説明

ディスク装置およびディスク媒体

【課題】クロストークノイズを低減する。
【解決手段】垂直磁気記録方式により書込対象のトラックに情報を記録する記録ヘッドと、読出対象のトラックに記録された情報を再生する再生ヘッドと、再生ヘッドに設けられた磁気抵抗効果素子の電気抵抗の変化に応じて変化する電圧波形をサンプリングするサンプリング部と、サンプリングした電圧波形の形状に基づいて、読出対象トラックに記録されたデータを再現するデータ再生部とを有するディスク装置に備えられ、同心円状に配置された複数のトラックを有するディスク媒体であって、各トラックの磁性体の間を遮断する遮断部を有するディスク媒体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク装置およびディスク媒体に関する。特に本発明は、磁気記録された情報を再生するディスク装置および同心円状に配置された複数のトラックを有するディスク媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディスク媒体に対して磁気的に情報を記録および再生する磁気ディスク記録再生装置が知られている。従来の磁気ディスク記録再生装置は、主面に対して平行な方向(面内方向)にディスク媒体を磁化する水平磁気記録方式を採用していた。しかし、近年、主面に対して垂直な方向にディスク媒体を磁化する垂直磁気記録方式を採用した磁気ディスク記録再生装置が提案されている(例えば、非特許文献1、2参照。)。
【0003】
また、水平磁気記録方式により磁化された磁気ディスクから読み出された信号は、直流応答を含まない信号であった。また、従来の磁気ディスク記録再生装置は、垂直磁気記録方式の磁気ディスクから読み出した信号を微分処理して直流応答を除いた後に、再生処理をしていた。さらに、近年においては、磁気ディスクをより高密度化することを目的として、垂直磁気記録方式の磁気ディスクに記録された信号を読み出す場合、磁気ディスク記録再生装置は、直流応答も含めた信号を再生処理するようになってきている。
【0004】
【非特許文献1】Isatake Kaitsu, Ryosaku Inamura, Junzo Toda, Toshihiko Morita、"Ultra High Density Perpendicular Magnetic Recording Technologies"、[Online] 、2006年1月、富士通ホームページ、[2006年8月11日検索]、インターネット<URL:http://www.fujitsu.com/downloads/MAG/vol42-1/paper14.pdf>
【非特許文献2】TDK株式会社 SQ研究所 次世代磁気記録デバイス開発グループ、「超高密度ハードディスク用磁気記録メディアの開発」、[Online]、[2006年8月11日検索]、インターネット<URL:http://www.business-i.jp/sentan/jusyou/2006/tdk.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6は、本願の発明者が測定した垂直磁化方式の磁気ディスクの特性を示し、より具体的には、垂直磁気記録方式を採用した磁気ディスク記録再生装置において、同一符号が連続するパターンを隣接トラックに記録した場合における、当該パターンの同一符号の連続数(ランレングスT)に対する読出対象トラックから再生された直流成分を含めた信号のエラーレートを示す。なお、図6におけるAのグラフは、読出対象トラックの内周側の隣接トラックに記録されたパターンのランレングスTを変化させた場合におけるエラーレートを示し、Bのグラフは、読出対象トラックの外周側の隣接トラックに記録されたパターンのランレングスTを変化させた場合におけるエラーレートを示し、Cのグラフは、内周側および外周側の両方の隣接トラックに記録されたパターンのランレングスTを変化させた場合におけるエラーレートを示す。
【0006】
図6に示すように、垂直磁気記録方式を採用した磁気ディスクから直流応答も含めた信号を再生する磁気ディスク記録再生装置は、隣接トラックに記録されたパターンのランレングスTが大きくなると、エラーレートが上がる。ここで、隣接トラックに記録された信号のランレングスTが大きくなると、隣接トラックから再生信号に混入するクロストークノイズは、より低周波数となる。従って、垂直磁気記録方式を採用した磁気ディスクから直流応答も含めた信号を再生する場合、磁気ディスク記録再生装置は、隣接トラックからの低周波数のクロストークノイズが再生信号に混入するので、エラーレートが上がる。
