説明

ディスククランプ装置

【課題】ディスクの張り付き防止効果の高い簡易構造のディスククランプ装置の提供。
【解決手段】回転駆動するターンテーブルと協同してディスクをクランプするときにディスクの片面内周部に押し付けられるディスク当接面21を有するクランプ盤2と、クランプ盤2におけるディスク当接面21とは反対側に固定されたバックプレート3とを備える。クランプ盤2のディスク当接面21には貫通孔24が穿設され、バックプレート3には板バネ部32が一体として形成される。板バネ部32の先端には貫通孔24に対応してディスク押圧凸部33が設けられ、そのディスク押圧凸部33が板バネ部32により貫通孔24から突出する方向へ付勢される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDプレーヤやDVDレコーダといったディスク駆動装置に用いられるディスククランプ装置に係わり、特に回転させるべくクランプしたディスクが取出時にクランプ盤に張り付いたままになることを防止できるディスククランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オーディオ情報やビジュアル情報の記録/再生に用いられるディスク駆動装置は、情報記録媒体としてのディスクをターンテーブルに載せて回転させながら、その半径方向に光ピックアップを移動させて情報の読み出しや書き込みを行う構成とされている。
【0003】
ここに、ターンテーブルにディスクを固定する方法として、ターンテーブルにディスクの中心孔の周縁を押え込むチャック爪を設けたもの、あるいはターンテーブルに対向して配置されるクランプ盤によりディスクの中心部をターンテーブルに押し付けるようにしたものが知られる。
【0004】
このうち、ターンテーブルにチャック爪を設ける方式は、ターンテーブルがディスクの着脱に際して外部に露出される構造のディスク駆動装置でないと適用が困難であるが、ターンテーブルとは別のクランプ盤を用いてディスクをターンテーブルと協同して挟み込む方式では、種々のディスク駆動装置に適用してディスクのクランプ(ターンテーブルとクランプ盤とによるディスクの挟み込み)を適正に行えるという利点がある。
【0005】
例えば、ディスクをトレイに載せて搬送するトレイ搬送式のディスク駆動装置では、トレイの移動経路を挟んでターンテーブルとクランプ盤とを対向配置し、トレイによるディスク搬入時にターンテーブルとクランプ盤を接近する方向に相対移動させることにより、その両者でディスクをトレイから浮上させた状態でクランプすることができる。
【0006】
又、開閉蓋の開放によりターンテーブルが現れる構造のディスク駆動装置では、開閉蓋の内側面にクランプ盤を装置しておくことにより、ターンテーブルにディスクを載せて開閉蓋を閉めるだけでディスクをクランプすることができる。
【0007】
しかし、クランプ盤を利用するものでは、ディスクを取り出すべくクランプを解除したとき、すなわち、ターンテーブルとクランプ盤とを離間するよう開いたときに、ターンテーブルやトレイに載せられているべきディスクがクランプ盤から離れず、クランプ盤に張り付いたままターンテーブルやトレイから離間されてしまうことがある。
【0008】
このような事象は、クランプ盤が宛がわれるディスクの片面(非記録面)に記録内容などを示す粘着ラベルが貼付されている場合などにより発生し易い。そして、この場合には、開閉蓋付きのディスク駆動装置において開閉蓋を開けたときにディスクが落下してその信号記録エリアを損傷してしまったり、トレイ搬送式のディスク駆動装置においてディスクがトレイ上の所定位置に戻らないことによりトレイによるディスクの搬出が行えなくなったりする可能性がある。
【0009】
尚、クランプ板にディスクが張り付くことを防止する工夫として、クランプ盤とディスクとの接触面積を減らすべくクランプ盤に複数の突起を形成してその各突起がディスクの片面に点接触するようにしたり、クランプ盤に不織布を貼り付けたりすることも行われているが、充分な改善効果が得られ難かった。
【0010】
