説明

ディスクプレーヤ

【課題】見栄えを悪化させることなく、ドロワー等のディスク搬送体の移動時の揺動をより確実に防止する。
【解決手段】ディスク搬送体1のディスク取り出し位置P2に移動してもケーシング2内に隠れている部分に設けられたラック3,4と、ディスク搬送体1がディスク収納位置P1から位置P2に移動する途中でラック3,4に噛み合いラック3,4の移動を同期させる同期手段5を備え、同期手段5は、互いに噛み合って反対方向に回転すると共に、ディスク搬送体1が位置P1から位置P2に移動する途中でラック3,4に噛み合うギヤ体11,12を有し、ラック3,4とギヤ体11,12との噛み合いの開始部分には、対応する歯同士を噛み合わせる噛み合い関係対応手段13が設けられており、ギヤ体11,12はディスク搬送体1のディスク載置面14に垂直な回転軸15まわりに回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクプレーヤに関する。更に詳しくは、本発明は、ドロワー等のディスク搬送体をディスク収納位置からディスク取り出し位置まで移動させる場合にディスク搬送体の揺動を防止する手段を有するディスクプレーヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスクを載せるトレーをディスク取り出し位置に移動させる場合の揺動を防止することが可能なディスクプレーヤとして、例えば特公平7−13844号公報に開示されたものがある。このディスクプレーヤを図13に示す。トレー101の上方には、ばね102によって引っ張られる左右一対のローラ103,103が設けられており、トレー101をディスク取り出し位置に向けて移動させた場合に、各ローラ103,103をトレー101の上面の後部に設けられている左右一対の摩擦係合部105,105に摩擦係合させている。各ローラ103,103はシャフト107によって連結されており、一体となって回転する。したがって、ローラ103,103が摩擦係合部105,105と摩擦係合すると、トレー101の左右両側部分の移動が同期し、トレー101の揺動が防止される。
【0003】
また、図14に示すように、ローラ103,103に代えてピニオン108,108(片側のみ図示)を使用し、摩擦係合部105,105に代えてラック109,109(片側のみ図示)を使用し、ピニオン108とラック109の間の滑りを防止して、トレー101の左右両側部分の移動の同期をより確実にすることも考えられている。
【0004】
【特許文献1】特公平7−13844号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のディスクプレーヤでは、左右一対のローラ103,103やピニオン108,108を1本の細長いシャフト107で連結しているので、トレー101からの反力等を受けてシャフト107が捻れたり撓んだりすることがあり、この場合には左右のローラ103,103間やピニオン108,108間に回転差が生じて、トレー101の揺動防止が不完全になってしまう。
【0006】
また、図14のディスクプレーヤでは、トレー101を移動させることで単純にラック109,109とピニオン108,108とを噛み合わせているため、トレー101をディスク収納位置からディスク取り出し位置に移動させる場合に、ピニオン108,108がいつも同じ回転位置に在るとは限らず、回転位置の変化により、ラック109,109とピニオン108,108とが噛み合うタイミングが左右でずれることがあり、この場合にはトレー101の左右両側部分の移動を同期させることができない。なお、これを防止するためには、ラック109,109の長さを延長して常にラック109,109とピニオン108,108とが噛み合っているようにすれば良いが、この場合には、トレー101をディスク取り出し位置に移動させた時に延長したラック109,109が露出することになり、ディスクプレーヤの見栄えが悪化する。
【0007】
