説明

テーパ刃エンドミルおよびそれを用いたテーパ穴形成方法

【課題】 特殊鋼に対してもテーパ穴を精度よく形成することのできるテーパ刃エンドミル、およびそれを用いたテーパ穴形成方法を提案すること。
【解決手段】 テーパ刃エンドミル1は、シャンク2の先端側に、回転中心軸線1aに対して一定のテーパ角θaで漸減している先細テーパの刃部3を有している。この刃部3には、所定のねじれ角θbをもって2枚の外周刃7が形成されている。また、刃部3の先端部分には、一定の先端角θdで底刃8が構成されている。刃部3のテーパ角θaは0°15′から10°の範囲に設定されており、外周刃7のねじれ角θbは5°から15°の範囲に設定されており、底刃8の先端角θdは100°から130°の範囲に設定されている。特殊鋼からなるワークに対しては、テーパ刃エンドミル1を軸線周りに回転させながら刃部3を進入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーパ刃エンドミル、およびそれを用いたテーパ穴形成方法に関するものである。さらに詳しくは、射出成形用金型の材料でもある熱間ダイス鋼などといった特殊鋼にテーパ穴を形成するのに適したテーパ刃エンドミルの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形用金型として、ランナ型板、キャビティ型板、およびコア型板がこの順番に積層された3枚構成の金型が一般に知られており、かかる金型では、各型板に、溶融樹脂の通路となる第1スプル、ランナ、第2スプル、ピンポイントゲート、およびキャビティが形成されている。各型板は、SKD−61などの熱間ダイス鋼や、HPM38などのプリハードン鋼などといった特殊鋼が用いられている。
【0003】
ここで、キャビティ型板に形成されている第2スプルおよびピンポイントゲートは、ランナからキャビティに流入する溶融樹脂の流量と方向を制御すると共に、溶融樹脂が固化して成形品になるまでキャビティ内に溶融樹脂を封じ込んでランナ側への逆流を防ぐ重要な部分である。このため、第2スプルとピンポイントゲートの形成には、高い寸法精度と高い面精度が要求される。
【0004】
第2スプルおよびピンポイントゲートは、キャビティに向かうに連れて内径寸法が漸減しているテーパ状であるので、これらをキャビティ型板に形成するにあたっては、放電加工機や、テーパ穴に沿った形状の半月テーパカッターあるいは回転中心軸線と平行に延びる2枚の直刃を備えた直刃2枚刃テーパカッターなどが用いられる。いずれのものを用いた場合でも、まず、キャビティ型板にドリルなどで下穴を開け、しかる後に、加工機あるいは各カッターで加工を行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの加工機およびカッターを用いて、第2スプルおよびピンポイントゲートを形成する方法では、以下に挙げる問題がある。
【0006】
まず、放電加工機を用いた場合には、放電電極とキャビティ型板の間にスパークを発生させてキャビティ型板にテーパ穴を少しずつ開けていくので、加工時間が長く、加工費用が嵩んでしまうという問題がある。また、仕上げ加工用の磨き工具が別途、必要である。
【0007】
次に、半月テーパカッターおよび直刃2枚刃テーパカッターを用いた場合には、放電加工機に比べて加工時間を短縮できるという利点があるが、双方とも、精度よく加工が行えないという問題がある。その理由は、かかる構造のカッターは切削の際に切り粉が上がってこないので、切り粉が内部で詰まってしまい、切り粉が内周面に傷を付けてしまうためと考えられる。このため、従来は、荒削り用と仕上げ用の2本のカッターを用いて孔加工を行っている。また、切り粉の巻き込みなどに起因してカッターが折損するので、カッターの寿命が短いという問題がある。
【0008】
以上の問題に鑑みて、本発明の課題は、特殊鋼製のワークであってもテーパ穴を精度よく形成することのできるテーパ刃エンドミル、およびそれを用いたテーパ穴形成方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
シャンクの先端側に先細テーパの刃部を有し、該刃部には所定のねじれ角をもって外周刃が形成されたテーパ刃エンドミルにおいて、本願出願人は、刃部の部分の構成を種々変えて、熱間ダイス鋼やプリハードン鋼などといった特殊鋼に対してテーパ穴加工を行い、その際のうねりの有無、刃の切れ具合、テーパ穴の内周面の面精度、および加工時間について検討を行った。その結果、本願出願人は、シャンクの先端側に先細テーパの刃部を有し、該刃部には所定のねじれ角をもって外周刃が形成されたテーパ刃エンドミルにおいて、ねじれ角を小さく設定し、直刃のテーパカッターに近い構成に到達した。すなわち、本発明では、シャンクの先端側に先細テーパの刃部を有し、該刃部には所定のねじれ角をもって外周刃が形成されたテーパ刃エンドミルにおいて、前記ねじれ角を5°から15°の範囲に設定したことを特徴とする。
