説明

テンソルとして有用なブロックコポリマー

この発明は、表面テンソルとして有用でありうる新規な直鎖状ブロックコポリマーに関係する。この発明は又、このコポリマーを含む化粧用でない組成物にも関係する。このコポリマーは、特に、スチレンブロックとエチルアクリレート又はエチルメタクリレートブロックを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明の一つの主題は、表面テンソルとして利用できる新規な直鎖状ブロックコポリマーである。この発明は又、該コポリマーを含む化粧用でない組成物にも関係する。このコポリマーは、特に、スチレンベースのブロック及びエチルアクリレート又はエチルメタクリレートベースのブロックを含む。
【0002】
産業界には、新規な利益(例えば、化学化合物を含む組成物によって消費者にもたらされる利益又は工業プロセスを実施することによる利益)を提供しうる新規な化学化合物、又はこれらの利益を得る方法を技術的又は経済的に簡素化しうる化学化合物への一定の要求がある。
【0003】
最近、多くの文献は、様々な組成のブロックコポリマー、及び様々な利益を与えるための利用を記載している。
【0004】
従って、ある種のブロックコポリマーの利用が、化粧品分野、家事関連分野、被覆分野及び塗料分野において、表面例えば皮膚及び/又は毛髪(化粧品分野)、洗濯室、硬質表面又は食器洗い(家事関連分野)のために記載されている。ブロックコポリマーの利用は又、固体粒子の乳化、分散効果のために又はこれらの効果を得るための補助剤としても記載されている。
【0005】
文献WO03/095513は、スチレンに由来するユニットを含むブロックA及びエチルアクリレートに由来するユニットを含むブロックBを含み、ブロックAのブロックBに対する重量比が0.5より小さいブロックコポリマーを記載している。これらのコポリマーは、ゴム弾性であり、表面テンソルとしては適当でない。
【0006】
文献WO01/16187は、スチレンに由来するユニットを含むブロックA及びエチルアクリレートに由来するユニットを含むブロックBを含む「中間体生成物」のブロックコポリマーを記載している。これらのブロックコポリマーを、次いで、加水分解して、スチレンに由来するユニットを含むブロックA並びにアクリル酸(エチルアクリレートの加水分解物)に由来するユニット及びエチルアクリレート(加水分解されてない)に由来するユニットを含むブロックB’を含むブロックコポリマーを形成する。この「中間体生成物」のブロックコポリマーは、1未満のブロックAのブロックBに対する重量比を有する。この中間体生成物に関しては何の性質も与えられていない。
【0007】
新規なブロックコポリマーに対する、特に、表面テンソルとして利用することのできるブロックコポリマーに対する要求がある。
【0008】
本発明は、この要求に、直鎖状ブロックコポリマーA−[B−A]n又はB−[A−B]n又は[A−B]n(式中、Aは、少なくとも50重量%のスチレン由来のユニットを含むブロックであり、Bは、少なくとも50重量%のエチルアクリレート由来の又はエチルメタクリレート由来のユニットを含むブロックであり、nは、1以上の数であり、スチレンに由来するユニットとエチルアクリレート又はエチルメタクリレートに由来するユニットの重量比が1以上であることを特徴とする)を提供することによって応じるものである。
【0009】
本発明は又、このコポリマー及び好ましくは水性又は非水性の液体ベクターを含む化粧用でない組成物にも関係する。
【0010】
本発明は又、表面、好ましくは非ケラチン性表面(特に、皮膚、爪、毛髪、まつげ又は他の毛の成長物以外の表面)を処置し及び/又は改質し及び/又は被覆する方法であって、該コポリマーを含む組成物を該表面に適用するステップを含む当該方法にも関係する。
【0011】
この組成物は、好ましくは、化粧用でない組成物である。
【0012】
本発明は又、該コポリマーの、表面(好ましくは、非ケラチン性表面)に対する張り付与剤(tensioning agent)としての利用にも関係する。これらの表面は、好ましくは、ケラチン性表面以外の表面である。
【0013】
定義
本発明において、表現「モノマー由来のユニット」は、該モノマーから重合によって、直接得ることができるユニットを意味する。従って、例えば、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに由来するユニットは、例えば、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを重合してから加水分解することにより得られる式−CH2−CH(COOH)−、又は−CH2−C(CH3)(COOH)−のユニットをカバーしない。
【0014】
本願においては、別途記さない限り、ブロック又はコポリマーの平均分子量は、ブロック又はコポリマーの理論的又は「標的の」平均分子量を意味する。
【0015】
ブロックの理論的平均分子量blockは、典型的には、下記の式に従って計算される:
【数1】

(式中、Miは、モノマーiの分子量であり、niは、モノマーiのモル数であり、nprecursorは、ブロックのマクロ分子鎖が結合する官能基のモル数である)。これらの官能基は、移動剤(又は、移動基)又は開始剤、前のブロックなどに由来するものであってよい。もしこれが前のブロックであるならば、そのモル数は、当該前のブロックのマクロ分子鎖が結合した一の化合物例えば移動剤(又は、移動基)又は開始剤のモル数と考えることができる。実際には、理論的平均分子量は、導入したモノマーのモル数及び導入した前駆体のモル数から計算される。
【0016】
本願において、コポリマーの理論的平均分子量は、これらのブロックの理論的平均分子量の加算により決定される。
【0017】
本願において、第一のブロック又はコポリマーの測定された平均分子量は、ブロック又はコポリマーのポリスチレン同等物における、THF中でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定してポリスチレン標準を用いて較正した数平均分子量を意味する。nブロックを有するコポリマー中のn番目のブロックの測定された平均分子量は、該コポリマーの測定された平均分子量とそれが調製された(n−1)ブロックを有するコポリマーの測定された平均分子量との差として規定される。
【0018】
コポリマー
このコポリマーは、直鎖状ブロックコポリマーA−[B−A]n又はB−[A−B]n又は[A−B]nである。これらのブロックA及びBは、直鎖状に一緒に連結されている。もしn=1であれば、このコポリマーは、A−B−A又はB−A−Bのトリブロックコポリマー、又はA−Bのジブロックコポリマーである。もしn=2であれば、このコポリマーは、A−B−A−B−A又はB−A−B−A−B又はA−B−A−Bコポリマーである。もしn≧3であれば、それは、Aブロック又はBブロックがコアを形成する星状又はテレ鋏角コポリマーではない。好ましくは、n=1であり、一層好ましくは、このコポリマーは、A−B−Aトリブロックコポリマーである。このコポリマーは、重合用官能基若しくは基又はかかる官能基若しくは基の残基を、マクロ分子鎖が終端する際に含むことができるということは注意される。これらは、例えば、移動基又は移動基の残基であってよい(例えば、式−S−CS−の基又はこの基の残基を含む)。