そこで、ターンテーブルとクランプ盤とによるディスクのクランプが解除されたとき、クランプ盤からディスクをターンテーブル側に押し込む凸部が突出する構成のディスククランプ装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−251091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示されるディスククランプ装置は、ディスクを押圧するための凸部を有する作動板と、この作動板をディスク側に付勢するバネとを内蔵する構造で、部品点数が多くコスト高であり、しかも各部品の組み付けに時間がかかるために生産効率が良くないという問題があった。
【0013】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は部品点数の少ない簡易構造にして、ディスクの張り付き防止効果の高いディスククランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係るディスククランプ装置1は、回転駆動するターンテーブル7と協同してディスクDをクランプするときに前記ディスクDの片面内周部に押し付けられるディスク当接面21を有するクランプ盤2と、前記クランプ盤2における前記ディスク当接面21とは反対側に固定されたバックプレート3と、前記ディスク当接面21に穿設された貫通孔24と、前記バックプレート3に一体として形成された板バネ部32と、前記板バネ部32の先端に設けられて前記貫通孔24から突出する方向へ付勢されるディスク押圧凸部33と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るディスククランプ装置によれば、ディスクの片面内周部に押し付けられるディスク当接面を有するクランプ盤と、これに固定されるバックプレートとを基材とし、クランプ盤のディスク当接面に貫通孔を穿設すると共に、バックプレートに板バネ部を一体に形成して、その先端に設けられるディスク押圧凸部が貫通孔から突出する方向へ付勢されるようにしていることから、新たな部品を追加せずしてディスク当接面に張り付こうとするディスクを確実に剥がす効果が得られる。
【0016】
又、部品点数の少ない簡易構造であるから、効率良く生産することができ、コストを抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るディスククランプ装置の一実施形態を示す斜視分解図
【図2】クランプ盤の底面図
【図3】図2のA−A断面図
【図4】バックプレートの平面図
【図5】図4のB−B断面図
【図6】本発明に係るディスククランプ装置の一実施形態を示す平面図
【図7】図6のC−C断面図
【図8】ディスククランプ時の状態を示す説明図
【図9】クランプ解除時におけるディスク押圧凸部の作用を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を詳しく説明する。図1から明らかなように、係るディスククランプ装置1は、概してクランプ盤2とバックプレート3との2部材構成とされる。このうち、クランプ盤2は合成樹脂などから形成される円板状で、その底面部はリング状をなす平面状のディスク当接面21とされている。ディスク当接面21の中心部はテーパ状の凹部22として窪められており、その凹部22の中心には筒状の芯部23が形成されている。又、ディスク当接面21には、凹部22を挟んで2つの貫通孔24が穿設されている。その各貫通孔24は円形であり、その直径は4〜8mm程度とされている。
【0019】
一方、バックプレート3は、磁性体金属から形成される円板状であり、その中心部にはクランプ盤2の芯部23の軸線上に位置する連結孔31が穿設されている。又、バックプレート3には、2つの板バネ部32が一体として形成されている。それら板バネ部32はアーム状の弾性板であり、その各一端は固定端としてバックプレート3に連なり、自由端となる他の各一端(先端)には貫通孔24に対応するディスク押圧凸部33が設けられている。ディスク押圧凸部33は、板バネ部32の先端をプレスすることにより板バネ部32と一体に形成されており、その形態は貫通孔24よりも直径が若干小さい半球状とされている。
【0020】
そして、上記のようなクランプ盤2とバックプレート3は、貫通孔24にディスク押圧凸部33が嵌まり込む状態で一体的に結合される。尚、図1において、4はクランプ盤2とバックプレート3との間に挟み込まれるリング状のマグネット、5はクランプ盤2とバックプレート3とを結合するべく連結孔31を通じて芯部23に形成されるネジ孔にねじ込まれる止めネジである。
