説明

テーピング装置およびテーピング装置の運転方法

【課題】絶縁テープをコイル導体に巻装する際、絶縁テープの巻数直径、切断等を監視するとともに、絶縁テープの張力に過不足があるとき、設計値に自動調整するテーピング装置およびテーピング装置の運転方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るテーピング装置は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のそれぞれに移動可能にするとともに、Y軸およびZ軸のそれぞれを中心にして回転可能なテーピングヘッド14と、このテーピングヘッド14に回転可能に組み込まれた回転リング27と、この回転リング27に組み込まれ、絶縁テープ13a,13bを収容するテープホルダ31a,31bと、前記絶縁テープ13a,13bの張力の強弱、高低を調整する絶縁テープ張力制御装置33a,33bと、前記絶縁テープ13a,13bの巻数直径を監視する手段と、前記絶縁テープの切断を監視する手段と、監視した情報を無線化して送信する手段32a,32bとを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に適用するコイル導体に絶縁テープを自動的に巻装する際、その巻装作業に、より一層の改良を加えたテーピング装置およびテーピング装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テーピング装置は、平角断面の素線を複数にして束ねたコイル導体に絶縁テープを自動的に巻装するもので、その構成として図5〜図6に示すものがある。
【0003】
このテーピング装置は、支持フレーム(図示せず)に設けた回転リング1に複数の絶縁テープ2a,2bを巻装したリール3a,3bを設け、水平に支持されたコイル導体4の一端に絶縁テープ2a,2bを貼着し、その後、回転リング1をコイル導体4の周りに回転させ、しかも一定の張力を与えながらコイル導体4の軸方向(長手方向)に向って移動させるとともに、移動中、図7に示すように、約1/2程度の重ね巻きを2本の絶縁テープ2a,2bで行なわせる構成にしている。
【0004】
なお、この種のテーピング装置には、例えば、特開平7−131959号公報(特許文献1)や特開平9−56123号公報(特許文献2)等が開示されている。
【特許文献1】特開平7−131959号公報
【特許文献2】特開平9−56123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転電機に適用するコイルは、横断面を長方形に形成するコイル導体4が軸方向(長手方向)に向って延びる直線部4aと、両端が捩れを含む折曲げ状の3次元形状のエンド部4b,4bとから構成されている。
【0006】
このような形状のコイル導体4、特に3次元形状のエンド部4b,4bに絶縁テープ2a,2bを巻装する場合、従来のテーピング装置では、絶縁テープ2a,2bの張力を監視する手段を備えておらず、専ら作業員の目視確認と長年の経験に基づく判断に依存するところが多く、幾つかの問題点を抱えていた。
【0007】
まず、一つ目は、絶縁テープの張力を監視する手段がないため、絶縁テープの導体、特に3次元形状のエンド部への巻装に対し、粗、密のムラができ、絶縁性能に悪影響を与えることがあった。
【0008】
二つ目に、絶縁テープの張力を監視する手段がないため、導体を巻装する絶縁テープの残量がわからず、作業員の経験に頼ることが多かった。しかし、作業員が途中で交替したり、休憩が入ったりした場合、絶縁テープの残量がわからないため、絶縁テープの交換作業が遅れ、作業が長時間化する等の問題があった。
【0009】
三つ目に、絶縁テープの張力を監視する手段がないため、運転中に、絶縁テープ切があっても気付かないことがあり、気付いたときには、絶縁テープが切れた箇所まで戻して再起動しなければならず、時間的ロスを生じていた。
【0010】
四つ目に、コイル導体に絶縁テープを送り出す、従来のテーピングヘッドにも問題があった。
【0011】
