説明

ディスク装置のローディング機構

【課題】トレイの摺動性を悪化させず、トレイの駆動負荷を増加させずに、搬出位置でトレイのガタを吸収する。
【解決手段】トレイ(40)の一側に搬入搬出方向に沿って延びる軸部材(41)を設け、軸部材(40)を装置本体(20)に設けた軸受け(21)により摺動自在に支持し、トレイ(40)を搬入搬出自在に保持する。トレイ(40)の他側縁後方に側方へ張り出したカム(43)を設ける。装置本体(20)の前方に、トレイ(40)の搬出位置で周面が張り出しカム(43)と対向するローラ(23)を、トレイ(40)の軸部材(41)と張り出しカム(43)との間隔に比べて、軸部材(41)とローラ(23)の周面との間隔がトレイ(40)に弾性変形を及ぼす程度に狭くなるように配置する。ローラ(23)の周面が張り出しカム(43)を押圧することにより、搬出位置でトレイ(40)のガタを吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等のディスクの再生または記録再生を行うディスク装置におけるトレイのローディング機構に関し、特に品位を高めるために、トレイの搬出位置でトレイのガタを吸収する手段を備えたディスク装置のローディング機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のディスク装置には、トレイの搬出位置でトレイのガタを吸収する手段として、例えば、単にトレイの搬出位置でシャーシのガイド部の幅とトレイの幅とのクリアランスを小さくすることにより、トレイのガタを防止するようにしたものがある。
【0003】
また、トレイのガイドをレールとレール溝により行い、ローラをバネによりトレイに付勢するように構成して、トレイのガタを吸収するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平5−15151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来のものには、次のような課題があった。
【0005】
すなわち、前者のように、単にシャーシのガイド部の幅とトレイの幅とのクリアランスを小さくすることにより、トレイのガタを防止するようにしたものの場合は、クリアランスを小さくしすぎると、トレイの摺動性が悪くなり、トレイの駆動力が増加したり、トレイを搬入するために手で押すときの挿入力が増加する虞れがあった。
【0006】
逆に、クリアランスを大きくすると、トレイの搬出位置でガタが大きくなり、品位が悪くなるという問題があった。
【0007】
また、後者のように、トレイのガイドをレールとレール溝により行い、ローラをバネによりトレイに付勢するように構成して、トレイのガタを吸収するようにしたものの場合は、レールとレール溝との間の摩擦により摺動性が悪く、駆動力が増加する虞れがあった。
【0008】
それに加えて、ローラはバネにより付勢されており、部品点数が増加しコストが増加するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、トレイの摺動性を悪化させず、トレイの駆動負荷を増加させずに、搬出位置でトレイのガタを吸収することのできるディスク装置のローディング機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係るディスク装置のローディング機構は、ディスクが載置されるトレイを装置本体に搬入搬出させるディスク装置のローディング機構において、前記トレイの左右いずれか一側に搬入搬出方向に沿って延びる軸部材を設けて、当該軸部材を装置本体に設けた軸受けにより摺動自在に支持する一方、トレイの他側を装置本体に設けたガイド部により高さを規制してガイドすることで、トレイを搬入搬出自在に保持する構成とし、トレイの前記他側の後方に側方へ張り出した張り出しカムを設ける一方、装置本体の前方に、トレイの搬出位置で周面が前記張り出しカムと対向する少なくとも1つのローラ部材を、トレイの前記軸部材と前記張り出しカムとの間隔よりも前記軸部材と当該ローラ部材の周面との間隔が狭くなるように配置し、前記ローラ部材の周面が前記張り出しカムを押圧して前記トレイを弾性変形させることにより、搬出位置でトレイのガタを吸収することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項2に係るディスク装置のローディング機構は、請求項1記載のディスク装置のローディング機構において、前記ローラ部材は、トレイの搬入搬出方向に対して前記軸受けの前後両端間に相当する