説明

ディスククランプ装置

【課題】偏荷重のある記録媒体を回転させた場合にスライドコーンをターンテーブル方向へ押し下げようとする力を抑えることが可能なディスククランプ装置を提供する。
【解決手段】ディスククランプ装置1は、ターンテーブル10と、ディスク2の中心孔2aと係合可能なスライドコーン20と、スライドコーン20に係合したディスク2をターンテーブル10と協働して挟持するクランパ40と、スライドコーン20をクランパ40方向へ付勢するスプリング6と、を備え、スライドコーン20における中心孔2aと係合する係合面23aの傾斜角θは、ディスク2の角速度をω、偏荷重を修正するのに必要な質量をm、質量の取り付け半径をR、スライドコーン20と回転軸3aとの静摩擦係数をμ、スライドコーン20に対してターンテーブル10方向へ作用する力の閾値をf’THとしたとき、0<θ≦arctan{f’TH/(mRω)+μ}と設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状の記録媒体を回転可能に保持するディスククランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブルーレイ等といったディスク状の記録媒体に関する記録再生装置内には、記録媒体を回転可能に保持するディスククランプ機構が設けられている。スライドコーン方式を採用したディスククランプ機構では、記録媒体の中心孔がスライドコーンの外周壁に係合するが、かかる外周壁には、中心孔の寸法ばらつきを吸収するために傾斜が設けられている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−59040号公報
【特許文献2】特開平9−320159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる技術では、装置全体の薄型化を実現するために傾斜角を大きくしているが、傾斜角が大きい場合には、偏荷重のある記録媒体を回転させた場合にスライドコーンをターンテーブル方向へ押し下げようとする分力が発生するため、かかる分力以上の力をバネ荷重としてスライドコーンに付与する必要があり、記録媒体着脱時の発生音が大きくなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、偏荷重のある記録媒体を回転させた場合にスライドコーンをターンテーブル方向へ押し下げようとする力を抑えることが可能なディスククランプ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明のディスククランプ装置は、モータの回転軸と同軸に配置されており、前記回転軸と一体に回転可能なターンテーブルと、前記モータの回転軸の軸方向に移動可能であり、ディスク状の記録媒体の中心孔と係合可能なスライドコーンと、前記スライドコーンに係合した前記記録媒体を前記ターンテーブルと協働して挟持するクランパと、前記スライドコーンを前記クランパ方向へ付勢する付勢部材と、を備えるディスククランプ装置であって、前記スライドコーンにおける前記中心孔と係合する係合面の傾斜角θは、偏荷重状態の前記記録媒体の角速度をω、偏荷重を修正するのに必要な質量をm、前記質量の取り付け半径をR、前記スライドコーンと前記回転軸との静摩擦係数をμ、前記スライドコーンに対して前記モータ方向へ作用する力の閾値をf’THとしたとき、
0<θ≦arctan{f’TH/(mRω)+μ}
と設定されていることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によると、傾斜角θが可及的小さく設定されるので、偏荷重のある記録媒体を回転させた場合にスライドコーンをモータ方向へ押し下げようとする分力を抑えることができる。
【0008】
前記傾斜角θは、前記記録媒体の前記中心孔の内径の規格値の最大値をφMAX、最小値をφMIN、前記記録媒体を前記ターンテーブル及び前記クランパによって挟持する動作に必要なスライドコーンのストロークをHとしたとき、
arctan{(φMAX−φMIN)/(2H)}≦θ≦arctan{f’TH/(mRω)+μ}
と設定されていることが望ましい。
【0009】
かかる構成によると、スライドコーンのストロークの範囲内で、記録媒体がターンテーブル及びクランパによって好適に挟持される。
【0010】
また、前記スライドコーンに形成された突起が、前記ターンテーブルに形成された孔部に挿通されていることが望ましい。
【0011】