【0010】
本発明では、テーパ刃エンドミルの外周刃のねじれ角を5°から15°という小さな角度に設定したため、特殊鋼に対してテーパ穴加工を行った際、うねりの発生や刃の切れ具合などにおいて直刃のテーパカッター以上の特性を発揮する。また、テーパ刃エンドミルの外周刃のねじれ角を5°から15°という小さな角度に設定したため、熱間ダイス鋼やプリハードン鋼などといった特殊鋼にテーパ穴を形成する際でも、発生した切り粉は、外周刃によってシャンク側に押し上げられ、ワークの表面側まで上がってくる。それ故、本発明によれば、切り粉の巻き込みなどに起因するテーパ穴の内周面の荒れが起こらないので、テーパ穴内周面の面精度が高い。よって、テーパ穴の内周面を磨き工具で後加工する必要がないので、加工効率が高い。また、テーパ刃エンドミルの強度が高いので、1本のテーパ刃エンドミルで多数のテーパ穴を形成することができる。それ故、本発明によれば、工具の交換頻度を極めて低く抑えることができ、コストの大幅な低減を図ることができる。
【0011】
本発明において、前記刃部のテーパ角が0°15′から10°の範囲に設定されていることが望ましい。
【0012】
本発明において、前記外周刃は、2枚刃構成になっており、当該外周刃の先端の外径寸法が1.3mm以上であることが望ましい。
【0013】
本発明において、前記刃部の先端部分に、一定の先端角で底刃を構成し、当該先端角を100°から130°の範囲に設定することが望ましい。このように構成すると、底刃がドリルとして機能するので、テーパ穴を形成する際に、従来のようにドリルなどで下穴を開ける必要がないので、加工時間を短縮できる。
【0014】
本発明において、前記外周刃の逃げ角が5°から15°の範囲に設定されていることが望ましい。
【0015】
本発明において、前記外周刃のすくい角が−6°から−1°までの範囲に設定されていることが望ましい。
【0016】
本発明において、前記外周刃のマージン幅が0mmから0.1mmの範囲に設定されていることが望ましい。
【0017】
本発明に係るテーパ刃エンドミルを用いたテーパ穴形成方法においては、前記テーパ刃エンドミルを軸線周りに回転させながら前記刃部をワークに進入させることを特徴とする。また、金型の製造方法においては、前記テーパ刃エンドミルを軸線周りに回転させながら前記刃部を金型素材に進入させてゲートに接続するスプル用のテーパ穴を形成することを特徴とする。本発明を適用したテーパ穴形成方法では、テーパ穴の内周面の面精度を磨き工具がいらない位にまで仕上げることができるので、高い面精度などが要求されている射出成形用金型を製造する際に適用すると、その効果が顕著である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、テーパ刃エンドミルの外周刃のねじれ角を5°から15°という小さな角度に設定したため、特殊鋼に対してテーパ穴加工を行った際、うねりの発生を防止でき、刃の切れ具合も高い。また、テーパ穴を形成する際に発生した切り粉は、外周刃によってシャンク側に押し上げられ、ワークの表面側まで上がってくる。それ故、本発明によれば、切り粉の巻き込みなどに起因するテーパ穴の内周面の荒れが起こらないので、テーパ穴内周面の面精度が高い。よって、テーパ穴の内周面を磨き工具で後加工する必要がないので、加工効率が高い。また、テーパ刃エンドミルの強度が高いので、1本のテーパ刃エンドミルで多数のテーパ穴を形成することができる。それ故、本発明によれば、工具の交換頻度を極めて低く抑えることができ、コストの大幅な低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1(a)および(b)は、本発明を適用したテーパ刃エンドミルを用いて切削加工を行うことにより製造される射出成形用金型の一例を示す概略断面図である。図2(a)および(b)は、本発明の実施の形態1に係るテーパ刃エンドミルの側面図、および刃部を先端側から見たときの底面図である。なお、図2(a)、(b)において、各符号を以下の寸法
L=テーパ刃エンドミルの全長
L′=刃部の長さ
L′s=シャンクの長さ
φD=外周刃の先端の外径
φ=外周刃の基端の外径
