説明

テント

【課題】通気性と防水性という、本来相反する二特性を長期間にわたり良好に維持することのできる宿営用のテントを提供すること。
【解決手段】テント地2を少なくとも2本の支柱3で持ち上げ、該テント地を該支柱3間に吊り屋根状にして形成するテントにおいて、前記支柱3間を結ぶ直線上に、抗伸張力織物テープ5を該支柱間にあるテント地に沿わせてかつ該抗伸張力織物テープの両端部を該支柱3の近傍に固定して設けてなることを特徴とするテント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテント(天幕)に関する。更に詳しくは、特に、防水性と通気性を長期間にわたる設営に際しても良好に維持することのできる宿営用テントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
宿営用テントは、その内部において、長期間にわたり居住者が生活をすることや、コンピューターなどの電子機器やその周辺機器、通信機器などが長期間にわたり設置されることもあることなどから、通気性、防水性が良好であることが要請される。
【0003】
ここで、居住空間としての快適さは、温度・湿度の環境、通気性などの要素に関係するが、温湿度の環境や通気性が良いことと、防水性が悪いことは相反する面がある。
【0004】
一般に、通気性を重んじたテント地の仕様であると、雨天時や降雪時に雨水漏りやテント地内面への雨水の浸透などの不都合が起こりやすいものであり、いったん該不都合が発生すると、たちまち、快適な居住環境を維持することができなくなり、また前述した電子機器類などの使用に支障を招くことがある。
【0005】
特に、宿営用テントの場合は、通気性と防水性の双方に関しては、いずれも抜群に優れ、かつ両特性をバランス良く長期間にわたり、例えば、強い日光に曝される灼熱下や氷点以下の厳寒下、あるいは強風・豪雨などの場合等にも長期間にわたり維持できることが求められるのである。
【0006】
このような要求に対して、テント地としては各種の繊維使いのものが考えられるが、一般に、合成繊維糸使いの織物では該要請に応えることが難しく、また、合成繊維織物に合成樹脂皮膜をコーティングなどしても該要請に応えることがむずかしい。通気性と防水性の両特性を満足させることが一般にむずかしく、また、コーティング樹脂の併用などでは良好な通気性、耐候性・耐光性の点で耐久面において問題があるのである。
【0007】
このような点から、天然繊維の良さが注目され、綿(コットン)繊維糸と麻繊維糸を、タテ糸(一般に綿(コットン)繊維糸)、ヨコ糸(一般に麻繊維糸)に用いて(交織)製織し、該織布をテント地に用いることも行われている。
【0008】
特に、これら天然繊維糸の組合せ下で用いることによって、良好な通気性が実現できるとともに、特に麻繊維糸は水を含んだときに膨潤し、それが織布の織目をつめることから、該テント地の防水性能を該防水性能の所望時に対応してアップすることができることとなり、優れた通気性と防水性の両特性を兼ね備えかつ長期間にわたり該両特性を維持することができるという利点が該テント地にあるからである。
【0009】
しかし、テント地を少なくとも2本の支柱で持ち上げ、該テント地を該支柱間に吊り屋根状にして形成するテントにおいては、該テント地に、支柱どおしを結ぶ方向において引張り力や伸長する力が加わることが多くある。
【0010】
このような力は、テント地が雨水を含んだときあるいは強風・烈風時や降雪時などに加わる。天然繊維糸使いであれば、降雨・降雪時など水分をより含みやすい。テント地を支柱間に吊り屋根状にして形成するテントとしては、家型テント、山型テント、あるいはドーム型(かまぼこ型)テント等があるが、複数本の支柱間でテント地を張るものである以上、上述の支柱どおしを結ぶ方向においてテント地に引張り力、伸長する力が加わるのである。
【0011】
一般に宿営期間が長期にわたる場合、該テント地に加わる引張り力、伸長力が、テント生地の織目に目ズレを徐々に生じさせることとなり、該目ズレがいったん発生すると、その目ズレ部分では通気性・防水性の良好なバランスを発揮できなくなる。このいったん発生した目ズレを元の状態に戻すことは、通常は至難であり、また、この目ズレの問題は、特に、上述した麻繊維糸と綿(コットン)繊維糸の交織品の場合、麻繊維が一般に捲縮を有さないストレートな繊維であることから該織糸構造の点からも目ズレがしやすい(滑りやすい)という特質があるのである。
【0012】
このような点に関する背景技術として、防水性に着目したものとして、テント生地として、特定の樹脂からなる防水皮膜層を有する生地を用い、かつテント製作は縫製によらずに特定の熱融着接着剤を用いて該生地どおしを接合させるという提案がされている(特許文献1)。
