説明

ディスク状の物品を扱うための装置およびその動作方法

【課題】
【解決手段】ディスク状物品を支持および回転するための装置であって、
前記ディスク状物品を支持するための支持体を備え、処理チャンバ内に配置された第1のロータと、第2のロータを回転させるための駆動機構に接続された第2のロータであって、前記第1のロータに接触することなく磁力によって前記第1のロータに結合され、前記処理チャンバの外側に配置され、前記第1のロータと前記第2のロータとの間に壁が配置されている、第2のロータと、第1の結合部分と第2の結合部分とを備える少なくとも1つの磁気対であって、前記第1の結合部分は、前記第1のロータに取り付けられた結合磁石(例えば、永久磁石)を備え、前記第2の結合部分は、高温超伝導材料(HTS)を備える、磁気対と、を備え、前記磁気対は、前記第1のロータが前記第2のロータと共に移動するように、前記第1のロータおよび前記第2のロータの間に自由度が残らないような方法で配列および/または形成される、装置が開示されている。さらに、かかる装置を動作させるための方法が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状の物品を支持するための支持体を備え、処理チャンバ内に配置されたロータを用いて、ディスク状の物品を支持および回転するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
WO 2007/101764 A1は、板状の物品の流体処理のための装置を開示しており、その装置は、板状の物品を保持して回転軸の周りに回転させるための回転ヘッドと、回転ヘッドの周りに放射状に配列され、接触することなしに回転ヘッドを浮上させて駆動するための駆動手段と、回転軸と実質的に同心に配置された実質的に円筒形の壁とを備え、円筒形の壁は、回転ヘッドと駆動手段との間に配置される。
【0003】
米国特許第6,485,531号に、適切な駆動機構が記載されている。これに開示されているアクティブ磁気ベアリング・駆動機構では、ステータからロータまでの距離が制限される。これにより、壁の厚さが薄くなる。さらに、かかるアクティブベアリング・駆動機構は、ディスク状物品の集積回路内で望ましくない電流誘導を引き起こしうる。本発明の課題は、改良駆動機構を提供することである。本発明の別の課題は、より厚い壁の利用を可能にするシステムを提供することである。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、課題を解決するために、ディスク状物品を支持および回転するための装置を提供しており、その装置は:ディスク状物品を支持するための支持体を備え、処理チャンバ内に配置された第1のロータと、第2のロータを回転させるための駆動機構に接続された第2のロータであって、第1のロータに接触することなく磁力によって第1のロータに結合され、処理チャンバの外側に配置され、第1のロータと第2のロータとの間に壁が配置されている、第2のロータと、第1の結合部分と第2の結合部分とを備える少なくとも1つの磁気対(magnetic couple)であって、第1の結合部分は、第1のロータに取り付けられた結合磁石を備え、第2の結合部分は、高温超伝導材料(HTS)を備える、磁気対と、を備え、磁気対は、第1のロータが第2のロータと共に移動するように、第1のロータおよび第2のロータの間に自由度が残らないような方法で配列および/または形成される。
【0005】
第1のロータは、第2のロータの上方に配置されてよい。あるいは、第1のロータは、第2のロータ内で同軸に配置される。どちらの場合も、第1のロータは、処理チャンバ内に配置されるため、内部ロータと呼ばれてもよく、第2のロータは、外部ロータと呼ばれてもよい。壁は、球、平面、円筒形、円錐形、および、その他の回転対称の形態からなる形状の群より選択された形態を有してよい。壁が円筒形である場合、第1のロータおよび第2のロータは、放射状に配列される。第1のロータおよび第2のロータは、同時に壁に対して上下動されることができる。少なくとも2つの磁気対は、例えばHTSが環状リングの場合、HTSを含む第2の結合部分を共有してもよい。かかる場合、両方の磁気対の第2の結合部分は、全く同じHTSの領域である。磁気対がディスク状物品(例えば、半導体ウエハ)と共に回転するときに、ディスク状物品における可能な電気回路に電流が誘導されず、このことは、米国特許第5,439,519号によって提案されているようなアクティブ磁気ベアリングにとって非常に有利である。組織溶融(melt-textured)HTSの生産については、Werfel, Flogel−Delor, Wippichによる「YBaCuO Large Scale Melt Texturing in a Temperature Gradient」、Inst. Phys. Conf. Ser. No. 158, S.821 ff., 1997、に開示されている。上述のアセンブリによると、第1のロータと第2のロータとの間の磁気結合は、第2のロータの動きすべて(特に、回転運動)を1対1に第1のロータに伝える。この構成は、処理チャンバが薬剤または気体媒質に対して閉じたチャンバであるときに利用可能である。
【0006】
第1のロータに取り付けられた結合磁石は、永久磁石であることが好ましい。ただし、代替的に、電磁石またはHTSが用いられてもよい。
【0007】
かかるアセンブリでは、高い温度(例えば、20℃〜200℃)でウエハを処理することが可能であるが、HTSは、低温(90K未満)に維持される。また、かかるアセンブリでは、第1のロータを真空容器(100mPa〜100nPa)または圧力容器(200kPa〜10MPa)内に配置することができる。したがって、かかるアセンブリは、真空処理(CVDまたはプラズマエッチングなど)および圧力処理(温液(例えば、150℃の液体水)および超臨界流体など)に利用可能である。かかるアセンブリは、WO2007/101764A1に開示されたような装置で利用可能である。
【0008】
