説明

ディスク搬送装置及びディスク再生装置

【課題】ゴムローラの取付作業性を損なうことなく、ゴムローラの空転、ゴムローラの変形といった不具合を解消することができるディスク搬送装置及び該ディスク搬送装置を備えたディスク再生装置を提供する。
【解決手段】ディスク形状の記録媒体を所定方向へ搬送する搬送駆動ローラ42を備えたスロットローディング方式のディスク搬送装置において、搬送駆動ローラ42及び搬送支持ローラ52は、軸部を有するローラ基部と、該ローラ基部の軸部に外嵌した略円筒状のゴムローラ44,54とを備え、前記ローラ基部の軸部は、該軸部に対するゴムローラ44,54の空転止めを行う凸部を外周面に備え、ゴムローラ44,54は、前記凸部に係止する係止部を内周側に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク形状の記録媒体を搬送するスロットローディング方式のディスク搬送装置、及び該ディスク搬送装置を備えたディスク再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スロットローディング方式のディスク搬送装置を備えたディスク再生装置が実用化されている。スロットローディング方式のディスク搬送装置の方式の1つとして、ディスク挿入口の内側両端部に配された搬送ローラを備える方式がある。搬送ローラは、軸部と、該軸部に圧入されたゴムローラとで構成される。搬送ローラは、ディスク挿入口に挿入された光ディスクの外周部を両側から保持し、該搬送ローラの回転によって、ディスク装置内部のターンテーブルへ搬送し、また、搬送ローラの逆回転によって、光ディスクをディスク装置外部へ搬送する。
【0003】
ところで、軸部に対してゴムローラが空転すると、光ディスクを搬送する駆動力が低下するため、ゴムローラが空転しないよう、適当な圧入しろを設けてゴムローラを軸部に圧入する必要があった。
圧入しろが大き過ぎる場合、ゴムローラの表面の張りが大きくなり、光ディスクとの摩擦によってゴムローラが削れ易くなる。ゴムローラが削れると、搬送力が低下するという問題が発生する。また、ゴムローラの削れ粉がディスクに付着するという問題が発生する。更に、ゴムローラを軸部に圧入しづらくなり、作業性が悪化するという問題が発生する。
逆に、圧入しろが小さ過ぎる場合、上述の問題は解消するが、軸部に対してゴムローラが空転し、光ディスクが搬送されなくなるという問題が発生する。
【0004】
なお、軸部に挿入されたゴムローラを軸方向から挟み込むことによって、ゴムローラを固定する方法もある。しかし、上下の挟みしろが大きすぎると、軸部に対するゴムローラの取付作業性が悪化し、取付状態でのゴムローラの変形を招き、上述と同様の問題が発生する。また、上下の挟みしろが小さすぎると、ゴムローラの空転によって、光ディスクが搬送されないという問題が発生する。
【0005】
特許文献1には、上述の問題を解決することを目的としたディスク装置が開示されている。特許文献1に係るディスク装置は、ディスク挿入口の一方側の搬送ローラをモータにて回転する駆動ローラとし、他方側の搬送ローラを回転しない固定ローラとして構成している。固定ローラは、軸部と、該軸部に遊嵌したゴムローラとを備える。
ゴムローラは、軸断面正六角形状の軸穴を有し、軸部は、外周面に平坦面を形成し、光ディスクが駆動ローラ及び固定ローラによって挟まれて搬送される際には、固定ローラを構成するゴムローラの軸穴が軸部の平坦部に係合して空転が規制されるように構成されている。
【0006】
特許文献1によれば、ゴムローラの空転、ゴムローラの削れ粉の発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−185519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に係るディスク装置においては、短時間ではあるが、ゴムローラが軸部に係合するまでの間、空転が発生するため、光ディスクを円滑に搬送することができないという問題があった。また、駆動ローラ側においてはディスク搬送時に当接する円周部の厚みが不均一の為、接触圧が不均一になり搬送力における上述の問題を解決することができないという問題があった。