説明

ディスク駆動装置とその製造方法

【課題】簡便にディスク駆動装置の挿入孔付近の封止を確実にすることができるとともに外部との絶縁性および外気との遮蔽性に優れたディスク駆動装置を提供する。
【解決手段】フレキシブル回路基板上の電極9’と、筐体に空けられた挿入孔3を介してスピンドルモーターから導出させたリード線6とが半田7により接続されているディスク駆動装置において、フレキシブル回路基板上の電極、挿入孔、導出させたリード線、及び半田による接続部を含む被封止箇所が熱硬化性樹脂シートの硬化物11により封止される。熱硬化性樹脂シートは室温で柔軟なシート状であり、40℃以上の加熱により溶融し、100℃における溶融粘度が15Pa・s以下であり、100℃におけるゲルタイムが10分以上90分以内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハードディスクのような記録ディスクをスピンドルモーターにより回転駆動させるディスク駆動装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク等の記録ディスクを回転させ、この記録ディスクに対して情報の書き込みおよび/または読み出しをするディスク駆動装置においては記録ディスク駆動用のスピンドルモーターに対する給電および制御等のためにディスク駆動装置上には制御基板が設置される。
この場合、スピンドルモーターと制御基板との電気的接続はフレキシブル回路基板やコネクタを介して行われる。すなわち、筐体に空けられた挿入孔を介しスピンドルモーターから導出されたリード線が筐体に設置されたフレキシブル回路基板あるいはコネクタに半田で接続され、このフレキシブル回路基板上のランドあるいはコネクタを介して制御基板と接続されることにより、制御基板上のモーター制御回路はスピンドルモーターの巻線に接続される。
しかし、この構造では筐体に空けられた挿入孔からディスク駆動装置内部に腐食性のガスやチリなどが侵入し、筐体内部に格納された記録ディスクや情報を読み書きするヘッド部分に対し悪影響を及ぼすことが知られている。
これを防止するため挿入孔を封止し、ディスク駆動装置内部と外気を隔絶させている。この封止には具体的には半田や熱可塑性樹脂、紫外線硬化型の樹脂、液状の熱硬化性樹脂などが用いられている。
上述した従来技術における挿入孔の封止方法には信頼性や生産性においてそれぞれに問題があった。具体的には半田で封止した場合(特許文献1、2等)、使用時の振動や衝撃により半田割れが発生し、外気がディスク駆動装置内部に流入することがある。熱可塑性樹脂により封止した場合、使用時の発熱や雰囲気温度の上昇により樹脂が再溶融し封止が不完全になるばかりでなく、ディスク駆動装置内部に侵入し故障の原因となる。紫外線硬化型の樹脂で封止する場合(特許文献3等)、紫外線照射装置の維持管理にコストがかかるほか、挿入孔付近への樹脂の定量的な供給が難しい上、深部への紫外線到達を阻害するような充填材が配合できないため、熱膨張係数が高く、使用時の温度変化により樹脂硬化物とリード線界面や樹脂硬化物と筐体の界面において剥離が発生し外気が流入し故障の原因になる。液状の熱硬化性樹脂で封止する場合(特許文献4等)、樹脂の定量的な供給が難しい上、硬化時の加熱により樹脂が低粘度化、高流動化することにより周囲へ流れ出し、その後の組立工程において他部品と干渉することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−67775(特許第4141598)号公報
【特許文献2】特開2006−185553(特許第4343100)号公報
【特許文献3】特開2006−187145(特許第4656491)号公報
【特許文献4】特開2010−9644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明のディスク駆動装置は上記した従来技術が有する問題点について留意されたものであり、その目的はリード線導出部の挿入孔を確実に封止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の目的を達成するために、本発明のディスク駆動装置では挿入孔、リード線、フレキシブル回路基板、半田による接続部を含む被封止箇所を熱硬化性樹脂シートにより一括で封止することにより前記課題を達成できることがわかり、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
(1)フレキシブル回路基板上の電極と、筐体に空けられた挿入孔を介してスピンドルモーターから導出させたリード線とが半田により接続されているディスク駆動装置において、前記フレキシブル回路基板上の電極、挿入孔、導出させたリード線、及び半田による接続部を含む被封止箇所が熱硬化性樹脂シートの硬化物により封止されてなることを特徴とするディスク駆動装置、
