fを参照すると、変数は以下の通りである。
Rx及びRyは、X及びYそれぞれの反作用の力であり、
L1は、垂直力Nから枢支ピン134までの直交距離であり、
L2は、枢支ピン134からブレーキ接触面132aまでの直交距離であり、
Tsは、自己増力ブレーキを、ブレードシュー106と接触させるように偏倚させる偏倚要素151からのモーメントであり、そして
μは、摩擦係数である。
【0022】
自己増力しない方向における自己増力ブレーキの力平衡
図1e及び1fを参照すると、X及びY方向の力の和は、以下の通りである。
【数5】
枢支部又はピンの周りのモーメントの和は以下の通りである。
【数6】
モーメント平衡Nを以下のように求める。
【数7】
摩擦力はμNに等しいため、摩擦力は以下の通りである。
【数8】
式2.4及び2.5は、ブレーキが自己増力しない方向に移動している場合に常に有効である。
【0023】
例えば以下のような場合、自己増力ブレーキは、ある移動方向ではより大きな摩擦力を生じ、他の方向では生じない。
μ=0.8
L1=0.0028m
L2=0.003m
Ts=0.2Nm
自己増力する移動方向において:
【数9】
N=500N
摩擦力=μN
摩擦力=(0.8)(500N)
摩擦力=400Nである。
反対方向又は自己増力しない移動方向において:
【数10】
N=38.46N
摩擦力=μN
摩擦力=(0.8)(38.46N)
摩擦力=30.77Nである。
【0024】
上記の例に示されるように、ブレーキの自己増力する移動方向の摩擦力は、反対方向におけるよりもかなり大きく、例えば400N>30.77Nである。
【0025】
図2a及び2bは、チェーン100を有する代替的なブレードテンショナの概略図を示す。スプロケット間の半径Rを有するチェーンストランドを有するチェーン100は、駆動スプロケット及び従動スプロケット(図示せず)の周りに巻かれる。テンショナは、基端106bと、末端106cと、弧状に湾曲したチェーン摺動面106aと、チェーン摺動面106aと反対側の下側面106eとを有する、高分子材料製のブレードシュー106を含む。ブレードシュー106は、ブレードシューの長さ方向に沿って(すなわち末端から基端へと)延在するブレードスプリング112を受け入れる。ブレードスプリング112は、単一のブレードスプリング又は複数のブレードスプリングからなっていてもよい。
【0026】
ブレードシュー106の基端106bは、ピン124によって基部120に枢支連結される。基部120は、エンジンブロック、ブラケット、トランスミッションケース、又はエンジンのフレームであってもよい。ブレードシュー106の末端106cは、第2のランプ摺動面138aを有する、基部120に固定された第2のランプ138と、ブレーキ接触面又は摩擦接触面132aを有する自己増力ブレーキ132との間に受け入れられる。自己増力ブレーキ132は、ピン134によって第1のランプ122に枢支連結され、基部120及び自己増力ブレーキ132に結合される偏倚要素151によって、ブレードシューのチェーンの下側106eと接触する向きに偏倚される。ランプ122は基部120に固定される。ブレーキ接触面132aは、ブレードシュー106の下側106eと接触する。図3fに示されるように、ブレードシュー106のチェーン摺動面106aは、第2のランプ摺動面138aと接触する。本装置の全ライフサイクルの間、第2のランプ138又は自己増力ブレーキ132のいずれかが常にブレードシュー106と接触している。
【0027】
図2aに示されるように、弧状に湾曲したチェーン摺動面106aと接触している、2つのスプロケット間のチェーンストランドの半径Rが増大するか又は延びると、ブレードシューは圧縮され、ブレードシューの末端106cは、ブレードシューの基端106bからさらに離れるように移動し、ブレードシューの末端106cのより多くの部分が、第2のランプ138の第2のランプ摺動面138とブレーキ132のブレーキ接触面132aとの間に受け入れられた状態になる。ブレードシュー106が矢印150の方向に移動すると、ブレーキ接触面132aとチェーン摺動面106aとの間の摩擦によりブレーキ132に自己増力し、ブレードシューの減衰が増大される。
【0028】
図2bに示されるように、湾曲したチェーン摺動面106aと接触している、2つのスプロケット間のチェーンストランドの半径Rが減少又は短縮されると、ブレードシューの末端106cは、チェーン100及びブレードシューの基端106bに向かって移動し、ブレードシューを引っ込ませてチェーンストランドに緊張力をかけるようにする。ブレードシューの末端106cがチェーンに向かって移動すると、矢印150と反対方向、すなわち図1eに示される矢印153の方向におけるブレードシュー106の末端106cの移動により、ブレーキ132に力がかからず、減衰が低減され、ブレーキが、偏倚要素151に抗してピン134上でわずかに枢動され得る。
【0029】
チェーン摺動面によって接触されるチェーンストランドの半径が増大すると、ブレーキ接触面132aは、テンショナの様々な表面に接触して、摩擦を生じさせ、ある方向にブレードシューを移動させ、かつ反対方向の移動を制限することができる。
【0030】
図3aでは、ブレーキ132のブレーキ接触面132aとチェーン摺動面106aとの間に摩擦が生成されている。ブレードシューの下側106eとランプ122のランプ摺動面122aとの間にもいくらかの摩擦が生成されている。チェーン摺動面106aと接触しているチェーンストランドの半径が増大すると、ブレーキ接触面132aとチェーン摺動面106aとの間の摩擦は、ブレードシューの移動を減衰する。
【0031】