本発明は、見栄えを悪化させることなく、ドロワー等のディスク搬送体の移動時の揺動をより確実に防止することができるディスクプレーヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ディスク搬送体の左右いずれか一方の側部に駆動力を伝えてディスク搬送体を移動させるディスクプレーヤにおいて、ディスク搬送体の両側部であってディスク取り出し位置に移動してもケーシング内に隠れている部分に設けられた左右一対のラックと、ディスク搬送体がディスク収納位置からディスク取り出し位置に移動する途中で左右一対のラックに噛み合い左右一対のラックの移動を同期させる同期手段を備え、同期手段は、互いに噛み合って反対方向に回転すると共に、ディスク搬送体がディスク収納位置からディスク取り出し位置に移動する途中で左右一対のラックにそれぞれ噛み合う左右一対のギヤ体を有し、左右一対のラックと左右一対のギヤ体との噛み合いの開始部分には、対応する歯同士を噛み合わせる噛み合い関係対応手段が設けられており、左右一対のギヤ体はディスク搬送体のディスク載置面に垂直な回転軸まわりに回転するものである。
【0009】
したがって、ディスク搬送体がディスク収納位置からディスク取り出し位置に移動すると、移動の途中で同期手段がディスク搬送体に設けられた左右一対のラックに噛み合う。同期手段の左右一対のギヤ体は互いに同期して反対方向に回転するので、左右一対のギヤ体がディスク搬送体の左右一対のラックに噛み合うことで左右一対のラックの移動も同期する。即ちディスク搬送体がその左右両側部分を同期させながら移動する。ラックとギヤ体との噛み合いの開始部分には噛み合い関係対応手段が設けられているので、常に同じ歯同士が噛み合うことになり、噛み合うタイミングのずれが防止される。
【0010】
ここで、例えばディスクを載置するキャリッジをスライド可能にドロワーに取り付け、当該ドロワーをディスク収納位置からディスク取り出し位置に移動させるタイプのディスクプレーヤでは、ディスク搬送体はドロワーである。この場合、ドロワーに1枚のキャリッジを取り付けるものでも、複数枚のキャリッジを取り付けるものでもよい。また、例えばディスクを載置するトレーをディスク収納位置からディスク取り出し位置に移動させるタイプのディスクプレーヤ、即ちドロワーを有していないタイプのディスクプレーヤでは、ディスク搬送体はトレーである。
【0011】
また、請求項2記載のディスクプレーヤは、左右一対のギヤ体の360度未満の回転でディスク搬送体はディスク収納位置からディスク取り出し位置に到達するものであり、噛み合い関係対応手段は左右一対のギヤ体にそれぞれ設けられ、左右一対のラックと左右一対のギヤ体の1番目の歯同士を噛み合わせる欠歯部である。
【0012】
ギヤ体に設けられている欠歯部は、ラックの1番目の歯(ラック側第1歯)に噛み合うギヤ体の1番目の歯(ギヤ体側第1歯)以外の歯であって、ラック側第1歯に誤って噛み合う可能性の有る歯を欠いた部分である。例えば、ラック側第1歯にギヤ体の2番目の歯、3番目の歯、4番目の歯(ギヤ体側第2歯〜第4歯)が誤って噛み合う可能性がある場合には、ギヤ体側第2歯〜第4歯を欠いておき、この部分が欠歯部である。ただし、必要以上に欠く歯の数を増やすと、ラックの更なる移動によりラック側第1歯がギヤ体側第1歯から離れても次の歯の噛み合いが開始されないことになるので、例えば、ギヤ体の5番目の歯(ギヤ体側第5歯)がラック側第1歯に噛み合う可能性がなく、ラック側第1歯がギヤ体側第1歯から離れる前にラックの5番目の歯(ラック側第5歯)に噛み合い始める場合には、ギヤ体側第5歯は残しておく。
【0013】
ディスク搬送体の駆動によってラックが移動されてギヤ体に噛み合う際、ラック側第1歯はギヤ体の欠歯部を通過しギヤ体側第1歯に当たって噛み合い始める。このため、ラック側第1歯とギヤ体側第1歯とが噛み合い、以降、欠歯部の次の歯同士、例えばラック側第5歯とギヤ体側第5歯、ラック側第6歯とギヤ体側第6歯、…というように対応する歯同士が噛み合うことになる。ラックの移動によってギヤ体は回転するが、ギヤ体の360度未満の回転でディスク搬送体はディスク収納位置からディスク取り出し位置に到達するので、ギヤ体の欠歯部が再度ラックに対向することはない。
