説明

ディスク駆動装置

【課題】ディスクトレイの上下方向の反り変形を防止し、反り変形モード振動をガタ振動なく防止できるディスク駆動装置を提供する。
【解決手段】筐体10と、スピンドルモータ55及びピックアップ56を搭載したディスクトレイ40と、前記トレイ40の導出・導入時の1対のガイド機構を備えたディスク駆動装置1において、前記トレイ40の導入側端部の、ディスク搭載面に沿った幅方向の中央部には、溝部又は突起部を有する導入側当接部61を形成し、ボトムケース11の奥部内壁部11rには、弾性部材65で形成された奥部当接部62を設置し、前記トレイ40が筐体10内部の所定位置に導入された状態では、奥部当接部62の弾性部材65に導入側当接部61が当接し、導入側当接部61の溝部又は突起部が、弾性部材65によって、前記トレイ40の導入・導出方向及び幅方向それぞれに垂直な上下方向に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報の記録・再生を行うディスク駆動装置に係り、特に装置筺体内から導出されたディスクトレイにディスクを搭載してディスクトレイごと装置筺体内に導入するトレイ方式のディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トレイ方式のディスク駆動装置として、特許文献1(特開2002−279717号公報)には、ディスクトレイのディスク搭載面(表面)の裏面に、ディスクトレイの導入・導出方向(前後方向)の導入側(前後方向の後方側)の、幅方向(左右方向)の中央部に位置させて、リブ状の当り部をディスクトレイの高さ(厚さ方向(上下方向))の下方に向けて凸設するとともに、ディスククランプ位置でこの当り部と対向する固定側のシャーシには、僅かな隙間を有してこの当り部と当接可能な平坦な受け部を設けた構成が開示されている。これによれば、幅方向の両側それぞれをガイドされ、ディスククランプ位置に導入されてきたディスクトレイは、そのリブ状の当り部がシャーシの受け部によって下方から支えられて、ディスクトレイの幅方向中央部が自重で下方に張り出す形状に反り変形を起こすのを阻止できるようになっている。
【0003】
また、特許文献2(特開2002−230955号公報)には、同じくトレイ方式のディスク駆動装置として、ディスクトレイの導入・導出方向の導入側には、先端部に「U」字状の溝を備え、ディスクトレイの上下方向に撓み弾性を有するフランジが導入方向に延設されているとともに、ディスクトレイが導入される固定側の筐体底面には、ディスクトレイがディスククランプ位置に導入される際にこのフランジの「U」字状の溝が弾性的に嵌合する円柱状ボスが立設された構成が開示されている。これによれば、ディスククランプ位置に進入してきたディスクトレイのフランジは、その「U」字状の溝を円柱状ボスの円錐面に対して密着嵌合させたとき、この「U」字状の溝が形成されたフランジ先端部が固定側の筐体底面に対して垂直な上下方向の上方に押し上げられて生じるフランジの撓み弾性によって、ディスクトレイの上下方向の上方への振動変位を抑制できるようになっている。
【0004】
また、特許文献3(特開2009−48698号公報)には、同じくトレイ方式のディスク駆動装置として、固定側のケースに設けられた第1の回路基板と、ディスクトレイに設けられた第2の回路基板との間を、ディスクトレイの導入・導出に伴って回路接続/非接続にする構成が開示されている。これによれば、ディスクトレイの導入の際には、位置決め機構によって、ディスクトレイの導入側端部に形成された凸部の幅方向(左右方向)両側部分が、ケース内の幅方向(左右方向)両側の対向する側面に形成された凹部に係合して案内され、ケース内で第1,第2の回路基板に設けられたコネクタ同士を嵌合可能に位置決め対向させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−279717号公報
【特許文献2】特開2002−230955号公報
【特許文献3】特開2009−48698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスク駆動装置は、PC(personal computer)やゲーム機,映像録画再生機,カーナビゲーションシステム等といった機器に、その情報記録再生装置として搭載される。そのため、ディスク駆動装置には、搭載機器の動作環境に基づく様々な外部振動や、例えば冷却ファンやスピーカといった搭載機器に一緒に組み込まれた他の構成装置からの振動等、様々な振動が加わる。これらの振動には、様々な周波数帯域の振動が含まれているため、ディスク駆動装置を構成する構成部品がその特定の固有振動モードで励振される可能性がある。特に、トレイ方式のディスク駆動装置にあっては、ディスクトレイは、ディスクの格納・取り出しのために固定側の筐体に対して導入・導出可能に可動支持されているため、その特定の固有振動モードで励振されると、ディスクトレイの幅方向中央部が反り変形を起こしながら上下方向に振動変位する共振現象が生じてしまう。このような共振現象によるディスクトレイの幅方向中央部の反り変形モードでの上下振動は、その振幅が大きく、ディスクに情報を記録し、ディスクの情報を再生するピックアップを励振することによる記録・再生エラーや、ガタ振動による騒音増大等の問題を引き起こす。
【0007】
しかしながら、従来のディスク駆動装置においては、このような共振現象によるディスクトレイの幅方向中央部の反り変形モードでの上下振動に対しては、十分な配慮がなされていなかった。
【0008】
例えば、特許文献1に記載の技術は、ディスククランプ位置において、自重でディスクトレイの幅方向中央部が下方に張り出す形状に反り変形してしまうのを防止するためだけの技術に過ぎない。そのため、ディスクトレイの幅方向中央部が上方に張り出す形状の反り変形については全く考慮されていない。この結果、下向きだけではなく上向きにも、ディスクトレイの幅方向中央部に反り変形を起こさせながらディスクトレイの幅方向中央部を上下方向に振動変位させる共振現象を抑制することはできなかった。
【0009】
また、特許文献2に記載の技術は、ディスククランプ位置において、ディスクトレイが対向する固定側の筐体底面部分に立設された円柱状ボスの周面に、ディスクトレイに一体のフランジのU字状の溝が密着嵌合していることによって、ディスクトレイに上下方向の上方への振動変位が生じようとすると、このU字状の溝と円柱状ボスの円錐面との密着嵌合部を支持点として弾性的に撓んでいるフランジの撓み弾性によりディスクトレイを筐体底面側である下方に押えつけて、ディスクトレイの上方への振動変位を抑制するものである。しかしながら、ディスクトレイの幅方向中央部が反り変形を起こしながら上下方向に振動変位する共振現象が生じてしまうと、ディスクトレイの幅方向中央部の上方への反り変形に対してはフランジの撓み弾性により抑制することはできても、ディスクトレイの幅方向中央部の下方への反り変形に対しては、フランジの撓み弾性が開放され、ディスクトレイの幅方向中央部の下方への反り変形を増長させることになるので、共振現象を抑制することができなかった。さらに、フランジの撓み弾性が開放されることによりフランジのU字状の溝と円柱状ボスの円錐面との密着嵌合部に微小な隙間が生じてしまうと、フランジのU字状の溝が円柱状ボスの円錐面と衝突しながら振動する、いわゆるガタ振動も発生してしまう。