θa=外周刃のテーパ角
θb=ねじれ角
θc=逃げ角
θe=すくい角
W=マージン幅
θd=底刃の先端角
で示してある。
【0021】
本発明を適用したテーパ刃エンドミルは、図1(a)および(b)に示す射出成形用金型100のテーパ穴の部分を形成するのに適した工具である。ここに例示する射出成形用金型100は、ランナ型板101、固定側型板であるキャビティ型板102、および可動側型板であるコア型板103がこの順番に積層される3枚構成の金型であり、型板101〜103を積層した状態では、溶融樹脂110の通路となる第1スプル105、ランナ106、第2スプル107、ピンポイントゲート108、およびキャビティ109が形成される。溶融樹脂110の通路のうち、第1スプル105はランナ型板101にテーパ穴を開けることにより形成される。第2スプル107は、ランナ106の側から、内径寸法が等径に形成されているストレート穴107aと、この端部からキャビティ109に向かうに連れて内径寸法が漸減しているテーパ穴107bとを備え、このテーパ穴107bおよびピンポイントゲート108はキャビティ型板102にテーパ穴を開けることにより形成される。本発明を適用したテーパ刃エンドミルは、かかるテーパ穴を開けるために用いられる。なお、各型板101〜103は、SKD−61などの熱間ダイス鋼や、HPM38などのプリハードン鋼などといった特殊鋼製であり、その硬度はロックウェル硬さで約HRC33である。
【0022】
図2(a)および(b)に示すように、本形態のテーパ刃エンドミル1は、シャンク2と、このシャンク2の先端側に、回転中心軸線1aに対して一定のテーパ角θaで漸減している先細テーパの刃部3とを有している。また、シャンク2と刃部3の間はテーパ状の首部4によって繋がれている。テーパ刃エンドミル1は、耐磨耗性の高い、例えばハイス鋼や超鋼から形成されている。
【0023】
刃部3の外周部分には、回転中心軸線1aの方向に螺旋状に延びる複数の螺旋溝5が等角度間隔に形成されている。各螺旋溝5の間は、回転中心軸線1aの方向に螺旋状に延びるランド部6とされ、螺旋溝5とランド部6は各々複数条、周方向において交互に形成されている。ランド部6の外周面は、刃部3の外接円と略重なっている円弧状面部分61と、段差を介して矢印CWで示す回転方向と反対側に向かうに連れて縮径している二番取り面部分62とを備えている。
【0024】
本形態では、螺旋溝5およびランド部6はいずれも矢印CWで示す回転方向にねじれている右ねじれであると共に、それらの数はいずれも2条である。
【0025】
2条のランド部6の各々には、矢印CWで示す回転方向側に位置する縁60に、回転中心軸線1aの方向に所定のねじれ角θbをもって螺旋状に延びる外周刃7が形成されている。従って、本形態の外周刃7は右刃右ねじれの2枚刃構成になっている。
【0026】
本形態のテーパ刃エンドミル1において、刃部3は、その先端部分に一定の先端角θdで底刃8が構成されている。この底刃8は、一般のドリルの先端部分と同様に、逃げ面81が形成されている。また、切り粉の排出性を良くするためにシンニング82が形成されている。
【0027】
このように構成したテーパ刃エンドミル1において、
外周刃7の先端の外径φD
刃部3のテーパ角θa
テーパ刃エンドミル1の全長L
刃部3の長さL′
シャンク2の長さL′s
外周刃7の基端の外径φ
は各々、表1に示すように設定され、外周刃7のテーパ角θaは2°あるいは3°、外周刃7の先端の外径φDは、1.4mm、2mm、2.5mmあるいは3mmである。なお、シャンク2の外径寸法はいずれもφ10である。
【0028】
【表1】

【0029】
また、本形態の各テーパ刃エンドミル1(1)〜1(8)のその他の条件は以下に示す条件
ねじれ角θb=10°
逃げ角θc=9°
すくい角θe=−1°
マージン幅W=0.02mmから0.06mm
底刃8の先端角θd=120±5°
に設定されている。
【0030】
このように構成したテーパ刃エンドミル1を用いて、例えば、図1に示す射出成形用金型100のキャビティ型板102にテーパ穴を開けてピンポイントゲート108に接続する第2スプル107を形成するには、テーパ刃エンドミル1のシャンク2をフライス盤(図示せず)に連結して、矢印CWで示すように当該エンドミル1を軸線周りに所定の回転数で回転させながら、金型素材であるワークに刃部3を所定の送り速度で進入させる。その際、テーパ刃エンドミル1とワークとの切削点に向けてはクーラントを供給する。ここで、テーパ刃エンドミル1の底刃8はドリルの機能を果たすので、従来のように、ワークに予め下穴を開けておく必要がない。刃部3がワークを切削することによって発生した切り粉については、螺旋溝5が受けるとともに、螺旋溝5に入り込んだ切り粉は、回転に伴って発生する当該螺旋溝5による排出力などにより押し上げられ、クーラントとともにワークの表面側まで上がってくる。