【0007】
そこで本発明は、上記の課題を解決することのできるディスク装置およびディスク媒体を提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、同心円状に配置された複数のトラックを有するディスク媒体と、垂直磁気記録方式により書込対象のトラックに情報を記録する記録ヘッドと、読出対象のトラックに記録された情報を再生する再生ヘッドと、前記再生ヘッドに設けられた磁気抵抗効果素子の電気抵抗の変化に応じて変化する電圧波形をサンプリングするサンプリング部と、サンプリングした電圧波形の形状に基づいて、読出対象トラックに記録されたデータを再現するデータ再生部とを備え、前記ディスク媒体は、各トラックの磁性体の間を遮断する遮断部を有するディスク装置を提供する。
【0009】
本発明の第2の形態においては、 垂直磁気記録方式により書込対象のトラックに情報を記録する記録ヘッドと、読出対象のトラックに記録された情報を再生する再生ヘッドと、前記再生ヘッドに設けられた磁気抵抗効果素子の電気抵抗の変化に応じて変化する電圧波形をサンプリングするサンプリング部と、サンプリングした電圧波形の形状に基づいて、読出対象トラックに記録されたデータを再現するデータ再生部とを有するディスク装置に備えられ、同心円状に配置された複数のトラックを有するディスク媒体であって、各トラックの磁性体の間を遮断する遮断部を有するディスク媒体を提供する。
【0010】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、クロストークノイズを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、本実施形態に係るディスク装置10の構成を示す。ディスク装置10は、ディスク媒体20に対して情報を磁気的に記録および再生する磁気記録再生装置であり、例えばコンピュータ等の情報処理装置の記憶装置として機能する。ディスク装置10は、ディスク媒体20と、ディスク駆動部22と、記録ヘッド24と、再生ヘッド26と、スライダ28と、アーム30と、アーム駆動部32とを備える。
【0014】
ディスク媒体20は、同心円状に配置された複数のトラック40を有し、当該トラック40に沿って磁気的にデジタル情報が記録される。そして、ディスク媒体20は、トラック40に対して磁気的に記録されたデジタル情報を保持する。ディスク駆動部22は、ディスク媒体20を回転可能に保持する。ディスク駆動部22は、記録時および再生時において当該ディスク媒体20を回転駆動する。
【0015】
記録ヘッド24は、垂直磁気記録方式により書込対象のトラック40に対して情報を記録する。再生ヘッド26は、垂直磁気記録方式により読出対象のトラック40に記録された情報を再生する。
【0016】
スライダ28は、記録ヘッド24および再生ヘッド26を保持する。記録ヘッド24および再生ヘッド26は、一例として、スライダ28におけるディスク媒体20の記録面と対向する面に配置される。スライダ28は、記録および再生時において、ディスク媒体20の回転によって当該ディスク媒体20の記録面上で微小に浮上し、回転するディスク媒体20に対して記録および再生が可能な位置まで記録ヘッド24および再生ヘッド26を近接させる。
【0017】
アーム30は、ディスク媒体20の半径方向に対して移動可能にスライダ28を支持し、記録ヘッド24および再生ヘッド26を最内周側のトラック40に対向する位置から最外周側のトラック40に対向する位置まで移動させる。アーム30は、一例として、長手方向の一端にスライダ28を保持してよい。
【0018】
アーム駆動部32は、アーム30を駆動することにより、スライダ28に配設された記録ヘッド24および再生ヘッド26をディスク媒体20における書込対象または読出対象のトラック40に対向する位置に移動させる。アーム駆動部32は、一例として、スライダ28が保持されていない長手方向の端部を軸としてアーム30を回転駆動させることにより、記録ヘッド24および再生ヘッド26を移動させてよい。
【0019】
なお、ディスク装置10は、1つのディスク駆動部22により同時に回転駆動される複数のディスク媒体20と、複数のディスク媒体20のそれぞれに対応して設けられた複数のスライダ28とを備えてもよい。
【0020】