一実施形態では、2つの磁気対が設けられており、各磁気対は、少なくとも1つの結合磁石を備える。永久磁石が結合磁石として利用される場合、その永久磁石は、強磁性磁石(Fe、Ni、Coを含む)または希土類磁石(例えば、Nd2Fe14B(NIB)およびSmCo磁石(SmCo(SmCo5、Sm2Co17)))を含む群から選択すれば有利である。SmCoは、高いキュリー温度(700〜800℃)を有するため、350℃までの高温用途に有用である。
【0009】
別の実施形態では、HTSは、断熱真空クライオスタット内に配置されており、クライオスタットは、液体窒素またはクライオクーラによって冷却される。クライオクーラは、100K未満の非常に低い温度を実現できるクーラである。かかるクライオクーラの例は、スターリングクーラ、ギフォード・マクマホンクーラ、および、パルスチューブクーラである。
【0010】
一実施形態では、少なくとも1つの磁気対は、磁場を有する結合磁石を含み、磁場は、環状のロータ軌道の円弧対称(arc symmetry)に従わない、換言すれば、円筒対称ではない。かかる磁場は、円筒対称ではなく、HTSにおける対称ではない磁場分布につながる。したがって、HTSおよび結合磁石は、両者の間に自由度が残されないように互いに結合される。
【0011】
あるいは、磁場を有する2つの結合磁石が提供され、それらの磁場は、磁場の磁気軸が同一ではないように構成され、その結果、第1のロータと第2のロータの間に自由度が残らない。かかる非同一の軸は、平行な軸、ねじれの位置にある軸、または、交差する軸である。この場合、結合磁石によって提供される磁場は、より強い磁場勾配を有する1つの磁石よりも強く、均一な回転対称でありうる。
【0012】
第2の結合部分は、単結晶構造に形成されても、結晶ブロックのリングとして形成されてもよい。
【0013】
一実施形態では、第2の結合部分は、結晶ブロックの形態の高温超伝導材料(HTS)を備え、結晶ブロックは、結晶のc軸を第1の結合部分に向けられて環状の形状に形成される。かかるアセンブリによると、結合力が増大する。
【0014】
別の実施形態では、高温超伝導材料は、組織溶融(melt-textured)高温超伝導(HTS)材料であり、HTSと結合磁石との間のピン止め力(the pinning forces)が大幅に増大される。組織溶融高温超伝導(HTS)材料は、組成RE1+xBa2Cu37-δ(REは、Y、Sm、Nd、Dy、または、Gd)を有することが好ましく、xは、0.1から0.8(好ましくは、0.2から0.6)の範囲であり、δは、0から0.5(好ましくは、0.03から0.25)の範囲である。これにより、ピン止め力がさらに増大する。
【0015】
一実施形態では、HTSは、断熱を保証すると共に動作中に必要な低温を維持する真空クライオスタット内に組み込まれる。真空クライオスタットは、冷却要素によって、または、HTSの臨界超伝導温度(Tc)よりも低い沸点を100kPaで有する冷却剤の容器を保持することによって冷却されることが好ましい。適切な冷却剤は、100kPaで77K(−196℃)の沸点を有する液体窒素である。その他に可能な冷却剤は、液体酸素(90K)、液体ネオン(27K)、液体水素(20K)、および、液体ヘリウム(4.2K)である。
【0016】
一実施形態において、第2のロータは、HTSのモノリシックリングを真空クライオスタット内に備えており、HTSは、半導体処理チャンバの底部に近接して配置され、チャンバ内でシリコンウエハを保持する磁性ロータと軸方向の結合特性で相互作用する。この場合、HTSのモノリシック(一体型)リングは、両方の磁気対の要素であり、例えば、2つの別個の永久磁石が、同じモノリシックリングに結合される。
【0017】
一実施形態において、第1の結合部分は、1以上(好ましくは、0.8から1.5)の永久磁石の最適な幾何学的アスペクト比(高さ対幅)によって長距離の磁場分布を有する永久磁石を含む。永久磁石の所与の質量に対して、長距離で最大の磁束密度を実現するための最適な形状が存在する。
【0018】
結合磁石の磁場の対称軸は、HTSを通ることが有利である。複数の環状に配列された結合磁石を用いる場合、円周方向の第1の結合部分の結合磁石が、交互の磁気分極ベクトルを示せば有利である。
【0019】
一実施形態において、結合磁石は、ロータの動きの方向と直交するベクトルを有する磁場勾配(磁束密度dB/dxの勾配)を生み出すような構成で配列される。
【0020】
別の実施形態において、ロータウエハキャリアは、磁力を有するダブルピン構造を用いてウエハをクランプし、10から3000rpmの速度で回転する。磁力を有するピン構造は、下側および上側のピンリングで構成されることにより、小さいリムオフセットを有する垂直な隣接する円錐形のピンの対が、ウエハを磁気的にクランプする。
【0021】
クライオスタットは、冷却力を提供しクライオスタットと平行に回転する統合クライオクーラに直接的に接続されることが有利である。統合クライオクーラでは、回転する電圧・電流フィーダによって、必要な電力供給がなされる。
【0022】
第1のロータおよび第2のロータは、注意深く質量バランスを取られることが有利であり、これは、150rpmより速い回転速度で有用であり、非対称な遠心力と、ロータの動力学の問題とを低減する。
【0023】
一実施形態では、HTSおよび結合磁石の対向面の間に、0.5〜60mmの範囲の幅を有するギャップが存在する。
【0024】
別の実施形態において、第1のロータおよび第2のロータは、磁気対を備え、それらの磁気対は、第1の結合要素が回転軸までの距離を変更して、第1のロータの部分がディスク状物品を保持または解放できるように、半径方向に移動可能である。これにより、第2のロータは、半径方向に移動可能なプラットフォーム上の少なくとも2つの個別のクライオスタットで構成される。個別のクライオスタットは、円弧形状であってよい。
【0025】