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、搬送ローラを構成する軸部の外周面にゴムローラの空転止めを行う凸部又は凹部を設け、更にゴムローラに、該凸部又は凹部に係止する係止部を設けることにより、ゴムローラの取付作業性を損なうことなく、ゴムローラの空転、ゴムローラの変形、削れ粉の発生といった不具合を解消することができるディスク搬送装置及び該ディスク搬送装置を備えたディスク再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るディスク搬送装置は、ディスク形状の記録媒体を所定方向へ搬送する搬送ローラを備えたスロットローディング方式のディスク搬送装置において、前記搬送ローラは、軸部を有するローラ基部と、該ローラ基部の軸部に外嵌した略円筒状のゴムローラとを備え、前記ローラ基部の軸部は、該軸部に対する前記ゴムローラの空転止めを行う凸部又は凹部を外周面に備え、前記ゴムローラは、前記凸部又は凹部に係止する係止部を内周側に備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るディスク搬送装置は、前記ゴムローラは、外周面にその周方向に沿って設けられた環状溝部を備え、前記ローラ基部の軸部の凸部は、前記軸部の先端側及び/又は基部側に設けられており、周方向の幅が、先端側及び/又は基部側に比べて軸方向中央側の方が狭いテーパ部を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るディスク搬送装置は、前記係止部は、周方向の幅が、前記ゴムローラの軸方向端側に比べて、軸方向中央側の方が広いテーパ部を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るディスク再生装置は、上述のいずれか一つのディスク搬送装置と、該ディスク搬送装置にて搬送された記録媒体のデータを再生する再生部とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、搬送ローラを構成する軸部の外周面に、ゴムローラの空転止めを行う凸部又は凹部が設けられ、ゴムローラの内周側に、凸部又は凹部に係止する係止部が設けられている。従って、ゴムローラは軸部に対して空転しない。また、軸部に対してゴムローラを圧入する必要が無いため、軸部にゴムローラを圧入する場合に比べて、ゴムローラは変形しない。更に、ゴムローラの変形による削れ粉の発生、搬送力の低下も発生しない。
【0015】
本発明にあっては、凸部は、軸部の先端側及び/又は基部側に設けられており、周方向の幅が、先端側及び/又は基部側に比べて軸方向中央側の方が小さくなるように形成されたテーパ部を備える。なお、先端側及び/又は基部側は、先端側若しくは基部側、又は先端側及び基部側双方を意味する。また、ゴムローラは、外周面にその周方向に沿って設けられた環状溝部を備える。
従って、ディスク搬送時の搬送負荷によって、軸部に対してゴムローラに回転させようとする力が加えられた場合、ゴムローラは中心線方向、即ちディスク状の記録媒体の厚み方向へと縮む方向に力が加えられる事により、記録媒体をより強く保持することができる。
【0016】
本発明にあっては、係止部は、周方向の幅が、ゴムローラの軸方向端側に比べて、軸方向中央側の方が大きくなるように形成されたテーパ部を備える。
従って、ディスク搬送時の搬送負荷によって、軸部に対してゴムローラに回転させようとする力が加えられた場合、ゴムローラは、より効果的に中心線方向に縮み、記録媒体をより強く保持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、搬送ローラを構成するゴムローラの取付作業性を損なうことなく、ゴムローラの空転、ゴムローラの変形、削れ粉の発生といった不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係るディスク再生装置の一例を模式的に示した斜視図である。
【図2】筐体内部に設けられたディスク搬送装置の構成を模式的に示す側面図である。
【図3】筐体内部に設けられたディスク搬送装置の構成を模式的に示す側断面図である。
【図4】ディスク搬送装置を模式的に示す斜視図である。
【図5】ディスク搬送装置を模式的に示す分解斜視図である。
【図6】ローラ歯車の構成を示した斜視図である。
【図7】ローラ歯車の構成を示した平面図等である。
【図8】ゴムローラの構成を示した斜視図である。
