説明

テープカッター

【課題】揺動した切刃が戻る際に確実に上方向のループを形成することができ、テープ先端に確実に非接着部分を形成することができるテープカッターを提供することを目的とする。
【解決手段】ロール状の粘着テープを回転自在に支持するテープ支持部と、引き出されたテープを下方に導く下ガイドと、前記下ガイドの下をくぐったテープを上方に導く上ガイドと、前記上ガイドの下流側に配置されテープ引き出し方向に揺動可能な切刃と、前記切刃を前記上ガイドに向かって付勢する付勢手段とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状の粘着テープを任意の長さで切り取るためのテープカッターであって、特にテープ先端に非接着部分を形成することのできるテープカッターに関するものである。
【0002】
なお本出願において下方とは引き出された粘着テープの粘着面側をいい、上方とは引き出された粘着テープの非粘着面側(背面側)をいうものとし、必ずしも重力に対する上下方向をいうものではない。同様に本出願において上流側とは引き出された粘着テープのロール側をいい、下流側とは引き出された粘着テープの先端側をいうものとする。
【背景技術】
【0003】
長尺状の粘着テープを円管状の心材にロール状に巻回したテープは広く知られており、これを任意の長さでカットするための各種のテープカッターも広く利用されている。
【0004】
図10(a)は従来の据置型のテープカッターを説明する図である。図に示すように一般的なテープカッター(以下「一般品100」という。)は、ロール状の粘着テープ(以下「粘着テープ1」という。)を回転自在に支持するホイール101(テープ支持部)と、接着台102と、切刃103とを備えている。接着台102と切刃103との間には溝104が設けられている場合が多い。
【0005】
このようなテープカッターにおいて粘着テープ1をカットするための原理としては、切刃103の上流側において接着台102に粘着テープ1を貼着させ、下流側において手で下方向に粘着テープ1を引くことにより、粘着テープ1に切刃103を食い込ませてカットするものである。仮に接着台102がないとすれば、粘着テープ1は切刃103の先端を滑ってしまってカットすることができない。なお、可搬式の簡易なテープカッターでは、テープの回転を手で押さえてカットする構成のものもある。
【0006】
ところで粘着テープは、貼ったときから後に剥がすことが予定されている場合も多い。貼った粘着テープを剥がそうとしたとき、端部から爪で少しずつこじって引き起こさなくてはならず、その際に破れてしまって容易には剥がせない場合も多い。そこで、後に剥がすことが予定されている場合には、テープを貼る際に端部を折って非接着部分を形成することが個人的に行われている。この非接着部分をつかんで引くことにより、爪でこじる必要もなく、テープが破れてしまうこともなく、極めて容易に剥がすことが可能となる。しかし非接着部分の形成は毎度のこととなると面倒であり、あらかじめ粘着テープの先端を折り畳んで非接着部分が形成されていれば簡便である。
【0007】
従来からも、自動的にテープの先端をループさせて非接着部分を形成するテープカッターについて、例えば特開平09−100061号(特許文献1)、実開昭58−106346号(特許文献2)など、数多くの提案がなされている。
【0008】
これらの文献に記載されたテープカッターの基本的な原理はほぼ同様である。特許文献1に記載された構成を例に用いて説明すれば、図10(b)に示すように、接着台102の下流側に設けられた切刃103は、テープ引き出し方向に揺動可能に構成されている。また切刃103は、接着台102に向かって付勢する不図示のバネと、回動量を規制する不図示のストッパを備えている。上記構成によれば、粘着テープ1を引き出すことにより切刃103が回動し、やがて粘着テープ1が接着台102に貼り付く。そして粘着テープ1をカットした後に切刃103が戻ることによりループ1aが形成され、非接着部分(タブ)が粘着テープ1の先端に形成される。
【0009】
また特許文献1には、接着台をローラとした構成が記載されている。これによりテープの引き出しが容易になるとしている(公報の段落0018、図5参照)。また特許文献2には、切刃の上流側に一体的に接着台を設けた構成が記載されている。これによりカットされたテープの先端は切刃に設けられた接着台に接着する構成となっている(公報の図1の接着保持板4を参照)。
【特許文献1】特開平09−100061号
