説明

ディスプレイ用に適したガスバリア性高分子積層フィルム

【課題】 本発明の目的は、水蒸気及び酸素のガスバリア性に優れた新規なガスバリア性高分子積層フィルムを提供することにある。
【解決手段】 例えば、ポリエステル系高分子フィルムの両面上に、特定の硬化樹脂層と金属酸化物層とを接して使用しなおかつかかる硬化樹脂層の特定の4つの結合に由来する吸光度が特定の範囲であるガスバリア性高分子積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温高湿下において優れたガスバリア性を有する高分子積層フィルムに関する。この積層フィルムは、例えば液晶表示素子、光導電性感光体、面発光体、無機ならびに有機EL素子、電気泳動、フィールドエミッション素子、プラズマ素子、面発熱体などのフラットパネルディスプレイ用の基板として好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子等のフラットパネルディスプレイ分野において、耐破損性の向上、軽量化、薄型化の要望から、透明高分子からなるフィルム上に、酸化インジウム、酸化錫、或いは錫−インジウム合金の酸化物等の半導体膜、金、銀、パラジウム合金の酸化膜等の金属膜、該半導体膜と該金属膜とを組み合わせて形成された膜を透明導電層として設けたガスバリア性高分子積層体を液晶表示素子の電極基板として用いる検討が続けられている。かかる電極基板には、パネルの組立工程における、電極のパターニングや配向膜の積層時及び各種洗浄時において使用される各種有機溶媒、酸、アルカリに対する高い耐薬品性が要求されている。また通常、パネルの液晶セル内部に発生する気泡に対する信頼性を向上させるために高いガスバリア性が要求されている。このガスバリア性については、例えば下記特許文献1に、透明高分子基板にビニルアルコール系ポリマーや塩化ビニリデン系ポリマーなどの有機ガスバリア層、及び酸化珪素や酸化アルミニウムなどの無機ガスバリア層が積層された基板が記載されている。また、下記特許文献2に両面に有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物から得られるシロキサン樹脂を主成分とするハードコート被膜を有するプラスチック基板の片面の少なくともその一部に、導電性を有する被膜を設け、さらに該基板の反対面に金属酸化物被膜を設けたことを特徴とする導電性を有するプラスチック成形体が記載されている。しかし、これら有機または無機のガスバリア層を1層で用いたり、それらを複数積層したり、さらには有機及び無機のガスバリア層を組み合わせて用いた場合でも、従来用いられているガラス基板と同等のガスバリア性、特に水蒸気バリア性を達成することは困難である。実際このような基板を使用したパネルを高温高湿環境下に長時間放置すると、液晶セル内部に水蒸気が入り込み、液晶セルの対向する2枚の電極間及び基板の面内における隣り合う2つの電極間のインピーダンスが低下し、画像にじみやクロストークといったパネルの表示欠陥が発生しやすくなるという問題があった。
【0003】
【特許文献1】WO94/23332号公報
【特許文献2】特許第2790144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、水蒸気及び酸素のガスバリア性に優れた新規なガスバリア性高分子積層フィルムを提供することにある。
また本発明の他の目的は、高温高湿環境下に長時間放置しても表示品位の劣化が生じにくい液晶表示素子等のフラットパネルディスプレイ用の基板として好適な信頼性の高いガスバリア性高分子積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、かかる問題点はポリエステル系樹脂を主成分とする透明高分子フィルムの両面上に、特定の硬化樹脂層と接して金属酸化物層を形成することにより解決できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、ポリエステル系高分子フィルム(S)の両面に、少なくとも一層の金属酸化物層または金属窒化物層(X)が硬化樹脂層(U)と接して配置され、(U)が親水性高分子とポリシロキサンを主成分とする硬化樹脂層であることを特徴とするガスバリア性高分子フィルムによって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のガスバリア性高分子積層フィルムは、ポリエステル系高分子を用い、かつ特定の硬化樹脂層と金属酸化物層あるいは金属窒化物層に接して使用しなおかつかかる硬化樹脂層の特定の4つの結合に由来する吸光度が特定の範囲とすることにより、極めてガスバリア性に優れ、透明性、光学等方性、耐薬品性、層間密着性が良好で、しかも高温高湿環境下に長時間放置しても表示品位の劣化が生じにくい液晶表示素子、有機EL素子、電気泳動素子として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[ポリエステル系高分子フィルム(S)]