以上のようなディスク装置10は、ディスク媒体20を回転させながらスライダ28に設けられた記録ヘッド24または再生ヘッド26をディスク媒体20の半径方向に移動させることにより、記録ヘッド24または再生ヘッド26を書込対象および読出対象のトラック40に対向する位置に移動させる。そして、ディスク装置10は、書込対象または読出対象のトラック40に対向する位置に記録ヘッド24および再生ヘッド26を移動させた状態において、ディスク媒体20に対して垂直磁気記録方式による記録または再生をする。これにより、ディスク装置10によれば、ディスク媒体20が有する複数のトラック40に対して情報を磁気的に記録および再生することができる。
【0021】
図2は、本実施形態に係るディスク媒体20が有するトラック40を示す。図3は、本実施形態に係るディスク媒体20の半径方向の一部分の断面構造の一例を示す。
【0022】
ディスク媒体20は、図2に示すように、主面が円の薄板状(ディスク状)とされる。ディスク媒体20は、情報が記録される同心円状の複数のトラック40を有している。
【0023】
ディスク媒体20は、図3に示すように、基板42と、軟磁性層44と、磁性体層46と、保護層48と、潤滑層50と、遮断部52とを有する。基板42は、ディスク状とされる。基板42は、一例として、ガラスまたはアルミ等により形成されてよい。
【0024】
軟磁性層44は、基板42の上に例えばスパッタリングにより積層される。軟磁性層44は、軟磁性材料または高透磁率材料により形成される。軟磁性層44は、一例として、NiFe等により形成されてよい。軟磁性層44は、記録時において、記録ヘッド24から出力され磁性体層46を通過した磁束を、再度磁性体層46を通過させて記録ヘッド24に戻す磁気回路の一部を形成する。
【0025】
磁性体層46は、軟磁性層44の上に例えばスパッタリングにより積層され、各トラック40が形成される。磁性体層46は、一例として、垂直方向に磁化されやすいように垂直異方性を有してよい。磁性体層46は、一例として、CoCrPt等により形成されてよい。磁性体層46は、垂直磁界が印加されることにより、当該垂直磁界の方向(上向きまたは下向き)に磁化され、垂直磁界の印加が終了した後にも磁化された状態を保持することができる。従って、磁性体層46は、記録ヘッド24から印加された垂直磁界の方向(上向きまたは下向き)に応じた情報を記憶することができ、さらに、記憶している情報に応じた方向の垂直磁界を再生ヘッド26に対して与えることができる。
【0026】
保護層48は、磁性体層46の上に例えばスパッタリングにより積層される。保護層48は、一例として、炭素材料等により形成されてよい。保護層48は、記録ヘッド24および再生ヘッド26とディスク媒体20との接触による衝撃等から軟磁性層44および磁性体層46の破損等を防止する。潤滑層50は、保護層48の上に例えば塗布により積層される。潤滑層50は、一例として、パーフルオロ・ポリエーテル等であってよい。潤滑層50は、記録ヘッド24および再生ヘッド26と当該ディスク媒体20との摩擦を低下する。
【0027】
遮断部52は、各トラック40の磁性体の間を遮断する。遮断部52は、例えば非磁性体等の、透磁率がトラック40の磁性体と比較して低く、磁束を比較的に透過させづらい材料により、同心円状に形成された複数のトラック40のそれぞれの間に形成されてよい。遮断部52は、一例として、SiO等により形成されてよい。遮断部52は、一例として、磁性体層46が積層された後に同心円状に形成された複数のトラック40のそれぞれの間をエッチング等により開口し、開口部分に当該遮断部52を例えばスパッタリングにより積層することにより形成してよい。
【0028】
このような遮断部52は、磁性体層46により形成されたトラック40と隣接するトラック40とを磁気的に遮断する。すなわち、遮断部52は、読出対象のトラック40に記録されている情報を再生ヘッド26により磁気的に読み出している時に、読出対象トラックに隣接する隣接トラックからのクロストークにより所定の周波数以下の低周波ノイズが電圧波形に加わるのを防ぐべく、隣接するトラック40から発生した磁束が再生ヘッド26に入力されるのを低減または遮断する。これにより、遮断部52によれば、再生信号に含まれる隣接するトラック40からのクロストークノイズを低減することができる。
【0029】