従来のテーピングヘッドは、全体形状が比較的大きくなっているため、3次元形状の導体のエンド部に差し掛かると、その移動半径が大きくなり、周辺の治具に衝突したり、導体への巻装中、絶縁テープが捩れ、絶縁テープ表面に被着させた絶縁層を破損させることがあった。
【0012】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、テーピングヘッド内に絶縁テープの張力を調整する絶縁テープ張力制御装置と、絶縁テープの巻数直径残量および絶縁テープ切れ等を監視する手段を組み込み、その監視した情報を無線化して外部への送信を実現可能としたテーピング装置およびテーピング装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るテーピング装置は、上述の目的を達成すめために、請求項1に記載したように、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のそれぞれに移動可能にするとともに、Y軸およびZ軸のそれぞれを中心にして回転可能なテーピングヘッドと、このテーピングヘッドに回転可能に組み込まれた回転リングと、この回転リングに組み込まれ、絶縁テープを収容するテープホルダと、前記絶縁テープの張力の強弱、高低を調整する絶縁テープ張力制御装置と、前記絶縁テープの巻数直径を監視する手段と、前記絶縁テープの切断を監視する手段と、監視した情報を無線化して送信する手段とを備えたものである。
【0014】
また、本発明に係るテーピング装置は、上述の目的を達成すめために、請求項2に記載したように、テープホルダは、巻装した絶縁テープを収容するリールと、このリールに接続し、周縁に歯を設けて絶縁テープ張力制御装置に螺合させるベース板とを備えたものである。
【0015】
また、本発明に係るテーピング装置は、上述の目的を達成すめために、請求項3に記載したように、リールは、巻装した絶縁テープに係合させるピンを備えたものである。
【0016】
また、本発明に係るテーピング装置は、上述の目的を達成すめために、請求項4に記載したように、絶縁テープ張力制御装置は、テープホルダのベース板に螺合させる歯を備えた回転盤と、この回転盤に設けたブレーキシューと、一端が前記回転盤に軸支され、他端が支持部材で固設された主軸と、この主軸を同心的に包囲し、モータの駆動力をバネを押えるバネ押え板および押え板に与えてこれらバネ押え板および押え板を前記主軸の軸方向に進退移動させるウォームホイールと、前記主軸に設けられ、前記押え板を前記ブレーキシューに当接させたときに前記主軸に生成される回転トルクを計測するひずみゲージとで構成する張力調整機構部を備えたものである。
【0017】
また、本発明に係るテーピング装置は、上述の目的を達成すめために、請求項5に記載したように、ウォームホイールは、バネ押え板を主軸の軸方向に進退移動させるネジ部を備えたものである。
【0018】
また、本発明に係るテーピング装置は、上述の目的を達成すめために、請求項6に記載したように、回転盤は、主軸を軸支する軸受を備えたものである。
【0019】
また、本発明に係るテーピング装置は、上述の目的を達成すめために、請求項7に記載したように、モータは、モータ軸にウォームホイールの周縁に設けた歯に螺合させるウォームギヤを備えたものである。
【0020】
また、本発明に係るテーピング装置は、上述の目的を達成すめために、請求項8に記載したように、押え板は、バネを支持し、かつバネ押え板に接続させる支持軸を備えたものである。
【0021】
また、本発明に係るテーピング装置は、上述の目的を達成すめために、請求項9に記載したように、絶縁テープの切断を監視する手段は、絶縁テープをサポートする中間ローラの挙動を監視する絶縁テープ切断監視センサであることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明に係るテーピング装置は、上述の目的を達成すめために、請求項10に記載したように、絶縁テープの巻数直径を監視する手段は、絶縁テープ監視センサであることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明に係るテーピング装置は、上述の目的を達成すめために、請求項11に記載したように、回転リングは、絶縁テープのコイル導体への貼着時、貼着状態を監視するレーザ監視装置を備えたものである。