【0013】
しかし、該提案になるテントは、縫製による縫い目孔を有さず生地全体の防水樹脂被膜層によって水の進入を許さないという防水性では優れているものの、通気性の悪さなど全体の居住快適性という点では不十分なものであり、本発明とは、本質的に技術的方向の相違するものである。
【特許文献1】特開2005−20488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述したような点に鑑み、通気性と防水性という、本来相反する二特性を長期間にわたり、良好に維持することのできる宿営用のテントを提供することを目的とする。
【0015】
特に、基本的な技術ベースとして、テント生地が本来有している通気性、防水性の両性能のバランスを崩すことなく、該通気性、防水性を長期にわたり維持することができるテントを提供することにあり、ここで、「通気性、防水性の両性能のバランスを崩すことなく」とは、テント地に、何らかの第三の機能層を設けるとか、あるいは、雨水漏れの問題を招く縫い目孔の増加や、部分的な通気性の悪化を伴う当て布をあてる等の手段に本質的に依らないという意味である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した目的を達成する本発明のテントは、以下の(1)の構成からなる。
(1)テント地を少なくとも2本の支柱で持ち上げ、該テント地を該支柱間に吊り屋根状にして形成するテントにおいて、前記支柱間を結ぶ直線上に、抗伸張力織物テープを該支柱間にあるテント地に沿わせてかつ該抗伸張力織物テープの両端部を該支柱の近傍に固定して設けてなることを特徴とするテント。
【0017】
また、かかる本発明のテントにおいて、具体的構成としてより好ましくは、以下の(2)〜(6)のいずれかからなるものである。
【0018】
(2)前記抗伸張力織物テープが、アラミド繊維を少なくともタテ糸に用いて製織されてなるものであることを特徴とする上記(1)記載のテント。
【0019】
(3)前記抗伸張力織物テープが、ポリエステル繊維糸をヨコ糸に用いて製織されてなるものであることを特徴とする上記(1)または(2)記載のテント。
【0020】
(4)前記抗伸張力織物テープが、テープ長さ方向に荷重980N/15mmテープ幅を掛けたとき、伸度が0%以上2%以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のテント。
【0021】
(5)前記テント地が、綿(コットン)糸をタテ糸に、麻糸をヨコ糸に用いて製織した織布であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のテント。
【0022】
(6)前記テント地が、目付300〜450g/m2 、織密度がタテ40本〜70本/インチ、ヨコ40本〜70本/インチの織物からなることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のテント。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、通気性と防水性という、本来相反する二特性を長期間にわたり、良好に維持することのできる宿営用のテントが提供される。
【0024】
本発明のテントは、長期にわたる経時使用によって生ずるテント地の目ズレ発生に基づく通気性と防水性のバランス悪化という不都合を、テント生地自体の改質や変更を伴うことなくテントの構造により解消するものであり、テント地を選ばなく、またテント地を支柱間に吊り屋根状にして形成するテントであれば、家型テント、山型テントあるいはドーム型(かまぼこ型)テント等の形態に関わらずに本発明を具体化できるものであり、その点でも優れている。
【0025】
従って、既存のテントの改良・改造としても、本発明のテントを比較的簡単に具体化できる点でも優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面などを用いて更に詳しく本発明のテントについて説明する。
本発明のテントは、テント地を少なくとも2本の支柱で持ち上げ、該テント地を該支柱間に吊り屋根状にして形成するテントにおいて、該支柱間を結ぶ直線上に、抗伸張力織物テープを、該支柱間にあるテント地に沿わせてかつ該抗伸張力織物テープの両端部を該支柱の近傍に固定して設けてなることを特徴とするものである。
【0027】
図1は、本発明のテントの外観をモデル的に示した外観概略モデル斜視図であり、図2は、本発明のテントの内部の構造をモデル的に示した概略断面モデル側面図である。
