説明

テンレス刺繍糸及びその製造、実験方法

【課題】ステンレス刺繍糸及びその製造、実験方法を提供する。
【解決手段】ステンレス刺繍糸及びその製造、実験方法は、糸径が50μm〜65μmのステンレス刺繍糸を提供し、それは、微孔型を経て引抜プロセスを行い、ステンレス刺繍糸を成型し、実験方法を用いてテストを行い、測定されたその好ましい範囲値糸径は、50μm〜65μmで、最適値である糸径は60μmである。本発明のステンレス刺繍糸は、毒性がなく、電磁波を防止する作用を備え、しかもステンレス糸は独特のメタリックな光沢を備え、さらに一種のグリーン材料で、しかも静電防止機能をも備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステンレス刺繍糸及びその製造、実験方法に関し、特に微孔型を経て引抜プロセスを行い、ステンレス刺繍糸を成型し、実験/テストを経て、測定された好ましい範囲値の糸径は50μm〜65μmで、最適値である糸径は60μmで、機械刺繍に用いるステンレス刺繍糸及びその製造、実験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の刺繍作業は、手作業と機械刺繍の二種に分類される。前者は、有名ブランドがオーダーメイドする衣服の装飾とする他、古代の織物を修復する際にも必須の技術である。材料の面では、刺繍業者が使用する刺繍糸は、おおよそ化学繊維、ポリエステル繊維により紡績された糸である。
【0003】
特許文献1は、機能性刺繍製品の加工方法を掲示し、機能性深色系バイオカーボンを用いた機能性刺繍製品を提示する。それは主に、竹炭、木炭(備長炭)という機能性を備える深色系バイオカーボン、及びび別の種類のバイオカーボン、或いは機能性を備える繊維により紡績された糸を、刺繍糸或いはベース糸として使用し、織られた編織品を刺繍面の背面ベース布として用いる。
【0004】
刺繍時には、一般的な機能性を備えない刺繍糸或いはベース糸を、機能性を備える深色系バイオカーボン或いは機能性を備える繊維により紡績された糸の代わりに、刺繍糸或いはベース糸として刺繍を行う。また、機能性を備える深色系バイオカーボン或いは機能性を備える繊維により織られた編織品を、刺繍面の背面にセットし、刺繍を行うことができる。さらに、その布或いは生地は、衣服等の生活、健康、保健用品に加工され、機能性を備える深色系バイオカーボンと機能性を備える繊維の機能を最大限に発揮させることができる。こうして、バイオカーボン等機能性を備える繊維、編織品の使用範囲を拡大し、機能性刺繍製品の加工方法を形成するものである。
【0005】
特許文献2は、高輝度蛍光繊維及びびその製造方法を掲示する。その繊維は、人体に悪影響がなく、長時間高輝度で、かつ多色の発光を行う特性を備える。この繊維は、刺繍糸、衣料に応用可能で、長時間高輝度で、かつ多色の発光を行う特性を備える蛍光繊維を提供することができる。
【0006】
特許文献3は、繊維中に変色顔料を添加し、感温、感光、感臭気、感湿により変色する繊維を掲示する。それは、特殊な条件下で、溶融紡績時に変色顔料を添加し、紡績、延伸のプロセスを経て形成される全く新しい化学繊維である。該繊維は、水洗いに耐性を持ち、摩擦に強く、立体効果を備える他、添加した変色顔料の違いに応じて、感温、感光、感臭気、感湿により変色するという効果を備える。この繊維は、刺繍、衣服、カーテン、リボン等多くのテキスタイルに用いられ、高付加価値を形成する。
【0007】
上記した各種技術が掲示する異なる材質は、異なる作用を生じる繊維或いは刺繍糸となるが、ステンレスを機械刺繍糸とするものはない。一方、ステンレス糸は、電磁波を防止し、静電気を防ぎ、吸音するという卓越した機能を備える。にもかかわらず、刺繍産業では、あらゆる機種の機械刺繍において使用されている刺繍糸材質には、ステンレス材質が存在せず、非常に惜しい。よって、全く新しいステンレス材料を機械刺繍糸材料とすれば、刺繍産業に無限の利用性を提供することができる。
【0008】