【0024】
また、本発明に係るテーピング装置は、上述の目的を達成すめために、請求項12に記載したように、監視した状態を無線化して送信する手段は、回転リングに組み込まれた無線機およびアンテナであることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明に係るテーピング装置は、上述の目的を達成すめために、請求項13に記載したように、監視した情報を無線化して送信する手段は、監視した情報のうち、絶縁テープの巻数直径の情報と、主軸の回転トルクの情報とに基づいて張力を演算し、その演算信号を絶縁テープの張力の強弱、高低調整指令として絶縁テープ張力制御装置に与えるテーピング制御装置を備えたものである。
【0026】
また、本発明に係るテーピング装置の運転方法は、上述の目的を達成すめために、請求項14に記載したように、テーピングヘッドのテープホルダからコイル導体に絶縁テープを送り出すとき、前記絶縁テープの巻数直径およびその切断をレーザ光で監視し、監視した情報を無線で前記テーピングヘッドに駆動指令を与えるテーピング制御装置に送信するとともに、前記絶縁テープが設計値に較べて強弱高低変動しているとき、張力調整機構部の回転盤に設けたブレーキシューにバネ押え板を介装した押え板を当接させ、その際に主軸に生成される回転トルクを計測し、計測した回転トルクと前記絶縁テープの巻数直径とから前記絶縁テープの張力を算出し、算出した張力に基づいてモータの正または逆回転を演算し、その演算した回転の下、前記バネ押え板および押え板を前記主軸の軸方向に沿って進退移動させて前記絶縁テープの張力を調整する方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るテーピング装置およびテーピング装置の運転方法は、運転中の絶縁テープの張力に強弱、高低が出たとき、その張力を設計値に調整させているので、張力の適正値の下、絶縁テープのコイル導体への巻装を粗、密の偏奇がなく、絶縁性能を高く維持させることができる。
【0028】
また、本発明に係るテーピング装置およびテーピング装置の運転方法は、絶縁テープの巻終り、切断等を監視し、その情報を無線で送受信させているので、絶縁テープの取換え作業を短時間で行うことができ、情報の無線化によってテーピングヘッドを小型化、軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係るテーピング装置およびテーピング装置の運転方法の実施形態を図面および図面に付した符号を引用して説明する。
【0030】
図1は、本発明に係るテーピング装置の概略斜視図である。
【0031】
本実施形態に係るテーピング装置は、コイル導体10の直接部分を支持するコイル導体直線部支持クランプ11と、コイル導体10のエンド部を支持するコイル導体エンド部支持クランプ12と、コイル導体10に絶縁テープ13を巻装するテーピングヘッド14と、このテーピングヘッド14を駆動して自在に移動させるテーピングヘッド支持移動装置15と、このテーピンビヘッド支持移動装置15の動きを遠隔的に制御するアンテナ16を備えたテーピング制御装置17と、絶縁テープ13の張力やテーピングヘッド14の動きの軌跡等を予め入力する入力装置18等を備えた構成になっている。
【0032】
テーピングヘッド支持移動装置15は、ベースプレート19に設けたレール20上をX軸方向に移動させる移動板21と、この移動板21に設けられたレール22上をY軸方向に摺動させるテーブル23と、このテーブル23に設けられ、テーピングヘッド14をZ軸方向に昇降させるコラム24と、テーピングヘッド14をコラム24のZ軸を中心にして回転させるとともに、コラム24のY軸を中心にして回転させる、例えば、モータ等の駆動機構部25とを備え、テーピングヘッド14を5軸方向に駆動できる構成になっている。
【0033】