【0031】
このようなテーパ穴形成方法において、ワークがSKD−61などの熱間ダイス鋼や、HPM38などのプリハードン鋼などといった特殊鋼からなる場合、刃部3の回転数を270rpm〜500rpm、刃部3の送り速度を2mm/minに設定すると、効率よく切削を行うことができる。
【0032】
以上説明したように、本形態のテーパ刃エンドミル1では、外周刃7を、従来の回転中心軸線と平行に延びる直刃に対して、5°から15°という緩やかなねじれ角θbを持たせた螺旋刃にすることによって、熱間ダイス鋼やプリハードン鋼などといった特殊鋼製のワークであっても、効率よく切削を行うことが可能になった。また、発生した切り粉は、螺旋溝5に沿って上がってくるので、切り粉の巻き込みなどに起因するテーパ穴の内周面の荒れが起こらない。それ故、テーパ穴の内周面の面精度を磨き工具がいらない位にまで仕上げることができる。よって、本形態のテーパ刃エンドミル1を用いれば、ワークが熱間ダイス鋼やプリハードン鋼などといった特殊鋼製であっても、精度よくテーパ穴を形成することができる。
【0033】
また、本形態のテーパ刃エンドミル1は、これ1本でテーパ穴の内周面を磨き工具がいらない位にまで仕上げることができるので、荒削り用と仕上げ用の2本の工具を用いていた従来に比べて、コストを削減できる。さらに、工具交換のための時間のロスがなくなるので、加工時間を短縮できる。
【0034】
さらには、切り粉の巻き込みに起因するカッターの折損が発生しないので、工具の寿命を延ばすことができる。
【0035】
さらにまた、刃部3の底刃8はドリルの機能を果たすので、従来のように、ワークに予め下穴を開けておく必要がない。それ故、加工時間を大幅に短縮でき、加工費用を低く抑えることができる。
【0036】
[実施の形態2]
図3(a)および(b)は、本発明の実施の形態2に係るテーパ刃エンドミルの側面図、および刃部を先端側から見たときの底面図である。なお、本形態のテーパ刃エンドミルの基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示するとともに、それらの説明を省略する。
【0037】
本形態のテーパ刃エンドミル1(9)も、シャンク2の先端側に、回転中心軸線1aに対して一定のテーパ角θaで漸減している先細テーパの刃部3を有している。この刃部3には、所定のねじれ角θbをもって2枚の外周刃7が形成されている。また、刃部3の先端部分には、一定の先端角θdで底刃8が構成されている。
【0038】
本形態のテーパ刃エンドミル1(9)は、上記形態のものよりも一回り大きく形成されており、各部分の角度および寸法は以下に示す条件
外周刃7の先端の外径φD=2.3±0.05mm
刃部3のテーパ角θa=1°30′±10′
テーパ刃エンドミル1の全長L=110mm
刃部3の長さL′=60±0.6mm
シャンク2の長さL′s=38.1mm
外周刃7の基端の外径φ=5.406mm
ねじれ角θb=10°
逃げ角θc=9°
すくい角θe=−1°
マージン幅W=0.02mmから0.06mm
底刃8の先端角θd=120±5°
に設定されている。なお、シャンク2の外径寸法はφ10である。また、円弧状面部分61のランド幅は0.4mmである。
【0039】
このように構成したテーパ刃エンドミル1(9)を用いた場合も、ワークが熱間ダイス鋼やプリハードン鋼などといった特殊鋼製であっても、精度よくテーパ穴を形成することができるなど、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0040】
[その他の実施の形態]
また、上記実施の形態1、2の他、各種条件で2枚刃のテーパ刃エンドミル1を製作するとともに、これらのテーパ刃エンドミル1によって、熱間ダイス鋼やプリハードン鋼などといった特殊鋼製にテーパ穴を形成したところ、以下の条件
外周刃7の先端の外径φD=1.3mm以上
刃部3のテーパ角θa=0°15′から10°の範囲
ねじれ角θb=5°から15°の範囲
逃げ角θc=5°から15°の範囲
すくい角θe=−6°から−1°までの範囲
マージン幅W=0mmから0.1mm
底刃8の先端角θd=100°から130°の範囲