【0019】
ブロックAは、少なくとも50重量%(ブロックAの総重量に対して)のスチレンに由来するユニットを含む。ブロックAは、スチレンに由来するもの以外の他のユニットを含むことができ、それは、コポリマーの性質を調節すること又はその製造を容易にすることを意図したものであってよい。それ故、ブロックAは、スチレンに由来するユニット及び他のユニットを含むランダムコポリマーであってよい。従って、ブロックAの水又は他の媒質における溶解度を調節すること又はそのガラス転移温度を調節し、そうしてその硬さを調節することは可能である。ブロックAの他のユニットは、アクリル酸、メタクリル酸、メチル、エチル、ブチル、エチルヘキシル若しくは2−ヒドロキシエチルアクリレート、又はメチル、エチル、ブチル、エチルヘキシル若しくは2−ヒドロキシエチルメタクリレートから選択するモノマーに由来するユニットであってよい。少量のメタクリル酸の存在は、特に、このコポリマーの製造を容易にすることができ、ブロックAは、例えば、その中に、0.1〜以上5重量%未満(ブロックAの総重量に対して)を含むことができる。ブロックAは、好ましくは、少なくとも75重量%の、好ましくは少なくとも90重量%の、好ましくは少なくとも95重量%(ブロックAの総重量に対して)の、スチレンに由来するユニットを含む。
【0020】
ブロックBは、少なくとも50重量%の、エチルアクリレート又はエチルメタクリレートに由来するユニットを含む。ブロックBは、エチルアクリレート又はエチルメタクリレートに由来するもの以外の他のユニットを含むことができ、それは、コポリマーの性質を調節すること又はその製造を容易にすることを意図したものであってよい。それ故、ブロックBは、エチルアクリレート又はエチルメタクリレートに由来するユニット及び他のユニットを含むランダムコポリマーであってよい。従って、ブロックBの水又は他の媒質における溶解度を調節すること又はそのガラス転移温度を調節し、そうしてその硬さを調節することは可能である。ブロックBの他のユニットは、アクリル酸、メタクリル酸、メチル、ブチル、エチルヘキシル若しくは2−ヒドロキシエチルアクリレート、又はメチル、ブチル、エチルヘキシル若しくは2−ヒドロキシエチルメタクリレートから選択するモノマーに由来するユニットであってよい。少量のメタクリル酸の存在は、特に、このコポリマーの製造を容易にすることができ、ブロックBは、例えば、その中に、0.1〜5重量%未満(ブロックBの総重量に対して)を含むことができる。或は、ブロックBは、メタクリル酸に由来するユニットを含まなくてよい。ブロックBは、好ましくは、少なくとも75重量%の、好ましくは少なくとも90重量%の、好ましくは少なくとも95重量%(ブロックBの総重量に対して)の、エチルアクリレート又はエチルメタクリレートに由来するユニットを含む。
【0021】
スチレンに由来するユニットのエチルアクリレート又はエチルメタクリレートに由来するユニットに対する重量比は、1以上であり、好ましくは1.5以上であり、好ましくは2.01以上であり、好ましくは2.5以上であり、好ましくは5以上である。この比は、このコポリマーの製造のために導入されたモノマー間の比を計算することにより、又はこれらのブロックの平均分子量の間の比を計算することにより決定することができる。好ましくは、これらのブロックの平均分子量の間の比は、1以上であり、好ましくは1.5以上であり、好ましくは2.01以上であり、好ましくは2.5以上であり、好ましくは5以上である。
【0022】
一つの特定の具体例によれば、このコポリマーは、A−Bジブロックコポリマーとは異なっている(該コポリマーにおいては、スチレンに由来するユニットのエチルアクリレート又はエチルメタクリレートに由来するユニットに対する重量比は、1.5未満、又は2.01未満又は2.5未満又は5未満である)。このコポリマーは、好ましくは、A−Bジブロックコポリマーと異なる。
【0023】
一つの有利な具体例によれば、このコポリマーは、20,000〜1,000,000g/モルの、好ましくは50,000〜200,000g/モルの平均分子量を有する。ブロックAは、有利には、1,000〜200,000g/モルの、好ましくは、10,000〜100,000g/モルの平均分子量を有する。ブロックBは、有利には、1,000〜100,000g/モルの、好ましくは、2,000〜50,000g/モルの平均分子量を有する。
【0024】
このコポリマーは、20,000〜1,000,000g/モルの、好ましくは50,000〜200,000g/モルの測定された平均分子量を有しうる。ブロックAは、有利には、1,000〜200,000g/モルの、好ましくは10,000〜100,000g/モルの測定された平均分子量を有しうる。ブロックBは、有利には、1,000〜100,000g/モルの、好ましくは2,000〜50,000g/モルの測定された平均分子量を有しうる。
【0025】
このコポリマーは、有利には、瞬間回復Ri<50%、好ましくはRi<30%、及び遅延回復R2h<70%、好ましくはR2h<50%を有しうる(30%の延長後)。この具体例は、コポリマーのテンソルとしての利用のコンテキストにおいて特に有利である。
【0026】
これらの回復は、下記のプロトコールに従って測定することができる:
コポリマーフィルムを、コポリマーの溶液又は分散液をテフロンコートされた型にキャストしてから7日間制御された環境(23±5℃及び相対湿度50±10%)で乾燥させることにより製造する。
【0027】
約100μmの厚さを有するフィルムが、こうして得られ、これから、幅15mm及び長さ80mmを有する矩形の試験片を切り出す(例えば、パンチを用いて)。
【0028】
これらの試験片の形態の試料に、機械(Zwick参照)を用いて、同じ温度及び湿度(乾燥に関して)の条件下で引張り応力をかける
【0029】
これらの試験片を、50mm/分の速度で引張り、ジョー間の距離は、50mmであり、これは、試験片の初期長さ(l0)に相当する。
【0030】
瞬間回復Riは、下記の様式で測定される:
− 試験片を、30%(εmax)即ち初期長さ(l0)の約0.3倍だけ引張り;そして
− その応力を、引張る速度と等しい速度即ち50mm/分でのアンローディングにより解放し、試験片の残留伸び(εi)をパーセンテージとして測定する(ゼロ応力(εi)に戻った後)。
【0031】
この瞬間回復Ri(%)を、下記の方程式により決定する:
i = 100 × (εmax−εi),/(εmax)。
【0032】
遅延回復を測定するために、ゼロ応力に戻ってから2時間後に、試験片の残留伸び(ε2h)をパーセンテージとして測定した。遅延回復(R2h)(%)を、下記の方程式により決定する:
2h = 100 × (εmax−ε2h),/(εmax)。
【0033】
用いることのできるコポリマーは、特に、下記のものである:
− A−B−A’ (又は、一層単純に、A−B−A)トリブロックコポリマー
(式中:
− ブロックAは、30,000g/モルの理論的平均分子量を有する、少なくとも95重量%のスチレン由来のユニット及び少なくとも0.1重量%のメタクリル酸由来のユニットを含む第一のブロックであり;
− ブロックBは、10,000g/モルの理論的平均分子量を有する、少なくとも95重量%の、好ましくは100重量%のエチルアクリレートに由来するユニットを含む第二のブロックであり;
− ブロックA’は、30,000g/モルの理論的平均分子量を有する、少なくとも95重量%のスチレン由来のユニット及び少なくとも0.1重量%のメタクリル酸由来のユニットを含む第三のブロックである);又は
− A−B−A’ (又は、一層単純に、A−B−A)トリブロックコポリマー
(式中:
− ブロックAは、25,000g/モルの理論的平均分子量を有する、少なくとも95重量%のスチレン由来のユニット及び少なくとも0.1重量%のメタクリル酸由来のユニットを含む第一のブロックであり;
− ブロックBは、20,000g/モルの理論的平均分子量を有する、少なくとも95重量%の、好ましくは100重量%のエチルアクリレートに由来するユニットを含む第二のブロックであり;
− ブロックA’は、25,000g/モルの理論的平均分子量を有する、少なくとも95重量%のスチレン由来のユニット及び少なくとも0.1重量%のメタクリル酸由来のユニットを含む第三のブロックである);又は
− A−B−A’ (又は、一層単純に、A−B−A)トリブロックコポリマー
(式中:
− ブロックAは、32,500g/モルの理論的平均分子量を有する、少なくとも95重量%のスチレン由来のユニット及び少なくとも0.1重量%のメタクリル酸由来のユニットを含む第一のブロックであり;
− ブロックBは、5,000g/モルの理論的平均分子量を有する、少なくとも95重量%の、好ましくは100重量%のエチルアクリレートに由来するユニットを含む第二のブロックであり;そして
− ブロックA’は、32,500g/モルの理論的平均分子量を有する、少なくとも95重量%のスチレン由来のユニット及び少なくとも0.1重量%のメタクリル酸由来のユニットを含む第三のブロックである)。
【0034】
この発明によるコポリマーは、液体媒質中の溶液若しくは分散液の形態で、又は固体形態例えば粉末、フレーク、若しくはフィルムの形態で与えることができる。それは、好ましくは、水に不溶性の分散液の形態で与えられる。乳濁液中の又はラテックスの形態のポリマーを挙げることができる。水に分散されたポリマーの濃度は、例えば、5〜70重量%、好ましくは25〜55重量%であってよい。この水に不溶性の分散形態は、有利には、コポリマーがその製造プロセスから引き出されたときの形態であってよい。それらの濃度は、重合プロセスのパラメーター(用いるモノマーと水の相対量)を動かすことにより、又は重合後の希釈若しくは濃縮を行なうことによって調節することができる。
【0035】
コポリマーの製造方法
この発明によるこれらのコポリマーは、任意の公知の方法によって得ることができる(これが、制御され若しくは制御されないラジカル重合によるか、開環重合(特に、アニオン性若しくはカチオン性開環重合)によるか、アニオン性若しくはカチオン性重合によるか又はポリマーの化学修飾によるものの何れであっても)。
【0036】
好ましくは、いわゆるリビング又は制御されたラジカル重合方法を用い、特に、好ましくは、式−S−CS−の基を含む移動剤(特に、RAFT又はMADIXの名で知られたもの)を利用する制御された又はリビングラジカル重合方法を用いる。
【0037】
いわゆるリビング又は制御された重合方法の例として、特に、下記を挙げることができる:
− 制御されたラジカル重合を、キサンテート型制御剤を用いて実施する出願WO98/58974、WO00/75207及びWO01/42312からのプロセス;
− 出願WO98/01478からのジチオエステル型制御剤を利用する制御されたラジカル重合方法;
− 出願WO99/31144からのジチオカルバメート型制御剤を利用する制御されたラジカル重合方法;
− 出願WO02/26836からのジチオカルバゼート型制御剤を利用する制御されたラジカル重合方法;
− 出願WO02/10223からのジチオホスホロエステル型制御剤を利用する制御されたラジカル重合方法、
(適宜、上記のように制御されたラジカル重合により得られたブロックコポリマーは、それらの硫黄含有鎖末端を例えば加水分解、酸化、還元、熱分解、オゾン分解又は置換型の処理により精製するための反応を受ける)
− 重合をニトロキシド前駆体の存在下で行なう出願WO99/03894からの方法、又は他のニトロキシド若しくはニトロキシド/アルコキシアミン複合体を利用する方法;
− 原子移動ラジカル重合(ATRP)を利用する出願WO96/30421からの方法;
− Otu等、Makromol. Chem. Rapid. Commun., 3, 127(1982)の教示に従うイニファタ型制御剤を利用する制御されたラジカル重合方法;
− Tatemoto等、Jap. 50, 127, 991(1975) Daikin Kogyo Co Ltd 日本国及びMatyjaszewski等、Macromolecules, 28, 2093,(1995)の教示に従う退行性ヨウ素移動を利用する制御されたラジカル重合方法;
− D. Braun等、Macromol. Symp. 111, 63(1996)に開示されたテトラフェニルエタン誘導体を利用する制御されたラジカル重合方法;
− Wayland等、J. Am. Chem. Soc. 116, 7973(1994)に記載された有機コバルト錯体を利用する制御されたラジカル重合方法;及び
− ジフェニルエチレンを利用する制御されたラジカル重合方法(WO00/39169又はWO00/37507)。
【0038】
上記の方法を用いて、モノマーからの又は開始剤モノマー及び/若しくは重合の制御に有利な薬剤(−S−CS−基を有する移動剤、ニトロキシドなど)のブレンドからの第一のブロックの製造を実施し、次いで、第二のブロックの第一のブロック上への成長を、前のブロックの製造に用いたものとは異なるモノマーを用いて、適宜、開始剤及び/又は重合の制御に有利な薬剤を加えて実施してジブロックコポリマーを得てから、第三のブロックの該ジブロックコポリマー上への成長を実施してトリブロックコポリマーを得ることなどが可能である。これらのブロックコポリマーを製造する方法は、当業者に公知である。このコポリマーは、鎖の末端として、移動基又は移動基の残基例えば−S−CS−基を含む基(例えば、キサンテート又はジチオエステルに由来するもの)又はかかる基の残基を有しうることに言及することができる。
【0039】