【図9】ゴムローラの構成を示した平面図等である。
【図10】支持アーム基板に設けられたローラ支持部の構成を示した斜視図である。
【図11】ローラ支持部の構成を示した平面図である。
【図12】本実施の形態に係るディスク搬送装置の作用を概念的に説明する説明図である。
【図13】本実施の形態に係るディスク搬送装置の作用を概念的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の実施の形態に係るディスク再生装置の一例を模式的に示した斜視図である。本発明の実施の形態に係るディスク再生装置は、ディスクローディング方式のディスク再生装置であり、正面側に光ディスクDが挿入されるスリット状のディスク挿入口11aを有する偏平略直方体の筐体1を備える。光ディスクDは、例えば、BD(Blu-ray Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)等である。筐体1は、ディスク挿入口11aから挿入された光ディスクDを筐体1内外へ搬送するディスク搬送装置3と、筐体1内部へ搬送された光ディスクDの再生を行う再生部2とを内部に備える。再生部2は、光ディスクDを回転させるターンテーブル、光ディスクDに記録されたデータを読み出す光ピックアップ等で構成されている。
以下、図1中A矢印で示した方向を搬入方向、図1中B矢印で示した方向を搬出方向という。また、ディスク挿入口11aの長手方向を上下方向とし、ディスク挿入口11aの短手方向を横方向とする。
【0020】
図2は、筐体1内部に設けられたディスク搬送装置3の構成を模式的に示す側面図、図3は、筐体1内部に設けられたディスク搬送装置3の構成を模式的に示す側断面図、図4は、ディスク搬送装置3を模式的に示す斜視図、図5は、ディスク搬送装置3を模式的に示す分解斜視図である。
【0021】
<ディスク搬送装置>
ディスク搬送装置3は、筐体1内部におけるディスク挿入口11aの両端部夫々に設けられた搬送駆動アーム4及び搬送支持アーム5と、搬送駆動アーム4及び搬送支持アーム5を連動させるリンク機構6と、各種構成部を保持する略矩形板状のブラケット7とを備える。搬送駆動アーム4及び搬送支持アーム5は、図3中白抜き矢印で示すように、接離方向へ回転可能に支持されており、図示しない付勢手段、例えばコイルばねによって、光ディスクDを両側から挟み込む方向に付勢されている。搬送駆動アーム4は、光ディスクDを搬送すべく回転駆動する搬送駆動ローラ42,42を備え、搬送支持アーム5は、回転せずに光ディスクDを支持する搬送支持ローラ52,52を備える。ディスク挿入口11aに挿入された光ディスクDは、その外周部分を搬送駆動ローラ42,42及び搬送支持ローラ52,52によって支持乃至保持され、搬送駆動ローラ42,42の回転によって、前記付勢手段の付勢力に逆らいながら、筐体1内部に引き込まれる。
以下、搬送駆動アーム4、搬送支持アーム5、リンク機構6、ブラケット7の全体構成を説明し、次いで、本願発明の特徴部分である搬送駆動ローラ42,42及び搬送支持ローラ52,52の構成部品を詳細に説明する。
【0022】
<搬送駆動アーム>
搬送駆動アーム4は、略直角三角形板状の駆動アーム基板41を備える。駆動アーム基板41は、図5に示すように、該駆動アーム基板41を回転可能に支持する支持軸(不図示)が貫通するアーム支持孔41fを、一の鋭角頂点部分に有する。前記支持軸は、軸線方向が筐体1の厚み方向、即ち横方向(図5中上下方向)であり、ディスク挿入口11aの一端側に配されている。駆動アーム基板41は、他の鋭角頂点部分が搬入方向側、直角部分が搬出方向側に位置するような姿勢で、前記支持軸によって回動可能に支持されている。
また、駆動アーム基板41は、アーム支持孔41fの近傍と、他の鋭角頂点部分とに夫々突設された2本のローラ支持軸41a,41bを備える。各ローラ支持軸41a,41bは、光ディスクDの外周部分を保持し、該光ディスクDの搬送を行う2個の搬送駆動ローラ42,42を回転自在に支持しており、止め輪45,45によって抜け止めされている。搬送駆動ローラ42,42は、ローラ歯車43,43、ゴムローラ44,44及び止め輪45,45にて構成されている。ローラ歯車43,43及びゴムローラ44,44の構成は後述する。
