説明

ディジタル信号復号装置

【課題】磁化転移性ノイズの影響に対してエラーレート性能を改善することが可能なディジタル信号復号装置を提供する。
【解決手段】
ブランチメトリック演算器400とACS演算器500とパスメモリ600により復号を行うビタビ復号器において、復号器入力信号の入力先を選択する復号器入力信号選択器100と、尤度関数を制御する尤度制御回路200と、制御された尤度関数に伴う定数を保持するレジスタと300を備え、各PR等化目標レベルにおいてノイズの影響による誤差分散値をパラメータとする複数の尤度関数を用いた復号方法により、磁化転移性ノイズに対する復号性能を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディジタル信号復号装置に関し、より詳細にはディジタル信号復号装置の磁化転移性ノイズに対して復号性能を改善する復号器の技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、長手記録方式のハードディスク装置での記録密度向上を実現する技術として、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式が用いられている。このPRML方式は、伝送路に適したパーシャルレスポンス(PR)特性に等化するPR等化器と、尤度関数に基づいて最も確からしい2値データ列に復号する最尤復号(ML)方式のディジタル信号復号装置とを組み合わせたものである。ここで、ML方式を実現するアルゴリズムの一つとしてビタビアルゴリズムがある。
【0003】
図12は従来のディジタル信号復号装置の構成を示すブロック図であり、300は定数を蓄えるレジスタ、900はブランチメトリック演算器、500はACS演算器、600はパスメモリである。
【0004】
PR等化器(図示せず)によって複数レベルからなる所望のPR特性に等化された入力信号は、ブランチメトリック演算器900において確からしさ(尤度)を表すブランチメトリック演算が行われる。このとき、ハードディスク装置の再生信号に含まれるノイズが白色ガウスノイズであり、且つ入力信号の各レベルにおけるノイズの分散が等しいと仮定して、ガウス分布を尤度関数として利用する。そして、尤度関数によってブランチメトリック演算で用いる定数を求め、この定数をレジスタ300に予め与えておく。
【0005】
ACS演算器500では、ビタビアルゴリズムに基づいて、ブランチメトリックを用いたACS(Add Compare Select)演算を行い、パス遷移信号を出力する。パスメモリ600ではパス遷移信号を用いて2値データ系列の選択を行い、復号データを出力する。
【0006】
一方、従来の長手記録方式に比べて更なる高記録密度の達成が期待できる記録方式として垂直記録方式の研究が行われている。垂直記録方式は記録媒体の面内方向に対して垂直方向に磁化を形成してデータを記録する方式である。
【0007】
しかしながら、垂直記録方式のハードディスク装置の再生信号に含まれるノイズは白色ガウスノイズよりも磁化転移性ノイズが支配的となる。
この磁化転移性ノイズは、ディスク媒体上の記録面を形成する磁性粒子の大きさや形が一定でないために磁性粒子が不均一に磁化され、その結果磁化反転位置が本来の磁化反転位置からずれることによりサンプルポイントにおいて再生信号の振幅が正方向もしくは負方向に変化する非線形な媒体ノイズである。
【0008】
この様な非線形な磁化転移性ノイズが混入した再生信号に対して、従来のディジタル信号復号装置を用いた場合には復号エラーが増加するという問題があった。
ここで、非線形なノイズに対しては、1クロック前の状態遷移における磁化反転の有無に基づいて、ブランチメトリック演算に使用する尤度関数を複数の中から選択するようにしたディジタル信号復号装置が開示されている。
【0009】
とりわけ、隣接する磁化反転の影響を受けて磁化反転位置が移動する非線形ビットシフト(Non−Linear Transition Shift:NLTS)や、磁化反転間隔が狭くなることで部分的な磁化反転の消去が起こって再生信号の振幅が小さくなるパーシャルイレージャ(Partial Erasure:PE)などのように、隣接する磁化反転によって一定のずれを生じる非線形ノイズに対して有用である。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2001−35086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、磁化転移性ノイズは隣接の磁化反転に依存せず全ての磁化反転位置において発生し、その発生量と発生方向は磁化反転位置毎に異なる。即ち、PR特性によって定められる信号分布のレベル毎にノイズの分布が異なる。
【0011】
一方、従来の構成では信号分布のレベル全てにおいて同じノイズ分布であると想定して構成されているために、磁化転移性ノイズに対して最適な尤度関数を選択することが出来ず、復号エラーが増加してしまうという課題を有していた。
【0012】
本発明は上記した従来の課題を解決するものであり、垂直記録方式において発生する磁化転移性ノイズに対して復号性能を改善するディジタル信号復号装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のディジタル信号復号装置は、パーシャルレスポンス等化された記録媒体からの再生信号である復号器入力信号をビタビアルゴリズムにより2値化して復号データに変換する復号器において、前記パーシャルレスポンス特性により決定する各等化目標レベルに対して前記復号器入力信号が有するそれぞれの分散値に応じた尤度関数を利用して復号を行うものであり、復号器入力信号選択器と尤度制御回路とブランチメトリック演算器とレジスタとACS演算器とパスメモリとを備え、前記復号器入力信号選択器は、前記復号器入力信号を尤度制御回路とブランチメトリック演算器に対して選択的に出力し、前記尤度制御回路は、前記復号器入力信号から前記各等化目標レベルに対する分散値を求め、前記それぞれの分散値に対する尤度関数に応じた所定の定数を出力し、前記レジスタは前記所定の定数を保持し、前記ブランチメトリック演算器は、前記復号器入力信号と前記レジスタから得られる前記所定の定数を用いた尤度演算によりブランチメトリックを出力し、前記ACS演算器は、前記ブランチメトリックを用いたACS演算によりパス遷移信号を出力し、パスメモリは、前記パス遷移信号を用いて復号データを出力し、前記尤度制御回路において求める分散値は、前記各等化目標レベルの中心レベルに対して最大となり、隣接する等化目標レベルに対する分散値は中心レベル側の等化目標レベルに対する分散値以下に設定されることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明のディジタル信号復号装置は、前記ディジタル信号復号装置は、尤度関数設定期間と復号期間を有し、前記尤度関数設定期間において前記復号器入力信号選択器が前記復号器入力信号を前記尤度制御回路に入力して、前記尤度制御回路が前記復号器入力信号から前記各等化目標レベルに対する分散値を求め、前記それぞれの分散値に対する尤度関数に応じた所定の定数を前記レジスタへ出力し、その後に復号期間において前記復号器入力信号選択器が前記復号器入力信号を前記ブランチメトリック演算器に入力し、前記ブランチメトリック演算器が前記復号器入力信号と前記レジスタから得られる前記所定の定数を用いた尤度演算によりブランチメトリックを出力することを特徴とし、復号期間開始時において磁化転移性ノイズの影響に対して最適な復号性能を有する状態での復号が可能となる作用を有する。
【0015】
さらに、本発明のディジタル信号復号装置は、前記ディジタル信号復号装置は、尤度関数設定期間と復号期間を有し、前記尤度関数設定期間において前記復号器入力信号選択器が前記復号器入力信号を前記尤度制御回路に入力して、前記尤度制御回路が前記復号器入力信号から前記各等化目標レベルに対する分散値を求め、前記それぞれの分散値に対する尤度関数に応じた所定の定数を前記レジスタへ出力し、その後に復号期間において前記復号器入力信号選択器が前記復号器入力信号を前記ブランチメトリック演算器に入力し、前記ブランチメトリック演算器が前記復号器入力信号と前記レジスタから得られる前記所定の定数を用いた尤度演算によりブランチメトリックを出力し、復号期間中の一定期間毎に設ける尤度関数設定期間において前記所定の定数を更新しながら復号を行うことを特徴とし、ヘッドや記録媒体の経年変化に対するジッタ性媒体ノイズの特性変化に対して最適な復号性能を維持するという作用を有する。
【0016】
さらに、本発明のディジタル信号復号装置は、前記尤度制御回路が、前記復号器入力信号と各等化目標レベルの誤差を利用して前記分散値の演算を行うことを特徴とし、ヘッドと記録媒体の組み合わせに応じて適切な尤度設定を行うことが可能となる作用を有する。
【0017】
さらに、本発明のディジタル信号復号装置は、前記尤度制御回路が、前記尤度関数設定期間において、あらかじめ記録された特定トラックから得られる特定の記録データを再生した復号器入力信号と、特定の記録データに対応する理想等化レベルとの誤差を利用して前記分散値の演算を行うことを特徴とし、精度の高い前記分散値演算及び尤度設定を行うことが可能となる作用を有する。
【0018】
さらに、本発明のディジタル信号復号装置は、前記尤度制御回路が、前記特定の記録データを前記記録媒体以外のメモリに保存し、前記尤度関数設定期間において特定の記録データを再生した復号器入力信号と、特定の記録データに対応する理想等化レベルとの誤差を利用して前記分散値の演算を行うことを特徴とし、高精度の前記分散値演算及び尤度設定を行い、かつ、前記記録媒体における記録容量を増加できるという作用を有する。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明のディジタル信号復号装置によれば、パーシャルレスポンス特性により決定する各等化目標レベルに対して復号器入力信号が有するそれぞれの分散値に応じた尤度関数を利用して復号を行うことで、垂直記録方式において発生する磁化転移性ノイズに対して復号性能を改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明のディジタル信号復号装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1におけるディジタル信号復号装置の構成ブロック図を示すものである。図1において、復号器1は復号器入力信号選択器100、尤度制御回路200、レジスタ300、ブランチメトリック演算器400、ACS演算器500、パスメモリ600から構成される。
【0022】
垂直記録方式では記録再生特性が積分型であるため、復号器1へ入力する復号器入力信号は積分型のPR方式に等化された信号となる。本実施例ではPR方式としてEPR3(Extended Partial Response Class3)方式を用いた場合について説明する。
【0023】
EPR3方式はPR(2、3、0、−1)方式と表され、時刻kにおける記録データa(”0”あるいは”1”)に対して、EPR3方式の出力xは「数1」式であらわされる。
【0024】
【数1】

ここで、時刻kと時刻k−1の時間間隔は、再生信号に同期した再生信号のサンプリングクロックであるチャネルクロック1周期に相当する。
【0025】
「数1」式によると、EPR3方式の出力は”−1”、”0”、”1”、”2”、”3”、”4”、”5”の7値のレベル分布を有する。即ち”2”を中心に上下対称性を有する。従って、一般的にアナログ・デジタルコンバータ(図示省略)によって量子化が行われる際には、”2”をセンターレベル、即ち”0”にするようにシフトを行う。
【0026】
このシフトを行うことにより、復号器1への入力信号のレベル分布は”−3”、”−2”、”−1”、”0”、”1”、”2”、”3”となり、これを等化目標値zとする。このため、例えば「数1」式で求めたEPR3方式の出力x”−1”は等化目標値z”−3”に対応し、EPR3方式の出力x”2”は等化目標値z”0”に対応し、EPR3方式の出力x”5”は等化目標値z”3”に対応する。
【0027】
次に、EPR3方式の記録データと状態遷移について表1を用いて説明する。表1はある時刻kにおける記録データaが”0”もしくは”1”である場合に、時刻k−1の状態が時刻kのどの状態に遷移するかを表した状態遷移表である。
【0028】
【表1】