従来の技術では、スライドコーンが傾斜してモータ軸とのかじりが発生するのを防止するため、スライドコーンに形成されたかじり防止突起をカム等と係合させることによって、スライドコーンに発生する分力を軽減しており、部品及び組み立てコストが増大するとともに組み立て誤差の累積が発生していた。これに対して、本発明によると、かじり防止のための突起がターンテーブルの孔部の内周面に当接してカムの働きをするので、あらためてカムを別部品として取り付けることが不要となり、部品及び組み立てコストを削減するとともに組み立て誤差の累積を軽減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、偏荷重のある記録媒体を回転させた場合にスライドコーンをターンテーブル方向へ押し下げようとする力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るディスククランプ装置を示す断面図である。
【図2】ターンテーブルを示す斜視図であり、(a)は上から見た図、(b)は下から見た図である。
【図3】スライドコーンを示す斜視図であり、(a)は上から見た図、(b)は下から見た図である。
【図4】クランパを示す斜視図であり、下から見た図である。
【図5】図1の部分拡大図であり、スライドコーンの傾斜角を示す図である。
【図6】(a)(b)は、偏荷重状態のディスクによってスライドコーンに作用する力を説明するための模式図である。
【図7】回転速度Nと作用力Fとの関係を示すグラフである。
【図8】傾斜角θと押し下げ力f’との関係を示すグラフである。
【図9】図1の部分拡大図であり、スライドコーンの傾斜角の最小値の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るディスククランプ装置1は、ディスク状の記録媒体2(以下、ディスク2と称する)の記録再生装置においてディスク2を回転可能に保持する機構であって、ターンテーブル10と、スライドコーン20と、ストッパ30と、クランパ40と、を備える。かかるディスククランプ装置1は、記録再生装置の筐体8内に収容されており、ターンテーブル10及びクランパ40の外周縁よりも径方向外側において、ディスク2の記録面側(図1の下側)の隙間、すなわち、ディスク2とトレイ7との隙間D1よりも非記録面側(図1の上側)の隙間、すなわち、ディスク2と筐体8におけるディスク2の非記録面と対向する面との隙間D2の方が狭い。
【0016】
<ターンテーブル>
ターンテーブル10は、ディスク2が載置された状態でモータ3の回転軸3aと一体に回転する円板状部材であって、図2に示すように、中心部11と、当該中心部11よりも高く形成された外周部12と、複数(本実施形態では8個)の空気案内羽根13と、外周部12のクランパ40と対向する面(クランパ側面)の外周縁に取り付けられた弾性体14と、を備える。かかるターンテーブル10は、中心部11、外周部12及び複数の空気案内羽根13が一体成形されており、外周部12のクランパ側面に接着等によって弾性体14を取り付けることによって製造される。
【0017】
中心部11の中心には、モータ3の回転軸3a及びロータ外枠3b(図1参照)が挿通される孔部11aが形成されており、ターンテーブル10は、ロータ外枠3bを介してモータ3に固定されている。また、中心部11の外周縁には、後記するスライドコーン20の突起24が挿通される複数(本実施形態では4個)の孔部11bが等間隔に形成されている。
【0018】
また、孔部11bの回転方向Rの前方側の側縁には、上側(クランパ側)に向けて凸部11cが立設されている。すなわち、孔部11bの回転方向Rの前方側の側面11b1は、孔部11bの回転方向Rの後方側の側面よりも高い。
【0019】
複数の空気案内羽根13は、中心部11及び外周部12のモータ側面に等間隔に形成されたリブであり、モータ3によるターンテーブル10の回転に伴い、ターンテーブル10の下方にある空気をターンテーブル10の中心側、より詳細には孔部11bへ案内する。複数の空気案内羽根13は、中心側から外周側に向けて渦状に放射する形状を呈しており、空気案内羽根13の渦状は、ターンテーブルの回転方向Rの後方側に凸形状となっている。すなわち、空気案内羽根13の凹面が、回転によって空気を受け、空気をターンテーブル10の中心側へ案内する。本実施形態では、4個の長い空気案内羽根13Aが、孔部11a近傍から孔部11bの横を通って外周部12の外周縁近傍まで延設されており、残り4個の短い空気案内羽根13Bが、中心部11の外周縁近傍から外周部12の外周縁近傍まで延設されている。そして、長短の空気案内羽根13A,13Bが交互に配置されている。
