説明

ディスク成形金型

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディスク成形金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、射出成形機においては、加熱シリンダ内において加熱され溶融させられた樹脂を、高圧で金型装置のキャビティ空間に充填(てん)し、該キャビティ空間内において冷却して固化させた後、成形品を取り出すようになっている。そして、成形品としてディスクを成形する場合、金型装置としてディスク成形金型が使用される。
【0003】図2は従来のディスク成形金型の断面図、図3は従来のディスク成形金型の要部斜視図である。図において、11は固定金型、12は該固定金型11と対向させて接離自在に配設された可動金型であり、前記固定金型11及び可動金型12によってディスク成形金型が構成される。そして、前記可動金型12を進退させることによってディスク成形金型の型閉じ、型締め及び型開きが行われる。
【0004】また、15は中央にスプルー16を有するスプルーブッシュ、17は型締状態において形成されるキャビティ空間である。前記スプルーブッシュ15に当接させられた図示されない射出ノズルから射出された樹脂は、スプルー16を流れてキャビティ空間17に充填される。そして、前記スプルー16内において、冷却され固化された樹脂はスプルー部になり、キャビティ空間17内において、冷却され固化された樹脂は成形品としてのディスクになる。
【0005】また、14はスプルーブッシュ15の周囲に配設され、前記キャビティ空間17を形成する固定側鏡板、18は表面に微小な図示されないグルーブが形成され、前記固定側鏡板14に対して着脱自在に取り付けられた環状のスタンパ、21はスプルーブッシュ15の可動金型12側の端部に対して、着脱自在に配設されたスリーブ状のインナスタンパホルダである。該インナスタンパホルダ21は、スプルーブッシュ15の可動金型12側の端部に取り付けられたときにスタンパ18を固定側鏡板14に押し付けて保持する。そのために、前記インナスタンパホルダ21は、スタンパ18側の外周縁に、スタンパ18の内周縁を押さえるための爪片22を備える。
【0006】そして、23は型締状態において、前記固定側鏡板14との間にキャビティ空間17を形成する可動側鏡板、24は該可動側鏡板23に対して相対的に進退自在に配設されたカットパンチである。該カットパンチ24は、成形中において、キャビティ空間17に樹脂が充填された後に固定金型11側に移動させられ、ディスクに対して穴あけ加工を施す。そのために、前記カットパンチ24の後端(図2における左端)には、シリンダ32内において進退自在に配設されたピストン部31が一体に形成される。また、25は前記カットパンチ24の外周に配設されたフローティングパンチ、26は前記カットパンチ24の中央において、該カットパンチ24に対して相対的に進退自在に配設されたエジェクタピンである。該エジェクタピン26は、型開きに伴って、カットパンチ24と共に移動させられるスプルー部を突き出す。そのために、前記エジェクタピン26の後端には、ピストン部31内を進退させられるピストン33が形成される。
【0007】また、前記可動側鏡板23の外周縁に環状のキャビリング押え41が取り付けられ、該キャビリング押え41の内側にディスクの外周面を形成するための環状のキャビリング43が所定の範囲内で軸方向に進退自在に配設される。前記キャビリング43は、可動側鏡板23に配設されたスプリング44によって固定金型11側に向けて付勢される。また、前記キャビリング押え41の固定金型11側の端部には、径方向内方に突出させられ、キャビリング43の前進限位置を設定する規制部45が形成される。
【0008】ところで、型締状態において、前記スタンパ18とキャビリング43との間に適切なクリアランスCL1を確保するために、スタンパ18の径方向外方において、前記固定側鏡板14を可動金型12側に向けて突出させて環状隆起部46を形成し、該環状隆起部46とキャビリング43とを接触させるようにしている。なお、キャビリング43の内周と可動側鏡板23の凸部23aとの間には、キャビリング43を進退させるために適切なクリアランスCL2が形成される。
【0009】そして、前記キャビティ空間17に樹脂を充填するのに伴って、キャビティ空間17内にあらかじめ進入していた空気、樹脂から発生させられた揮発性ガス等のガスをディスク成形金型外に放出するために、前記環状隆起部46の先端面の円周方向における複数箇所に、径方向に延びるガス抜溝48が形成され、前記キャビリング押え41の円周方向における複数箇所に、径方向に延びるガス抜穴49が形成される。したがって、キャビティ空間17内のガスは、ガス抜溝48及びガス抜穴49を通ってディスク成形金型外に放出される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来のディスク成形金型においては、型締状態において環状隆起部46とキャビリング43とが接触させられるので、固定側鏡板14の熱がキャビリング43に伝達され、該キャビリング43が熱によって膨張することにより、キャビリング43の径が大きくなってしまう。
【0011】その結果、成形中において適切なクリアランスCL2を確保することができなくなり、ディスクの外周縁から軸方向に延びるタテバリが形成され、ディスクの外観が悪くなってしまう。本発明は、前記従来のディスク成形金型の問題点を解決して、成形品の外観を良くすることができるディスク成形金型を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】そのために、本発明のディスク成形金型においては、固定側鏡板と、型閉じ、型締め及び型開きに伴って、前記固定側鏡板に対して進退させられ、型締状態において固定側鏡板との間にキャビティ空間を形成する可動側鏡板と、前記固定側鏡板及び可動側鏡板のうちの一方に取り付けられ、成形品の外周面を形成するキャビリングと、前記固定側鏡板及び可動側鏡板のうちの他方の、円周方向における複数箇所に取り付けられ、型締状態において前記キャビリングと接触させられるカラーとを有する。そして、該各カラー間に隙間が形成される。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態におけるディスク成形金型の断面図、図4は本発明の実施の形態におけるディスク成形金型の要部斜視図である。図において、11は固定金型、12は該固定金型11と対向させて接離自在に配設された可動金型であり、前記固定金型11及び可動金型12によって金型装置としてのディスク成形金型が構成される。そして、前記可動金型12を進退させることによって、ディスク成形金型の型閉じ、型締め及び型開きが行われる。
【0014】また、15は中央にスプルー16を有するスプルーブッシュ、17は型締状態において形成されるキャビティ空間である。前記スプルーブッシュ15に当接させられた図示されない射出ノズルから射出された樹脂は、スプルー16を流れてキャビティ空間17に充填される。そして、前記スプルー16内において冷却され固化された樹脂はスプルー部になり、キャビティ空間17内において冷却され固化された樹脂は成形品としてのディスクになる。
【0015】また、14はスプルーブッシュ15の周囲に配設され、前記キャビティ空間17を形成する固定側鏡板、18は表面に微小な図示されないグルーブが形成され、前記固定側鏡板14に対して着脱自在に取り付けられた環状のスタンパ、21はスプルーブッシュ15の可動金型12側の端部に対して、着脱自在に配設されたスリーブ状のインナスタンパホルダである。該インナスタンパホルダ21は、スプルーブッシュ15の可動金型12側の端部に取り付けられたときにスタンパ18を固定側鏡板14に押し付けて保持する。そのために、前記インナスタンパホルダ21は、スタンパ18側の外周縁に、スタンパ18の内周縁を押さえるための爪片22を備える。なお、前記固定側鏡板14におけるスタンパ18と接触する部分、すなわち、環状の凸部14aは可動金型12側に突出させらる。
【0016】そして、23は型締状態において、前記固定側鏡板14との間にキャビティ空間17を形成する可動側鏡板、24は該可動側鏡板23に対して相対的に進退自在に配設されたカットパンチである。該カットパンチ24は、成形中において、キャビティ空間17に樹脂が充填された後に固定金型11側に移動させられ、ディスクに対して穴あけ加工を施す。そのために、前記カットパンチ24の後端(図1における左端)には、シリンダ32内において進退自在に配設されたピストン部31が一体に形成される。また、25は前記カットパンチ24の外周に配設されたフローティングパンチ、26は前記カットパンチ24の中央において、該カットパンチ24に対して相対的に進退自在に配設されたエジェクタピンである。該エジェクタピン26は、型開きに伴って、カットパンチ24と共に移動させられるスプルー部を突き出す。そのために、前記エジェクタピン26の後端には、ピストン部31内を進退させられるピストン33が形成される。
【0017】また、前記可動側鏡板23の外周縁に環状のキャビリング押え41が取り付けられ、該キャビリング押え41の内側にディスクの外周面を形成するための環状のキャビリング43が所定の範囲内で軸方向に進退自在に配設される。前記キャビリング43は、可動側鏡板23における円周方向の複数箇所に形成された穴23bに配設されたスプリング44によって、固定金型11側に向けて付勢される。また、前記キャビリング押え41の固定金型11側の端部には、径方向内方に突出させられ、キャビリング43の前進限位置を設定する規制部45が形成される。そして、前記可動側鏡板23におけるスタンパ18と対向する部分には、固定金型11側に向けて突出させて環状の凸部23aが形成される。
【0018】ところで、型締状態において、前記スタンパ18とキャビリング43との間に適切なクリアランスCL1を確保するために、スタンパ18及び凸部23aの径方向外方において、円周方向の複数箇所に円柱状のカラー51が固定側鏡板14から突出させて形成され、前記カラー51とキャビリング43とを接触させるようにしている。また、カラー51は固定側鏡板に対し取替可能に配設される。なお、キャビリング43の内周と凸部23aとの間には、キャビリング43を進退させるために適切なクリアランスCL2が形成される。
【0019】そして、前記キャビティ空間17に樹脂を充填するのに伴って、キャビティ空間17内にあらかじめ進入していた空気、樹脂から発生させられた揮発性ガス等のガスをディスク成形金型外に放出するために、前記キャビリング押え41の円周方向における複数箇所に、径方向に延びるガス抜穴49が形成される。したがって、キャビティ空間17内のガスは、各カラー51間の隙(すき)間及びガス抜穴49を通ってディスク成形金型外に放出される。
【0020】次に、ディスク成形金型の動作について説明する。まず、図示されない型締装置を作動させて、可動金型12を固定金型11側に移動させ、型閉じを行うと、固定側鏡板14とキャビリング押え41とが接触させられるとともに、カラー51とキャビリング43とが接触させられ、固定側鏡板14と可動側鏡板23との間にキャビティ空間17が形成される。このとき、前記キャビリング43はスプリング44の付勢力に抗して後退(図1における左方に移動)させられる。
【0021】続いて、前記型締装置を作動させて型締力を発生させ、可動金型12を固定金型11に対して押し付けて型締めを行う。そして、型締状態において、前記射出ノズルから射出された樹脂は、スプルー16を流れてキャビティ空間17に充填される。これに伴って、キャビティ空間17内にあらかじめ進入していたガスは、各カラー51間の隙間及びガス抜穴49を通ってディスク成形金型外に放出される。
【0022】このようにして樹脂が充填されると、キャビティ空間17内の樹脂が冷却され固化されてディスクが形成されるとともに、前記カットパンチ24が固定金型11側に移動させられ、ディスクに対して穴あけ加工が施される。本実施の形態においては、スタンパ18の表面に形成されたグルーブはディスクに転写される。続いて、前記型締装置を作動させて可動金型12を固定金型11から離し、型開きを行うとともに、エジェクタピン26を前進(図における右方に移動)させ、ディスクを突き出す。
【0023】このように、型締状態において、カラー51とキャビリング43とを接触させるようにしているので、接触面積を小さくすることができる。したがって、固定側鏡板14からキャビリング43に伝達される熱の量が少なくなるので、キャビリング43が熱によって膨張するのが抑制され、キャビリング43の径が小さくなる。
【0024】その結果、成形中において適切なクリアランスCL2を確保することができ、ディスクの外周縁から軸方向に延びるタテバリが形成されるのを防止することができるので、ディスクの外観を良くすることができる。なお、前記固定側鏡板14の温度が高いほど、前記スタンパ18の表面のグルーブのディスクへの転写率が高くなるので、固定側鏡板14の温度は高く設定される。本発明においては、固定側鏡板14の温度が高く設定されても、固定側鏡板14からキャビリング43に伝達される熱の量を少なくすることができるので、成形中において適切なクリアランスCL2を確保することができる。