3つの連続的重合シーケンスを用いる方法により得られたトリブロックコポリマーは、しばしば、A−B−Cブロックコポリマーとして記載されることが挙げられる。第三のブロックCの組成及び分子量が第一のブロックAの組成及び分子量とほぼ等しい((コ)モノマーの量及び割合がほぼ同じ)場合には、これらのトリブロックコポリマーは、A−B−A’トリブロックコポリマーとして又は拡張若しくは単純化によりA−B−Aトリブロックコポリマーとして記載されうる。
【0040】
従って、例えば、A−B−Aトリブロックコポリマーを、この発明に従って、下記の工程を含む方法により製造することは可能である:
− 工程 a):ブロックAの、下記を含む組成物の重合、好ましくは制御されたラジカル重合による製造:
− スチレン;
− 遊離ラジカルの供給源;及び
− 少なくとも一種の制御剤、好ましくは、−S−CS−基を含む薬剤例えばキサンテート又はジチオエステル;
− 工程 b):A−Bジブロックコポリマーの、下記を含む組成物の重合好ましくは制御されたラジカル重合によるブロックBのブロックA上への成長による生成:
− エチルアクリレート又はエチルメタクリレート;及び
− 随意の遊離ラジカルの供給源;
− 工程 c):A−B−Aトリブロックコポリマーの、下記を含む組成物の重合好ましくは制御されたラジカル重合によるブロックAのA−Bジブロック上への成長による生成:
− エチルアクリレート又はエチルメタクリレート;及び
− 随意の遊離ラジカルの供給源;
− 工程 d):随意の、一群の制御剤の破壊又は非活性化。
【0041】
他の具体例によれば、A−B−Aトリブロックコポリマーは、2つの重合シーケンスにおいて、2つの移動基含む薬剤又は基の各末端における移動を可能にする一つの移動基を含む薬剤例えば式−S−CS−S−の基を含むトリチオカーボネートを用いて製造される。かかる方法において、ブロックAは、完全に同一であり、ブロックBは、一般に、ブロックBの反復ユニットと異なる中心基を含む。ブロックB内の例えば下記の−X−、−X−Z’−X−又はR’と注記される中心基の存在への言及は、しばしば、単純化の理由により省略される。
【0042】
従って、A−B−Aトリブロックコポリマーを下記の方法により製造することは可能である:
− 工程 a’):式R−A−X−A−Rのポリマーの、下記を含む組成物の重合による製造:
− スチレン;
− 遊離ラジカルの供給源;及び
− 少なくとも一種の式R−X−Rの制御剤(式中、Rは、同じであるか異なって、有機基であり、Xは、移動基であり、この薬剤は、好ましくは、式−S−CS−S−の−X−基及び好ましくは2つの同じR基例えばベンジル基を含むトリチオカーボネートである)(従って、この薬剤は、例えば、ジベンジル−トリチオカーボネートである);
− 工程 b’):R−A−B−X−B−A−R(又は一層単純なA−B−A)トリブロックコポリマーの、下記を含む組成物の重合好ましくは制御されたラジカル重合によるブロックBのブロックA上への成長による製造:
− エチルアクリレート又はエチルメタクリレート;及び
− 随意の、遊離ラジカルの供給源。
【0043】
A−B−Aトリブロックコポリマーを下記の方法により製造することも可能である:
− 工程 a”):式 R−A−X−Z’−X−A−Rのポリマーの、下記を含む組成物の重合による製造:
− スチレン;
− 遊離ラジカルの供給源;及び
− 式 R−X−Z’−X−Rの少なくとも一種の制御剤(式中、Rは、同じであるか又は異なって、有機基であり、Z’は、二価の有機基であり、そしてXは、移動基であり、好ましくは、−S−CS−基を含む移動基である)であって、例えば下記である該剤;
− 2つのキサンテート基を含む剤(式中、−X−は、−Z’−と共に、式−S−CS−O−(キサンテート)基を形成する式−S−CS−の基であり、Z’は、例えば式−O−CH2−CH2−O−の基であり、Rは、例えば、ベンジル基又は式H3C−OOC−CH(CH3)−の基である);又は
− 2つのジチオエステル基を含む剤(式中、−X−は、−Z’−と共に、式−S−CS−C−(ジチオエステル)の基を形成する式−S−CS−の基であり、Z’は、例えばフェニル若しくはベンジル基、又は式−CH2−C65−CH2−の基であり、Rは、例えばベンジル基である);
− 工程 b”) R−A−B−X−Z’−X−B−A−R(又は、一層単純にA−B−A)トリブロックコポリマーの、下記を含む組成物の重合好ましくは制御されたラジカル重合によるブロックBのブロックA上への成長による製造:
− エチルアクリレート又はエチルメタクリレート;及び
− 随意の遊離ラジカルの供給源。
【0044】
A−B−Aトリブロックコポリマーを下記の方法により製造することも又、可能である:
− 工程 a'''):式 Z−X−B−R’−B−X−Zのポリマーの、下記を含む組成物の重合による製造:
− エチルアクリレート又はエチルメタクリレート;
− 遊離ラジカルの供給源;及び
− 式 Z−X−R’−X−Zの少なくとも一種の制御剤(式中、Zは、同じであるか又は異なって、有機基であり、R’は、二価の有機基であり、Xは、移動基好ましくは、−S−CS−基を含む移動基であり、該剤は、例えば下記のものである:
− 2つのキサンテート基を含む剤 (式中、−X−は、Z−と共に式−O−CS−S−(キサンテート)の基を形成する式−S−CS−の基であり、Z−は、例えば、エトキシ基であり、そして−R’−は、例えば、フェニル又はベンジル基であり、又は式−CH2−C65−CH2−の基である)、
− 2つのジチオエステル基を含む剤(式中、−X−は、Z−と共に式C−CS−S−(ジチオエステル)の基を形成する式−S−CS−の基であり、Z−は、例えば、フェニル又はベンジル基であり、そして−R’−は、例えば、フェニル又はベンジル基であり、又は式−CH2−C65−CH2−の基である);
− 工程 b''') Z−X−A−B−R’−B−A−X−Z(又は、一層簡単にはA−B−A)トリブロックコポリマーの、下記を含む組成物の重合好ましくは制御されたラジカル重合によるブロックAのブロックB上への成長による製造:
− スチレン;及び
− 随意の、遊離ラジカルの供給源:
− 工程 d''') 随意の、該一群の制御剤の破壊又は非活性化。
【0045】
これらの重合は、任意の適当な物理的形態で、例えば溶媒中の溶液中で、水中の乳濁液(「ラテックス」として知られる方法)として、バルクで、もし必要であれば、これらの種を液化し及び/又は可溶性若しくは不溶性にするために温度及び/又はpHを制御することにより行なうことができる。
【0046】
組成物
このコポリマーは、化粧用でない組成物(ケラチン性表面への適用を意図していない組成物)において利用することができる。
【0047】
この組成物は、コポリマー及びベクターを含む。好ましくは、このベクターは、液体ベクター(水性であっても、そうでなくてもよい)である。
【0048】
このベクターは、特に、このコポリマーを溶解されることを可能にする物質又は混合物であってよい。溶媒又は溶媒混合物を挙げることができる。このベクターは又、このコポリマーが分散されることを可能にする物質であってもよい。このコポリマー及びベクター以外では、この組成物は、当然、他の成分を含むことができ、該成分は、組成物中に、様々な形態例えば溶液、乳濁液又は分散液の形態で存在することができる。従って、この組成物は、一つの相がベクターである乳濁液であってよい。例えば、それは、水中油型乳濁液であってよく、該ベクターは、水性相である。このコポリマーは、特に、それ自身が、該相を含む複雑な組成物の一つの相であるベクターに含まれうる。
【0049】
化粧用でない組成物としては、特に、織物表面、家庭内の若しくは産業上の表面、及び/又は建築物及び土木工学的建造物の表面を処理及び/又は改変及び/又は被覆するための組成物が挙げられる。
【0050】
それは、特に、下記であってよい:
− 硬質表面用洗剤組成物;
− 粉末洗剤(織物表面用);
− 織物軟化剤;
− 織物をアイロンがけしやすくするための組成物;又は
− 被覆用組成物(例えば、ペンキ、又は水硬性結合剤例えば壁の下塗り又はしっくい)。
【0051】
これらの組成物は、特に、目的に応じて、下記を含むことができる:
− 界面活性剤、例えばアニオン性、カチオン性、非イオン性及び/又は両性界面活性剤(双極性界面活性剤を含む)(例えば、硬質面用の洗剤組成物又は粉末洗剤用);
− 織物軟化剤、特に、カチオン性界面活性剤又はこの発明のコポリマー以外のポリマー(例えば、天然ポリマー例えば澱粉、ポリマーの誘導体、特にカチオン性誘導体、合成ポリマー、特にカチオン性合成ポリマー、シリコーン油);
− レオロジー改変剤、例えば、増粘剤又はゲル化剤;
− 被覆形成のための薬剤、例えば、フィルムを形成することのできる及び/又は架橋することのできるモノマー、オリゴマー又はポリマー、非水硬性結合剤、特に、ペンキなどの被覆剤;
− 水硬性結合剤、例えば、水硬性結合剤コーティング例えばしっくい又は壁の下塗り;及び
− 溶剤又は補助溶剤。
【0052】
この組成物中のコポリマーの重量(乾物)は、有利には、0.5〜20%、好ましくは、1〜10%であってよい。
【0053】
表面を処理及び/又は改変及び/又は被覆する方法並びにその利用
このコポリマーは、非ケラチン性の表面を処理及び/又は改変及び/又は被覆するために利用することができる。この処理は、このコポリマーを含む組成物を該表面に適用する工程を含む方法である。これらの表面及び組成物は、上記されたものである。この組成物の適用後に、ベクターを、その性質に応じて、例えば吸収、吸着及び/又は蒸発によって除去することができる。この蒸発は、自然のものであっても、加熱により加速したものであってもよい。
【0054】
この処理及び/又は改変及び/又は被覆は、組成物の適用とリンクしている。処理及び/又は改変及び/又は被覆された表面は、その表面の処理前のエレメント及び該コポリマーを含む表面である。
【0055】
こうして処理されうる表面は、下記を含む:
− 織物表面、典型的には、洗濯室の織物表面;
− 硬質表面、例えば家庭内の表面、例えば、金属、陶磁器、ガラス又はプラスチック表面、典型的には、調理室又は浴室又は化粧室表面、又は艶付け材料;
− 建築及び土木工学分野の壁(天井を含む);及び
− 自動車の車体。
【0056】
このコポリマーは、こうして、表面に対する張り付与剤として利用することができる。織物表面については、それは、特に、使用によるしわの出現を遅延させ及び/又は手洗い又は機械洗浄後のアイロンがけを止めることができ、及び/又はアイロンがけを容易にすることができる。家庭及び/又は産業における表面並びに建築及び土木工学的表面(例えば、被覆用組成物例えばペンキ又は水硬性結合剤組成物)については、乾燥中又はその後に、老化時若しくは例えば温度変化、歪み若しくは地盤の動きとリンクした大小のストレスがかけられた際に、亀裂の形成を防止し又は制限することができる。
【0057】
この発明の他の詳細又は利点は、下記の非制限的実施例に照らして明らかとなろう。
【実施例】
【0058】
実施例1a: ポリスチレン−ブロック−ポリ(エチルアクリレート)−ブロック−ポリスチレントリブロックコポリマー「pS30k−pEA10k−pS30k」の製造
この手順は、ポリスチレン−b−ポリ(エチルアクリレート)−b−ポリスチレントリブロックを得るために、ポリスチレンブロックを得る第一の工程、第一のブロックに続いてポリ(エチルアクリレート)ブロックを合成する第二の工程、及び第二のブロックに続いてポリスチレンブロックを合成する第三の工程の3つの別々のフェーズに分けることのできる方法に基づいた。
【0059】
このコポリマーの合成を、2リットルのSVL型ガラス反応器にて行なった。この型の反応器の最大使用体積は、1.5リットルであった。この反応器の内部の温度は、Huberクリオスタットにより調節した。この温度を、この反応器に浸したpt100プローブにより測定した(これは、調節に役立った)。攪拌ユニットは、ステンレス鋼のパドルであった。軸の回転速度は、約200rpmであった。この反応器には、生成物の損失なしでモノマーを還流させるのに十分効果的な還流装置(コイルコンデンサー)をも取り付けた。
【0060】
用いた方法は、水中でのラテックス型乳化重合法であった。
【0061】
工程1:約30,000g/モルの理論分子量を有する第一のポリスチレンブロック「pS30k」の製造
実際には、これは、St/MAA重量比=98/2の、ランダムスチレン/メタクリル酸コポリマーの合成であった。標的の理論重量:Mn=30,000g/モル。それを、用語の簡単化のために、ポリスチレンブロックと呼ぶ。
【0062】
568.0gの水、12.0gのナトリウムドデシルサルフェート及び0.95gの炭酸ナトリウムNa2CO3を、室温で、供給材料として導入した。得られた混合物を30分間、窒素下で攪拌した(200rpm)。次いで、温度を、75℃に上げてから、下記を含む混合物1を加えた:
− 25.71gのスチレン(St);
− 0.510gのメタクリル酸(MAA)、及び
− 1.790gのキサンテート(CH3)(CO2CH3)CH−S(C=S)OCH2CH3
【0063】
この混合物を85℃にもたらしてから、10.0gの水に溶解させた0.390gの過硫酸アンモニウム(NH4)228の溶液を導入した。
【0064】
5分後に、下記を含む混合物2の添加を開始した:
− 231.4gのスチレン(St)及び
− 4.60gのメタクリル酸(MAA)。
【0065】
この添加を、115分間継続した。これらの様々な成分の完全な添加の後に、得られたコポリマーエマルジョンを、85℃に2時間維持した。
【0066】
次いで、試料(約5g)を取り出して、THF中でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した。その測定された数平均分子量Mnは、ポリスチレン同等物における26,600g/モルに等しかった(直鎖状ポリスチレン標準により較正)。その多分散性インデックスMw/Mnは、2.0に等しかった。
【0067】
この試料のガスクロマトグラフィーによる分析は、モノマー転化率が、99%より大きかったことを示した。