更に、駆動アーム基板41は、アーム支持孔41fの近傍に設けられたローラ歯車43に噛合し、搬送駆動ローラ42を回転駆動させる駆動歯車46と、該駆動歯車46に噛合するアイドラ歯車47と、該アイドラ歯車47及び他のローラ歯車43に噛合する従動歯車48とを回転可能に支持する回転軸41c,41d,41eを適宜箇所に有している。
更にまた、駆動アーム基板41は、リンク機構6に連結するためのリンク孔41gを直角部分に形成している。
【0023】
<搬送支持アーム>
搬送支持アーム5は、略直角三角形板状の支持アーム基板51を備える。支持アーム基板51は、搬送駆動アーム4と同様、該支持アーム基板51を回転可能に支持する支持軸(不図示)が貫通するアーム支持孔51fを、一の鋭角頂点部分に有する。前記支持軸は、軸線方向が筐体1の厚み方向であり、ディスク挿入口11aの他端側に配されている。支持アーム基板51は、他の鋭角頂点部分が搬入方向側、直角部分が搬出方向側に位置するような姿勢で、前記支持軸によって回動可能に支持されている。
また、支持アーム基板51は、アーム支持孔51fの近傍と、他の鋭角頂点部分とに、搬送支持ローラ52を備える。搬送支持ローラ52は、光ディスクDの外周部分を保持するゴムローラ54、及び該ゴムローラ54を支持するローラ支持部53にて構成されている。ローラ支持部53の構成は後述する。なお、ゴムローラ54の構成は、ゴムローラ44と同様である。
更に、支持アーム基板51は、リンク機構6に連結するためのリンク孔51gを直角部分に形成している。
【0024】
<リンク機構>
リンク機構6は、指状の平板部材からなる第1リンクアーム61及び第2リンクアーム62を備える。第1リンクアーム61及び第2リンクアーム62は、一端側に孔部61a,62aを有し、ブラケット7上に設けられた軸63,63に回転自在に遊嵌され、止め輪64,64によって、ブラケット7の離隔した適宜箇所に回転可能に取り付けられている。また、第2リンクアーム62は、中央部に突起部62cを有し、第1リンクアーム61は突起部62cに係合する三日月状の係合孔61cを有し、第1リンクアーム61及び第2リンクアーム62は十字状に連結する。更に、第1リンクアーム61及び第2リンクアーム62は、他端側に夫々リンク突起61b,62bを有し、各リンク突起61b,62bは、駆動アーム基板41及び支持アーム基板51のリンク孔41g,51gに、スライド可能に係合している。
このように構成されたリンク機構6によれば、搬送駆動アーム4及び搬送支持アーム5は、互いに接離する方向へ連動して開閉回転する。
【0025】
<ブラケット>
ブラケット7は、図2に示すように、略長方形の板状であり、筐体1のディスク挿入口11a側を横方向から覆うことができるような寸法に形成されている。また、ブラケット7は、図5に示すように、長辺方向両側に、搬送駆動ローラ42及び搬送支持ローラ52が回転移動するための空間を形成した扇状孔部71,72を有する。また、一方の扇状孔部72の外側には、光ディスクDの挿入を検知するレバーが挿通する円弧状孔部73が形成されている。更に、ブラケット7は、搬送駆動アーム4及び搬送支持アーム5の回転移動を案内する扇状部74,75を有している。
【0026】
<ローラ歯車>
図6は、ローラ歯車43の構成を示した斜視図、図7は、ローラ歯車43の構成を示した平面図等である。特に図7(a)は、ローラ歯車43の側面図、図7(b)は、ローラ歯車43の平面図、図7(c)は、ローラ歯車43の側断面図である。ローラ歯車43は、カルデラ状のローラ基部431を備える。ローラ基部431は、円錐の胴部分と略同形の外輪山部と、外輪山部に囲まれた円形凹部を備える。ローラ基部431の底部、即ち円形凹部の反対側には、ローラ基部431の中心線が回転軸になるように歯車部435が一体形成されている。
【0027】
また、ローラ基部431の円形凹部の略中央部には、回転軸方向へ突出した円筒状の軸部432が突設されている。軸部432は、ローラ支持軸41aが回転自在に貫通する貫通孔432aを有する。軸部432の先端側外周面には、該外周面から軸部432の径方向外側へ突出した3つの先端側空転止め凸部433、433、433が周方向に沿って等間隔に形成されている。また、軸部432の基部側外周面には、該外周面から軸部432の径方向外側へ突出した3つの基部側空転止め凸部434、434、434が周方向に沿って等配され、かつ軸方向からみて6つの先端側空転止め凸部433、433、433及び基部側空転止め凸部434、434、434が周方向に等間隔に配列するように形成されている。