【0025】また、スタンパ18の厚さが変更されたとき、スタンパ18の厚さに対応させて高さの異なるカラー51に取り替えることができるので、適切なクリアランスCL1を確保することができ、ディスク成形金型のコストを低くすることができる。本実施の形態においては、固定側鏡板14にカラー51が、可動側鏡板23にキャビリング43が配設されるようになっているが、固定側鏡板14にキャビリングが、可動側鏡板23にカラーが配設されるようにすることもできる。
【0026】なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0027】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によれば、ディスク成形金型においては、固定側鏡板と、型閉じ、型締め及び型開きに伴って、前記固定側鏡板に対して進退させられ、型締状態において固定側鏡板との間にキャビティ空間を形成する可動側鏡板と、前記固定側鏡板及び可動側鏡板のうちの一方に取り付けられ、成形品の外周面を形成するキャビリングと、前記固定側鏡板及び可動側鏡板のうちの他方の、円周方向における複数箇所に取り付けられ、型締状態において前記キャビリングと接触させられるカラーとを有する。そして、該各カラー間に隙間が形成される。
【0028】この場合、各カラー間に隙間が形成され、型締状態において、カラーとキャビリングとを接触させるようにしているので、接触面積を小さくすることができる。したがって、固定側鏡板及び可動側鏡板のうちの他方からキャビリングに伝達される熱の量が少なくなるので、キャビリングが熱によって膨張するのが抑制され、キャビリングの径を小さくすることができる。
【0029】その結果、成形中においてキャビリングと固定側鏡板及び可動側鏡板のうちの一方との間に適切なクリアランスを確保することができ、成形品の外周縁から軸方向に延びるタテバリが形成されるのを防止することができるので、成形品の外観を良くすることができる。また、スタンパの厚さが変更されたとき、スタンパの厚さに対応させて高さの異なるカラーに取り替えることができるので、キャビリングと固定側鏡板及び可動側鏡板のうちの他方との間に適切なクリアランスを確保することができ、ディスク成形金型のコストを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるディスク成形金型の断面図である。
【図2】従来のディスク成形金型の断面図である。
【図3】従来のディスク成形金型の要部斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるディスク成形金型の要部斜視図である。
【符号の説明】
11 固定金型
12 可動金型
14 固定側鏡板
17 キャビティ空間
23 可動側鏡板
43 キャビリング
51 カラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)固定側鏡板と、(b)型閉じ、型締め及び型開きに伴って、前記固定側鏡板に対して進退させられ、型締状態において固定側鏡板との間にキャビティ空間を形成する可動側鏡板と、(c)前記固定側鏡板及び可動側鏡板のうちの一方に取り付けられ、成形品の外周面を形成するキャビリングと、(d)前記固定側鏡板及び可動側鏡板のうちの他方の、円周方向における複数箇所に取り付けられ、型締状態において前記キャビリングと接触させられるカラーとを有するとともに、(e)該各カラー間に隙間が形成されることを特徴とするディスク成形金型。
【請求項2】 前記各カラーは円柱状に形成される請求項1に記載のディスク成形金型。
【請求項3】 前記各カラーは前記固定側鏡板及び可動側鏡板のうちの他方に取替可能に配設される請求項1に記載のディスク成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3426516号(P3426516)
【登録日】平成15年5月9日(2003.5.9)
【発行日】平成15年7月14日(2003.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−310711
【出願日】平成10年10月30日(1998.10.30)
【公開番号】特開2000−135717(P2000−135717A)
【公開日】平成12年5月16日(2000.5.16)
【審査請求日】平成12年3月24日(2000.3.24)
【出願人】(000147350)株式会社精工技研 (154)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【参考文献】
【文献】特開 平8−300421(JP,A)
【文献】特開 平8−132483(JP,A)