また、コイル導体直線部支持クランプ11は、シリンダ内に収容された支持軸と支持軸に設けた把持部(ともに図示せず)を備え、テーピングヘッド14が近付くと、把持部が開口し、支持軸が降下し、テーピングヘッド14に衝突しないようにしている。
【0034】
また、テーピング制御装置17は、予め入力しておいて入力装置18からのデータ情報を基にしてコイル導体直接部支持クランプ11、テーピングヘッド14、駆動機構部25等に与えて駆動させ、その挙動をコントロールしている。
【0035】
一方、コイル導体10に絶縁テープ13を巻装させるテーピングヘッド14は、図2に示すように、筒状のフレーム26に収容するリング筒状の回転リング27と、フレーム26の裏側に設けられ、回転リング27をフレーム26の周方向に沿って回転駆動させるモータ28と、回転リング27の外側を覆設する蓋体29とを備えている。
【0036】
リング筒状に形成された回転リング27内には、コイル導体10に中間ローラ30a,30bを介して絶縁テープ13a,13bを供給するテープホルダ31a,31bと、テープホルダ31a,31bに収容された絶縁テープ13a,13bの巻数直径をレーザ光で計測し、絶縁テープ13a,13bの巻数の終了を監視する絶縁テープ監視センサ32a,32bと、テープホルダ31a,31bから中間ローラ30a,30bを介してコイル導体10に供給する絶縁テープ13a,13bの張力の強弱、高低を調整する絶縁テープ張力制御装置33a,33bとが設けられている。
【0037】
また、回転リング27内には、絶縁テープ監視センサ32a,32bのレーザ光で計測した絶縁テープの巻数直径の情報をテーピング制御装置17に送る無線機34およびアンテナ35a,35bと、補助用のテープホルダ36と、絶縁テープ13a,13bのコイル導体10への巻装段取り時、絶縁テープ13a,13bがコイル導体10に正確に貼着されているかをレーザ光で監視するレーザ監視装置37が設けられている。
【0038】
図3は、図2に示したテープホルダ31a(31b)および絶縁テープ張力制御装置33a(33b)を抜き出したテーピング装置の部分拡大図である。
【0039】
テープホルダ31a(31b)は、回転リング27から延びた支持板38および横フレーム39で支持され、周縁に歯40を備えたベース板41と、ベース板41に接続し、巻装した絶縁テープ13a(13b)を収容するリール42と、リール42に設けられ、収容した絶縁テープ13a(13b)を係合させてリール42の空回り運転を防止するピン43を備えている。
【0040】
また、絶縁テープ張力制御装置33a(33b)は、回転リング27から延びた支持板44、横フレーム45、アーム46を介して支持されたモータ55と、このモータ55の駆動力によりリール42から中間ローラ30a(30b)を介して送り出される絶縁テープ13a(13b)の張力を調整させる張力調整機構部48を備えている。
【0041】
この張力調整機構部48は、回転盤49の周縁に歯50を備え、ベース板41に設けた歯40と螺合させ、互いを矢印ARの反対方向に向って回転させ、この間に絶縁テープ13a(13b)の張力を調整している。
【0042】
また、横フレーム45には、絶縁テープ切断監視センサ51が設けられている。
【0043】
この絶縁テープ切断監視センサ51は、運転中、絶縁テープ13a(13b)の張力を受けて中間ローラ30a(30b)が軸線Gに位置しているが、絶縁テープ13a(13b)が切断されると張力が無くなり、中間ローラ30a(30b)が軸線Gに移動することを利用し、中間ローラ30a(30b)の軸線Gの位置をレーザ光で監視し、監視した情報を図2に示した無線機14、アンテナ35aを介して図1に示したテーピング制御装置17に送るようになっている。そして、絶縁テープ13a(13b)の切断の情報を受けたテーピング制御装置17は、テーピングヘッド支持移動装置15やテーピングヘッド14に運転停止指令を出す。
【0044】
ところで、絶縁テープ張力制御装置33a(33b)を構成する張力調整機構部48を今少し詳しく説明する。
【0045】