【0020】
弾性体14は、合成樹脂等からなり、平坦な輪形状を呈する部材である。かかる弾性体14のクランパ側面14aは、ディスク2の内周部が載置される載置面である。ディスク2の外周部は、ターンテーブル10の外周部12から露出しており、ディスク2の外周部のモータ3と対向する面、すなわちモータ側面が情報の記録面となっている。
【0021】
<スライドコーン>
スライドコーン20は、ディスク2の中心孔2aの内周縁と係合した状態でモータ3の回転軸3aと一体に回転する部材であって、図3に示すように、中心部21と、当該中心部21よりも高く形成された外周部22と、外周部22の外周縁からモータ3側へ立設された周壁部23と、複数(本実施形態では4個)の突起24と、を備える。
【0022】
中心部21の中心には、後記するストッパ30の円筒部31が挿通される孔部21aが形成されており、中心部21の周縁には、複数(本実施形態では3個)の孔部21bが等間隔に形成されている。
周壁部23の外周面23aは、モータ3側に向かうにつれて拡径するテーパ面を呈している。
【0023】
複数の突起24は、周壁部23のモータ3側端部からモータ3側へ立設されており、先細りのテーパ形状を呈する。かかる複数の突起24は、それぞれ、前記したターンテーブル10の孔部11bに挿通されている。ここで、孔部11bは、突起24よりも大きく、突起24の周方向の側面(斜面)24aは、孔部11bの側面11b1にスプリング6の付勢力によって摺動可能に付勢されている。スプリング6は、ターンテーブル10の中心部11のクランパ側面とスライドコーン20の外周部22のモータ側面との間に介設されており、スライドコーン20をクランパ40側へ付勢するとともにスライドコーン20を回転方向へ付勢する付勢部材である。前記した複数の突起24は、孔部11bの側面11b1を摺動し、突起24の側面(斜面)24aによりスライドコーン20が中心孔21aを中心としてターンテーブル10に対して回転することによって、スライドコーン20に偏荷重が発生した場合にディスク2の中心孔2aとスライドコーン23aとのかじり発生を防止する。
【0024】
<ストッパ>
ストッパ30は、モータ3の回転軸3aと一体に回転するスライドコーン20の抜け止めの金属製部材であり、円筒部31と、円筒部31のクランパ側端部に形成されたフランジ部32と、を備える。
円筒部31には、モータ3の回転軸3aが圧入されており、また、スライドコーン20が摺動可能に外嵌されている。すなわち、円筒部31の内周面は、モータ3の回転軸3aの外周面と当接し、円筒部31の外周面は、スライドコーン20の孔部21aの内周面と摺動可能に当接している。
【0025】
<クランパ>
クランパ40は、スライドコーン20に係合されたディスク2をターンテーブル10のクランパ側面14aと協働して挟持する部材であって、図4に示すように、中心部41と、当該中心部41よりも低く形成された外周部42と、中心部41の中心からモータ3側へ立設された突起43と、外周部42のモータ側面に形成された複数の凸部44と、を備える。
【0026】
中心部41の上部には、磁力によってクランパ40及びストッパ30を吸引し、ディスク2をターンテーブル12に固定させるマグネット4及びヨーク5が配置されている。すなわち、ディスク2は、マグネット4及びヨーク5の磁力を用いることにより、ターンテーブル12及びクランパ40によって挟持される。これらマグネット4及びヨーク5は、筐体8の一部を構成する天板部9によって覆われている。
【0027】
複数の凸部44は、下面視で扇状を呈しており、外周部42の外周縁に等間隔に配置されている。
【0028】
クランパ40が上方へ移動している状態において、スライドコーン20は、スプリング6の付勢力によって上方へ移動し、スライドコーン20の中心部21のクランパ側面がストッパ30のフランジ32のモータ側面と当接している。
ディスク2の中心孔2aの内周縁がスライドコーン20の外周面23aに係合された状態でクランパ40が下方へ移動すると、クランパ40の複数の凸部44がディスク2を押圧するので、スライドコーン20は、スプリング6の付勢力に抗して下方へ移動し、ディスク2のモータ側面がターンテーブル10の弾性体14のクランパ側面14aに押圧される。ディスク2が挟持されている状態において、ターンテーブル10の弾性体14がディスク2に当接しているので、ディスク2とターンテーブル14との間の摩擦力が増加し、弾性体14とスライドコーン20を介したスプリング6との軸方向の付勢力によって、ディスク2を好適に挟持することが可能である。