表1において左側1列目は時刻k−1における状態を表す。ここで、状態とは2列目の記録データak−1、ak−2、ak−3におけるビットの組み合わせを表1のようにSAからSHに割り当てたものである。
【0029】
次に、3列目は記録データaが“0”もしくは“1”の場合の時刻kにおける状態を示しており、4列目はそれぞれの遷移における等化目標レベルを示している。復号器1では、この状態遷移表を元に記録データを推測して復号データを出力する。
【0030】
例えば、ある時刻kにおいて、時刻k−1までの記録データが(ak−3,ak−2,ak−1)=(0,0,0)に割り当てられた状態SAである場合に、時刻kにおける記録データaが“1”であると、次の時刻kにおける状態は(ak−3,ak−2,ak−1)=(0,0,1)である状態SBに遷移し、その遷移における等化目標レベルzは“0”となる。
【0031】
EPR3方式による等化目標レベルは“−3”、“−2”、“−1”、“0”、“1”、“2”、“3”の合計7レベルとなるが、この中で時刻k−1と時刻kにおける記録データが異なる場合、つまり時刻kにおいて磁化反転が発生する場合の等化目標レベルは図中丸印で囲まれた合計8つの遷移となる。
【0032】
これら8つの遷移に対する等化目標レベルは“−1”、“0”、“1”の3レベルであり、全7レベルのうちの中心部分を占める。特に等化目標レベルが“0”レベルとなるのは4遷移(SAからSB、SCからSF、SFからSC、SHからSG)であり、等化目標レベルが“−1”、“1”レベルとなるのは、それぞれ2遷移(“−1”はSBからSCとSDからSG、“1”はSEからSBとSGからSF)である。
【0033】
つまり、磁化反転位置において発生する磁化転移性ノイズの影響を受ける等化目標レベルは“−1”、“0”、“1”のみである。中でも“0”レベルは発生頻度が最も多いため、“−1”及び“1”レベルに比べて磁化転移性ノイズの影響が大きい。
【0034】
磁化転移性ノイズの影響を受けると、復号器入力信号のノイズの分布は磁化転移性ノイズの影響を受けない場合に比べて異なる分布となる。
図2は等化目標レベルを中心とした復号器入力信号のノイズ分布を等しい母数にて比較した図であり、横軸はノイズの振幅レベルを、縦軸はノイズの発生頻度を示している。さらに、分布Aは白色ガウスノイズの分布、分布Bは磁化転移性ノイズの分布である。
【0035】
図2のように分布Bの分散は分布Aの分散に比べて小であり、復号器1への復号器入力信号は、磁化転移性ノイズの影響を受ける等化目標レベル(“−1”、“0”、“1”)と、影響を受けない等化目標レベル(“−3”、“−2”、“2”、“3”)とにおいてノイズの分散が異なる。
【0036】
次に、等化目標レベル毎に異なる分散を有するノイズに対する尤度関数を用いた復号方法について説明する。本実施例1におけるディジタル信号復号装置では尤度関数設定期間と復号期間を設け、それぞれの期間において復号器1への復号器入力信号を復号器入力選択信号により異なる回路に接続する。
【0037】
尤度関数設定期間ではファームウェア(図示せず)から得られる復号器入力選択信号が0となり、復号器入力信号選択器100において復号器1への復号器入力信号が尤度制御回路200に入力され、尤度関数の設定が行われる。
【0038】
また、ブランチメトリック演算器400、ACS演算器500、パスメモリ600は復号器入力選択信号が“0”である間において動作を停止する。
復号期間には復号器入力選択信号が1となり、復号器1への入力信号はブランチメトリック演算器400に入力される。そして、ACS演算器500、パスメモリ600を用いて復号を行う。
【0039】
以降、復号期間における動作について説明する。まず、ブランチメトリック演算方法について説明する。表1に示す全16通りの遷移に対する等化目標レベルは重複する等化目標レベルが存在するため、(“−3”,“−2”,“−1”,“0”,“1”,“2”,“3”)となる合計7レベルに対してブランチメトリック演算を行い、実際にはこれら7種類のブランチメトリックを使用する。
【0040】
時刻kにおいて復号器1へ入力される復号器入力信号ykは、復号器入力信号に含まれるノイズ成分をnkとすると「数2」式で表される。この復号器入力信号ykに対する尤度関数Lには、「数3」式に示す対数尤度関数を最適化した結果を用いる。この対数尤度関数は平均値μ、分散σをパラメータとするガウス分布の負の対数尤度関数である。
【0041】
【数2】

【0042】
【数3】

平均値μと分散σのパラメータのうち、平均値μには各等化目標レベルを当てはめ、分散σには各等化目標レベル毎にノイズの分散を求め当てはめる。このようにして各等化目標レベル毎にブランチメトリック演算を行うことが可能となる。そのため、尤度制御回路200において分散値を算出する必要がある。
【0043】
次に、尤度制御回路200の構成について図3を用いて説明する。尤度制御回路200への復号器入力信号は減算器211〜216に入力され、減算器211〜216では図のように尤度制御回路200への復号器入力信号から各等化目標レベル“−3”から“3”をそれぞれ減算する。
【0044】
減算器211〜216の出力信号(減算結果)は最小値選択器217と分散算出回路220〜222、224〜226にそれぞれ入力され、尤度制御回路200への復号器入力信号が最小値選択器217と分散算出回路223に入力される。最小値選択器217では減算器211〜216からの入力信号(減算結果)と尤度制御回路200への復号器入力信号のうち、最小となる入力信号を選択する。
【0045】
そして、最小値選択器217は、減算器211からの入力信号が最小であれば“3”を、減算器212からの入力信号が最小であれば“2”を、減算器213からの入力信号が最小であれば“1”を、尤度制御回路200への復号器入力信号が最小であれば“0”を、減算器214からの入力信号が最小であれば“−1”を、減算器215からの入力信号が最小であれば“−2”を、減算器216からの入力信号が最小であれば“−3”を分散算出回路220〜226へ出力(最小値選択信号)する。
【0046】
分散算出回路220〜222、224〜226は減算器211〜216からの入力信号(減算結果)と最小値選択器217からの入力信号(最小値選択信号)とレジスタ300からの入力信号に基づいて分散値演算を行い、分散算出回路223は尤度制御回路200への復号器入力信号と最小値選択器217からの信号とレジスタ300からの信号を入力として分散値演算を行う。そして、分散算出回路220〜226はそれぞれの演算結果の分散値を分散値調整回路270に送り、分散値調整回路270はその出力を定数A演算回路230とレジスタ300に送る。
【0047】
レジスタ300には、定数A演算回路230から分散値に基づく定数A0からA6が送られ、分散算出回路220〜226より分散値B0からB6が送られる。
次に、尤度制御回路200の詳細な動作について説明する。図3に示したように復号器1への復号器入力信号が尤度制御回路200内の減算器211、212、213、214、215、216と最小値選択器217と分散算出回路223に送られる。
【0048】
減算器211では復号器1への入力信号から定数“3”を減算し、減算結果を分散算出回路220と最小値選択器217に出力する。
減算器212では復号器1への入力信号から定数“2”を減算し、減算結果を分散算出回路221と最小値選択器217に出力する。
【0049】
減算器213では復号器1への入力信号から定数“1”を減算し、減算結果を分散算出回路222と最小値選択器217に出力する。
減算器214では復号器1への入力信号から定数“−1”を減算し、減算結果を分散算出回路224と最小値選択器217に出力する。
【0050】
減算器215では復号器1への入力信号から定数“−2”を減算し、減算結果を分散算出回路225と最小値選択器217に出力する。
減算器216では復号器1への入力信号から定数“−3”を減算し、減算結果を分散算出回路226と最小値選択器217に出力する。
【0051】
最小値選択器217では、入力された7つの信号の中で最も値の小さいものを選択し、減算器に応じた最小値選択信号を出力する。具体的には最小値選択信号は“−3”から“3”の整数であり、その説明のための表現として(最小となる減算器の番号、最小値選択信号)の形式を用いると、(211,3)、(212,2)、(213,1)、(214,−1)、(215,−2)、(216,−3)となる。また、復号器1への復号器入力信号が最小である場合には最小値選択器から“0”が出力される。
【0052】
ここで、複数の入力信号値が等しく最小値の判定が不可能な場合は、最小値選択信号の値が最も小さい減算器を選択する。例えば減算器211と212からの入力信号が等しい場合に、減算器211の最小値選択信号が”3”で、減算器212の最小値選択信号が”2”であることから最小値選択信号の値が小さい減算器212を選択する。
【0053】
次に、分散算出回路220〜226の詳細な構成を分散算出回路220を例として図4を用いて説明する。分散算出回路220は、大きく分けて平均値演算回路241と分散値演算回路251から構成される。
【0054】
分散算出回路220に入力された減算器211の出力信号(減算結果)は加算器242とメモリ250に送られる。加算器242の出力信号はフリップフロップ回路243に送られ、フリップフロップ回路243の出力信号は加算器242と除算器244に送られる。ここで、尤度関数設定期間の開始時にフリップフロップ回路243は“0”にリセットされる。
【0055】
カウンタ246にはフリップフロップ回路245の定数“3”と、最小値選択器217の出力信号(最小値選択信号)が入力され、カウンタ246の出力信号は除算器244と比較選択器247とメモリ250に送られる。セレクタ249は除算器244の出力信号とフリップフロップ回路248の定数“0”と比較選択器247の出力信号を入力として、その出力信号はメモリ250に送られる。ここで、フリップフロップ回路は入力信号を1チャネルクロック遅延する。
【0056】
減算器252はメモリ250から出力される2つの信号(減算器211の減算結果と平均値演算回路241の平均値)を入力として、その出力信号は乗算器253に送られる。乗算器253の出力信号は加算器254、フリップフロップ回路255に送られ、フリップフロップ回路255の出力信号は加算器254と除算器256に送られる。ここで、尤度関数設定期間開始時にフリップフロップ回路255は“0”にリセットされる。
【0057】
また、メモリ250は減算器252とカウンタ257と除算器256と比較選択器258に出力し、比較選択器258ではカウンタ257の出力信号とメモリ250からの信号(カウンタ246の出力信号)を入力として、その結果をセレクタ260に出力する。
【0058】
そして、セレクタ260では除算器256の出力信号と、定数“0”と、比較選択器258の出力信号を入力とし、その出力信号が分散算出回路220の出力となる。
次に、分散算出回路220の詳細な動作について説明する。平均値演算回路241において、分散算出回路220に入力された減算器211の出力信号(減算結果)は、加算器242においてフリップフロップ回路243の出力信号との加算が行われ、その出力信号(加算結果)が除算器244に送られる。
【0059】
カウンタ246は尤度関数設定期間の開始時に初期値を“0”としておき、最小値選択器217の出力信号とフリップフロップ回路245から得られる定数“3”を比較して、一致した場合のみカウント値を“1”アップして除算器244と比較選択器247とメモリ250にカウント値を出力する。
【0060】
除算器244ではフリップフロップ回路243の出力信号を分子に、カウンタ246の出力信号を分母とする除算を行い、除算結果をセレクタ249に出力する。ここで、カウンタ246の出力信号が“0”である場合には除算器244において除算を行わず、入力された信号をそのまま出力する。
【0061】
比較選択器247では、カウンタ246の出力信号と、レジスタ300から供給されるデータナンバー(以下、DNとする)をチャネルクロック毎に比較し、一致した場合には“1”を、一致しない場合には“0”を出力する。ここで、DNは分散値演算を行うのに十分なデータ数とし、具体的には10,000ビットとする。
【0062】
セレクタ249では、比較選択器247の出力信号が“0”である場合にフリップフロップ回路248から得られる定数“0”を選択し、“1”である場合に除算器244の出力信号を選択して平均値信号をメモリ250に保存する。
【0063】
メモリ250は、平均値演算が行われると同時に比較選択器247の出力が“1”である場合にのみ、減算器211出力を保存する。
以上が平均値演算回路の動作であり、メモリ250へのデータ入力が完了するとカウンタ246の出力信号をメモリ250に保存してから分散値演算回路251の動作が開始する。
【0064】
分散値演算回路251ではメモリ250に保存された減算器211の出力信号が減算器252とカウンタ257に送られる。減算器252では減算器211の出力信号とメモリ250から読み出した平均値信号との減算を行い、減算結果を乗算器253に出力する。そして、乗算器253では二乗演算を行って結果を加算器254に出力する。加算器254とフリップフロップ回路255では、乗算器253の出力信号の総和を計算し、除算器256に出力する。
【0065】
カウンタ257では、メモリ250から供給される信号数をカウントして比較選択器258に送る。比較選択器258は、メモリ250から供給される平均値演算回路の動作終了時のカウンタ246の出力信号とカウンタ257の出力信号を比較し、一致した場合は“1”を、一致しなかった場合は“0”をチャネルクロック毎にセレクタ260へ出力する。
【0066】
セレクタ260では、比較選択器258の出力信号が“0”である場合(比較選択器258は分散値演算回路251の動作開始時には“0”を出力する)にフリップフロップ回路259から得る定数“0”を選択し、比較選択器258の出力信号が“1”である場合(比較選択器258は分散値演算回路251で分散値演算を行った後に“1”を出力する)に除算器256の出力信号を選択し、分散値信号として出力して分散値演算動作を終了する。
【0067】
以上の様に分散算出回路220では、平均値演算回路241により等化目標レベルに対するノイズの平均値を算出し、その平均値を入力とする分散値演算回路251において演算を行うことにより分散を求めることが出来る。
【0068】
以上が分散算出回路220の動作説明である。分散算出回路221、222、223、224,225、226においても分散算出回路220とほぼ同様の動作を行うが、動作の異なるのところはカウンタ246に入力される定数であり、分散算出回路221では“2”、分散算出回路222では“1”、分散算出回路223では“0”、分散算出回路224では“−1”、分散算出回路225では“−2”、分散算出回路226では“−3”となる。
【0069】
分散算出回路220、221、222、223、224、225、226から出力された各等化目標レベルにおけるノイズの分散値は分散値調整回路270に送られ、入力された分散値の調整を行う。
【0070】
分散値調整回路270では、分散算出回路222、223、224の出力信号をグループA、分散算出回路220、221、225、226の出力信号をグループBとし、グループAに属する分散値の最大値がグループBに属する分散値の最小値以下となるように分散値の変更を行い、調整結果を定数A演算回路230とレジスタ300に出力する。レジスタ300では図3のように定数B0、B1、B2、B3、B4、B5、B6として保存される。定数A演算回路では、各等化目標レベルに対する「数3」式の右辺第一項の演算を例えばDSPを用いて行い、演算結果A0からA6をレジスタ300に送る。
【0071】
次に、ブランチメトリック演算器400の構成について図5を用いて説明する。ブランチメトリック演算器400は「数3」式の演算を行う回路であり、BM演算サブユニット441から447にて構成され、それぞれに復号器1への復号器入力信号とレジスタ300の出力信号が入力される。
【0072】
BM演算サブユニット441の出力信号はブランチメトリック演算結果BMAとなり、同様にBM演算サブユニット442〜447の出力信号はそれぞれACS演算器500に送られる。BM演算サブユニット441〜447の出力信号は、その説明のための表現として(BM演算サブユニット番号、ブランチメトリック演算結果)の形式を用いると、(441,BMA)、(442,BMB)、(443,BMC)、(444,BMD)、(445,BME)、(446,BMF)、(447,BMG)となる。
【0073】
次に、BM演算サブユニット441〜447の構成をBM演算サブユニット441を例にして図6に基づいて詳細に説明する。BM演算サブユニット441に入力された復号器入力信号は加算器451に送られ、フリップフロップ回路452から得る定数“−3”との加算を行う。
【0074】
乗算器453では加算器451の出力信号の二乗演算を行い、演算結果を除算器454に出力する。一方、乗算器456ではレジスタ300から得られる定数B0の二乗演算を行い、演算結果を乗算器457に出力する。そして、乗算器457において入力値を2倍して除算器454に出力する。
【0075】
除算器454では乗算器453の出力信号を乗算器457の出力信号で除算する演算を行い、演算結果を加算器458に出力する。そして、加算器458では除算器454の出力信号と、レジスタ300から得られる定数A0との加算を行う。
【0076】
BM演算サブユニット442〜447はBM演算サブユニット441と同様の構成をしており、加算器451、乗算器456、加算器458に入力される定数が異なるのみである。
【0077】
ここで、加算器451、乗算器456、加算器458に入力される定数をそれぞれFFA、FFB、FFCとするとともに、その表現として(BMサブユニット番号,FFA,FFB,FFC)の形式を用いると、(441,−3,A0,B0)なる。同様に他のBMサブユニットにおけるフリップフロップ回路入力信号は、(442,−2,A1,B1)、(443,−1,A2,B2)、(444,0,A3,B3)、(444,1,A4,B4)、(445,2,A5,B5)、(446,3,A6,B6)となる。
【0078】
図7はACS演算器500の構成を示すブロック図である。511、512、513、514、515、516、517、518はACS演算サブユニットであり、521、522、523、524、525、526、527、528は、それぞれのACS演算サブユニット内のパスメトリックメモリであり、フリップフロップ回路で構成される。
【0079】
ACS演算サブユニット511は、ブランチメトリックBMB、BMA、パスメトリックメモリ521、525の出力を用いてACS演算を行い、パス遷移信号FLAGAを出力する。
【0080】
ACS演算サブユニット512はブランチメトリックBMD、BMC、パスメトリックメモリ521、525の出力を用いてACS演算を行い、パス遷移信号FLAGBを出力する。
【0081】
ACS演算サブユニット513はブランチメトリックBME、BMD、パスメトリックメモリ522、526の出力を用いてACS演算を行い、パス遷移信号FLAGCを出力する。
【0082】
ACS演算サブユニット514はブランチメトリックBMG、BMF、パスメトリックメモリ522、526の出力を用いてACS演算を行い、パス遷移信号FLAGDを出力する。
【0083】
ACS演算サブユニット515はブランチメトリックBMB、BMA、パスメトリックメモリ523、527の出力を用いてACS演算を行い、パス遷移信号FLAGEを出力する。
【0084】
ACS演算サブユニット516はブランチメトリックBMD、BMC、パスメトリックメモリ523、527の出力を用いてACS演算を行い、パス遷移信号FLAGFを出力する。
【0085】
ACS演算サブユニット517はブランチメトリックBME、BMD、パスメトリックメモリ524、528の出力を用いてACS演算を行い、パス遷移信号FLAGGを出力する。
【0086】
ACS演算サブユニット518はブランチメトリックBMG、BMF、パスメトリックメモリ524、528の出力を用いてACS演算を行い、パス遷移信号FLAGHを出力する。
【0087】
ここで、ACS演算の詳細な動作についてACS演算サブユニット511を例として説明する。図8はACS演算サブユニット511の構成を示した図であり、531、532は加算器、533は比較選択器、534はセレクタ、521はパスメトリックメモリである。
【0088】
ACS演算は表1の状態遷移表に従って行い、加算器531ではブランチメトリックBMBと、パスメトリックメモリ521の出力信号PMA(図7の回路構成参照)を加算する。一方、加算器532ではブランチメトリックBMAと、ACS演算サブユニット515のパスメトリックメモリ525の出力信号PME(図7の回路構成参照)を加算する。
【0089】
ブランチメトリック演算時に尤度が高いほどにメトリックが小となるように演算を行っているので、比較選択器533においては加算器531の出力信号と加算器532の出力信号を比較して、加算器531の出力信号が加算器532の出力信号以下である場合にパス遷移信号FLAGA=0を、加算器531の出力信号が加算器532の出力信号より大である場合にパス遷移信号FLAGA=1をセレクタ534とパスメモリ600(図1の回路構成参照)に出力する。
【0090】
セレクタ534ではFLAGA=0の場合は加算器531の出力信号を、FLAGA=1の場合は加算器532の出力信号を選択し、パスメトリックメモリ521に送る。そして、パスメトリックメモリ521ではセレクタ534から送られる加算結果を保持し、1チャネルクロック後のACS演算処理に用いる。
【0091】
図9はパスメモリ600の構成を説明するブロック図である。パスメモリ600は定数“0”を出力する信号と、定数“1”を出力する信号と、ACS演算サブユニット511から518の出力であるパス遷移信号FLAGA、FLAGB、FLAGC、FLAGD、FLAGE、FLAGF、FLAGG、FLAGHを入力とするパスメモリサブユニット610、630、650から構成される。
【0092】
ここで、パスメモリ600は同様の構成を有するパスメモリサブユニットをM個接続しており、図9では1段目をパスメモリサブユニット610、2段目をパスメモリサブユニット630、M段目をパスメモリサブユニット650としている。
【0093】
次に、各パスメモリサブユニット610、630、650の詳細な構成をパスメモリサブユニット610を例に図10を用いて説明する。各パスメモリ610(630、650)には前段からの入力信号(但し、1段目のパスメモリサブユニットでは定数“0”もしくは“1”)であるMIA、MIB、MIC、MID、MIE、MIF、MIG、MIHが、図10に示すように、セレクタ611〜618に入力される。
【0094】
ここで、MIAからMIHとセレクタ611から618の接続関係は表1の状態遷移図に従い、例えばMIAは状態SAからの遷移に、MIBは状態SBからの遷移に相当し、それぞれのセレクタ611〜618には2つの入力が存在する。
【0095】
そして、セレクタ611〜618ではパスメモリサブユニット610に入力されるパス遷移信号FLAGA〜FLAGHを選択信号として、選択結果をフリップフロップ回路621から628に出力する。
【0096】
例えば、セレクタ611ではMIAとMIEが入力され、FLAGAが“0”の場合はMIAを、“1”の場合はMIEを選択する。セレクタ612でも同様にFLAGBが“0”の場合はMIAを、“1”の場合はMIEを選択する。
【0097】
同様に、セレクタ613と614ではFLAGCもしくはFLAGDが“0”の場合はMIBを、“1”の場合はMIFを選択し、セレクタ615と616ではFLAGEもしくはFLAGFが“0”の場合はMICを、“1”の場合はMIGを選択し、セレクタ617と618ではFLAGGもしくはFLAGHが“0”の場合はMIDを、“1”の場合はMIHを選択する。
【0098】
セレクタ611〜618による選択結果はフリップフロップ回路621〜628に送られ、1チャネルクロック後にMOA〜MOHとして出力され、次のパスメモリサブユニットの入力となる。
【0099】
ここで、FLAGAからFLAGHによる選択動作はチャネルクロック毎に全てのパスメモリサブユニット内のセレクタにおいて一斉に行われる。
以上のような選択、保持をチャネルクロック毎に繰り返してデータの復号を行うが、ここで復号データが確定するために必要なパスメモリサブユニットの接続段数Mは、少ない場合には復号データが確定せず、多い場合には確定した復号データを遅延させるのみであるため余分な回路が増え、回路効率が悪くなる。
【0100】
図11はパスメモリサブユニットの接続段数Mを5から50とした場合におけるエラーレートの変化を示した説明図であり、記録符号には16/17(0、6/6)符号を用いている。Mが5から10の間はMの増加に伴ってエラーレートが良くなっているが、10を越えるとエラーレートは変化しなくなる。
【0101】
この傾向は、記録符号の特性とノイズの影響によって決まるものであり、復号データが確定するのに十分な接続段数Mを設定する必要がある。今回用いた記録符号の場合であればMは10以上で同様な特性となるが、本実施例1ではノイズの影響を考慮してパスメモリサブユニットの接続段数Mを30とする。
【0102】
そして、M段目のパスメモリサブユニット650の出力MOAがパスメモリ600の出力である復号データとなり、これが本発明の実施例1におけるディジタル信号復号装置の出力となる。
【0103】
以上が復号期間の動作であり、例えば本発明のディジタル信号再生装置の工場出荷時において、再生要求のあるトラックから読み出された再生信号を用いて尤度関数設定動作を行い、その後、復号期間に切り替えて再度同トラックを再生することにより記録再生特性のチェックを行う。また、出荷後の使用時は復号期間が選択され、工場出荷時の尤度関数設定動作において設定された定数(A0〜A6及び、B0〜B6)を利用して復号を行う。
【0104】
また、尤度制御回路200における分散値演算用の誤差量を求める方法として、あらかじめ決められた記録データを記録媒体上の特定トラックAに記録しておき、尤度関数設定期間にトラックAから得られる復号器入力信号と、尤度制御回路200内に設けたメモリに保存してある理想等化レベルとの誤差量を用いても良い。
【0105】
ここで、理想等化レベルはあらかじめ記録された記録データに対する理想的な等化目標レベルとする。この場合、先述した方法、つまり復号器入力信号に対する等化目標値を誤差が最小となる等化レベルにみなす方法に比べて精度の高い分散値演算を行うことが可能となる。
【0106】
また、尤度制御回路200における分散値演算用の誤差量を求める方法として、あらかじめ決められた記録データと理想等化値を尤度制御回路200内に設けたメモリに蓄えておき、尤度関数設定期間にはメモリに蓄えている記録データを特定トラックBに記録する。そして、トラックBを再生することで得られる復号器入力信号とメモリに保存してある理想等化レベルの差を用いて誤差量を求めても良い。
【0107】
この場合、尤度関数設定期間の終了後には特定トラックBにおいて記録再生を行うことができるため、記録媒体にあらかじめ特定のデータを記録する方法に比べて記録容量を増加することが可能となる。
【0108】
ここで、尤度関数設定期間の開始時に記録媒体上の記録領域が残り少なく、分散値演算に必要な10,000ビットのデータを記録することが不可能な場合は、例えば10,000ビットの記録済みデータを特定トラックBから復号して尤度制御回路200内に設けたメモリに蓄え、分散値演算用の記録データを特定トラックBに記録する。
【0109】
その後、特定トラックBの記録データを再生することで得られる復号器入力信号を用いて分散値演算を行う。そして尤度関数設定期間の終了時に再度メモリに蓄えてある記録済みデータを記録する。この方法であれば空き領域が十分でない場合でも分散値演算用の領域を確保して演算を行える。
【0110】
以上のように本実施例1では、復号器入力信号の各等化目標レベルにおけるノイズの分散値を利用したブランチメトリック演算を行うことにより、それぞれのレベルに最適となる尤度関数を用いたビタビ復号を行うことができるので、磁化転移性ノイズに対する復号性能を向上することができる。
【0111】
なお、本実施例1におけるディジタル信号復号装置においては、尤度関数設定期間において定数(A0〜A6及び、B0〜B6)を一度設定すると、復号期間において同じ定数を使用し続ける。
【0112】
しかしながら、例えばディスク及びヘッドなどの経年変化による磁化転移性ノイズの特性が変化した場合、予め設定した定数は最適な値にならないことがある。このため、復号期間中の一定期間毎に尤度関数設定期間を設け、一定期間毎に復号器入力信号選択器100において復号器入力信号を尤度制御回路200に対して出力する。
【0113】
そして、復号期間においても一定期間毎に尤度制御回路200を動作させ、レジスタ300の定数A0からA6及びB0からB6を一定期間毎に更新する。このことで、ディスク及びヘッドなどの経年変化による磁化転移性ノイズの特性変化に対して復号性能を維持することが可能となる。
【0114】
ここで、一定期間は例えば分散値を精度良く求めるのに必要な10,000ポイントのデータとし、尤度制御回路200に設けたカウンタにより一定期間のカウントを行うことで定数の更新を行う。
【0115】
なお、本発明の各構成要素は組み合わせ回路と記憶保持回路等のハードウェア回路で実現しても良いし、コンピュータを利用してソフトウェア上で実現しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明にかかるディジタル信号復号装置は、ディジタル化した再生信号を2値化するのに有用であり、特に磁化転移性ノイズの影響を受けた再生信号を2値化するディジタル信号復号装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の実施例1におけるディジタル信号復号装置を示すブロック図
【図2】ノイズの種類に対する分布比較図
【図3】本発明の実施例1におけるディジタル信号復号装置の尤度制御回路の説明図
【図4】本発明の実施例1におけるディジタル信号復号装置の分散算出回路の説明図
【図5】本発明の実施例1におけるディジタル信号復号装置のブランチメトリック演算器の説明図
【図6】本発明の実施例1におけるディジタル信号復号装置のブランチメトリック演算サブユニットの説明図
【図7】本発明の実施例1におけるディジタル信号復号装置のACS演算器の説明図
【図8】本発明の実施例1におけるディジタル信号復号装置のACS演算サブユニットの説明図
【図9】本発明の実施例1におけるディジタル信号復号装置のパスメモリの説明図
【図10】本発明の実施例1におけるディジタル信号復号装置のパスメモリサブユニットの説明図
【図11】パスメモリ長とエラーレートの関係を示す説明図
【図12】従来のディジタル信号復号装置を示すブロック図
【符号の説明】
【0118】
100 復号器入力信号選択器
200 尤度制御回路
201、202、203、204、205、206 定数(フリップフロップ回路)
211、212、213、214、215、216 減算器
217 最小値選択器
220、221、222、223、224、225、226 分散算出回路
241 平均値演算回路
242 加算器
243 フリップフロップ回路
244 除算器
245 定数
246 カウンタ
247 比較選択器
248 定数
249 セレクタ
250 メモリ
251 分散値演算回路
252 減算器
253 乗算器
254 加算器
255 フリップフロップ回路
256 除算器
257 カウンタ
258 比較選択器
259 定数
260 セレクタ
270 分散値調整回路
300 レジスタ
400 ブランチメトリック演算器
441、442、443、444、445、446、447 BM演算サブユニット
451 加算器
452 定数(フリップフロップ回路)
453、456、457 乗算器
454 除算器
458 加算器
500 ACS演算器
511、512、513、514 ACS演算サブユニット
515、516、517、518 ACS演算サブユニット
521、522、523、524 パスメトリックメモリ
525、526、527、528 パスメトリックメモリ
531 加算器
532 加算器
533 比較選択器
534 セレクタ
600 パスメモリ
601、602、603、604 定数(フリップフロップ回路)
605、606、607、608 定数(フリップフロップ回路)
610、630、650 パスメモリサブユニット
611、612、613、614、615、616、617、618 セレクタ
621、622、623、624 フリップフロップ回路
625、626、627、628 フリップフロップ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーシャルレスポンス等化された記録媒体からの再生信号である復号器入力信号をビタビアルゴリズムにより2値化して復号データに変換する復号器において、前記パーシャルレスポンス特性により決定する各等化目標レベルに対して前記復号器入力信号が有するそれぞれの分散値に応じた尤度関数を利用して復号を行うものであり、
復号器入力信号選択器と尤度制御回路とブランチメトリック演算器とレジスタとACS演算器とパスメモリとを備え、
前記復号器入力信号選択器は、前記復号器入力信号を尤度制御回路とブランチメトリック演算器に対して選択的に出力し、前記尤度制御回路は、前記復号器入力信号から前記各等化目標レベルに対する分散値を求め、前記それぞれの分散値に対する尤度関数に応じた所定の定数を出力し、前記レジスタは前記所定の定数を保持し、前記ブランチメトリック演算器は、前記復号器入力信号と前記レジスタから得られる前記所定の定数を用いた尤度演算によりブランチメトリックを出力し、前記ACS演算器は、前記ブランチメトリックを用いたACS演算によりパス遷移信号を出力し、前記パスメモリは、前記パス遷移信号を用いて復号データを出力し、
前記尤度制御回路において求める分散値は、前記各等化目標レベルの中心レベルに対して最大となり、隣接する等化目標レベルに対する分散値は中心レベル側の等化目標レベルに対する分散値以下に設定されることを特徴とするディジタル信号復号装置。
【請求項2】
前記ディジタル信号復号装置は、尤度関数設定期間と復号期間を有し、前記尤度関数設定期間において前記復号器入力信号選択器が前記復号器入力信号を前記尤度制御回路に入力して、前記尤度制御回路が前記復号器入力信号から前記各等化目標レベルに対する分散値を求め、前記それぞれの分散値に対する尤度関数に応じた所定の定数を前記レジスタへ出力し、その後に復号期間において前記復号器入力信号選択器が前記復号器入力信号を前記ブランチメトリック演算器に入力し、前記ブランチメトリック演算器が前記復号器入力信号と前記レジスタから得られる前記所定の定数を用いた尤度演算によりブランチメトリックを出力することを特徴とする請求項1に記載のディジタル信号復号装置。
【請求項3】
前記ディジタル信号復号装置は、尤度関数設定期間と復号期間を有し、前記尤度関数設定期間において前記復号器入力信号選択器が前記復号器入力信号を前記尤度制御回路に入力して、前記尤度制御回路が前記復号器入力信号から前記各等化目標レベルに対する分散値を求め、前記それぞれの分散値に対する尤度関数に応じた所定の定数を前記レジスタへ出力し、その後に復号期間において前記復号器入力信号選択器が前記復号器入力信号を前記ブランチメトリック演算器に入力し、前記ブランチメトリック演算器が前記復号器入力信号と前記レジスタから得られる前記所定の定数を用いた尤度演算によりブランチメトリックを出力し、
復号期間中の一定期間毎に設ける尤度関数設定期間において前記所定の定数を更新しながら復号を行うことを特徴とする請求項1に記載のディジタル信号復号装置。
【請求項4】
前記尤度制御回路は、前記復号器入力信号と各等化目標レベルの誤差を利用して前記分散値の演算を行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のディジタル信号復号装置。
【請求項5】
前記尤度制御回路は、前記尤度関数設定期間において、あらかじめ記録された特定トラックから得られる特定の記録データを再生した復号器入力信号と、特定の記録データに対応する理想等化レベルとの誤差を利用して前記分散値の演算を行うことを特徴とする請求項2もしくは請求項3に記載のディジタル信号復号装置。
【請求項6】
前記尤度制御回路は、前記特定の記録データを前記記録媒体以外のメモリに保存し、前記尤度関数設定期間において特定の記録データを再生した復号器入力信号と、特定の記録データに対応する理想等化レベルとの誤差を利用して前記分散値の演算を行うことを特徴とする請求項2もしくは請求項3に記載のディジタル信号復号装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−92637(P2006−92637A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276265(P2004−276265)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】