【0028】
更に、先端側空転止め凸部433、433、433は、周方向の幅が、先端側に比べて軸方向中央側の方が狭いテーパ部433a、433a、433aを、光ディスクDを搬入する場合におけるローラ歯車43の回転方向側の面に有し、円形凹部に対して略垂直に形成された垂直部433b、433b、433bを、周方向反対側の面に有する。テーパ部433a、433a、433aは、後述するように、ディスク搬送時に、ゴムローラ44を回転軸方向から圧縮する力を発生させ、光ディスクDの保持力を向上させるものである(図12及び図13参照)。
同様に、基部側空転止め凸部434、434、434は、周方向の幅が、基部側に比べて軸方向中央側の方が狭いテーパ部434a、434a、434aを、光ディスクDを搬入する場合におけるローラ歯車43の回転方向側の面に有し,円形凹部に対して略垂直に形成された垂直部434b、434b、434bを、周方向反対側の面に有する。
【0029】
<ゴムローラ>
図8は、ゴムローラ44の構成を示した斜視図、図9は、ゴムローラ44の構成を示した平面図等である。図9(a)は、ゴムローラ44の平面図、図9(b)は、ゴムローラ44の側面図、図9(c)及び(d)は、ゴムローラ44の側断面図、図9(e)は、ゴムローラ44の底面図である。ゴムローラ44は、弾性部材、例えばEPDM(Ethylene propylene diene monomer:エチレン−プロピレン−ジエンゴム)からなり、ローラ歯車43の軸部432に外嵌する略円筒状をなしている。ゴムローラ44は、回転軸方向両端部に円環部441、442を有し、ゴムローラ44の回転軸方向中央部の外周面には、その周方向に沿って設けられた環状溝部445が形成されている。また、円環部441、442は、その内径が、環状溝部445を形成している部分の内径よりも拡径してなる段差部分を有している。円環部441に形成された段差部分の円環状面の内径側部分には、先端側空転止め凸部433、433、433に係合する3つの先端側係止部443、443、443が形成されている。先端側係止部443、443、443は、先端側空転止め凸部433、433、433のテーパ部433a、433a、433aに倣うように、周方向の幅が、ゴムローラ44の軸方向端側に比べて、軸方向中央側の方が広く形成されたテーパ部443a、443a、443aと、垂直部443b、443b、443bとを有する。同様にして、円環部442に形成された段差部分の円環状面の内径側部分には、基部側空転止め凸部434、434、434に係合する3つの基部側係止部444、444、444が形成されている。基部側係止部444、444、444は、テーパ部444a、444a、444a及び垂直部444b、444b、444bを有する。
【0030】
<ローラ支持部>
図10は、支持アーム基板51に設けられたローラ支持部53の構成を示した斜視図、図11は、ローラ支持部53の構成を示した平面図である。ローラ支持部53は、支持アーム基板51に一体形成された、カルデラ状のローラ基部531を備える。ローラ基部531の形状は、ローラ歯車43のローラ基部431と同様であり、円錐の胴部分、外輪山部、及び円形凹部を備える。また、ローラ基部531の円形凹部の略中央部には、回転軸方向へ突出した円筒状の軸部532が突設されている。軸部532の先端側外周面には、該外周面から軸部532の径方向外側へ突出した3つの先端側空転止め凸部533、533、533が周方向に沿って等間隔に形成されている。また、軸部532の基部側外周面には、該外周面から軸部532の径方向外側へ突出した3つの基部側空転止め凸部534、534、534が周方向に沿って等配され、かつ軸方向からみて6つの先端側空転止め凸部533、533、533及び基部側空転止め凸部534、534、534が周方向に等間隔に配列するように形成されている。
【0031】
更に、先端側空転止め凸部533、533、533は、周方向の幅が、先端側に比べて軸方向中央側の方が狭いテーパ部533a、533a、533aを、周方向一面側に有し、円形凹部に対して略垂直に形成された垂直部533b、533b、533bを、周方向他面側に有する。周方向一面側の面は、例えば、図10中上方から見て反時計回り方向の面である。テーパ部533a、533a、533a及び垂直部533b、533b、533bを、ローラ歯車43のものと同様に構成することによって、同形状のゴムローラ44,54を用いて、搬送駆動ローラ42及び搬送支持ローラ52を構成することが可能になる。