なお、本実施形態において、遮断部52は、磁性体層46および軟磁性層44を貫通して設けられ、各トラック40に対応する磁性体層46および軟磁性層44を非磁性体により分離する。また、遮断部52は、一例として、ディスク媒体20の磁性体層46側の表面からトラック幅の少なくとも1/2以上の深さに至る溝に形成された非磁性体であってよい。このような遮断部52によれば、少なくともトラック幅の1/2以上の深さに形成されているので、隣接トラックから再生ヘッド26に印加される漏れ磁界を十分に低減することができる。
【0030】
また、遮断部52は、一例として、トラック40を形成する磁性体の間に、ディスク媒体20の磁性体層46側の表面から、同一符号の連続数(ランレングス)が50以上の周期を有する低周波ノイズが、再生信号の復元時において再生ヘッド26により検出された信号の電圧波形に与える影響を許容範囲内に抑えるべく定められた深さに至る非磁性体を含んでよい。再生ヘッド26により再生された信号のエラーレートは、図11に示したように、隣接トラックのランレングスが50以上となると著しく上がる。従って、このような本例の遮断部52によれば、隣接トラックからのランレングスが50以上の周波数を有する低周波ノイズを抑えることにより、隣接トラックから再生ヘッド26に印加される漏れ磁界を十分に低減することができる。
【0031】
また、遮断部52は、一例として、トラック40の磁性体の間に、ディスク媒体20の磁性体層46側の表面から、再生信号の復元時において再生ヘッド26により検出された信号をサンプリングするサンプリング周波数(一例として、後述するサンプリング部132のサンプリング周波数)の1%以下の周波数を有する低周波ノイズが電圧波形に与える影響を許容範囲内に抑えるべく定められた深さに至る非磁性体を含んでよい。このような本例の遮断部52によれば、サンプリング周波数の1%以下の周波数を有する低周波ノイズ(例えば、隣接トラックからのランレングスが50以上の周波数)を抑えることにより、隣接トラックから再生ヘッド26に印加される漏れ磁界を十分に低減することができる。
【0032】
以上のようにディスク媒体20によれば、潤滑層50側から近接した記録ヘッド24および再生ヘッド26に対して、垂直磁気記録方式により情報を記録および再生させることができる。さらに、ディスク媒体20によれば、情報の再生時において、隣接トラックから再生ヘッド26に漏れる磁界を低減することができ、再生信号に含まれるクロストークノイズを低減することができる。
【0033】
図4は、本実施形態に係る記録ヘッド24および再生ヘッド26の構成の一例を示す。記録ヘッド24は、一例として、スライダ28を形成するスライダ基板58内に一体的に形成されてよい。記録ヘッド24は、一例として、スライダ基板58におけるディスク媒体20と対向する面(ディスク対向面60)側に、当該ディスク対向面60から一部が露出するように形成されてよい。
【0034】
記録ヘッド24は、一例として、記録磁極62と、リターン磁極64と、磁気ヨーク66と、記録コイル68とを有してよい。記録磁極62およびリターン磁極64は、ディスク媒体20の主面に対して略垂直に配置された例えば薄膜状の透磁率の高い磁性体である。記録磁極62およびリターン磁極64は、ディスク媒体20の記録方向(すなわち、トラック40の接線方向)に所定のギャップを介して配置される。記録磁極62およびリターン磁極64のそれぞれは、ディスク対向面60側の端面が当該ディスク対向面60から露出してよい。
【0035】
磁気ヨーク66は、ディスク媒体20の主面に対して略平行に配置された例えば薄膜状の透磁率の高い磁性体である。磁気ヨーク66は、ディスク対向面60からスライダ基板58の内側の所定距離の位置において、記録磁極62とリターン磁極64とを接続する。記録コイル68は、磁気ヨーク66を略中心に巻回される。
【0036】
このような記録ヘッド24は、記録時において、記録コイル68に記録電流が流される。記録コイル68に記録電流が流された場合、記録磁極62、リターン磁極64および磁気ヨーク66と、記録ヘッド24に対向した位置における軟磁性層44とを含んで形成された磁気回路に、図4中に矢印で示すような磁束が通過する。この結果、記録ヘッド24に対向した位置における磁性体層46は、垂直方向の磁束が通過するので、当該磁束の方向に磁化される。このように記録ヘッド24によれば、垂直磁気記録方式によりディスク媒体20に情報を記録することができる。
【0037】
再生ヘッド26は、一例として、スライダ28を形成するスライダ基板58内に一体的に形成されてよい。再生ヘッド26は、一例として、スライダ基板58におけるディスク媒体20と対向する面(ディスク対向面60)側に、当該ディスク対向面60から一部が露出するように形成されてよい。