(2)熱硬化性樹脂シートの硬化物の筐体上の丘陵部分から傾斜部分または低位部分へのはみ出しが1mm以内である上記(1)に記載のディスク駆動装置、
(3)前記熱硬化性樹脂シートが熱硬化性樹脂と繊維基材からなるシートである上記(1)または(2)に記載のディスク駆動装置、
(4)前記熱硬化性樹脂が室温で柔軟な熱硬化性樹脂である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のディスク駆動装置、
(5)前記室温で柔軟な熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である上記(4)に記載のディスク駆動装置、
(6)室温で柔軟なシート状であり、40℃以上の加熱により溶融し、100℃における溶融粘度が15Pa・s以下であり、100℃におけるゲルタイムが10分以上90分以内である熱硬化性樹脂シートにより被封止箇所を封止することを特徴とするディスク駆動装置の製造方法、
(7)ディスク駆動装置に取り付けられたフレキシブル回路基板上の電極、筐体に空けられた挿入孔、挿入孔から導出させたリード線、電極とリード線を導通させた半田による接続部を含む前記被封止箇所を前記熱硬化性樹脂シートで被覆し、次いで70℃以上で加熱硬化させて封止する上記(6)に記載のディスク駆動装置の製造方法および
(8)前記熱硬化性樹脂シートに離型フィルムを積層した積層体を被封止箇所に押し当て、次いで離型フィルムを剥離して前記熱硬化性樹脂シートを前記被封止箇所に転写させる上記(6)または(7)に記載のディスク駆動装置の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のディスク駆動装置とその製造方法によれば、ディスク駆動装置内へ外気や埃の侵入を阻止することができ、かつ、絶縁性に優れ、従来法に比べ、被封止箇所以外への樹脂のはみ出しが少なく、外観が良好なディスク駆動装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ディスク駆動装置の半田による接続部周辺の断面を示す図である。
【図2】フレキシブル回路基板上の電極、挿入孔、導出させたリード線及び半田接続部を含む被封止箇所が熱硬化性樹脂シートの硬化物により封止されてなるディスク駆動装置の断面図である。
【図3】被封止箇所が液状熱硬化性樹脂の硬化物により封止されてなるディスク駆動装置において硬化物の端部が丘陵部分から傾斜部分にはみ出した状態を示す断面図である。
【図4】被封止箇所において液状熱硬化性樹脂の硬化物が半田による接続部の封止が不完全なため、接続部が露出した状態を示す断面図である。
【図5】ディスク駆動装置の筐体の挿入孔、リード線および電極を半田で封止した場合の断面図である。
【図6】ディスク駆動装置の筐体の挿入孔、リード線および電極を半田で封止した場合のリード線の周囲に微細なクラックが発生した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を説明する前に比較のため、最初に従来の技術を簡単に説明しておく。
図3は、液状の熱硬化性樹脂を用いた場合に得られる、硬化物の端部がはみ出した従来のディスク駆動装置の被封止箇所を示す断面図である。
図4は被封止箇所において硬化物が半田による接続部を被覆するのが不完全なため、接続部が露出したディスク駆動装置を示す断面図である。
図5および図6は、半田7によりリード線と電極とを導通させるとともにフレキシブル回路基板側から挿入孔を含めて半田7により封止しただけの従来方式のディスク駆動装置を示す断面図である。
半田7を用いて挿入孔を封止しただけの場合、図6に示すように動作中や運搬時の衝撃により微細なクラックが発生し、外気や埃が流入するため動作不良が発生する。また、半田が露出しているため筐体や外部の部品と接触・短絡した場合、動作不良が発生する。
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1はハードディスク装置1における記録ディスク回転用のスピンドルモーター4から筐体2に形成された挿入孔3を介して導出されたリード線6と、該筐体内部とは反対側の主面(外面)に貼付されたフレキシブル回路基板8の電極9′(半田7の下部の部分)の半田7による接続部を含む被封止箇所を説明するための断面図である。
図1に示すように、ハードディスク装置1においては、記録ディスク回転用のスピンドルモーター4の筐体2に挿入孔3が形成され、該筐体2に粘着剤層(不図示)を介して、フレキシブル回路基板8が貼付されている。そして、装置内部では、スピンドルモーター4から引き出されたリード線6が、前記筐体2に形成された挿入孔3に挿入される。挿入孔3を介して筐体2の内部から外部へと導出させたリード線6は、該筐体内部とは反対側の主面(外面)に粘着剤層を介して貼付されたフレキシブル回路基板8の電極9′に半田7により接続される。