図3bを参照すると、ブレーキ132のブレーキ接触面132aとテンショナのブレードスプリング112との間に摩擦が生成されている。ブレードシューの下側106eとランプ122のランプ摺動面122aとの間にもいくらかの摩擦が生成されている。チェーン摺動面106aと接触しているチェーンストランドの半径が増大すると、ブレーキ接触面132aとブレードスプリング112との間の摩擦は、ブレードシューの移動を減衰する。
【0032】
図3cでは、ブレーキ132のブレーキ接触面132aとチェーン摺動面106aとの間に摩擦が生成されている。ランプ122のランプ摺動面122aにおいて歯152bと噛み合いかつラチェット止めされるブレードシューの下側106eに対して、歯152aによってさらなる摩擦が加えられる。歯は、0度と90度との間の角度を有していてもよく、また、丸みを帯びていてもよい。チェーン摺動面106aと接触しているチェーンストランドの半径が増大すると、摩擦によりブレードシューの移動が減衰される。
【0033】
図3dを参照すると、ブレーキ132のブレーキ接触面132aにおける歯152aと、チェーン摺動面106aの末端部における歯152bとの噛み合い及びラチェット止めの間に摩擦が生成されている。ブレードの下側106eとランプ122のランプ摺動面122aとの間にもいくらかの摩擦が生成されている。歯は、0度と90度との間の角度を有していてもよく、また、丸みを帯びていてもよい。チェーン摺動面106aと接触しているチェーンストランドの半径が増大すると、摩擦によりブレードシューの移動が減衰される。
【0034】
図3e及び4は、鋼製のブレードスプリング面112と自己増力ブレーキ132との接近を示す。テンショナのテンショナアーム106と接触させるために、ランプ122がブレーキ132と同じ空間を占めることが好ましい場合、ブレードスプリング112とブレーキ132との間のこの接触が用いられるであろう。生成される摩擦は、図3bにおいて生成される摩擦と同様である。
【0035】
図3fは、第2の実施形態のテンショナを示す。ランプ122に結合されたブレーキ132のブレーキ接触面132aとブレードシューの下側106eとの間に摩擦が生成されている。チェーン摺動面106aと第2のランプ138の第2のランプ摺動面138aとの間にもいくらかの摩擦が生成されている。チェーン摺動面106aと接触しているチェーンストランドの半径が増大すると、ブレーキ接触面132aとチェーンの下側106eとの間の摩擦によりブレードシューの移動が減衰される。
【0036】
上記の実施形態のいずれにおいても、部材の各々の元の面の間に摩擦が生成されている。例えば、図3aにおけるテンショナアームの摩擦面は、単にプラスチック製のテンショナアーム自体であってもよい。鋼製又は粉末金属製の自己増力ブレーキとブレードテンショナの鋼製のブレードスプリングとの間の接触が好ましい。あるいは、摩擦面は、紙をベースとしていてもよく、接触が行われる面のうちの1つに結合されていてもよい。エラストマー摩擦材、他の一般的な湿式クラッチ材料、又は他の材料が、上記の摩擦材の代わりに用いられてもよい。
【0037】
図3a〜4に示される実施形態のいずれも、任意のタイプのブレードテンショナに適用することができる。さらに、ブレーキ接触は、ブレードシューの下側において行われ、チェーン摺動面においては行われないことがある。
【0038】
偏倚要素151は、ばねであり得る。このばねは、圧縮ばね又はねじりばねであってもよい。
【0039】
「基部」という用語は、テンショニング装置が取り付けられかつチェーン駆動装置の軸中心線に対して不動である対象物又は一連の対象物として定義される。
【0040】
ピン124と、ハウジング120と、テンショナアーム106との間の継ぎ手の代わりに、参照により本明細書に援用される、「テンショナ用のトルク偏倚の摩擦ヒンジ(TORQUE BIASED FRICTION HINGE FOR A TENSIONER)」という表題の、2006年2月7日に出願された、米国仮特許出願第60/765,777号明細書に開示されたトルク偏倚の摩擦ヒンジを用いてもよい。
【0041】
したがって、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本発明の原理の適用例の例示に過ぎないことを理解されたい。例示された実施形態の詳細への本明細書における言及は、それ自体が本発明にとって不可欠であるとみなされる特徴を記載する特許請求の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1a】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が増大しているか又は延びている状態の、本発明の第1の実施形態の自己増力ブレーキを有する単一のブレードテンショナの概略図を示す。
【図1b】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が減少しているか又は短くなっている状態の、本発明の第1の実施形態の自己増力ブレーキを有する単一のブレードテンショナの概略図を示す。
【図1c】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が増大しているときの、本発明の自己増力ブレーキの図の概略を示す。
【図1d】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が増大しているときの、本発明の自己増力ブレーキの自由体図の概略を示す。
【図1e】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が減少しているときの、本発明の自己増力ブレーキの図の概略を示す。
【図1f】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が減少しているときの、本発明の自己増力ブレーキの自由体図の概略を示す。