ポリエステル系高分子フィルム(S)を構成する材料としては、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、好ましいポリエステルとしては、例えば、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要な繰り返し単位とするものを用いることができる。これら構成成分は1種のみ用いても、2種以上併用してもよいが、中でも品質、経済性などを総合的に判断するとエチレンテレフタレートを主要構成成分(好ましくは80モル%以上、より好ましくは100モル%)とするポリエチレンテレフタレートを用いることが特に好ましい。また、高分子フィルムに熱が作用する用途においては、耐熱性や剛性に優れたポリエチレン−2,6−ナフタレートが更に好ましい。
【0009】
また、これらポリエステルには、更に他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは全繰り返し単位の20モル%以下共重合されていてもよい。
【0010】
更に、このポリエステル中には、各種添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、帯電防止剤などを、フィルムの特性を劣化させない程度に添加してもよい。ただし、微粒子を添加する場合はヘイズ値が高くなる傾向があるため特性を悪化させる場合が多く、添加する微粒子は粒径が小さく、好ましくは可視光波長の約1/4以下の粒径で光散乱が生じにくいものが好ましい。また、該ポリエステフィルムは二軸配向されたものがディスプレイ用の基板として使用する場合に機械的強度に優れることから好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、一般に、未延伸状態のポリエステルシートまたはフィルムを長手方向および幅方向に各々2〜6倍程度延伸された後に加熱処理されて結晶配向させたものである。さらに、二軸配向ポリエステルフィルムを用いる場合、フィルムを150℃で30分加熱した後のフィルム寸法の収縮率がフィルムの長手方向ならびにこれと垂直な方向のいずれも0.1%未満になるように、アニール処理等により調整されているものがいっそう好ましい。このようなフィルムは、ディスプレイの製造工程において高温処理されるプロセスにおいてフィルム基板の変形がすくないので高精細なパネルを製造しやすくなる。
【0011】
さらに、ポリエステル系高分子フィルムの少なくとも片面には接着性を改良するための各種アンカーコート層が積層されていてもよい。このようなアンカーコート層としては、これまでに多数提案されており、例えばポリエステルに代表される比較的極性の高いフィルムに対しては、水溶性あるいは水分分散性のポリエステル系樹脂あるいはアクリル系樹脂などが挙げられる。また、グラフト変性を中心とした種々の変性ポリエステルや、さらには各種架橋剤を変性ポリエステルやアクリル系樹脂と併用したり、必要に応じてポリ酢酸ビニルのケン化物に代表されるような親水性弘文氏を添加したものなどが好ましい。また、このアンカーコート層には必要に応じて各種微粒子を添加してポリエステル系高分子フィルムに滑り性を付与してもよい。
【0012】
本発明におけるポリエステル系高分子フィルム(S)の厚さとしては、通常10〜1000μmである。
【0013】
[金属酸化物層(X)]
本発明のガスバリア性高分子積層フィルムには優れたガスバリア性を付与するために金属酸化物層を少なくとも一層有することが重要である。金属酸化物層としては、例えば珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウム、チタン、イットリウム、タンタルからなる群から選ばれる1種または2種以上の金属を主成分とする金属酸化物、珪素、アルミニウム、ホウ素の金属窒化物または酸窒化物、及びこれらの混合物からなるものを挙げることができる。この中でも、ガスバリア性のみならず、透明性、屈曲性、膜応力等の点から珪素酸化物を主成分とする金属酸化物が良好である。これら無機材料からなる金属酸化物は例えばスパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の気相中より材料を堆積させて膜形成する気相堆積法により作製することができる。なかでも、特に優れたガスバリア性が得られるという観点からスパッタリング法が好ましい。
【0014】
上記金属酸化物層の膜厚としては、2nm〜1μmの範囲が好ましい。金属酸化物層の厚みが2nm未満では均一に膜を形成することは困難であり、膜が形成されない部分が発生するため気体透過度が大きくなる。一方、1μmよりも厚くなると透明性を欠くだけでなく、ガスバリア性高分子積層フィルムを屈曲させた際に、ガスバリア層にクラックが発生して気体透過度が上昇する。
【0015】
[硬化樹脂層(U)]
さらに、液晶表示素子等に求められる極めて高度のガスバリア性を達成するために、金属酸化物層(X)を特定の硬化樹脂層(U)と接して配置させる。ここで硬化樹脂層(U)とは親水性高分子とポリシロキサンを主成分とする硬化樹脂層である。ここで、親水性高分子としては、例えばポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系高分子、ポリ酢酸ビニルの完全または部分ケン化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、親水性ウレタン系高分子等が挙げられる。
【0016】