【特許文献2】実開昭58−106346号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし上記従来のテープカッターにおいては、動作の確実性において以下に示すような問題があった。
【0011】
まず図10(c)に示すように、粘着テープ1が接着台102に確実に接着しないため、時おり切刃103が戻る際に粘着テープ1が戻ってしまってループが形成されない場合がある。また図10(d)に示すように、カットされた粘着テープ1の先端が切刃103に接着せず、切刃103が戻る際に粘着テープ1の先端が残されて垂れ下がる場合がある。また図10(e)に示すように、ループ1aが下方に向かって形成されてしまい、非接着部分が形成されない場合がある。
【0012】
上記いずれの現象が生じても、カットした粘着テープ1の先端に非接着部分は形成されない。そして上記いずれの特許文献の技術においても、確実に非接着部分を形成するには到っていない。
【0013】
そこで本発明は、揺動した切刃が戻る際に確実に上方向のループを形成することができ、テープ先端に確実に非接着部分を形成することができるテープカッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係るテープカッターの代表的な構成は、ロール状の粘着テープを回転自在に支持するテープ支持部と、引き出されたテープを下方に導く下ガイドと、前記下ガイドの下をくぐったテープを上方に導く上ガイドと、前記上ガイドの下流側に配置されテープ引き出し方向に揺動可能な切刃と、前記切刃を前記上ガイドに向かって付勢する付勢手段とを備えたことを特徴とする。これにより、テープは下方向から上ガイドに到達し、切刃に到ることとなる。従って上ガイドに確実に接着しうると共に、上ガイドに接着したテープは上方向を向きやすくなり、切刃が戻る際にテープが上方向にループしやすくなる。
【0015】
前記下ガイドはローラであることが望ましい。これによりテープを引くための力を軽くすることができる。
【0016】
前記切刃の下流側に、テープが接着して前記切刃の揺動開始を補助するための接着部を備えることが望ましい。これにより、切刃を確実に揺動させることができる。特に、切刃を上ガイドよりも下に位置させた場合に有効である。
【0017】
前記切刃は、テープ引き出し方向の下流側に向かって傾斜していることが望ましい。より具体的には、10°〜40°程度、さらに好ましくは20°程度とすることが望ましい。カットしたテープは切刃の裏側に接着するため、引き出し方向上流側に向かって下方に向いてしまうが、このように切刃を傾斜させることによりその方向性を緩和させることができる。
【0018】
前記切刃の上流側かつ前記上ガイドの下方に、前記切刃と前記上ガイドとの間のテープが下方にループした際にこれと接触して突き上げるための突き上げ部を備えることが望ましい。これにより、仮にテープが下方にループしてしまった場合でも、上方へと修正することができる。なお突き上げ部は、テープが接着しにくい素材または形状であることが望ましい。
【0019】
また、前記切刃は回転体に設けられており、前記回転体の回転軸は前記上ガイドよりも下方に配置され、かつテープ引き出し方向に直交しており、前記回転体の回動方向上流側には回動により前記上ガイドに当接して回動を規制するストッパ部を備えることが望ましい。これにより、部品点数を削減することができ、生産コストの低減化を図ることができる。
【0020】
前記回転体は円柱に切欠部を設けたドラムであって、前記切欠部内に前記上ガイドが位置するように配置され、前記切欠部の下流側に前記切刃を設け、前記切欠部の上流側の壁面が前記ストッパ部を構成することでもよい。これにより構造の簡略化を図ることができ、部品精度を緩和し、強度向上による材質選択の幅の増加させることができ、ひいては生産コストの低減化を図ることができる。
【0021】
前記回転体の回転を規制および規制解除するための係止部材を備えていることが好ましい。回転を規制することにより、通常のテープカッターと同様に非接着部分を形成しないテープカッターとして利用することができる。
【0022】
前記回転体の外周面であって前記切刃より下流側に段部を設け、引き出したテープの上から前記段部を押さえることにより前記回転体の回動開始を補助するよう構成することが望ましい。これにより、回転体をより確実に回転させることができる。
【0023】