【図2a】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が増大しているか又は延びている状態の、本発明の第2の実施形態の自己増力ブレーキを有する単一のブレードテンショナの概略図を示す。
【図2b】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が減少しているか又は短くなっている状態の、本発明の第2の実施形態の自己増力ブレーキを有する単一のブレードテンショナの概略図を示す。
【図3a】自己増力ブレーキとブレードシューとの間の接触の概略図を示す。
【図3b】自己増力ブレーキとブレードシューのブレードスプリングとの間の接触の概略図を示す。
【図3c】ブレードシューの下側及びランプ摺動面にラチェット歯を設けた状態の、自己増力ブレーキとブレードシューとの間の接触の概略図を示す。
【図3d】自己増力ブレーキ及びブレードシューがラチェット歯を有する、自己増力ブレーキとブレードシューとの間の接触の別の概略図を示す。
【図3e】自己増力ブレーキとブレードシューのブレードスプリングとの間の接触の概略図を示す。
【図3f】自己増力ブレーキとブレードシューの下側との間の接触の概略図を示す。
【図4】図3eの正面図を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンショナの分野に関する。より詳細には、本発明は、テンショナ用の自己増力ブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
チェーン駆動装置の用途には、チェーンの動きを制御するために緊張力を保つためのテンショニング装置が必要とされる。ブレードスプリングテンショナは、チェーン駆動装置に緊張力をかけるために用いられることが多く、従来のブレードスプリングテンショナは、両方の移動方向に同様の減衰力をかける。チェーンテンショナがチェーン駆動装置によって圧縮されているとき、そしてテンショナがシステムの弛みを取り除くために延びているとき、高い減衰が望ましい。
【0003】
米国特許第5,935,032号明細書には、ベルト用の滑車式テンショナ(wheeled tensioner)が開示されている。ベルトからの緊張力が滑車式のテンショニングプーリ(wheeled tensioning pulley)を押圧すると、弧状面を備えた端部を有する第1の枢支アームがばねを圧縮し、このばねは、可動シューを備えた端部を有する第2の枢支アームを移動させ、シューの凸型弧状摩擦面と第1のピボットアームの弧状面との間に摩擦を生じさせる。
【0004】
米国特許第6,699,148号明細書には、ベルト用の自動調整式接触機構が開示されており、このベルト用の自動調整式接触機構は、ベルトとともに、低摩擦面を有する接触シューと、制御された力プロファイルで、シューの低摩擦面をベルトに対して偏倚させるための機構とを含む。シューは、第1の枢支継ぎ手を介してレバーアームに取り付けられる。第1の枢支継ぎ手は、シューを、ベルトと整列してベルトと平行な状態に保つ。第2の枢支部は、レバーをベルト駆動システムに連結する。
【0005】
特開平06−193693号公報には、ブレードテンショナが開示されており、このブレードテンショナの基端には、揺動支点、及びカム面と円筒孔部との間の間隔に形成されたくさび形空間がある。摩擦部材及びばね部材が、各くさび形空間に装備されている。チェーンの緊張力が増大すると、摩擦部材は、くさび形空間の狭小部に押し込まれ、チェーンガイドのいかなる揺動も防止される。
【0006】
特開2001−355688号公報には、摩擦材がブレードシューの末端に設けられ、ブラケットの摺動面に接触して、減衰力を増大させる第1の実施形態が開示されている。別の実施形態では、摩擦面がブラケットの摺動面に設けられる。代替的な実施形態では、摩擦面は、ブレードシューの端部とブレードスプリングとの間の湾曲した端部に設けられる。
【0007】
特開平08−336809号公報には、モータがオフにされるとチェーンソーの刃の回転を停止する、付勢される(energized)ブレーキが開示されている。このブレーキ装置は、ハンドガードによって操作可能な、一端でブレーキドラムを取り巻くブレーキバンドを含み、作動されると、ブレーキドラムがブレーキバンドによって締め上げられて、チェーンが停止されるようになっている。同時に、ワイヤが、ブレーキシューと接触しているコイルスプリングを付勢し、そのため、スイッチがオフにされると、ワイヤは、コイルスプリングひいてはブレーキシューを付勢し、シューをブレーキドラムに係合させるようになっている。スイッチがオンにされると、ブレーキシューはコイルスプリングに抗して、シューはブレーキドラムに係合しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、ブレードシューの伸長時よりむしろブレードシューの圧縮時のブレードテンショナの減衰を増大させる自己増力ブレーキが当該技術分野で求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ブレードシューと、少なくとも1つのブレードスプリングと、ランプ(ramp)と、ブレーキとを含むテンショナが提供される。このブレードシューは、湾曲したチェーン摺動面と、チェーン摺動面と反対側の下側と、基部(ground)に枢動可能に結合された基端と、末端とを有する。このランプは、基部に固定され、ブレードシューのチェーン摺動面又は下側と接触させるためのランプ表面を有する。このブレーキは、基部に枢動可能に固定された自己増力ブレーキであり、ある方向においてブレードシューの末端の移動を制限し、かつ反対方向の移動を許容するために、チェーン摺動面の末端部、ブレードスプリング、又はブレードシューの下側と接触させるための摩擦接触面を有する。