【0038】
再生ヘッド26は、第1シールド72と、第2シールド74と、磁気抵抗効果素子76とを有する。第1シールド72および第2シールド74は、図4に示すように、ディスク媒体20の主面に対して略垂直に配置された透磁率の高い磁性体である。第1シールド72および第2シールド74は、ディスク媒体20の記録方向(すなわち、トラック40の接線方向)に所定幅のギャップ78を形成する。すなわち、第1シールド72および第2シールド74は、トラック40と略垂直にシールド間のギャップ78が設けられた磁性体である。また、第1シールド72および第2シールド74は、一例として、ディスク対向面60側の端面が当該ディスク対向面60から露出されてよい。このような第1シールド72および第2シールド74によれば、垂直方向以外の磁束がギャップ78内を通過することを防止することができる。
【0039】
図5は、本実施形態に係るディスク装置10の信号処理のブロック構成を示す。ディスク装置10は、記録ヘッド24と、再生ヘッド26と、駆動制御部110と、書込部120と、読出部130とを備える。
【0040】
駆動制御部110は、記録時および再生時において、ディスク媒体20の回転駆動制御、並びに、記録ヘッド24および再生ヘッド26を読出対象のトラック40に対向する位置に移動させるアーム30の移動制御等を行う。書込部120は、記録時において、ディスク媒体20に対して記録すべき書込データを例えば情報処理装置から入力し、入力した書込データに応じた記録信号を生成する。そして、書込部120は、生成した記録信号を記録ヘッド24に供給し、ディスク媒体20に対して書込データを記録する。
【0041】
読出部130は、サンプリング部132と、データ再生部134とを有する。サンプリング部132は、再生時において、再生ヘッド26内の磁気抵抗効果素子76の電気抵抗の変化に応じて変化する電圧波形をサンプリングする。データ再生部134は、サンプリング部132がサンプリングした電圧波形の形状に基づいて、ディスク媒体20の読出対象のトラック40に記録されたデータを再現する。データ再生部134は、一例として、サンプリングした電圧波形における直流応答を含む電圧波形をサンプリングし、当該電圧波形に基づいてデータを再現してよい。
【0042】
本実施形態において、サンプリング部132は、プリアンプ部140と、可変ゲインアンプ部142と、波形等化部144と、AD変換部146とを含む。プリアンプ部140は、再生ヘッド26内の磁気抵抗効果素子76の電気抵抗の変化を検出し、当該電気抵抗の変化を電圧レベルで表した再生信号を出力する。可変ゲインアンプ部142は、プリアンプ部140から出力された再生信号を増幅する。
【0043】
波形等化部144は、可変ゲインアンプ部142から出力された再生信号に対して波形等化をする。波形等化部144は、一例として、垂直磁化記録方式の再生ヘッド26に適したPR(Partial Response)クラスの伝送路特性に応じて再生信号を波形等化する。波形等化部144は、一例として、直流応答を含んだクラスの伝送路特性に応じて再生信号を波形等化してよい。すなわち、波形等化部144は、再生ヘッド26の磁気抵抗効果素子76の抵抗変化に応じた直流応答を含んだ電圧波形を波形等化することにより、ディスク媒体20に対して磁化されている信号波形を再現する。AD変換部146は、波形等化部144により波形等化されたアナログの再生信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてデジタル化し、デジタルの再生信号を出力する。
【0044】
また、本実施形態において、データ再生部134は、FIRフィルタ150と、ビタビ復号部152とを含む。FIRフィルタ150は、サンプリング部132により出力されたデジタルの再生信号を精密に等化する。ビタビ復号部152は、FIRフィルタ150により精密に等化されたデジタルの再生信号をビタビ復号することにより、ディスク媒体20の読出対象のトラック40に記録されていたデータを復元して出力する。
【0045】
以上のようなディスク装置10によれば、隣接トラックからの低周波数のクロストークノイズを低減するので、垂直磁気記録方式により情報が記録されたディスク媒体20から直流応答を含んだ信号波形を再生し、当該情報を復元することができる。
【0046】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係るディスク装置10の構成を示す。