同様に、基部側空転止め凸部534、534、534は、周方向の幅が、基部側に比べて軸方向中央側の方が狭いテーパ部534a、534a、534aを、周方向一面側に有し、円形凹部に対して略垂直に形成された垂直部534b、534b、534bを、周方向他面側に有する。
【0032】
次に、本実施の形態に係るディスク搬送装置3及びディスク再生装置の作用を説明する。
図12及び図13は、本実施の形態に係るディスク搬送装置3の作用を概念的に説明する説明図である。なお、以下では説明の便宜上、一つの先端側空転止め凸部433、基部側空転止め凸部434、先端側係止部443、基部側係止部444を図示して、説明する。ローラ歯車43が図12及び図13に示した細線矢印方向へ回転した場合、先端側空転止め凸部433及び基部側空転止め凸部434と、先端側係止部443及び基部側係止部444とが当接するため、軸部432に対するゴムローラ44は空転せず、一体的に回転する。
【0033】
また、先端側空転止め凸部433及び基部側空転止め凸部434は、太線矢印方向へ移動し、テーパ部433a、434aに沿って、先端側係止部443及び基部側係止部444が乗り上がる。その結果、白抜き矢印で示すように、円環部441、442は互いに近接する方向、つまり、光ディスクDの厚み方向へ縮み、光ディスクDはゴムローラ44によってより確実に保持される。
光ディスクDがディスク挿入口に挿入された際は、搬送駆動ローラ42は回転しておらず、円環部441、442は広がった状態にあるため、光ディスクDの外周部分は、ゴムローラ44の溝部445に無理なく嵌り込む。そして、搬送駆動ローラ42が回転を開始しディスク搬送による負荷によりゴムローラ44とローラ基部431の軸部432間で回転方向に反力が加わった場合、円環部441、442が中心線方向に縮み、光ディスクDが厚み方向から圧着保持される。従って、光ディスクDを無理なくゴムローラ44に保持させ、かつ、光ディスクDの搬送力も確保することができる。
【0034】
更に、光ディスクDの搬出時にローラ歯車43が反対方向へ回転した場合、先端側空転止め凸部433及び基部側空転止め凸部434は、太線矢印方向と逆の方向へ移動し、テーパ部433a、434aに沿って、先端側係止部443及び基部側係止部444が下り降りる。その結果、各凸部433,434及び各係止部443、444の位置関係は元に戻って、円環部441、442は中心線方向に広がり、光ディスクDはゴムローラ44から抜き取りやすくなる。
【0035】
このように構成されたディスク再生装置及びディスク搬送装置3にあっては、軸部432に対するゴムローラ44の空転を防止することができ、ゴムローラ44の空転によるディスク搬送の不具合を解消することができる。
【0036】
また、軸部432に対するゴムローラ44の取付作業性を改善することができる。
【0037】
更に、空転を防ぐために圧入しろを大きくした場合、取付状態でのゴムローラ44の変形を招き、ゴムローラ44の削れによって搬送力が低下し、ゴムローラ44の削れ粉がディスクに付着するといった問題が発生するところ、本実施の形態によれば、ゴムローラ44の削れによる搬送力の低下、削れ粉の付着といった問題を解消することができる。
【0038】
更にまた、軸部432及びゴムローラ44の先端側空転止め凸部433、433、433、基部側空転止め凸部434、434、434、先端側係止部443、443、443及び基部側係止部444、444、444にテーパ部433a、433a、433a、テーパ部434a、434a、434a、テーパ部443a、443a、443a、テーパ部444a、444a、444aを設けることにより、光ディスクDの搬送負荷が掛かった際に光ディスクDの厚み方向における圧着力をより大きくすることができ、光ディスクDの搬送力をより向上させることができる。
【0039】
更にまた、空転止めを行う部材を別途用意する場合に比べて、構造がより単純で作り易く、軸部432及びゴムローラ44の形状変更のみで、上述の問題を解決することができるディスク搬送装置3を構成することができる。
【0040】
