説明

ディスク搬送機構

【課題】線膨張係数が異なる天板と樹脂製ガイド部材とを固着するものでありながら、温度変化による熱膨張・収縮の影響により樹脂製ガイド部材が熱膨張した場合でも、当該樹脂製ガイド部材に変形や破損が生じることのないディスク搬送機構を得ることにある。
【解決手段】装置筐体1の天板4に、ディスク搬送ローラ6との間でディスクDを挟持して当該ディスクDを搬送方向にガイドする横長の樹脂製ガイド部材7を設けたディスク搬送機構において、天板4に樹脂製ガイド部材7を取り付けるためのガイド取付穴8,9を設け、樹脂製ガイド部材7にはガイド取付穴8,9に対する嵌合部7aを設け、この嵌合部7aをガイド取付穴8,9に嵌合固定させて当該ガイド取付穴8,9の長手方向端面と前記嵌合部の長手方向端面との間にクリアランス11を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車載用のディスク装置において、ディスク搬送ローラとの間でディスクを挟んで当該ディスクを搬送方向にガイドする樹脂製ガイド部材を備えたディスク搬送機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のディスク搬送機構として、樹脂製ガイド部材とディスク搬送ローラとを僅かな隙間を存して配置し、それらの両者間でディスクを挟持して当該ディスクを前記ディスク搬送ローラの回転力で搬送するように構成されたものは既に知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなディスク搬送機構においては、ディスク装置の装置筐体の上面を覆う板金製の天板に前記樹脂製ガイド部材をアウトサート成形または熱溶着する場合、前記天板に横長のガイド取付穴を設け、このガイド取付穴の全域に亘って樹脂材を充填または熱溶着することで、板金製の天板と樹脂製ガイド部材とを一体的に固着した構成とするのが一般的である。
【0003】
【特許文献1】特開2000−57665号公報([0017]〜[0023]、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された従来のディスク搬送機構は以上のように構成されているので、板金製の天板に樹脂製ガイド部材をアウトサート成形または熱溶着する構成とした場合、前記天板に設けられたガイド取付穴の全域に樹脂が充填された状態となるため、板金製の天板と樹脂製ガイド部材とでは両者の線膨張係数が異なることから、周囲の温度変化による熱膨張・収縮の影響により、特に前記樹脂製ガイド部材の長手方向において、当該樹脂製ガイド部材と前記天板が熱膨張した場合、両者の線膨張係数の差によってその天板と樹脂製ガイド部材が干渉して樹脂製ガイド部材が変形または破損するという課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、線膨張係数が異なる天板と樹脂製ガイド部材とを固着するものでありながら、温度変化による熱膨張・収縮の影響により樹脂製ガイド部材が熱膨張した場合でも、当該樹脂製ガイド部材が天板と干渉しないようにして樹脂製ガイド部材の熱膨張による変形や破損を防止することができるディスク搬送機構を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るディスク搬送機構は、ディスク搬送ローラとの間でディスクを挟持して当該ディスクを搬送方向にガイドする横長の樹脂製ガイド部材を装置筐体の天板に設けたディスク搬送機構において、前記天板に前記樹脂製ガイド部材を取り付けるためのガイド取付穴を設けると共に、前記樹脂製ガイド部材には前記ガイド取付穴に対する嵌合部を設け、この嵌合部を前記ガイド取付穴に嵌合固定させて当該ガイド取付穴の長手方向端面と前記嵌合部の長手方向端面との間にクリアランスを設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、天板のガイド取付穴に樹脂製ガイド部材を嵌合固定したディスク搬送機構において、前記ガイド取付穴の長手方向端面と、このガイド取付穴の嵌合固定された樹脂製ガイド部材の嵌合部における長手方向端面との間にクリアランスを設けるように構成したので、前記天板とは線膨張係数が異なる前記樹脂製ガイド部材が温度変化により長手方向に熱膨張しても、当該樹脂製ガイド部材の前記ガイド取付穴への嵌合部における長手方向の端面には前記クリアランスが確保されているため、前記天板と樹脂製ガイド部材とが干渉するようなことがなくなって、前記樹脂製ガイド部材の変形や破損を防止することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるディスク搬送機構を備えたディスク再生装置を天板取り外し状態で示す斜視図、図2はディスク搬送時のディスク搬送機構を部分的に示す概念的な構成説明図、図3は図1中の天板の平面図、図4は図3の裏面図、図5は図3のA−A線,C−C線に沿った拡大断面図、図6は図3のB−B線に沿った拡大断面図である。
図1に示すディスク再生装置は、ディスク再生機構2を内蔵して前面にディスク挿排口(図示せず)を有する装置筐体1と、この装置筐体1の前面側内部に配置されたディスク搬送用のローラユニット3と、前記装置筐体1の上面を覆う板金製の天板4とを備えている。
【0009】
前記ローラユニット3は、前記ディスク挿排口から挿入されたディスクD(図2参照)に下方から圧接させる方向へバネ部材(図示せず)で付勢されたベースローラ(ベース部材)5と、このベースローラ5にベアリング部材(図示せず)を介して回転自在に支持されたディスク搬送ローラ6とを備え、そのディスク搬送ローラ6がモータ(図示せず)で回転駆動されるようになっている。
【0010】
一方、前記天板4には、前記ディスク搬送ローラ6との間でディスクDを挟持して当該ディスクDを所定の搬送方向にガイドする平面横長形状をなした複数の樹脂製ガイド部材7がアウトサート成形により固着されている。そのアウトサート成形に際して、前記天板4には、図3および図4に示すように、当該天板4における前記ディスク搬送ローラ6との対応領域(樹脂製ガイド部材7の取付領域)の中央部を挟む左右両側で同列長手方向および平面ほぼ逆ハ字状に隣り合う複数(樹脂製ガイド部材7と同数)のガイド取付穴8,9と、前述のように隣り合う左右のガイド取付穴8,9におけるそれぞれの遠位端延長方向に位置する係止穴10とが設けられている。また、前記各ガイド取付穴8,9はそれぞれが平面横長矩形状に形成され、それらのガイド取付穴8,9に前記樹脂製ガイド部材7のそれぞれが個々にアウトサートされるようになっている。
【0011】
前記各樹脂製ガイド部材7は、図6に示すように、それぞれの上部長手方向に形成されて前記ガイド取付穴8,9にアウトサートされる平面横長矩形状の嵌合部7aと、前記天板4の係止穴10にアウトサートされる係止突起7bとを一体に有している。そして、前記嵌合部7aを前記ガイド取付穴8、9にアウトサートした状態では前記各樹脂製ガイド部材7の下部長手方向全域が天板4の下面から突出する下向きの突出部7cとして形成されている。この突出部7cは、前記ガイド取付穴8,9の場合と同様に隣り合う左右の樹脂製ガイド部材7におけるそれぞれの遠位端側から前記天板4の中央部に向かって漸次薄肉となる方向に傾斜した傾斜突部からなっている。
【0012】
ここで、前記樹脂製ガイド部材7の上部の嵌合部7aは、図6に示すように、その長手方向の全長L1が前記ガイド取付穴8,9の個々の長手方向全長L2よりも短く形成されている。したがって、樹脂製ガイド部材7の嵌合部7aを天板4のガイド取付穴8,9にアウトサートすることにより、当該ガイド取付穴8,9のそれぞれの長手方向両端面と前記嵌合部7aの長手方向両端面との間にはクリアランス11が形成される。また、前記係止穴10は、図5および図6に示すように天板4の上面開口側の内周縁部がテーパー状に形成されている。その係止穴10にアウトサートされた前記係止突起7bの先端は前記天板4の上面と面一になるように面打ち成形されることで、その面打ち成形部によって、前記係止突起7bが前記係止穴10から抜けないように構成されている。なお、前記ガイド取付穴の長辺部においても上面開口側の内縁部が同様なテーパ状に形成されており、前記嵌合部7aが前記ガイド穴8,9から抜けない構成となっている。
【0013】
以上説明した実施の形態1によれば、装置筐体1内に配置されたディスク搬送ローラ6と、前記装置筐体1の天板4に設けられて前記ディスク搬送ローラ6との間でディスクDを挟持して所定の搬送方向にガイドする横長の樹脂製ガイド部材7とを備えたディスク搬送機構において、前記天板4に前記樹脂製ガイド部材7を取り付けるためのガイド取付穴8,9を、かつ前記樹脂製ガイド部材7には前記ガイド取付穴8,9に嵌合固定される嵌合部7aをそれぞれ設け、その嵌合部7aの長手方向の長さL1を前記ガイド取付穴8,9の長手方向の長さL2よりも短く設定して前記ガイド取付穴8,9に前記嵌合部7aをアウトサートにより嵌合固定させることで、当該嵌合部7aの長手方向両端面と前記ガイド取付穴8,9の長手方向両端面との間にクリアランス11が設けられるように構成したので、温度変化による板金製の天板4と樹脂製ガイド部材7との線膨張係数の差で前記樹脂製ガイド部材7が熱膨張しても、当該樹脂製ガイド部材7は長手方向両端面のクリアランス11によって前記天板4と干渉するようなことがなくなって変形したり破損したりするのを抑制できるという効果がある。