一実施形態において、第1のロータは、互いに直接結合されていない少なくとも2つの部分を備える。この点で互いに直接結合されていないということは、各第1の結合要素が、対応する第2の結合要素に磁気的に結合されており、回転軸に対して半径方向に移動可能であることを意味する。第2の結合要素は、半径方向に移動可能なように、第2のロータに取り付けられてよい。したがって、直接結合されていない第1の結合要素は、磁力および第2のロータを介して互いに間接的に結合される。
【0026】
あるいは、第1の結合要素は、半径方向に移動可能なように、第1のロータに取り付けられる。かかる実施形態では、第1の結合要素は、ロータを駆動すると共に、ディスク状物品をクランプおよび解放することができる。
【0027】
一実施形態(半径方向に移動可能な磁気対を備える)において、第2の結合要素の半径方向位置は、第1の結合要素に作用する遠心力を補償するために、第1のロータの回転速度に関して制御される。
【0028】
代替的に(または、追加的に)、第1の結合要素に作用する遠心力を補償するために、補助磁石が提供される。さらに、補助磁石の半径方向位置を変更するための手段が提供されてもよい。
【0029】
かかる補助磁石はソレノイドであってよく、第1のロータの回転速度に応じて、ソレノイド電流によって磁力を変化させることができる。
【0030】
本発明の別の態様は、上述の装置を動作させる方法である。ここで、第1のロータは、HTSが臨界温度(Tc)より高い第1の温度T1を有するときに、第2のロータに近接して同軸に保持される。第1のロータから第2のロータまでのギャップ距離は、臨界温度Tcより低い第2の温度T2までHTSを冷却する間、0.5〜60mmの範囲の固定幅に維持される。その後、第1のロータは解放され、壁に接触することなく浮上する。
【0031】
このHTSの冷却中、第1のロータは、Tc未満のT2に到達した後に除去できる補助保持手段によって保持される。次いで、第1のロータは、チャンバ壁に接触することなく自由に浮上し、磁力によって第2のロータにピン止めされる。
【0032】
一実施形態において、HTSは、第1の結合部分の要素である結合磁石とは異なる補助磁石からの磁場によって教示され制御される(taught)。補助磁石の磁場の形状は、結合磁石の形状(例えば、双極子状の磁場)と同様であり、その結果、磁場ベクトルの方向の偏位は10°以下であり(好ましくは、2°以下)、向きは同じであり、中心は、所定位置に配置されたときに永久磁石の中心と2mm以下のずれを有する。ただし、補助磁石の磁場は、第1のロータの要素である結合磁石の磁場よりも強い。
【0033】
補助磁石は、HTSの温度が臨界温度Tcに到達する前に電磁場を提供する電磁石(ソレノイド)であってよく、電磁場は、HTSの温度がTc未満になるまで維持される。かかる方法によると、ピン止め力を十分に増大させることができる。
【0034】
超伝導高磁場勾配結合装置は、第2の磁石部分(被駆動ロータ、第2のロータ)から離間された第1の小型の超伝導部分(駆動ロータ、第1のロータ)を利用する。両部分は、好ましくは少なくとも300mmの大直径を有するリングまたは円筒形であってよい。近接する両部分の基本の機能的な形状は、軸方向または放射状であってよい。第1の超伝導部分は、断熱を保証すると共に動作中に必要な低温を維持する真空クライオスタット内に組み込まれた銅酸化物タイプの高Tc超伝導体を含む。第1の部分は、単結晶構造、または、リング状に構成された複数の結晶ブロックである。
【0035】
上面と直交するc軸を有するブロックの結晶方位は、磁石の分極ベクトルと平行であることが好ましい。偏差の範囲は、高い結合力を生成するために、±30°以内であることが好ましい。
【0036】
第2の磁石励磁部分(被駆動ロータに含まれる)は、離間されてウエハキャリア内に統合されており、大直径のシリコンウエハ(100〜450mm径)をクランプして保持するためのピンを備えることが好ましい。その部分は、磁石構成と超伝導体との間の強い磁気相互作用を可能にするために、容器または処理チャンバの底部の最も近く(軸方向の結合)もしくは外壁(半径方向の結合)の最も近くに配置される。磁場中冷却(fc:field cooling)手順後、第1の超伝導体は、磁力によって磁性アセンブリウエハキャリアから或る距離だけ浮上する。FCは、HTSの臨界温度Tcよりも低い温度までHTSを冷却すると同時に、外部の磁束密度の大部分を捕捉することによって実行される。
【0037】
超伝導体に対する磁石の構成は、様々なものが想定され、それらの個々の性能は、用途に従って実質的に異なりうる。結合力は、結合磁石の励起に強く依存する。磁石構成の設計は、大きい電磁力を達成するよう考慮されることが好ましい。さらに、磁石材料および幾何学的配置の質が、結合力を決定する。効率的な結合のために、磁石構成は、高磁束密度および高磁束勾配を示すことが好ましく、それにより、磁場ベクトルは、オフトラック方向(off−track orientation:軌道を外れた向き)を有して、任意の運動の自由度を防止することが好ましい。
【0038】
一般に、永久磁石から超伝導体までのギャップ距離gが、10mmより大きい(g>10mm)場合、単一の磁石が、磁石表面からより長い距離で、磁気質量当たり最大の磁束を与える。単一の磁石は、磁束圧縮または拡張のない古典的双極子磁場を示す。
【0039】
超伝導磁気結合の主要パラメータは、超伝導体と磁石(例えば、永久磁石)との間の相互作用によって得られる電磁力である。最も有名で先進的なバルク材料は、化学組成:RE1.2-1.6Ba2Cu37-δ(REは、Y、Sm、Nd、Gd、Dyの群から選択した希土類元素)に従った組織溶融YBCOである。材料の重要な部分は、ピン止め中心を提供する1または複数の非超伝導相である。最も有名なピン止め相(the pinning phase)は、組織溶融YBCOを77Kで50〜100kA/cm2程度の臨界電流密度およびゼロ磁場にさせるグリーン相(the green phase)RE2BaCuO5(211相)である。YBCO内の最大捕捉磁場は、77Kで1テスラを超え、約30Kの低温では16テスラ程度になりうる。<40Kの低温では、最大捕捉磁場は、材料の引っ張り強さのような機械的な材料特性によって制限される。HTS材料の重要な電気特性は、高い固有臨界電流Jcを引き起こし高い捕捉磁場を維持できる中心ピン止め(the pinning centres)の効果である。
【0040】
したがって、本発明の好ましい形態は、3〜4cm以上の結晶サイズを持ち、Jc>104A/cm2の臨界電流値を有し、永久磁石構成に対応する鏡像変換の個別の捕捉磁束分布を生み出す単一結晶の高Tc材料を用いる。ここでの結晶サイズは、結晶面における線形延長とする。
【0041】
HTS結合の2つの主要構成要素、すなわち、磁石および超伝導体以外に、装置完成品の全体構造は、より複雑である。駆動ロータ側の超伝導体は、Cuハウジング内に組み込まれ、冷却段に取り付けられることが好ましく、冷却段は、液体窒素によって冷却されるか、または、クライオクーラ(スターリング、ギフォード/マクマホン、パルスチューブ)の冷却ヘッドに適合される。
【0042】
動作中に低温を安定して維持するために、結合全体が、真空管(<10-2Pa)内に配置されるか、もしくは、駆動ロータの冷却側が、ステンレス鋼またはグラスファイバの薄肉管によって隔てられる。被駆動ロータ磁石と駆動ロータHTSリングとの間の壁は、特に敏感である。その材料は、薄く、非磁性、機械的に安定、かつ、高真空適合である必要がある。
【0043】
HTS材料の完全な断熱を得るために、200K/mmまでの温度勾配を有する高勾配の超熱分離技術を開発および試験した。その非常に小型の断熱構造は、低温冷却の労力を低減し、短距離で大きい結合力を可能にする。統合されたクライオポンプシステムが、必要な真空断熱を提供する。あるいは、クライオクーラを用いることにより、液体窒素よりも低い温度(40〜70K)を可能にし、より高い磁力を実現する。
【0044】
磁気相互作用により、結合装置は、部分的に開いた容器または閉じたチャンバ内でウエハを保持または回転させることができる。非接触の相互作用により、より高圧でのウエハ処理が可能になる。磁気部品の均質性および開リング形状のため、ウエハを回転しつつ、両面を処理することができる。
【0045】
200℃までのより高い処理温度が可能である。磁性ウエハキャリアの表面を、PFA(パ−フッ化ビニルエーテル)またはECTFE(クロロトリフルオロエチレン・エチレン重合体)の保護層で被覆すれば、極度に腐食性の高い化学物質または気溶体(フッ素酸など)を利用することできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1a】第1の実施形態を示す概略的な斜視断面図。
【0047】
【図1b】第1の実施形態を示す概略的な断面図。
【0048】
【図1c】第1の実施形態のHTSを収容するクライオスタットを示す概略的な部分断面図。
【0049】
【図2】第2の実施形態を示す概略的な斜視断面図。
【0050】
【図3a】第3の実施形態を示す概略的な斜視断面図。
【0051】
【図3b】閉位置にある第3の実施形態を示す概略的な部分断面図。
【0052】
【図3c】開位置にある第3の実施形態を示す概略的な部分断面図。
【0053】
【図4a】開位置にある第4の実施形態を示す概略的な垂直断面図。
【図4b】開位置にある第4の実施形態を示す概略的な水平断面図。
【0054】
【図4c】閉位置にある第4の実施形態を示す概略的な垂直断面図。
【図4d】閉位置にある第4の実施形態を示す概略的な水平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1a、図1b、および、図1cを参照しつつ、本発明の第1の実施形態について説明する。磁気浮上システム100は、半導体処理チャンバ121の底部103を通して動作する。シリコンウエハWは、磁気ウエハキャリア112上に固定されており、密閉された処理チャンバ121内で機械的な接触なしに回転される。処理チャンバ121は、処理チャンバ121内部の高圧または真空によって力が生じた場合に最小の壁厚で機械的な力に耐えるために、クレッペル(Kloepper)底部の形状を有する底部103を備える。処理チャンバ121は、ステンレス鋼または非金属複合材料で形成される。HTS磁気結合が、チャンバ下方にある放射対称性の超伝導駆動ロータ101と、その上方に軸方向の間隔を空けてチャンバ内に位置する大きい被駆動ロータ102とを特徴付ける。駆動ロータ101および被駆動ロータ102は、非磁性のチャンバ壁103によって隔てられており、チャンバ壁103には磁力が通る。駆動ロータ101は、環状に配列された永久磁石105(結合磁石)を組み込んだリング構造を有する。永久磁石105の配置は、垂直であってもよいし、角度を付けられてもよい。配置された個々の永久磁石105は、超伝導体104に向かうまたは超伝導体104からの分極ベクトルPi(i=1−n;例えば、n=48)に向かい合う。被駆動ロータ102は、シリコンウエハを保持するためのピンを有するウエハキャリア112を支持する。駆動ロータ101および被駆動ロータ102は、垂直軸の周りで回転するため、すべての回転部品の質量バランスが取られる必要がある。安全な動作のために、駆動ロータ101、被駆動ロータ、および、ウエハは、チャンバの外壁および内壁と機械的に接触することなく、共通の中心線の周りで回転する必要がある。回転する部品と静止した底部との間の空隙は、>0.5mmであることが好ましい。
【0056】
被駆動ロータ102は、クライオスタットを備えた超伝導駆動ロータ101によって浮上および結合される。駆動ロータ101が移動するごとに、ロータ102にも同等の反応が起きる。
【0057】
駆動ロータ101のクライオスタットの実施形態は、3つの要素によって決定される:(i)大きい軸方向および半径方向の力に耐えるために高い機械的安定性を有するクライオスタットハウジング106;(ii)ハウジング内の低温の超伝導体の断熱体140、141;(iii)回転駆動ユニットに接続する底部フランジ123。
【0058】
液体窒素冷却のためにHTS104を封入する構造が、図1cで詳細に示されている。駆動ロータ101は、真空クライオスタットを備えており、真空クライオスタットは、大気温度から液体窒素冷却された超伝導体104への熱伝導を最小化するために、3重のシェル構造で形成される。クライオスタットは、非磁性複合材料(G−10、ガラス繊維強化材料)から形成された円筒形の外側ケース106と、内側の約1mm厚のガラス/グラファイト繊維の複合材料リング107とを備える。両方のチューブは、大気圧に対して機械的に耐える必要があり、真空気密である。両方のリングは、底部においてリング形の下側プレート109(厚いG−10プレート)によって結合されており、上部において薄いステンレス鋼のカバー110によって結合されている。上部カバー110は、被駆動ロータの永久磁石105と、駆動ロータ101のHTS104との間の磁気相互作用の距離を短く保つために、できるだけ薄く(0.1mm)形成される。この部分は、所望の形状の非磁性ステンレス鋼によって形成される。
【0059】
内側リング壁107と外側リング壁106との間の空間には、下側部分182内での液体窒素の貯蔵のため、および、上側部分181内でのHTS104の収容のために、銅リング108が配置されている。
【0060】
クライオスタット内の超伝導体の低温は、銅リング108を介した伝導冷却によって間接的に実現される。銅リング108の上側部分は、正確な形状に機械加工されて銅ホルダ内に接着剤で接着されたHTSブロック104(高い熱伝導率を有する)を含む。超伝導体104の低温は、液体窒素貯蔵コンテナ182を用いた伝導冷却によって実現される。
【0061】
最適なクライオスタットの機能のために、組織溶融YBCO超伝導体の熱伝導率を、50から300Kの間でλ=5W/Kmと決定した(これは、ほとんど温度に依存しない)。平衡状態下で、液体窒素とHTSの上面との間の温度差を1ケルビン未満にするような熱伝導率が与えられた。
【0062】
空間が限られているため、上部カバー110の方向への円筒形HTS駆動ロータ101の断熱が、特に重大である。低温のHTS表面と、クライオスタットおよび上方の処理チャンバの間の高温のギャップとの距離は、カバー110の1mmの壁厚と、HTS104および熱伝達を排除するカバー110の間の1mmの真空空間142とからなる2mmにすぎない。
【0063】
低温部分の安定化および支持は、低熱伝導路に続いて良好な低温管理を保証する幾何学的構造141によって構成される。ガラス繊維材料は、低熱伝導率(0.2W/Km)で高い機械的強度を有する。蛇行した構造141は、断面積の小さい耐熱性の繊維からなり、繊維は、内側壁107および下側プレート109に対する複数のスペーサを形成する。この設計は、低温のHTS104を収容する内側の低温銅リング108から外側のクライオスタット壁への熱伝導率を低くする。さらに、多層の断熱体を備えた低温部分の周りに10-3mbarよりも良好な真空断熱140が存在することにより、熱伝導が最小限に抑えられる。
【0064】
内側の低温部分104および108と、外側にある室温のクライオスタット壁106との間の直接的な接続は、液体窒素を銅容器182内に供給する2つのパイプ113だけである。液体流入および気体流出のパイプ113が、図1aに図示されている。ライン113も、ステンレス鋼など、低熱伝導特性を有する材料から形成されており、同時に、幾何学的には薄肉管材料で構成されている。銅容器の液体窒素貯蔵容量は、一方では重量を制限し、他方ではより長いクライオスタットの動作時間を保証するような最適サイズを有することが好ましい。本発明では、液体窒素容量は、約1,800cm3である。
【0065】
提示されている好ましい実施形態では、断熱のための真空は、低温の銅部分に取り付けられた統合クライオポンプによって改善される。ポンプは、低温の銅容器108に対して熱的に接続される。銅容器に直接配置される材料として、ゼオライトまたは活性炭が利用される。クライオポンプは、吸着された気体分子と、まだほとんど覆われていない低温面との間の引力が比較的大きいという物理化学的な効果を利用する。大量の気体を効率的に吸着できるように、対応する広く伸びた表面が必要である。この理由から、活性炭のような多孔質材料が利用される。この炭素構成は、500〜1000m2/gの内部表面を提供する特定の多孔質構造を有する。クライオポンプの材料は、外部加熱と同時に排出を行うことによって一定期間後に再生できる。
【0066】
真空の改善は、超伝導体を備えたクライオスタットを10-2から10-3Paの断熱領域にして、熱伝導を防ぐ。外側容器は、おそらく漏れが少なくクライオスタット内に異なる他の材料を有する複合材料から形成されるため、特に、ハンダおよび接着部において、クライオスタットの定常漏れが小さいことが期待される。通例、測定される漏れ率は、第2の領域当たり10-7Paリットルである。したがって、クライオポンプは、真空クライオスタットに不可欠な要素である。あるいは、ハウジングは、漏れ率をより低いレベルに低減するためにステンレス鋼から形成されてもよい。
【0067】
クライオスタット101によって提供される低温部分108の断熱および分離は、処理チャンバの上壁に非常に近接して超伝導体104を配置することを可能にする。これにより、超伝導体と磁気要素との間の距離を大幅に低減して、大きい磁気結合力を実現できる点で有利である。
【0068】
図1a、図1b、および、図1cに示すように、上側のクライオスタットカバーは、処理チャンバ121の下側部分のクレッペル底部103(トーラス球面ヘッド(trospherical head:皿形))の角度形状に従っている。この形状の適合は、クライオスタットの好ましい実施形態が、ロータまでの狭いギャップ距離を有して強い磁気相互作用を可能にすることを示す。
【0069】
永久磁石105(例えば、NdFeBまたはSmCo)は、非磁性ウエハキャリア112と直接的に接続される。磁石105および超伝導体104の各ペアは、各ベクトルPi(図1bでは、P1およびP25を図示)が次のベクトルPi+1と異なるため、運動の自由度を持たない磁気結合要素を生成する。好ましい実施形態では、隣接するベクトルの向きは交互である(NS−SN−NS−・・・)。磁石が交互の極性(NS−SN−NS−・・・)で取り付けられる場合、隣接距離は、0.5×(磁石の幅)より大きいことが好ましく、磁石の幅よりも大きいことがより好ましい。