この張力調整機構部48は、図4に示すように、テープホルダ31a(31b)のベース板41に設けた歯40に螺合し、周縁に沿って設けられた歯50を備えた回転盤49と、この回転盤49に設けた軸受52に一端が軸支され、他端が支持部材53に固設させた主軸54と、モータ55のモータ軸56に設けたウォームギヤ57に螺合し、主軸54を回転中心として回転するT字状で、かつ筒状のウォームホイール58とを備えている。
【0046】
また、張力調整機構部48はT字状で、かつ筒状のウォームホイール58に設けたネジ部59に螺合させて主軸54の軸方向に進退移動させるバネ押え板60と、このバネ押え板60に隣接し、支持軸61で支持されたバネ62を備えた押え板63と、回転盤49に設けられ、押え板63との当接の際、生成される摩擦力によって主軸54に回転トルクを発生させるブレーキシュー64と、主軸54に設けられ、発生した回転トルクを計測するひずみゲージ65とを備えている。
【0047】
次に、本実施形態に係るテーピング装置の運転方法を説明する。
【0048】
運転前の段取り段階において、本実施形態は、コイル導体直接部支持クランプ11およびコイル導体エンド部支持クランプ12のそれぞれにコイル導体10を把持させ、コイル導体10のエンド部からテーピングヘッド14を挿通させ、テーピングヘッド14のテープホルダ31a,31bから中間ローラ30a,30bを介して引き寄せた絶縁テープ13a,13bをコイル導体10のエンド部に貼着させる。
【0049】
その際、テーピングヘッド14の回転リング27に設けたレーザ監視装置37で絶縁テープ13a,13bのコイル導体10に対する貼着状態が監視される。
【0050】
段取り段階が終了すると、本実施形態は、テーピング制御装置17のアンテナ16からテーピング支持移動装置15およびテーピングヘッド14のそれぞれに駆動指令が出される。
【0051】
駆動指令が与えられたテーピングヘッド14は、フレーム26の裏側に設けられたモータ28を駆動し、回転リング27を蓋体29の周方向に沿って回転させるとともに、絶縁テープ監視センサ32a,32bで絶縁テープ13a,13bの巻数直径を計測、監視させ、その情報を無線機34、アンテナ35a,35bを介してテーピング制御装置17のアンテナ16に送る。
【0052】
また、テーピングヘッド14の回転リング27内に設けた絶縁テープ切断監視センサ51は、テープホルダ31a,31bのリール42からコイル導体10に絶縁テープ13a,13bを送り出す中間ローラ30a,30bの挙動を監視し、絶縁テープ13a,13bが何らかの事情で切断され、そのときの中間ローラ30a,30bの移動情報を無線機34、アンテナ35a,35bを介してテーピング制御装置17のアンテナ16に送る。
【0053】
中間ローラ30a,30bの移動情報を受信したテーピング制御装置17は、テーピングヘッド14およびテーピング支持移動装置15のそれぞれに運転停止指令を与える。
【0054】
一方、テープホルダ31a,31bのリール42からコイル導体10に送られる絶縁テープ13a,13bに、テープ巻数減少等に伴う張力の強弱、高低が発生すると、コイル導体10に絶縁テープ13a,13bの粗密ができ、絶縁性能が悪くなるので、テーピング制御装置17は、絶縁テープ張力制御装置33a,33bの張力調整機構部48に張力調整指令を与える。
【0055】
張力調整指令が与えられた張力調整機構部48は、モータ47を駆動させ、その駆動力をモータ軸56のウォームギヤ57を介してウォームホイール58に与えるとともに、ウォームホイール58のネジ部59を介してバネ押え板60を主軸54の軸方向に進退移動させ、その際、バネ52に弾性力を発生させ、その弾性力で押え板63を押圧し、回転盤49に設けたブレーキシュー64に当接させる。
【0056】
ブレーキシュー64が押え板63に当接すると、摩擦力が生成され、生成された摩擦力によって主軸54には回転トルクが発生する。
【0057】
発生した回転トルクを計測したひずみゲージ65は、その回転トルク情報を無線機34、アンテナ35a,35bを介してテーピング制御装置17のアンテナ16に送る。
【0058】
テーピング制御装置17は、絶縁テープ監視センサ32a,32bから絶縁テープ13a,13bの巻数直径情報と、ひずみゲージ65からの回転トルク情報とを基にして演算し、絶縁テープ13a,13bの張力を算出し、算出した絶縁テープ13a,13bの張力と予め設定された張力、例えば設計値とを比較する。