領域内に配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のように、ディスクが載置されるトレイを装置本体に搬入搬出させるディスク装置のローディング機構において、前記トレイの左右いずれか一側に搬入搬出方向に沿って延びる軸部材を設けて、当該軸部材を装置本体に設けた軸受けにより摺動自在に支持する一方、トレイの他側を装置本体に設けたガイド部により高さを規制してガイドすることで、トレイを搬入搬出自在に保持する構成とし、トレイの前記他側の後方に側方へ張り出した張り出しカムを設ける一方、装置本体の前方に、トレイの搬出位置で周面が前記張り出しカムと対向する少なくとも1つのローラ部材を、トレイの前記軸部材と前記張り出しカムとの間隔よりも前記軸部材と当該ローラ部材の周面との間隔が狭くなるように配置し、前記ローラ部材の周面が前記張り出しカムを押圧して前記トレイを弾性変形させることにより、搬出位置でトレイのガタを吸収するように構成したので、トレイの摺動性を悪化させず、トレイの駆動負荷を増加させずに、搬出位置でトレイのガタを吸収することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図8を参照して説明する。
図1は、本発明によるローディング機構を備えたディスク装置の一実施形態について説明のためトレイを搬出位置からさらに搬出方向へ取り外して示す斜視図、図2はトレイが搬入位置にある状態を示す斜視図である。
【0014】
このディスク装置10は、装置本体20と、装置本体20に対して搬入・搬出されるトレイ40とを備えている。
【0015】
そして、トレイ40が搬出位置にあるとき、図示しないディスク(光ディスク)を内包したカートリッジまたは複数の単体のディスク(光ディスク)をトレイ40に載置することができるものである。
【0016】
また、トレイ40が搬入位置にあるとき、カートリッジに内包されたディスク(光ディスク)または単体のディスク(光ディスク)が、ディスク装置10の所定位置に位置決めされ、スピンドルモータ51に装着されるものである。
【0017】
スピンドルモータ51は、装置本体20に保持されたトラバースベース50に、ピックアップ52とともに取り付けられている。
【0018】
図3に示すように、トレイ40の装置本体20に向かって右側裏面には、搬入搬出方向に沿って延びるシャフト(軸部材)41を設けてある。このシャフト41が、図1、図4に示すように装置本体20の右側手前に設けた軸受け21により、摺動自在に支持されている。
【0019】
また、図1、図2に示すように、トレイ40の左側縁部42が、装置本体20の左側部に設けたガイド部22により高さ方向を規制してガイドされている。すなわち、複数のガイド突条22aが左側縁部42を下から支え、また、複数のガイド爪22bが左側縁部42の上方位置を規制することで、トレイ40の左側縁部42は、ガイド部22に沿って往復自在にガイドされている。
【0020】
これにより、トレイ40は、装置本体20に、水平を保った状態で搬入搬出自在に保持されている。
【0021】
図3に示すように、トレイ40の右側裏面には、シャフト41と平行に延びるラック44が形成されている。このラック44は、図4に示すように、装置本体20の手前に設けた駆動手段30のトレイ駆動ギヤ33と噛み合うものである。
【0022】
駆動手段30は、図4に示すように、ローディングモータ31、減速機構およびトレイ駆動ギヤ33を備えている。そして、トレイ駆動ギヤ33が、ローディングモータ31の回転を減速機構32で減速して駆動されることで、トレイ40はトレイ駆動ギヤ33により、搬出位置と搬入位置との間を搬入、搬出駆動される。
【0023】
図5、図6に示すように、トレイ40の左側縁部42の後方には、側方へ張り出した張り出しカム43が形成されている。
【0024】
また、装置本体20の左前方には、トレイ40の搬出位置で周面が張り出しカム43と対向する2つのローラ23,23が、垂直の軸のまわりに回転自在に取り付けられている。
【0025】
このローラ23,23は、トレイ40のシャフト41と張り出しカム43との間隔に比べて、シャフト41とローラ23,23の周面との間隔が、トレイ40に弾性変形を及ぼす程度に狭くなるように配置してある。
【0026】
そのため、トレイ40が装置本体20内の搬入位置から搬出方向に駆動されて搬出位置に近づくと、ローラ23,23の周面が張り出しカム43を押圧してトレイ40を弾性変形させることにより、搬出位置でトレイ40のガタを吸収することができる。
【0027】