【0014】
さらに、請求項3記載のディスクプレーヤは、左右一対のギヤ体を未回転位置に位置決めする位置決め手段を備えるものである。
【0015】
ディスク搬送体がディスク取り出し位置からディスク収納位置に戻されると、左右一対のラックが逆戻りし、左右一対のギヤ体を未回転位置に戻す。このとき、左右一対のギヤ体は位置決め手段によって位置決めされる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載のディスクプレーヤでは、ディスク搬送体の両側部であってディスク取り出し位置に移動してもケーシング内に隠れている部分に設けられた左右一対のラックと、ディスク搬送体がディスク収納位置からディスク取り出し位置に移動する途中で左右一対のラックに噛み合い左右一対のラックの移動を同期させる同期手段を備え、同期手段は、互いに噛み合って反対方向に回転すると共に、ディスク搬送体がディスク収納位置からディスク取り出し位置に移動する途中で左右一対のラックにそれぞれ噛み合う左右一対のギヤ体を有し、左右一対のラックと左右一対のギヤ体との噛み合いの開始部分には、対応する歯同士を噛み合わせる噛み合い関係対応手段が設けられており、左右一対のギヤ体はディスク搬送体のディスク載置面に垂直な回転軸まわりに回転するので、ディスク搬送体がディスク取り出し位置に移動する際、その左右両側部分を同期させながら移動させることができる。このため、ディスク搬送体の横揺れ(水平面での揺動)を防止してディスク搬送体を真っ直ぐに移動させることができる。また、左右一対のラックと左右一対のギヤ体について、常に同じ歯同士を噛み合わせることができるので、噛み合うタイミングが左右のラックとギヤ体とでずれることがなく、この点からもディスク搬送体の両側部分の移動をより確実に同期させることができる。
【0017】
また、ディスク搬送体のディスク載置面に垂直な回転軸まわりに回転する左右一対のギヤ体はディスク搬送体のディスク載置面に平行に配置されるので、ディスクプレーヤの上下寸法を大きくせずに左右一対のギヤ体を大きくすることができる。このため、ディスクプレーヤの大型化を防止することができると共に、構成部品を効率よく配置することができる。さらに、ディスク搬送体をディスク取り出し位置に移動させても左右一対のラックはケーシング内に隠れており露出することがないので、ディスクプレーヤの見栄えの悪化を防止することができる。
【0018】
また、請求項2記載のディスクプレーヤでは、左右一対のギヤ体の360度未満の回転でディスク搬送体はディスク収納位置からディスク取り出し位置に到達するものであり、噛み合い関係対応手段は左右一対のギヤ体にそれぞれ設けられ、左右一対のラックと左右一対のギヤ体の1番目の歯同士を噛み合わせる欠歯部であるので、簡単な構造でラックとギヤ体の対応する歯同士を確実に噛み合わせることができる。また、歯を欠くだけの簡単な構造であり、その形成が容易で追加部品が不要であるので、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0019】
さらに、請求項3記載のディスクプレーヤでは、左右一対のギヤ体を未回転位置に位置決めする位置決め手段を備えているので、ディスク搬送体がディスク取り出し位置からディスク収納位置に戻る途中で左右一対のギヤ体を未回転位置に戻す際、左右一対のギヤ体を正確に位置決めすることができる。このため、次にディスク搬送体がディスク取り出し位置に向けて駆動されてラックがギヤ体に噛み合い始める場合に、1番目の歯同士を確実に噛み合わせることができる。このため、同期移動の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1〜図6に、本発明のディスクプレーヤの実施形態の一例を示す。ディスクプレーヤは、ディスク搬送体1の左右いずれか一方の側部に駆動力を伝えてディスク搬送体1を移動させるものであって、ディスク搬送体1の両側部であってディスク取り出し位置P2(図6)に移動してもディスクプレーヤのケーシング2内に隠れている部分に設けられた左右一対のラック3,4と、ディスク搬送体1がディスク収納位置P1(図1)からディスク取り出し位置P2に移動する途中で左右一対のラック3,4に噛み合い左右一対のラック3,4の移動を同期させる同期手段5を備えている。
【0022】
ディスク搬送体1は、例えばドロワーである。ディスク搬送体1の底板1aの下面の一方の側部には駆動用のラック6が設けられており、この駆動用のラック6にはピニオン7が常時噛み合っている。図示しないモータによってピニオン7を回転させることで、ディスク搬送体1をディスク収納位置P1とディスク取り出し位置P2との間で往復移動させる。左右一対のラック3,4はディスク搬送体1の側壁1b,1bの後部上面に形成されている。左右一対のラック3,4をディスク搬送体1の側壁1b,1bの後部上面に形成することで、ディスク搬送体1を図6に示すようにディスク取り出し位置P2に移動させてもラック3,4が露出することがない。このため、ディスクプレーヤの見栄えの悪化を防止することができる。
【0023】
ディスク搬送体1はケーシング2内に収容されたシャーシ8にスライド可能に収容されており、シャーシ8内に収容されるディスク収納位置P1からシャーシ8の前方に突出するディスク取り出し位置P2までスライド可能となっている。ディスク搬送体1にはディスク9を載せるキャリッジ10が取り付けられている。本実施形態では、例えば3枚のキャリッジ10を上下に重ねるようにして取り付けている。各キャリッジ10はスライド可能になっており、ディスク搬送体1をディスク取り出し位置P2まで移動させた場合に上の段のキャリッジ10を奥側にスライドさせることで、下の段のキャリッジ10に載っているディスク9を取り出すことができる。なお、図1,図5,図6は、3枚のキャリッジ10が上下にぴったりと重なっている状態である。
【0024】
同期手段5は、互いに噛み合って反対方向に回転すると共に、ディスク搬送体1がディスク収納位置P1からディスク取り出し位置P2に移動する途中で左右一対のラック3,4にそれぞれ噛み合う左右一対のギヤ体11,12を有し、左右一対のラック3,4と左右一対のギヤ体11,12との噛み合いの開始部分には、対応する歯同士を噛み合わせる噛み合い関係対応手段13が設けられている。
【0025】
ギヤ体11,12は、ハブ11a,12aと、当該ハブ11a,12aに一体成形された第1の歯部11b,12b及び第2の歯部11c,12cより構成され、ディスク搬送体1のディスク載置面、本実施形態ではディスク搬送体1に設けられたキャリッジ10のディスク載置面14に垂直な回転軸15,15まわりに回転する。回転軸15,15はシャーシ8の天板8aに一体成形されている。この回転軸15,15にギヤ体11,12のハブ11a,12aは回転自在に取り付けられている。第1の歯部11b,12bと第2の歯部11c,12cとは異なる高さ位置に設けられており、第2の歯部11c,12cはシャーシ8の天板8aの外に配置されているが、第1の歯部11b,12bは天板8aに設けられたスリット16からシャーシ8内に挿入されている。左右一対のギヤ体11,12の第2の歯部11c,12cは互いに噛み合っており、同期して反対方向に回転する。また、第1の歯部11b,12bはラック3,4に噛み合うことが可能な位置に配置されている。ハブ11a,12a及び第2の歯部11c,12cをシャーシ8の外に配置することで、シャーシ8の高さ寸法を大きくせずにギヤ体11,12を設けることが可能になる。つまり、シャーシ8内に配置されたラック3,4と噛み合わせるために第1の歯部11b,12bはシャーシ8内に配置する必要があるが、ハブ11a,12a及び第2の歯部11c,12cをシャーシ8内に配置すると、プレイ時に持ち上げられるディスク9との干渉を避けるためにシャーシ8の高さ寸法を大きくして持ち上げられたディスク9に干渉しない位置にハブ11a,12a及び第2の歯部11c,12cを配置する必要がある。これに対し、本発明のディスクプレーヤでは、ハブ11a,12a及び第2の歯部11c,12cをシャーシ8の外に配置しているので、その分だけシャーシ8の高さ寸法が大きくなるのを防止することができ、ディスクプレーヤの小型化を図ることができる。