【0010】
また、特許文献3に記載の技術は、ディスクトレイの導入・導出方向の導入側端部に形成された凸部の幅方向両側が、ケース内の幅方向両側の対向する側面に形成された凹部に係合して案内されるディスクトレイとケースとの間の位置決め機構である。しかしながら、その位置決め機構は、ディスクトレイの導入・導出のためのガイド機構の改良に過ぎず、ディスクトレイの幅方向中央部を上下方向に振動変位させる共振現象を抑制できるものではなかった。
【0011】
本願は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、ディスクトレイの幅方向中央部の上下方向の反り変形を防止するとともに、ディスクトレイの幅方向中央部に反り変形を起こさせながらディスクトレイの幅方向中央部を上下方向に振動変位させる共振現象を抑制することができるディスク駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上述した課題を解決するために、情報の記録・再生を行うディスク駆動装置であって、特に装置筺体内から導出されたディスクトレイにディスクを搭載してディスクトレイごと装置筺体内に導入するトレイ方式のディスク駆動装置に係り、装置筺体に対するディスクトレイの導入・導出方向の導入側端部の、ディスクトレイの幅方向の中央部に、装置筺体の導入側の奥部内壁部に対向するように形成された導入側当接部と、装置筺体内の導入側の奥部内壁部にディスクトレイの導入側当接部に対向させて配置され、ディスクトレイの所定の導入位置でディスクトレイの導入側当接部と当接係合する奥部当接部と、を有する反り変形抑制機構を設け、反り変形抑制機構は、導入側当接部と奥部当接部とが当接係合している状態の常態で、導入側当接部又は奥部当接部いずれかの一方の、上下方向それぞれの当接面を弾性部材で形成することによって、導入側当接部は奥部当接部によってディスクトレイの上下方向いずれにも弾性的支持されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ディスクトレイの幅方向中央部の上下方向いずれの反り変形を防止するとともに、ディスクトレイの幅方向中央部に反り変形を起こさせながらディスクトレイの幅方向中央部を上下方向に振動変位させる共振現象を抑制することができる。
【0014】
さらに、これにより、ディスクに情報を記録し、ディスクの情報を再生するピックアップを励振することによる記録・再生エラーや、ガタ振動による騒音増大を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態としての光ディスク駆動装置の分解斜視図である。
【図2】ガイドレールの摺動面に形成されたガタ振動防止部の一実施例の構成図である。
【図3】ディスクトレイの中央部の上下方向の反り変形、及び共振現象の説明図である。
【図4】光ディスク駆動装置に備えられた反り変形抑制機構の第1の実施例の構成図である。
【図5】光ディスク駆動装置に備えられた反り変形抑制機構の第2の実施例の構成図である。
【図6】光ディスク駆動装置に備えられた反り変形抑制機構の第3の実施例の構成図である。
【図7】光ディスク駆動装置に備えられた反り変形抑制機構の第4の実施例の構成図である。
【図8】光ディスク駆動装置に備えられた反り変形抑制機構の第5の実施例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のディスク駆動装置の一実施の形態について、図面に基づき説明する。以下では、光ディスク駆動装置を例に説明するが、その要部の構成は他のディスク駆動装置にも適用可能である。なお、各図間で、同一又は同様な構成部については同一符号を付し、その重複説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係る光ディスク駆動装置の構成を示した斜視図である。
光ディスク駆動装置1は、光ディスクが載置された状態のディスクトレイ40が、薄型箱体形状の筐体(装置筐体)10に対し、導入・導出可能な構成になっている。
【0018】
筐体10内部には、コネクタや装置各部を制御するCPU(Central processing Unit)等の電子部品が実装された回路基板20等が配設されるとともに、光ディスクが載置されたディスクトレイ40を導入・導出自在に収容する構成になっている。そのため、筐体10は、光ディスク装置1の正面(前面)に該当する筐体面部分が、光ディスクが載置された状態のディスクトレイ40を筐体10内に導入し、筐体10内から導出するための開口部13になっている。
【0019】
筐体10は、アルミニウム等の薄板金属板をプレス成型したボトムケース11とトップケース12とを結合して構成される。例えば、筐体10の大きさは、正面から眺めたとき、概ね、幅130mm,奥行長さ130mm,高さ(厚さ)12.7mm(或いは、9.5mm)で、モバイル型パーソナルコンピュータに装備されるスリム型ドライブ、或いはスーパスリム型ドライブに適用可能な大きさになっている。
【0020】
ここで、図中に矢示したx方向,y方向,z方向は、ディスクトレイ40が導入・導出される筐体10の開口部13を正面に眺めたときの、光ディスク駆動装置1の導入・導出方向(以下では、前後方向とも称す),幅方向(以下では、左右方向とも称す),高さ(厚さ)方向(以下では、上下方向とも称す)に該当する。
【0021】
筐体10の幅方向(y方向)両側の相対向する一対の内壁部、図示の例では、ボトムケース11の幅方向(y方向) 両側の相対向する一対に内壁部には、導入・導出方向 (x方向)に沿ってディスクトレイ40を移動可能に案内支持する樹脂製のガイドレール31(31a,31b)がそれぞれ取り付け固定されている。この一対の平行なガイドレール31(31a,31b)には、アルミニウム等の薄板金属製のラックスライド32(32a,32b)を介して、樹脂製のディスクトレイ40の幅方向(y方向)の両端側が支持されている。
【0022】
各ラックスライド32a,32bは、対応するガイドレール31a,31bと係合し、ガイドレール31の長さ方向、すなわち光ディスク駆動装置1の導入・導出方向(x方向)に沿ってガイドレール31上を移動可能に支持されている一方、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)両側の対応する端部とも係合し、ディスクトレイ40をラックスライド32の長さ方向、すなわち光ディスク駆動装置1の導入・導出方向(x方向)に沿って移動可能に支持している。ラックスライド32には、その滑らかな摺動のために、係合するガイドレール31、及びディスクトレイ40の幅方向(y方向)両側の対応する端部に対して、高さ方向(z方向)及び幅方向(y方向)にある程度の隙間(遊び)が設けられている。
【0023】
一方、ディスクトレイ40は、高さ方向(z方向)に係る上面に、光ディスクが搭載される光ディスク装着部41が円弧状周壁部によって画成されて凹設されている。光ディスク装着部41の内径は、搭載される光ディスクの外径よりも僅かに大きなっている。光ディスクは、その一部を光ディスク装着部41の弦部分、すなわちディスクトレイ40の幅方向(y方向)の対応する一方側からはみ出させた状態で、光ディスク装着部41に搭載される。ディスクトレイ40には、後述のユニットメカ50を光ディスク装着部41に搭載された光ディスクに対して臨ませるための開口部42が形成されている。