【0010】
ブレードシューと接触しているチェーンストランドの半径が増大すると、ブレードシューが圧縮され、その末端は、基端及びチェーンストランドからさらに離れるように移動し、ランプと自己増力ブレーキとの間でさらに摺動する。ブレーキの摩擦接触面は、チェーン摺動面の末端部、ブレードシューの下側面、及び少なくとも1つのブレードスプリングと接触し、ブレードシューの末端がチェーンから離れる向きに動くのを制限し、かつ反対方向の移動を許容する。
【0011】
摩擦接触面は、さらに、その表面に摩擦材が結合されていてもよい。
【0012】
別の実施形態では、摩擦接触面は、チェーン摺動面の末端部の歯と嵌合する歯を有していてもよい。
【0013】
あるいは、ブレードシューの下側及びランプ表面は、嵌合する歯を有していてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1a及び1bは、チェーン100を有するブレードテンショナの概略図を示す。スプロケット間の半径Rを有するチェーンストランドを有するチェーン100は、駆動スプロケット及び従動スプロケット(図示せず)の周りに巻かれる。テンショナは、基端106bと、末端106cと、弧状に湾曲したチェーン摺動面106aと、チェーン摺動面106aと反対側の下側面106eとを有する、高分子材料製のブレードシュー106を含む。ブレードシュー106は、ブレードシューの長さ方向に沿って(すなわち末端から基端へと)延在するブレードスプリング112を受け入れる。ブレードスプリング112は、単一のブレードスプリング又は複数のブレードスプリングからなっていてもよい。
【0015】
ブレードシュー106の基端106bは、ピン124によって基部120に枢支連結される。本明細書において使用される際に、「基部」という用語は、テンショニング装置が取り付けられかつチェーン駆動装置の軸中心線に対して不動である対象物又は一連の対象物として定義される。基部120は、エンジンブロック、ブラケット、トランスミッションケース、又はエンジンのフレームであってもよい。テンショナの様々な部分の、基部への連結は、2つの部分を固定し得る任意の方法によって行うことができる。ブレードシュー106の末端106cは、ランプ摺動面122aを有する、基部120に固定されたランプ122と、ブレーキ接触面又は摩擦接触面132aを有する自己増力ブレーキ132との間に受け入れられる。自己増力ブレーキ132は、ピン134によって基部120に枢支連結され、偏倚要素151(基部120と自己増力ブレーキ132との間のばねであり得る)によって、ブレードシューのチェーン摺動面106aと接触する向きに偏倚される。ブレーキ接触面132aは、ブレードシューのチェーン摺動面106aと接触する。ブレードシュー106の下側面106eは、図3aにも示されるように、ランプ122のランプ摺動面122aと接触する。チェーン摺動面106a上のストッパ130は、106のブレードシューが矢印150によって示される方向に移動する際に、ブレードシュー106の下側面106eをランプ摺動面122aと接触した状態に保つ。本装置の全ライフサイクルの間、ストッパ130又はランプのランプ摺動面122aのいずれかが常にブレードシュー106と接触している。
【0016】
図1aに示されるように、弧状に湾曲したチェーン摺動面106aと接触している、2つのスプロケット間のチェーンストランドの半径Rが増大するか又は延びると、ブレードシューは圧縮され、ブレードシューの末端106cは、ブレードシューの基端106bからさらに離れるように移動し、ブレードシュー106の末端106cのより多くの部分が、ランプ122のランプ摺動面122aとブレーキ132のブレーキ接触面132aとの間に受け入れられた状態になる。ブレードシュー106が矢印150の方向に移動すると、ブレーキ接触面132aとチェーン摺動面106aとの間の摩擦によりブレーキ132に自己増力し(self energize)、ブレードシューの減衰が増大される。
【0017】
図1bに示されるように、湾曲したチェーン摺動面106aと接触している、2つのスプロケット間のチェーンストランドの半径Rが減少又は短縮されると、ブレードシューの末端106cは、チェーン100及びブレードシューの基端106bに向かって移動し、ブレードシューを引っ込ませてチェーンストランドに緊張力をかけるようにする。ブレードシューの末端106cがチェーンに向かって移動すると、矢印150と反対方向、すなわち図1eに示される矢印153の方向におけるブレードシュー106の末端106cの移動により、ブレーキ132に力がかからず、減衰が低減され、ブレーキが、偏倚要素151に抗してピン134上でわずかに枢動され得る。
【0018】
図1c及び1dは、チェーンストランドの半径が増大したときの、自己増力ブレーキの図を示す。図1dを参照すると、変数は以下の通りである。
Rx及びRyは、X及びYそれぞれの反作用の力であり、
L1は、垂直力Nから枢支ピン134までの直交距離であり、
L2は、枢支ピン134からブレーキ接触面132aまでの直交距離であり、
Tsは、自己増力ブレーキを、ブレードシュー106と接触させるように偏倚させる偏倚要素151からのモーメントであり、そして
μは、摩擦係数である。
【0019】
自己増力する方向における自己増力ブレーキの力平衡
図1c及び1dを参照すると、X及びY方向の力の和は、以下の通りである。
【数1】
枢支部又はピンの周りのモーメントの和は以下の通りである。
【数2】
モーメント平衡Nを以下のように求める。
【数3】
式1.4は、L1>μL2の場合にのみ有効である。摩擦力はμNに等しいため、摩擦力は以下の通りである。
