説明

ディスクトレイ装置

【課題】装置本体が高所に設置された場合でも、ディスクの配置、取り出しを容易かつ適切に行えるディスクトレイを備えたディスクトレイ装置の提供。
【解決手段】ディスク配置部Sが筐体1の外部に露出するイジェクト位置と、ディスク配置部Sが筐体1の内部に納まる収納位置との間を移動可能なディスクトレイ2を備える。ディスクトレイ2は、その移動方向Lでディスク配置部Sを前後2つの領域S1,S2に分ける前後一対のトレイ21,22から成る。トレイ21は、イジェクト位置にあって筐体1の外部に先端側のみ露出する。一方、トレイ22は、その前端面22b側がトレイ21の先端に連結され、ディスクDを保持しながら前端面22bの長手方向に沿う連結軸22fを中心に回動可能とされる。又、ディスクトレイ2には、トレイ22を連結軸22f回りに回動させるトレイ転向機構3が搭載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク(円盤状記録媒体)にオーディオ情報やビジュアル情報を記録したり、その記録情報を再生したりするのに用いられる装置に係わり、特にディスクを搬送するためのディスクトレイを備えたディスクトレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスク駆動装置として、ディスクを搬送するためのディスクトレイ装置を備えたものが知られる。その種のディスクトレイ装置は、ディスクを載せたディスクトレイが水平状態を保って移動しながら、水平状に配置されるターンテーブル上までディスクを搬送する横型が主流であるが、コンピュータ本体に内蔵されるものではターンテーブルの軸線が水平方向に指向される縦型も多い。
【0003】
ここに、縦型のディスクトレイ装置によれば、ディスクトレイに配したディスクの中心孔にターンテーブルが嵌まり込むよう、ディスクトレイをターンテーブルに平行して鉛直姿勢に配置し、そのディスクトレイがターンテーブルの軸線に直交する面内で平行移動する構成とされることが一般的であるが、ディスクはディスクトレイに対してその左右(表裏)いずれかの面に配置されるようになっているので、ユーザによってはディスクトレイに対するディスクの配置やその取り出しが困難になることがある。
【0004】
例えば、ディスクトレイの移動方向に正対してディスク配置部が右側にあるとき、左利きのユーザにとってはディスクの配置、取り出しが困難となり、逆にディスクトレイの移動方向に正対してディスク配置部が左側にあるときには、右利きのユーザにとってディスクの配置、取り出しが困難となる。
【0005】
そこで、ディスクトレイを備える縦型にして、そのディスクトレイが外部に排出されたとき垂直姿勢から水平姿勢に転換してディスク配置部が上向きとなる装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−320162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるような装置によれば、横型の装置と同じくユーザの利き手に関係なくディスクの配置や取り出しを好適に行えるという効果を得られるものの、装置本体が高所に設置されてディスクトレイがユーザの目線上に位置するような使用態様とされた場合、ディスク配置部や同部に配置されたディスクを視認できなくなり、このためディスクの配置や取り出しを良好に行えなくなるという問題を残存している。
【0008】
本発明は、以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は装置本体が高所に設置された場合でも、ディスクの配置、取り出しを容易かつ適切に行えるディスクトレイを備えたディスクトレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するため、
ディスクDを配置するディスク配置部Sを有して、ディスク配置部Sが筐体1の外部に露出するイジェクト位置と、ディスク配置部Sが筐体1の内部に収まる収納位置との間を移動可能とされるディスクトレイ2を備えたディスクトレイ装置において、
ディスクトレイ2は、その移動方向Lでディスク配置部Sを前後2つの領域S1,S2に分ける第1トレイ21と第2トレイ22とから成り、
第2トレイ22は、ディスク配置部Sの分け目SLとなる一端とは反対の前端面22b側が第1トレイ21の先端に連結されて、ディスクDを保持しながら前端面22bの長手方向に沿う連結軸22f回りに回動可能とされていることを特徴とする。
【0010】
加えて、ディスクトレイ2には、第2トレイ22を連結軸22f回りに回動させるトレイ転向機構3が搭載されていることを特徴とする。
【0011】
又、前記イジェクト位置での第1トレイ21に対する前記第2トレイ22の回動角度が0度を含む任意の角度に設定可能とされていることを特徴とする。
【0012】
更に、トレイ転向機構3は、ディスクトレイ2を前記イジェクト位置と収納位置との間で移動させるトレイ移送機構(ピニオン5)からの伝達動力を受ける受動部(ラック部31c)を有して第1トレイ21に摺動可能に設けられるスライド板31と、このスライド板31と第2トレイ22とを連接してスライド板31の摺動運動を第2トレイ22の回動運動に変換するリンクアーク32とを含み、
ディスクトレイ2が前記イジェクト位置にあるとき、トレイ移送機構(ピニオン5)から受動部(ラック部31c)への動力伝達によるスライド板31の摺動により第2トレイ22の回動が行なわれ、
ディスクトレイ2を前記イジェクト位置から収納位置に移動させるときには、第1トレイ21の移動に先行してスライド板31が第1トレイ21の移動方向に摺動されることを特徴とする。
【0013】
又、トレイ転向機構3は、第2トレイ22の回動中心となる連結軸22fに固着される従動ギア35と、この従動ギア35に伝達する動力を発生する駆動源33により正逆に回転される原動ギア34と、を有して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前後に移動するディスクトレイを備えたディスクトレイ装置にして、係るディスクトレイがその移動方向でディスク配置部を前後2つの領域に分ける第1トレイと第2トレイとにより構成され、第1トレイの先端に連結される第2トレイがディスクを保持しながら前端面の長手方向に沿う連結軸回りに回動可能とされていることから、本装置が高所設置された場合でも、下方のユーザがディスクを視認可能となる位置まで第2トレイを回動させ、第2トレイに保持されたディスクを視認しながらその取り出し、交換を適切に行うことが可能となる。
【0015】
又、第2トレイの回動角度が0度を含む任意の角度に設定可能とされていることから、装置の設置状態などに応じて、ディスク配置部をディスクの着脱が行い易い方向に向けることができる。
【0016】
しかも、ディスクトレイを収納位置とイジェクト位置との間で前後移動させるトレイ移送機構の動力を利用し、ディスクトレイがイジェクト位置にあるときに第2トレイの回動が行なわれる構成としていることから、ディスクトレイに第2トレイを回動する専用の駆動源を搭載せずして第2トレイを回動することができ、ひいては製品コストを抑制しながらディスクトレイの軽量化を図ることが可能になる。
【0017】
又、第2トレイを回動させるトレイ転向機構が、専用の駆動源を備えているものでは、簡易構造のトレイ転向機構にして、その駆動源を制御するだけで第2トレイを回動させることができ、このため第2トレイの回動量を容易に制御でき、その回動角度も駆動源の動作量を制御するだけで容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るディスクトレイ装置を示す斜視図
【図2】同装置のディスクトレイを示す斜視図
【図3】(a)は第1トレイの平面図、(b)はA−A断面図
【図4】(a)は第2トレイの平面図、(b)はB−B断面図
【図5】ディスクトレイの斜視分解図
【図6】トレイ転向機構を構成するスライド板の縦断面図
【図7】ディスクトレイの平面図
【図8】ディスクトレイ装置の内部を示す断面図
【図9】第2トレイの回動状態を示す説明図
【図10】スライド板とその周辺を示す平面図
【図11】ディスクを取り出すときの状態を示す説明図
【図12】トレイ転向機構の変更例を示す説明図
【図13】本装置を縦型とした例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るディスクトレイ装置の具体的な構成例を図面に基づいて詳しく説明する。先ず、図1において、1は装置の筐体であり、その内部には図示せぬターンテーブルや光ピックアップのほか、後述するトレイ移送機構が設けられる。又、筐体1の前面は図示せぬ操作スイッチ類を配した操作パネル部11とされ、その操作パネル部11にスリット状の開口部12が形成されている。
【0020】
2は開口部12を通じて筐体1の内外に出入りする偏平板状のディスクトレイであり、その片面(図示例において上面)にはディスクを配置するためのディスク配置部Sが形成されている。ディスク配置部Sは、ディスクの外周縁を支持するための段差を付けた円形の凹みであり、その直径はディスクの直径よりも僅かに大きいものとされている。
【0021】
そして、係るディスクトレイ2は、上述のトレイ移送機構により図1の実線で示される収納位置と、二点鎖線で示されるイジェクト位置との間を図示L方向(前後方向)に移動される。尚、収納位置ではディスク配置部Sを含むディスクトレイ2の全体が筐体1の内部に収まり、イジェクト位置では筐体1の外部にディスク配置部Sが全面的に露出して同部Sに対するディスクの配置及び取り出しが可能とされる。特に、イジェクト位置では、図1の一点鎖線で示されるように、ディスクトレイ2の一部分(後述の第2トレイ22)が図示R方向(本例において上下方向)に回動するようになっているが、係る構成については後述する。
【0022】
次に、ディスクトレイ2の構造をより詳しく説明すれば、係るディスクトレイ2は合成樹脂などから成形されるもので、その片面に上述の如くディスク配置部Sが形成されている。又、図1、図2から明らかなように、ディスクトレイ2には、ディスク配置部Sの中心からその外域まで延びる切欠孔Hが穿設されている。この切欠孔Hは、上記のターンテーブルと光ピックアップとに対応して形成される開口部分で、ディスク配置部Sの中心では切欠孔Hの一端を通じてディスク配置部Sに配置されたディスクの中心がターンテーブルで支持されるようになっており、これによりディスクをディスク配置部S上に若干浮上させて回転させながら、その盤面に対して光ピックアップからレーザ光を照射することが可能とされる。
【0023】
特に、本発明に係るディスクトレイは、その移動方向(L方向)でディスク配置部Sを前後2つの領域S1,S2に分ける第1トレイ21と第2トレイ22(以下、第1、第2を省略してトレイ21,22とする)とで構成される。つまり、ディスクトレイ2は、前後に分割された一対のトレイ21,22から成り、その両トレイ21,22がディスク配置部Sの領域S1,S2を分有している。係るトレイ21,22は、ディスク配置部Sの領域S1,S2を分け合うよう別々に成形され、このうちディスク配置部Sの片側領域S1を有するトレイ21は、図2のようにトレイ22が位置する前方に向けて延びる左右一対の腕部21aを有している。
【0024】
図3から明らかなように、腕部21aにはディスク配置部Sの片側領域S1に近接する位置において内方に突出する凸部21bが設けられると共に、腕部21aの先端には円形の連結孔21cが穿設されている。又、トレイ21には、ディスク配置部Sの片側領域S1とは反対側の面(裏面)において、ガイドピン21d、ならびに腕部21aの長手方向に沿うラック部21eが形成されている。
【0025】
一方、図2から明らかなように、トレイ22には、ディスク配置部Sの片側領域S2の周縁において同領域S2内に突出するディスク保持部材22aが設けられる。尚、ディスク保持部材22aは、図2の状態において、ディスク配置部Sに配置されるディスクとの間に隙間が形成されるよう所定の高さを有しており、これによりディスク配置部S上で浮上回転されるディスクとの接触が回避されるようになっている。更に、トレイ22は、ディスク配置部Sの分け目SLとなる一端とは反対側において、その前端面を成す横長帯状の蓋板22bを一体又は別体として備えている。この蓋板22bは、図1のようにディスクトレイ2が収納位置にあるとき筐体1の開口部12を塞ぐもので、これにより筐体1内への塵埃の侵入が防止されるようになっている。又、図4から明らかなように、トレイ22には、ディスク配置部Sの片側領域S2とは反対側の面(裏面)において、ブラケット22c,22dとラック部22eとが形成されている。このうち、ブラケット22dは前端面(蓋板22b)寄りの左右両側縁より垂下されており、その内側面において前端面の長手方向に突出する連結軸22fが設けられている。
【0026】
そして、以上のようなトレイ21,22は、図5のようにトレイ21の腕部21aの先端に穿設した連結孔21cに連結軸22fを嵌め込んで連結される。これにより、トレイ22はトレイ21と平板状に連なる状態を初期位置として、連結軸22fを中心に回動可能とされる。尚、上記の初期位置ではトレイ21の凸部21bによってトレイ22が下方から支持される。
【0027】
又、図5において、3はトレイ22を連結軸22f回りに回動させるトレイ転向機構であり、本例ではそのトレイ転向機構3としてスライド板31と左右一対のリンクアーム32が用いられる。スライド板31はトレイ21の裏面に摺動可能に設けられる偏平な薄板であり、これには左右一対の長孔31aが穿設されるほか、その裏面おいてリンクアーム32の一端を接続するブラケット31bが形成される。又、図6に示されるように、スライド板31には、トレイ移送機構から伝達動力を受ける受動部として、上記の長孔31aに平行するラック部31cが形成されている。
【0028】
図7から明らかなように、スライド板31の長孔31aにはトレイ21に設けられるガイドピン21dが嵌め込まれるのであり、この状態においてラック部31cがディスクトレイ2のラック部21e,22eに平行しながらラック部21eに対して部分的に常時オーバーラップするようになっている。しかして、スライド板31は長孔31aおよびラック部31cの長手方向に摺動可能とされるが、その摺動方向はディスクトレイ2の移動方向Lに合致する。尚、ガイドピン21dの先端には、スライド板31の脱落を防止するべく図示せぬスナップリングが取り付けられる。又、図7において、4は筐体1の内部に設けられる左右一対のガイドレールであり、このガイドレール4によりディスクトレイ2がその移動方向Lに対して摺動自在に支持されている。
【0029】
一方、図7から明らかなように、トレイ転向機構3を構成するリンクアーム32は、ターンテーブルTや光ピックアップPに干渉せぬよう切欠孔Hを挟んで平行に設けられ、このリンクアーム32によってスライド板31とトレイ22が連接する構成とされる。ここに、リンクアーム32の各一端は上述の如くスライド板31のブラケット31bに接続され、他の各一端は図8のようにトレイ22のブラケット22cに接続される。
【0030】
そして、上記のようなトレイ転向機構3によれば、スライド板31がトレイ移送機構からの伝達動力を受けてトレイ21の裏面に沿って摺動すると、その摺動運動をリンクアーム32によりトレイ22の回動運動に変換することができる。但し、リンクアーム32の両端(ブラケット31b,22cとの接続部分)とトレイ22の回動中心となる連結軸22fとは同一直線上にあらず、トレイ22とリンクアーム32との接続部分(ブラケット22c)が、ブラケット31bと連結軸22fとを結ぶ線上よりもトレイ22側に位置するよう設定されるのであり、これによりリンクアーム32が思案点をもたずに確定運動することが可能とされている。
【0031】
又、図7および図8において、5は上記のトレイ移送機構を構成するピニオンであり、これはラック部21e,22e,31cに噛み合う位置で筐体1の開口部12付近に配され、図示せぬモータによって正逆に回転するようになっている。
【0032】
次に、上記のように構成されるディスクトレイ装置の作用について説明すれば、図8のように、ディスクトレイ2が収納位置にあるとき、ピニオン5にはトレイ22のラック部22eが噛み合っている。この状態で、ピニオン5を図8の時計回りに回転駆動すると、ディスクトレイ2がイジェクト位置に向けて同図右方に移動を開始する。その後、トレイ22の末端がピニオン5の位置に到達してピニオン5からラック部22eが外れるものの、ピニオン5にはラック部22eに続いてトレイ21のラック部21eが噛み合うのであり、このためディスクトレイ2の移動は続行される。そして、ディスク配置部Sが筐体1の外部に完全に露出する状態になると、トレイ21のラック部21eがピニオン5から外れてディスクトレイ2の移動が停止されるようになるが、ラック部21eがピニオン5から外れる前にはスライド板31のラック部31cがピニオン5と噛み合う。これにより、ディスクトレイ2の停止後には、トレイ21に対しスライド板31が前方に向けて摺動しながらリンクアーム32の一端を押圧するようになる。この結果、図9(a)のようにトレイ22が連結軸22fを中心に回動(上方旋回)する。特に、トレイ22の回動時にはディスク配置部Sに配置されたディスクDが、ディスク配置部Sの片側領域S2とディスク保持部材22aとの間に挟み込まれた状態でトレイ22に保持され、そのトレイ22と共に回動される。
【0033】
そして、トレイ22がディスクDを保持しながら所定位置まで回動すると、図10のようにスライド板31の長孔31aの一端がガイドピン21dの位置に達し、そのガイドピン21dを介してスライド板31がトレイ21を前方(図10の右方)に押圧するのであり、これによりピニオン5から外れた状態にあるトレイ21のラック部21eがピニオン5から更に大きく外された後、図9(b)のようにピニオン5とスライド板31のラック部31cが噛み合ったまま、ピニオン5の回転駆動が停止される。
【0034】
尚、上記のようなディスク転向機構3によるトレイ22の回動時において、ディスクDがトレイ22に確実に保持されるよう、本例ではディスク配置部Sの2領域S1,S2のうちトレイ22側の領域S2がトレイ21側の領域S1よりも大きくされるが、トレイ21,22とでディスク配置部Sを等分した場合でも、ディスク保持部材22aの働きによりディスク配置部Sに配置されたディスクDをトレイ22に取り込むことができる。
【0035】
従って、図11のように係るディスクトレイ装置がユーザの目線ELより高い位置に設置された場合でも、ディスクDの非記録面(ラベル面)を視認しながら、これをトレイ22から適切に取り出すことができ、しかもディスクDを取り出したトレイ22に別のディスクを保持せしめ、これをディスク配置部Sに配置することができる。
【0036】
ディスクDをディスク配置部Sに配置するには、図9(b)の状態において、ピニオン5を上記とは逆向き(図9の反時計回り)に回転させるのであり、これによりピニオン5と噛み合った状態のラック部31cに動力伝達が行われ、最初にスライド板31の後方(図9の左方)への摺動が開始される。尚、ピニオン5の駆動力はスライド板31、リンクアーム32、及びトレイ22を介してトレイ21をスライド板31と同方向に移動させるよう作用するが、トレイ21に作用する伝達動力は、図7に示したガイドレール4とトレイ21との間に作用する摩擦力に比べて極めて小さく、しかもトレイ21はイジェクト位置において図示せぬバネ仕込みのロック機構により弾性的にロックされる。このため、トレイ21が静止状態に保たれたまま、トレイ22がトレイ21に向けて回動(図9において左旋回)し、やがてトレイ21,22が平板状に連なり、その両者21,22の領域S1,S2の一致により円形状のディスク配置部Sが合成され、そのディスク配置部SにディスクDが配置されるようになる。そして、この段階では図5に示されるトレイ21の凸部21bによりトレイ22の回動が阻止され、しかも図10示されるスライド板31の長孔31aの一端(図10の右側端)がトレイ21のガイドピン21dを押圧することにより、上記ロック機構が解除されてトレイ21がイジェクト位置から収納位置に向けて移動され、これによりそのラック部21eがピニオン5に対して噛み合わされる。このため、スライド板31が図7に示されるトレイ21の後部に停止された状態で、ディスクトレイ2がトレイ移送機構(ピニオン5)からの伝達動力を直に受けながら収納位置まで移動されることとなる。
【0037】
このように、本発明によればディスクトレイ2がイジェクト位置にあるときトレイ22の回動運動が行なわれることから、筐体1の開口部12を小さくしながら、その開口部12に対してトレイ22が干渉することを防止でき、しかもディスクDはトレイ22から半分程度張り出した状態で保持されるので、ディスクDを取り出すときなどに、その記録面をトレイ22の部位に当てて傷付けてしまうことを抑制することができる。
【0038】
尚、上記例では、領域S2の周縁に複数のディスク保持部材22aを所定の間隔で設けるようにしているが、そのディスク保持部材22aを円弧状にして領域S2の周縁全体に設けるようにしたり、あるいはディスク保持部材22aを領域S2に対面する板状にしてトレイ22の全体がポケット状となる態様としたりしてもよい。又、図9において、トレイ22の回動角θは120度とされるが、その角度θはリンクアーム32の長さやトレイ22に対するリンクアーム32の接続位置により変更することができる。例えば、ディスクトレイ2がイジェクト位置に達したとき、これをセンサにより検知してピニオン5の回転駆動を停止することにより、トレイ22を回動させずして角度θを0度としたり、あるいはスライド板31の可動量を大きくして角度θを180度としたりすることができる。但し、図示例のようなディスクトレイ2では、角度θを大きくすると、トレイ21の腕部21aにトレイ22の蓋板22bが干渉してしまうので、角度θを大きくする場合には例えば一対の腕部21aの間隔を蓋板22bの全長よりも大きくするなどの改良が加えられる。
【0039】
更に、上記例ではトレイ転向機構3として、スライド板31とリンクアーム32とを用い、スライド板31にトレイ移送機構(ピニオン5)からの伝達動力を受ける受動部(ラック部31c)を設ける構成としたが、係るトレイ転向機構を専用の駆動源を備える構成とすることもできる。例えば、図12のようにトレイ21の腕部21aに駆動源33(可逆モータ)を取り付け、その駆動軸に原動ギア34を固着すると共に、トレイ22の回動中心となる連結軸22fに従動ギア35を固着し、駆動源33の回転駆動力が原動ギア34からアイドルギア36を介して従動ギア35に伝達される構成としてもよい。そして、図12のようなトレイ転向機構でも、ディスクトレイ2がイジェクト位置にあるとき、駆動源33を駆動することにより、上記例と同じく連結軸22fを中心にトレイ22を回動させることができる。特に、駆動源33にステッピングモータなどの制御用モータを用い、その動作量を制御することにより、トレイ22をトレイ21に対して上記例と同じく0〜180度の範囲で回動させることが可能となる。
【0040】
以上、本発明について説明したが、係るディスクトレイ装置は、ディスクトレイ2が収納位置とイジェクト位置との間を水平姿勢で移動する横型に限らず、これを図13のような縦型にしてディスクトレイ2が収納位置とイジェクト位置との間を鉛直姿勢で移動する態様としてもよく、この場合でもトレイ22を前方に回動させて、これに保持されたディスクを前方のユーザ側に差し向けることができる。
【符号の説明】
【0041】
D ディスク
S ディスク配置部
S1 ディスク配置部の片側(後側)領域
S2 ディスク配置部の片側(前側)領域
1 筐体
2 ディスクトレイ
21 第1トレイ
22 第2トレイ
22b 第2トレイの前端面(蓋板)
22f 連結軸(第2トレイの回動中心)
3 トレイ転向機構
31 スライド板
31c ラック部(受動部)
32 リンクアーム
33 駆動源
34 原動ギア
35 従動ギア
5 ピニオン(トレイ移送機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを配置するディスク配置部を有して、前記ディスク配置部が筐体の外部に露出するイジェクト位置と、前記ディスク配置部が前記筐体の内部に収まる収納位置との間を移動可能とされるディスクトレイを備えたディスクトレイ装置において、
前記ディスクトレイは、その移動方向で前記ディスク配置部を前後2つの領域に分ける第1トレイと第2トレイとから成り、
前記第2トレイは、前記ディスク配置部の分け目となる一端とは反対の前端面側が前記第1トレイの先端に連結されて、前記ディスクを保持しながら前記前端面の長手方向に沿う連結軸回りに回動可能とされていることを特徴とするディスクトレイ装置。
【請求項2】
前記ディスクトレイには、前記第2トレイを前記連結軸回りに回動させるトレイ転向機構が搭載されていることを特徴とするディスクトレイ装置。
【請求項3】
前記イジェクト位置での前記第1トレイに対する前記第2トレイの回動角度が0度を含む任意の角度に設定可能とされていることを特徴とする請求項1、又は2記載のディスクトレイ装置。
【請求項4】
前記トレイ転向機構は、前記ディスクトレイを前記イジェクト位置と収納位置との間で移動させるトレイ移送機構からの伝達動力を受ける受動部を有して前記第1トレイに摺動可能に設けられるスライド板と、このスライド板と前記第2トレイとを連接して前記スライド板の摺動運動を前記第2トレイの回動運動に変換するリンクアークとを含み、
前記ディスクトレイが前記イジェクト位置にあるとき、前記トレイ移送機構から前記受動部への動力伝達による前記スライド板の摺動により前記第2トレイの回動が行なわれ、
前記ディスクトレイを前記イジェクト位置から収納位置に移動させるときには、前記第1トレイの移動に先行して前記スライド板が前記第1トレイの移動方向に摺動されることを特徴とする請求項2記載のディスクトレイ装置。
【請求項5】
前記トレイ転向機構は、前記第2トレイの回動中心となる前記連結軸に固着される従動ギアと、この従動ギアに伝達する動力を発生する駆動源により正逆に回転される原動ギアと、を有して成ることを特徴とする請求項2記載のディスクトレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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