【0068】
工程2:ポリスチレン−ブロック−ポリ(エチルアクリレート)ジブロックコポリマー「pS30k−pEA10k」を得るための、約10,000g/モルの理論分子量を有するポリ(エチルアクリレート)の第二のブロックの製造
前に工程1で得られた乳化コポリマーを、分析用に約5gを取り出した後に、加熱を止めることなく、出発物質として用いた。
【0069】
50.0gの水中に希釈した0.390gの過硫酸アンモニウム(NH4)228を、1時間にわたって連続的に導入した。
【0070】
下記を、85℃で、1時間にわたって連続的に加えた:
− 85.7gのエチルアクリレート(EA)。
【0071】
この系を、この温度に、更に2時間維持した。
【0072】
次いで、試料(約5g)を取り出して、THF中でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した。その測定された数平均分子量Mnは、ポリスチレン同等物における37,000g/モルに等しかった(直鎖状ポリスチレン標準により較正)。その多分散性インデックスMw/Mnは、1.9に等しかった。
【0073】
試料のガスクロマトグラフィーによる分析は、モノマー転化率が99%より大きいことを示した。
【0074】
工程3:ポリスチレン−ブロック−ポリ(エチルアクリレート)−ブロック−ポリスチレントリブロックコポリマー「pS30k−pEA10k−pS30k」を得るための、約30,000g/モルの理論分子量を有するポリスチレンの第三のブロックの製造
実際には、これは、ランダムスチレン/メタクリル酸コポリマーの合成であった。St/MAA重量比=98/2。標的理論分子量:Mn=30,000g/モル。それを、用語の簡単化のために、ポリスチレンブロックと呼ぶ。
【0075】
前に工程2で得られた乳化コポリマーを、約5gを分析用に採った後に、加熱を止めることなく、出発物質として用いた。
【0076】
50.0gの水中に希釈した0.390gの過硫酸アンモニウム(NH4)228を、3時間にわたって連続的に導入した。下記を含む混合物3を、85℃で、3時間にわたって加えた:
− 50.0gの水;及び
− 0.95gの炭酸ナトリウムNa2CO3
【0077】
同時に、下記を含む混合物4を加えた:
− 257.1gのスチレン(St);及び
− 5.14gのメタクリル酸(MAA)。
【0078】
様々な成分の完全な添加の後に、得られたコポリマー乳濁液を、85℃に1時間維持した。
【0079】
次いで、1.20gのt−ブチルベンジルペルオキシドを一気に導入し、下記を含む混合物5の添加を開始した:
− 0.600gのエリソルビン酸;及び
− 20.0gの水。
【0080】
この添加を、60分間にわたって継続した。様々な成分の完全な添加の後に、この乳濁液を、1時間にわたって、約25℃に冷却した。
【0081】
次いで、試料(約5g)を取り出して、THF中でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した。その測定された数平均分子量Mnは、ポリスチレン同等物における56,800g/モルに等しかった(直鎖状ポリスチレン標準により較正)。その多分散性インデックスMw/Mnは、1.9に等しかった。
【0082】
この試料のガスクロマトグラフィーによる分析は、モノマー転化率が99.8%より大きいことを示した。
【0083】
得られた生成物は、約44%の固体含有率のコポリマー(ラテックス)の水中の分散液であった。
【0084】
実施例1b: ポリスチレン−ブロック−ポリ(エチルアクリレート)−ブロック−ポリスチレントリブロックコポリマー「pS25−pEA20k−pS25k」の製造
この手順は、ポリスチレン−b−ポリ(エチルアクリレート)−b−ポリスチレントリブロックを得るために、ポリスチレンブロックを得るための第一の工程、第一のブロックに続くポリ(エチルアクリレート)ブロックを合成するための第二の工程、及び第二のブロックに続くポリスチレンブロックを合成するための第三の工程の、別々の3つのフェーズに分けることのできる方法に基づいた。
【0085】
このコポリマーの合成を、2リットルのSVL型ガラス反応器内で行なった。この型の反応器の最大使用体積は、1.5リットルであった。この反応器の内部の温度を、Huberクリオスタットにより調節した。その温度を、反応器に浸したpt100プローブにより測定した(これは、調節に役立った)。攪拌ユニットは、ステンレス鋼のパドルであった。軸の回転速度は、約200rpmであった。この反応器には、生成物の損失なしでモノマーの還流を可能にするのに十分有効な還流装置(コイルコンデンサー)をも取り付けた。
【0086】
用いた方法は、水中でのラテックス型の乳化重合法であった。
【0087】
工程1:約25,000g/モルの理論分子量を有する第一のポリスチレンブロック「pS25k」の製造
実際には、これは、St/MAA重量比=98/2のランダムスチレン/メタクリル酸コポリマーの合成であった。標的理論分子量:Mn=25,000g/モル。それを、用語の簡単化のために、ポリスチレンブロックと呼ぶ。
【0088】
518.2gの水、6.250gのナトリウムドデシルサルフェート及び0.714gの炭酸ナトリウムNa2CO3を、室温で、供給材料として導入した。得られた混合物を、30分間、窒素下で攪拌した(200rpm)。次いで、温度を75℃に上げてから、下記を含む混合物1を加えた:
− 17.86gのスチレン(St);
− 0.357gのメタクリル酸(MAA)、及び
− 1.486gのキサンテート(CH3)(CO2CH3)CH−S(C=S)OCH2CH3
【0089】
この混合物を85℃にもたらしてから、1.70gの水に溶解させた0.085gの過硫酸ナトリウムNa228の溶液を導入した。
【0090】
5分後に、下記を含む混合物2の添加を開始した:
− 160.7gのスチレン(St)及び
− 3.21gのメタクリル酸(MAA)。
【0091】
同時に、5.10gの水に溶解させた0.255gの過硫酸ナトリウムNa228を含む混合物3の添加を開始した。
【0092】
この添加を、90分間にわたって継続した。様々な成分の完全な添加の後に、得られたコポリマー乳濁液を、85℃に、2時間維持した。
【0093】
次いで、試料(約5g)を取り出して、THF中でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した。その測定された数平均分子量Mnは、ポリスチレン同等物における22,000g/モルに等しかった(直鎖状ポリスチレン標準により較正)。その多分散性インデックスMw/Mnは、2.2に等しかった。
【0094】
この試料のガスクロマトグラフィーによる分析は、モノマー転化率が99%より大きいことを示した。
【0095】
工程2:ポリスチレン−ブロック−ポリ(エチルアクリレート)ジブロックコポリマー「pS25k−pEA20k」を得るための、約10,000g/モルの理論分子量を有するポリ(エチルアクリレート)の第二のブロックの製造