【数4】
L1−μL2が0に近付くと、摩擦力は増大し、より0に近付くにしたがい、より大きな力がかけられるが、ブレードシューの末端の移動をなお許容している。0においては、ブレードシューの末端を全く動かすことができないであろう。
【0020】
ブレードシューが延びて、末端106cがチェーンに向かって移動すると、矢印150と反対方向、すなわち矢印153の方向におけるブレードシュー106の末端106cの移動により、132のブレーキに力がかからず、ブレーキが、偏倚要素151に抗してピン134上でわずかに枢動され得る。自己増力ブレーキ132は、ランプ122のランプ摺動面122aの向こう側に位置合わせされる、すなわち真向こうに配置されるのが好ましい。ストッパ130が、ブレードシュー106が矢印150と反対方向に移動する際にブレードシュー106がランプ摺動面122aから離れるのを防ぐ。
【0021】
図1e及び1fは、チェーンストランドの半径が減少して、ブレードシュー106の末端106cが矢印150の方向と反対の矢印153の方向に移動しているときの、自己増力ブレーキの図を示す。図1fを参照すると、変数は以下の通りである。
Rx及びRyは、X及びYそれぞれの反作用の力であり、
L1は、垂直力Nから枢支ピン134までの直交距離であり、
L2は、枢支ピン134からブレーキ接触面132aまでの直交距離であり、
Tsは、自己増力ブレーキを、ブレードシュー106と接触させるように偏倚させる偏倚要素151からのモーメントであり、そして
μは、摩擦係数である。
【0022】
自己増力しない方向における自己増力ブレーキの力平衡
図1e及び1fを参照すると、X及びY方向の力の和は、以下の通りである。
【数5】
枢支部又はピンの周りのモーメントの和は以下の通りである。
【数6】
モーメント平衡Nを以下のように求める。
【数7】
摩擦力はμNに等しいため、摩擦力は以下の通りである。
【数8】
式2.4及び2.5は、ブレーキが自己増力しない方向に移動している場合に常に有効である。
【0023】
例えば以下のような場合、自己増力ブレーキは、ある移動方向ではより大きな摩擦力を生じ、他の方向では生じない。
μ=0.8
L1=0.0028m
L2=0.003m
Ts=0.2Nm
自己増力する移動方向において:
【数9】
N=500N
摩擦力=μN
摩擦力=(0.8)(500N)
摩擦力=400Nである。
反対方向又は自己増力しない移動方向において:
【数10】
N=38.46N
摩擦力=μN
摩擦力=(0.8)(38.46N)
摩擦力=30.77Nである。
【0024】
上記の例に示されるように、ブレーキの自己増力する移動方向の摩擦力は、反対方向におけるよりもかなり大きく、例えば400N>30.77Nである。
【0025】
図2a及び2bは、チェーン100を有する代替的なブレードテンショナの概略図を示す。スプロケット間の半径Rを有するチェーンストランドを有するチェーン100は、駆動スプロケット及び従動スプロケット(図示せず)の周りに巻かれる。テンショナは、基端106bと、末端106cと、弧状に湾曲したチェーン摺動面106aと、チェーン摺動面106aと反対側の下側面106eとを有する、高分子材料製のブレードシュー106を含む。ブレードシュー106は、ブレードシューの長さ方向に沿って(すなわち末端から基端へと)延在するブレードスプリング112を受け入れる。ブレードスプリング112は、単一のブレードスプリング又は複数のブレードスプリングからなっていてもよい。
【0026】
ブレードシュー106の基端106bは、ピン124によって基部120に枢支連結される。基部120は、エンジンブロック、ブラケット、トランスミッションケース、又はエンジンのフレームであってもよい。ブレードシュー106の末端106cは、第2のランプ摺動面138aを有する、基部120に固定された第2のランプ138と、ブレーキ接触面又は摩擦接触面132aを有する自己増力ブレーキ132との間に受け入れられる。自己増力ブレーキ132は、ピン134によって第1のランプ122に枢支連結され、基部120及び自己増力ブレーキ132に結合される偏倚要素151によって、ブレードシューのチェーンの下側106eと接触する向きに偏倚される。ランプ122は基部120に固定される。ブレーキ接触面132aは、ブレードシュー106の下側106eと接触する。図3fに示されるように、ブレードシュー106のチェーン摺動面106aは、第2のランプ摺動面138aと接触する。本装置の全ライフサイクルの間、第2のランプ138又は自己増力ブレーキ132のいずれかが常にブレードシュー106と接触している。
【0027】
図2aに示されるように、弧状に湾曲したチェーン摺動面106aと接触している、2つのスプロケット間のチェーンストランドの半径Rが増大するか又は延びると、ブレードシューは圧縮され、ブレードシューの末端106cは、ブレードシューの基端106bからさらに離れるように移動し、ブレードシューの末端106cのより多くの部分が、第2のランプ138の第2のランプ摺動面138とブレーキ132のブレーキ接触面132aとの間に受け入れられた状態になる。ブレードシュー106が矢印150の方向に移動すると、ブレーキ接触面132aとチェーン摺動面106aとの間の摩擦によりブレーキ132に自己増力し、ブレードシューの減衰が増大される。
【0028】
図2bに示されるように、湾曲したチェーン摺動面106aと接触している、2つのスプロケット間のチェーンストランドの半径Rが減少又は短縮されると、ブレードシューの末端106cは、チェーン100及びブレードシューの基端106bに向かって移動し、ブレードシューを引っ込ませてチェーンストランドに緊張力をかけるようにする。ブレードシューの末端106cがチェーンに向かって移動すると、矢印150と反対方向、すなわち図1eに示される矢印153の方向におけるブレードシュー106の末端106cの移動により、ブレーキ132に力がかからず、減衰が低減され、ブレーキが、偏倚要素151に抗してピン134上でわずかに枢動され得る。