前記上ガイドはテープ引き出し方向に直交する棒体であって、上流側に曲面を有し、かつ少なくとも下流側に平面部を備えていることが好ましい。上ガイドの上流側を曲面とすることにより、平面とする場合に比して角度を厳密に調整する必要がなく、またテープを引く力を軽くすることができる。
【0024】
前記平面部の上縁にテーパ面を形成するか、または平面部がテープ引き出し方向上流側に向かって傾斜していることが望ましい。テープは曲面と接着した下流側端部の接線に沿うが、このように構成したことにより接線を上方向に向けることができ、切刃が戻る際により確実に上方向にループを形成することができる。
【0025】
前記上ガイドはローラであって、前記切刃の上流側に設けられ該切刃と共に揺動する接着台を備え、前記下ガイドは揺動可能であって、該下ガイドの下をくぐったテープを下方に付勢することが望ましい。これによりテープを引く力を軽くすることができ、また切刃が戻る際に下ガイドがテープを引くために確実に上方向にループを形成することができる。
【0026】
前記接着台の上流側端部は、テープをカットした際に前記上ガイドと前記接着台とを結ぶ直線に対して上方向に傾斜していることが好ましい。これにより、より確実に上方向にループを形成することができる。
【0027】
前記下ガイドは、自重により、または付勢手段によりテープを下方に付勢することができる。自重によれば構造の簡略化と耐久性を図ることができ、付勢手段によれば動作の確実性を増すことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、揺動した切刃が戻る際に確実に上方向のループを形成することができ、テープ先端に非接着部分を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明に係るテープカッターの実施例について説明する。以下の説明において具体的な数値、構造、材質などは、特に断りのある場合を除き一般的なものであって一例に過ぎず、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
本発明に係るテープカッターの第一実施例について説明する。図1は第一実施例に係るテープカッターの全体構成図、図2は動作を説明する図、図3は他の構成例を説明する図、図4は回転体の回動の開始を説明する図である。
【0031】
(構成の説明)
図1に示すように、本実施例に係るテープカッター2は、ロール状の粘着テープ1を回転自在に支持するホイール11(テープ支持部)と、引き出された粘着テープ1を下方に導く下ガイド12と、下ガイド12の下をくぐったテープを上方に導く上ガイド13と、上ガイド13の下流側に配置された切刃14とを備えている。切刃14は回転体15に保持されている。回転体15の回転軸は上ガイド13よりも下方に配置され、かつテープ引き出し方向に直交しており、テープ引き出し方向に揺動可能に構成される。テープカッター2の本体にはストッパ17が設けられ、回転体15の回動角を規制している。また回転体15にはバネ16(付勢手段)が取り付けられており、切刃14を上ガイド13に向かって付勢している。
【0032】
粘着テープ1はロールから引き出された後に、下ガイド12の下をくぐって上ガイド13の上を通り、切刃14へと到るようにセットされる。下ガイド12は回転自在のローラであって、さらに粘着テープ1の非接着面が当接するために、粘着テープ1を引くための力は極めて軽くなっている。
【0033】
上ガイド13はテープ引き出し方向に直交する棒体であって、上流側に円弧面13a(曲面)を有し、かつ下流側および下面に平面部13b、13cを備えている。粘着テープ1は上ガイド13の円弧面13aに接触して、引き出される際も常に半ば接着した状態となる。しかし接着面が円弧(円柱の側面)であることから、平面である場合と比べると軽い力で粘着テープ1を引き出すことができる。
【0034】
ここで下ガイド12の下端は、引き出した粘着テープ1と上ガイド13の上端とを結ぶ直線よりも下方にある。すなわち、粘着テープ1は常に下ガイド12に当接し、上ガイド13に対する粘着テープ1の進入角を規定する。
【0035】
切刃14は、回転体15が上ガイド13に当接した位置(以下「初期位置」という。)において、その先端の高さが上ガイド13の上端とほぼ等しい高さに設定される。また切刃14は、テープ引き出し方向の下流側に向かって10°〜40°程度、さらに好ましくは20°程度傾斜して設けられている。回転体15には、切刃14の下流側に隣接して接着部15aを備え、また切刃14の下流側かつ回転体15の下方に段部15bを備えている。
【0036】
(動作の説明)
次に、上記構成のテープカッター2の動作について説明する。図2(a)に示すように、使用者が手で粘着テープ1を引くことにより、回転体15はバネ16の弾性力に抗して回転を開始する。なお、粘着テープ1が切刃14にあたらないように、若しくは軽く擦る程度となるように若干上方に向かって引き出すことにより、任意の長さのテープを引き出すことができる。
【0037】
図2(b)に示すように、回転体15が回動すると、やがてストッパ17によって回転体15の回動が規制される。ここでさらに粘着テープ1を引くことにより、切刃14によってテープがカットされる。このとき若干下方に向かって引けばカットしやすい。
【0038】
図2(c)に示すように、粘着テープ1がカットされた後は、回転体15はバネ16の付勢力によって回動し、上ガイド13に当接して停止する。このとき粘着テープ1は、切刃14の先端と、上ガイド13の円弧面13aとに接着しており、上方に向かってループ1aが形成される。このループ1aを次回使用時に把持することにより、非接着部分(タブ)が粘着テープ1の先端に形成される。このようにタブが形成された粘着テープ1を用いれば、貼着した後にも容易に剥離させることが可能となる。
【0039】
(動作を確実にするための構成の説明)
次に、図10を用いて説明したような不具合を発生せず、確実にループ1aを形成させるための構成について説明する。
【0040】
まず、本実施例の構成にあっては、下ガイド12によって粘着テープ1は下方向から上ガイド13に到達し、切刃14に到る。従って粘着テープ1は上ガイド13に確実に接着するため、図10(c)に示したように切刃が戻る際に粘着テープ1が戻って垂れてしまうことを防止することができる。
【0041】
次に、本実施例の構成にあっては、切刃14がテープ引き出し方向の下流側に向かって傾斜して設けられている。これにより、カットされた粘着テープ1の先端は、切刃14が垂直に立てられている場合に比して、より切刃14の裏側に接着しやすくなる。従って図10(d)に示したように、切刃が戻る際に粘着テープ1の先端が残されて垂れ下がってしまうことを防止することができる。
【0042】
次に、図10(e)に示したようにループ1aが下方に形成されず、確実に上方に形成するための構成について説明する。本実施例のように切刃14を傾斜させない場合にあっても、粘着テープ1の先端は切刃の裏側にわずかに接着するため、粘着テープ1の先端は引き出し方向上流側に向かって下を向き、下方にループ1aを形成しやすい。しかし上記のように切刃14を傾斜させて構成したことにより、この方向性を緩和し、上方へのループ1aが形成されやすくなっている。
【0043】
また、下ガイド12によって粘着テープ1は下方向から上ガイド13へと到るために、上ガイドに接着したテープは上方向を向きやすくなる。
【0044】
さらに、仮に上ガイド13が完全な丸棒であった場合、粘着テープ1をカットする際には切刃14が下方向に向くことから、図3(a)に示すように接着部分の接線も下方向を向いてしまう。このため切刃14が戻る際には、下方に向かってループ1aが形成されやすい。しかし本実施例においては上ガイド13の下流側に平面部13bを設けていることから、図3(b)に示すように、粘着テープ1の接着部分の接線は円弧面13aの下流側端部の接線に沿う。このため切刃14が戻る際には、上方へのループ1aが形成されやすくなる。
【0045】
なお、図3(c)に示すように、円弧面13aの下流側端部の接線がさらに上方に向くように、上ガイド13の上縁を断面の円の中心よりも上流側に配置することでも良い。これを実現するための上ガイド13の断面形状は様々なものが考えられ、例えば上ガイド13のテープ引き出し方向の厚みを円の半径よりも薄くしたり、平面部13bの上縁にテーパ13dを設けたり、平面部13bをテープ引き出し方向上流側に向かって傾斜させることでもよい。さらには円弧面13aを円の一部ではなく、楕円の一部、または任意の曲面とすることができる。
【0046】
ただしその程度については、下ガイド12から導かれた粘着テープ1が円弧面13aに接着される面積を確保すること、および切刃14に向かう粘着テープ1が平面部13bまたはテーパ13dに接着してしまわないことについて留意すべきである。具体的には、断面の円の中心から上ガイド13の上縁までの角度αを0〜25°程度の範囲内とすることが好ましい。
【0047】
上記のように、切刃14と上ガイド13の両側において、上方にループ1aが形成されやすくなっている。従って、下方にループ1aが形成されることなく、確実に非接着部分(タブ)を形成することができる。
【0048】
また、図4(a)に示すように、粘着テープ1の硬度および粘着力によっては切刃14の刃先を滑ってしまい、回転体15が回転を開始しない場合がある。しかし本実施例においては切刃14の下流側に隣接して接着部15aを備えていることから、図4(b)に示すように若干下方に向かって引くことにより粘着テープ1を接着部15aに接着させ、より確実に回転体15の回動を開始させることができる。
【0049】
さらに図4(c)に示すように、切刃14の下流側かつ回転体15の下方に備えた段部15bは、下流側に向かって突出しており、引き出したテープの上から押圧しやすくなっている。従って図に示すように段部15bを押すことにより、確実に回転体15の回動を開始させることができる。
【0050】
なお、上ガイド13の円弧面13aに粘着テープ1が接着することは、粘着テープ1を引く力を軽くするのみでなく、角度を厳密に調整する必要がないという効果も有している。仮に上ガイド13の接着面が平面であるとすれば、下ガイド12により規定された角度とその平面が傾いている場合、所望の接着面積が得られない。このとき粘着テープ1を引く力は極めて軽くなるが、切刃14によってカットする際にも滑ってしまうという問題がある。しかし接着面を円弧面13aとしたことにより、上ガイド13の部品精度または取付精度が低い場合でも確実に接着することができ、好適にカットすることが可能となる。
【0051】
上記説明した如く、本実施例に係るテープカッター2によれば、揺動した切刃14が戻る際に確実に上方向のループ1aを形成することができ、テープ先端に非接着部分を形成することができる。
【0052】
[第二実施例]
本発明に係るテープカッターの第二実施例について説明する。図5は第二実施例に係るテープカッターの全体構成図、図6はテープカッターの要部説明図、図7は動作を説明する図である。上記第一実施例と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
(構成の説明)
図5に示すように、本実施例に係るテープカッター3は、上記第一実施例にて説明した回転体15に代えて、ドラム20を有している点で異なっている。
【0054】
ドラム20は円柱に切欠部21を備え、この切欠部21内に上ガイド13が位置するように配置されて、テープ引き出し方向に回転自在に支持されている。切欠部21の下流側には、切刃14が設けられている。図6(a)に示すように、ドラム20にはバネ16(付勢手段)が取り付けられており、切刃14を上ガイド13に向かって付勢している。切欠部21の上流側の壁面21aはドラム20が回転することによって上ガイド13に衝突するため、回動角を規制するためのストッパ部を構成している。
【0055】
またドラム20の切刃14より下流側に隣接して接着部20aが設けられ、切刃14の下流側かつドラム20の下方に段部20bを備えている。これら接着部20a、段部20bは、図4を用いて説明した回転体15の接着部15a、段部15bと同様の作用を有している。
【0056】
さらに切刃14の上流側かつ上ガイド13の下方には、突き上げ部21bを備えている。これにより、切刃14と上ガイド13との間の粘着テープ1が下方にループした際にこれと接触して突き上げるため、仮に粘着テープ1が下方にループしてしまった場合でも、上方へと修正することができる。なお突き上げ部21bは、テープが接着しにくい素材(例えば表面の粗い樹脂素材)または形状(例えば先端が鋭利に突出した形状)であることが望ましい。
【0057】
上記のように構成することにより、回転体の構造の簡略化を図ることができ、部品精度を緩和し、強度向上による材質選択の幅の増加させることができる。また切欠部21の壁面21aによってストッパ部を構成したことにより、部品点数を削減することができる。これらのことから、生産コストの低減化を図ることができる。
【0058】
また図6(b)に示すように、テープカッター3にドラム20の回転を規制および規制解除するための係止部材18を設け、ドラム20には係止部材18と係合するための凹部21cを設けることでもよい。このように回転を規制することにより、通常のテープカッターと同様に非接着部分を形成しないテープカッターとしても利用することができる。なお、係止部材の形状は図示のものに限定されず、例えばかんぬき式のものなど、様々な構成を取ることができる。
【0059】
(動作の説明)
次に、上記構成のテープカッター3の動作について説明する。図7(a)に示すように、使用者が手で粘着テープ1を引くことにより、ドラム20はバネ16の弾性力に抗して回転を開始する。
【0060】
図7(b)に示すように、ドラム20が回動すると、やがて壁面21aが上ガイド13に当接してドラム20の回動が規制される。ここでさらに粘着テープ1を引くことにより、切刃14によってテープがカットされる。
【0061】
図7(c)に示すように、粘着テープ1がカットされた後は、ドラム20はバネ16の付勢力によって回動し、上ガイド13に当接して停止する。このとき粘着テープ1は、切刃14の先端と、上ガイド13の円弧面13aとに接着しており、上方に向かってループ1aが形成される。このループ1aを次回使用時に把持することにより、非接着部分(タブ)が粘着テープ1の先端に形成される。
【0062】
なお、図7(d)に示すように、仮に下方にループ1aが形成された場合であっても、突き上げ部21bに当接することにより粘着テープ1が突き上げられ、上方へと修正することができる。
【0063】
上記説明した如く、本実施例に係るテープカッター3によれば、揺動した切刃14が戻る際に確実に上方向のループ1aを形成することができ、テープ先端に非接着部分を形成することができる。
【0064】
[第三実施例]
本発明に係るテープカッターの第三実施例について説明する。図8は第三実施例にかかるテープカッターの要部構成図、図9は動作を説明する図である。上記第一および第二実施例と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
(構成の説明)
図8に示すように、本実施例にかかるテープカッター4は、上記上ガイド13に代えて、回転自在なローラからなる上ガイドローラ30を備えている。また切刃14の上流側には、切刃14と共に揺動する接着台21cを備えている。また下ガイド12は、本体に対して回転自在に支持されたアーム31に取り付けられており、ほぼ上下方向に揺動可能となっている。なお、アーム31の上下の揺動幅を数ミリ程度に規制しておくことが好ましい。
【0066】
粘着テープ1は、上記実施例と同様に、下ガイド12の下をくぐった後に上ガイドローラ30の上を通り、切刃14へと到るようにセットされる。従って粘着テープ1を引き出す際には下ガイド12は持ち上げられ、下ガイド12およびアーム31の自重によりテープを下方に付勢する。
【0067】
(動作の説明)
次に、上記構成のテープカッター4の動作について説明する。図9(a)に示すように、使用者が手で粘着テープ1を引くことにより、ドラム20はバネ16(図6(a)参照)の弾性力に抗して回転を開始する。このとき、上ガイドがローラによって構成されていることから、より軽い力で粘着テープ1を引くことができる。
【0068】
図9(b)に示すように、ドラム20が回動すると、やがて壁面21aが上ガイドローラ30に当接してドラム20の回動が規制される。このとき粘着テープ1は切刃14の上流側において接着台21cに接着しており、下流側において手で下方向に粘着テープ1を引くことにより、粘着テープ1に切刃14を食い込ませてカットすることができる。すなわち上記第一および第二実施例においては上ガイド13に粘着テープ1を接着させてカットしていたところ、本実施例で上ガイドはローラであるために、代わりに接着台21cを設けたものである。
【0069】
図9(c)に示すように、粘着テープ1がカットされた後は、ドラム20はバネ16の付勢力によって回動し、上ガイドローラ30に当接して停止する。このとき粘着テープ1は、接着台21cと、上ガイドローラ30とに接着している。ここで下ガイド12が粘着テープ1を下方向に付勢していることから、粘着テープ1が上流側へと引かれ、上ガイドローラ30が回転する。これにより上ガイドローラ30に接着した粘着テープ1は上方向に向くため、確実に上方向のループ1aが形成される。
【0070】
なお、仮に下ガイド12が粘着テープ1を引かないとすれば、上ガイドローラ30に接着した粘着テープ1の接線は、まっすぐ接着台21cへと向かったままとなる。すると切刃14が戻る際に、ループ1aは上方向にいく場合もあるが、下方向に行く場合もあり、動作の確実性が低くなってしまう。しかし上記構成によれば半ば強制的に上方向にループ1aを形成することができるため、動作の確実性を極めて高くすることができる。
【0071】
また、接着台21cの上流側端部は、粘着テープ1をカットした際に上ガイドローラ30の上側接線と接着台21cとを結ぶ直線に対して上方向に傾斜していることが好ましい。これにより、より確実に上方向にループを形成することができる。
【0072】
上記説明した如く、本実施例に係るテープカッター4によれば、上ガイドをローラによって構成したことにより、粘着テープ1を引く力を更に軽くすることができる。また、下ガイド12が1を下方に付勢するよう構成したことにより、揺動した切刃14が戻る際に下ガイドがテープを引くために確実に上方向のループ1aを形成することができる。
【0073】
なお、本実施例において下ガイド12は自重によって粘着テープ1を付勢するよう説明したが、バネなどの付勢手段を設けることにより、さらに付勢力を増加させることができる。自重のみによれば構造の簡略化と耐久性を図ることができ、付勢手段を追加すれば動作の確実性を増すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、テープ先端に非接着部分を形成することのできるテープカッターとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第一実施例に係るテープカッターの全体構成図である。
【図2】動作を説明する図である。
【図3】他の構成例を説明する図である。
【図4】回転体の回動の開始を説明する図である。
【図5】第二実施例に係るテープカッターの全体構成図である。
【図6】テープカッターの要部説明図である。
【図7】動作を説明する図である。
【図8】第三実施例にかかるテープカッターの要部構成図である。
【図9】動作を説明する図である。
【図10】従来のテープカッターを説明する図である。
【符号の説明】
【0076】
1 …粘着テープ
1a …ループ
2〜4 …テープカッター
11 …ホイール
12 …下ガイド
13 …上ガイド
13a …円弧面
13b …平面部
13c …平面部
13d …テーパ
14 …切刃
15 …回転体
15a …接着部
15b …段部
16 …バネ
17 …ストッパ
18 …係止部材
20 …ドラム
20a …接着部
20b …段部
21 …切欠部
21a …壁面
21b …突き上げ部
21c …接着台
30 …上ガイドローラ
31 …アーム
100 …一般品
101 …ホイール
102 …接着台
103 …切刃
104 …溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状の粘着テープを回転自在に支持するテープ支持部と、
引き出されたテープを下方に導く下ガイドと、
前記下ガイドの下をくぐったテープを上方に導く上ガイドと、
前記上ガイドの下流側に配置されテープ引き出し方向に揺動可能な切刃と、
前記切刃を前記上ガイドに向かって付勢する付勢手段とを備えたことを特徴とするテープカッター。
【請求項2】
前記切刃は回転体に設けられており、
前記回転体の回転軸は前記上ガイドよりも下方に配置され、かつテープ引き出し方向に直交しており、
前記回転体の回動方向上流側には回動により前記上ガイドに当接して回動を規制するストッパ部を備えることを特徴とする請求項1記載のテープカッター。
【請求項3】
前記回転体は円柱に切欠部を設けたドラムであって、前記切欠部内に前記上ガイドが位置するように配置され、前記切欠部の下流側に前記切刃を設け、前記切欠部の上流側の壁面が前記ストッパ部を構成することを特徴とする請求項2記載のテープカッター。
【請求項4】
前記上ガイドはテープ引き出し方向に直交する棒体であって、上流側に曲面を有し、かつ少なくとも下流側に平面部を備えていることを特徴とする請求項1記載のテープカッター。
【請求項5】
前記上ガイドはローラであって、
前記切刃の上流側に設けられ該切刃と共に揺動する接着台を備え、
前記下ガイドは揺動可能であって、該下ガイドの下をくぐったテープを下方に付勢することを特徴とする請求項1記載のテープカッター。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−137601(P2007−137601A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334165(P2005−334165)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(598112730)株式会社アサヒテックコーポレーション (6)
【Fターム(参考)】