21世紀の織物の機能は、快適、安全を主とし、今後は刺繍糸を選択するに当たっても、これを基調とすることになるだろうと、紡織界では予測されている。上記した各種技術が掲示する異なる材質は、異なる作用を生じる繊維或いは刺繍糸となるが、純ステンレスを機械刺繍糸とするものはない。一方、純ステンレス糸は、電磁波を防止し、静電気を防ぎ、吸音するという卓越した機能を備える。にもかかわらず、刺繍産業では、あらゆる機種の機械刺繍において使用されている刺繍糸材質には、ステンレス材質が存在せず、非常に惜しい。よって、本発明人は大量の実験による検証を経て、本発明を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】台湾特許公告第200724741号
【特許文献2】台湾特許公告第564268号
【特許文献3】台湾特許公告第156380号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、現在使用されている刺繍糸の材質に、ステンレスを備えないという問題を解決し、特に機械刺繍用のステンレス刺繍糸であるステンレス刺繍糸及びその製造、実験方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は下記のステンレス刺繍糸及びその製造、実験方法を提供する。ステンレス刺繍糸の糸径は、50μm〜65μmで、該ステンレス刺繍糸の最適糸径は、60μmで、ステンレス刺繍糸の製造方法は、以下を含み、
第一階段:製鋼、圧延、製錬の連続するプロセスを経て、糸径160mmのスラブとし、さらに熱圧延プロセスを経て、糸径5.5mmのステンレスロッドとし、
第二階段:糸径5.5mmのステンレスロッドに引抜を施し、第一次加工として引抜により糸径2.3mmのステンレス糸材とし、熱処理の後、第二次加工として引抜により糸径1.0mmのステンレス糸材とし、
第三階段:糸径1.0mmのステンレス糸材に、潤滑油式伸線プロセスを施し、数回のダイス加工を経て、引抜により糸径0.20mmのステンレス糸材とし、
第四階段:糸径0.20mmのステンレス糸材に、アニーリングプロセスを施した後、スプール(spool)を用いて巻き取り、フレキシブルワイヤーとし、
第五階段:該フレキシブルワイヤーに、微孔型を経て、引抜(drawing)プロセスを施し、該フレキシブルワイヤーの断面積を縮小し、該引抜プロセスを繰り返し行い、該フレキシブルワイヤーの糸径を50μm〜65μmとし、
ステンレス刺繍糸の実験方法は、機械刺繍機により、ステンレス糸に対してテストを行い、糸切断を測定し、
刺繍図案、刺繍図案サイズ、回転速度、糸調子、針番号、布材、糸材のパラメーターを通して、実験時の糸切断の数を測定し、ステンレス電磁波防止機械刺繍糸の最適糸径値を判定し、
上記した実験方法により測定されたステンレス刺繍糸の好ましい糸径の範囲値は50μm〜65μmで、
上記した実験方法により測定されたステンレス刺繍糸の最適値糸径は60μmである。
【発明の効果】
【0012】
本発明ステンレス刺繍糸及びその製造、実験方法は、以下の効果を備える。
<1>本発明が使用するステンレス刺繍糸は、刺繍糸材料中において全く新しい材質に属し、文化創意産業に、刺繍革新材料の発展と無限のビジネスチャンスをもたらすことができる。
<2>本発明のステンレス刺繍糸は、毒性がなく、電磁波を防止する作用を備え、しかもステンレス糸は独特のメタリックな光沢を備え、さらに一種のグリーン材料で、しかも静電防止機能をも備える。
<3>自然材質であるステンレスは、クロム12%以上を含む合金で、表面には一層の薄膜を形成し、該薄膜は、保護作用を備え、空気、水分を隔絶し、及び酸/アルカリによる浸食を防止し、刺繍を施した編織品の保存期間を延長することができる。
<4>本発明が使用するステンレス刺繍糸により、刺繍糸及びそれにより形成される刺繍編織品は、より強い張力を備える。
<5>本発明は、機械刺繍に適用され、しかもあらゆる機械刺繍機に適用することができる。
<6>ステンレス刺繍糸の主要機能として、電磁波防止、静電防止、吸音等作用を備えるため、刺繍糸に加工することで、3C製品の電磁波防止カバー、予防医学に効果を発揮する衣服などを含む電磁波防止の遮蔽材として刺繍することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の完成品図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【実施例】
【0015】
本発明が提供するステンレス刺繍糸の糸径は、50μm〜65μmで、ステンレス刺繍糸の最適糸径は、60μmである。
