説明

ディスクを備えた飲料缶

内部に弾性ディスク(50)が係留保持される内曲ビード(17)を定める基部(10)を有する飲料缶(1)。ディスク(50)の最大寸法は、内曲ビード(17)の内径より大きくなるように設計され、これにより、弾性ディスク(50)が内曲ビード(17)の中に嵌合すると、ディスク(50)は、凹状ドーム形状をとる。ドーム形成度は、ディスク(50)の寸法と缶(1)の修正された基部(10)の寸法との間のいかなる変動も吸収することができる。1つ又はそれ以上の排液ポートを弾性ディスク(50)の外周上に設け、基部(10)の表面と弾性ディスク(50)の表面との間に溜まった任意の液体を排液できるようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体のドーム形基部及び側壁部組み入れた本体と、例えば二重巻締法のような従来の技術を用いて本体の開放端に固定されたエンド部とを有する、従来の飲料缶を含む。
【背景技術】
【0002】
飲料缶のドーム形基部の内側を修正(reform)して、内曲した外形を与えることは、既に公知である。この技術は主として基部の強度を高めるために用いられ、そのことが、軽量化を可能にすることにもつながる。例えば、1992年2月29日付けの特許文献1(BALL CORP)は、このように飲料缶の基部を修正するのに適した装置を説明する。特に、この出願の図11は、このような修正後の飲料缶の基部の部分を通る拡大断面図を示す。
1996年8月15日付けの特許文献2(KOHORN INTERNATIONAL PTY LIMIT)は、主格納容積とは別の開放空洞を備えるように形成された容器を記載する。このような容器の例は、金属缶であり、それらは、ソフトドリンク、ビール等のために通常用いられているように、基部内に一般に凹状又はドーム形の空洞を備えるように形成される。この特許文献2は、この空洞を実質的に閉鎖するために設けられた除去手段を記載しており、それにより、販売促進グッズ、第2の活性成分などのために用いることができる第2の格納容積が作り出される。
【0003】
これら両方の着想は、1999年11月24日付けの特許文献3(SCHMALBACH LUBECA)において組み合わせられており、これは、基部の直径が容器の直径より明らかに小さくなるように、容器の内側に引き込まれた基部を有する金属薄板で実質的に作られた、ツーピース式飲料缶を記載する。この特許文献3はまた、基部の中に固定されるように適合された、独立したディスク状の部品も記載する。独立したディスク状部品(「上げ底部材」)は、別に製造されるので、容易に装飾などを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0482581号明細書
【特許文献2】国際公開第96/24539号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第0958182号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明は、内部に弾性ディスク(50)が係留保持される内曲ビード(17)を定める基部(10)を有する飲料缶(1)を提供し、この飲料缶は、ディスク(50)の直径相当寸法(diametric dimension)が、内曲ビード(17)の内径より大きく、弾性ディスク(50)が内曲ビード(17)の中に嵌合されると、ディスク(50)が凹状ドーム形状をとることを特徴とする。
本発明によれば、弾性ディスクは、飲料缶の基部における内曲ビードの中にスナップ嵌めされる。ディスクは、除去手段を有し、それによりユーザは、内曲ビードからディスクを取り出すことができる。例えば、ディスクは、タブ又はコインを用いて内曲ビードからそれを取り出すことを可能にする切欠き部を有することができる。
【0006】
ディスクと飲料缶のドーム形基部とが一緒に区画を定め、これは、容器の内容物のための添加物、又は種子類、コンパス、USBデバイス等のような物品を収納するために用いることができる。ディスクは、例えばPP、PET又は他のポリマーなどの熱可塑性材料の印刷シートから打抜きされることが好ましいが、金属又は厚紙のような他の材料も可能である。
ディスクは、製品を缶に充填する前又は充填した後のどちらかに、それぞれ、缶製造業者又は缶詰業者によって、飲料缶の基部の中に嵌合することができる。区画内に溜まった液体があればその排液を可能にするために、ディスクに切欠き部が設けられることが好ましい。これにより、充填ライン上での低温殺菌又はすすぎに先立って、ディスクを随意に嵌合することが可能になる。
【0007】
本発明者らは、内曲ビードの直径に関して達成することができる公差よりもかなり厳密な公差でディスクを製造することができることを見いだし、従って、試行の際に、ディスクは、幾つかの缶の修正された基部にはきつく嵌合するのに対し、その他の缶の修正された基部には非常に緩くしか嵌合しないことを見いだした。さらに研究すると、本発明者らは、ディスクの直径相当寸法(すなわち、円内にプロットされたディスクの最大点)が内曲ビードの直径よりも大きい場合には、ディスクは、修正された基部の中にスナップ嵌めすることはできるが、内曲ビードによってディスクに及ぼされる応力がディスクを撓ませて、これを凹状のドーム構成にさせることを見出した。ディスクの寸法及び(製造時の)修正された基部の内曲ビードによって定められる直径に応じて、ドーム形ディスクは、より小さいドーム形成度(degree of doming)又はより大きいドーム形成度をとることになる。