【0028】
図1に示した家型テント1において、テント1は、テント生地2が支柱(図2の3)によって持ち上げられ、該支柱3間において吊り屋根状を形成し内部に居住空間を形成している。4は側柱であり、山型テントでは該側柱は用いられない。
【0029】
本発明のテントは、図2にモデル的に示したように、支柱3間を結ぶ実質的な直線上に、抗伸張力織物テープ5を、該支柱3間にあるテント地2に沿わせてかつ該抗張力織物テープ5の両端部を支柱3の近傍に固定して設けているものである。
【0030】
ここで、抗伸張力織物テープとは、該テープ織物をその長さ方向に引張ったとしてもほとんど伸びることがない織物製テープをいう。一般的には、該抗伸張力織物テープは、テープ長さ方向に荷重980N/15mmテープ幅を掛けたとき、伸度が0%以上2%以下のものであることが好ましく、テープ長さ方向に伸長させる力を加えたとしても、該テープとしてはほとんど伸びることなく、該伸長力(引張り力)に耐えきれなくなったときは、伸長することなく切断に至る織物テープをいう。
【0031】
そのような抗伸張力織物テープは、素材的に特に限定されるものではないが、例えば、高弾性率繊維と分類されるアラミド(芳香族ポリアミド)繊維(例えば「ケブラー」(登録商標)など)糸やポリエチレンナフタレート繊維糸を高い割合で使用し、かつテープ長さ方向に該繊維を配列させて製織した有機繊維・合成繊維からなる織物テープによって実現することができる。必要であれば、該抗伸張力織物テープの機能を損なわない範囲で、他の繊維が混用されていてもよい。
【0032】
したがって、該抗伸張力織物テープは、高弾性率・高強度のアラミド(芳香族ポリアミド)繊維を少なくともタテ糸に用いて製織されているものが好ましく、ヨコ糸は、ポリエステル繊維糸あるいはポリアミド繊維糸の高強力タイプのものなどを使用するのがよい。該織物テープの織組織は、特に限定されるものではないが、引張り力(伸長力)に対して安定的に抗する力を発揮できる点で、綾織り、片綾織り、平織りなどが好ましい。一般的に、1650dtex程度のアラミド繊維糸をタテ糸に用いる場合、タテ50〜75本/インチ(幅)程度の本数とするのがよい。ヨコ糸は、タテ糸のクリンプを生じさせることがなるべくないように細めの糸を使用するのがよく、例えば、綿番20の3子ヨリ糸などを20〜35本/30mm以上程度の打込みとするのがよい。
【0033】
該抗伸張力織物テープは、幅10〜25mm程度、好ましくは幅15mm〜20mm程度のもの、厚さが1〜1.5mm程度のものとすることが好ましい。
【0034】
該抗伸張力織物テープ5は、その両端が両支柱3の先端付近に固定されていることが重要である。固定の方法は、該織物テープの両端部にリング状をなす金具7等を取付ておいて、テント設営時に、該金具7のリング状の内孔に支柱3の先端部を通して設置する等の固定法によるのが簡単でよい。あるいは、テント地に支柱通し孔としてハト目状に設けられている環状金具に固定をすることなどでもよい。
【0035】
また、「テント地2に沿わせて設ける」とは、テント生地の内面側表面において、支柱間にあるテント地の最頂点部分を結ぶ線上に、ベルト通し紐(図2の6。ズボンのベルト通し紐のような形態のもの)のような部分を適宜数だけ設け、該通し紐部6に該織物テープ5を通すことにより設けることがよい。該抗伸張力織物テープ5は、テント地に全面的に接合固定されているものではなく、該通し紐6部分でも該織物テープは自由にその長さ方向(支柱間方向)に沿って動くこと(摺動)ができるようになっているものである。また、通し紐6部分を開閉が可能・長さ調節可能なベルト状の構造としておき、該ベルト状の通し紐部を開放することにより抗伸張力織物テープを横方向に開放可能な構造としておくと設営がしやすく好ましい。該通し紐部をなす通し紐の形態もテープ状であってもよく、ある程度の幅があった方が強力的にも高くなり好ましい。
【0036】
また、該抗伸張力織物テープ5の固定両端間の長さは、長すぎるとテント地に加わる引張り力や伸長力に対して抗することが不可能なので、テント設計上の該両端設置部間長さとほぼ同等の長さ(±5%以内程度の長さ)とするのがよいものである。該長さは、例えばバックル方式の金具などを端部に用いることにより、設営現地での状況(風、天候)等に合わせて臨機応変に多少調整可能なように構成することも好ましい。
【0037】
該抗伸張力織物テープ5の両端は、上述のように両支柱3の先端付近に固定されて設置されていることが好ましいが、支柱近傍のテント地自体に両端だけが固定されているものでもよい。その場合には、テント地に設けられている支柱通し孔の金属部分に固定をすることや、縫合や融着による接合でテント地に固定をするのがよい。