また、ポリシロキサンは、アルコキシシランの(部分)加水分解物、その部分縮合物またはこれらの混合物から得られる、アルコキシシランを原料としてゾルゲル反応させることにより得られるものが好ましい。このようなアルコキシシランとしては、一般式(R−Si(OR4−nで示されるテトラ、トリ又はジアルコキシシランであることが好ましい。ここで、式中Rは炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、又はメタクリロキシ基、メルカプト基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基の群から選ばれる1以上の基を有する有機基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、nは0〜2の整数である。かかる有機基とは、環式構造を含むことができる炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基であり、該炭化水素基はその炭素原子の一部が酸素原子又は窒素原子等のヘテロ原子に置換されていても良い。
【0017】
かかるアルコキシシランとして、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロピロキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリプロポキシシラン、グリシドキシメチルトリブトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、2−グリシドキシエチルトリブトキシシラン、N−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、N−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、N−グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、N−グリシドキシエチルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、N−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、N−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリプロポキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリブトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリプロポキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリブトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリプロポキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリブトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリプロポキシシラン、2−アミノエチルトリブトキシシラン、N−アミノエチルトリメトキシシラン、N−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリブトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリプロポキシシラン、2−アミノプロピルトリブトキシシラン、N−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−アミノプロピルトリブトキシシラン、N−アミノメチルアミノエチルトリメトキシシラン、N−アミノメチルアミノメチルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−N−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−N−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−N−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルルトリプロポキシシラン、N−(3−アミノエチル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(3−アミノエチル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(3−アミノエチル)−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジエチレントリアミンプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上を併せて用いることができる。該アルコキシシランの使用に際しては、そのまま成分として添加することもできるし、あらかじめ加水分解を行った後、該アルコキシシランの(部分)加水分解物及びその部分縮合物を添加して使用することも可能である。