【図2】本発明の実施形態に係るディスク媒体20のトラック40を示す。
【図3】本発明の実施形態に係るディスク媒体20の層構造を示す。
【図4】本発明の実施形態に係る記録ヘッド24および再生ヘッド26の構成を示す。
【図5】本発明の実施形態に係るディスク装置10の信号処理のブロック構成を示す。
【図6】垂直磁気記録方式を採用した磁気ディスク記録再生装置において、同一符号が連続するパターンを隣接トラックに記録した場合における、パターンの同一符号の連続数(ランレングスT)に対する読出対象トラックから再生された直流成分を含めた信号のエラーレートを示す。
【符号の説明】
【0048】
10 ディスク装置
20 ディスク媒体
22 ディスク駆動部
24 記録ヘッド
26 再生ヘッド
28 スライダ
30 アーム
32 アーム駆動部
40 トラック
42 基板
44 軟磁性層
46 磁性体層
48 保護層
50 潤滑層
52 遮断部
58 スライダ基板
60 ディスク対向面
62 記録磁極
64 リターン磁極
66 磁気ヨーク
68 記録コイル
72 第1シールド
74 第2シールド
76 磁気抵抗効果素子
78 ギャップ
110 駆動制御部
120 書込部
130 読出部
132 サンプリング部
134 データ再生部
140 プリアンプ部
142 可変ゲインアンプ部
144 波形等化部
146 AD変換部
150 FIRフィルタ
152 ビタビ復号部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心円状に配置された複数のトラックを有するディスク媒体と、
垂直磁気記録方式により書込対象のトラックに情報を記録する記録ヘッドと、
読出対象のトラックに記録された情報を再生する再生ヘッドと、
前記再生ヘッドに設けられた磁気抵抗効果素子の電気抵抗の変化に応じて変化する電圧波形をサンプリングするサンプリング部と、
サンプリングした電圧波形の形状に基づいて、読出対象トラックに記録されたデータを再現するデータ再生部と
を備え、
前記ディスク媒体は、各トラックの磁性体の間を遮断する遮断部を有する
ディスク装置。
【請求項2】
前記ディスク媒体は、
ディスク状の基板と、
前記基板の上に積層された軟磁性層と、
前記軟磁性層の上に積層され、各トラックが形成された磁性体層と
を更に有し、
前記遮断部は、前記磁性体層および前記軟磁性層を貫通して設けられ、各トラックに対応する前記磁性体層および前記軟磁性層を非磁性体により分離する
請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記ディスク媒体は、
ディスク状の基板と、
前記基板の上に積層された軟磁性層と、
前記軟磁性層の上に積層され、各トラックが形成された磁性体層と
を更に有し、
前記遮断部は、前記ディスク媒体の前記磁性体層側の表面からトラック幅の少なくとも1/2以上の深さに至る溝に形成された非磁性体である
請求項1に記載のディスク装置。
【請求項4】
前記遮断部は、各トラックの磁性体の間に、前記ディスク媒体の前記磁性体層側の表面から、前記サンプリング部のサンプリング周波数の1%以下の周波数を有する前記低周波ノイズが前記電圧波形に与える影響を許容範囲内に抑えるべく定められた深さに至る非磁性体を含む請求項1に記載のディスク装置。
【請求項5】
垂直磁気記録方式により書込対象のトラックに情報を記録する記録ヘッドと、読出対象のトラックに記録された情報を再生する再生ヘッドと、前記再生ヘッドに設けられた磁気抵抗効果素子の電気抵抗の変化に応じて変化する電圧波形をサンプリングするサンプリング部と、サンプリングした電圧波形の形状に基づいて、読出対象トラックに記録されたデータを再現するデータ再生部とを有するディスク装置に備えられ、同心円状に配置された複数のトラックを有するディスク媒体であって、
各トラックの磁性体の間を遮断する遮断部を有する
ディスク媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−21400(P2008−21400A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149135(P2007−149135)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(502188642)マーベル ワールド トレード リミテッド (302)
【Fターム(参考)】