【0026】
ギヤ体11,12はディスク搬送体1のディスク載置面14、本実施例ではキャリッジ10の上面に垂直な回転軸15まわりに回転する。このため、ディスクプレーヤを大型化せずにギヤ体11,12を大きくすることができる。即ち、図14に示すディスクプレーヤのように、水平なシャフト107を中心にピニオン108,108を回転させる構成では、ピニオン108,108を大きくするとディスクプレーヤも大型化してしまう。このため、実際にはピニオン108,108を大きくすることができず、ディスク搬送体1がディスク収納位置P1からディスク取り出し位置P2に移動する間にピニオン108,108が360度以上回転することになる。本発明では、ディスク搬送体1のディスク載置面14に垂直な回転軸15まわりにギヤ体11,12を回転させるようにしているので、ディスクプレーヤを大型化せずにギヤ体11,12を大きくすることができ、左右一対のギヤ体11,12の360度未満の回転でディスク搬送体1をディスク収納位置P1からディスク取り出し位置P2に到達させることができる。左右一対のギヤ体11,12の回転を360度未満にすることができるので、後述するようにギヤ体11,12に欠歯部を形成することが可能になる。
【0027】
噛み合い関係対応手段13は左右一対のギヤ体11,12の第1の歯部11b,12bにそれぞれ設けられ、左右一対のラック3,4と左右一対のギヤ体11,12の1番目の歯R1,G1同士を噛み合わせる欠歯部(以下、欠歯部13という)である。本実施形態では、右側のギヤ体11については、第1の歯部11bの2番目の歯、3番目の歯、4番目の歯(ギヤ体側第2歯〜第4歯)が誤って右側のラック3の1番目の歯(ラック側第1歯R1)に噛み合う可能性があるので、ギヤ体側第2歯〜第4歯を欠いてあり、この部分が欠歯部13である。第1の歯部11bの5番目の歯(ギヤ体側第5歯)G5はラック側第1歯R1と誤って噛み合う可能性は無く、しかもギヤ体側第1歯G1がラック側第1歯R1から離れる前にラック側第5歯R5に噛み合い始める。このため、ギヤ体側第5歯G5は残してある。また、左側のギヤ体12については、第1の歯部12bの2番目の歯と3番目の歯(ギヤ体側第2歯,ギヤ体側第3歯)が誤ってラック側第1歯R1に噛み合う可能性があるので、ギヤ体側第2歯〜第3歯を欠いてあり、この部分が欠歯部13である。第1の歯部12bの4番目の歯(ギヤ体側第4歯)G4はラック側第1歯R1と誤って噛み合う可能性は無く、しかもギヤ体側第1歯G1がラック側第1歯R1から離れる前にラック側第4歯R4に噛み合い始める。このため、ギヤ体側第4歯G4は残してある。
【0028】
ディスクプレーヤは、左右一対のギヤ体11,12を未回転位置(図1に示す回転位置)P3に位置決めする位置決め手段17を備えている。本実施形態では、位置決め手段17はシャーシ8の天板8aの下面に設けられた凸部である。ギヤ体11,12が回転していない状態では、第1の歯部11b,12bの一端が位置決め手段17に当接している。なお、本実施形態では、リターンスプリング18によってギヤ体11,12を位置決め手段17に度当たりする方向に付勢している。リターンスプリング18は、例えば左側のギヤ体12とシャーシ8の間に設けられている。
【0029】
次に、ディスクプレーヤの作動について説明する。
【0030】
いま、図1の状態から、モータが始動してピニオン7を図1において右回転させると、ディスク搬送体1がディスク収納位置P1からディスク取り出し位置P2に向けて移動する。そして、移動の途中で同期手段5の左右一対のギヤ体11,12がディスク搬送体1に設けられた左右一対のラック3,4に噛み合う(図5)。このとき、ラック3,4とギヤ体11,12との噛み合いは、左右で同時に行われる。ギヤ体11,12の第2の歯部11c,12c同士は噛み合っており、互いに同期して反対方向に回転するので、ギヤ体11,12がディスク搬送体1のラック3,4にそれぞれ噛み合うことでラック3,4同士の移動も同期する。即ちディスク搬送体1がその左右両側部分を同期させながら移動する。このため、ディスク搬送体1の横揺れ(水平面での傾き)を防止してディスク搬送体1を真っ直ぐに移動させることができる。