【0024】
また、ディスクトレイ40の前端の導出側端部には、ディスクトレイ40が筺体10内に収容されている状態で、筺体10の開口部13を外部から隠蔽して筺体10内の空間を画成する樹脂製のフロントベゼル43が取り付け固定されている。フロントベゼル43の図示せぬ前面には、筺体10内に収容配置されているディスクトレイ40を筺体10内から導出させる際に操作するイジェクトボタンが配設されている。
【0025】
さらに、ディスクトレイ40には、ディスクトレイ押出機構44が取り付けられている。ディスクトレイ押出機構44は、ディスクトレイ40の前後方向 (x方向)の前方側へ押し込み可能なロッドと、このロッドを前後方向 (x方向)の後方側へ付勢するコイルスプリング等の弾性部材とを有する。ディスクトレイ押出機構44は、このロッドが前方側へ押し込まれた際には、その弾性部材が自然長に対し収縮する構造になっている。
【0026】
これにより、ディスクトレイ押出機構44は、ディスクトレイ40が筐体10の外部から内部へ手動で導入されると、導入開始当初は、ディスクトレイ40の導入側への移動変位に伴い、ロッドもディスクトレイ40と一緒に筺体10内の導入側へ移動変位する構成になっている。その上で、ロッドは、例えば、ボトムケース11の奥部の後方壁14内面に当接する等によって、ディスクトレイ40よりも先に、筺体10内の導入側への移動変位が規制される構成になっている。ディスクトレイ押出機構44は、その後の所定の導入位置(ディスククランプ位置)までの、筺体10内の導入側(奥部側)へのディスクトレイ40の更なる移動変位に伴い、導入側への移動が規制されたロッドが、今度はディスクトレイ40に対して相対的に前方側(手前側)に押し込まれる構成になっている。これにより、ディスクトレイ押出機構44は、導入開始当初は自然長であった弾性部材が、ディスクトレイ40の所定の導入位置よりも手前の導入位置から、このロッドの押し込まれに連動して収縮される構成になっている。
【0027】
また、光ディスクに記録された情報の再生及び光ディスクに対する情報の記録は、ディスクトレイ40が筐体10内の所定の導入位置に導入されているときに行われる。そのため、情報の再生又は記録中は、上述した収縮されている弾性部材が自然長に復帰することによって、所定の導入位置に配置されているディスクトレイ40がそこから導出されないようにしておく必要がある。そのため、筐体10には、ディスクトレイ40のロック機構(図示せず)が設けられている。
【0028】
ロック機構は、ディスクトレイ40が所定の導入位置に導入されてきた際に、ディスクトレイ押出機構44の収縮された弾性部材をその復元力に抗して収縮状態にしたままで、ディスクトレイ40を所定の導入位置に一旦保持する構成になっている。ロック機構は、ディスクトレイ40が所定の導入位置に導入されると、図示しないラッチ機構により作動され、ディスクトレイ40の導出側への移動をロックする。
【0029】
ロック機構は、光ディスクを脱着するため、ディスクトレイ40を筐体10の外部に導出する際は、そのロックが解除される構成になっている。フロントベゼル43前面のイジェクトボタンの操作、若しくは外部接続機器からのイジェクト命令の入力を、回路基板20上のCPUが検知することにより、CPUからロック解除の命令が供給されると、ロック機構はロック解除する構成になっている。ロック機構のロック解除が行われると、ディスクトレイ押出機構44は、弾性部材が収縮状態から元の自然長に戻れるようになり、その際の弾性部材の復元力により、フロントベゼル43及びディスクトレイ40の前方側を摘出可能なように、ディスクトレイ40を筺体10の開口部13から導出して筐体10外部に位置させる構成になっている。
【0030】
ユニットメカ50は、上・下面をユニットカバー51及び図示せぬアンダーカバーでそれぞれ覆われた図示せぬメカシャーシ上に、光ディスクを回転させるためのスピンドルモータ55や、光ディスクの記録面の情報を再生し、又は光ディスクの記録面へ情報を記録する光ピックアップ56や、光ピックアップ56をディスク径方向に沿って移動させる図示せぬガイド機構等を搭載した構成になっている。ユニットカバー51には、光ディスク装着部41の円弧状周壁部の径方向に延びる切欠部52が形成されている。スピンドルモータ55は、その回転軸に配設されたクランパを光ディスク装着部41の円弧状周壁部の円弧中心部に合わせて、切欠部52に配置されている。光ピックアップ56は、図示せぬガイド機構によって光ディスク装着部41の円弧状周壁部の径方向に沿って移動自在に、切欠部52に配置されている。
【0031】
ユニットメカ50は、弾性体からなる図示せぬ複数のインシュレータを介して、ディスクトレイ40の高さ方向(z方向)に係る下面に対して取り付け固定されている。これら複数のインシュレータによって、装置の他部からユニットメカ50へ伝わる振動や衝撃、或いはユニットメカ50から装置の他部へ伝わる振動や衝撃を減衰できるようになっている。
【0032】
ところで、ディスクトレイ40の移動がロック機構によってロックされる所定の導入位置においては、前述の滑らかな摺動のために設けられた、ラックスライド32(32a,32b)と、ガイドレール31(31a,31b)及びディスクトレイ40の幅方向(y方向)両側の各端部との間の隙間(遊び)は、ガイドレール31(31a,31b)の前後方向(x方向)の後方側の摺動面それぞれに形成されたガタ振動防止部33によって、抑制される構成になっている。
【0033】
図2は、ガイドレールの摺動面に形成されたガタ振動防止部の一実施例の構成図である。図2では、ガイドレール31bの前後方向(x方向)の後方側の摺動面に形成されたガタ振動防止部33の構成を示すが、ガイドレール31b側のガタ振動防止部33も同様な構成になっている。
【0034】
図2において、樹脂製からなる、導入・導出方向(x方向)に沿って眺めて断面コ字形状の摺動面を有するガイドレール31bの前後方向(x方向)の後部には、ガタ振動防止部33を構成するバネ性を有する押え付け爪部34,35と、ストッパ突起36とが一体的に形成されている。
【0035】
押え付け爪部34は、摺動面の後方側から筺体10内の奥部側に向かって延び、上部摺動面から下部摺動面側に傾斜する傾斜面を形成する爪構造になっている。これに対し、押え付け爪部35は、摺動面の後方側から筺体10内の奥部側に向かって延び、側部摺動面から断面コ字形状の開放側に傾斜する傾斜面を形成する爪構造になっている。ストッパ突起36は、下部摺動面の後方側に凸設され、筺体10内の導入側(奥部側)へ移動するディスクトレイ40の幅方向(y方向)片側の対応端部、及びラックスライド32bを係止する。
【0036】