【0021】
次に、図2はクランプ盤2を示す底面図であり、図3には図2におけるA−A断面を示す。図3において、23aは芯部23の一端部に形成される上記のネジ孔である。又、図3から明らかなように、クランプ盤2には、ディスク当接面21とは反対の面側において、芯部23を囲む環状内壁部25と環状外壁部26が形成されている。そして、環状内壁部25内に図1に示したマグネット4が嵌合配置される一方、環状外壁部26によって上記バックプレート3が支持される構成となっている。
【0022】
図4及び図5から明らかなように、バックプレート3は偏平な皿型円板であり、これに形成される板バネ部32は連結孔31を中心とする円弧状の形態とされている。そして、係る板バネ部32は、図5のようにディスク押圧凸部33を有する先端側がバックプレートから離間するようバックプレート3に対して傾斜状に屈曲され、図5に示す矢印方向に弾性を付与されている。又、図4から明らかなように、ディスク押圧凸部33は連結孔31を中心として点対称となる位置にある。尚、図4において、34は板バネ部32とディスク押圧部33を形成するべくバックプレート3を部分的に打ち抜いた切欠部である。
【0023】
図6はクランプ盤2とバックプレート3を結合してなるディスククランプ装置1をバックプレート3側からみた平面図であり、図7には図6におけるC−C断面を示している。図7から明らかなように、バックプレート3は、クランプ盤2の環状外壁部26上に載せられた状態で支持され、その中心に穿設された連結孔31にはクランプ盤2の芯部23の一端が挿入され、その芯部23に形成したネジ孔23aには鍔付の上記止めネジ5がねじ込まれている。これにより、バックプレート3は、クランプ盤2に対しディスク当接面21とは反対の面側に対向する状態で固定されている。尚、バックプレート3は、マグネット4の一方の磁極に吸着して磁力線が外部に放出するのを防止するヨークとして機能している。
【0024】
そして、クランプ盤2とバックプレート3が結合された状態では、クランプ盤2に穿設した貫通孔24にディスク押圧凸部33が嵌まり込み、その一部が貫通孔24からディスク当接面21側に突出するようになっている。特に、ディスク押圧凸部33を含む板バネ部32の先端がクランプ盤2によりバックプレート3側に押し上げられることにより、板バネ部32に弾性エネルギーが蓄えられており、その弾性エネルギーによりディスク押圧凸部33が貫通孔24からディスク当接面21側に突出する方向へ付勢されている。
【0025】
図8は、上記のように構成されるディスククランプ装置1を備えたディスク駆動装置の内部を示す。図8において、6はディスククランプ装置1を支持するクランプベースであり、このクランプベース6には円形のルーズホール6aが穿設されている。そして、ディスククランプ装置1は、クランプ盤2の環状外壁部26をルーズホール6aに挿入し、ルーズホール6aの周縁をクランプ盤2とバックプレート3の外周部で挟み込むことにより回転自在に支持されている。
【0026】
又、図8において、7はディスクDを回転させるためのターンテーブル、8はターンテーブル7により回転されるディスクDの盤面に沿ってその半径方向に移動しながらディスクDに情報を記録したりその記録情報を読み出したりする光ピックアップであり、それらターンテーブル7や光ピックアップ8はトラバースメカと呼ばれる一体構造のユニット(ドライブユニット)を構成し、そのユニット全体がターンテーブル7の軸方向に移動可能とされている。
【0027】
ターンテーブル7は、モータ9のロータ軸9aに固着されて一方向に回転駆動するもので、その中心部にはディスクDの中心孔に嵌合するボス部71が設けられている。ボス部71の外周には鍔部72が設けられ、その鍔部72によりディスクDが中心孔の周囲を支持されるようになっている。尚、ターンテーブル7のボス部71にはマグネット4に対応するリング状の磁性体73が固設されており、これによりディスククランプ装置1に対してターンテーブル7のボス部71が吸着するようになっている。
【0028】
ここで、以上のように構成されるディスククランプ装置1の作用を説明すれば、ターンテーブル7がその鍔部72でディスクDを支持しながらディスククランプ装置1側に移動すると、図8のようにクランプ盤2の芯部23内にモータ9のロータ軸9aが挿入する。