【0031】
特に、ドロワー(ディスク搬送体1)に複数のキャリッジ10を設けるタイプのディスクプレーヤでは、ディスク取り出し位置P2ではドロワー1の突出量が長くなるので、ドロワー1の水平方向の傾き角度が僅かであっても、ドロワー1の先端は水平方向に大きく偏倚してしまい見栄えの悪化は顕著である。このため、特にディスク搬送体1の突出量が長くなるディスクプレーヤでは、本発明のようにディスク搬送体1の左右両側部を同期させて真っ直ぐ突出させることは見栄えの悪化を防止する上でより効果的である。
【0032】
ディスク搬送体1の駆動によってラック3,4が移動されてギヤ体11,12に噛み合う際、左右のラック3,4のラック側第1歯R1はギヤ体11,12の欠歯部13を通過しギヤ体側第1歯G1に当たって噛み合い始める。このため、ラック側第1歯R1とギヤ体側第1歯G1とが噛み合い、以降、右側のギヤ体11についてはラック側第5歯R5とギヤ体側第5歯G5、ラック側第6歯R6とギヤ体側第6歯G6、…というように対応する歯同士が噛み合うことになり、左側のギヤ体12についてはラック側第4歯R4とギヤ体側第4歯G4、ラック側第5歯R5とギヤ体側第5歯G5、…というように対応する歯同士が噛み合うことになる。このように、ラック3,4とギヤ体11,12の対応する歯同士を確実に噛み合わせることができ、この点からもディスク搬送体1の両側部分の移動を確実に同期させることができる。
【0033】
ラック3,4の移動によってギヤ体11,12は回転するが、ギヤ体11,12の360度未満の回転でディスク搬送体1はディスク収納位置P1からディスク取り出し位置P2に到達するので、ギヤ体11,12の欠歯部13が再度ラック3,4に対向することはない。欠歯部13が再度ラック3,4に対向すると、その部分ではラック3,4とギヤ体11,12の噛み合いが無くなるので、ディスク搬送体1の両側部分の移動を同期させることができない時間が発生する虞がある。本発明のディスクプレーヤでは、ギヤ体11,12の360度未満の回転でディスク搬送体1はディスク収納位置P1からディスク取り出し位置P2に到達するので、ギヤ体11,12の欠歯部13が再度ラック3,4に対向することはなく、ディスク搬送体1の両側部分の移動を同期させることができなくなる時間の発生を防止することができる。
【0034】
図6に示すように、ディスク搬送体1がディスク取り出し位置P2に到達すると、図示しないモータは停止するので、ディスク搬送体1が停止する。この状態で、ディスク9を取り出して変換することができる。
【0035】
モータが逆回転してピニオン7を図6において左回転させると、ディスク搬送体1がディスク取り出し位置P2からディスク収納位置P1に向けて戻される。これにより、左右一対のラック3,4は逆戻りし、左右一対のギヤ体11,12を逆方向に回転させる。そして、各ギヤ体11,12には欠歯部13が設けられているので、右側のギヤ体11についてはギヤ体側第5歯G5からラック側第5歯R5が離れ、左側のギヤ体12についてはギヤ体側第4歯G4からラック側第4歯R4が離れると、左右のラック側第1歯R1が欠歯部13を通過することになり、ラック3,4によってギヤ体11,12を逆回転させることができなくなるが、リターンスプリング18の付勢力によってギヤ体11,12は逆回転し、未回転位置P3に戻される。そして、ギヤ体11,12は位置決め手段17に度当たりするので、正確に位置決めされる。このため、次に、ディスク搬送体1がディスク収納位置P1からディスク取り出し位置P2に向けて移動された場合に、ラック3,4がギヤ体11,12に噛み合うタイミングを左右で同期させることができる。
【0036】
本発明の同期手段5はディスク搬送体1の駆動系とは別個に設けられているので、設計段階において後付けが可能であり、同期手段5を有していないディスクプレーヤとの部品の共通化を図ることができる。