【0029】
チェーン摺動面によって接触されるチェーンストランドの半径が増大すると、ブレーキ接触面132aは、テンショナの様々な表面に接触して、摩擦を生じさせ、ある方向にブレードシューを移動させ、かつ反対方向の移動を制限することができる。
【0030】
図3aでは、ブレーキ132のブレーキ接触面132aとチェーン摺動面106aとの間に摩擦が生成されている。ブレードシューの下側106eとランプ122のランプ摺動面122aとの間にもいくらかの摩擦が生成されている。チェーン摺動面106aと接触しているチェーンストランドの半径が増大すると、ブレーキ接触面132aとチェーン摺動面106aとの間の摩擦は、ブレードシューの移動を減衰する。
【0031】
図3bを参照すると、ブレーキ132のブレーキ接触面132aとテンショナのブレードスプリング112との間に摩擦が生成されている。ブレードシューの下側106eとランプ122のランプ摺動面122aとの間にもいくらかの摩擦が生成されている。チェーン摺動面106aと接触しているチェーンストランドの半径が増大すると、ブレーキ接触面132aとブレードスプリング112との間の摩擦は、ブレードシューの移動を減衰する。
【0032】
図3cでは、ブレーキ132のブレーキ接触面132aとチェーン摺動面106aとの間に摩擦が生成されている。ランプ122のランプ摺動面122aにおいて歯152bと噛み合いかつラチェット止めされるブレードシューの下側106eに対して、歯152aによってさらなる摩擦が加えられる。歯は、0度と90度との間の角度を有していてもよく、また、丸みを帯びていてもよい。チェーン摺動面106aと接触しているチェーンストランドの半径が増大すると、摩擦によりブレードシューの移動が減衰される。
【0033】
図3dを参照すると、ブレーキ132のブレーキ接触面132aにおける歯152aと、チェーン摺動面106aの末端部における歯152bとの噛み合い及びラチェット止めの間に摩擦が生成されている。ブレードの下側106eとランプ122のランプ摺動面122aとの間にもいくらかの摩擦が生成されている。歯は、0度と90度との間の角度を有していてもよく、また、丸みを帯びていてもよい。チェーン摺動面106aと接触しているチェーンストランドの半径が増大すると、摩擦によりブレードシューの移動が減衰される。
【0034】
図3e及び4は、鋼製のブレードスプリング面112と自己増力ブレーキ132との接近を示す。テンショナのテンショナアーム106と接触させるために、ランプ122がブレーキ132と同じ空間を占めることが好ましい場合、ブレードスプリング112とブレーキ132との間のこの接触が用いられるであろう。生成される摩擦は、図3bにおいて生成される摩擦と同様である。
【0035】
図3fは、第2の実施形態のテンショナを示す。ランプ122に結合されたブレーキ132のブレーキ接触面132aとブレードシューの下側106eとの間に摩擦が生成されている。チェーン摺動面106aと第2のランプ138の第2のランプ摺動面138aとの間にもいくらかの摩擦が生成されている。チェーン摺動面106aと接触しているチェーンストランドの半径が増大すると、ブレーキ接触面132aとチェーンの下側106eとの間の摩擦によりブレードシューの移動が減衰される。
【0036】
上記の実施形態のいずれにおいても、部材の各々の元の面の間に摩擦が生成されている。例えば、図3aにおけるテンショナアームの摩擦面は、単にプラスチック製のテンショナアーム自体であってもよい。鋼製又は粉末金属製の自己増力ブレーキとブレードテンショナの鋼製のブレードスプリングとの間の接触が好ましい。あるいは、摩擦面は、紙をベースとしていてもよく、接触が行われる面のうちの1つに結合されていてもよい。エラストマー摩擦材、他の一般的な湿式クラッチ材料、又は他の材料が、上記の摩擦材の代わりに用いられてもよい。
【0037】
図3a〜4に示される実施形態のいずれも、任意のタイプのブレードテンショナに適用することができる。さらに、ブレーキ接触は、ブレードシューの下側において行われ、チェーン摺動面においては行われないことがある。
【0038】
偏倚要素151は、ばねであり得る。このばねは、圧縮ばね又はねじりばねであってもよい。
【0039】
「基部」という用語は、テンショニング装置が取り付けられかつチェーン駆動装置の軸中心線に対して不動である対象物又は一連の対象物として定義される。
【0040】
ピン124と、ハウジング120と、テンショナアーム106との間の継ぎ手の代わりに、参照により本明細書に援用される、「テンショナ用のトルク偏倚の摩擦ヒンジ(TORQUE BIASED FRICTION HINGE FOR A TENSIONER)」という表題の、2006年2月7日に出願された、米国仮特許出願第60/765,777号明細書に開示されたトルク偏倚の摩擦ヒンジを用いてもよい。
【0041】
したがって、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本発明の原理の適用例の例示に過ぎないことを理解されたい。例示された実施形態の詳細への本明細書における言及は、それ自体が本発明にとって不可欠であるとみなされる特徴を記載する特許請求の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1a】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が増大しているか又は延びている状態の、本発明の第1の実施形態の自己増力ブレーキを有する単一のブレードテンショナの概略図を示す。