【0029】
又、クランプ盤2の凹部22にターンテーブル7のボス部71が嵌まり込み、その両者2,7がマグネット4の作用で吸着する。このとき、ターンテーブル7の鍔部72とは反対側でディスクDの片面内周部(中心孔の周縁)にクランプ盤2のディスク当接面21が押し付き、そのクランプ盤2とターンテーブル7の鍔部72とによりディスクDが中心部をクランプされるようになる。更に、ディスク当接面21がディスクDの片面内周部に押し付くと、ディスク当接面21より突出していたディスク押圧凸部33がディスクDに押されて貫通孔24内に引っ込むようになる。
【0030】
尚、ターンテーブル7に作用するマグネット4の磁力は、ディスク押圧凸部33に作用する板バネ部32の付勢力よりも大きくなるよう設定される。このため、ディスク当接面21がマグネット4の磁力作用でディスクDの片面内周部に押し付くときには、ディスク押圧凸部33が板バネ部32の付勢力に抗して貫通孔24内に引っ込められ、クランプ盤2とターンテーブル7は板バネ部32の弾性により離間されることなくマグネット4の磁力で強固に吸着される。
【0031】
しかして、モータ9を駆動すれば、ディスククランプ装置1、ターンテーブル7、及びその両者1,7でクランプされたディスクDが一体となって一方向に回転する。
【0032】
一方、ディスクDを取り出すべく、図9のようにターンテーブル7をクランプ盤2から離間する方向に移動させると、ターンテーブル7からディスク押圧凸部33に対して押込み力が作用しなくなるために、ディスク押圧凸部33が板バネ部32による付勢力によってディスク当接面21上に突出するようになる。従って、図9の一点鎖線で示されるように、ディスクDがクランプ盤2側に張り付いたままターンテーブル7から離間されてしまうことはなく、ディスクDをクランプしたターンテーブル7とディスククランプ装置1を離間させた場合には、そのディスクDがディスク押圧凸部33により押圧されて図9の実線で示されるようターンテーブル7上に載置されることになる。
【0033】
以上、本発明の一実施の形態を説明したが、係るディスククランプ装置1は上記例に限定されず、ディスクDのクランプ及びその解除に際し、ターンテーブル7に対してディスククランプ装置1が接近方向と離間方向に移動するようにしてもよいし、その双方1,7がそれぞれ移動するようにしてもよい。
【0034】
又、貫通孔24、板バネ部32、及びディスク押圧凸部33は2つに限らず、それぞれ1つでも、3つ以上でもよい。
【0035】
更に、上記例ではディスククランプ装置1にマグネット4を内蔵する構成としたが、そのマグネット4をターンテーブル7側に固設するようにしてもよい。更に、ディスク押圧凸部33は板バネ部32と一体に形成することに限らず、これを別部材として板バネ部32の先端に固着してもよい。
【符号の説明】
【0036】
D ディスク
1 ディスククランプ装置
2 クランプ盤
21 ディスク当接面
24 貫通孔
3 バックプレート
32 板バネ部
33 ディスク押圧凸部
7 ターンテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動するターンテーブルと協同してディスクをクランプするときに前記ディスクの片面内周部に押し付けられるディスク当接面を有するクランプ盤と、
前記クランプ盤における前記ディスク当接面とは反対側に固定されたバックプレートと、
前記ディスク当接面に穿設された貫通孔と、
前記バックプレートに一体として形成された板バネ部と、
前記板バネ部の先端に設けられて前記貫通孔から突出する方向へ付勢されるディスク押圧凸部と、
を備えることを特徴とするディスククランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−14175(P2011−14175A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154496(P2009−154496)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(508209990)J&Kカーエレクトロニクス株式会社 (98)
【Fターム(参考)】