【0018】
また加水分解に際しては通常の方法、例えば塩酸等の無機酸、酢酸等の有機酸またはカセイソーダのようなアルカリによってあるいは水のみを用いて加水分解する方法を利用することができる。また、加水分解を均一に行う目的でアルコキシシランと該アルコキシシラン可溶性溶剤を混合した後、加水分解を行うことも可能である。目的に応じて、加水分解に際しては冷却または加熱することも可能である。また、加水分解後、反応で生成したアルコール等を加熱及び/または減圧下に適当量除去して使用することも可能であるし、その後に適当な溶媒を添加することも可能である。
【0019】
また、必要に応じて硬化触媒を添加することも可能である。硬化触媒としては例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセテートビスアセチルアセトナート、アルミニウムビスアセトアセテートアセチルアセトナート、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−i−プロポキシドモノメチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート化合物、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸カリウム等のカルボン酸のアルカリ金属塩、ジメチルアミンアセテート、エタノールアセトエート、ジメチルアニリンホルメート等のアミンカルボキシレート、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、酢酸ベンジルトリメチルアンモニウムのような第四級アンモニウム塩、オクタン酸スズのような金属カルボン酸塩、及びトリエチルアミン、トリエタノールアミン、ピリジンのようなアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンが用いられる。これらの化合物は単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0020】
硬化樹脂層(U)は上記の親水性高分子とポリシロキサンが均一に溶解したコーティング液を基材のフィルムに塗布し加熱硬化させることにより得られる。ここで、コーティング液に使われる溶剤は、親水性高分子ならびにポリシロキサンを溶解させるもので、たとえばポリビニルアルコール系高分子を用いる場合、水、ミメチルイミダゾリン等が好ましい溶剤として挙げられる。また、親水性高分子としてエチレン−ビニルアルコール共重合体を用いる場合は、この可溶性溶剤としては、水/プロパノールの混合溶媒が挙げられる。水とプロパノールの混合比率は重量比で水/プロパノール=3/7〜7/3が好ましい。また、併用可能な溶媒として、親水性高分子およびポリシロキサンが均一に溶解可能であれば使用でき、アルコール系、セロソルブ系、ケトン系、アミド系等が挙げられる。これらの併用可能な溶媒の中で、特にブタノール等のアルコール系、1−メトキシ−2−プロパノール等のセロソルブ系、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒は、硬化樹脂層(U)の平滑性を良好にするために好適に用いられる。これら併用可能な溶媒は、1種のみならず、2種以上混合して用いることも可能である。
【0021】
親水性高分子とポリシロキサンの成分比は、前者を(a)に後者を(b)とした場合、重量比(a)/(b)が9/1〜1/2の範囲で用いる。(a)/(b)が9/1以上では耐水性、耐薬品性に劣る傾向となり、逆に1/2未満ではコーティング用組成物の保存安定性が悪化する傾向となる。(a)/(b)の、より好ましい範囲は4/1〜2/3である。
【0022】
特に好ましい硬化樹脂層(U)は、エポキシ基含有珪素化合物およびアミノ基含有珪素化合物、さらにはビニルアルコール系ポリマーを含むコーティング組成物を用いて得ることができる。
【0023】
ここで、エポキシ基含有珪素化合物はエポキシ基及びアルコキシシリル基を有する珪素化合物、その(部分)加水分解物、その(部分)縮合物、及びこれらの混合物からなる群から選ばれ、例えば下記式(4)で表される。
X−R11−Si(R12n(OR133−n (4)
ここで、R11は炭素数1〜4のアルキレン基、R12及びR13は炭素数1〜4のアルキル基、Xはグリシドキシ基またはエポキシシクロヘキシル基であり、nは0または1である。
【0024】
特に好ましいエポキシ基含有珪素化合物としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランである。これらの化合物は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
アミノ基含有珪素化合物はアミノ基及びアルコキシシリル基を有する珪素化合物、その(部分)加水分解物、その(部分)縮合物、及びこれらの混合物からなる群から選ばれ、例えば下記式(5)で表される。
Y−HN−R14−Si(R15(OR163−m (5)
【0026】