であれば、うねりの発生や刃の切れ具合などにおいて直刃のテーパカッター以上の特性を発揮することが確認できた。また、テーパ刃エンドミルの外周刃のねじれ角を5°から15°という小さな角度に設定したため、熱間ダイス鋼やプリハードン鋼などといった特殊鋼にテーパ穴を形成する際でも、発生した切り粉は、外周刃によってシャンク側に押し上げられ、ワークの表面側まで上がってくる。それ故、本発明によれば、切り粉の巻き込みなどに起因するテーパ穴の内周面の荒れが起こらないので、テーパ穴内周面の面精度が高い。よって、テーパ穴の内周面を磨き工具で後加工する必要がないので、加工効率が高い。また、テーパ刃エンドミルの強度が高いので、1本のテーパ刃エンドミルで多数のテーパ穴を形成することができる。それ故、本発明によれば、工具の交換頻度を極めて低く抑えることができ、コストの大幅な低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)および(b)は、本発明を適用したテーパ刃エンドミルも用いて切削することにより製造された射出成形用金型の一例を示す概略断面図である。
【図2】(a)および(b)は、本発明の実施の形態1に係るテーパ刃エンドミルの側面図、および刃部を先端側から見たときの底面図である。
【図3】(a)および(b)は、本発明の実施の形態2に係るテーパ刃エンドミルの側面図、および刃部を先端側から見たときの底面図である。
【符号の説明】
【0042】
1、1(1)〜1(9) テーパ刃エンドミル
1a 回転中心軸線
2 シャンク
3 刃部
5 螺旋溝
6 ランド部
7 外周刃
8 底刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャンクの先端側に先細テーパの刃部を有し、該刃部には所定のねじれ角をもって外周刃が形成されたテーパ刃エンドミルにおいて、
前記ねじれ角が5°から15°の範囲に設定されていることを特徴とするテーパ刃エンドミル。
【請求項2】
請求項1において、
前記刃部のテーパ角が0°15′から10°の範囲に設定されていることを特徴とするテーパ刃エンドミル。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記外周刃は、2枚刃構成になっており、
当該外周刃の先端の外径寸法が1.3mm以上であることを特徴とするテーパ刃エンドミル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記刃部の先端部分には、一定の先端角で底刃が構成されており、
当該先端角が100°から130°の範囲に設定されていることを特徴とするテーパ刃エンドミル。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記外周刃の逃げ角が5°から15°の範囲に設定されていることを特徴とするテーパ刃エンドミル。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記外周刃のすくい角が−6°から−1°までの範囲に設定されていることを特徴とするテーパ刃エンドミル。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記外周刃のマージン幅が0mmから0.1mmの範囲に設定されていることを特徴とするテーパ刃エンドミル。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに規定するテーパ刃エンドミルを用いたテーパ穴形成方法であって、
前記テーパ刃エンドミルを軸線周りに回転させながら前記刃部をワークに進入させてテーパ穴を形成することを特徴とするテーパ穴形成方法。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに規定するテーパ刃エンドミルを用いた金型の製造方法でであって、
前記テーパ刃エンドミルを軸線周りに回転させながら前記刃部を金型素材に進入させてゲートに接続するスプル用のテーパ穴を形成することを特徴とする金型の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−21610(P2007−21610A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204267(P2005−204267)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(591021671)日本電産ニッシン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】