【0016】
本発明が提供するステンレス刺繍糸の製造方法は、以下を含む。
第一階段:製鋼、圧延、製錬の連続するプロセスを経て、糸径160mmのスラブとし、さらに熱圧延プロセスを経て、糸径5.5mmのステンレスロッドとする。
第二階段:糸径5.5mmのステンレスロッドに引抜を施し、第一次加工として引抜により糸径2.3mmのステンレス糸材とし、熱処理の後、第二次加工として引抜により糸径1.0mmのステンレス糸材とする。
第三階段:糸径1.0mmのステンレス糸材に、潤滑油式伸線プロセスを施し、数回のダイス加工を経て、引抜により糸径0.20mmのステンレス糸材とする。
第四階段:糸径0.20mmのステンレス糸材に、アニーリングプロセスを施した後、スプール(spool)を用いて巻き取り、フレキシブルワイヤーとする。
第五階段:フレキシブルワイヤーに、微孔型を経て、引抜(drawing)プロセスを施し、フレキシブルワイヤーの断面積を縮小し、引抜プロセスを繰り返し行い、フレキシブルワイヤーの糸径を50μm〜65μmとする。
一般的には、糸材完成品の伸張強度と延伸率は、アニーリング温度とスプール巻き取り速度に応じて異なり、使用者の必要に応じて決定する。
【0017】
ステンレス刺繍糸伸線プロセスの作業原理を以下に説明する。
先ず、伸線機上において、ステンレス刺繍糸材を、伸線ダイス(drawing dies)に通した後、さらに糸材をコーンプーリー上に巻き付ける。
伸線機が運転すると、モーターは、ベルトを通じてコーンプーリーを連動し、糸材に対して引力を生じる。
この引力が、ステンレス刺繍糸材にダイスを貫通させるほど大きくなり、断面積の縮減を行う時、コーンプーリーに巻き付いている糸材は、コーンプーリーにしっかりと密着し、しかも引抜成型のプロセスを開始する。
この時、ステンレス刺繍糸材は、ダイスを通過し、糸径縮減の目的を達成する。
【0018】
本発明は、多数のテストを行い、120μm〜40μmのステンレス刺繍糸中より、糸径50μm〜65μmの範囲値が好ましく、60μmが、範囲値中において最適の数値であることを、発見した。
【0019】
微孔型引抜プロセスを利用し、80μm以上のステンレス糸をテストしたが、そのテストは失敗に終わった。
そのため、80μm以上のステンレス糸では、実験データがない。
80μm以上のステンレス糸においてテストが失敗した原因を、以下の3点にまとめることができる。
1.80μm以上のステンレス糸の糸径は比較的太いため、機械刺繍機の内部ボビンがスムーズに運転できない。
2.80μm以上のステンレス糸の糸径は比較的太いため、機械刺繍機の針柱と針孔が対応できず、針孔の直径は針柱より大きくなり、作動できなくなる。
3.80μm以上のステンレス糸の糸径は比較的太いため、その張力が不十分で、ベース材に裂痕ができ易い。
【0020】
また、50μm以下のステンレス糸における実験失敗の原因を、以下の2点にまとめることができる。
1.張力が十分だが、糸径が細過ぎるため、機械刺繍機上で実施時には、糸切断が起き易い。
2.機械刺繍機の操作時、ステンレス糸は糸調子ダイヤルを通り、純ステンレス糸の張りをコントロールするが、糸径が細過ぎるため、機械刺繍機の糸調子ダイヤルを通る時、糸切断が起き易い。
すなわち上記したように、50μm以下のステンレス糸は、糸通しダイヤルを通すプロセスを通過できず、よって後続の刺繍プロセスを行うこともできなかったため、実験データがない。
【0021】
このように、異なる糸径のステンレス糸に何度も引抜プロセスを施し、何度も実験を繰り返し、後述する実験結果と積重ねて来た経験を総合して、本発明の発明人は、ステンレス糸の適用範囲の好ましい値は50μm〜65μmであると判断した。
【0022】
本発明が提供するステンレス刺繍糸の実験方法は、機械刺繍機により、ステンレス糸に対してテストを行い、糸切断を測定するものである。
刺繍図案、刺繍図案サイズ、回転速度、糸調子、針番号、布材、糸材のパラメーターを通して、実験時の糸切断の数を測定し、ステンレス刺繍糸の最適糸径値を判定する。
測定により得られた好ましい範囲値は、50μm〜65μmで、最適値は60μmである。
【0023】
以下の実験データ表は、50μmを糸径数値とする。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
【表3】