【0037】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、図7に示すように、ラック3,4の歯のうち、欠歯部13に対応する部分19の歯を繋げても良い。
【0038】
また、上述の説明では、各ギヤ体11,12の第1の歯部11b,12bと第2の歯部11c,12cとを異なる高さ位置に設けていたが、図8に示すように、第1の歯部11b,12bと第2の歯部11c,12cとを同じ高さ位置に設けても良い。また、この場合、図9に示すように、各ギヤ体11,12を1枚の歯車として第1の歯部11b,12bと第2の歯部11c,12cとを外周上に連続した歯にしても良い。
【0039】
また、上述の説明では、噛み合い関係対応手段13はギヤ体11,12の第1の歯部11b,12bの歯を欠いた欠歯部であったが、ラック3,4とギヤ体11,12の第1の歯部11b,12bとの対応する歯同士を常に噛み合わせることができるものであれば、欠歯部に限るものではない。
【0040】
また、上述の説明では、位置決め手段17は各ギヤ体11,12の第1の歯部11b,12bの一端を度当たりさせる凸部であったが、各ギヤ体11,12を未回転位置P3に位置決めできるものであれば、凸部に限るものではない。例えば、図10に示すように、第1の歯部11b,12bに突起20を設けると共に、シャーシ8の天板8aに溝21を設け、突起20を溝21内で移動させることで各ギヤ体11,12の回転を許容し、突起20を溝21の端壁21aに度当たりさせることで各ギヤ体11,12を正確に未回転位置P3に位置決めするようにしても良い。
【0041】
なお、上述の説明では、ディスク搬送体1を移動させる駆動系とは別個に設けた左右一対のラック3,4と同期手段5とによってディスク搬送体1の左右両側部の移動を同期させていたが、駆動系にディスク搬送体1の左右両側部の移動を同期させる手段を設けても良い。即ち、1つのモータの駆動力を左右の駆動系に振り分けてディスク搬送体1の左右両側部に伝えると共に、左右の駆動系を構成する歯車の数の差を最小である1つにするようにしても良い。
【0042】
この例を図11に示す。ディスク搬送体1の左右両側部には駆動用のラック6が設けられている。ディスク搬送体1を駆動する図示しないモータからの駆動力は駆動歯車31に伝えられ、さらに左右の駆動系32,33によって左右の駆動用のラック6に伝えられる。右側の駆動系32は3つの歯車31,34,35によって構成され、駆動歯車31→歯車34→歯車35→駆動用のラック6へと駆動力を伝える。左側の駆動系33は4つの歯車31,36,27,38によって構成され、駆動歯車31→歯車36→歯車37→歯車38→駆動用のラック6へと駆動力を伝える。この場合にも、ディスク搬送体1の左右両側部の移動を同期させることができ、ディスク搬送体1の揺動を防止することができる。
【0043】
歯車にはバックラッシュがあるが、左右の駆動系32,33を構成する各歯車のバックラッシュが同じであるとすると、歯車のバックラッシュが左右の駆動用のラック6の移動の同期に与える影響は左右の駆動系32,33の歯車間で相殺されることになる。つまり、左右の駆動系32,33を構成する歯車の数が同じであれば、左右の駆動用のラック6の移動の同期について歯車のバックラッシュは影響しない。ディスクプレーヤでは左右の駆動用のラック6を同方向に移動させるため、左右の駆動系32,33の歯車数を等しくすることはできないが、歯車数の差を最小値である1にしているので、歯車のバックラッシュが左右の駆動用のラック6の移動の同期に与える影響を最小にすることができ、実用上問題にならない程度にバックラッシュの影響を抑えることができる。
【0044】