これにより、ディスクトレイ40及びラックスライド32bは、ディスクトレイ40の移動がロック機構によってロックされる所定の導入位置では、バネ性を有する押え付け爪部34の傾斜面に当接することよって押圧されて、ガイドレール31bの下部摺動面に押し付けられる一方、バネ性を有する押え付け爪部35の傾斜面に当接することよって押圧されて、同様な構成を有するガイドレール31aの押え付け爪部35と協働して両爪部35,35により挟持されることになる。したがって、ディスクトレイ40の移動がロック機構によってロックされる所定の導入位置、光ディスクに対して情報の再生及び情報の記録が行われるディスククランプ位置では、ラックスライド32(32a,32b)と、ガイドレール31(31a,31b)及びディスクトレイ40の幅方向(y方向)両側の各端部との間の隙間(遊び)は規制され、この隙間に起因するディスクトレイ40のガタ振動が抑制されるようになっている。その際、ストッパ突起36は、ガイドレール31(31a,31b)及びラックスライド32(32a,32b)の摺動面後方側への過度の摺動を規制して、押え付け爪部34,35の保護をはかる。
【0037】
本実施の形態に係る光ディスク駆動装置1は、図2で説明したガタ振動防止部33だけでは解決できない、ディスクトレイ40の移動がロック機構によってロックされる所定の導入位置での、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部の上下方向(z方向)の反り変形を防止するとともに、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部に反り変形を起こさせながらディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部を上下方向(z方向)に振動変位させる共振現象を抑制することを特徴とする。
【0038】
光ディスク駆動装置1を含むディスク駆動装置は、PC等といった機器に、その構成部品として搭載される。そのため、光ディスク駆動装置1には、搭載機器の動作環境に基づく様々な外部振動や、搭載機器に一緒に組み込まれた他の構成部品からの振動等、様々な振動が加わる。これらの振動には、様々な周波数帯域の振動が含まれているため、光ディスク駆動装置1は、光ディスクに対して情報の再生及び情報の記録が行われる所定の導入位置で、図2に示したガタ振動防止部33によって、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)両側の各端部に生じている隙間(遊び)に起因するガタ振動の抑制がはかられている状態でも、ディスクトレイ40、又はディスクトレイ40の搭載部品がその特定の固有振動モードで励振された場合には、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部の上下方向(z方向)の反り変形や、ディスクトレイ40の幅方向(y方向) の中央部を上下方向(z方向)に振動変位させる共振現象を生じてしまう虞がある。
【0039】
ここで、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部の上下方向(z方向)の反り変形、及び共振現象について、図3に基づき説明しておく。
【0040】
図3は、ディスクトレイの中央部の上下方向(z方向)の反り変形、及び共振現象の説明図である。図3は、図1に図示された導出状態と異なり、ディスクトレイ40の移動がロック機構によってロックされ、ディスクトレイ40が所定の導入位置に導入されている状態での光ディスク駆動装置1を、図1におけるA−A矢視方向に眺めた概略断面図である。
【0041】
図3において、破線40u及び破線40dは、ディスクトレイ40がその特定の固有振動モードで励振され、ディスクトレイの幅方向(y方向)の中央部に上下方向(z方向) の反り変形を起こしながら、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部が上下方向(z方向)に振動変位する共振現象が起きた場合の、ディスクトレイ40の変形形態を模式的に示したものである。
【0042】
所定の導入位置で、ディスクトレイ40、又はディスクトレイ40の搭載部品がその特定の固有振動モードで励振されたときのディスクトレイ40の変形モードは、ガイドレール31a及びラックスライド32aからなる第1のガイド機構30aとガイドレール31b及びラックスライド32bからなる第2のガイド機構30bとにより支持されたディスクトレイ40の幅方向(y方向)の両端部分が支持点となり、図3に示すように幅方向(y方向)の中央部が上下方向(z方向)に弓なりに上方及び下方に反る振動モードである。
【0043】
この場合、第1のガイド機構30aと第2のガイド機構30bとのいずれからも幅方向(y方向)に沿った距離が略等しいディスクトレイ40の位置部分を含む部分(図3中に二点鎖線で囲った部分)の上下振幅がその周辺部分に比して特に大きくなる。そして、この第1のガイド機構30aと第2のガイド機構30bとのいずれからも幅方向(y方向)に沿った距離が略等しいディスクトレイ40の位置部分は、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)に係り、図3中におけるスピンドルモータ55の回転軸位置よりも第1のガイド機構30a側、すなわちユニットメカ50が配置されている側(図3中の右側)に寄ってずれているため、記録・再生エラーが起き易くなる。
【0044】
本実施の形態に係る光ディスク駆動装置1では、このような共振現象によるディスクトレイ40の反り変形モードを抑制する反り変形抑制機構60を備えていることを特徴とする。
【0045】
図4は、反り変形抑制機構の第1の実施例の構成図で、光ディスク駆動装置を図1におけるB−B矢視方向に眺めた概略断面である。図4(a)は、ディスクトレイが筐体の開口部から外部に導出された状態、図4(b)は、ディスクトレイが筐体内の所定の導入位置まで導入され、図示せぬロック機構によって、ディスクトレイ押出機構の付勢力に抗して、所定の導入位置に保持されている状態、図4(c)は、本実施例に係る反り変形抑制機構の奥部当接部の拡大図をそれぞれ示す。
【0046】
反り変形抑制機構60は、ディスクトレイ40側に設けられた導入側当接部61と、筺体10側に設けられた奥部当接部62とを有して構成される。導入側当接部61は、ディスクトレイ40の導入・導出方向(x方向)の導入側端部(後方側端部)40rの、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部に配置されている。奥部当接部62は、このディスクトレイ40の導入側端部40rが対向する筺体10の奥部内壁部10rに、この導入側当接部61と対向するように配置されている。
【0047】
ディスクトレイ40側の導入側当接部61と、筺体10側の奥部当接部62とは、ディスクトレイ40がその導入方向に所定の導入位置、すなわち前述したディスクトレイ押出機構44によるディスクトレイ40の導出方向の移動がロック機構によってロックされる導入位置で、両者は当接係合するようになっている。両者の当接係合によって、反り変形抑制機構60は、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部が上下方向(z方向)に弓なりに上方及び下方に反るのを規制する。ディスクトレイ40が筺体10内から導出されている状態では、ディスクトレイ40の導入側当接部61は、筺体10内の奥部当接部62とは離間しており、ディスクトレイ40の筺体10内への導入に伴って、両者は近接するようになっている。以下、この反り変形抑制機構60について詳細に説明する。