【0027】
上記の表1、2、及び表3は、糸径50μmの実験データである。
【0028】
【表4】

【0029】
【表5】

【0030】
【表6】

【0031】
上記の表4、表5及び表6は、糸径65μmの実験データである。
【0032】
【表7】

【0033】
【表8】

【0034】
【表9】

【0035】
【表10】

【0036】
【表11】

【0037】
【表12】

【0038】
上記の表7〜表12は、糸径60μmの実験データである。
【0039】
ステンレス刺繍糸の糸径が50μmのデータ中では、糸切断の回数が比較的多く、糸径が細いことで糸切断が起こり易いことが分かるが、許容の範囲内である。
ステンレス刺繍糸の糸径が65μmのデータ中では、糸切断の回数は不安定であるが、許容の範囲内である。
ステンレス刺繍糸の糸径が60μmのデータ中では、糸切断の回数最は安定している。
【0040】
本発明の実験記録表の内の一実験方法より、正確な使用方法を導き出すことができる。以上の実験データより明らかなように、本発明は、ステンレス刺繍糸の糸径を調整するが、他にも図形、刺繍図形のサイズ、機械刺繍速度、回転速度、糸調子ダイヤル、針番号、布材等素因(すなわち実験パラメーター)の影響を受ける。よって、パラメーターが異なれば、糸切断の針数に影響し、図形の複雑性とサイズも影響を及ぼす。すなわち、上記した影響素因、刺繍人員の専門技能及び経験を総合し、実験により得られたステンレス刺繍糸の糸径は、50μm〜65μmの範囲が好ましい値で、60μmは範囲値中の最適な数値である。つまり、60μmでの糸切断数は最少で、しかも安定性は最高である。よって、刺繍機での使用に適しており、大量生産が可能で、コストを低下させ、普及に効果的である。なお、図1は、本発明応用の実施例図で、完成品の図案は、ステンレス機械刺繍糸により刺繍したものである。
【0041】
上記の本発明名称と内容は、本発明技術内容の説明に用いたのみで、本発明を限定するものではない。本発明の精神に基づく等価応用或いはいは部品(構造)の転換、置換、数量の増減はすべて、本発明の保護範囲に含むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は特許請求の要件である新規性を備え、従来の同類製品に比べ十分な進歩を有し、実用性が高く、社会のニーズに合致しており、産業上の利用価値は非常に大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス刺繍糸の糸径は、50μm〜65μmであることを特徴とするステンレス刺繍糸。
【請求項2】
前記ステンレス刺繍糸の糸径は、60μmであることを特徴とする請求項1に記載のステンレス刺繍糸。
【請求項3】
ステンレス刺繍糸の製造方法は、以下を含み、
第一階段:糸径160mmのスラブに、熱圧延プロセスを施し、糸径5.5mmのステンレスロッドとし、
第二階段:糸径5.5mmのステンレスロッドに引抜を施し、第一次加工として引抜により糸径2.3mmのステンレス糸材とし、熱処理の後、第二次加工として引抜により糸径1.0mmのステンレス糸材とし、
第三階段:糸径1.0mmのステンレス糸材に、潤滑油式伸線プロセスを施し、数回のダイス加工を経て、引抜により糸径0.20mmのステンレス糸材とし、
第四階段:糸径0.20mmのステンレス糸材をアニーリング後、スプールを使用し巻き取り、フレキシブルワイヤーとし、
第五階段:前記フレキシブルワイヤーに、微孔型により、引抜プロセスを繰り返し行い、前記フレキシブルワイヤーの糸径を50μm〜65μmとすることを特徴とするステンレス刺繍糸の製造方法。
【請求項4】
ステンレス刺繍糸の実験方法は、機械刺繍機により、純ステンレス糸に対してテストを行い、糸切断を測定し、
刺繍図案、刺繍図案サイズ、回転速度、糸調子、針番号、布材、糸材のパラメーターを通して、実験時の糸切断の数を測定し、ステンレス刺繍糸の最適糸径値を判定することを特徴とするステンレス刺繍糸の実験方法。
【請求項5】
ステンレス刺繍糸の実験方法により測定されたステンレス刺繍糸において、測定された糸径の範囲値は、50μm〜65μmであることを特徴とする請求項4記載のステンレス刺繍糸の実験方法により測定されたステンレス刺繍糸。
【請求項6】
ステンレス刺繍糸の実験方法により測定された純ステンレス刺繍糸において、その糸径は60μmであることを特徴とする請求項5に記載のステンレス刺繍糸の実験方法により測定された純ステンレス刺繍糸。

【図1】
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【公開番号】特開2011−137277(P2011−137277A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74032(P2010−74032)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(510086235)
【Fターム(参考)】