図2に示すように、ハードディスク装置1においては、フレキシブル回路基板上の電極9′、挿入孔3、導出させたリード線6及び半田7による接続部を含む被封止箇所が熱硬化性樹脂シートの硬化物11で被覆されている。
【0010】
前記熱硬化性樹脂シートは、例えば、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、シリカからなる熱硬化性樹脂組成物をガラス布(たとえば、厚さ50μm)のような繊維基材に含浸させることにより、厚さ200μm程度のシート状組成物として作製される。エポキシ樹脂等からなる樹脂組成物の軟化点は50℃程度であることが好ましく、100℃における溶融粘度は15Pa・s以下、100℃におけるゲルタイムは10分以上90分以内であることが好ましい。
なお、本発明で規定する溶融粘度はレオメーター(Rhenemetric Scientific社製)にて測定した。すなわち、樹脂シート片(25mmφ)について、25mmφのパラレルプレートを使用して100℃の定温下、歪50%(最大)、角速度50ラジアン/秒という条件で3分後の粘度を求めた溶融粘度である。
また、ゲルタイムというのは、JIS C2105に記載の方法に基づいて測定したものである。
上記のような条件を適用すれば、ディスク駆動装置の半田による接続部を含む被封止箇所に熱硬化性樹脂シートの硬化物からなる保護層が形成される。保護層が形成された後の丘陵部分から傾斜部分または低位部分へのはみ出しは1mm以内であることが好ましく、0.5mm以内であることがさらに好ましい。1mm以下とすることにより、機器への組み込み時に他部品と干渉し、組み込みが困難になるのを防止するという観点から好ましい。ここでいう丘陵部分とは、フレキシブル回路基板8を筐体2に沿って折り曲げて粘着させたとき、図1のように段差をもって高くなった部分のことをいう。傾斜部分および低位部分とは、各図における丘陵部分から右側に伸びた斜面および水平部分のことをいう。
ここで、熱硬化性樹脂シートの硬化物の厚みは5μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがさらに好ましい。熱硬化性樹脂シートの硬化物の厚みの上限は300μm程度である。300μm以下とすることにより、機器への組み込み時に他部品と干渉し、組み込みが困難になるのを防止するという観点から好ましく、かつ、材料を必要以上に使用することを防ぐことができるとともに軽量化を図り、嵩張るのを防止することができる。5μm以上とすることにより、埃や外気の遮断効果を十分に発揮させることができる。
【0011】
本発明において用いる熱硬化性樹脂シートにおいては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂系等およびそれら用の硬化剤からなる熱硬化性樹脂組成物を用いることができる。
熱硬化性樹脂シートは所定の長さおよび幅に切断した熱硬化性樹脂のみからなるシートであっても、又はそれに必要に応じて無機フィラーを混合したシート、さらに、前記熱硬化性樹脂又はそれに必要に応じて無機フィラーを混合した組成物と繊維基材よりなるシート、具体的には、同組成物を溶融状態で繊維基材よりなるシートに含浸させたものであっても良い。また、熱硬化性樹脂のみからなるシート又はそれに必要に応じて無機フィラーを混合したシートを繊維基材にロールなどで押圧して貼り合わせて作製したものであってもよい。
熱硬化性樹脂としては、ビフェニルノボラック系などの固形エポキシ樹脂とビスフェノール型液状エポキシ樹脂などの併用が好ましく、特に、前者は日本化薬社製のビフェニル骨格含有多官能型エポキシ樹脂であるNC−3000、後者は三菱化学社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER828などが好ましい。エポキシ樹脂用硬化剤としては三菱化学社製のジシアンジアミド化合物であるDICY−7やサンアプロ社製の芳香族ジメチルウレア化合物であるU−CAT3512Tなどが好ましい。
無機フィラーとしては、シリカ粉末、チタン白、切断されたガラス繊維等が挙げられる。
繊維基材としては、ポリアミド繊維のような合成繊維、ガラス繊維、カーボン繊維からなる織布や不織布が挙げられ、市販のものを使用することができる。市販の繊維基材としては、日本バイリーン社製のガラス繊維不織布であるEPM−4015(厚さ120μm)や有沢製作所社製のガラス繊維不織布であるガラスクロスA1080(厚さ50μm)などが好ましい。繊維基材の厚さとしては50〜200μm、好ましくは、50〜150μm程度である。繊維基材の厚さを200μm以下とすることにより、熱硬化性樹脂シートの硬化物の厚みを300μm以下とすることができる。繊維基材の厚さを50μm以上とすることにより、熱硬化性樹脂シートが柔軟になり、挿入孔、リード線、フレキシブル回路基板、半田による接続部を含む被封止箇所を確実に封止することができる。
【0012】
本発明はまた、ディスク駆動装置の製造方法を提供する。
本発明の製造方法は、室温で柔軟なシート状であり、40℃以上の加熱により溶融し、100℃における溶融粘度が15Pa・s以下であり、100℃におけるゲルタイムが10分以上90分以内である熱硬化性樹脂シートにより被封止箇所を封止することを特徴としている。
より具体的には、ディスク駆動装置に取り付けられたフレキシブル回路基板上の電極、筐体に空けられた挿入孔、挿入孔から導出させたリード線、電極とリード線を導通させた半田による接続部を含む前記被封止箇所を前記熱硬化性樹脂シートで被覆し、次いで70℃以上で加熱硬化させて封止する。
上記のように、熱硬化性樹脂シートは室温で柔軟なシート状であることが好ましく、30℃以上、具体的には30〜40℃(軟化した状態であるが、タックがある程度)、5〜10秒加熱することにより溶融して被封止部分と密着させ、70℃以上、より具体的には70℃〜150℃で10〜240分、好ましくは100℃〜130℃で60〜120分の加熱操作によって封止が完了するのが好ましい。
前記熱硬化性樹脂シートは室温で柔軟なシート状でなければ取扱い性の点において不適であり、熱硬化性樹脂が40℃未満の温度で溶融する場合、樹脂シートの取扱い性が悪くなる。
また、硬化温度が70℃未満であると、樹脂シートが十分に溶融せず流動性が不足するため、フレキシブル回路基板8上の電極9′、挿入孔3、導出させたリード線6及び半田7による接続部の細部まで樹脂が行き渡らず、空隙等が発生する観点から好ましくない。
本発明の製造方法において、封止するために用いる熱硬化性樹脂シートにおける熱硬化性樹脂は100℃における溶融粘度が15Pa・s以下、好ましくは10Pa・s程度であり、100℃におけるゲルタイムが10分以上90分以内である。
溶融粘度を15Pa・s以下とすることにより、流動性が不足するため半田7による接続部を十分に封止することが出来なくなることを防止する。
前記ゲルタイムが10分以上になるように調整することにより硬化物にボイドが発生しやすくなるのを防止し、90分以下になるように調整することにより硬化物11の形状の保持性が悪くなるのを防止する。
加熱硬化温度が前記範囲内であると硬化反応が緩慢に進行し、フレキシブル回路基板上の電極、挿入孔、導出させたリード線及び半田による接続部を含む被封止箇所を被覆した熱硬化性樹脂シートの表面が均一になる点から好ましい。
また、本発明の製造方法において使用する熱硬化性樹脂シートは予めポリエチレンテレフタレートフィルムのような樹脂フィルムに離型剤をコーティングした離型フィルムを積層した積層体とし、それを被封止箇所に押し当て、次いで離型フィルムを剥離して被封止箇所に熱硬化性樹脂シートを転写させることが好ましい。
該離型フィルムなしで熱硬化性樹脂シート単体を直接触れて作業をすると硬化していない熱硬化性樹脂シートを汚染するという観点から好ましくない。
さらに、事前に任意の形状に型抜きした熱硬化性樹脂シートを用いることにより樹脂を定量的に供給できるので好ましい。
【実施例】
【0013】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが本発明はこれらの実施例や比較例によって限定されるものではない。
【0014】
〔実施例1〕
熱硬化性樹脂として、日本化薬社製の固形エポキシ樹脂であるNC−3000(ビフェニル骨格含有多官能型エポキシ樹脂、エポキシ当量285g/当量)を85質量部、三菱化学社製の液状エポキシ樹脂であるjER828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量184〜194g/当量)を15質量部、エポキシ樹脂用硬化剤として三菱化学社製のジシアンジアミドであるDICY-7を4質量部、サンアプロ社製の芳香族ジメチルウレア化合物であるU−CAT3512Tを4質量部、電気化学工業社製の球状シリカ粉末235質量部を用いた。これらを均一になるようにニーダーに仕込み、70℃で1時間混合してエポキシ樹脂組成物を得た。次いで、同樹脂組成物を30℃に冷却後、成形機により70℃、1.0MPaの条件でプレス成形して厚さ
0.5mmの樹脂シートを作製した。このエポキシ樹脂組成物の軟化点は50℃、100℃における溶融粘度は10Pa・s、100℃におけるゲルタイムは40分であった。
繊維基材として、有沢製作所社製のガラス繊維不織布であるガラスクロスA1080(厚さ50μm、300mm×300mm)を用いた。ガラス繊維不織布100質量部に対して前記エポキシ樹脂組成物が250質量部になるように70℃で溶融して含浸させ、ロールで押圧して厚さ200μmの熱硬化性樹脂シートを得た。
得られた熱硬化性樹脂シートに、表面を剥離剤処理したニッパ社製のポリエチレンテレフタレートからなる離形フィルムの剥離剤処理を貼付して積層体を作製した。この積層体を25mm×15mmにカットした。カットした積層体をディスク駆動装置のフレキシブル回路基板上の電極、挿入孔、導出させたリード線、及び半田による接続部を含む被封止箇所に押し当て、次いで離形フィルムを剥離して積層体を被封止箇所に転写させた。
次いで、被封止箇所を100℃で120分間加熱することにより、熱硬化性樹脂シートの硬化物により封止されたディスク駆動装置を作製した。被封止箇所は半田による接続部が完全に封止され、熱硬化性樹脂シートの硬化物の筐体上の丘陵部分から低位部分へのはみ出しは1mm以内であった。
【0015】
〔比較例1〕
熱硬化性樹脂として、味の素ファインテクノ社製の室温で液状のエポキシ樹脂であるAE−770を使用した。
AE−770を半田による接続部およびその周辺に硬化後の厚さが約200μmになるように塗布し、100℃で90分加熱することによりディスク駆動装置の半田による接続部およびその周辺に保護層を形成させた。塗布時、樹脂は丘陵部分にとどまっていたが、加熱操作により低粘度化し、傾斜部分および低位部分へ最大5mmはみ出すと共に、半田による接続部の一部が露出した(図3および4参照)。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明のディスク駆動装置はハードディスクのような記録ディスクをスピンドルモーターにより回転駆動させる各種ディスク駆動装置の分野で好ましく用いることができる。
【符号の説明】
【0017】
1:ディスク駆動装置
2:筐体
3:挿入孔
4:スピンドルモーター
5:磁気ディスク
6:リード線
7:半田
8:フレキシブル回路基板(丘陵部分)
9:電極
9′:電極
11:熱硬化性樹脂シートの硬化物
12:液状熱硬化性樹脂の硬化物(硬化物のはみ出し発生)
12′:液状熱硬化性樹脂の硬化物(半田が露出)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル回路基板上の電極と、筐体に空けられた挿入孔を介してスピンドルモーターから導出させたリード線とが半田により接続されているディスク駆動装置において、前記フレキシブル回路基板上の電極、挿入孔、導出させたリード線、及び半田による接続部を含む被封止箇所が熱硬化性樹脂シートの硬化物により封止されてなることを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項2】
熱硬化性樹脂シートの硬化物の筐体上の丘陵部分から傾斜部分または低位部分へのはみ出しが1mm以内である請求項1記載のディスク駆動装置。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂シートが熱硬化性樹脂と繊維基材からなるシートである請求項1または2に記載のディスク駆動装置。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂が室温で柔軟な熱硬化性樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載のディスク駆動装置。
【請求項5】
前記室温で柔軟な熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である請求項4に記載のディスク駆動装置。
【請求項6】
室温で柔軟なシート状であり、40℃以上の加熱により溶融し、100℃における溶融粘度が15Pa・s以下であり、100℃におけるゲルタイムが10分以上90分以内である熱硬化性樹脂シートにより被封止箇所を封止することを特徴とするディスク駆動装置の製造方法。
【請求項7】
ディスク駆動装置に取り付けられたフレキシブル回路基板上の電極、筐体に空けられた挿入孔、挿入孔から導出させたリード線、電極とリード線を導通させた半田による接続部を含む前記被封止箇所を前記熱硬化性樹脂シートで被覆し、次いで70℃以上で加熱硬化させて封止する請求項6に記載のディスク駆動装置の製造方法。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂シートに離型フィルムを積層した積層体を被封止箇所に押し当て、次いで離型フィルムを剥離して前記熱硬化性樹脂シートを前記被封止箇所に転写させる請求項6または7に記載のディスク駆動装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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