【0038】
本発明のテントは、上述のように、抗伸張力織物テープ5を支柱間に張設して設けていることにより、吊り屋根状に支柱間にあるテント地に対して引張り力や伸長力が直接的に加わらず、該抗伸張力織物テープ5が該引張り力や伸長力に対して抗するようになる。従って、そのような力が加わることに起因するテント地の目ズレ発生の問題が解消されることになり、その結果、本来のテント地が有する通気性と防水性の両特性を長期間にわたり維持することができるようになるものである。
【0039】
本発明のテントにおいて、テント地やテントの形態等は、特に限定されるものではなく、吊り屋根を形成するタイプのものであれば、いかなるものでも上述した本発明による効果を得ることができる。
【0040】
ただし、本発明者等の各種知見によれば、特に、テント高さも高くなり、テント地の全体重量・面積が大きくなる方向である家型テントにおいて採用すると、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0041】
また、テント地の糸使いとしては、前述したように目ズレが本来発生しやすい麻糸(ヨコ糸)と綿(コットン)糸(タテ糸)を交織した織布製のテント地のものなどに採用すると、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0042】
テント地は、特に限定されるものではないが、本発明者らの各種知見によれば、目付300〜450g/m2 、織密度はタテ40本〜70本/インチ、ヨコ40本〜70本/インチの織物から構成されることが好ましい。このような仕様のテント地を用いたテントに本発明を採用するとより効果的だからである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明のテントの外観をモデル的に示した外観概略モデル斜視図である。
【図2】図2は、本発明のテントの内部の構造をモデル的に示した概略断面モデル側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1:テント
2:テント生地
3:支柱
4:側注
5:抗伸張力織物テープ
6:抗伸張力織物テープ通し紐部
7:抗伸張力織物テープの固定金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テント地を少なくとも2本の支柱で持ち上げ、該テント地を該支柱間に吊り屋根状にして形成するテントにおいて、前記支柱間を結ぶ直線上に、抗伸張力織物テープを該支柱間にあるテント地に沿わせてかつ該抗伸張力織物テープの両端部を該支柱の近傍に固定して設けてなることを特徴とするテント。
【請求項2】
前記抗伸張力織物テープが、アラミド繊維を少なくともタテ糸に用いて製織されてなるものであることを特徴とする請求項1記載のテント。
【請求項3】
前記抗伸張力織物テープが、ポリエステル繊維糸をヨコ糸に用いて製織されてなるものであることを特徴とする請求項1または2記載のテント。
【請求項4】
前記抗伸張力織物テープが、テープ長さ方向に荷重980N/15mmテープ幅を掛けたとき、伸度が0%以上2%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のテント。
【請求項5】
前記テント地が、綿(コットン)糸をタテ糸に、麻糸をヨコ糸に用いて製織した織布であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のテント。
【請求項6】
前記テント地が、目付300〜450g/m2 、織密度がタテ40本〜70本/インチ、ヨコ40本〜70本/インチの織物からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のテント。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−57221(P2008−57221A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235414(P2006−235414)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000215822)帝国繊維株式会社 (24)
【出願人】(000110170)トスコ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】