左右の駆動系32,33を構成する歯車の数の差を最小の1にすれば、即ちN個とN+1個(又はN−1個)にすれば、左右の駆動系32,33を構成する歯車の数に制限はない。例えば図11に示すように、片方の駆動系32を3つの歯車で構成し、もう片方の駆動系を4つの歯車で構成しても良く、図12に示すように、片方の駆動系32を1つの駆動歯車31で構成し、もう片方の歯車を2つの歯車31,39で構成しても良く、その他の数の組み合わせでも良い。なお、図12の例では、歯車の数を減らして製造コストの上昇を抑えることができる。また、図11の例では、歯車数は多くなるが、他の部品との干渉を避けて駆動系を配置するのが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のディスクプレーヤの実施形態の一例を示し、ディスク搬送体がディスク収納位置に移動している状態のラックと同期手段との位置関係を示す平面図である。
【図2】同ディスクプレーヤの同期手段を示す横断面図である。
【図3】同ディスクプレーヤのディスク搬送体の底面図である。
【図4】同ディスクプレーヤのディスク搬送体がディスク取り出し位置に移動している状態の斜視図である。
【図5】同ディスクプレーヤのラックと同期手段を示し、ラックとギヤ体とが噛み合い始める状態の平面図である。
【図6】同ディスクプレーヤのラックと同期手段を示し、ディスク搬送体がディスク取り出し位置に移動した状態の平面図である。
【図7】ラックの他の実施形態を示す平面図である。
【図8】同期手段の他の実施形態を示す横断面図である。
【図9】同期手段の更に他の実施形態を示す平面図である。
【図10】位置決め手段の他の実施形態を示す断面図である。
【図11】ディスク搬送体の左右両側部の移動の同期を駆動系で実現させる場合の駆動系の平面図である。
【図12】ディスク搬送体の左右両側部の移動の同期を駆動系で実現させる場合の駆動系の他の例を示す平面図である。
【図13】従来のディスクプレーヤを示す斜視図である。
【図14】従来のディスクプレーヤの他の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ディスク搬送体
2 ケーシング
3,4 左右一対のラック
5 同期手段
11,12 左右一対のギヤ体
13 欠歯部(噛み合い関係対応手段)
14 ディスク搬送体のディスク載置面
15 回転軸
17 凸部(位置決め手段)
G1 ギヤ体の1番目の歯
P1 ディスク搬送体1のディスク収納位置
P2 ディスク搬送体1のディスク取り出し位置
P3 ギヤ体の未回転位置
R1 ラックの1番目の歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク搬送体の左右いずれか一方の側部に駆動力を伝えて前記ディスク搬送体を移動させるディスクプレーヤにおいて、前記ディスク搬送体の両側部であってディスク取り出し位置に移動してもケーシング内に隠れている部分に設けられた左右一対のラックと、前記ディスク搬送体がディスク収納位置から前記ディスク取り出し位置に移動する途中で前記左右一対のラックに噛み合い前記左右一対のラックの移動を同期させる同期手段を備え、前記同期手段は、互いに噛み合って反対方向に回転すると共に、前記ディスク搬送体が前記ディスク収納位置から前記ディスク取り出し位置に移動する途中で前記左右一対のラックにそれぞれ噛み合う左右一対のギヤ体を有し、前記左右一対のラックと前記左右一対のギヤ体との噛み合いの開始部分には、対応する歯同士を噛み合わせる噛み合い関係対応手段が設けられており、前記左右一対のギヤ体は前記ディスク搬送体のディスク載置面に垂直な回転軸まわりに回転することを特徴とするディスクプレーヤ。
【請求項2】
前記左右一対のギヤ体の360度未満の回転で前記ディスク搬送体は前記ディスク収納位置から前記ディスク取り出し位置に到達するものであり、前記噛み合い関係対応手段は前記左右一対のギヤ体にそれぞれ設けられ、前記左右一対のラックと前記左右一対のギヤ体の1番目の歯同士を噛み合わせる欠歯部であることを特徴とする請求項1記載のディスクプレーヤ。
【請求項3】
前記左右一対のギヤ体を未回転位置に位置決めする位置決め手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のディスクプレーヤ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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