更にまた、各凸部及び係止部に垂直部433b,434b,533b,534b及び垂直部443b,444bを設けているため、周方向両側にテーパ部を設ける場合に比べて、軸部432,532に対するゴムローラ44,54の位置決めを容易に行うことができ、組立作業性を損なうことなく、位置ずれによるゴムローラ44,54の変形を簡易に防止することができる。
また、仮に位置ずれが発生していても、垂直部及びテーパ部夫々を設けることによって、光ディスクの搬入及び搬出過程で、位置補正を自動的に行うことができる。
【0041】
なお、実施の形態では、光ディスクの再生を行うディスク再生装置について説明したが、記録再生を行うディスク記録再生装置に本発明を適用しても良い。
また、ディスク装置単体について説明したが、言うまでもなく、本発明をBDプレーヤ、BDレコーダ、BDドライブユニット、BDレコーダユニット、BDドライブユニットを搭載したテレビジョン装置及びパーソナルコンピュータに本発明を適用することもできる。
【0042】
また、本実施の形態ではテーパ部を有する空転止め凸部及び係止部を軸部及びローラゴムに設ける場合を説明したが、テーパ部を有しない断面略矩形状の空転止め凸部及び係止部を軸部及びローラゴムに設けても良い。
【0043】
更に、周方向一方側にのみテーパ部を設け、周方向他方側に垂直部を設けた空転止め凸部及び係止部を説明したが、周方向両側にテーパ部を形成した空転止め凸部及び係止部を備えても良い。
【0044】
更にまた、本実施の形態では軸部の基部側及び先端側に空転止め凸部を設けているが、軸方向略中央部、その他の部位に空転止め凸部を設けても良い。同様に、ゴムローラの軸方向両側に係止部を設けているが、軸方向略中央部、その他の部位に係止部を設けても良い。
【0045】
更にまた、本実施の形態では、軸部及びゴムローラに夫々凸部及び係止部を備えた構成を説明したが、軸部に凹部を設け、ゴムローラに凹部に係止する係止部を設けるように構成しても良い。
【0046】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0047】
1 筐体
2 再生部
3 ディスク搬送装置
4 搬送駆動アーム
5 搬送支持アーム
6 リンク機構
7 ブラケット
41 駆動アーム基板
42 搬送駆動ローラ
43 ローラ歯車
44 ゴムローラ
51 支持アーム基板
52 搬送支持ローラ
53 ローラ支持部
431 ローラ基部
432 軸部
433 先端側空転止め凸部
434 基部側空転止め凸部
435 歯車部
441、442 円環部
443 先端側係止部
444 基部側係止部
445 環状溝部
533 先端側空転止め凸部
534 基部側空転止め凸部
433a、434a、443a、444a、533a、534a テーパ部
433b、434b、443b、444b、533b、534b 垂直部
D 光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク形状の記録媒体を所定方向へ搬送する搬送ローラを備えたスロットローディング方式のディスク搬送装置において、
前記搬送ローラは、
軸部を有するローラ基部と、
該ローラ基部の軸部に外嵌した略円筒状のゴムローラと
を備え、
前記ローラ基部の軸部は、
該軸部に対する前記ゴムローラの空転止めを行う凸部又は凹部を外周面に備え、
前記ゴムローラは、
前記凸部又は凹部に係止する係止部を内周側に備える
ことを特徴とするディスク搬送装置。
【請求項2】
前記ゴムローラは、
外周面にその周方向に沿って設けられた環状溝部を備え、
前記ローラ基部の軸部の凸部は、
前記軸部の先端側及び/又は基部側に設けられており、周方向の幅が、先端側及び/又は基部側に比べて軸方向中央側の方が狭いテーパ部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のディスク搬送装置。
【請求項3】
前記係止部は、
周方向の幅が、前記ゴムローラの軸方向端側に比べて、軸方向中央側の方が広いテーパ部を備える
ことを特徴とする請求項2に記載のディスク搬送装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のディスク搬送装置と、
該ディスク搬送装置にて搬送された記録媒体のデータを再生する再生部と
を備えることを特徴とするディスク再生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate