説明

ディスク装置、演算方法及びオフセット制御方法

【課題】 リードヘッドとライトヘッドとの間隔(RWギャップ)を推定すること。
【解決手段】 ディスク装置は、ディスク媒体に対してデータを書き込むライトヘッド及びディスク媒体からデータを読み出すリードヘッドが分離して設けられ、ライトヘッドがトレースするトラックとリードヘッドがトレースするトラックとの間にオフセットが存在する磁気ヘッド(101)と、測定用信号をディスク媒体に書込み、リードヘッドをディスク媒体の半径方向に移動しつつ測定用信号を読み出し、読出し信号のレベルに基づいてオフセットの実測値を求める測定手段(111)と、ライトヘッドとリードヘッドとの間隔の設計値と、該設計値に基づいて計算したオフセットの設計値と、オフセットの実測値とに基づいて、ライトヘッドとリードヘッドとの間隔の推定値を求める演算手段(111)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブなどのディスク装置に関し、特に、リードヘッドとライトヘッドの間のオフセットを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ハードディスクドライブを代表とするディスク装置(ディスクドライブとも称する)では、記録媒体である磁気ディスク媒体(以下、単に磁気ディスクと称する)に対してデータの記録・再生を行なう磁気ヘッドが設けられている。磁気ヘッドとしては、リードヘッドとライトヘッドとが分離して、同一スライダに実装された複合型ヘッドが使用されている。リードヘッドは、通常では、MR(Magneto Resistive)素子またはGMR(Giant Magneto Resistive)素子からなり、リード動作(データの読み出し動作)を実行するヘッドである。ライトヘッドは、通常では、インダクティブ薄膜ヘッド素子からなり、ライト動作(データの書き込み動作)を実行するヘッドである。
【0003】
このようなヘッドは、通常では、ロータリ型(回転型)アクチュエータに搭載されている。アクチュエータは、ボイスコイルモータ(VCM)の駆動力により、ディスク媒体上の半径方向に回転駆動して、ヘッドをディスク媒体上の目標位置(目標トラック又は目標シリンダ)に位置決めするように構成されている。
【0004】
ところで、ロータリ型アクチュエータにより、ヘッドがディスク媒体上に位置決めされる場合に、リードヘッドとライトヘッドとは、分離しているため周方向にギャップ間隔(Grw)が存在する。さらに、アクチュエータの回転角度があるため、リードヘッドとライトヘッドは、ディスク媒体上の半径方向の位置が異なるため、いわゆるオフセットが発生する。
【0005】
具体的には、データを再生するリード動作時に、ライトヘッドによりディスク媒体上に記録したときのデータ位置(トラック位置)に対して、リードヘッドを位置決めするときに、オフセットに応じた位置補正を行なう必要がある(特許文献1、特許文献2)。
【0006】
特許文献1ではオフセット値OFはアクチュエータの回転中心(ピボット)とヘッド中心点とを結ぶ線と、トラック円弧の接線とのなす角度(スキュー角)θと、リードヘッドとライトヘッドとのギャップ間隔Gとから次のように求めている。
【0007】
OF=G×sinθ
ディスクドライブの製造工程において、オフセット値の計算に必要なパラメータ(各トラック毎のギャップ間隔Gとスキュー角θ)をメモリに予め格納している(段落0033参照)。
【0008】
そして、リード時に、ホストシステムからリード命令を受けると、読み出し対象のデータが記録されている目標トラックである目標位置TPを設定し、アクチュエータを駆動制御して、ヘッドを目標位置TPの近傍まで移動させるシーク動作後、目標位置TPであるトラック位置にオントラックさせるための位置決め動作(トラック追従動作)を実行する。この位置決め動作時に、オフセットに従った位置補正を行う(段落0040参照)。
【0009】
特許文献2でも、書込みエレメント及び読取りエレメントの間の半径方向オフセットxは書込みエレメント及び読取りエレメントの間隔とスキュー角との関係から決定される(段落0027参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−216378号公報
【特許文献2】特開2001−134905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
いずれの文献でもオフセット値を算出するためのパラメータであるスキュー角、リードヘッド・ライトヘッドのギャップ間隔は製造工程において設計値として与えられ、メモリに保存されている。すなわち、ギャップ間隔は実際には求めていなかった。
【0012】
ギャップ間隔は数μmと設計されているが、リードヘッドとライトヘッドは微小な部品のため、間隔は製造上ある程度のばらつきが存在する。ハードディスクドライブの記録密度TPI(1インチ当りのトラック数TPI:track per inch)の増加に伴い、ギャップ間隔はエラーレートを左右する重要なパラメータとなってきている。ギャップ間隔のばらつきは、現在のところ、エラーレートへの影響や、ドリフトオフの要因として顕在していないが、これ以上の高TPI化(現在323kTPI,トラックピッチ:Tp79nm以上)が進むと、無視できないものとなる。
【0013】
例えば、ギャップ間隔が0.0045mmの時、オフセットは外周(サイクル:10)で89.7nmとなる。ギャップ間隔が5%変動すると、オフセットは4nmの誤差となり、323kTPI(TP79nm)に対して6%のずれとして見えてくる。
【0014】
本願発明の目的は、実際の製品毎にリードヘッドとライトヘッドの間隔を求めることが出来るディスク装置、演算方法及びオフセット制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施の形態によれば、リードヘッドとライトヘッドとが分離して設けられる磁気ヘッドと、測定用信号をディスク媒体に書込み、前記リードヘッドをディスク媒体の半径方向の複数の位置に移動して該複数の位置ごとの測定用信号を読み出し、該読出した測定用信号のレベルに基づいて前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの半径方向の位置ずれを示すオフセットの実測値を求める測定手段と、前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの間隔の設計値と、前記設計値に基づいて計算した前記オフセットの設計値と、前記オフセットの実測値とに基づいて、前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの間隔となる値を求める演算手段とを具備するディスク装置が提供される。
【0016】
本発明の他の実施の形態によれば、リードヘッドとライトヘッドとが分離して設けられる磁気ヘッドを具備するディスク装置の前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの間隔となる値の演算方法であって、
測定用信号をディスク媒体に書込み、前記リードヘッドをディスク媒体の半径方向の複数の位置に移動して該複数の位置ごとの測定用信号を読み出し、該読出した測定用信号のレベルに基づいて前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの半径方向の位置ずれを示すオフセットの実測値を求めることと、
前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの間隔の設計値と、前記設計値に基づいて計算した前記オフセットの設計値と、前記オフセットの実測値とに基づいて、前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの間隔となる値を求めることと、
を具備する演算方法が提供される。
【0017】
本発明の他の実施の形態によれば、リードヘッドとライトヘッドとが分離して設けられる磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドを保持するロータリ型のアクチュエータとを具備するディスク装置のオフセット制御方法であって、
測定用信号をディスク媒体に書込み、前記リードヘッドをディスク媒体の半径方向の複数の位置に移動して該複数の位置ごとの測定用信号を読み出し、該読出した測定用信号のレベルに基づいて前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの半径方向の位置ずれを示すオフセットの実測値を求めることと、
前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの間隔の設計値と、前記設計値に基づいて計算した前記オフセットの設計値と、前記オフセットの実測値とに基づいて、前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの間隔となる値を求めることと、
前記アクチュエータの回転中心と前記磁気ヘッドの中心点とを結ぶ線と円弧状のトラックの接線とのなすスキュー角と、前記間隔となる値とに基づいてオフセットを求めることと、
前記オフセットに基づいてリード時のリードヘッドの位置決めを行うことと、
を具備するオフセット制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、製品毎にリードヘッドとライトヘッドの間隔を求めることが出来る。これにより、データアクセス性能の劣化を招くことがなく、確実にリードヘッドを所望のトラックに位置決めすることができる実用的なディスク装置、演算方法及びオフセット制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係るディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】リードヘッドとライトヘッドとのRWオフセット、RWギャップを説明するための概略図である。
【図3】オフセットを測定する動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
(ディスクドライブの構成)
図1は、本実施形態に関するディスクドライブ100の構成を説明するためのブロック図である。
【0022】
本実施形態のディスクドライブ100は、磁気ヘッド101と、磁気記録媒体であるディスク媒体(以下、磁気ディスクと表記する)103と、当該磁気ディスク103を回転させるスピンドルモータ(SPM)106と、磁気ヘッド101を搭載して磁気ディスク103上の半径方向に移動させるアクチュエータとを含む装置機構(ドライブメカニズム)、及び後述する制御・信号処理系を有する。
【0023】
磁気ヘッド101は、磁気ディスク103からデータやサーボ情報を読出す(再生する)ためのリードヘッドと、磁気ディスク103にデータやオフセット測定用サーボパターン(オフセット測定用位置情報)を書き込む(記録する)ためのライトヘッドとを有する。磁気ヘッド101は、ヘッド本体である1つのスライダ上に、リードヘッドとライトヘッドとが分離して実装されている。このため、リードヘッドとライトヘッドのそれぞれのトラック軌跡に一定のオフセット(位置ずれ)が発生してしまう。オフセット値はディスク上の半径位置に依存している。ここでは、リードヘッドよりもライトヘッドの方がアクチュエータの先端側に配置され、内周側のトラックについてはライトヘッドの方がリードヘッドよりも内周側に位置し、外周側のトラックについてはライトヘッドの方がリードヘッドよりも外周側に位置するとする。
【0024】
アクチュエータは、磁気ヘッド101を搭載しているサスペンションおよびアーム102、回転軸となるピボット104、及びコイル、磁石、ヨークを含み、駆動力を発生するボイスコイルモータ(VCM)105から構成されている。アクチュエータは、後述するマイクロプロセッサ(CPU)112のヘッド位置決め制御(サーボ制御)により、磁気ディスク103上の半径方向に移動制御される。これにより、磁気ヘッド101は、磁気ディスク103上の目標位置(目標トラック)に位置決めされる。
【0025】
磁気ディスク103上には、周方向に所定の間隔を有する放射状の複数のサーボ領域200が設けられており、さらに同心円状の多数のトラック(シリンダ)201が構成される。なお、トラック201は、ライトヘッドによりユーザデータが記録されたデータトラック、あるいは複数のサーボ領域200から構成されるサーボトラックの両方を意味する。
【0026】
サーボ領域200には、各トラックを識別するためのアドレスコード(シリンダコード)、及びトラック内の磁気ヘッド101の位置を検出するためのサーボバースト信号を含むサーボ情報が記録されている。CPU112は、リードヘッドにより読出されるサーボ情報を使用して、ヘッド位置決め制御(サーボ制御)を実行する。
【0027】
制御・信号処理系は、モータドライバ107と、ヘッドアンプユニット108と、リード/ライトチャネル109と、ハードディスクコントローラ(HDC)111と、CPU112と、メモリ113とを有する。モータドライバ107は、SPM106に駆動電流を供給するSPMドライバ107A及びVCM105に駆動電流を供給するVCMドライバ107Bを有する。
【0028】
ヘッドアンプユニット108は、磁気ヘッド101のリードヘッドにより読出されたリード信号RSを増幅してリード/ライトチャネル109に出力するリードアンプ108Aを含む。また、ヘッドアンプユニット108は、リード/ライトチャネル109から出力されるライトデータWDをライト信号(ライト電流)WSに変換して、磁気ヘッド101のライトヘッドに供給するライトドライバ108Bを含む。ライトドライバ108Bは、データ変調/復調ユニット114から出力されるライトゲートDWG2のタイミングで、ライトデータWDをライト信号WSに変換する。
【0029】
リード/ライトチャネル109は、リード/ライトデータ信号を処理する信号処理ユニットであり、データ変調/復調ユニット114と、オフセット測定用サーボパターン生成ユニット115と、サーボ復調ユニット116とを有する。
【0030】
データ変調/復調ユニット114は、HDC111からライトゲートDWG1のタイミングで転送される記録データ125をライトデータWDに変調(符号化)する。また、データ変調/復調ユニット114は、リードアンプ108Aから出力されるリードデータ信号RDを、HDC111からのリードゲートDRGのタイミングで再生データ125に復調(復号化)してHDC111に出力する。
【0031】
オフセット測定用サーボパターン生成ユニット115は、HDC111から出力されるサーボライトゲート信号117(SWG−1)のタイミングで、サーボライトゲート信号121(SWG−2)及びオフセット測定用サーボパターン(オフセット測定用位置情報)を含むサーボ記録データ122を生成する。このとき、ユニット115は、サーボ復調ユニット116から同期信号124を入力する。
【0032】
サーボ復調ユニット116は、リードアンプ108Aから出力されるサーボ再生信号123から、アドレスコード及びサーボバースト信号(A〜D)を含むサーボデータ120に復調(復号化)してHDC111に出力する。このとき、サーボ復調ユニット116は、HDC111から出力されるサーボリードゲート118(SRG−A)及びサーボリードゲート119(SRG−B)のタイミングで、サーボバースト信号(バーストパターンA,B)を復調する。
【0033】
HDC111は、ディスクドライブ100とホストシステム(パーソナルコンピュータやディジタル機器)110とのインタフェースを構成し、ホストシステム110とのユーザデータのリード/ライト転送制御などを実行する。また、HDC111は、リード/ライトチャネル109のリード/ライト動作を制御する。
【0034】
CPU112は、ディスクドライブ100のメインコントローラであり、ヘッド位置決め制御(サーボ制御)を実行するためのサーボシステムのメイン要素である。CPU112は、ヘッド位置決め制御でのシーク動作及びトラック追従動作(位置制御)と共に、本実施形態に関するリードライトギャップの推定、さらにはオフセット制御(DOC)を実行する。
【0035】
メモリ113は、フラッシュメモリ、ROM、及びRAMを含み、CPU112の制御動作に必要な各種のデータを格納する。
【0036】
このような構成のディスク装置において、リードヘッドのリードギャップとライトヘッドのライトギャップとの間隔:ギャップ間隔(RWギャップとも称する)の求め方を説明する。
【0037】
図2はオフセット、ギャップ間隔を示す概略図である。H点は図1の磁気ヘッド101を保持して磁気ディスクの所定の位置に回転移動させる機構部分であるヘッドスタックアッセンブリ(HSA)のピボット、S点はSPM106の回転中心、M点はサーボシリンダ中心、R点はリードヘッドのギャップ位置、W点はライトヘッドのギャップ位置である。ライトヘッドのギャップ位置の方がリードヘッドのギャップ位置よりも内周側にある。ディスク(サーボパターン)の中心はスピンドルモータ(SPM)の中心と一致しておらず、偏心(ディスクシフト)しているとする。偏心の原因は、製造時のバラツキ(サーボ情報を記録するサーボトラックライタの記録誤差、スピンドルモータの取り付け誤差)や、外部から加えられる強い衝撃や振動等がある。
【0038】
図2から次式が得られる。
【数1】

【0039】
θskew(φ)=α+θinline−(π/2) (3)
RWoffset=RWgap×sin(θskew) (4)
(4)式から、ギャップRWgapとオフセットRWoffsetとは比例関係にあることが分かる。なお、(4)式のオフセットは絶対値であり、上述したように、内周側のトラックについてはライトヘッドの方がリードヘッドよりも内周側に位置し、外周側のトラックについてはライトヘッドの方がリードヘッドよりも外周側に位置する。スキュー角は既知である。そのため、(4)式からギャップの設計値RWgap0に対するオフセットRWoffset0を求め、あるトラックにおけるオフセットの実測値をRWoffsetとすると、ギャップRWgapの推定値は次のように求めることができる。
【0040】
RWgap=RWgap0×(RWoffset/RWoffset0) (5)
パラメータLhm、Lhs、φは既知である。このため、ギャップRWgapの推定のために、以下のパラメータが必要である。
【0041】
δ:偏心量、r:半径位置、RWoffset
偏心量δは、ヘッド毎に内周押し付けによってシリンダアドレスを測定し、TPIから算出することができる。このようにヘッド毎に偏心量を算出することにより、スタックズレ分が解消される。また、半径位置rはTPIから算出することができる。
【0042】
オフセット値RWoffsetはディスクの特定の領域に測定パターンを書込み、それを読み出す際に、ヘッドをディスクの径方向に移動させながら、再生信号のレベルが極大になる位置に基づいて求めることができる。
【0043】
具体的には、オフセット値測定用の信号(測定パターン)をディスクにおけるオフセット測定領域に書き込む。例えば、図3に示すように、ブロック102で、最内周近傍の所定のデータ記録トラックにリードヘッドをオントラックさせた状態(所定のデータ記録トラックと同一のパターン半径位置にリードヘッドを位置させた状態)において、ライトヘッドを介してオフセット測定領域に測定パターンを書き込む。この時、オフセットがあるので、ライトヘッドがオフトラックしている量(オフセット値)に応じた分だけそのトラック中心から外れた内周側の半径位置に測定パターンが記録される。
【0044】
次に、オフセット測定領域から測定パターンを読み出し、測定パターンが書き込まれた領域の半径方向における中心、すなわち、測定パターンの書き込み時においてライトヘッドにおける記録幅方向の中心と一致していた位置を特定する。先ず、ブロック104でオフセット測定領域から測定パターンを読み出す。この際、測定パターンの書込み領域に対してリードヘッドが内周側または外周側に外れた状態では、読み出した測定パターンについての再生信号の出力レベル(振幅値)が小さくなる。これに対して、測定パターンの書込み領域における半径方向の中心とリードヘッドにおける読み出し幅方向(半径方向)の中心とが一致する状態では、読み出した測定パターンについての再生信号の出力レベルが極大値となる。したがって、測定パターンについての再生信号の出力レベルが極大値となったときのリードヘッドの中心位置を測定パターンが書き込まれた領域の半径方向における中心として特定し、特定した中心と、測定パターンの書き込み時におけるリードヘッドの中心(すなわち、データ記録トラックのトラック中心)との間の距離をリードヘッドに対するライトヘッドのオフセット値として取り込む。すなわち、ブロック106で再生信号の極大値が検出されたか否か判定する。極大値が検出されていない場合は、ブロック108でリードヘッドを所定量(例えば、0.05Tp(トラックピッチ))だけ内周側へ移動し、ブロック104の測定パターンの再生を繰り返す。極大値が検出された場合は、ブロック110でその極大値が得られた時のリードヘッドの位置と測定パターンを記録した時のリードヘッドの位置との差をオフセットとする。
【0045】
(5)式の演算のためのRWoffsetは、理論的には任意の半径位置の1つのリファレンストラックの測定で十分であるが、(4)式に示すようにオフセット値RWoffsetはsin(θskew)に依存しており、スキュー角θskewは内周・外周になるにつれて値が大きくなり、さらに、ヘッドの感度特性等の測定誤差要因も含まれるため、オフトラック量(オフセット値RWoffset)も内周・外周になるにつれて大きくなる。
【0046】
このため、少なくとも最内周近傍と最外周近傍の2つのトラックをリファレンストラックとしてオフセット値RWoffsetを測定する。そのため、ブロック112〜ブロック120において、外周側のトラックについてのオフセット測定を行い、その平均値を求める(ブロック122)。内周側の動作と異なる点は、ブロック118においてリードヘッドを外周側に移動する点である。
【0047】
内周、外周のトラックについて測定されたオフセットの平均値を(5)式の実測値RWoffsetとして使い、ギャップRWgapの推定値を求める。なお、これら以外の複数の半径位置においてオフセット値RWoffsetを測定し、その値を平均してもよい。
【0048】
このように製品毎のギャップ間隔RWgapを推定することができるので、オフセットRWoffsetも(4)式に基づいて正確に求めることができる。従って、リード動作時に、ライトヘッドによりディスク媒体上に記録したときのデータ位置(トラック位置)に対してリードヘッドを位置決めするとき、正しいオフセットに応じた位置補正を行なうことが出来る。位置補正の一例としては、特開2005−216378号公報、特開2009−176403号公報に記載のダイナミック・オフセット制御(DOC:Dynamic Offset Control)がある。DOCはRWギャップから見える、位相差による一次成分のオフセット量をコントロールすることで、リードヘッド/ライトヘッド軌道を制御するものである。ダイナミック・オフセットの影響が顕著に見えるのは、ダイナミック・オフセット量がトラックピッチTpの13%程度(現行TPIで8nm)以上と言われている。DOCとは(4)式を用いてオフセット値を制御するものであり、オフセット制御量はRWギャップに比例する。例えば、RWギャップが10%の誤差を持つと、ダイナミック・オフセット量も10%の影響を受ける。このため、正確なオフトラックコントロールのためには正確なRWギャップが必要である。
【0049】
本実施形態によれば、製品毎のRWギャップの推定値を(5)式から求めることができるので、(5)式を(4)式に代入した(6)式に示すようにRWoffsetを求めることにより、従来より精密なRWoffsetが算出される。RWoffsetは半径位置により変化するものであり、現状では半径位置の関数にて近似して算出しているため、(6)式から求められるRWoffsetは現状の近似計算によるRWoffsetよりも精度が高い。
【0050】
RWoffset=RWgap0×(RWoffset/RWoffset0)×sin(θskew) (6)
RWオフセット値からRWヘッド間距離を推定し推定値をDOC補正値に加えることで、よりヘッド毎に最適化された制御が可能となり、エラーレートが改善する。
【0051】
正確なオフセット値の算出が可能になることで、オフトラックリトライの減少が期待され、パフォーマンスが向上する。
【0052】
本実施形態によれば、リードヘッドとライトヘッドのオフセット値を直接的に測定できるため、高精度でかつ短時間の測定により、ディスク媒体の1回転内で変化するオフセット値を算出することができる。これにより、データアクセス性能の劣化を招くことがなく確実にDOC補正を実現できる実用的なディスクドライブを提供することができる。
【0053】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。また、本発明は、コンピュータに所定の手段を実行させるため、コンピュータを所定の手段として機能させるため、コンピュータに所定の機能を実現させるため、あるいはプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体としても実施することもできる。また、上述の説明は個々の実施例それぞれについて行ったが、複数の実施例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0054】
101…磁気ヘッド、102…アーム、103…磁気ディスク、104…ピボット、105…ボイスコイルモータ(VCM)、106…スピンドルモータ(SPM)、107…モータドライバ、108…ヘッドアンプユニット、109…リード/ライトチャンネル、110…ホストシステム、111…HDC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードヘッドとライトヘッドとが分離して設けられる磁気ヘッドと、
測定用信号をディスク媒体に書込み、前記リードヘッドをディスク媒体の半径方向の複数の位置に移動して該複数の位置ごとの測定用信号を読み出し、該読出した測定用信号のレベルに基づいて前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの半径方向の位置ずれを示すオフセットの実測値を求める測定手段と、
前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの間隔の設計値と、前記設計値に基づいて計算した前記オフセットの設計値と、前記オフセットの実測値とに基づいて、前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの間隔となる値を求める演算手段と、
を具備するディスク装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記オフセットの設計値と前記オフセットの実測値との比と、前記間隔の設計値とに基づいて、前記間隔となる値を求めることを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項3】
前記測定手段はディスク媒体の内周側と外周側の2トラックについて前記オフセットの実測値を求め、該2つの実測値の平均値を求めることを特徴とする請求項1または請求項2記載のディスク装置。
【請求項4】
前記測定手段は前記リードヘッドを所定のトラックへ位置決めして前記ライトヘッドを介して前記測定用信号をディスク媒体に書込み、前記リードヘッドをディスク媒体の半径方向の複数の位置に移動して該複数の位置ごとの測定用信号を読み出し、該読出した測定用信号のレベルの極大値が得られるリードヘッドの位置に基づいて前記オフセットの実測値を求めることを特徴とする請求項3記載のディスク装置。
【請求項5】
リードヘッドとライトヘッドとが分離して設けられる磁気ヘッドを具備するディスク装置の前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの間隔となる値の演算方法であって、
測定用信号をディスク媒体に書込み、前記リードヘッドをディスク媒体の半径方向の複数の位置に移動して該複数の位置ごとの測定用信号を読み出し、該読出した測定用信号のレベルに基づいて前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの半径方向の位置ずれを示すオフセットの実測値を求めることと、
前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの間隔の設計値と、前記設計値に基づいて計算した前記オフセットの設計値と、前記オフセットの実測値とに基づいて、前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの間隔となる値を求めることと、
を具備する演算方法。
【請求項6】
前記間隔となる値を求めることは、前記オフセットの設計値と前記オフセットの実測値との比と、前記間隔の設計値とに基づいて、前記間隔となる値を求めることを特徴とする請求項5記載の演算方法。
【請求項7】
前記実測値を求めることはディスク媒体の内周側と外周側の2トラックについて前記オフセットの実測値を求め、該2つの実測値の平均値を求めることを特徴とする請求項5または請求項6記載の演算方法。
【請求項8】
前記実測値を求めることは前記リードヘッドを所定のトラックへ位置決めして前記ライトヘッドを介して前記測定用信号をディスク媒体に書込み、前記リードヘッドをディスク媒体の半径方向の複数の位置に移動して該複数の位置ごとの測定用信号を読み出し、該読出した測定用信号のレベルの極大値が得られるリードヘッドの位置に基づいて前記オフセットの実測値を求めることを特徴とする請求項7記載の演算方法。
【請求項9】
リードヘッドとライトヘッドとが分離して設けられる磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドを保持するロータリ型のアクチュエータとを具備するディスク装置のオフセット制御方法であって、
測定用信号をディスク媒体に書込み、前記リードヘッドをディスク媒体の半径方向の複数の位置に移動して該複数の位置ごとの測定用信号を読み出し、該読出した測定用信号のレベルに基づいて前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの半径方向の位置ずれを示すオフセットの実測値を求めることと、
前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの間隔の設計値と、前記設計値に基づいて計算した前記オフセットの設計値と、前記オフセットの実測値とに基づいて、前記ライトヘッドと前記リードヘッドとの間隔となる値を求めることと、
前記アクチュエータの回転中心と前記磁気ヘッドの中心点とを結ぶ線と円弧状のトラックの接線とのなすスキュー角と、前記間隔となる値とに基づいてオフセットを求めることと、
前記オフセットに基づいてリード時のリードヘッドの位置決めを行うことと、
を具備するオフセット制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−154779(P2011−154779A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86659(P2011−86659)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【分割の表示】特願2009−278796(P2009−278796)の分割
【原出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】