【0070】
可能な実施形態の一例では、12インチ(307mm)のキャリア直径に、12個の磁極が提供される。個々の磁極の数「4」は、浮上力と、周方向の誘導力とを決定する。高い誘導力は、迅速なウエハ加速および減速を可能にし、処理スループットを決定する。
【0071】
図1aの磁性ウエハキャリア102は、リング形状を有する。図1aにおいて、ウエハWは、永久磁石(図示せず)の引力によって、ピンおよび上側リング112の間にクランプされる。エッジ上に磁気によってウエハを固定およびクランプすることで、下側および上側からの自由空間処理が可能になる。処理チャンバ121は、高圧処理のために、カバー部分115によって密閉され、弾性リングによってシールされてよい。モータ駆動ユニットへの円筒形の接続部123を用いて、駆動ロータ101(超伝導体クライオスタット)は、機械的な接触なしに磁力だけによって閉じたチャンバ内でウエハキャリア102を回転させる。
【0072】
図1aの閉じた処理チャンバ115は、パイプおよびチューブのための中央フィードスルーを有する。フランジ123は、クライオスタットを備えた駆動ロータ101を回転させるためにモータ駆動部に接続する。
【0073】
磁気結合により、被駆動ロータ102は、他の結合部分を固定した状態で1つの結合部分を小さい角度回転させることによって超伝導駆動ロータ101から容易に引き離されることが可能であることに注意されたい。一例として、ステータが、2つの磁石の間の円弧距離の半分だけ回転されて、磁力を解放し、磁気ユニットを分離する際に、ウエハを有するロータは、例えば、ロボットアームによって、ある位置に固定される必要がある。図2において、ウエハキャリア221は、円周上に12の磁極を有する。したがって、2つの磁極の中央の間の角度は30°であり、ロータおよびステータの間で15°のねじれを生じさせると、磁気結合が解放される。
【0074】
固定されたステータにおけるより小さいねじれ角5°〜8°では、ロータは、元の位置に戻る傾向を有する。この後退可能な力は、適用される誘導力がロータを加速または破壊することを制限する。被駆動ロータが、開いた処理チャンバから取り除かれる場合でも、超伝導体のピン止め力により、駆動ロータの位置を基準として被駆動ロータを正確に再位置決めすることができる。このロータの交換は、超伝導体が、選択された低温条件下にある限りは繰り返し可能である。
【0075】
図2の別の結合配置において、超伝導体クライオスタット216は、近い距離で処理チャンバ211を取り囲み、磁力を放射状に被駆動ロータ221に対して提供する。液体窒素冷却は、外側同心チャンバ218によって供給されて、超伝導体204に低温を提供する。すべての低温部分は、軸構成と同様に断熱される。シャフトおよびモータ結合部220を備えたモータ駆動ユニット219は、駆動ロータ216を支持および駆動する。被駆動ロータ221はウエハキャリアと共に、(非磁性の)チャンバ壁を通した磁力により、クライオスタットの動きに追随する。
【0076】
以下では、第1の実施形態に従った装置を動作させる方法について説明する。第1の実施形態に従った装置は、開状態(カバー115が外された状態)で提供され、その時、環状銅容器108は液体窒素で満たされていないため、HTS104は周囲温度(Tcよりも十分に高い)を有する。さらに、被駆動ロータ102は、作動位置に配置されていない。
【0077】
ここで、0.5mmの厚さを有するスペーサが、底部壁103の内面と被駆動ロータ102の下面との間に配置されて、被駆動ロータ102が作動位置に配置される。その結果、被駆動ロータは、駆動ロータに関して同心円状に配置されたスペーサ上に載った状態になる。その後、液体窒素が、一方のパイプ113を通して環状銅108内に満たされる。余分な気体は、反対側のパイプ113を通して環状銅容器108から排気される。HTS104が、Tcより低い温度に到達すると、被駆動ロータ102の永久磁石105から生じる磁場が、HTS内に捕捉されてピン止めされる。その後、スペーサは除去されてよく、被駆動ロータ102は、チャンバ壁103に触れることなく、その上方に浮上する。ただし、被駆動ロータ102は、駆動ロータ101に触れることなく、それに結合(ピン止め)される。
【0078】
被駆動ロータ102が、駆動ロータ101に結合されると、ディスク状物品Wを処理するための処理を開始できる。ディスク状物品がチャック112にロードされ、チャンバ121が閉じられ、所望の圧力(真空または高圧)が選択され、処理流体(気体または液体)が上方および/または下方からディスク状物品Wに供給される。
【0079】
図3aは、第3の実施形態を示す概略的な斜視断面図である。詳細3b(点線の円)が、図3bの拡大図に示されている。装置は、チャンバ320と、駆動ロータ310と、被駆動ロータ305とを備える。チャンバ320は、基本的に垂直な円筒形の側壁を有するボウル322を備える。供給パイプ327は流体(液体および/または気体)をボウル322に供給し、排出パイプ328は使用済みの流体を収集する。
【0080】
駆動ロータ310は回転ディスク314を備えており、回転ディスクはボウル322の下方に配置されている。駆動ロータ310は、中空軸モータ313の中空軸に結合されている。パイプ327は、中空軸内を通っている。3つのL字形キャリアロッド317が、回転ディスクに放射状に摺動可能に取り付けられており、回転動作の回転軸に直交する方向に摺動可能である。キャリアロッド317の線形動作Rは、線形モジュール315によって駆動される。L字形キャリアロッド317は共に、L字形キャリアロッド317の遠位端が、ボウル322の外側円筒壁から5ないし60mmの範囲に配置されるように、ボウル322を囲む。
【0081】
立方体形状のクライオスタット318が、キャリアロッド317の遠位端に取り付けられる。クライオスタット318内では、HTS要素(図示せず)が、クライオスタット318の内向きの壁に近接(0.1ないし5mm)して配置される。したがって、クライオスタット318は、線形モジュール315によって半径方向に移動するよう駆動されうる。クライオスタット318は、第1の実施形態で上述したものと同様の二重容器実施形態を有する。