【0059】
比較中、偏差が出ると、テーピング制御装置17は、その偏差に基づいて回転方向の正逆を演算してモータ55に与え、モータ軸56を正回転または逆回転にしてパネ押え板60および押え板63を主軸54に対し進退移動させ、押え板63とブレーキシュー64との当接に伴って生成される摩擦力を変化させ、その変化させた摩擦力を回転盤49の歯50からテープホルダ31a(31b)におけるベース板41の歯40を介してリール42に与え、テープホルダ31a(31b)のリール42から出る絶縁テープ13a,13bの張力を設計値に調整する。
【0060】
このように、本実施形態は、絶縁テープ13a,13bに張力の強弱、高低が出たとき、適正に調整させているので、絶縁テープ13a,13bのコイル導体10に対する巻装の粗、密の偏奇が無くなり、コイル導体10のより一層高い絶縁性が維持される。
【0061】
また、本実施形態は、絶縁テープ13a,13bの支持する中間ローラ30a,30bの挙動を監視するので、絶縁テープ13a,13bの切断があっても、切断のテープ位置まで巻き戻すことがなく、修復作業を簡易にしてリセット時間を短くすることができる。
【0062】
また、本実施形態は、テープホルダ31a,31bのリール42に収容された絶縁テープ13a,13bの巻数直径を監視し、絶縁テープ13a,13bの巻数終了を自動的に把握するので、新たな絶縁テープへの交換を容易に行うことができる。
【0063】
また、本実施形態は、絶縁テープ13a,13bの巻数直径の変化やその切断等の情報を無線で送受信させるのでろ、リード線等の配線がより一層少なくなり、テーピングヘッド14を超小型化、超軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係るテーピング装置を示す概略全体斜視図。
【図2】本発明に係るテーピング装置に適用するテーピングヘッドを示す概略拡大図。
【図3】本発明に係るテーピング装置に適用するテーピングヘッドのうち、テープホルダと絶縁テープ張力制御装置とを抜き出した概略拡大図。
【図4】図3に示した絶縁テープ張力制御装置を部分的に切欠いて示す斜視図。
【図5】従来のテーピング装置を概略的に示す図。
【図6】図5のA−A矢視方向から見た図。
【図7】コイル導体に絶縁テープを1/2回重ね巻きしたことを示す図。
【符号の説明】
【0065】
1 回転リング
2a,2b 絶縁テープ
3a,3b リール
4a 直線部
4b エンド部
10 コイル導体
11 コイル導体直線部支持クランプ
12 コイル導体エンド部支持クランプ
13,13a,13b 絶縁テープ
14 テーピングヘッド
15 テーピング支持移動装置
16 アンテナ
17 テーピング制御装置
18 入力装置
19 ベースプレート
20 レール
21 移動板
22 レール
23 テーブル
24 コラム
25 駆動機構部
26 フレーム
27 回転リング
28 モータ
29 蓋体
30a,30b 中間ローラ
31a,31b テープホルダ
32a,32b 絶縁テープ監視センサ
33a,33b 絶縁テープ張力制御装置
34 無線機
35a,35b アンテナ
36 テープホルダ
37 レーザ監視装置
38 支持板
39 横フレーム
40 歯
41 ベース板
42 リール
43 ピン
44 支持板
45 横フレーム
46 アーム
48 張力調整機構部
49 回転盤
50 歯
51 絶縁テープ設置監視センサ
52 軸受
53 支持部材
54 主軸
55 モータ
56 モータ軸
57 ウォームギヤ
58 ウォームホイール
59 ネジ部
60 バネ押え板
61 支持軸
62 バネ
63 押え板
64 ブレーキシュー
65 ひずみシュー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のそれぞれに移動可能にするとともに、Y軸およびZ軸のそれぞれを中心にして回転可能なテーピングヘッドと、このテーピングヘッドに回転可能に組み込まれた回転リングと、この回転リングに組み込まれ、絶縁テープを収容するテープホルダと、前記絶縁テープの張力の強弱、高低を調整する絶縁テープ張力制御装置と、前記絶縁テープの巻数直径を監視する手段と、前記絶縁テープの切断を監視する手段と、監視した情報を無線化して送信する手段とを備えたことを特徴とするテーピング装置。