この可変に形作られるドームは、多くの利点を有する。第一に、ドーム形成度は、ディスクの寸法と缶の修正された基部の寸法との間のいかなる変動も吸収することができる。例えば、ディスクは、+−0.1mmの公差を有して製造することができるのに対して、修正された基部は、従来、+−0.3mmの公差を有する。
【0008】
本発明によって提案されるディスクは、その外周に配置された1つ又はそれ以上の切欠き部を含む。ひとたび缶の修正された基部に嵌合したディスクの凹状のドーム形状は、ディスクの内面からの排液を補助し、かつ、応力がかかった/嵌合したディスクは、缶の基部からより外れにくくなり、缶から偶発的に分離する危険性を低下させる。
ディスクには、除去手段が設けられ、これは、ユーザが缶の基部からディスクを除去することを可能にするような大きさ及び形状にされる。除去手段は、切欠き部の形態を取り、この形態により、ユーザは、例えばコイン又はタブなどのてこを挿入して、缶の基部からディスクを取り出すことが可能になる。
【0009】
本発明の実施形態において、ディスクと缶の基部とが一緒に3つの接点を定め、除去手段は、切取り部によって与えられ、これにより、ユーザは、ディスクの下にてこを適用することが可能になる。切取り部の両側に位置する2つの接点は、作動突起(energising prong)の役割を果たす。これらの作動突起は、切取り部に直に隣接して位置してもよく、又は、これらは、切取り部からずらすこともできるが、切取り部と同じディスクの半円内に位置していなければならない。切取り部に直径方向に対向して位置する接点は、ピボットとして機能する。作動突起とピボットとが組み合わされることにより、ディスクは、缶の基部から解放されたときに、コインをはじいた場合とよく似た回転をするようになる。これは、単純な決定に基づくゲームの機会を提供する。
ここで本発明を、添付の図面を参照して、例示のみの目的で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明での使用に適した修正された基部を有する倒立した飲料缶の等角図である。
【図1a】図1に示された飲料缶の基部を通る断面図である。
【図2】(図1aに示されたような)修正された基部を有し、その中にディスクが拘束された、本発明による飲料缶の断面図であり、ユーザが飲料缶の基部からディスクを取り出すために、どこにてこを適用することができるかを示している。
【図3】本発明の第1の実施形態による、ディスクを有する倒立した飲料缶の等角図であり、飲料缶の基部からディスクを取り出すためにどのようにタブをてことして用いることができるかを示している。
【図3a】図3に示された飲料缶の修正された基部に嵌合した状態で示された、ディスクの平面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による、ディスクを有する倒立した飲料缶の等角図であり、飲料缶の基部からディスクを取り出すためにどのようにコインをてことして用いることができるかを示している。
【図4a】図4に示された飲料缶の修正された基部に嵌合した状態で示された、ディスクの平面図である。
【図4b】図4及び図4aに示されたディスクの等角図である。
【図5】本発明の強化された第3の実施形態による、ディスクを有する倒立した飲料缶の等角図である。
【図5a】図5に示された飲料缶の修正された基部に嵌合した状態で示された、ディスクの平面図である。
【図5b】図5及び図5aに示されたディスクの等角図である。
【図6】ディスクの直径相当寸法が飲料缶の修正された基部内に形成された空洞の最大直径より大きく、かつ、ディスクがその中に拘束されており、ディスクが凹状のドーム形状を取っているときの、本発明の強化された第3の実施形態による飲料缶の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、一般的に、立ち上がった環状部15を備えた基部10と、上部20と、側壁部30とを有する、従来技術による飲料缶1を一般的に示す。特に、図1aは、図1に示された缶の基部10を通る断面を示し、これは、基部10の立ち上がった環状部15及び凹状ドーム12をより明らかに示す。
本発明による缶の基部は、図2に示されており、図中、弾性ディスク50は、内曲ビード17内に捕捉された状態で示されている。ディスク50と缶のドーム形基部12との間に定められる区画(符号なし)が、明らかに示されている。ディスク50は、切取り部55を通じてディスク50の下に挿入されるてこ60を用いて、内曲ビード17から取り外すことができる。図3及び図4は、本発明での使用に適したてこ60の代替的な例を示す。図3は、タブを開けて、缶の上部から分離した後に、どのようにタブ60’をてことして用いることができるかを示し、図4は、コイン60’’の使用を示す。
【0012】
図3aは、本発明で用いるのに適したディスク50の平面図を示す。このディスク50は、適切なてこ60の挿入を可能にする切取り部55を有し、ディスク50はさらに、2つの作動突起51及び1つのピボット52を定める。(図3に示されるように)缶のユーザがてこ60’を適用すると、ディスク50は、内曲ビード17から取り出され、作動突起51とピボット52との組み合わされた作用により、ディスクは、内曲ビード17から解放されたときに、(コインをはじいた場合とよく似た)回転をするようになる。
図4a及び図4bは、本発明で用いるのに適した代替的なディスク50を示す。このディスク50は、適切なてこ60の挿入を可能にする切取り部55を有するが、ディスク50は、作動突起51とピボット52との間に3つの大きな切欠き部(符号なし)を含むように改変されている。これらの切欠き部は、ディスク50と缶の基部10との間に溜まる水分の量を最小にし、また溜まった水分があれば効率的に排液/乾燥させることを可能にする。
【0013】
図5は、図4、図4a及び図4bに示されたディスク50の強化された変種が内曲ビード17の中に挿入された、本発明による飲料缶1を示す。図5a及び図5bは、強化されたディスク50の平面図及び等角図を示す。接点(作動突起及びピボット)の角部にアールが付けられているので、図5aに示されるように、とがった角部はもはや存在しない。これらの滑らかにされた角部は、ディスク50が内曲ビード17からはじき出されるときに、滑らかに解放させる。このことは、ディスクの寸法及び修正された基部の内曲ビードによって定められる直径における変動によってもたらされるディスク50のドーム形成度とは無関係である。
缶からディスクを除去するための適切なてこ装置又は手段の種々の例を、図中のいずれの例にも適用することができることが、当業者には明らかであろう。さらに、本発明の一般的な教示から逸脱することなく、種々の切取り部の設計及び切欠き部の数及び/又は位置を用いることができる。
【符号の説明】
【0014】
1:飲料缶
10:基部
20:上部
30:側壁部
12:凹状ドーム
15:立ち上がった環状部
17:内曲ビード
50:ディスク
51:作動突起
52:ピボット
55:切欠き部又は切取り部
60:てこ
【図1−1a】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に弾性ディスク(50)が係留保持される内曲ビード(17)を定める基部(10)を有する飲料缶(1)であって、
前記ディスク(50)の直径相当寸法は、前記内曲ビード(17)の内径より大きく、前記弾性ディスク(50)が前記内曲ビード(17)の中に嵌合されると、前記ディスク(50)が凹状ドーム形状をとることを特徴とする、飲料缶(1)。
【請求項2】
前記基部(10)は、凹状ドーム(12)と、立ち上がった環状部(15)とを備え、前記基部は、前記凹状ドーム(12)と前記立ち上がった環状部(15)との間の接合部に前記内曲ビード(17)を設けるように修正されたことを特徴とする、請求項1に記載の飲料缶(1)。
【請求項3】
前記凹状ドーム(12)の表面と前記ディスク(50)の表面との間にキャビティ(19)が定められ、前記ディスク(50)は、前記キャビティ(19)から任意の液体が排液されることを可能にする、1つ又はそれ以上の切欠き部(55)を設けるように形作られたことを特徴とする、請求項2に記載の飲料缶(1)。
【請求項4】
前記弾性ディスク(50)は、その外周の周りに離間された少なくとも3つの接点(51、51)を定め、前記弾性ディスク(50)が前記内曲ビード(17)の中に嵌合されると、前記ディスク(50)は、前記接点(51、52)で前記内曲ビード(17)と接することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の飲料缶(1)。
【請求項5】
前記3つの接点(51、52)は、前記ディスク(50)の両側に配置された2つの作動突起(51)と、前記作動突起(51)に直径方向に対向するピボット(52)とを含み、前記作動突起(51)は、前記ディスク(50)が前記内曲ビード(17)から取り出されるときに前記ディスクを作動させ、前記ピボット(52)は、前記ディスクが前記内曲ビード(17)から解放されるときに、前記ディスクが前記ディスクの平面に対して直角に回転するようにさせることを特徴とする、請求項4に記載の飲料缶。
【請求項6】
前記ディスク(50)は、ユーザが前記内曲ビード(17)から前記ディスクを除去することを可能にするタブ又はスロット(70)を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の飲料缶。
【請求項7】
前記弾性ディスク(50)は、前記飲料缶(1)に製品を充填し必要に応じて処理する前に、前記内曲ビード(17)の中に嵌合されることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の飲料缶(1)を充填する方法。

【図2】
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【図3】
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【図3a】
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【図4】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−517184(P2013−517184A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548427(P2012−548427)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050364
【国際公開番号】WO2011/086110
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(506128042)クラウン パッケイジング テクノロジー インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】