【0082】
被駆動ロータ(内部ロータ)は、3つの把持要素305を備える。各把持要素305は、永久磁石を収容しており、永久磁石は、HTSがTc未満の温度になったときにHTS要素に対して磁気的にピン止めされる。したがって、各把持要素305は、図3b(開位置)および図3c(閉位置)に示すように、クライオスタット318内の対応するHTSの半径方向の動きに追随する。把持要素305の内側面は、ディスク状物品をしっかりと把持するために、ディスク状物品の縁部に接触するV字形の溝を有する。
【0083】
以下では、この第3の実施形態に従った装置の動作について説明する。その装置の利用を開始する前に、クライオスタット(Tcよりも高い温度、例えば、室温を有する)は開位置に移動され、把持要素318は所望の位置に配置される。この際、把持要素の各々は、それぞれ対応するクライオスタットに近接している。把持要素318のV字形の溝は、内側に向いた水平方向の溝である。開位置において、把持要素305は、ボウル322の円筒形の側壁の内面に接触してよい。
【0084】
把持要素305が位置決めされると、HTSは、液体窒素をクライオスタット内に満たしてTc未満の温度まで冷却することによって教示される(taught)。ここで、把持要素は、HTSにピン止めされ、HTSのすべての動き(ディスク状物品を把持および解放するための半径方向の動き、ディスク状物品を上げ下げするための垂直方向の動き、および、回転)に追随する。
【0085】
把持要素は、開位置にある時(図3c)、ディスク状物品をチャンバにロードできるように、十分な間隔を提供する。その後、線形モジュール315は、クライオスタット318と共にキャリアロッド317を内側に移動させ、それにより、把持要素305は、ディスク状物品Wの縁部に向かって押しつけられる(図3b)。磁力により、柔らかく押しつけて把持できるため、機械力の要素とは対照的に、ディスク状物品のスマートな取り扱いが可能になる。線形モジュールは、回転しない供給パイプ327に取り付けられた集電システムを通して供給される電気エネルギによって駆動される。把持要素305がディスク状物品に接触した後、クライオスタットは、必要な把持力を提供するために、さらに1mm内向きに移動される。高い回転速度(例えば、500rpmより高い速度)では、より大きい力を提供して、把持要素に作用する遠心力を補償するために、クライオスタットをさらに内向きに移動させる必要がありうる。
【0086】
図4aおよび図4bは、開位置にある第4の実施形態を示す概略的な水平断面図および垂直断面図である。図4aおよび図4bは、閉位置にある同じものを示している。第4の実施形態に従った装置の構成は、第3の実施形態に基づいている。チャンバ(チャンバのボウル、カバー、および、円筒形側壁)は、同じものである。したがって、円筒形の側壁422のみが図示されている。チャンバは、HTSを含む4つのクライオスタット415によって囲まれている。クライオスタット415は、第3の実施形態について上述したように、回転および半径方向の移動が可能である。
【0087】
チャンバ内で、変形可能リング401が、円筒形の側壁422と同心円状に浮上している。変形可能リング401内には、クライオスタット415内のHTSに対応して、永久磁石410が配置されている。永久磁石410は、上述のように、HTSにピン止めされる。したがって、変形可能リング410は、クライオスタット415が図4cおよび図4d(開位置)に示すように外側に移動されると変形する。永久磁石410に隣接して、把持要素405が、変形可能リング401に取り付けられる。あるいは、把持要素405および変形可能リング401は、1つのブロック材料で形成されてもよい。適切な材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。他の適切な材料は、Viton、Tecnoflon、Fluorel、Aflas、および、Dai−Elなどのフルオロエラストマ(FKMおよびFEPM)、または、Tecnoflon PFR、Kalrez、Chemraz、Perlastなどのパーフルオロエラストマである。あるいは、鋼バネを用いて、それに永久磁石を取り付けてもよい。バネは永久磁石と共に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パ−フッ化ビニルエーテル)、または、ECTFE(クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体)によって被覆される。
【0088】
この実施形態は、変形可能リング401が、その永久磁石410および把持要素405と共に、回転時に変形しないように質量バランスがとれていると見なされうるという利点を有する。したがって、把持要素に作用する遠心力を補償する必要がない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク状物品を支持および回転するための装置であって、
前記ディスク状物品を支持するための支持体を備え、処理チャンバ内に配置される第1のロータと、
第2のロータを回転させるための駆動機構に接続された第2のロータであって、前記第1のロータに接触することなく磁力によって前記第1のロータに結合され、前記処理チャンバの外側に配置され、前記第1のロータと前記第2のロータとの間に壁が配置されている、第2のロータと、
第1の結合部分と第2の結合部分とを備える少なくとも1つの磁気対であって、前記第1の結合部分は、前記第1のロータに取り付けられた結合磁石を備え、前記第2の結合部分は、高温超伝導材料(HTS)を備える、磁気対と、
を備え、