【0029】
また、スプリング6の両端は、ターンテーブル10及びスライドコーン20にそれぞれ固定されているため、スライドコーン20は、ターンテーブル10に対して一方向に回転するように付勢されている。したがって、かかる状態でモータ3の回転軸3aが回転すると、ターンテーブル10、スプリング6、スライドコーン20、ストッパ30、クランパ40及びディスク2がモータ3の回転軸3aと一体に回転し、ディスク2の記録面側(図1の下側)に設けられた図示しない記録再生機構(例えば、光ピックアップ機構等)によるディスク2の記録面(下面)への情報の記録(書き込み)及びディスク2の記録面に記録された情報の再生(読み取り)が可能となる。
【0030】
ここで、図2(b)に示すように、ターンテーブル10が矢印R方向に回転すると、案内羽根13の位置Aでは、静止したターンテーブル10に案内羽根13の周速度vで空気がぶつかるのと同じ状況が発生する。したがって、位置Aにおける空気は、案内羽根13に直交する方向の速度vで中心方向へと流れる。このように、ターンテーブル10の下方にある空気は、ターンテーブル10すなわち案内羽根13の回転に伴い中心方向へと案内される。
【0031】
そして、図1に示すように、ディスククランプ装置1において、ターンテーブル10の下方の空間と、ディスク2及びクランパ40の間の空間とは、ターンテーブル10の孔部11b、ターンテーブル10及びスライドコーン20の間の空間、及び、スライドコーン20の孔部21bを介して連通している。したがって、ディスク2の回転時において、ターンテーブル10の下方の空気は、孔部11b及び孔部21bを介してディスク2及びクランパ40の空気流路へ流れ、ディスク2の外周縁を通ってターンテーブル10の下方の空間へと戻り、筐体8内を循環する。
【0032】
図6(a)に示すように、ディスククランプ装置1において、モータ3によってディスク2を回転させた際に偏荷重状態のディスク2によってスライドコーン20へ作用する力F[N](図6(b)参照)は、偏心によるバランスの不釣合いを修正するために半径R[m]に取り付けられた質量m[kg]に作用する遠心力と同等である。
すなわち、ディスク20の質量をM[kg]、回転中心と質量中心とのずれである偏心量をe[m]とすると、
Me=mR
である。
【0033】
したがって、偏荷重状態のディスク2の角速度をω[rad/s]とすると、偏荷重状態のディスク2によってスライドコーン20に作用する力(作用力)Fは、遠心力の公式によって、以下の式によって表される。
F=mRω
なお、偏荷重状態のディスクの回転速度をN[rpm]とすると、作用力Fは、以下の式によって表される。
F=mR(2πN/60)
ここで、回転速度Nは、モータ3の回転軸3aの回転速度と同じ値である。
【0034】
また、図6(b)に示すように、モータ3の回転軸3aとスライドコーン20との間の静摩擦係数をμとすると、モータ3の回転軸3aとスライドコーン20との間に作用する静摩擦力Pは、以下の式によって表される。
P=μF
【0035】
ここで、作用力Fによってスライドコーン20をターンテーブル10側へ押す力f[N]は、以下の式によって表される。
f=Ftanθ
【0036】
実際にスライドコーン20に対してターンテーブル10方向へ作用する力(押し下げ力)f’[N]は、f,Pの合成力であり、以下の式によって表される。
f’=f−P
【0037】
ここで、ディスク2の一例である光ディスクでは、規格において不釣合い量が10[g・mm]以下に設定されている。すなわち、ディスク2の半径10[mm]地点に1[g]の偏荷重を有することが規格で許容されている。この場合における回転速度N[rpm]と作用力F[N]との関係を図7のグラフに示す。
【0038】
そして、回転軸3aとスライドコーン20との静摩擦係数μが0.15、ディスク2の回転速度Nが10000[rpm]の場合における傾斜角θ[deg]と押し下げ力f’との関係を図8のグラフに示す。
【0039】
かかる場合には、試作の結果等から、押し下げ力f’が閾値f’TH=0.3[N]以下である場合に、偏荷重状態のディスク2が安定して回転することが明らかになっている。
したがって、f’TH≧f’を満たすために、前記した式から
0<θ≦arctan{f’TH/(mRω)+μ}
換言すると、
0<θ≦arctan[f’TH/{mR(2πN/60)}+μ]
という関係が導出される。
なお、係合の観点及びスライドコーン20の高さを抑える観点からは、傾斜角θが大きい方が好ましく、