図7に示すように、ローラ23,23は、トレイ40の搬入搬出方向に対して軸受け21の前後両端間に相当する領域内に配置してある。そのため、ローラ23,23と軸受け21とで発生する対向する力F1、F2は、搬入搬出方向に対する位置が対応しているため、余計なモーメント力が発生しない。
【0028】
これに対し、図8に示すように、ローラ23,23を、トレイ40の搬入搬出方向に対して軸受け21の前後両端間に相当する領域内に配置した場合は、ローラ23,23と軸受け21とで発生する対向する力F1、F2は、搬入搬出方向の位置が対応していないため、図8に示すようなモーメント力Mがトレイ40に発生し、トレイ40の摺動性が悪くなる。
【0029】
なお、ローラ23,23は2つに限らず、1つ以上であればいくつであっても良い。
【0030】
上記のように、このディスク装置10は、トレイ40の搬出位置でローラ23,23によりトレイ40の張り出しカム43を押圧することで、搬出位置でのトレイ40のガタを吸収することが可能であり、ローディング機構の品位を高めることができる。
【0031】
特に、このディスク装置10では、シャフト41により摺動支持することと、ローラ23,23により押圧することで、トレイ40の駆動負荷が増加することなく、トレイ40のガタを吸収することが可能である。
【0032】
また、ローラ23,23を押圧する力を、樹脂で成形されたトレイ40の弾性変形により発生させることにより、特別の付勢手段を用いる必要がないから、部品点数を削減でき、コストを削減することが可能である。
【0033】
また、ローラ23,23のトレイ搬入搬出方向の位置を、トレイ40に設けたシャフト41の軸受け21の前後両端間に相当する領域内に設けたことにより、ローラ23,23によりトレイ40を押圧した場合に、トレイ40に余計なモーメント力が発生せず、トレイ40の摺動性を良好に保つことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明によるローディング機構を備えたディスク装置の一実施形態について説明のためトレイを搬出位置からさらに搬出方向へ取り外して示す斜視図である。
【図2】トレイが搬入位置にある状態を示す斜視図である。
【図3】トレイを底面側から見た斜視図である。
【図4】図1の要部を拡大して示す斜視図である。
【図5】図4の部分を別の角度から見た斜視図である。
【図6】トレイが搬出位置にあるときの張り出しカムとローラとの関係を示す平面図である。
【図7】トレイが搬出位置にあるときの軸受けとローラとの関係を示す底面図である。
【図8】ローラを図6に示す位置からずらして配置した場合にモーメントが発生する様子を示す参考図である。
【符号の説明】
【0035】
10 ディスク装置
20 装置本体
21 軸受け
22 ガイド部
22a ガイド突条
22b ガイド爪
23 ローラ
30 駆動手段
31 ローディングモータ
32 減速機構
33 トレイ駆動ギヤ
40 トレイ
41 シャフト(軸部材)
42 左側縁部
43 張り出しカム
44 ラック
50 トラバースベース
51 スピンドルモータ
52 ピックアップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクが載置されるトレイを装置本体に搬入搬出させるディスク装置のローディング機構において、
前記トレイの左右いずれか一側に搬入搬出方向に沿って延びる軸部材を設けて、当該軸部材を装置本体に設けた軸受けにより摺動自在に支持する一方、トレイの他側を装置本体に設けたガイド部により高さを規制してガイドすることで、トレイを搬入搬出自在に保持する構成とし、
トレイの前記他側の後方に側方へ張り出した張り出しカムを設ける一方、装置本体の前方に、トレイの搬出位置で周面が前記張り出しカムと対向する少なくとも1つのローラ部材を、トレイの前記軸部材と前記張り出しカムとの間隔よりも前記軸部材と当該ローラ部材の周面との間隔が狭くなるように配置し、
前記ローラ部材の周面が前記張り出しカムを押圧して前記トレイを弾性変形させることにより、搬出位置でトレイのガタを吸収することを特徴とするディスク装置のローディング機構。
【請求項2】
前記ローラ部材は、トレイの搬入搬出方向に対して前記軸受けの前後両端間に相当する領域内に配置したことを特徴とする請求項1記載のディスク装置のローディング機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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