【0014】
ここで、温度変化による材料の熱膨張の影響は「材料のもつ線膨張係数×温度変化×長さ」で算出されるため、材料の長手方向に対して大きく影響するが、前述したように実施の形態1では、板金製の天板4のガイド取付穴8,9にアウトサートされた樹脂製ガイド部材7の嵌合部7aの長手方向両端にクリアランス11が確保されるため、温度変化による樹脂製ガイド部材7の変形や破損を防止することができる。
【0015】
また、前記実施の形態1では、天板4のガイド取付穴8,9にアウトサートされた横長の樹脂製ガイド部材7を前記天板4の中央部に向かって漸次薄肉となるように形成し、その樹脂ガイド部材に設けられた嵌合部7aと係止突起7bが嵌挿される前記ガイド取付穴8,9の長辺部および係止穴10を天板4の上面開口部側周縁部が漸次体径となるテーパ状に形成し、それらの穴にアウトサートされて当該ガイド取付穴8,9および係止穴10から上方に突出する前記嵌合部7aと係止突起7bの先端を前記天板4の上面と画一になるように面打ち成形するように構成したので、前記天板4にアウトサートされた樹脂ガイド部材7が前記ガイド穴8,9、係止穴10から抜けるのを、前記嵌合部7aおよび前記係止突起7b先端の面打ち成形部によって確実に抑制することができるという効果がある。
【0016】
さらには、前述のように樹脂ガイド部材の嵌合部7a及び係止突起7bの先端が天板4の上面と画一に成形されることによって、当該天板4上に別部品を配置したり這わせたりすることが可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1によるディスク搬送機構を備えたディスク再生装置を天板取り外し状態で示す斜視図である。
【図2】ディスク搬送時のディスク搬送機構を部分的に示す概念的な構成説明図である。
【図3】図1中の天板の平面図である。
【図4】図3の裏面図である。
【図5】図5(a)は図3のA−A線,C−C線に沿った拡大断面図、図5(b)は図5(a)の分解断面図である。
【図6】図3のB−B線に沿った拡大断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 装置筐体、2 ディスク再生機構、3 ローラユニット、4 天板、5 ベースローラ(ベース部材)、6 ディスク搬送ローラ、7 樹脂製ガイド部材、7a 嵌合部、7b 係止突起、7c 突出部、8,9 ガイド取付穴、10 係止穴、11 クリアランス、D ディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク搬送ローラとの間でディスクを挟持して当該ディスクを搬送方向にガイドする横長の樹脂製ガイド部材を装置筐体の天板に設けたディスク搬送機構において、前記天板に前記樹脂製ガイド部材を取り付けるためのガイド取付穴を設けると共に、前記樹脂製ガイド部材には前記ガイド取付穴に対する嵌合部を設け、この嵌合部を前記ガイド取付穴に嵌合固定させて当該ガイド取付穴の長手方向端面と前記嵌合部の長手方向端面との間にクリアランスを設けたことを特徴とするディスク搬送機構。
【請求項2】
天板のガイド取付穴を樹脂製ガイド部材の嵌合部よりも長く形成し、前記ガイド取付穴の長手方向両端と前記嵌合部の長手方向両端との間にクリアランスを形成したことを特徴とする請求項1記載のディスク搬送機構。
【請求項3】
天板には樹脂製ガイド部材取付領域の中央部を挟む左右両側にガイド取付穴を設け、前記ガイド取付穴のそれぞれに左右の樹脂製ガイド部材の嵌合部が個々に嵌合固定されて各樹脂製ガイド部材の長手方向全長に亘る下部が前記天板の下面から突出しており、それらの突出部は、前記天板の両端側から中央部に向かって漸次薄肉となる方向に傾斜した傾斜突部からなっていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のディスク搬送機構。
【請求項4】
樹脂製ガイド部材上に嵌合部と係上突起が一体成形され、天板には前記嵌合部及び係止突起をアウトサートする断面テーパ形状の取付穴が設けられ、この取付穴にアウトサートされた前記嵌合部及び係止突起の先端が前記天板の上面と画一となるように面打ち成形されていることを特徴とする請求項3記載のディスク搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−207309(P2007−207309A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23187(P2006−23187)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】