θ=arctan{f’TH/(mRω)+μ}
とすることが最も好ましい。例えば、図8の場合には、傾斜角θは、9〜10[deg]と設定されることが好ましい。
【0040】
また、ディスク2の中心孔2aの内径(直径)の規格値の最大値をφMAX[mm]、最小値をφMIN[mm]、ディスク2を挟持する動作(クランプ動作)に必要なスライドコーン20のモータ3の回転軸3aの軸線方向へのストロークをH[mm]としたとき、傾斜角θは、以下の範囲に設定されることが好ましい。
arctan{(φMAX−φMIN)/(2H)}≦θ≦arctan{f’TH/(mRω)+μ}
ここで、ストロークHは、ディスク2の中心孔2aが係合されたスライドコーン20が、クランパ40によって下方に押し下げられる距離である。
【0041】
例えば、ディスク2の中心孔2aの規格値の最大値φMAXが15.15[mm]、最小値φMINが15.00[mm]、クランプ動作に必要なスライドコーン20のストロークHが1[mm]である場合には、θの下限値は、
θ=arctan{(15.15−15.00)/(2・1)}≒4.3[deg]
となる。
【0042】
かかる構成によると、傾斜角θの下限値がarctan{(φMAX−φMIN)/(2H)}と設定されるので、スライドコーン20のストロークHの範囲内で、ディスク2がターンテーブル10及びクランパ40によって好適に挟持される。
【0043】
本発明の実施形態に係るディスククランプ装置1は、偏荷重状態のディスク2を回転させてもスライドコーン20に押し下げ力f’がほとんど発生しないので、ディスク2を安定的に回転させることができる。
また、傾斜角θを上限近傍に設定することによって、スライドコーン20の高さを抑ええつつディスク2の中心孔2aの寸法ばらつきにも対応することができる。
また、かじり防止のための突起24がターンテーブル10の孔部11bの内周面に当接してカムの働きをするので、あらためてカムを別部品として取り付けることが不要となり、部品及び組み立てコストを削減するとともに組み立て誤差の累積を軽減することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ディスククランプ装置
2 記録媒体(ディスク)
2a 中心孔
6 スプリング(付勢部材)
10 ターンテーブル
11b 孔部
20 スライドコーン
21b 孔部
40 クランパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転軸と同軸に配置されており、前記回転軸と一体に回転可能なターンテーブルと、
前記モータの回転軸の軸方向に移動可能であり、ディスク状の記録媒体の中心孔と係合可能なスライドコーンと、
前記スライドコーンに係合した前記記録媒体を前記ターンテーブルと協働して挟持するクランパと、
前記スライドコーンを前記クランパ方向へ付勢する付勢部材と、
を備えるディスククランプ装置であって、
前記スライドコーンにおける前記中心孔と係合する係合面の傾斜角θは、
偏荷重状態の前記記録媒体の角速度をω、偏荷重を修正するのに必要な質量をm、前記質量の取り付け半径をR、前記スライドコーンと前記回転軸との静摩擦係数をμ、前記スライドコーンに対して前記ターンテーブル方向へ作用する力の閾値をf’THとしたとき、
0<θ≦arctan{f’TH/(mRω)+μ}
と設定されていることを特徴とするディスククランプ装置。
【請求項2】
前記傾斜角θは、
前記記録媒体の前記中心孔の内径の規格値の最大値をφMAX、最小値をφMIN、前記記録媒体を前記ターンテーブル及び前記クランパによって挟持する動作に必要なスライドコーンのストロークをHとしたとき、
arctan{(φMAX−φMIN)/(2H)}≦θ≦arctan{f’TH/(mRω)+μ}
と設定されていることを特徴とする請求項1に記載のディスククランプ装置。
【請求項3】
前記スライドコーンに形成された突起が、前記ターンテーブルに形成された孔部に挿通されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のディスククランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−109810(P2013−109810A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255679(P2011−255679)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】