【図1b】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が減少しているか又は短くなっている状態の、本発明の第1の実施形態の自己増力ブレーキを有する単一のブレードテンショナの概略図を示す。
【図1c】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が増大しているときの、本発明の自己増力ブレーキの図の概略を示す。
【図1d】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が増大しているときの、本発明の自己増力ブレーキの自由体図の概略を示す。
【図1e】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が減少しているときの、本発明の自己増力ブレーキの図の概略を示す。
【図1f】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が減少しているときの、本発明の自己増力ブレーキの自由体図の概略を示す。
【図2a】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が増大しているか又は延びている状態の、本発明の第2の実施形態の自己増力ブレーキを有する単一のブレードテンショナの概略図を示す。
【図2b】テンショナと接触しているチェーンストランドの半径が減少しているか又は短くなっている状態の、本発明の第2の実施形態の自己増力ブレーキを有する単一のブレードテンショナの概略図を示す。
【図3a】自己増力ブレーキとブレードシューとの間の接触の概略図を示す。
【図3b】自己増力ブレーキとブレードシューのブレードスプリングとの間の接触の概略図を示す。
【図3c】ブレードシューの下側及びランプ摺動面にラチェット歯を設けた状態の、自己増力ブレーキとブレードシューとの間の接触の概略図を示す。
【図3d】自己増力ブレーキ及びブレードシューがラチェット歯を有する、自己増力ブレーキとブレードシューとの間の接触の別の概略図を示す。
【図3e】自己増力ブレーキとブレードシューのブレードスプリングとの間の接触の概略図を示す。
【図3f】自己増力ブレーキとブレードシューの下側との間の接触の概略図を示す。
【図4】図3eの正面図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのスプロケットの周りに巻かれたチェーンに緊張力をかけるためのテンショナであって、
弧状に湾曲したチェーン摺動面と、前記弧状に湾曲したチェーン摺動面と反対側の下側面と、基部に枢動可能に結合された基端と、末端とを備えた、所定の長さを有するブレードシューと、
前記弧状に湾曲したチェーン摺動面を前記チェーンに向かって偏倚させる少なくとも1つのブレードスプリングと、
基部に取り付けられ、かつ前記弧状に湾曲したチェーン摺動面又は前記ブレードシューの下側と接触するためのランプ表面を有するランプと、
ブレーキ接触面を有する、ある方向において前記ブレードシューの末端の移動を制限し、かつ反対方向の移動を許容するための、基部に枢動可能に取り付けられた自己増力ブレーキと
を含み、
前記ブレードシューと接触している、前記2つのスプロケット間の、所定の半径を有するチェーンストランドが延びると、前記ブレードシューが圧縮され、前記ブレードシューの末端は、前記ブレードシューの基端及び前記チェーンストランドからさらに離れるように移動し、基部に固定された前記ランプと前記自己増力ブレーキとの間でさらに摺動し、それによって、前記弧状に湾曲したチェーン摺動面の末端部、前記ブレードシューの下側面、又は前記少なくとも1つのブレードスプリングと接触する前記ブレーキのブレーキ接触面は、前記ブレードシューの末端が前記チェーンから離れる向きに動くのを制限し、かつ反対方向の移動を許容するようになっているテンショナ。
【請求項2】
前記自己増力ブレーキを、前記ブレードシューの弧状に湾曲したチェーン摺動面の末端部、前記ブレードシューの下側面、又は前記少なくとも1つのブレードスプリングと接触させるように偏倚させるための偏倚要素をさらに含む、請求項1に記載のテンショナ。
【請求項3】
前記ブレーキ接触面が、0度と90度との間の角度を有する歯を有する、請求項1に記載のテンショナ。
【請求項4】
前記チェーン摺動面の末端の部分に、歯が固定して取り付けられている、請求項3に記載のテンショナ。
【請求項5】
前記ランプ表面及び前記ブレードシューの下側が、0度と90度との間の角度を有する歯を有する、請求項1に記載のテンショナ。
【請求項6】
ブレーキ接触面が摩擦材である、請求項1に記載のテンショナ。
【請求項7】
前記摩擦材が、前記少なくとも1つのブレードスプリング、前記ブレードシューの下側、又は前記弧状に湾曲したチェーン摺動面の末端部に固定して取り付けられている、請求項6に記載のテンショナ。
【請求項8】
前記ブレードシューと前記ランプとの接触を保つために前記ブレーキに隣接して設けられたストッパをさらに含む、請求項1に記載のテンショナ。
【請求項9】
前記ブレードシューと接触している、前記2つのスプロケット間の、前記所定の半径を有するチェーンストランドが延びると、前記自己増力ブレーキが、
【数1】
(式中、L1>μL2であり、μが、摩擦係数であり、Tsが、前記ブレーキを偏倚させる前記スプリングからのモーメントであり、L1が、前記ブレードシューの基端を枢動可能に結合する垂直力から基部までの直交距離であり、L2が、前記ブレードシューの枢動可能に結合された基端から前記ブレーキの摩擦接触面までの直交距離である)
の摩擦力を有する、請求項1に記載のテンショナ。
【請求項10】