前記磁気対は、前記第1のロータが前記第2のロータと共に移動するように、前記第1のロータおよび前記第2のロータの間に自由度が残らないような方法で配列および/または形成される、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、少なくとも2つの磁気対が設けられており、各磁気対は、少なくとも1つの結合磁石を備える、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、前記HTSは、断熱真空クライオスタット内に配置されており、前記クライオスタットは、液体窒素またはクライオクーラによって冷却される、装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、前記少なくとも1つの磁気対は、磁場を有する結合磁石を含み、前記磁場は、環状のロータ軌道の円弧対称に従わない、装置。
【請求項5】
請求項2に記載の装置であって、前記少なくとも2つの結合磁石は、(均一な回転対称の)磁場を有し、前記磁場は、前記磁場の磁気軸が同一ではない(平行な軸、ねじれの位置にある軸、交差)ように構成され、その結果、前記第1のロータと前記第2のロータの間に自由度が残らない、装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、前記第2の結合部分は、単結晶構造またはリング結晶ブロックで形成される、装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、前記第2の結合部分は、結晶ブロックの形態の前記高温超伝導材料を備え、前記結晶ブロックは、結晶のc軸を前記第1の結合部分に向けられて環状の形状に形成される、装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、前記高温超伝導材料は、組織溶融高温超伝導材料である、装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であって、前記組織溶融高温超伝導材料は、組成RE1+xBa2Cu37-δ(REは、Y、Sm、Nd、Dy、Gdの群から選択される)を有し、xは、0.1から0.8の範囲であり、δは、0から0.5の範囲である、装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置であって、前記HTSは、断熱を保証すると共に動作中に必要な低温を維持する真空クライオスタット内に組み込まれる、装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、前記真空クライオスタットは、冷却要素によって、または、前記HTSの臨界超伝導温度(Tc)よりも低い沸点を100kPaで有する冷却剤の容器を保持することによって冷却される、装置。
【請求項12】
請求項1に記載の装置であって、前記第1のロータおよび前記第2のロータは、磁気対を備え、前記磁気対は、前記第1の結合要素が回転軸までの距離を変更して、前記第1のロータの部分がディスク状物品を保持または解放できるように、半径方向に移動可能である、装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、前記第2の結合要素の半径方向位置は、前記第1の結合要素に作用する遠心力を補償するために、前記第1のロータの回転速度に関して制御される、装置。
【請求項14】
請求項12に記載の装置であって、前記第1の結合要素に作用する遠心力を補償するために、補助磁石が提供される、装置。
【請求項15】
請求項13に記載の装置であって、前記補助磁石の半径方向位置を変更する手段を備える、装置。
【請求項16】
請求項13に記載の装置であって、前記補助磁石はソレノイドであり、前記第1のロータの回転速度に応じて磁力が変更可能である、装置。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれかに記載の装置を動作させる方法であって、時系列で、
前記HTSが臨界温度(Tc)よりも高い第1の温度T1を有するときに、前記第1のロータを前記第2のロータに近接して同軸に保持する工程であって、前記第1のロータから前記第2のロータまでのギャップ距離は0.5ないし40mmの範囲である、工程と、
前記臨界温度Tcよりも低い第2の温度T2まで前記HTSを冷却する工程と、
前記第1のロータを解放する工程と、
を備える、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記HTSは、前記第1の結合部分の要素である前記結合磁石とは異なる補助磁石からの磁場によって教示される、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記補助磁石の前記磁場の形状は、前記結合磁石の形状と同様であり、その結果、磁場ベクトルの方向の偏位は、10°以下であり、前記磁場ベクトルの向きは同じであり、中心は、所定位置に配置されたときに永久磁石の中心と2mm以下のずれを有し、前記補助磁石の前記磁場は、前記第1のロータの要素である前記結合磁石の磁場よりも強い、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、前記補助磁石は、前記HTSの温度が前記臨界温度Tcに到達する前に電磁場を提供する電磁石であり、前記電磁場は、前記HTSの温度が前記Tc未満になるまで維持される、方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【公表番号】特表2012−513185(P2012−513185A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541679(P2011−541679)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055695
【国際公開番号】WO2010/070562
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(510141648)ラム・リサーチ・アーゲー (11)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH AG
【Fターム(参考)】