説明

テープ経路維持機構、テープカートリッジおよびテープ印刷装置

【課題】テープ体から繰り出したテープ状部材の搬送経路を適切な位置に維持することができると共に、テープ体とテープ処理部との距離を短縮することができるテープ経路維持機構等を提供する。
【解決手段】印刷テープ51aに所定の処理を行うために設けられたテープ処理部に対し、印刷テープ51aを、テープコア51bに巻回してなるテープ体51から繰り出して搬送するための印刷テープ51aの搬送経路を、所定の位置に維持するテープ経路維持機構55であって、印刷テープ51aの繰出し開始点Pにおけるテープ体51の法線方向に沿って延在し、テープコア51bを回転自在に軸支すると共に、テープ体51の法線方向への移動を許容する軸受部56と、印刷テープ51aの繰り出しに伴って縮径するテープ体51の法線方向への移動に対し、繰出し開始点Pを所定の位置に維持する繰出し開始点維持手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ状部材を、テープコアに巻回してなるテープ体から繰り出して搬送するためのテープ状部材の搬送経路を、所定の位置に維持するテープ経路維持機構、テープカートリッジおよびテープ印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロールシート(テープ状部材)が巻回保持されたロールシートホルダが装着されるロールシートホルダ収納部と、ロールシートを繰り出し、搬送するためのプラテンローラーと、搬送されたロールシートに印刷処理を行うサーマルヘッドと、を備えたテープ印刷装置が知られている(特許文献1参照)。
繰り出されたロールシートは、ロールシートホルダ収納部の前側で水平に設けられた載置部を通過し、その先に配設されたプラテンローラーおよびサーマルヘッドにより印刷処理が行われる。そして、シート排出口から印刷済みのロールシートが外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−119861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のテープ印刷装置では、ロールシート(テープ状部材)が消費され、ロールシートホルダに巻回された巻き数が少なくなると、その巻径の減少に伴ってロールシートの繰出し開始点も軸心方向へと移動する。すなわち、その繰出し開始点から載置部までのロールシートの搬送経路が常に変化する。このため、ロールシートのプラテンローラーへの送り込み角度を一定にするために載置部(ガイド)を設ける必要があると共に、その搬送経路の変化を許容するように、繰出し開始点から載置部までの間の空間を確保する必要があった。すなわち、ロールシートホルダ収納部とプラテンローラーとの間に一定のスペース(距離)が必要となり、装置全体の小型化や内部機構の配置の自由度確保に制約を生ずる問題があった。
【0005】
本発明は、テープ体から繰り出したテープ状部材の搬送経路を適切な位置に維持することができると共に、テープ体とテープ処理部との距離を短縮することができるテープ経路維持機構、テープカートリッジおよびテープ印刷装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のテープ経路維持機構は、テープ状部材に所定の処理を行うために設けられたテープ処理部に対し、テープ状部材を、テープコアに巻回してなるテープ体から繰り出して搬送するためのテープ状部材の搬送経路を、所定の位置に維持するテープ経路維持機構であって、テープ状部材の繰出し開始点におけるテープ体の法線方向に沿って延在し、テープコアを回転自在に軸支すると共に、テープ体の法線方向への移動を許容する軸受部と、テープ状部材の繰り出しに伴って縮径するテープ体の法線方向への移動に対し、繰出し開始点を所定の位置に維持する繰出し開始点維持手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、テープ体は、テープ状部材の繰り出しに伴い巻径が小さくなるに従って、軸受部にガイドされて、テープ体の法線方向に移動する。これにより、巻径が小さくなること(縮径)に伴いテープ状部材の繰出し開始点が一定に保たれる。すなわち、繰出し開始点からテープ処理部までのテープ状部材の搬送経路が変化することがなく、当該搬送経路を一定に維持することができる。また、テープ体からテープ処理部までの間に搬送経路を一定にガイドするための部材を設ける必要がないため、搬送経路を短くすることができる。
このように、テープ状部材の搬送経路を一定にすることにより、繰出し開始点からテープ処理部までの空間がデッドスペースとなることがなく、小型化に資すると共に、内部機構の配置の自由度を確保することが容易となる。また、搬送経路を変更または規制するための部材を設ける必要がなく、搬送経路を単純化することができるため、テープ詰り等の不具合の発生を防止することができる。
【0008】
この場合、テープコアは水平軸を中心に回転し、且つ、テープ状部材はテープ体の鉛直方向下側から繰り出され、繰出し開始点維持手段は、自重により移動するテープ体を所定の位置で受けるテープ受け部を有していることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、縮径に伴いテープ体自体の質量により自然に下方へ移動する。このため、テープ体を移動させる機構(ばね等)を設ける必要がなく、機構の単純化および小型化を図ることができる。
【0010】
本発明のテープカートリッジは、上記したテープ経路維持機構を、カートリッジケースに設けたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、テープ状部材の繰出し開始点からテープ処理部までにおいて、安定したテープ状部材の繰り出しを行うことができる。これにより、カートリッジケース内でテープ詰りの発生を防止することができる。
【0012】
本発明のテープ印刷装置は、上記したテープカートリッジと、インクリボンを巻回したリボンコア、および繰り出したインクリボンを巻き取る巻取りコアをリボンケースに収容したリボンカートリッジと、テープ処理部に設けられ、テープ体からテープ状部材を繰り出して下流へと送りながら、テープ状部材に所定の印刷処理を行う印刷手段と、テープカートリッジと印刷手段との間であって、リボンカートリッジから露出するインクリボンから外れた位置に配設され、繰り出されたテープ状部材の有無を検出する光電検出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、テープ状部材の繰出し開始点からテープ処理部(印刷手段)までの搬送経路が一定であるため、当該搬送経路上に臨むテープ状部材と、光電検出手段との距離を一定に維持することができる。このため、光電検出手段によるテープ状部材の検出を確実に、且つ、安定して行うことができる。
また、光電検出手段は、繰り出されたインクリボンを避けた位置に配設されているため、インクリボンをテープ状部材として誤検出することもない。これにより、テープコアに巻回したテープ状部材が全て繰り出されたこと(テープ状部材が切れたこと)を確実に認識することができ、印刷処理の停止やテープ体交換の報知等の適切な処置を行うための契機とすることができる。
【0014】
この場合、光電検出手段の検出子側には、検出を許容すると共に検出子とテープ状部材との距離が一定となるように、テープ状部材が摺接する摺接部材が配設されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、テープ状部材と摺接部材とが摺接しているため、搬送経路に関わらず、テープ状部材と光電検出手段との距離が変わることがない。これにより、搬送中のテープ状部材が、搬送経路上において僅かに揺らぐ場合であっても、テープ状部材と光電検出手段との間隔を一定に保つことができ、確実、且つ、安定したテープ状部材の検出を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】テープ印刷装置の外観斜視図である。
【図2】テープ印刷装置の蓋部を開放し、テープカートリッジおよびリボンカートリッジを装着した状態の外観斜視図である。
【図3】テープ印刷装置の蓋部を開放し、テープカートリッジおよびリボンカートリッジを取り外した状態の外観斜視図である。
【図4】(a)は、テープ印刷装置の断面図、(b)は、第1摺接部材の変形例の断面図である。
【図5】(a)は、テープカートリッジの正面図、(b)は、テープカートリッジの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態であるテープ印刷装置について説明する。このテープ印刷装置は、ロール状に巻回した印刷テープを収納したテープカートリッジおよびインクリボンを収納したリボンカートリッジを装着し、印刷テープおよびインクリボンを繰り出し、併走させながら印刷を行い、印刷テープの印刷済み部分を切断してラベルを作成するものである。
【0018】
図1ないし図4を参照して、テープ印刷装置1について説明する。図1は、テープ印刷装置1の外観斜視図である。図2は、テープ印刷装置1の蓋ケース13を開放し、テープカートリッジ12およびリボンカートリッジ15を装着した状態の外観斜視図である。図3は、テープ印刷装置1の蓋ケース13を開放し、テープカートリッジ12およびリボンカートリッジ15を取り外した状態の外観斜視図である。図4(a)は、テープ印刷装置1の断面図、図4(b)は、第1摺接部材26の変形例の断面図である。なお、以下の説明では、各図に示すように上下および前後左右を規定する。
【0019】
図1ないし図3に示すように、テープ印刷装置1は、その主要な外殻を形成する本体ケース10と、本体ケース10内に組み込まれた搬送アッセンブリー11と、搬送アッセンブリー11内に着脱自在に装着されたテープカートリッジ12と、本体ケース10上を覆うようにして開閉自在に設けられた蓋ケース13と、蓋ケース13内に組み込まれた印刷アッセンブリー14と、印刷アッセンブリー14内に着脱自在に装着されたリボンカートリッジ15と、を備えている。また、テープ印刷装置1は、制御装置16(パーソナルコンピューター等)と接続されており、ユーザーは、制御装置16を介してテープ印刷装置1を操作し、印刷動作を実行させる。
【0020】
本体ケース10の前方中央には、印刷された印刷テープ51aを外部に排出するためのシート排出口20が設けられている。
【0021】
搬送アッセンブリー11は、テープカートリッジ12を装着するテープ装着部21と、テープカートリッジ12から印刷テープ51aを繰り出しながら送るテープ搬送機構22と、印刷済みの印刷テープ51aを切断するカッター機構23と、搬送経路上に繰り出された印刷テープ51aの有無を検出するテープ検出機構24と、を備えている。
【0022】
テープ装着部21は、本体ケース10の後方において内側に窪入形成されており、テープカートリッジ12を、いわゆる中寄せ(左右方向中心)位置にセットできるようになっている。
【0023】
テープ搬送機構22は、いわゆるプラテンローラー22aと、これを回転駆動する搬送駆動装置(図示省略)と、で構成されており、テープ装着部21の前方に配設されている。プラテンローラー22aは、テープカートリッジ12から繰り出された印刷テープ51aの下面に当接し、印刷テープ51aを、その前方に連通しているシート排出口20へと搬送する(図4(a)参照)。
【0024】
図4(a)に示すように、カッター機構23は、印刷テープ51aを挟んで対抗するように上下にそれぞれ臨む、いわゆる鋏式のものであり、プラテンローラー22aの前方(印刷テープ51aの搬送経路下流側)に設けられている。印刷処理が終了した印刷テープ51aは、カッター機構23により切断され、シート排出口20から外部に排出される。
【0025】
テープ検出機構24は、いわゆる反射型のフォトセンサーであり、テープカートリッジ12とテープ搬送機構22との間に設けられた第1摺接部材25に組み込まれた第1光電素子26と、カッター機構23の前方のシート排出口20に設けられ第2摺接部材27に組み込まれた第2光電素子28と、を有している。なお、請求項に言う「光電検出手段」とは、第1光電素子26および第2光電素子28を指す。
【0026】
第1摺接部材25および第2摺接部材27は、印刷テープ51aの搬送経路となるものであり、印刷テープ51aの最大幅と略同一幅でテーブル状に形成されている。また、第1摺接部材25の左右方向略中央には、第1光電素子26の光路となる第1開口部25aが形成され、同様に第2摺接部材27には、第2光電素子28の光路となる第2開口部27aが形成されている。第1光電素子26の検出子(発光部および受光部)は、第1摺接部材25の上端面から突出しないように第1開口部25a内に配設され、同様に、第2光電素子28の検出子(発光部および受光部)は、第2摺接部材27の上端面から突出しないように第2開口部27aに配設されている。そして、第1摺接部材25および第2摺接部材27の表面には、繰り出され、搬送された印刷テープ51aが摺接する。
【0027】
このように、テープ検出機構24は、各摺接部材25,27上の印刷テープ51aの検出が可能であると共に、後述するテープカートリッジ12のテープ経路維持機構55により、各光電素子26,28と印刷テープ51aとの距離が一定に維持されるようになっている。これにより、搬送中の印刷テープ51aが、搬送経路上において僅かに揺らぐ場合であっても、印刷テープ51aと各光電素子26,28との間隔を一定に保つことができ、確実、且つ、安定した印刷テープ51aの検出をすることができる。
【0028】
なお、印刷テープ51aとテープ検出機構24(各光電素子26,28)との間隔を一定に保つことができればよいため、例えば、図4(b)に示すように、第1摺接部材25の第1開口部25aに対し、略半球形状のカバー29を取り付けてもよい。この場合、カバー29は、テープ検出機構24による印刷テープ51aの検出を妨げないように透明であることが好ましい。また、第2摺接部材27に対し同様のカバー29を取り付けてもよい。
【0029】
図2に示すように、テープカートリッジ12は、印刷テープ51aをテープコア51bに巻回してなるテープ体51と、テープコア51bを回転自在に支持するカートリッジケース52と、を備えている。なお、テープカートリッジ12には、印刷テープ51aが交換可能に収納されており、幅や色などが異なる種類の印刷テープ51aに交換することができる。
【0030】
図2および図4(a)に示すように、蓋ケース13は、後端部に設けられたヒンジ30(図1参照)を中心に前方を跳ね上げるようにして回動可能に設けられ、搬送アッセンブリー11(テープ装着部21)を開放する開閉蓋として用いられる。また、蓋ケース13の開放により、印刷アッセンブリー14(リボン装着部31)を開放することとなる。これにより、テープカートリッジ12およびリボンカートリッジ15の交換が可能となると共に、各機構のメンテナンスが可能となる。
【0031】
印刷アッセンブリー14は、リボンカートリッジ15を装着するリボン装着部31と、印刷テープ51aに印刷処理を行う印刷機構32と、を備えている。
【0032】
リボン装着部31は、蓋ケース13の内側において、印刷機構32の後側に窪入形成された繰出装着部31aと、印刷機構32の前側に窪入形成された巻取装着部31bと、を有している。すなわち、リボンカートリッジ15は、印刷機構32を跨ぐようにしてリボン装着部31に装着される。
【0033】
印刷機構32は、いわゆるサーマルヘッド32aと、サーマルヘッド32aを駆動制御するヘッド駆動装置(図示省略)と、インクリボン41aがサーマルヘッド32aの発熱部に臨むように、サーマルヘッド32aの前後に配設され、インクリボン41aの走行路44を変更する一対のリボン経路変更軸32bと、で構成されている。
【0034】
図2および図4(a)に示すように、リボンカートリッジ15は、インクリボン41aをリボンコア41bに巻回してなるリボン体41と、使用後のインクリボン41aを巻き取る巻取りコア42と、リボンコア41bおよび巻取りコア42を回転自在に支持するリボンケース43と、を備えている。
【0035】
リボンケース43は、リボンコア41bを回転自在に収納する繰出ケース部43aと、巻取りコア42を回転自在に収納する巻取ケース部43bとを、インクリボン41aの走行路44を挟んで前後方向に連結して形成されている。リボン体41から繰り出されたインクリボン41aは、繰出ケース部43aに形成されたリボン送出口45から、露出して走行路44を通り、巻取ケース部43bに形成されたリボン引込口46に引き込まれ、巻取りコア42に巻き取られる。なお、リボンケース43は、黒色等の暗色に着色されている。
【0036】
リボンカートリッジ15をリボン装着部31にセットする際は、繰出ケース部43aを繰出装着部31aにセットし、巻取ケース部43bを巻取装着部31bにセットする。これにより、走行路44に繰り出されたインクリボン41aが、サーマルヘッド32aおよび一対のリボン経路変更軸32bに当接するようになっている。
【0037】
サーマルヘッド32aは、上側からインクリボン41aを介して印刷テープ51aに摺接し、プラテンローラー22aは、下側から印刷テープ51aに当接するように配設されている(図4(a)参照)。印刷テープ51aは、インクリボン41aを介してサーマルヘッド32aとプラテンローラー22aとの間に挟まれ、プラテンローラー22aの回動により、テープ体51から繰り出されながら、サーマルヘッド32aにより印刷処理がなされる。印刷処理後の印刷テープ51aは、シート排出口20へと送られ、他方、インクリボン41aは、巻取りコア42に巻き取られる。なお、サーマルヘッド32aおよびプラテンローラー22aは、印刷テープ51aの最大幅と略同一幅に形成されている。また、巻取りコア42およびプラテンローラー22aは、同期して回転する。
【0038】
ここで、テープ検出機構24の第1光電素子26と、リボンカートリッジ15の繰出ケース部43aとの位置関係について説明する。
【0039】
本実施形態に係る第1光電素子26(の検出子)は、暗色に着色された繰出ケース部43aに対向する位置に設けられている。すなわち、第1光電素子26は、リボンカートリッジ15から露出したインクリボン41aや一対のリボン経路変更軸32bから外れた位置において、印刷テープ51aの下面に臨み、搬送経路上の印刷テープ51aを検出するようになっている。このため、第1光電素子26は、インクリボン41aが印刷テープ51aと同系色である場合でも、インクリボン41aを印刷テープ51aとして誤検出することがない。これにより、テープコア51bに巻回した印刷テープ51aが全て繰り出されたこと(いわゆるテープエンド検出)を確実に認識することができ、印刷処理の停止やテープカートリッジ12の交換の報知等、適切な処置を行うための契機とすることができる。また、印刷テープ51aとしてダイカットテープを用いる場合等にも、正確な位置合せをすることができる。なお、第2光電素子28も同様に、巻取ケース部43bに対向しており、印刷テープ51aの排出を検出する。
【0040】
続いて、図4および図5を参照して、テープカートリッジ12について詳細に説明する。図5(a)は、テープカートリッジ12の正面図、図5(b)は、テープカートリッジ12の側面図である。テープカートリッジ12は、上述したように、テープ体51およびカートリッジケース52を備えている。
【0041】
テープ体51は、中空円筒状のテープコア51bの外周に印刷テープ51aを巻回して形成されている。テープ体51の両端面には、巻回した印刷テープ51aがバラけることを防止するための粘着シート51cが貼付されている。また、テープコア51bの軸方向両端には、テープ体51を、後述するカートリッジケース52の両側壁部54に回転自在に軸支するための軸支部材57が、それぞれ嵌合する。
【0042】
カートリッジケース52は、テープ体51の周面を受けるテープ受け部53と、テープ受け部53の左右方向両端に立設した一対の側壁部54と、各側壁部54に対しテープ体51を軸支すると共に、テープ体51からの印刷テープ51aの繰り出し位置を一定に維持するテープ経路維持機構55と、を備えている。
【0043】
テープ受け部53は、その後方が、テープ体51の周面に沿って湾曲して形成されており、印刷テープ51aの繰り出しに伴い回転するテープ体51の摺動を支持する。なお、テープ体51の摺動を円滑にするために、テープ受け部53は、合成樹脂で構成されていることが好ましい。
【0044】
テープ経路維持機構55は、各側壁部54に形成された軸受部56と、各軸受部56を介してテープコア51bの軸心に嵌合する一対の軸支部材57と、を有している。このテープ経路維持機構55は、印刷テープ51aがテープ体51から巻き解かれて繰り出される点(「繰出し開始点P」という。)から、テープ搬送機構22および印刷機構32までに至る印刷テープ51aの搬送経路を、所定の位置に維持することができるようになっている。
【0045】
各軸受部56は、各側壁部54の略中央から斜め下前方に向かって形成された角丸長方形の開口である。より詳細に説明すると、各軸受部56は、繰り出された印刷テープ51aが、繰出し開始点Pにおける接線であるとした場合に、繰出し開始点Pを通り、繰出し開始点Pにおける接線に垂直な方向、つまり、法線方向に沿って延在している。各軸受部56は、テープコア51bを回転自在に軸支すると共に、テープ体51(テープコア51b)の法線方向への移動を許容する。
【0046】
各軸支部材57は、各軸受部56を挿通し、テープコア51bの軸心に嵌合する嵌合部57aと、嵌合部57aに連なるフランジ状のダイヤル部57bと、を有している。各軸受部56を介して、各嵌合部57aをテープコア51bの左右(軸)方向両端に嵌合させることで、各軸支部材57とテープコア51bとが、不動に固定されると共に、各軸支部材57およびテープコア51bは、各軸受部56に対して回転自在に軸支されることとなる。なお、ユーザーは、各ダイヤル部57bを回すことにより、巻回した印刷テープ51aに弛みを除去することができる。
【0047】
本実施形態に係るテープ経路維持機構55では、印刷テープ51aが消費され、巻径が小さくなる(縮径)に従い、テープ体51(テープコア51b)が、軸受部56にガイドされて、自重により法線方向に移動する(図4(a)の二点鎖線参照)。これにより、テープ体51の縮径に伴い印刷テープ51aの繰出し開始点Pが変化(移動)することがない。すなわち、繰出し開始点Pから固定的に設けられたテープ搬送機構22および印刷機構32までの印刷テープ51aの搬送経路を一定に維持することができる。これにより、第1光電素子26と印刷テープ51aとの間隔を常に一定にすることができるため、誤検出を防止することができる。なお、本実施形態に係るテープ搬送機構22および印刷機構32は、搬送経路上において固定的に設けられている。
【0048】
また、印刷テープ51aの搬送経路を一定に維持することにより、繰出し開始点Pからテープ搬送機構22および印刷機構32までの空間がデッドスペースとなることがなく、テープ印刷装置1の小型化に資すると共に、テープ印刷装置1の内部機構の配置の自由度を確保することが容易となる。特に、テープ体51自体の質量により自然に下方へ移動するため、テープ体51の移動のための機構(ばね等)を設ける必要がなく、機構の単純化および小型化を図ることができる。
【0049】
さらに、当該搬送経路の変更または規制をするための部材を設ける必要がなく、当該搬送経路を単純化することができるため、印刷テープ51aの詰り等、不具合の発生を防止することができる。特に、カートリッジケース52内で印刷テープ51aの詰りの発生を有効に防止することができる。なお、請求項に言う「繰出し開始点維持手段」とは、テープ受け部53、側壁部54および軸支部材57を指す。なお、リボンカートリッジ15を省略し、印刷テープ51aとして感熱ロール紙を用いてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1:テープ印刷装置、12:テープカートリッジ、15:リボンカートリッジ、24:テープ検出機構、25:第1摺接部材、26:第1光電素子、41:リボン体、41a:インクリボン、41b:リボンコア、42:巻取りコア、43:リボンケース、51:テープ体、51a:印刷テープ、51b:テープコア、52:カートリッジケース、53:テープ受け部、54:側壁部、55:テープ経路維持機構、56:軸受部、57:軸支部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状部材に所定の処理を行うために設けられたテープ処理部に対し、
前記テープ状部材を、テープコアに巻回してなるテープ体から繰り出して搬送するための前記テープ状部材の搬送経路を、所定の位置に維持するテープ経路維持機構であって、
前記テープ状部材の繰出し開始点における前記テープ体の法線方向に沿って延在し、前記テープコアを回転自在に軸支すると共に、前記テープ体の前記法線方向への移動を許容する軸受部と、
前記テープ状部材の繰り出しに伴って縮径する前記テープ体の前記法線方向への移動に対し、前記繰出し開始点を所定の位置に維持する繰出し開始点維持手段と、を備えたことを特徴とするテープ経路維持機構。
【請求項2】
前記テープコアは水平軸を中心に回転し、且つ、前記テープ状部材は前記テープ体の鉛直方向下側から繰り出され、
前記繰出し開始点維持手段は、自重により移動する前記テープ体を所定の位置で受けるテープ受け部を有していることを特徴とする請求項1に記載のテープ経路維持機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載のテープ経路維持機構を、カートリッジケースに設けたことを特徴とするテープカートリッジ。
【請求項4】
請求項3に記載のテープカートリッジと、
インクリボンを巻回したリボンコア、および繰り出したインクリボンを巻き取る巻取りコアをリボンケースに収容したリボンカートリッジと、
前記テープ処理部に設けられ、前記テープ体から前記テープ状部材を繰り出して下流へと送りながら、前記テープ状部材に所定の印刷処理を行う印刷手段と、
前記テープカートリッジと前記印刷手段との間であって、前記リボンカートリッジから露出する前記インクリボンから外れた位置に配設され、繰り出された前記テープ状部材の有無を検出する光電検出手段と、を備えたことを特徴とするテープ印刷装置。
【請求項5】
前記光電検出手段の検出子側には、前記検出を許容すると共に前記検出子と前記テープ状部材との距離が一定となるように、前記テープ状部材が摺接する摺接部材が配設されていることを特徴とする請求項4に記載のテープ印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−116572(P2012−116572A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264719(P2010−264719)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】