前に工程1で得られた乳化コポリマーを、約5gを分析用に採った後、加熱を止めることなく、出発物質として用いた。
【0096】
3.4gの水中に希釈した0.170gの過硫酸ナトリウムNa228を、90分間にわたって連続的に導入した。
【0097】
下記を、85℃で、90分間にわたって、連続的に加えた:
− 142.9gのエチルアクリレート(EA)。
【0098】
この系を、この温度に、更に2時間維持した。
【0099】
次いで、試料(約5g)を取り出して、THF中でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した。その測定された数平均分子量Mnは、ポリスチレン同等物における32,000g/モルに等しかった(直鎖状ポリスチレン標準により較正)。その多分散性インデックスMw/Mnは、2.6に等しかった。
【0100】
この試料のガスクロマトグラフィーによる分析は、モノマー転化率が99%より大きいことを示した。
【0101】
工程3:ポリスチレン−ブロック−ポリ(エチルアクリレート)−ブロック−ポリスチレントリブロックコポリマー「pS25k−pEA20k−pS25k」を得るための、約25,000g/モルの理論分子量を有するポリスチレンの第三のブロックの製造
実際には、これは、ランダムスチレン/メタクリル酸コポリマーの合成であった。St/MAA重量比=98/2。標的理論質量:Mn=25,000g/モル。それを、用語の簡単化のために、ポリスチレンブロックと呼ぶ。
【0102】
前に工程2で得られた乳化コポリマーを、約5gを分析用に採った後、加熱を止めることなく、出発物質として用いた。
【0103】
6.8gの水中に希釈した0.340gの過硫酸ナトリウムNa228を、2時間にわたって連続的に導入した。下記を含む混合物4を、85℃で、2時間にわたって同時に加えた:
− 97.90gの水;及び
− 1.146gの炭酸ナトリウムNa2CO3;及び
− 3.75gのナトリウムドデシルサルフェート。
【0104】
同時に、下記を含む混合物5を加えた:
− 178.6gのスチレン(St);及び
− 3.57gのメタクリル酸(MAA)。
【0105】
様々な成分の完全な添加の後に、得られたコポリマー乳濁液を、85℃に、2時間維持した。
【0106】
次いで、0.500gのt−ブチルベンジルペルオキシドを一気に加えて、下記を含む混合物6の添加を開始した:
− 0.250gのエリソルビン酸;及び
− 5.0gの水。
【0107】
この添加を、60分間にわたって継続した。様々な成分の完全な添加の後に、この乳濁液を1時間にわたって約25℃まで冷却した。
【0108】
次いで、試料(約5g)を取り出して、THF中でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した。その測定された数平均分子量Mnは、ポリスチレン同等物における40,000g/モルに等しかった(直鎖状ポリスチレン標準により較正)。その多分散性インデックスMw/Mnは、2.9に等しかった。
【0109】
試料のガスクロマトグラフィーによる分析は、モノマー転化率が99.8%より大きいことを示した。
【0110】
得られた生成物は、約45%の固体含有率のコポリマー(ラテックス)の水中分散液であった。
【0111】
実施例1c: ポリスチレン−ブロック−ポリ(エチルアクリレート)−ブロック−ポリスチレントリブロックコポリマー「pS32.5k−pEA5k−pS32.5k」の製造
この手順は、ポリスチレン−b−ポリ(エチルアクリレート)−b−ポリスチレントリブロックを得るために、ポリスチレンブロックを得るための第一の工程、第一のブロックに続くポリ(エチルアクリレート)ブロックを合成するための第二の工程、及び第二のブロックに続くポリスチレンブロックを合成するための第三の工程の、別々の3つのフェーズに分けることのできる方法に基づいた。
【0112】
このコポリマーの合成を、2リットルSVL型ガラス反応器内で行なった。この型の反応器の最大使用体積は、1.5リットルであった。この反応器の内部の温度は、Huberクリオスタットにより調節した。この温度を、反応器に浸したpt100プローブにより測定した(これは、調節に役立った)。攪拌ユニットは、ステンレス鋼のパドルであった。軸の回転速度は、約200rpmであった。この反応器には、生成物の損失なしでモノマーを還流させるのに十分に効果的な還流装置(コイルコンデンサー)をも取り付けた。
【0113】
用いた方法は、水中でのラテックス型乳化重合法であった。
【0114】
工程1:約32,500g/モルの理論分子量を有する第一のポリスチレンブロック「pS32.5k」の製造
実際には、これは、St/MAA重量比=98/2のランダムスチレン/メタクリル酸コポリマーの合成であった。標的理論分子量:Mn=32,500g/モル。それを、用語の簡単化のために、ポリスチレンブロックと呼ぶ。
【0115】
515.0gの水、6.250gのナトリウムドデシルサルフェート及び0.929gの炭酸ナトリウムNa2CO3を、室温で、供給材料として導入した。得られた混合物を窒素下で30分間にわたって攪拌した(200rpm)。次いで、温度を75℃まで上げてから、下記を含む混合物1を加えた:
− 23.21gのスチレン(St);
− 0.464gのメタクリル酸(MAA)、及び
− 1.486gのキサンテート(CH3)(CO2CH3)CH−S(C=S)OCH2CH3
【0116】
この混合物を85℃にもたらしてから、1.70gの水中に溶解させた0.085gの過硫酸ナトリウムNa228の溶液を導入した。
【0117】
5分後に、下記を含む混合物2の添加を開始した:
− 208.9gのスチレン(St)及び
− 4.18gのメタクリル酸(MAA)。
【0118】
同時に、5.10gの水中に溶解させた0.255gの過硫酸ナトリウムNa228を含む混合物3の添加を開始した。
【0119】
この添加を80分間にわたって継続した。様々な成分の完全な添加の後に、得られたコポリマー乳濁液を、2時間にわたって、85℃に維持した。
【0120】
次いで、試料(約5g)を取り出して、THF中でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した。その測定された数平均分子量Mnは、ポリスチレン同等物における29,000g/モルに等しかった(直鎖状ポリスチレン標準により較正)。その多分散性インデックスMw/Mnは、2.2に等しかった。
【0121】
この試料のガスクロマトグラフィーによる分析は、モノマー転化率が99%より大きいことを示した。
【0122】
工程2:ポリスチレン−ブロック−ポリ(エチルアクリレート)ジブロックコポリマー「pS32.5k−pEA5k」を得るための、約10,000g/モルの理論分子量を有するポリ(エチルアクリレート)の第二のブロックの製造
前に工程1で得られた乳化コポリマーを、約5gを分析用に採った後、加熱を止めることなく、出発物質として用いた。
【0123】