【0048】
図4(a)に示すように、反り変形抑制機構60の導入側当接部61は、ディスクトレイ40の導入・導出方向(x方向)の導入側端部40rにおいて、図3に示したようにディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部に配置され、樹脂製のディスクトレイ40に対して一体的に形成されている。導入側当接部61の導出方向に向いた当接面には、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)に沿って延びる溝部63が形成されている。溝部63は、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)に沿って眺めた断面形状が「U」字状になっている。溝部63は、その「U」字状の開放部が筺体10の奥部内壁部10rに対向し、「U」字状の互いに対向する側壁部63u,63dがディスクトレイ40の高さ方向(z方向)の上下に位置する構成になっている。
【0049】
これに対し、奥部当接部62は、ディスクトレイ40の導入側当接部61に対向するように高さ方向(z方向) の高さ位置や幅方向(y方向)の位置を合わせて、図示の例では、ボトムケース11の奥部内壁部11rに固設されている。
【0050】
ボトムケース11の奥部内壁部11rに対する奥部当接部62の固設方法としては、例えば、奥部当接部62の背面を、粘着剤や両面テープ等でボトムケース11の奥部内壁部11rに接着固定したり、又は、ボトムケース11の奥部内壁部11rに嵌入孔を形成し、奥部当接部62の背面側をこの嵌入孔に圧入固定する等、種々の固設方法が適用できる。
【0051】
奥部当接部62は、本実施例では、弾性体からなる弾性部材65により形成されている。ここで、弾性部材65としては、例えば、ゴムやフェルト等の弾性体が利用される。弾性部材65は、減衰係数の大きい材料であれば特に防振効果が大きい。
【0052】
奥部当接部62は、導入されてきたディスクトレイ40の導入側当接部61との当接によってその当接面としての弾性面65oが押圧されることにより弾性変形して、導入側当接部61の断面「U」字形状の溝部63内に膨出するようになり、ディスクトレイ40が筐体10内の所定の導入位置まで導入された状態では、図4(b)に示すように、溝部63内に入り込んだ部分65sが、溝部63の側壁部63u,63dのいずれにも当接するようになっている。その上で、奥部当接部62は、この溝部63の側壁部63u,63dのいずれにも当接している状態で、ディスクトレイ40と一体の導入側当接部61が高さ方向(z方向)の上下に振動しようとすると、その振動を抑制する制振性(防振性)を有する構造になっている。
【0053】
例えば、奥部当接部62は、図4(c)中の(c1)に示すように、ディスクトレイ40の導入側当接部61に形成された溝部63に入り込み可能な弾性変形性を有し、かつ導入側当接部61の上下振動のエネルギーを吸収可能な制振性(防振性)を兼ね備えた弾性部材65によって形成されている。弾性部材65としては、例えば、ゴムやフェルト等の弾性体を利用できる。弾性部材65の弾性体は、減衰係数の大きい材料であれば、特に防振効果が大きい。
【0054】
これにより、奥部当接部62は、導入されてきたディスクトレイ40の導入側当接部61と当接した後、ディスクトレイ40が筐体10内の所定の導入位置まで導入されるのに伴って、ボトムケース11の奥部内壁部11r側に押圧されることになる。その際、奥部当接部62の弾性部材65は、図4(b)に示すように、導入・導出方向(x方向)に係り、弾性面65oの押圧された部分が奥部内壁部11r側に押圧変形され、その周辺部がディスクトレイ40側に膨出変形して導入側当接部61の「U」字状の溝部63内に入り込むようになる。そして、この入り込んだ部分65sが溝部63の高さ方向(z方向)に相対する側壁部63u,63dに当接して、その弾性力によって側壁部63u,63dを高さ方向(z方向)の上方向及び下方向に弾性的に支持できるようになる。したがって、ディスクトレイ40の導入・導出方向(x方向)の移動がロック機構によってロックされる所定の導入位置(ディスククランプ位置)では、奥部当接部62の弾性部材65は、ディスクトレイ40の導入側当接部61の溝部63内に入り込み、その入り込んだ部分65sが溝部63の高さ方向(z方向)に相対する側壁部63u,63dに当接し、その弾性力によって側壁部63u,63dを高さ方向(z方向)の上下方向に対して支持している状態が、常態になる。
【0055】
この結果、所定の導入位置での弾性部材65の常態において、ディスクトレイ40の導入側当接部61が上方に変位し、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部に上下方向(z方向)の反り変形が生じようとすると、導入側当接部61の溝部63の側壁部63dに当接している弾性部材65の入り込んだ部分65sから弾性的な押圧力(常態への復元力)を受け、ディスクトレイ40の導入側当接部61には上方へ変位しようとするのを抑制する抑制力が作用することになるので、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部の上方への反り変形を抑制することができる。同様に、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部の下方への反り変形に対しては、導入側当接部61の溝部63の側壁部63uに当接している弾性部材65の入り込んだ部分65sから弾性的な押圧力(常態への復元力)を受け、ディスクトレイ40の導入側当接部61には下方へ変位しようとするのを抑制する抑制力が作用することになるので、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部の下方への反り変形を抑制することができる。
【0056】
そして、ディスクトレイ40、又はディスクトレイ40の搭載部品がその特定の固有振動モードで励振された際にも、導入側当接部61の溝部63に入り込み、その側壁部63d,63uに当接している弾性部材65の入り込んだ部分65sが、特定の固有振動モードで上下方向(z方向)に振動変位しようとする導入側当接部61に、変位方向と逆向きの弾性的な押圧力(常態への復元力)を作用させるので、ディスクトレイの幅方向中央部を上下方向に振動変位させる共振現象を抑制することができる。
【0057】
さらに、このようにして、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部に上下方向(z方向)の反り変形を抑制する際、導入側当接部61の溝部63では、弾性的な押圧力を受けている側の側壁部63d(又は63u)とは反対側の側壁部63u(又は63d)にも、弾性部材65の入り込んだ部分65sが当接し、弾性部材65の入り込んだ部分65sと導入側当接部61の溝部63の側壁部63d,63uとの間が離間することがないので、ガタ振動が生じることもない。
【0058】
加えて、ロック機構のロック解除が行われ、ディスクトレイ押出機構44によりディスクトレイ40を筐体10の外部に導出する際は、導入・導出方向(x方向)に係り、導入側当接部61の当接によって奥部内壁部11r側に押圧変形された弾性部材65の復元力が、入り込んだ部分65sを導入側当接部61の溝部63内から退避させるとともに、導入側当接部61によって奥部内壁部11r側に押圧されていた部分が導入側当接部61を介してディスクトレイ40の導出方向へ押動させることになる。これにより、ディスクトレイ40を導出する際は、反り変形抑制機構60がその妨げとなるような引っかかりや摩擦を生じさせることがないので、ディスクトレイ40を円滑に筐体10の外部に導出することができる。
【0059】
なお、上述した実施例において、所定の導入位置での奥部当接部62の常態においては、弾性部材65の入り込んだ部分65sは、導入側当接部61の溝部63の高さ方向(z方向)に相対する側壁部63u,63dに当接しているだけではなく、その当接部から上下方向(z方向)に弾性的な押圧力を作用させていても構わない。
【0060】
図4(c)中の(c2),(c3)は、図4(c)中の(c1)に示した奥部当接部62の変形例を示したものである。
図4(c)中の(c2)は、奥部当接部62を、弾性力が異なる2種類の弾性部材65,66からなる複合部材により構成し、ディスクトレイ40の導入側当接部61が当接係合する弾性部材65の外周面を、弾性部材65よりも低弾性な剛性を有する弾性部材66によって被覆した構成になっている。これにより、弾性部材65の上下方向を含む外方への撓み変形が規制されることによって、導入・導出方向(x方向)に係り、押圧された部分が奥部内壁部11r側に押圧変形される際に、その周辺部分の奥部当接部62の溝部63への入り込み量を増加させることができる。
【0061】
図4(c)中の(c3)は、奥部当接部62を、段付の弾性部材65により構成し、その小径部65jを奥部内壁部11rに形成した取付孔11hに嵌入して固定した例である。これにより、ディスクトレイ40の導入側当接部61が当接する弾性部材65の大径部65kの拡径部分は導入・導出方向(x方向)に係りボトムケース11の奥部内壁部11rによって支持されているとともに、奥部当接部62の常態において、ディスクトレイ40の当接係合した導入側当接部61が上方又は下方に変位しようとしても、奥部当接部62は上下方向に小径部65jを介してボトムケース11により上下方向にも支持されているので奥部当接部62全体が撓みにくくなり、導入側当接部61の上下方向の変位を効果的に抑制することができる。
【0062】
また、これら実施例の奥部当接部62の弾性部材65の当接面65oも、平面に限ることなく、図4(c)中の(c3)に示すように、湾曲面や凸面形状であってもよい。さらに、奥部当接部62の形状自体も、弾性部材65が導入側当接部61との当接によって押圧されることにより、その押圧された部分及びその周辺部が導入側当接部61の溝部63内に入り込み、その入り込んだ部分65sが溝部63の高さ方向(z方向)に相対する側壁部63u,63dに当接するのであれば、どのような形状であっても構わない。
【0063】
本実施例においては、このようにボトムケース11に設けられた奥部当接部62に限らず、ディスクトレイ40に設けられた導入側当接部61の構成についても、種々の変形例が可能である。
【0064】
例えば、導入側当接部61の溝部63の断面形状は「U」字状に限るものではなく、高さ方向(z方向)に相対する側壁部63u,63dが形成される凹部であれば、溝部63でなくともよい。
【0065】
また、ディスクトレイ40が筐体10内の所定の導入位置に導入された状態において、ボトムケース11の奥部当接部62の弾性部材65が凹部の全ての内周面に当接している必要はなく、高さ方向(z方向)の上下に相対向する側壁部63d及び63uに当接してさえすれば、ディスクトレイ40の導入側当接部61が上下方向(z方向)へ変位しようとするのを抑制して、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部の上下方向(z方向)の反り変形、及びディスクトレイ40の幅方向(y方向) の中央部を上下方向(z方向)に振動変位させる共振現象を抑制することができる。その際には、ディスクトレイ40の上下方向(z方向)の反り変形モードにおいて変位の特に大きい部分である、第1のガイド機構30aと第2のガイド機構30bとのいずれからも幅方向(y方向)に沿った距離が略等しい位置、すなわち図3の一点鎖線上に位置させるように、高さ方向(z方向)の上下に相対向する側壁部63d及び63uに当接してさえすれば、大きな制振効果が得られる。
【0066】
図5は、反り変形抑制機構の第2の実施例の構成図で、光ディスク駆動装置の前後方向(x方向)の後方側部分を図1におけるB−B矢視方向に眺めた概略断面である。図5(a)は、ディスクトレイ40が筐体10の開口部13から外部に導出された状態、図5(b)は、ディスクトレイ40が筐体10内の所定の導入位置まで導入されている状態をそれぞれ示す。
【0067】
本実施例の反り変形抑制機構60では、導入側当接部61の当接面には、図4に示した第1の実施例のように溝部63若しくは凹部を形成する代わりに、突起部64が形成されている。奥部当接部62の弾性部材65は、導入されてきたディスクトレイ40の導入側当接部61の突起部64との当接によって押圧されることにより、その押圧された部分及びその周辺部が突起部64の周囲に図5(b)に示すように膨出し、所定の導入位置での奥部当接部62の常態において、弾性部材65が突起部64の外周部を取り囲むように変形し、突起部64の高さ方向(z方向)に相対する外周部64u,64dのいずれにも当接するようになる。
【0068】
この結果、所定の導入位置での奥部当接部62の常態において、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部に上下方向(z方向)の反り変形が生じようとすると、第1の実施例の場合と同様に、突起部64の外周部64u,64dがそれぞれ当接している弾性部材65の当接部分から、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部に上下方向(z方向)の反り変形を抑制する抑制力が作用することになる。
【0069】
そして、ディスクトレイ40、又はディスクトレイ40の搭載部品がその特定の固有振動モードで励振された際にも、突起部64の外周部64u,64dがそれぞれ当接している弾性部材65の当接部分が、特定の固有振動モードで振動しようとする上下方向(z方向)に変位しようとする導入側当接部61に、変位方向と逆向きの弾性的な押圧力を作用させるので、ディスクトレイ40の幅方向中央部を上下方向に振動変位させる共振現象を抑制することができる。
【0070】
なお、突起部64の形状、個数は、突起部64の高さ方向(z方向)に相対する外周部64u,64dを有する形状であれば、個数は任意である。また、突起部64は、ディスクトレイ40の導入側端部(後方側端部)40r自体でもよい。さらに、奥部当接部62の形状自体も、導入側当接部61との当接によって押圧されることにより、その押圧された部分及びその周辺部が導入側当接部61の外周に回り込み、その回り込んだ部分65sが突起部64の高さ方向(z方向)に相対する外周部64u,64dに当接するのであれば、どのような形状であっても構わない。
【0071】
図6は、反り変形抑制機構の第3の実施例の構成図で、光ディスク駆動装置の前後方向(x方向)の後方側部分を図1におけるB−B矢視方向に眺めた概略断面である。図6(a)は、ディスクトレイ40が筐体10の開口部13から外部に導出された状態、図6(b)は、ディスクトレイ40が筐体10内の所定の導入位置まで導入されている状態をそれぞれ示す。
【0072】
本実施例の反り変形抑制機構60では、図4に示した第1の実施例のように、奥部当接部62の弾性部材65を、弾性変形性を有し、かつ制震性(防振性)を兼ね備えた弾性体で形成する代わりに、板バネ部材70で形成したものである。
【0073】
板バネ部材70は、図6に示すように、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)に沿って眺めた断面形状が、「く」の字状に折曲された折曲片部71と、この折曲片部71を傾倒可能に支持するとともに筐体10に対する取付部を構成する支持片部72とが連設された形状になっている。折曲片部71は、その「く」の字状の凸端部71fがディスクトレイ40の導入側当接部61に形成された「U」字状の溝部63内に入り込み可能な折曲形状になっている。また、折曲片部71の凸端部71fを挟んだ両翼部71g、71gは、凸端部71fを中心にして互いが近接・離間するように拡縮するようになっている。折曲片部71は、自然状態で、その凸端部71fがディスクトレイ40の導入側当接部61の溝部63内に挿入されたとき、各翼部71g、71gが溝部63の高さ方向(z方向)に相対する側壁部63u,63d又はこれらの辺縁部にそれぞれ当接可能な形態になっている。
【0074】
支持片部72は、折曲片部71の片翼部71gに連設され、折曲片部71の凸端部71fの高さ位置をディスクトレイ40の導入側当接部61の溝部63の高さ位置に合わせ、折曲片部71を傾倒可能に支持する。支持片部72は、ボトムケース11の底面の所定位置に図示しないネジで締結されている。
【0075】
これにより、ディスクトレイ40の導入・導出方向(x方向)の移動がロック機構によってロックされる所定の導入位置では、奥部当接部62の板バネ部材70は、折曲片部71が自然状態よりも導入側に支持片部72に対して傾倒され、折曲片部71は、凸端部71fがディスクトレイ40の導入側当接部61の溝部63内に収容されて、各翼部分71g、71gが溝部63の高さ方向(z方向)に相対する側壁部63u,63d又はその辺縁部にそれぞれ当接している形態が、常態になる。
【0076】
この結果、所定の導入位置での板バネ部材70の常態において、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部に上下方向(z方向)の反り変形が生じようとすると、第1の実施例の場合と同様に、ディスクトレイ40の導入側当接部61に形成された溝部63の側壁部63u,63dにそれぞれ当接している折曲片部71の各翼部分71g、71gから、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部に上下方向(z方向)の反り変形を抑制する抑制力が作用することになる。
【0077】
そして、ディスクトレイ40、又はディスクトレイ40の搭載部品がその特定の固有振動モードで励振された際にも、導入側当接部61に形成された溝部63の側壁部63u,63dにそれぞれ当接している折曲片部71の各翼部分71g、71gが、特定の固有振動モードで上下方向(z方向)に振動変位しようとする導入側当接部61に、変位方向と逆向きの弾性的な押圧力を作用させるので、ディスクトレイ40の幅方向中央部を上下方向に振動変位させる共振現象を抑制することができる。
【0078】
加えて、ロック機構のロック解除が行われ、ディスクトレイ押出機構44によりディスクトレイ40を筐体10の外部に導出する際は、導入・導出方向(x方向)に係り、導入側当接部61の当接によって傾倒させられた板バネ部材70の折曲片部71の復元力が、凸端部71fを導入側当接部61の溝部63内から退避させるとともに、折曲片部71の各翼部分71g、71gが導入側当接部61を介してディスクトレイ40の導出方向へ押動させることになる。これにより、ディスクトレイ40を導出する際は、反り変形抑制機構60がその妨げとなるような引っかかりや摩擦を生じさせることがないので、ディスクトレイ40を円滑に筐体10の外部に導出することができる。
【0079】
図7は、反り変形抑制機構の第4の実施例の構成図で、光ディスク駆動装置の前後方向(x方向)の後方側部分を図1におけるB−B矢視方向に眺めた概略断面である。図7(a)は、ディスクトレイ40が筐体10の開口部13から外部に導出された状態、図7(b)は、ディスクトレイ40が筐体10内の所定の導入位置まで導入されている状態をそれぞれ示す。
【0080】
本実施例の反り変形抑制機構60では、図6に示した第3の実施例において、ボトムケース11の底面の所定位置に固定する構成とした板バネ部材70を、ボトムケース11の導入・導出方向(x方向)の後方寄りの、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部に該当する底面を、導入・導出方向(x方向)に沿って内方に導入方向に切り起こして、折曲片部71をその切り起こし辺部に折り曲げ加工を施して形成し、支持片部72をボトムケース11で兼ね、ボトムケース11と一体的に構成したものである。
【0081】
この場合、板バネ部材70を別部材で形成する場合と比較して部品点数が削減され、組み立て工数の減少等によるコスト低減が可能となる。
【0082】
図8は、反り変形抑制機構の第5の実施例の構成図で、光ディスク駆動装置の前後方向(x方向)の後方側部分を図1におけるB−B矢視方向に眺めた概略断面である。図8(a)は、ディスクトレイ40が筐体10の開口部13から外部に導出された状態、図8(b)は、ディスクトレイ40が筐体10内の所定の導入位置まで導入されている状態をそれぞれ示す。
【0083】
本実施例の反り変形抑制機構60では、図5に示した第2の実施例の場合とは反対に、ディスクトレイ40に設けられた導入側当接部61が弾性部材65によって形成され、ボトムケース11に設けられた奥部当接部62が突起部64によって形成された構成になっている。導入側当接部61は、ディスクトレイ40の導入側端部(後方側端部)40rの、幅方向(y方向)の中央部に、弾性部材65を固設して構成されている。突起部64は、ディスクトレイ40の導入側当接部61に対向するように高さ方向(z方向) の高さ位置や幅方向(y方向)の位置に合わせて、図示の例では、ボトムケース11の奥部内壁部11rに突出形成されている。この突起部64の加工は、ボトムケース11の成型加工時、その奥部の成型加工と一緒に形成することも可能である。
【0084】
奥部当接部62の突起部64は、導入されてきたディスクトレイ40の導入側当接部61の弾性部材65との当接によってその弾性面65oを押圧する。弾性部材65は、突起部64によって押圧されることにより、その押圧された部分及びその周辺部が突起部64の周囲に図8(b)に示すように膨出し、所定の導入位置での奥部当接部62の常態において、弾性部材65が突起部64の外周部を取り囲むように変形し、突起部64の高さ方向(z方向)に相対する外周部64u,64dのいずれにも当接するようになる。
【0085】
この結果、所定の導入位置での奥部当接部62の常態において、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部に上下方向(z方向)の反り変形が生じようとすると、第1の実施例の場合と同様に、突起部64の外周部64u,64dにそれぞれ当接している弾性部材65の当接部分には、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部が上下方向(z方向)の反り変形するのを抑制する抑制力(常態への復元力)が生じることになる。
【0086】
同様に、ディスクトレイ40、又はディスクトレイ40の搭載部品がその特定の固有振動モードで励振された際にも、突起部64の外周部64u,64dにそれぞれ当接している弾性部材65の当接部分には、ディスクトレイ40の幅方向(y方向)の中央部が上下方向(z方向)に振動するのを抑制する抑制力(常態への復元力)が生じ、ディスクトレイ40の幅方向中央部を上下方向に振動変位させる共振現象を抑制することができる。
【0087】
なお、本実施例では、ボトムケース11の奥部内壁部11rに突起部64を突出形成したが、突起部64に代えて溝部等の凹部を形成しても、同様な作用・効果を達成することができる。
【0088】
このように、共振現象によるディスクトレイ40の反り変形モードを抑制する反り変形抑制機構60の具体的な構成は、ディスクトレイ40が所定の導入位置に導入された常態で、ディスクトレイ40の導入・導出方向(x方向)の導入側端部(後方側端部)40rの、幅方向(y方向)の中央部を、上下方向(z方向)それぞれから弾性的に支持するものであれば、上述した実施例に限られるものではない。また、反り変形抑制機構60は、例えば、突起部64と溝部(凹部)63とを同一面に交互に形成する等、複数種類の反り変形抑制機構60を組み合わせて構成したものでもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 光ディスク駆動装置、 10 筐体、 11 ボトムケース、
12 トップケース、 13 開口部、 20 回路基板、 30 ガイド機構、
31 ガイドレール、 32 ラックスライド、 33 ガタ振動防止部、
34 押え付け爪部、 35 押え付け爪部、 36 ストッパ突起、
40 ディスクトレイ、 41 光ディスク装着部、 42 開口部、
43 フロントベゼル、 44 ディスクトレイ押出機構、 50 ユニットメカ、
51 ユニットカバー、 52 切欠部、 55 スピンドルモータ、
56 光ピックアップ、 60 反り変形抑制機構、 61 導入側当接部、
62 奥部当接部、 63 溝部、 64 突起部、 65,66 弾性部材、
70 板バネ部材、 71 折曲片部、 71f 凸端部、 71g 翼部、
72 支持片部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップケースとボトムケースとによって形成された筐体と、
ディスク搭載面を有するディスクトレイと、
ディスク搭載面に沿った前記ディスクトレイの幅方向の両側をそれぞれ支持しながら、前記筐体内の所定の導入位置に対する前記ディスクトレイの導入・導出を案内する一対のガイド機構部と
を備え、前記筐体内の所定の導入位置に導入された前記ディスクトレイのディスク搭載面に搭載されたディスクの記録情報を再生し、又は当該ディスクに情報を記録するディスク駆動装置であって、
前記ディスクトレイの導入・導出方向に係る前記ディスクトレイの導入側端部に、前記ディスクトレイの幅方向に係る前記一対のガイド機構部間の中央部に位置して設けられ、前記ディスクトレイの導入・導出方向及び幅方向それぞれに垂直な前記ディスクトレイの上下方向それぞれに向く面部分を含む凹部又は凸部が導入方向に向けて形成されている導入側当接部と、
前記筐体内の所定の導入位置に導入されてくる前記ディスクトレイの前記導入側当接部と対向するように前記装置筺体内の導入方向端部側に設けられ、弾性部材で形成された奥部当接部と
を備え、
前記ディスクトレイが前記筐体内の所定の導入位置に導入された状態の常態では、前記奥部当接部の前記弾性部材に前記導入側当接部の前記凹部又は凸部が当接し、前記導入側当接部の凹部又は凸部の前記ディスクトレイの上下方向それぞれに向く面部分には前記弾性部材が当接させられている
ことを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載のディスク駆動装置において、
前記弾性部材は、折曲片部を含む板バネ部材によって構成され、該板バネ部材は、前記ボトムケースの一部を切り起こして形成されている
ことを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項3】
請求項1記載のディスク駆動装置において、
前記弾性部材は、弾性変形性を有し、かつ制振性を兼ね備えた弾性体よって構成されている
ことを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項4】
請求項1記載のディスク駆動装置において、
前記凹部又は凸部は、前記導入側当接部の導入側に向いた面に形成された溝部又は突起部によって形成されている
ことを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項5】
トップケースとボトムケースとによって形成された筐体と、
ディスク搭載面を有するディスクトレイと、
ディスク搭載面に沿った前記ディスクトレイの幅方向の両側をそれぞれ支持しながら、前記筐体内の所定の導入位置に対する前記ディスクトレイの導入・導出を案内する一対のガイド機構部と
を備え、前記筐体内の所定の導入位置に導入された前記ディスクトレイのディスク搭載面に搭載されたディスクの記録情報を再生し、又は当該ディスクに情報を記録するディスク駆動装置であって、
前記ディスクトレイの導入・導出方向に係る前記ディスクトレイの導入側端部に、前記ディスクトレイの幅方向に係る前記一対のガイド機構部間の中央部に位置して設けられ、弾性部材で形成された導入側当接部と、
前記筐体内の所定の導入位置に導入されてくる前記ディスクトレイの前記導入側当接部と対向するように前記装置筺体内の導入方向端部側に設けられ、前記ディスクトレイの導入・導出方向及び幅方向それぞれに垂直な前記ディスクトレイの上下方向それぞれに向く面部分を含む凹部又は凸部が導出方向に向けて形成されている奥部当接部と
を備え、
前記ディスクトレイが前記筐体内の所定の導入位置に導入された状態の常態では、前記導入側当接部の前記弾性部材に前記奥部当接部の前記凹部又は凸部が当接し、前記導入側当接部の前記弾性部材には前記奥部当接部の凹部又は凸部の前記ディスクトレイの上下方向それぞれに向く面部分が当接している
ことを特徴とするディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−114710(P2013−114710A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259138(P2011−259138)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】