ここで、R14は炭素数1〜4のアルキレン基、R15及びR16は炭素数1〜4のアルキル基、Yは水素原子またはアミノアルキル基であり、mは0または1である。この中で特に好ましいアミノ基含有珪素化合物は3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランである。これらの化合物は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
なお、本発明におけるエポキシ基含有珪素化合物ならびにアミノ基含有珪素化合物の(部分)加水分解物及びその(部分)縮合物は、上述のエポキシ基含有珪素化合物ならびにアミノ基含有珪素化合物の一部または全部が加水分解したもの、該加水分解物の一部又は全部が縮合反応した縮合物、及び該縮合物と加水分解していない原料のエポキシ基含有珪素化合物ならびにアミノ基含有珪素化合物とが縮合したものであり、これらはいわゆるゾルゲル反応させることにより得られるものである。ここで加水分解物は、例えば塩酸等の無機酸、酢酸等の有機酸などの酸性水溶液または水と混合することにより得られる。また、コーティング液は、保存安定性ならびに塗工安定性を考慮して、アルコール系、エステル系、エーテル系、ケトン系、セロソルブ系等の各種有機溶媒で希釈されていることが好ましい。
【0028】
さらに、ここで用いるビニルアルコール系ポリマーとは、ビニルアルコールをモノマー成分として50モル%以上含有するビニルアルコール共重合体、またはビニルアルコールのホモポリマーをいう。このビニルアルコール共重合体としては、例えばビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ビニルアルコールビニルブチラール共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、あるいは分子内にシリル基を有するポリビニルアルコールが挙げられる。なかでも、エチレン−ビニルアルコール共重合体を用いると、耐薬品性、耐水性、耐久性にいっそう優れた硬化樹脂層(U)が得られる。
【0029】
該ビニルアルコール系ポリマーは、水、アルコール、ジメチルイミダゾリン等の有機溶媒に溶解してコーティング組成物の成分とする。例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体は、水とプロパノールを主成分とする混合溶媒に溶解してコーティング組成物の成分として用いるのがよい。
【0030】
エポキシ基含有珪素化合物とアミノ基含有珪素化合物の混合比率は、エポキシ基モル当量換算量Ep、アミノ基モル当量換算量Apの比率で1/3<Ep/Ap<3/1の範囲内が好ましい。混合比がこの範囲から外れる場合、密着性、耐熱性、耐溶剤性、耐水性、耐久性が低下する。この様なエポキシ基含有珪素化合物とアミノ基含有珪素化合物の混合物をポリビニルアルコール系ポリマーに混合するに際し、硬化後の重量比率で20重量%以上、80重量%未満となるように混合する。20重量部よりも少ない場合は、耐水性、耐薬品性に劣る傾向となり、80重量%以上ではガスバリア性が低下する傾向となる。ここで、エポキシ基含有珪素化合物とアミノ基含有珪素化合物との混合物の硬化後の重量は、X−R11−Si(R12(3−n)/2とY−HN−R14−Si(R15m(3−m)/2で示される重量基準である。ここでこの重量換算式は、各珪素化合物中のアルコキシシリル基の全てが加水分解ならびに縮合反応したことを仮定して上記のように定義した。
【0031】
上記コーティング組成物中には、ビニルアルコール系ポリマー、エポキシ基含有珪素化合物、アミノ基含有珪素化合物の他に、有機溶媒、酢酸等の触媒、安定剤、レベリング剤を含有することができる。該組成物中の酢酸の濃度としては、コーティング組成物中のアミノ基のモル濃度に対して0.2〜5モル当量倍の範囲で添加するのが好ましい。また、作業性を考慮して、また得られる硬化樹脂層の膜厚を勘案して有機溶媒、安定剤、レベリング剤の量を調整すればよい。
【0032】
この組成物を高分子フィルム(S)等の基材上に塗布し、ついでこれを加熱等によって硬化反応させることにより硬化樹脂層(U)を得ることができる。加熱温度は通常室温以上高分子フィルム(S)のガラス転移点温度以下で行う。この加熱によって、エポキシ基含有珪素化合物とアミノ基含有珪素化合物のいわゆるゾルゲル反応が進行し硬化膜が硬化樹脂層(U)として得られる。
【0033】
該硬化樹脂層(U)の膜厚は、概して0.01〜20μmの範囲から適宜選択することができる。
かかる硬化樹脂層(U)は、赤外線吸収スペクトルにおいて、3500cm−1付近にピークを有するO−H伸縮振動に基づく吸収の吸光度(a)と、3000cm−1付近にピークを有するC−H伸縮振動に基づく吸収の吸光度(b)と、1600cm−1付近にピークを有する−NH2面内変角振動に基づく吸収の吸光度(c)と、1100cm−1付近にピークを有するSi−Oに由来する吸光度(d)が下記式(1)、(2)及び(3)を満たす。
0.1<(a)/(b)<2.0 (1)
0.05<(c)/(b)<2.0 (2)
0.1<(d)/(b)<2.0 (3)
【0034】
なお、C−H伸縮振動に由来する吸光度(b)は、同じ結合の伸縮振動が隣接したときは、対称と非対称の二つの吸収が認められるが、吸光度が最も大きいC−H伸縮振動を(b)とする。硬化樹脂層(U)が上記式(1)〜(3)を同時に満たすことにより、優れたガスバリア性の他、硬化樹脂層層(U)は金属酸化物層との密着性に優れて、液晶表示パネル製造工程で必要とされる酸、アルカリ、NMP等の薬品に対する耐性が良好であり、可視光線透過率が高く、さらには表面平滑性に極めて優れる。上記式(1)、(2)及び(3)を満たさない場合は、これらの良好な特性は同時には得ることは難しい。
【0035】
本発明のディスプレイ用に適したガスバリア性積層フィルムは、その用途に応じてかかる積層フィルムの最外層に透明導電層を形成し、例えば電極とすることができる。透明導電層としては、公知の金属膜、金属酸化物膜等が適用できるが、中でも、透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましい。例えば、不純物としてスズ、テルル、カドミウム、モリブテン、タングステン、フッ素、亜鉛、ゲルマニウム等を添加した酸化インジウム、酸化カドミウム及び酸化スズ、不純物としてアルミニウムを添加した酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物膜が挙げられる。なかでも、インジウム酸化物を主成分とし、酸化錫及び酸化亜鉛からなる群から選ばれた1種以上の酸化物を含むことを特徴とし、酸化錫が2〜20重量%及び/または酸化亜鉛が2〜20重量%含有するインジウム酸化物からなる透明導電層が透明性、導電性が優れており好ましく用いられる。また、本発明のフィルムを有機ELに用いる場合、透明導電層の仕事関数を制御して発光効率を向上させる目的で、インジウム酸化物を主成分とし、酸化錫及び酸化亜鉛からなる群から選ばれた1種以上の酸化物を含む膜に、さらに錫、亜鉛以外の元素を添加してもよい。
【0036】
透明導電層を形成する方法は、主にスパッタリング法が使用され、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法などが適用できる。透明導電層の膜厚は、十分な導電性を得るために、10〜1000nmであることが好ましい。本発明のディスプレイ用透明高分子積層フィルムは、可視光領域に対する全光線透過率が80%以上であることが好ましく、さらには85%以上が好ましい。80%未満では、視認性の低下を招く等の問題が生じることがある。
【0037】
本発明のガスバリア性高分子積層フィルムは、ポリエステル系高分子フィルム(S)、金属酸化物層(X)、硬化樹脂層(U)を用いた場合、例えば
(X)/(U)/(S)/(U)/(X)、
(X)/(U)/(S)/(U)/(X)/(U)、
(U)/(X)/(U)/(S)/(U)/(X)/(U)、
(X)/(U)/(X)/(U)/(S)/(U)/(X)、
(X)/(U)/(X)/(U)/(S)/(U)/(X)/(U)、
(U)/(X)/(S)/(X)/(U)、
(U)/(X)/(S)/(X)/(U)/(X)、
の順で積層されたガスバリア性高分子積層フィルムが好ましい。さらに、透明導電層を(E)としたとき、特に、
(E)/(X)/(U)/(S)/(U)/(X)、
(E)/(X)/(U)/(S)/(U)/(X)/(U)、
(E)/(X)/(U)/(X)/(S)/(X)/(U)、
(E)/(X)/(U)/(X)/(U)/(S)/(U)/(X)、
(E)/(X)/(U)/(X)/(U)/(S)/(U)/(X)/(U)
の構成のガスバリア性高分子積層フィルムを用いて作製した液晶表示素子や有機EL素子、また電気泳動素子は、高温高湿環境下に長時間放置しても表示劣化が生じ難い。そして、各表示素子の組立工程において、電極のパターニングや配向膜などの積層、また各種洗浄工程において各種有機溶媒ならびに酸、アルカリに対する耐薬品性が良好で、良好な層間密着性が得られるので好ましい。
【0038】
なお、本発明の効果を低下させない範囲内で、金属酸化物層(X)と硬化樹脂層(U)以外の各層間の密着性を強化するための各種アンダーコート層の積層等の化学処理、あるいはコロナ処理、プラズマ処理、UV照射等の物理的処理法をおこなってもよい。
【0039】
更に、本発明のガスバリア性高分子積層フィルムには、例えばこれを用いて作成した液晶表示素子にカラー表示機能を付与する目的で、カラーフィルター層を設けてもよい。カラーフィルターは、染色法、顔料分散法、電着法、印刷法等の公知の技術で形成できる。該カラーフィルター層は、ガスバリア性高分子積層フィルムの金属酸化物層(X)と硬化樹脂層(U)の層間以外の層間に形成してもよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、部および%は、特に断らない限り重量基準である。また、実施例中における各種の測定は、下記のとおり行った。
【0041】
水蒸気バリア性:MOCON社製、パーマトランW1Aを用いて、40℃90%RH雰囲気下における水蒸気透過度を測定した。
【0042】
酸素バリア性:MOCON社製オキシトラン2/20MLを用いて、40℃90%RHの雰囲気下における酸素透過度を測定した。
【0043】
IRスペクトル:ガスバリア性高分子積層フィルムの硬化樹脂層を削り取り、吸着水を除去する目的で60℃DRYの条件で1時間乾燥させた後、KBr法にて赤外線吸収スペクトルを測定した。なお、測定サンプルはKBrを100重量部に対して試料を0.3重量部の割合で混合した。測定装置はパーキンエルマー製のFT−IRを用いた。3500cm−1付近にピークを有する0−H伸縮振動に帰属される吸収の吸光度(a)と、3000cm−1付近にピークを有するC−H伸縮振動に帰属される吸収の吸光度(b)と、1600cm−1付近にピークを有する−NH2面内変角振動に帰属される吸収の吸光度(c)と、1100cm−1付近にピークを有するSi−Oに由来する吸収の吸光度(d)を測定した。
【0044】
層間密着性:ASTM D2196−68に準拠した方法により、ガスバリア性高分子積層フィルムを構成する各々の層間の密着性を評価した。
【0045】
液晶パネル信頼性:透明導電層が積層されたガスバリア性高分子積層フィルムを用いてフォトリソグラフィー法により160×100ドット用の表示電極を形成した。ついで、該電極面に厚さ1000Åの配向膜を形成し、ツイスト各が220°となるようにラビング処理を施した。次いで粒径6.5μmのプラスチックビーズをギャップ剤として電極面のうち面に分散密度150個/mm2となるように分散し、エポキシ接着剤により電極面を内側にして2枚のガスバリア性高分子基板を貼り合せてセルを作製した。次いで、このセルにカイラルネマチック液晶を含有するネマチック液晶を注入口より注入した後、加圧法によりセルギャップを均一化し、注入口を封入した。次にセルの両側に偏光板を貼り液晶パネルを得た。こうして得られた液晶パネルを50℃90%RH環境下に250hr放置し、液晶セルのインピーダンス低下率が初期の2割以内を合格とした。
【0046】
有機EL素子の信頼性:透明導電層が積層されたガスバリア性高分子積層フィルムを用いてフォトリソグラフィー法により、表示電極を形成した。次に透明電極上に真空蒸着法により、正孔輸送層としてトリフェニルアミン誘導体であるTPD(N,N’−ビス(3−メチルフェニル)1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン)を50nm積層し、次に発光層としてAlq3(トリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム)を50nmの厚さに蒸着させた。さらにマグネシウムと銀をこの上に200nmの厚さに蒸着させ金属電極とし有機EL層を形成した。続いて、透明導電層が形成する前の、上記のEL層を形成したディスプレイ用フィルムと同じフィルムを用い、透明導電層を形成する側の面上に紫外線硬化型のシール剤を塗布した後、有機EL層を形成した前述のフィルムの有機EL面を内側にして両基板を貼り合わせ、紫外線照射により有機EL層を封止した。本有機EL素子に電流を加えてEL発光の安定性を確認した。
【0047】
なお、後掲の化合物名は以下の略号を用いた。
ITO:インジウム−スズ酸化物
ECHETMOS:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランAPTMOS:3−アミノプロピルトリメトキシシラン
EVOH:エチレンビニルアルコール共重合体(クラレ製「エバール」)
【0048】
[実施例1]
先ず、硬化樹脂層(U)を形成するコーティング組成物は以下のように調整した。
EVOH100部を、水720部、n−プロパノール1080部の混合溶媒に加熱溶解させ、均一溶液を得た。この溶液にレベリング剤(東レダウコーニング社製「SH30PA」を0.1部、酢酸を39部加えた後、ECHETMOSを211部加え10分間撹拌した。更にこの溶液にAPTMOSを77部加えて3時間撹拌してコーティング組成物を得た。
【0049】
次に、ポリエステル系高分子フィルム(S)として、帝人デュポンフィルム(株)製の厚みが125μmのポリエチレンナフタレートフィルム「テオネックス」を用い、該フィルムの両面に上記のコーティング組成物をコーティングし、130℃3分熱処理を行い、厚みが0.7μmの(U)層を形成した。さらにこのフィルムの両面にDCマグネトロンスパッタリング法により、厚さ300Åの酸化ケイ素からなる(X)層を形成した。
【0050】
このようにして得られたガスバリア性高分子基板の評価結果は表1に示すように良好であった。
続いて、このフィルムの片面の(X)層上にDCマグネトロンスパッタリング法により、厚さ1200ÅのITO積層し、この基板を用いて液晶パネルならびに有機ELパネルを作成し信頼性を評価したところ良好な結果が得られた。
【0051】
[実施例2]
基板の構成を(X)/(U)/(S)/(U)/(X)/(U)にする以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性高分子積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムの評価結果は表1に示すように良好であった。
【0052】
続いて、(X)層上にDCマグネトロンスパッタリング法により、厚さ1200ÅのITO積層し、この基板を用いて液晶パネルならびに有機ELパネルを作成し信頼性を評価したところ良好な結果が得られた。
【0053】
[実施例3]
積層フィルムの構成を(U)/(X)/(S)/(X)/(U)/(X)にする以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性高分子積層フィルムを得た。得られたガスバリア性高分子基板の評価結果は表1に示すように良好であった。
【0054】
続いて、このフィルムの片面の(X)層上にDCマグネトロンスパッタリング法により、厚さ1200ÅのITO積層し、この基板を用いて液晶パネルならびに有機ELパネルを作成し信頼性を評価したところ良好な結果が得られた。
【0055】
【表1】

【0056】
[比較例1]
(U)層を設けない以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性高分子積層フィルムを得た。得られたガスバリア性高分子積層フィルムの評価結果は表2に示すようにガスバリア性に劣るものであった。
【0057】
[比較例2]
硬化樹脂層(U)を形成するコーティング組成物を以下のように調整した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性高分子積層フィルムを得た。得られたディスプレイ用積層フィルムの評価結果は表2に示すようにガスバリア性に劣るものであった。
【0058】
水720部、n−プロパノール1080部の混合溶媒にレベリング剤(東レダウコーニング社製「SH30PA」を0.1部、酢酸を39部加えた後、ECHETMOSを211部加えて3時間撹拌してコーティング組成物を得た。
【0059】
[比較例3]
硬化樹脂層(U)を形成するコーティング組成物を以下のように調整した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性高分子基板を得た。得られたディスプレイ用積層フィルムの評価結果は表2に示すようにガスバリア性に劣るものであった。
【0060】
水720部、n−プロパノール1080部の混合溶媒にレベリング剤(東レダウコーニング社製「SH30PA」を0.1部、酢酸を39部加えた後、APTMOSを77部加えて3時間撹拌してコーティング組成物を得た。
【0061】
[比較例4]
硬化樹脂層(U)を形成するコーティング組成物を以下のように調整した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性高分子積層フィルムを得た。得られたディスプレイ用積層フィルムの評価結果は表2に示すように層間密着性に劣るものであった。
【0062】
EVOH100部を、水720部、n−プロパノール1080部の混合溶媒に加熱溶解させ、均一溶液を得た。この溶液にレベリング剤(東レダウコーニング社製「SH30PA」を0.1部加えてコーティング組成物を得た。
【0063】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系高分子フィルム(S)の両面に、少なくとも一層の金属酸化物層または金属窒化物層(X)が硬化樹脂層(U)と接して配置され、(U)が親水性高分子とポリシロキサンを主成分とする硬化樹脂層であることを特徴とするガスバリア性高分子積層フィルム。
【請求項2】
硬化樹脂層がエポキシ基含有珪素化合物及びアミノ基含有珪素化合物、さらにはビニルアルコール系ポリマーを含むコーティング組成物から得られ、かつ(U)の赤外線吸収スペクトルにおける3500cm−1付近に存在するO−H伸縮振動に帰属される吸光度(a)と、3000cm−1付近に存在するC−H伸縮振動に帰属される吸光度(b)と、1600cm−1付近に存在する−NH2面内変角振動に帰属される吸光度(c)と、1100cm−1付近に存在するSi−Oに由来する吸光度(d)が下記式(1)、(2)および(3)の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性高分子積層フィルム。
0.1≦(a)/(b)≦2.0 (1)
0.05≦(c)/(b)≦2.0 (2)
0.1≦(d)/(b)≦2.0 (3)
【請求項3】
金属酸化物層または金属窒化物層(X)が、Si、Al、Ti、Mg、ZrおよびTaから選ばれた1種の金属あるいは2種以上の金属混合物の酸化物、窒化物あるいは酸窒化物を主成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性高分子積層フィルム。
【請求項4】
ポリエステル系高分子フィルム(S)がポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムを主成分とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性高分子積層フィルム。
【請求項5】
少なくとも一方の最外面に透明導電層を積層したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性高分子積層フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性高分子積層フィルムの、液晶素子、有機EL素子、電気泳動素子、フィールドエミッション素子またはプラズマ素子用の基板としての使用。

【公開番号】特開2006−35737(P2006−35737A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221468(P2004−221468)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】