3.4gの水中に希釈した0.170gの過硫酸ナトリウムNa228を、90分間にわたって連続的に導入した。
【0124】
下記を、90分間にわたって、85℃で、同時に加えた:
− 35.7gのエチルアクリレート(EA)。
【0125】
この系を、この温度に、更に、2時間にわたって維持した。
【0126】
次いで、試料(約5g)を取り出して、THF中でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した。その測定された数平均分子量Mnは、ポリスチレン同等物における34,000g/モルに等しかった(直鎖状ポリスチレン標準により較正)。その多分散性インデックスMw/Mnは、2.3に等しかった。
【0127】
この試料のガスクロマトグラフィーによる分析は、モノマー転化率が99%より大きいことを示した。
【0128】
工程3:ポリスチレン−ブロック−ポリ(エチルアクリレート)−ブロック−ポリスチレントリブロックコポリマー「pS35.5k−pEA5k−pS32.5k」得るための、約32,500g/モルの理論分子量を有するポリスチレンの第三のブロックの製造
実際には、これは、ランダムスチレン/メタクリル酸コポリマーの合成であった。St/MAA重量比=98/2。標的理論質量:Mn=32,500g/モル。それを、用語の簡単化のために、ポリスチレンブロックと呼ぶ。
【0129】
前に工程2で得られた乳化コポリマーを、約5gを分析用に採った後、加熱を止めることなく、出発物質として用いた。
【0130】
6.8gの水中に希釈した0.340gの過硫酸ナトリウムNa228の溶液を、2時間にわたって連続的に導入した。下記を含む混合物4を、85℃で、2時間にわたって同時に加えた:
− 104.4gの水;
− 1.468gの炭酸カルシウムNa2CO3;及び
− 3.75gのナトリウムドデシルサルフェート。
【0131】
同時に、下記を含む混合物5を加えた:
− 1232.1gのスチレン(St);及び
− 4.64gのメタクリル酸(MAA)。
【0132】
様々な成分の完全な添加の後に、得られたコポリマー乳濁液を、85℃に、2時間にわたって維持した。
【0133】
次いで、0.500gのt−ブチルベンジルペルオキシドを一気に導入して、下記を含む混合物6の添加を開始した:
− 0.250gのエリソルビン酸;及び
− 5.0gの水。
【0134】
この添加を、60分間にわたって継続した。様々な成分の完全な添加の後に、この乳濁液を、1時間にわたって、約25℃に冷却した。
【0135】
次いで、試料(約5g)を取り出して、THF中でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した。その測定された数平均分子量Mnは、ポリスチレン同等物における50,000g/モルに等しかった(直鎖状ポリスチレン標準により較正)。その多分散性インデックスMw/Mnは、2.6に等しかった。
【0136】
この試料のガスクロマトグラフィーによる分析は、モノマー転化率が99.8%より大きいことを示した。
【0137】
得られた生成物は、約45%の固体含有率のコポリマー(ラテックス)の水中の分散液であった。
【0138】
実施例2:組成物
水相に実施例1からのコポリマーを含む下記の組成物を生成した:
【表1】

【0139】
実施例3:組成物
水相に実施例1からのコポリマーを含む下記の組成物を生成した。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖状ブロックコポリマーA−[B−A]n又はB−[A−B]n又は[A−B]n(式中、Aは、少なくとも50重量%のスチレン由来のユニットを含むブロックであり、Bは、少なくとも50重量%のエチルアクリレート由来の又はエチルメタクリレート由来のユニットを含むブロックであり、nは、1以上の数である)であって、スチレンに由来するユニットとエチルアクリレート又はエチルメタクリレートに由来するユニットの重量比が1以上であることを特徴とする当該コポリマー。
【請求項2】
重量比が、2.01以上であり、好ましくは5以上である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
コポリマーが、A−B−Aトリブロックコポリマーであって、ブロックAが少なくとも90重量%のスチレンに由来するユニットを含み、ブロックBが少なくとも90重量%のエチルアクリレート又はエチルメタクリレートに由来するユニットを含む、前記の請求項の一つに記載のコポリマー。
【請求項4】
溶剤中の溶液の形態であるか、又は水性媒質中の分散液の形態である、前記の請求項の一つに記載のコポリマー。
【請求項5】
20,000〜1,000,000g/モルの、好ましくは、50,000〜200,000g/モルの平均分子量を有する、前記の請求項の一つに記載のコポリマー。
【請求項6】
ブロックAが、1,000〜200,000g/モルの、好ましくは、10,000〜100,000g/モルの平均分子量を有する、前記の請求項の一つに記載のコポリマー。
【請求項7】
ブロックBが、1,000〜100,000g/モルの、好ましくは、2,000〜50,000g/モルの平均分子量を有する、前記の請求項の一つに記載のコポリマー。
【請求項8】
30%の延長後、瞬間回復Ri<50%、好ましくはRi<30%、及び遅延回復R2h<70%、好ましくはR2h<50%を有する、前記の請求項の一つに記載のコポリマー。
【請求項9】
前記の請求項の一つに記載のコポリマー及びベクターを含む化粧用でない組成物。
【請求項10】
織物表面、家庭内の若しくは産業上の表面、及び/又は建築物及び土木工学的建造物の表面を処理及び/又は改変及び/又は被覆するための組成物である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
下記を特徴とする、請求項9及び10の何れかに記載の組成物:
− 硬質表面用洗剤組成物;
− 粉末洗剤;
− 織物軟化剤;
− 織物をアイロンがけしやすくするための組成物;又は
− 被覆用組成物、例えば、ペンキ、又は水硬性結合剤例えば壁の下塗り又はしっくい。
【請求項12】
非ケラチン質表面を処理及び/又は改変及び/又は被覆する方法であって、請求項1〜8の一つに記載のコポリマーを含む組成物を該表面に適用する工程を含む当該方法。
【請求項13】
請求項1〜8の一つに記載のコポリマーの、非ケラチン質表面に対する張り付与剤としての利用。

【公表番号】特表2008−538222(P2008−538222A)
【公表日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501376(P2008−501376)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000595
【国際公開番号】WO2006/097641
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【Fターム(参考)】