説明

ディスククランプ装置

【課題】ターンテーブルに対してディスクがスリップしにくくて信頼性が高いセルフクランプ方式のディスククランプ装置を提供すること。
【解決手段】ディスクDを加圧可能なクランプ位置とターンテーブル2のハブ部20側へ退避した非クランプ位置との間で移動可能なクランプ部材5と、ターンテーブル2に対して同軸かつ相対的に回転可能な駆動回転体3と、クランプ部材5をクランプ位置へ向けて弾性付勢するばね部材6とを備え、駆動回転体3のカム溝3bはクランプ部材5の摺動ピン5bと係合してその移動経路を規定し、駆動回転体3のカム山3cはクランプ部材5の摺動突起5cと係合してその高さ位置を変化させる。クランプ部材5はカム山3cを乗り越えて高さ位置を低減させながら、ばね部材6の付勢力でクランプ位置に配置されて、クランプ部材5の押圧平坦面5eとターンテーブル2の支持部21aとによってディスクDの内周部を板厚方向に挟持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDやDVD等のディスクを回転駆動可能にクランプするディスククランプ装置に係り、特に、ターンテーブルの支持部上に搭載されたディスクの内周部を、該ターンテーブルのハブ部内から支持部上へせり出すクランプ部材で加圧して保持するセルフクランプ方式のディスククランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のディスククランプ装置は、ターンテーブルの上方にクランパや板ばね等を昇降可能に配置し、このクランパを適宜昇降手段を介してターンテーブルに接離させるという方式のものと比べて、装置全体を大幅に薄型化できるという利点がある。
【0003】
従来公知のセルフクランプ方式のディスククランプ装置は、ターンテーブルのハブ部(中央凸部)から垂下する複数の支持軸にそれぞれクランプ部材が回動自在に支持され、これらクランプ部材にばね部材の付勢力が作用していると共に、ターンテーブルと同軸かつ相対的に回転可能な駆動回転体にクランプ部材の位置を変化させるカム部が設けられている。そして、駆動回転体にターンテーブルに対する回転力が作用していないときには、各クランプ部材がばね部材の付勢力でハブ部の径方向外側へ突出するため、ターンテーブルの支持部上に搭載されたディスクの最内上縁部(ディスク中心孔の周縁上端のエッジ部)に、各クランプ部材の先端部に形成されている爪部の傾斜面を圧接させることができ、この圧接力の分力によってディスクの内周部がターンテーブルの支持部に押し付けられる。つまり、複数のクランプ部材がクランプ位置に配置されてディスクの最内上縁部の複数個所を加圧するため、ディスクの下面とターンテーブルの支持部との間に所要の摩擦力が発生して該ディスクはクランプ状態となる。また、クランプ部材がクランプ位置に配置されているときに、ばね部材の付勢力に抗して駆動回転体がターンテーブルに対して回転させられると、クランプ部材がカム部にガイドされながら支持軸を中心に回転させられるため、爪部がターンテーブルの支持部上からハブ部側へ後退してディスクはクランプ解除される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−367260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来のセルフクランプ方式のディスククランプ装置は、クランプ部材の爪部の傾斜面をディスクの最内上縁部に圧接させ、この圧接力の分力でディスクをターンテーブルの支持部に押し付けるというものなので、ディスクの下面とターンテーブルの支持部との間に十分な強さの摩擦力を発生させることが容易でなく、ディスクと該支持部との間に塵埃等の異物が介在してしまうと、摩擦力が極端に低下してディスクがスリップしやすいという問題があった。こうしたスリップ現象は、ターンテーブルの支持部上に塵埃が堆積したりディスクの下面に異物が付着することによって引き起こされ、特にターンテーブルが回転駆動を開始する起動時にディスクがスリップしやすいため、起動不良の原因となっていた。また、ターンテーブルに対するディスクのスリップが頻繁に起こるようになると、情報の読み取りや書き込みが正確に行えなくなるため信頼性は著しく低下する。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ターンテーブルに対してディスクがスリップしにくくて信頼性が高いセルフクランプ方式のディスククランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ターンテーブルに対して同軸かつ相対的に回転可能な駆動回転体に設けたカム部でクランプ部材をガイドすることによって、クランプ位置へ向けて弾性付勢されるクランプ部材が高さ位置を低減させながらクランプ位置に配置されるようにした。また、クランプ部材の先端部にターンテーブルの支持部と略平行に対向可能な押圧平坦面を設け、クランプ位置において該押圧平坦面と該支持部とによってディスクの内周部が板厚方向に挟持されるようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明のディスククランプ装置は、カム部のガイドによってクランプ部材が高さ位置を低減させながらクランプ位置に配置されるため、ターンテーブルの支持部上に搭載されているディスクの内周部の上面にクランプ部材の押圧平坦面を圧接させることができると共に、これら押圧平坦面と支持部とによってディスクの内周部を板厚方向に挟持することができる。それゆえ、セルフクランプ方式でありながら、ディスクの下面とターンテーブルの支持部との間に十分な強さの摩擦力を容易に発生させることができて、両者間に塵埃等の異物が介在した場合にもディスクがターンテーブルに対してスリップしにくくなり、信頼性を大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例に係るディスククランプ装置の分解斜視図である。
【図2】該ディスククランプ装置によってディスクをセンタリングする直前の状態を示す側面図である。
【図3】該ディスククランプ装置によってディスクをクランプした状態を示す側面図である。
【図4】図2に示す非クランプ状態の該ディスククランプ装置の斜視図である。
【図5】図3に示すクランプ状態の該ディスククランプ装置の斜視図である。
【図6】該ディスククランプ装置に用いられた駆動回転体の側面図である。
【図7】該ディスククランプ装置に用いられたクランプ部材を非クランプ位置に退避させた状態を示す動作説明図である。
【図8】該クランプ部材がカム山に乗り上げた状態を示す動作説明図である。
【図9】該クランプ部材がクランプ位置に配置された状態を示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、中央部に突設されたハブ部の周囲にディスクが搭載される支持部を有し、モータを駆動源として回転動作されるターンテーブルと、ディスクを加圧可能なクランプ位置と前記ハブ部側へ退避した非クランプ位置との間で移動可能なクランプ部材とを備え、前記クランプ部材と前記支持部とによってディスクの内周部が保持可能なディスククランプ装置において、前記クランプ部材と摺動可能に係合するカム部を有して前記ターンテーブルの下面側に同軸かつ相対的に回転可能に配置された駆動回転体と、前記クランプ部材を前記クランプ位置へ向けて弾性付勢する付勢手段とを備え、前記駆動回転体の回転に伴って前記クランプ部材が前記カム部にガイドされて高さ位置を変化させると共に、前記クランプ部材のうち前記クランプ位置で前記支持部上に配置される先端部に該支持部と略平行に対向可能な押圧平坦面を設け、前記クランプ部材が高さ位置を低減させながら前記クランプ位置に配置されて、前記押圧平坦面と前記支持部とによってディスクの内周部を板厚方向に挟持するように構成した。
【0011】
このように構成されたディスククランプ装置では、駆動回転体にターンテーブルに対する回転力が作用していないときに、付勢手段の付勢力によってクランプ部材がカム部にガイドされながらクランプ位置へ移動するが、その際、クランプ部材は高さ位置を低減させながらクランプ位置に配置されるため、ターンテーブルの支持部上へせり出した押圧平坦面を該支持部上に搭載されているディスクの内周部の上面に圧接させることができ、これら押圧平坦面と支持部とによってディスクの内周部は板厚方向に挟持されることになる。したがって、このディスククランプ装置は、セルフクランプ方式でありながら、ディスクの下面とターンテーブルの支持部との間に十分な強さの摩擦力を発生させることが容易であり、ターンテーブルに対してディスクがスリップしにくくなる。
【0012】
上記の構成において、付勢手段がクランプ部材に常時弾接するばね部材であると、カム部でガイドしながらクランプ部材を円滑に移動させやすくなるため好ましい。
【0013】
また、上記の構成において、カム部が、クランプ部材の第1摺動部と係合してその移動経路を規定するカム溝と、クランプ部材の第2摺動部と係合してその高さ位置を変化させるカム山とを有し、このカム山の頂部に第2摺動部が乗り上げたときにクランプ部材の高さ位置が最大となるように設定されていると、クランプ部材をクランプ位置と非クランプ位置との間で円滑に移動させながら、その高さ位置を円滑に変化させることが容易となる。
【0014】
また、上記の構成において、クランプ部材がクランプ位置に配置されているときに、押圧平坦面がターンテーブルの周方向に沿って延在していることが好ましく、こうすることによってディスクの上面に対する押圧平坦面の圧接面積が増大するため、ディスクの下面をターンテーブルの支持部に密着させやすくなる。
【0015】
また、上記の構成において、複数のクランプ部材がターンテーブルの周方向に沿って等間隔に配置されていると、ディスクの上面に複数のクランプ部材の押圧平坦面をバランス良く圧接させることができるのみならず、各クランプ部材をターンテーブルのハブ部内へコンパクトに収納することが容易となるため好ましい。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施例に係るディスククランプ装置について図1〜図9を参照しつつ説明する。これらの図に示すディスククランプ装置はセルフクランプ方式のものであって、駆動ユニットのユニットベース1に設置されたスピンドルモータ10上に組み付けられている。このディスククランプ装置は、中央部にハブ部20を突設してスピンドルモータ10によって回転駆動されるターンテーブル2と、ターンテーブル2の下面側に同軸かつ相対的に回転可能に配置された駆動回転体3と、駆動回転体3を回転可能に保持する固定リング4と、ターンテーブル2の周方向に沿って等間隔に配置された3個のクランプ部材5と、ターンテーブル2に保持されて各クランプ部材5を個別に弾性付勢する3個のトーションばね6とによって主に構成されている。なお、このディスククランプ装置を含む駆動ユニットは、ディスクDが装着される図示せぬディスクプレーヤの内部に昇降可能に保持されている。
【0017】
ターンテーブル2は合成樹脂製の成形品である。このターンテーブル2には、スピンドルモータ10の出力軸10aが圧入される圧入孔20aを有する凸状のハブ部20と、ハブ部20の周囲に延在するフランジ部21とが一体に形成されている。ハブ部20の内部には、圧入孔20aの周囲に出力軸10aと強嵌合する図示せぬ中央筒部が垂設されており、この中央筒部の周囲がクランプ部材5やトーションばね6を収納する収納空間Sとなっている。フランジ部21の外周部には一段高い環状平坦面として支持部21aが設けられており、この支持部21aには摩擦力を高めるためのゴムシートが付設されている。図3に示すように、支持部21a上にはディスクDが搭載されるようになっている。また、支持部21aの下面側には、図示せぬ拘束部材と係脱可能な係止溝21bが周方向に沿って一定の角度ピッチで形成されている(図1参照)。ハブ部20の外周面には周方向に等間隔な3個所に開口20bが開設されており、これらの開口20bを介して3個のクランプ部材5が収納空間S内から支持部21a上へと移動可能である。ハブ部20の上面には周方向に等間隔な3個所に軸受孔20cが開設されており、各軸受孔20cにそれぞれクランプ部材5の軸部5aが回転可能かつ昇降可能に支持されている。また、ハブ部20の上底面には周方向に等間隔な3個所から支持軸20d(図1参照)が垂設されており、各支持軸20dにトーションばね6のコイル部6aが外挿されている。
【0018】
駆動回転体3は合成樹脂製の成形品である。この駆動回転体3には、ターンテーブル2の前記中央筒部の細径部が摺動自在に挿入される摺動孔3aと、各クランプ部材5の摺動ピン5bが個別に挿入される3条のカム溝3bと、各クランプ部材5の摺動突起5cと個別に係合可能な3個のカム山3cと、図示せぬ切換え駆動部材のラック歯と噛合可能なギヤ部3dとが設けられている。カム溝3bは対応するクランプ部材5の摺動ピン5bと係合してその移動経路を規定するためのものであり、このカム溝3bに隣接するカム山3cに摺動突起5cが乗り上げることによって該クランプ部材5の高さ位置が変化するようになっている。また、駆動回転体3の下面側には固定リング4が挿入される図示せぬ凹部が設けられており、固定リング4の圧入孔4aにはスピンドルモータ10の出力軸10aが圧入される。この固定リング4によって駆動回転体3の軸線方向のガタは最小限に抑えられているため、駆動回転体3が回転時に不所望にガタつくことはない。
【0019】
クランプ部材5は合成樹脂製の成形品である。このクランプ部材5には、ターンテーブル2の軸受孔20cに昇降可能に軸支される軸部5aと、駆動回転体3のカム溝3bに摺動自在に挿入される摺動ピン5bと、駆動回転体3のカム山3cに係合可能な摺動突起5cと、ターンテーブル2の支持部21a上へせり出すことが可能な押圧リブ5dとが設けられている。押圧リブ5dの下面側はターンテーブル2の支持部21aと略平行に対向可能な押圧平坦面5eとなっており、この押圧平坦面5eはクランプ位置においてターンテーブル2の周方向に沿って延在している。なお、押圧平坦面5eには摩擦力を高めるためのゴムシートが付設されている。かかるクランプ部材5は、図3と図5に示すようにディスクDを加圧可能なクランプ位置と、図2と図4に示すようにハブ部20内へ退避した非クランプ位置との間で移動可能であり、クランプ部材5がクランプ位置にあるときには、押圧リブ5dがターンテーブル2の支持部21a上にせり出している。3個のクランプ部材5はそれぞれ軸部5aが相異なる軸受孔20cに挿入されている。また、3個のクランプ部材5はそれぞれ相異なるトーションばね6の付勢部6bによってクランプ位置へ向けて弾性付勢されている。この付勢部6bは対応するクランプ部材5を上面視で時計回りに常時付勢していると共に、該クランプ部材5を下方へ常時付勢している。そして、駆動回転体3のギヤ部3dに前記切換え駆動部材のラック歯が噛合していないときには、トーションばね6の付勢力でクランプ部材5はクランプ位置に配置されており、前記切換え駆動部材が駆動回転体3をターンテーブル2に対して一方向へ回転させると、この駆動回転体3がカム溝3b内の摺動ピン5bを駆動してクランプ部材5をハブ部20内へ退避させるようになっている。
【0020】
次に、このように構成されたディスククランプ装置の動作について説明する。図2に示すように、ディスクDが図示せぬ搬送ローラによってターンテーブル2の真上に供給されると、ディスククランプ装置を含む駆動ユニットが上昇して、ディスクDの中心孔D1内へターンテーブル2のハブ部20が挿入されていく。このとき、駆動回転体3のギヤ部3dには前記切換え駆動部材のラック歯が噛合しており、各クランプ部材5は非クランプ位置にあってハブ部20内に収納されているため、ディスクDの最内縁部(中心孔D1の周縁部)をハブ部20の外周面でガイドすることによってセンタリングが行われ、ディスクDはターンテーブル2の支持部21a上に搭載される。
【0021】
こうしてディスクDがセンタリングされながらターンテーブル2の支持部21a上に搭載されると、前記切換え駆動部材のラック歯が駆動回転体3のギヤ部3dから離脱するため、各トーションばね6の付勢力によって各クランプ部材5が非クランプ位置からクランプ位置へと移動し、それに伴って駆動回転体3は摺動ピン5bに駆動されて上面視で時計回りに回転する。その際、クランプ部材5は軸部5aを中心に回転しながら、摺動ピン5bがカム溝3bに沿って移動すると共に、摺動突起5cがカム山3cを乗り越えていくため、図7〜図9に示すようにクランプ部材5の高さ位置は変化する。すなわち、図7に示す非クランプ位置や図9に示すクランプ位置では、クランプ部材5の高さ位置は最も低くなっているが、図8に示すように摺動突起5cがカム山3cの頂部に乗り上げると、クランプ部材5の高さ位置は最大となる。それゆえ、各クランプ部材5は高さ位置を低減させながらクランプ位置に配置されて、図3に示すように、各クランプ部材5の押圧平坦面5eがディスクDの内周部の上面に圧接する。これにより、各押圧平坦面5eと支持部21aとによってディスクDの内周部が板厚方向に挟持された状態(クランプ状態)となる。なお、クランプ部材5がクランプ位置に配置されるときには、押圧リブ5dの押圧平坦面5eがディスクDの上面に対して平行度を保ったまま斜め上方から接近していくので、押圧平坦面5eはディスクDの上面に確実に面接触し、トーションばね6の付勢力でディスクDを下方へ加圧する。
【0022】
こうしてディスクDをターンテーブル2上でクランプした後、スピンドルモータ10の出力軸10aによってターンテーブル2を回転駆動すると、ターンテーブル2と一体的にディスクDや各クランプ部材5や駆動回転体3等が高速回転する。この状態で、図示せぬ光ピックアップ機構によって、ディスクDに記録されている情報の読み取りや、ディスクDに対する情報の書き込みが行われるようになっている。
【0023】
また、ターンテーブル2上のディスクDをクランプ解除するときには、前記拘束部材を係止溝21bに掛け止めすることによってターンテーブル2を拘束してから、駆動回転体3のギヤ部3dに前記切換え駆動部材のラック歯を噛合させ、この切換え駆動部材によって駆動回転体3をターンテーブル2に対して上面視で反時計回りに所定量回転させる。こうして駆動回転体3が回転させられると、カム溝3b内の摺動ピン5bが駆動回転体3によって駆動される。その結果、各クランプ部材5はトーションばね6の付勢力に抗して回転させられて、図9に示すクランプ位置から図7に示す非クランプ位置まで移動し、その途中で摺動突起5cがカム山3cを乗り越えるためクランプ部材5の高さ位置は変化する。そして、各クランプ部材5が非クランプ位置に到達するとターンテーブル2のハブ部20内に収納されるため、ディスククランプ装置を含む駆動ユニットを下降させることによってハブ部20がディスクDの中心孔D1から離脱する。それゆえ、このディスクDは前記搬送ローラによって排出可能となる。
【0024】
以上説明したように本実施例に係るディスククランプ装置にあっては、駆動回転体3にターンテーブル2に対する回転力が作用していないときに、トーションばね6の付勢力によってクランプ部材5がカム溝3bやカム山3cにガイドされながらクランプ位置へ移動するが、その際、クランプ部材5は高さ位置を低減させながらクランプ位置に配置されるため、ターンテーブル2の支持部21a上へせり出した押圧平坦面5eを支持部21a上に搭載されているディスクDの内周部の上面に圧接させることができ、これら押圧平坦面5eと支持部21aとによってディスクDの内周部は板厚方向に挟持されることになる。それゆえ、このディスククランプ装置は、ディスクDの下面とターンテーブル2の支持部21aとの間に十分な強さの摩擦力を発生させることが容易となる。しかも、クランプ部材5の押圧平坦面5eはクランプ位置においてターンテーブル2の周方向に沿って延在しており、ディスクDの上面に対する押圧平坦面5eの圧接面積が大きいため、ディスクDの下面がターンテーブル2の支持部21aに密着させやすくなっている。したがって、このディスククランプ装置は、セルフクランプ方式でありながら、ターンテーブル2に対してディスクDがスリップしにくく信頼性が高まっている。
【0025】
また、本実施例に係るディスククランプ装置は、複数のクランプ部材5がターンテーブル2の周方向に沿って等間隔に配置されているため、ディスクDの上面に複数のクランプ部材5の押圧平坦面5eをバランス良く圧接させることができるのみならず、各クランプ部材5をターンテーブル2のハブ部20内へコンパクトに収納することができて小型化が図りやすくなっている。
【0026】
なお、上記した実施例のように、トーションばね6によってクランプ部材5をクランプ位置へ向けて弾性付勢する構成にしてあると、カム溝3bやカム山3cでガイドしながらクランプ部材5を円滑に移動させることができるが、トーションばね以外のばね部材や他の適宜付勢手段によってクランプ部材を弾性付勢するようにしても良い。
【0027】
また、上記した実施例のように、クランプ部材5をガイドするカム構造として、摺動ピン5bと係合してその移動経路を規定するカム溝3bと、摺動突起5cと係合してその高さ位置を変化させるカム山3cとが並設してあると、クランプ部材5をクランプ位置と非クランプ位置との間で円滑に移動させながら、その高さ位置を円滑に変化させることが容易となるが、他のカム構造を採用することもできる。例えば、カム溝3bの内底面を起伏のある摺動面となし、この摺動面で摺動ピン5bの高さ位置を変化させるようにすれば、カム山3cを省略したカム構造によってクランプ部材5の高さ位置を変化させることが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 ユニットベース
2 ターンテーブル
3 駆動回転体
3a 摺動孔
3b カム溝
3c カム山
4 固定リング
5 クランプ部材
5a 軸部
5b 摺動ピン(第1摺動部)
5c 摺動突起(第2摺動部)
5d 押圧リブ
5e 押圧平坦面
6 トーションばね(ばね部材)
10 スピンドルモータ
10a 出力軸
20 ハブ部
20a 圧入孔
20b 開口
20c 軸受孔
21 フランジ部
21a 支持部
D ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に突設されたハブ部の周囲にディスクが搭載される支持部を有し、モータを駆動源として回転動作されるターンテーブルと、ディスクを加圧可能なクランプ位置と前記ハブ部側へ退避した非クランプ位置との間で移動可能なクランプ部材とを備え、前記クランプ部材と前記支持部とによってディスクの内周部が保持可能なディスククランプ装置において、
前記クランプ部材と摺動可能に係合するカム部を有して前記ターンテーブルの下面側に同軸かつ相対的に回転可能に配置された駆動回転体と、前記クランプ部材を前記クランプ位置へ向けて弾性付勢する付勢手段とを備え、
前記駆動回転体の回転に伴って前記クランプ部材が前記カム部にガイドされて高さ位置を変化させると共に、前記クランプ部材のうち前記クランプ位置で前記支持部上に配置される先端部に該支持部と略平行に対向可能な押圧平坦面を設け、前記クランプ部材が高さ位置を低減させながら前記クランプ位置に配置されて、前記押圧平坦面と前記支持部とによってディスクの内周部を板厚方向に挟持するようにしたことを特徴とするディスククランプ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記付勢手段が前記クランプ部材に常時弾接するばね部材であることを特徴とするディスククランプ装置。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記カム部が、前記クランプ部材の第1摺動部と係合してその移動経路を規定するカム溝と、前記クランプ部材の第2摺動部と係合してその高さ位置を変化させるカム山とを有し、このカム山の頂部に前記第2摺動部が乗り上げたときに、前記クランプ部材の高さ位置が最大となるように設定されていることを特徴とするディスククランプ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記クランプ部材が前記クランプ位置に配置されているときに、前記押圧平坦面が前記ターンテーブルの周方向に沿って延在していることを特徴とするディスククランプ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、複数の前記クランプ部材が前記ターンテーブルの周方向に沿って等間隔に配置されていることを特徴とするディスククランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−244589(P2010−244589A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89275(P2009−89275)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】