【請求項2】
テープホルダは、巻装した絶縁テープを収容するリールと、このリールに接続し、周縁に歯を設けて絶縁テープ張力制御装置に螺合させるベース板とを備えたことを特徴とする請求項1記載のテーピング装置。
【請求項3】
リールは、巻装した絶縁テープに係合させるピンを備えたことを特徴とする請求項2記載のテーピング装置。
【請求項4】
絶縁テープ張力制御装置は、テープホルダのベース板に螺合させる歯を備えた回転盤と、この回転盤に設けたブレーキシューと、一端が前記回転盤に軸支され、他端が支持部材で固設された主軸と、この主軸を同心的に包囲し、モータの駆動力をバネを押えるバネ押え板および押え板に与え、これらバネ押え板および押え板を前記主軸の軸方向に進退移動させるウォームホイールと、前記主軸に設けられ、前記押え板を前記ブレーキシューに当接させたときに前記主軸に生成される回転トルクを計測するひずみゲージとで構成する張力調整機構部を備えたことを特徴とする請求項1記載のテーピング装置。
【請求項5】
ウォームホイールは、バネ押え板を主軸の軸方向に進退移動させるネジ部を備えたことを特徴とする請求項4記載のテーピング装置。
【請求項6】
回転盤は、主軸を軸支する軸受を備えたことを特徴とする請求項4記載のテーピング装置。
【請求項7】
モータは、モータ軸にウォームホイールの周縁に設けた歯に螺合させるウォームギヤを備えたことを特徴とする請求項4記載のテーピング装置。
【請求項8】
押え板は、バネを支持し、かつバネ押え板に接続させる支持軸を備えたことを特徴とする請求項4記載のテーピング装置。
【請求項9】
絶縁テープの切断を監視する手段は、絶縁テープをサポートする中間ローラの挙動を監視する絶縁テープ切断監視センサであることを特徴とする請求項1記載のテーピング装置。
【請求項10】
絶縁テープの巻数直径を監視する手段は、絶縁テープ監視センサであることを特徴とする請求項1記載のテーピング装置。
【請求項11】
回転リングは、絶縁テープのコイル導体への貼着時、貼着状態を監視するレーザ監視装置を備えたことを特徴とする請求項1記載のテーピング装置。
【請求項12】
監視した状態を無線化して送信する手段は、回転リングに組み込まれた無線機およびアンテナであることを特徴とする請求項1記載のテーピング装置。
【請求項13】
監視した情報を無線化して送信する手段は、監視した情報のうち、絶縁テープの巻数直径の情報と、主軸の回転トルクの情報とに基づいて張力を演算し、その演算信号を絶縁テープの張力の強弱、高低調整指令として絶縁テープ張力制御装置に与えるテーピング制御装置を備えたことを特徴とする請求項1記載のテーピング装置。
【請求項14】
テーピングヘッドのテープホルダからコイル導体に絶縁テープを送り出すとき、前記絶縁テープの巻数直径およびその切断をレーザ光で監視し、監視した情報を無線で前記テーピングヘッドに駆動指令を与えるテーピング制御装置に送信するとともに、前記絶縁テープが設計値に較べて強弱高低変動しているとき、張力調整機構部の回転盤に設けたブレーキシューにバネ押え板を介装した押え板を当接させ、その際に主軸に生成される回転トルクを計測し、計測した回転トルクと前記絶縁テープの巻数直径とから前記絶縁テープの張力を算出し、算出した張力に基づいてモータの正または逆回転を演算し、その演算した回転の下、前記バネ押え板および押え板を前記主軸の軸方向に沿って進退移動させて前記絶縁テープの張力を調整することを特徴とするテーピング装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−246555(P2006−246555A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54494(P2005−54494)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】