前記ブレードシューと接触している、前記2つのスプロケット間の、前記所定の半径を有する前記チェーンストランドが縮むと、前記自己増力ブレーキが、
【数2】
(式中、μが、摩擦係数であり、Tsが、前記ブレーキを偏倚させる前記スプリングからのモーメントであり、L1が、前記ブレードシューの基端を枢動可能に結合する垂直力から基部までの直交距離であり、L2が、前記ブレードシューの枢動可能に結合された基端から前記ブレーキの摩擦接触面までの直交距離である)
の摩擦力を有する、請求項1に記載のテンショナ。
【請求項1】
少なくとも2つのスプロケットの周りに巻かれたチェーンに緊張力をかけるためのテンショナであって、
弧状に湾曲したチェーン摺動面と、前記弧状に湾曲したチェーン摺動面と反対側の下側面と、基部に枢動可能に結合された基端と、末端とを備えた、所定の長さを有するブレードシューと、
前記弧状に湾曲したチェーン摺動面を前記チェーンに向かって偏倚させる少なくとも1つのブレードスプリングと、
基部に取り付けられ、かつ前記弧状に湾曲したチェーン摺動面又は前記ブレードシューの下側と接触するためのランプ表面を有するランプと、
ブレーキ接触面を有する、ある方向において前記ブレードシューの末端の移動を制限し、かつ反対方向の移動を許容するための、基部に枢動可能に取り付けられた自己増力ブレーキと
を含み、
前記ブレードシューと接触している、前記2つのスプロケット間の、所定の半径を有するチェーンストランドが延びると、前記ブレードシューが圧縮され、前記ブレードシューの末端は、前記ブレードシューの基端及び前記チェーンストランドからさらに離れるように移動し、基部に固定された前記ランプと前記自己増力ブレーキとの間でさらに摺動し、それによって、前記弧状に湾曲したチェーン摺動面の末端部、前記ブレードシューの下側面、又は前記少なくとも1つのブレードスプリングと接触する前記ブレーキのブレーキ接触面は、前記ブレードシューの末端が前記チェーンから離れる向きに動くのを制限し、かつ反対方向の移動を許容するようになっているテンショナ。
【請求項2】
前記自己増力ブレーキを、前記ブレードシューの弧状に湾曲したチェーン摺動面の末端部、前記ブレードシューの下側面、又は前記少なくとも1つのブレードスプリングと接触させるように偏倚させるための偏倚要素をさらに含む、請求項1に記載のテンショナ。
【請求項3】
前記ブレーキ接触面が、0度と90度との間の角度を有する歯を有する、請求項1に記載のテンショナ。
【請求項4】
前記チェーン摺動面の末端の部分に、歯が固定して取り付けられている、請求項3に記載のテンショナ。
【請求項5】
前記ランプ表面及び前記ブレードシューの下側が、0度と90度との間の角度を有する歯を有する、請求項1に記載のテンショナ。
【請求項6】
ブレーキ接触面が摩擦材である、請求項1に記載のテンショナ。
【請求項7】
前記摩擦材が、前記少なくとも1つのブレードスプリング、前記ブレードシューの下側、又は前記弧状に湾曲したチェーン摺動面の末端部に固定して取り付けられている、請求項6に記載のテンショナ。
【請求項8】
前記ブレードシューと前記ランプとの接触を保つために前記ブレーキに隣接して設けられたストッパをさらに含む、請求項1に記載のテンショナ。
【請求項9】
前記ブレードシューと接触している、前記2つのスプロケット間の、前記所定の半径を有するチェーンストランドが延びると、前記自己増力ブレーキが、
【数1】
(式中、L1>μL2であり、μが、摩擦係数であり、Tsが、前記ブレーキを偏倚させる前記スプリングからのモーメントであり、L1が、前記ブレードシューの基端を枢動可能に結合する垂直力から基部までの直交距離であり、L2が、前記ブレードシューの枢動可能に結合された基端から前記ブレーキの摩擦接触面までの直交距離である)
の摩擦力を有する、請求項1に記載のテンショナ。
【請求項10】
前記ブレードシューと接触している、前記2つのスプロケット間の、前記所定の半径を有する前記チェーンストランドが縮むと、前記自己増力ブレーキが、
【数2】
(式中、μが、摩擦係数であり、Tsが、前記ブレーキを偏倚させる前記スプリングからのモーメントであり、L1が、前記ブレードシューの基端を枢動可能に結合する垂直力から基部までの直交距離であり、L2が、前記ブレードシューの枢動可能に結合された基端から前記ブレーキの摩擦接触面までの直交距離である)
の摩擦力を有する、請求項1に記載のテンショナ。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図4】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図4】
【公表番号】特表2009−538404(P2009−538404A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554456(P2008−554456)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/060945
【国際公開番号】WO2007/092675
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(500124378)ボーグワーナー・インコーポレーテッド (302)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/060945
【国際公開番号】WO2007/092675
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(500124378)ボーグワーナー・インコーポレーテッド (302)
【Fターム(参考)】
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