説明

ディスク駆動装置及びその制御方法

【課題】 光ピックアップのフィードフォワード制御時のスレッド駆動電圧の補正方法を工夫して、安定なシーク動作を実現できるようにする。
【解決手段】 アクチュエータ8を有した光ピックアップ6をスレッド駆動電圧Vsdに基づいてディスク状記録媒体100の半径方向に移動するスレッド駆動機構10と、このスレッド駆動機構10によって移動された光ピックアップ6の停止位置におけるアクチュエータ8のトラック方向視野振り量を検出するサンプリング回路41〜44と、このサンプリング回路41〜44からの検出結果に基づいて次回の光ピックアップ6の移動時のスレッド駆動電圧Vsdの設定値を補正する補正手段20と、この補正手段20によって補正された設定値に基づくスレッド駆動電圧Vsdを発生して移動手段に供給するドライバIC16とを備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップのシーク動作系をフィードフォワード制御してディスクの半径方向のトラック上にその対物レンズを停止させ、その後、そのアクチュエータを動作させるディスクドライブ装置に適用して好適なディスク駆動装置及びその制御方法に関する。詳しくは、ディスクの半径方向のトラック上に光ピックアップを移動させて対物レンズを粗く位置決めする場合にスレッド駆動電圧補正用の手段を備え、光ピックアップの停止位置におけるアクチュエータのトラック方向視野振り量の検出結果に基づいて次回の当該光ピックアップの移動時のスレッド駆動電圧の設定値を補正するようにして、前回の光ピックアップの移動時のスレッド駆動電圧をトラック方向視野振り量に応じて設定電圧を補正できるようにすると共に、光ピックアップの安定なシーク動作を実現できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスク状記録媒体に対する情報信号の記録や再生を行うディスクドライブ装置が使用される場合が多くなってきた。ディスク状記録媒体には、例えば、DVDの場合、DVD−ROM(Read Only Memory)、DVD±R(Recordable)、DVD−RW(Rewritable)とDVD−RAM(Random Access Memory)が使用される。
【0003】
このようなディスクドライブ装置は、ディスクテーブルに装着されるディスク状記録媒体の半径方向へ移動し、該ディスク状記録媒体に対して対物レンズを介してレーザー光を照射して情報信号の記録又は再生を行う光ピックアップを備えている。
【0004】
光ピックアップにあっては、フォーカシングエラー信号の検出により対物レンズをディスク状記録媒体の記録面に離接する方向(フォーカシング方向)へ変位させてフォーカシング調整が行われる他、トラッキングエラー信号を検出して対物レンズをディスク状記録媒体の略半径方向(トラッキング方向)へ変位させてトラッキング調整が行われる。
【0005】
ところで、従来方式のスレッドシーク制御によれば、ある決まったスレッド駆動電圧でフィードフォワード制御を行い、トラック方向視野振り量や、歯車に設置されたエンコーダなどの位置センサ情報をフィードバックしてばらつきを抑制する方法が採られる。ここに、スレッドシークとは、対物レンズを直接駆動するアクチュエータの可動範囲に目的トラックが存在しない場合に、スレッドモータによって光ピックアップ全体を駆動して目的トラックに移動するシーケンスである。
【0006】
例えば、スレッドモータで駆動される光学系の位置を外部センサで検出するシーケンス方式によれば、フォーカスサーボやトラックサーボの状態に関係なく光学系の位置検出ができる利点がある。従って、シーク動作中にフォーカスサーボや、トラックサーボ等が制御から外れていても、シーク終了時に復帰していれば問題なくシーク動作を完了することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来方式のディスク駆動装置によれば、次のような問題点がある。
i.ラックピニオンギヤ機構を利用した光ピックアップのシーク動作系によれば、歯車による駆動力伝達の時間遅れなどの原因から、スレッドサーボのサーボ帯域はあまり高く補正することができない。これは、スレッド駆動電圧を最適値がラックピニオンギヤ機構の負荷ばらつきや、モータ感度ばらつきによって変化するためである。そのため、メカ負荷、モータ感度の個体ばらつきや、温度変化の抑制について、フィードバック制御の効果が十分でない場合が多かった。このような場合に、シーク動作時のフィードフォワード駆動成分を適切に補正することが重要になってくる。
【0008】
ii.従来方式では、フィードフォワード駆動成分は、平均的なメカ負荷とモータ駆動力を想定したスレッド系に対する最適値を固定値として補正するようにしている。従って、単体ばらつきや温度変化、経時変化に対応できない。生産ラインでメカ負荷とモータ駆動力をあわせて測定し、最適な駆動力に補正する場合もあるが、この場合も温度変化、経時変化には対応できていないのが現状である。
【0009】
iii.また、光ピックアップがトラック可動範囲を超えてしまうと、そのアクチュエータがストッパに衝突し、シーク動作が中断してしまう。このような場合に、フォーカスサーボ制御が固定された状態から外れて(落ちて)しまい、その復帰に長い時間がかかってしまう。これにより、安定なシーク動作が得られないという問題がある。
【0010】
そこで、この発明は、このような従来の課題を解決したものであって、光ピックアップのフィードフォワード制御時のスレッド駆動電圧の補正方法を工夫して、安定なシーク動作を実現できるようにしたディスク駆動装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題は、ディスクの半径方向のトラック上に光ピックアップを移動させて停止させることにより、対物レンズを粗く位置決めするディスク駆動装置において、アクチュエータを有した光ピックアップをスレッド駆動電圧に基づいてディスクの半径方向に移動する移動手段と、この移動手段によって移動された光ピックアップの停止位置におけるアクチュエータのトラック方向視野振り量を検出する検出手段と、この検出手段からの検出結果に基づいて次回の光ピックアップの移動時のスレッド駆動電圧の設定値を補正する補正手段と、この補正手段によって補正された設定値に基づくスレッド駆動電圧を発生して移動手段に供給する駆動手段とを備えることを特徴とするディスク駆動装置によって解決される。
【0012】
本発明に係るディスク駆動装置によれば、光ピックアップはアクチュエータを有している。移動手段は、スレッド駆動電圧に基づいてディスクの半径方向に光ピックアップを移動する。検出手段は、移動手段によって移動された光ピックアップの停止位置におけるアクチュエータのトラック方向視野振り量を検出する。これを前提にして、補正手段は、検出手段からの検出結果に基づいて次回の光ピックアップの移動時のスレッド駆動電圧の設定値を補正する。駆動手段は、補正手段によって補正された設定値に基づくスレッド駆動電圧を発生して移動手段に供給するようになる。従って、光ピックアップの前回シーク動作時のスレッド駆動電圧をトラック方向視野振り量に応じて補正することができる。
【0013】
本発明に係るディスク駆動装置の制御方法は、ディスクの半径方向のトラック上に光ピックアップを移動させて停止させることにより、対物レンズを粗く位置決めするディスク駆動装置の制御方法において、前回のスレッド駆動電圧に基づく光ピックアップの停止位置におけるアクチュエータのトラック方向視野振り量を検出し、検出結果に基づいて次回の光ピックアップの移動時のスレッド駆動電圧の設定値を補正し、設定値に基づくスレッド駆動電圧を発生して光ピックアップのシーク駆動系に供給することを特徴とするものである。
【0014】
ディスク駆動装置の制御方法によれば、数回のシーク動作後、メカ負荷ばらつきやモータ感度ばらつき等のような原因から生じるシーク動作時のスレッド駆動電圧の不適合を補正でき、安定なシーク動作を実現できるようになる。しかも、フィードフォワード制御時のスレッド駆動電圧の補正方式をディスクドライブ装置に実装することにより、温度変化によるメカ負荷やモータ感度の変化した場合も、自動的にスレッド駆動電圧を補正できるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るディスク駆動装置及びその制御方法によれば、ディスクの半径方向のトラック上に光ピックアップを移動させて対物レンズを粗く位置決めする場合に補正手段を備え、この補正手段は、光ピックアップの停止位置におけるアクチュエータのトラック方向視野振り量の検出結果に基づいて次回の当該光ピックアップの移動時のスレッド駆動電圧の設定値を補正するようになされる。
【0016】
この構成によって、前回の光ピックアップの移動時のスレッド駆動電圧をトラック方向視野振り量に応じて補正することができる。従って、数回のシーク動作後、メカ負荷ばらつきやモータ感度ばらつき等のような原因から生じるシーク動作時のスレッド駆動電圧の不適合を補正でき、安定なシーク動作を実現できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
続いて、この発明に係るディスク駆動装置及びその制御方法の一実施例について、図面を参照しながら説明をする。
【0018】
図1は、本発明に係る実施例としディスクドライブ装置1の構成例を示す斜視図である。
【0019】
図1に示すディスクドライブ装置(ディスク駆動装置)1は、ラックピニオンギヤ方式を採用したスレッド駆動機構10を有しており、ディスク状記録媒体100の半径方向のトラック上に光ピックアップ6を移動させて停止させることにより、対物レンズ14を粗く位置決めし、その後、対物レンズ駆動装置(以下アクチュエータという)8を動作させるようになされる。
【0020】
ディスクドライブ装置1は、筐体2を有している。筐体2内には所要の各部材及び各機構が配置されており、筐体2には図示しないディスク挿入口が形成されている。筐体2内には図示しないシャーシが配置され、該シャーシに取り付けられたスピンドルモータのモータ軸にディスクテーブル3が固定されている。ディスクテーブル3には、ディスク状記録媒体100が装着される。ディスク状記録媒体100としては、例えば、CD100aや、DVD100b等が使用される。
【0021】
筐体2内には、移動手段の一例を構成するスレッド駆動機構10が備えられる。スレッド駆動機構10は、リードスクリュー5、移動ベース7及びスレッドモータ9を有している。移動ベース7は、軸受部7a,7bを有している。シャーシには、平行なガイド軸4、4が取り付けられると共に、スレッドモータ9によって回転されるリードスクリュー5が支持されている。リードスクリュー(雄ねじ)5は図示しないピニオンギヤに係合される。ピニオンギヤはスレッドモータ9に係合され、回転力をリードスクリュー5に伝達するようになされる。リードスクリュー5は、移動ベース7に係合される。
【0022】
移動ベース7には光ピックアップ6が取り付けられ、この光ピックアップ6は、対物レンズ14等の光学部品と、移動ベース7に配置されたトラック方向(2軸)アクチュエータ(以下単にアクチュエータという)8とを有し、移動ベース7の両端部に設けられた軸受部7a、7bがそれぞれガイド軸4、4に摺動自在に支持されている。
【0023】
移動ベース7に設けられた図示しないナット(雌ねじ)部材は、リードスクリュー5に螺合され、スレッドモータ9によってリードスクリュー5が回転されると、ナット部材がリードスクリュー5の回転方向へ応じた方向へ送られ、光ピックアップ6がディスクテーブル3に装着されるディスク状記録媒体100の半径方向へ移動される。この例で、スレッドモータ9は、スレッド駆動電圧Vsdに基づいてリードスクリュー5を回転し、光ピックアップ6をディスク状記録媒体100の半径方向に移動する。
【0024】
以上のようにして構成されたディスクドライブ装置1において、スピンドルモータの回転に伴ってディスクテーブル3が回転されると、該ディスクテーブル3に装着されたディスク状記録媒体100が回転され、同時に、光ピックアップ6がディスク状記録媒体100の半径方向へ移動されてディスク状記録媒体100に対する記録動作又は再生動作が行われる。
【0025】
図2は、ディスクドライブ装置1の制御系の構成例を示すブロック図である。図2に示すディスクドライブ装置1では、図示しないトラックカウンタを用いて位置検出が行われ、トラックサーボ制御を実行するため、アナログLSI12で、光ピックアップ6のフォトディテクタの出力からトラッキングエラー(TE)信号が生成される。この信号はトラックのグルーブからグルーブまでが1周期に相当する正弦波状の信号である。
【0026】
トラックカウンタは、このトラッキングエラー信号のゼロクロス回数をカウントすることで、横切ったトラック数を測定するものである。このトラックカウンタを用いることで、1トラック精度でレーザスポットのディスク上位置を検出するようになされる。このトラックカウンタの精度を十分に活用したシークを行うためには、シーク中のアクチュエータ8を精度よく制御を実行し、リファレンスとなるシークプロファイルに光ピックアップ6を追従させるようになる。アクチュエータ8の可動範囲には制限がある。例えば、数百μmといったところである。従って、光学系全体を駆動するスレッド駆動系は、この数百μmの範囲に追従誤差を抑えるようになされる。例えば、スレッドシーク制御では、トラック制御データ(サーボ出力)Dtrの低域成分が誤差電圧(エラー入力)Vεとなされる。
【0027】
ディスクドライブ装置1の制御系は、アナログLSI12、サーボDSP13、ドライバIC15、16、デジタルLSI17及びホストCPU18を有して構成される。アナログLSI12は、光ピックアップ6の図示しないフォトディテクタに接続され、ディスク再生信号(RF信号)を増幅する集積回路である。アナログLSI12にはマトリクス増幅回路が設けられ、記録再生信号Sout、トラッキングエラー信号Ste、フォーカスエラー信号Sfe等を分離増幅するようになされる。この例ではサーボ制御について説明する。
【0028】
アナログLSI12にサーボDSP(Digital Signal Processor)13が接続されている。アナログ/デジタル(以下A/Dという)変換部31、フィルタ回路32、スイッチ回路33、デジタル/アナログ(以下D/Aという)変換部34、ローパスフィルタ(以下LPFという)回路35、フィルタ回路36、加算部37、D/A変換部38、0V発生部、サンプリング回路41〜44、補正演算部51〜54、内周キック電圧発生部61、内周ブレーキ電圧発生部62、外周キック電圧発生部63、外周ブレーキ電圧発生部64、スレッドフィードフォワード用の電圧切替部71及びシーク制御部72を有して構成される。
【0029】
この例で、A/D変換部31はトラッキングエラー信号Steをアナログ/デジタル変換してトラッキングエラーデータDteを出力する。A/D変換部31にはフィルタ回路32が接続され、トラッキングエラーデータDteをフィルタ処理して、トラック制御データDtrを出力する。フィルタ回路32には、スイッチ回路33が接続され、スイッチ制御信号S1に基づいてトラック制御データDtrの出力制御がなされる。例えば、サーボDSP13でトラック制御を実行する場合は、スイッチ制御信号S1に基づいてスイッチ回路33がオン(ON)される。トラック制御を実行しない場合は、スイッチ制御信号S1に基づいてスイッチ回路33がオフ(OFF)される。
【0030】
スイッチ回路33には、D/A変換部34が接続され、トラック制御時、トラック制御データDtrをデジタル/アナログ変換してトラック制御信号Stcを出力する。D/A変換部34にはドライバIC15が接続され、トラック制御信号Stcを増幅して、図1に示したアクチュエータ8にアクチュエータ駆動電圧Vacを出力するようになされる。これにより、トラックサーボ制御系を構成する。
【0031】
上述のフィルタ回路32には、LPF回路35が接続され、トラック制御データDtrから高周波成分(ノイズ成分)が取り除かれたスレッドシークデータDsdが出力される。スレッドシークデータDsdには、内周シーク及び外周シーク時に、スレッドモータ9によって移動された光ピックアップ6の停止位置におけるアクチュエータ8のトラック方向視野振り量を含んでいる。
【0032】
LPF回路35にはフィルタ回路36が接続され、スレッドシークデータDsdをフィルタ処理して誤差電圧Vεを出力する。フィルタ回路36には、加算部37が接続され、誤差電圧Vεと、補正電圧Vxとを加算して出力するようになされる。
【0033】
上述のLPF回路35にはフィルタ回路36の他に、検出手段の一例となる4個のサンプリング回路41〜44が接続されている。サンプリング回路41〜44の後段には、補正手段20が設けられている。補正手段20は、4個の補正演算部51〜54、内周キック電圧発生部61、外周キック電圧発生部62、内周ブレーキ電圧発生部63、外周ブレーキ電圧発生部64、電圧切替部71及びシーク制御部72を有して構成される。
【0034】
例えば、サンプリング回路41は、内周シーク時に、サンプリング制御信号S21に基づいて、スレッドシークデータDsdをサンプリングしてレンズシフト量Lsを検出する。これは、内周キック処理時、スレッドモータ9によって内周側に移動された光ピックアップ6の停止位置におけるアクチュエータ8のトラック方向視野振り量を検出するためである。サンプリング回路41には補正演算部51が接続され、当該サンプリング回路41からの検出結果(サンプリング結果)に基づいて次回の光ピックアップ6の移動時のスレッド駆動電圧Vsdを設定するための第1の補正係数(ゲイン)を演算して出力する。補正演算部51には内周キック電圧発生部61が接続され、第1の補正係数に基づいて内周キック電圧を発生する。
【0035】
サンプリング回路42は、外周シーク時に、サンプリング制御信号S22に基づいて、スレッドシークデータDsdをサンプリングしてレンズシフト量Lsを検出する。これは、外周キック処理時、スレッドモータ9によって外周側に移動された光ピックアップ6の停止位置におけるアクチュエータ8のトラック方向視野振り量を検出するためである。サンプリング回路42には補正演算部52が接続され、当該サンプリング回路42からの検出結果(サンプリング結果)に基づいて次回の光ピックアップ6の移動時のスレッド駆動電圧Vsdを設定するための第2の補正係数(ゲイン)を演算して出力する。補正演算部52には外周キック電圧発生部62が接続され、第2の補正係数に基づいて外周キック電圧を発生する。
【0036】
サンプリング回路43は、内周シーク時に、サンプリング制御信号S23に基づいて、スレッドシークデータDsdをサンプリングしてレンズシフト量Lsを検出する。これは、内周ブレーキ処理時、スレッドモータ9によって内周側に移動された光ピックアップ6の停止位置におけるアクチュエータ8のトラック方向視野振り量を検出するためである。サンプリング回路43には補正演算部53が接続され、当該サンプリング回路43からの検出結果(サンプリング結果)に基づいて次回の光ピックアップ6の移動時のスレッド駆動電圧Vsdを設定するための第3の補正係数(ゲイン)を演算して出力する。補正演算部53には内周ブレーキ電圧発生部63が接続され、第3の補正係数に基づいて内周ブレーキ電圧を発生する。
【0037】
サンプリング回路44は、外周シーク時に、サンプリング制御信号S24に基づいて、スレッドシークデータDsdをサンプリングしてレンズシフト量Lsを検出する。これは、外周ブレーキ処理時、スレッドモータ9によって外周側に移動された光ピックアップ6の停止位置におけるアクチュエータ8のトラック方向視野振り量を検出するためである。サンプリング回路44には補正演算部54が接続され、当該サンプリング回路44からの検出結果(サンプリング結果)に基づいて次回の光ピックアップ6の移動時のスレッド駆動電圧Vsdを設定するための第4の補正係数(ゲイン)を演算して出力する。補正演算部54には外周ブレーキ電圧発生部64が接続され、第4の補正係数に基づいて外周ブレーキ電圧を発生する。なお、第1〜第4の補正係数は、光ピックアップ6の移動距離や、その内周側から外周側へのシーク、その外周側から内周側へのシーク、環境温度等によって異なった値となる。
【0038】
上述の内周キック電圧発生部61、外周キック電圧発生部62、内周ブレーキ電圧発生部63及び外周ブレーキ電圧発生部64には、スレッドフィードフォワード設定用の電圧切替部71が接続されている。電圧切替部71には、これらの電圧発生部61〜64の他に0V電圧発生部65が接続されている。電圧切替部71は、電圧切替信号S3に基づいて、0V電圧、内周キック電圧、外周キック電圧、内周ブレーキ電圧及び外周ブレーキ電圧のいずれ1つを補正電圧(フィードフォワード成分)Vxとして選択するように出力電圧を切り替えて加算部37に出力する。
【0039】
加算部37では、電圧切替部71によって選択された、補正電圧Vxとしての0V電圧、内周キック電圧、外周キック電圧、内周ブレーキ電圧又は外周ブレーキ電圧のいずれ1つと誤差電圧Vεとを加算するようになされる。加算部37にはD/A変換部38が接続され、加算電圧Vε+Vxをデジタル・アナログ変換して、アナログの加算電圧Vε+Vxを出力する。
【0040】
D/A変換部38には、駆動手段の一例を構成するドライバIC16が接続され、加算電圧(スレッド制御出力)Vε+Vxを増幅してスレッド駆動電圧Vsdを出力するようになされる。スレッド駆動電圧Vsdは、光ピックアップ6を移動開始するキック電圧成分と、当該光ピックアップ6の移動を停止するブレーキ電圧成分から構成される。これにより、サーボDSP13によって補正された設定値に基づくスレッド駆動電圧Vsdをスレッドモータ9に供給することができる。
【0041】
上述のスイッチ回路33、サンプリング回路41〜44、電圧切替部71にはシーク制御部72が接続されている。シーク制御部72は、光ピックアップ6の停止位置におけるアクチュエータ8のトラック方向視野振り量を最小とするように、サンプリング回路41〜44におけるレンズシフト量Lsのサンプルタイミングを制御すると共に、電圧切替部71の切り替え制御を実行する。
【0042】
例えば、シーク制御部72は、スレッド駆動電圧Vsdがキック電圧成分からブレーキ電圧成分に切り替わった後のトラック方向視野振り量より、キック電圧成分の過不足を判定し、次回の光ピックアップの移動時のスレッド駆動電圧Vsdのキック電圧成分を補正するように補正演算部51〜54、内周キック電圧発生部61、外周キック電圧発生部62を経て得られるキック電圧成分を選択するように電圧切替部71の切り替え制御を実行する。
【0043】
シーク制御部72は、トラック制御をオン/オフするスイッチ制御信号S1をスイッチ回路33に出力する。また、サンプリング回路41にはサンプリング制御信号S21が出力され、サンプリング回路42にはサンプリング制御信号S22が出力され、サンプリング回路43にはサンプリング制御信号S23が出力され、サンプリング回路44にはサンプリング制御信号S24が各々出力される。電圧切替部71には電圧切替信号S3が出力される。これにより、前回のスレッド駆動電圧Vsdに比べて次回の光ピックアップ6の停止位置におけるアクチュエータ8のトラック方向視野振り量を最小とするようなスレッド駆動電圧Vsdを設定できるようになる。
【0044】
シーク制御部72には、管理手段の一例を構成するホストCPU18が接続され、補正演算部51〜54によって演算されるスレッド駆動電圧Vsdの補正量に関する情報の一例となる補正係数をディスク状記憶媒体100の内周及び外周の領域に記録して管理するようになされる。このように内周及び外周の領域に記録して管理すると、機械負荷や、モータ回転に存在する内周・外周駆動特性の差についても、最適にスレッド駆動電圧Vsdを調整できるようになる。
【0045】
この例で、ホストCPU18又はシーク制御部72に補正用のメモリを備え、光ピックアップ6のシーク方向(外周に向かうシークか、内周に向かうシークか)及び補正演算処理がキック後か、ブレーキ後かに関して、スレッド駆動電圧Vsdに係る補正情報を記憶するようにしてもよい。なお、メカ負荷及びモータ感度は、環境によって変動する場合があるため、それぞれ別に補正用のメモリを備えることが望ましい。
【0046】
なお、ホストCPU18と上述したアナログLSI12との間には、デジタルLSI17が接続され、アナログLSI12で得られた記録再生信号やトラック制御信号等をデジタル処理した記録再生データや制御データをホストCPU18に出力するようになされる。
【0047】
図3〜図5は、フィードフォワード制御に係るスレッド駆動電圧Vsd及びレンズシフトの関係例を示す波形図である。図3A及びBは、スレッド駆動電圧Vsdの出力例及びレンズシフト例(適正時)を示す波形図である。
【0048】
図3A、図4A及び図5Aにおいて、いずれもの縦軸は、スレッド駆動電圧Vsdの振幅である。図3B、図4B及び図5Bおいて、いずれも縦軸は、対物レンズ14のレンズシフト量Lsの振幅である。横軸はいずれも時間軸tである。図3Aは、外周シーク時のスレッド駆動電圧Vsdの適正設定例を示す波形図である。縦軸の+側は、スレッドモータ9を例えば、正回転駆動して光ピックアップ6を外周へシークする際の外周キック電圧
である。縦軸の−側は、外周ブレーキ電圧であり、スレッドモータ9を逆回転駆動して光ピックアップ6を内周へシークする電圧である。
【0049】
図3Aに示すスレッド駆動電圧Vsdのフィードフォワード成分が適切な場合は、図3Bに示すようにレンズシフトは大きく乱れない。なお、図3Bに示す周期成分は、ディスク偏芯成分を表している。このディスク偏芯成分がレンズシフト量Lsに現れるのは、設計通りにアクチュエータ8がサーボ制御に追従しているためである。
【0050】
図4A及びBは、スレッド駆動電圧Vsdの出力例及びレンズシフト例(過剰時)を示す波形図である。
図4Aは、外周シーク時のスレッド駆動電圧Vsdの過剰設定例を示す波形図である。縦軸の+側は、スレッドモータ9を、正回転駆動して光ピックアップ6を外周へシークする際の外周キック過剰電圧である。縦軸の−側は、外周ブレーキ過剰電圧であり、スレッドモータ9を逆回転駆動して光ピックアップ6を内周へシークする際の電圧である。
【0051】
図4Aに示すように、フィードフォワード成分が過剰でスレッド駆動電圧Vsdが大きい場合は、図4Bに示すように、シーク開始時にスレッドモータ9の行き過ぎが起き、アクチュエータ8が内周側に振られる(内周側にレンズシフトする)。このとき、スレッドサーボ制御系がレンズシフトにゆっくり反応し、レンズシフトが抑制される。ブレーキ時のスレッド駆動電圧Vsd、すなわち、外周ブレーキ電圧が過剰となる場合は、図4Bに示すようにアクチュエータ8が外周側に振られる。
【0052】
図中、上向き矢印は、レンズシフト量Lsの振幅最大点にサンプリングタイミングを設定した例である。例えば、スレッド駆動電圧Vsdの過不足によるレンズシフト変動(暴れ)がピークに達するタイミングでレンズシフト成分を検出し、ここで検出されたレンズシフト成分を次回シーク時のスレッド駆動電圧Vsdの補正成分として使用する。このようなサンプリングタイミングは、シーク制御部72がサンプリング回路41〜42にサンプリング制御信号S21〜S24を出力して設定する。
【0053】
図5A及びBは、フィードフォワード成分不足時のスレッド駆動電圧Vsdの出力例及びレンズシフト例(不足時)を示す波形図である。
図5Aは、外周シーク時のスレッド駆動電圧Vsdの不足設定例を示す波形図である。縦軸の+側は、スレッドモータ9を、正回転駆動して光ピックアップ6を外周へシークする際の外周キック不足電圧である。縦軸の−側は、外周ブレーキ不足電圧であり、スレッドモータ9を逆回転駆動して光ピックアップ6を内周へシークする際の電圧である。
【0054】
図5Aに示すように、フィードフォワード成分が不足してスレッド駆動電圧Vsdが小さい場合は、図5Bに示すように、シーク開始時にスレッドモータ9の回転不足が起き、アクチュエータ8が外周側に振られる(外周側にレンズシフトする)。このとき、スレッドサーボ制御系がレンズシフトにゆっくり反応し、レンズシフトが抑制される。ブレーキ時のスレッド駆動電圧Vsd、すなわち、外周ブレーキ電圧が不足となる場合は、図5Bに示すようにアクチュエータ8が内周側に振られる。つまり、図5Bに示したようにフィードフォワード成分が不足する場合は、図4Bに示したスレッドモータ9のキック電圧及びブレーキ電圧でそれぞれ過剰の場合と、その逆側に、つまり、図5Bに示すように、内周側にアクチュエータ8が振られることになる。図中、上向き矢印は、レンズシフト量Lsの振幅最大点にサンプリングタイミングを設定した例である。このようなサンプリングタイミングは、シーク制御部72がサンプリング回路41〜42にサンプリング制御信号S21〜S24を出力して設定する。
【0055】
続いて、本発明に係るディスク駆動装置の制御方法について、光ピックアップ6のスレッドシーク制御例を説明する。図6は、ディスクドライブ装置1のスレッドシーク制御例を示すフローチャート(メインルーチン)である。図7及び図8は、内周キック電圧及び内周ブレーキ電圧の決定例(その1、2)、図9及び図10は、外周キック電圧及び外周ブレーキ電圧の決定例(その1、2)を各々示すフローチャート(サブルーチン)である。
【0056】
この例では、ディスク状記録媒体100の半径方向のトラック上に光ピックアップ6を移動させて停止させることにより、対物レンズ14を粗く位置決めする制御を前提にして、スレッドシーク制御を実行する。ここにスレッドシーク制御とは、目的トラックが、対物レンズ14を直接駆動するアクチュエータ8の可動範囲に存在しない場合に、スレッドモータ9によって光学系全体を駆動して目的トラックに移動するシーケンスをいう。スレッドシーク制御では、スレッド駆動電圧Vsdがフィードフォワード成分の最適値に近づくように、数回のシーク結果に基づいてフィードフォワードのスレッド駆動電圧成分を補正するようになされる。
【0057】
その際のスレッド駆動電圧Vsdの補正方法によれば、レンズシフト量Lsをサンプリングし、ここでサンプリングしたレンズシフト量Lsからスレッドシーク制御時のスレッド駆動電圧Vsdが不足か否かを判別する。アクチュエータ8が外周に向かうシークか又は内周に向かうシークか、あるいは、当該トラックアクチュエータ8がキックされた後か又はブレーキされた後によって、この判別を場合分けするようになされる。この判別の結果に基づいてフィードバックする際の符号(+−)を補正し、ここに補正された符号に適切な補正係数(ゲイン)を演算し、次回シーク時のフィードフォワード出力に反映するようになる。
【0058】
これらを制御条件にして、図6のフローチャートのステップA1でシーク命令を待機する。シーク命令があると、ステップA2に移行して内周へシーク開始するか外周へシーク開始するかによって制御を分岐する。内周へシーク開始する場合、光ピックアップ6がスレッドモータ9によって内周側(符号−)に移動されると共に、ステップA3に移行して、内周キック電圧及び内周ブレーキ電圧の決定処理を実行する。
【0059】
例えば、図7に示すフローチャートのステップB1で内周キック電圧出力を選択するように電圧切替部71を切り替える。電圧切替部71は、電圧切替信号S3に基づいて、内周キック電圧を補正電圧Vxとして選択するように出力を切り替えて加算部37に出力する。このとき、シーク制御部72は、スイッチ制御信号S1をスイッチ回路33に出力してトラック制御をオフする。
【0060】
ステップB2でシーク制御部72は一定時間を経過するのを待つ。一定時間が経過した場合は、ステップB3に移行してシーク制御部72は内周キック電圧補正用のサンプリング処理を実行する。このとき、サンプリング回路41では、サンプリング制御信号S21に基づいて、スレッドシークデータDsdをサンプリングしてレンズシフト量Lsを検出する。これは、内周キック処理時、スレッドモータ9によって内周側に移動された光ピックアップ6の停止位置におけるアクチュエータ8のトラック方向視野振り量を検出するためである。
【0061】
その後、ステップB4で内周キック電圧の補正演算処理を実行する。このとき、補正演算部51は、サンプリング回路41からの検出結果(サンプリング結果)に基づいて次回の光ピックアップ6の移動時のスレッド駆動電圧Vsdを設定するための第1の補正係数(ゲイン)を演算して出力する。そして、ステップB5でシーク制御部72は次回内周キック電圧を決定する。このとき、内周キック電圧発生部61は、補正演算部51から出力される第1の補正係数に基づいて内周キック電圧を発生する。
【0062】
その後、ステップB6に移行してシーク制御部72はブレーキ位置に達するのを待つ。ブレーキ位置に達した場合には、ステップB7に移行して、シーク制御部72は内周ブレーキ電圧出力を選択するように電圧切替部71を切り替える。電圧切替部71は、電圧切替信号S3に基づいて、内周キック電圧を補正電圧Vxとして選択するように出力を切り替えて補正電圧Vxを加算部37に出力する。
【0063】
ステップB8でシーク制御部72は、一定時間を経過するのを待つ。一定時間が経過した場合は、ステップB9に移行してシーク制御部72は0V電圧出力を選択するように電圧切替部71を制御する。電圧切替部71は、電圧切替信号S3に基づいて、0V電圧を補正電圧Vxとして選択するように出力を切り替えて補正電圧Vxを加算部37に出力する。加算部37では、電圧切替部71によって選択された、補正電圧Vxとしての0V電圧と誤差電圧Vεとを加算するようになされる。D/A変換部38は、加算部37から出力される、加算電圧Vε+Vxをデジタル・アナログ変換して、アナログの加算電圧Vε+Vxを出力する。ドライバIC16は、D/A変換部38から出力される、加算電圧Vε+Vxを増幅してスレッド駆動電圧Vsdをスレッドモータ9に出力する。
【0064】
このとき、シーク制御部72は、スイッチ制御信号S1をスイッチ回路33に出力してトラック制御をオンする。スイッチ回路33は、スイッチ制御信号S1に基づいてトラック制御データDtrをD/A変換部34に出力する。D/A変換部34は、トラック制御時、トラック制御データDtrをデジタル/アナログ変換してトラック制御信号StcをドライバIC15に出力する。ドライバIC15は、トラック制御信号Stcを増幅して、図1に示したアクチュエータ8に出力するようになされる。
【0065】
その後、ステップB10に移行してシーク制御部72は一定時間を経過するのを待つ。一定時間が経過した場合は、ステップB11に移行してシーク制御部72は、内周ブレーキ電圧補正用のサンプリング処理を実行する。このとき、サンプリング回路43は、サンプリング制御信号S23に基づいて、スレッドシークデータDsdをサンプリングしてレンズシフト量Lsを検出する。これは、内周ブレーキ処理時、スレッドモータ9によって内周側に移動された光ピックアップ6の停止位置におけるアクチュエータ8のトラック方向視野振り量を検出するためである。
【0066】
その後、ステップB12でシーク制御部72は、内周ブレーキ電圧の補正演算処理を実行するべく補正演算部53を制御する。例えば、補正演算部53は、サンプリング回路43からの検出結果(サンプリング結果)に基づいて次回の光ピックアップ6の移動時のスレッド駆動電圧Vsdを設定するための第3の補正係数(ゲイン)を演算して出力する。そして、ステップB13でシーク制御部72は次回内周ブレーキ電圧を決定する。このとき、内周ブレーキ電圧発生部63は、補正演算部53から出力される第3の補正係数に基づいて内周ブレーキ電圧を発生する。
【0067】
その後、図6に示したフローチャートのステップA5に移行して終了判別をする。例えば、電源オフ情報を検出してスレッドシーク制御を終了する。電源オフ情報が検出されない場合は、ステップA1に戻ってスレッドシーク制御を継続する。この例で、ステップA2で外周へシーク開始する場合は、光ピックアップ6がスレッドモータ9によって外周側(符号+)に移動されると共に、ステップA4に移行して、外周キック電圧及び外周ブレーキ電圧の決定処理を実行する。
【0068】
例えば、図9に示すフローチャートのステップC1で外周キック電圧出力を選択するように電圧切替部71を切り替える。電圧切替部71は、電圧切替信号S3に基づいて、外周キック電圧を選択し、外周キック電圧を補正電圧Vxとして加算部37に出力する。加算部37では、電圧切替部71によって選択された、補正電圧Vxとしての外周キック電圧と誤差電圧Vεとを加算するようになされる。D/A変換部38は、加算部37から出力される、加算電圧Vε+Vxをデジタル・アナログ変換して、アナログの加算電圧Vε+Vxを出力する。ドライバIC16は、D/A変換部38から出力される、加算電圧Vε+Vxを増幅してスレッド駆動電圧Vsdをスレッドモータ9に出力する。
【0069】
ステップC2でシーク制御部72は、一定時間を経過するのを待つ。一定時間が経過した場合は、ステップC3に移行して外周キック電圧補正用のサンプリング処理を実行する。このとき、サンプリング回路42は、サンプリング制御信号S22に基づいて、スレッドシークデータDsdをサンプリングしてレンズシフト量Lsを検出する。これは、外周キック処理時、スレッドモータ9によって外周側に移動された光ピックアップ6の停止位置におけるアクチュエータ8のトラック方向視野振り量を検出するためである。
【0070】
その後、ステップC4でシーク制御部72は外周キック電圧の補正演算処理を実行するべく、補正演算部52を制御する。例えば、補正演算部52は、サンプリング回路42からの検出結果(サンプリング結果)に基づいて次回の光ピックアップ6の移動時のスレッド駆動電圧Vsdを設定するための第2の補正係数(ゲイン)を演算して出力する。そして、ステップC5でシーク制御部72は次回外周キック電圧を決定する。このとき、外周キック電圧発生部62は、補正演算部52から出力される第2の補正係数に基づいて外周キック電圧を発生する。
【0071】
その後、ステップC6に移行してブレーキ位置に達するのを待つ。ブレーキ位置に達した場合には、ステップC7に移行して、外周ブレーキ電圧出力を選択するように電圧切替部71を切り替える。電圧切替部71は、電圧切替信号S3に基づいて、外周ブレーキ電圧を選択し、外周ブレーキ電圧を補正電圧Vxとして加算部37に出力する。加算部37では、電圧切替部71によって選択された、補正電圧Vxとしての外周ブレーキ電圧と誤差電圧Vεとを加算するようになされる。D/A変換部38は、加算部37から出力される、加算電圧Vε+Vxをデジタル・アナログ変換して、アナログの加算電圧Vε+Vxを出力する。ドライバIC16は、D/A変換部38から出力される、加算電圧Vε+Vxを増幅してスレッド駆動電圧Vsdをスレッドモータ9に出力する。
【0072】
ステップC8で一定時間を経過するのを待つ。一定時間が経過した場合は、ステップC9に移行して0V電圧出力を選択する。このとき、シーク制御部72は、スイッチ制御信号S1をスイッチ回路33に出力してトラック制御をオンする。スイッチ回路33は、スイッチ制御信号S1に基づいてトラック制御データDtrをD/A変換部34に出力する。D/A変換部34は、トラック制御時、トラック制御データDtrをデジタル/アナログ変換してトラック制御信号StcをドライバIC15に出力する。ドライバIC15は、トラック制御信号Stcを増幅して、図1に示したアクチュエータ8に出力するようになされる。これにより、トラックサーボ制御系を構成する。
【0073】
その後、ステップC10に移行してシーク制御部72は一定時間を経過するのを待つ。一定時間が経過した場合は、ステップC11に移行してシーク制御部72は外周ブレーキ電圧補正用のサンプリング処理を実行する。サンプリング回路44は、サンプリング制御信号S24に基づいて、スレッドシークデータDsdをサンプリングしてレンズシフト量Lsを検出する。これは、外周ブレーキ処理時、スレッドモータ9によって外周側に移動された光ピックアップ6の停止位置におけるアクチュエータ8のトラック方向視野振り量を検出するためである。
【0074】
その後、ステップC12でシーク制御部72は外周ブレーキ電圧の補正演算処理を実行するべく補正演算部54を制御する。補正演算部54は、サンプリング回路44からの検出結果(サンプリング結果)に基づいて次回の光ピックアップ6の移動時のスレッド駆動電圧Vsdを設定するための第4の補正係数(ゲイン)を演算して出力する。
【0075】
そして、ステップC13でシーク制御部72は、次回外周キック電圧を決定する。このとき、外周ブレーキ電圧発生部64は、補正演算部54から出力される第4の補正係数に基づいて外周ブレーキ電圧を発生する。そして、図6に示したフローチャートのステップA5に移行してシーク制御部72は、終了判別をする。例えば、電源オフ情報を検出してスレッドシーク制御を終了する。電源オフ情報が検出されない場合は、ステップA1に戻ってスレッドシーク制御を継続する。これにより、前回のスレッド駆動電圧Vsdに比べて次回の光ピックアップ6の停止位置におけるアクチュエータ8のトラック方向視野振り量を最小とするようなスレッド駆動電圧Vsdを設定できるようになる。
【0076】
このように、実施例としてのディスクドライブ装置及びその制御方法によれば、アクチュエータ8が、シークリファレンスに追従し、スレッドモータ9がアクチュエータ8のレンズシフト量Lsを最小にするようにフィードバック制御が実行される。サンプリング回路41,42,43,44は、スレッドモータ9によって移動された光ピックアップ6の停止位置におけるアクチュエータ8のトラック方向視野振り量を検出する。
【0077】
これを前提にして、補正演算部51〜54では、サンプリング回路41,42,43,44からの検出結果に基づいて次回の光ピックアップ6の移動時のスレッド駆動電圧Vsdの設定値を補正する。ドライバIC16は、サーボDSP13によって補正された設定値に基づくスレッド駆動電圧Vsdを増幅してスレッドモータ9に供給するようになる。
【0078】
従って、前回シーク時の光ピックアップ6のスレッド駆動電圧Vsdをトラック方向視野振り量に応じて補正することができる。しかも、シーク動作を高速化する場合及びシーク安定性を確保する場合に、最適なスレッド駆動電圧Vsdをより高精度に補正できるようになる。これにより、数回のシーク動作後、メカ負荷ばらつきやモータ感度ばらつき等のような原因から生じるシーク動作時のスレッド駆動電圧Vsdの不適合を補正でき、安定なシーク動作を実現できるようになる。従って、シーク時のスレッド駆動電圧Vsdを最適に設定可能なラックピニオンギヤ機構を採用したディスクドライブ装置1を提供できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
この発明は、光ピックアップのシーク動作系をフィードフォワード制御してディスク状記録媒体の半径方向のトラック上にその対物レンズを停止させ、その後、そのアクチュエータを動作させる光ディスクドライバに適用して極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る実施例としディスクドライブ装置1の構成例を示す斜視図である。
【図2】ディスクドライブ装置1の制御系の構成例を示すブロック図である。
【図3】フィードフォワード制御に係るスレッド駆動電圧Vsdの出力例及びレンズシフト例(適正時)を示す波形図である。
【図4】フィードフォワード制御に係るスレッド駆動電圧Vsdの出力例及びレンズシフト例(過剰時)を示す波形図である。
【図5】フィードフォワード制御に係るスレッド駆動電圧Vsdの出力例及びレンズシフト例(不足時)を示す波形図である。
【図6】ディスクドライブ装置1におけるスレッドシーク制御例を示すフローチャート(メインルーチン)である。
【図7】内周キック電圧及び内周ブレーキ電圧の決定例(その1)を示すフローチャート(サブルーチン)である。
【図8】内周キック電圧及び内周ブレーキ電圧の決定例(その2)を示すフローチャート(サブルーチン)である。
【図9】外周キック電圧及び外周ブレーキ電圧の決定例(その1)を示すフローチャート(サブルーチン)である。
【図10】外周キック電圧及び外周ブレーキ電圧の決定例(その2)を示すフローチャート(サブルーチン)である。
【符号の説明】
【0081】
1・・・ディスクドライブ装置(ディスク駆動装置)、3・・・ディスクテーブル、6・・・光ピックアップ、8・・・アクチュエータ(対物レンズ駆動装置)、9・・・スレッドモータ、10・・・スレッド駆動機構、13・・・サーボDSP、14・・・対物レンズ、16・・・ドライバIC(駆動手段)、18・・・ホストCPU、20・・・補正手段、41〜44・・・サンプリング回路(検出手段)、51〜54・・・補正演算部、61・・・内周キック電圧発生部、62・・・外周キック電圧発生部、63・・・内周ブレーキ電圧発生部、64・・・外周キブレーキ電圧発生部、71・・・電圧切替部、72・・・シーク制御部、100・・・ディスク状記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクの半径方向のトラック上に光ピックアップを移動させて停止させることにより、対物レンズを粗く位置決めするディスク駆動装置において、
アクチュエータを有した前記光ピックアップをスレッド駆動電圧に基づいてディスクの半径方向に移動する移動手段と、
前記移動手段によって移動された前記光ピックアップの停止位置におけるアクチュエータのトラック方向視野振り量を検出する検出手段と、
前記検出手段からの検出結果に基づいて次回の前記光ピックアップの移動時のスレッド駆動電圧の設定値を補正する補正手段と、
前記補正手段によって補正された前記設定値に基づくスレッド駆動電圧を発生して前記移動手段に供給する駆動手段とを備えることを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項2】
前記補正手段は、
前記光ピックアップの停止位置におけるアクチュエータのトラック方向視野振り量を最小とするように前回のスレッド駆動電圧を補正することを特徴とする請求項1に記載のディスク駆動装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、
前記光ピックアップを移動開始するキック電圧成分と、当該光ピックアップの移動を停止するブレーキ電圧成分から構成されるスレッド駆動電圧を発生することを特徴とする請求項1に記載のディスク駆動装置。
【請求項4】
前記補正手段は、
前記スレッド駆動電圧がキック電圧成分からブレーキ電圧成分に切り替わった後のトラック方向視野振り量より、ブレーキ電圧成分の過不足を判定し、
前記ブレーキ電圧成分の過不足に基づいて次回の前記光ピックアップの移動時のスレッド駆動電圧のブレーキ電圧成分を補正することを特徴とする請求項1に記載のディスク駆動装置。
【請求項5】
前記補正手段によって補正されるスレッド駆動電圧の補正量に関する情報を、前記ディスクの内周及び外周の領域に記録して管理する管理手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のディスク駆動装置。
【請求項6】
ディスクの半径方向のトラック上に光ピックアップを移動させて停止させることにより、対物レンズを粗く位置決めするディスク駆動装置の制御方法において、
前回のスレッド駆動電圧に基づく前記光ピックアップの停止位置におけるアクチュエータのトラック方向視野振り量を検出し、
検出結果に基づいて次回の前記光ピックアップの移動時のスレッド駆動電圧の設定値を補正し、
前記設定値に基づくスレッド駆動電圧を発生して前記光ピックアップのシーク駆動系に供給することを特徴とするディスク駆動装置の制御方法。
【請求項7】
前記光ピックアップの停止位置におけるアクチュエータのトラック方向視野振り量を最小とするように前回のスレッド駆動電圧を補正することを特徴とする請求項6に記載のディスク駆動装置の制御方法。
【請求項8】
前記光ピックアップを移動開始するキック電圧成分と、当該光ピックアップの移動を停止するブレーキ電圧成分から構成されるスレッド駆動電圧を発生することを特徴とする請求項6に記載のディスク駆動装置の制御方法。
【請求項9】
前記スレッド駆動電圧がキック電圧成分からブレーキ電圧成分に切り替わった後のトラック方向視野振り量より、ブレーキ電圧成分の過不足を判定し、
判定された前記ブレーキ電圧成分の過不足分に基づいて次回の前記光ピックアップの移動時のスレッド駆動電圧のブレーキ電圧成分を補正することを特徴とする請求項6に記載のディスク駆動装置の制御方法。
【請求項10】
補正された前記スレッド駆動電圧の補正量に関する情報を、前記ディスクの内周及び外周の領域に記録して管理することを特徴とする請求項6に記載のディスク駆動装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−66358(P2007−66358A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248234(P2005−248234)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】