説明

ディスプレイ用フィルター

【課題】光沢感や透明感があり、かつ映り込みの防止性や異物隠蔽性に優れたディスプレイ用フィルターを低コストで提供する。
【解決手段】基材上に凹凸構造を有する導電性メッシュを有し、該導電性メッシュ上に粒子を含むハードコート層が積層されたディスプレイ用フィルターであって、前記導電性メッシュの厚み(Et)が3μm未満で、前記ハードコート層の厚み(Ht)が3μm以上であり、前記粒子の平均粒子径がハードコート層の厚み(Ht)100%に対して60%以上であり、前記粒子をハードコート層の全成分100質量%に対して3質量%〜18質量%含有し、かつ前記ハードコート層が導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造を有することを特徴とする、ディスプレイ用フィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CRT、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置の画面に装着されるディスプレイ用フィルターに関し、詳しくは、光沢感や透明感があってかつ映り込みを防止したディスプレイ用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイに要求される性能の1つとして、蛍光灯等の外光の映り込みの防止がある。従来の映り込み防止の方法として、基材上に粒子を含有する防眩層を設けることが一般的に知られている。この映り込み防止効果を高めようとすれば、ディスプレイ画像の光沢感や透明感が低下するという問題がある。
【0003】
一方、画面サイズが40インチ以上、更には50インチ以上の薄型で大画面のプラズマディスプレイや液晶ディスプレイが普及しており、これらの薄型大画面のディスプレイは、画像観賞のみではなく、室内装飾用の置物としての役割も担っている。
【0004】
このような状況において、光沢感の低下は、ディスプレイを点灯しているときの画像品質の低下だけではなく、ディスプレイを消灯しているときの画面のざらつきによって、室内装飾性を大きく損なう要因となっていた。
【0005】
従来から一般的に知られているディスプレイ用フィルターとして、プラスチックフィルム上に反射防止層や近赤外線遮蔽層が設けられた光学機能性フィルムと、導電層(電磁波遮蔽層)が設けられたプラスチックフィルム(電磁波遮蔽フィルム)とを接着層を介して積層されたものが挙げられる。
【0006】
近年、ディスプレイの低価格化に伴ってディスプレイ用フィルターも低価格化を余儀なくされている。上記したような2枚のフィルムからなるディスプレイ用フィルターに対して、プラスチックフィルムを1枚のみにすることによって低価格化が可能となる。また、更に低価格を図るためには、導電性メッシュの厚みを小さくすること(例えば導電性メッシュの厚みを3μm未満にすること)が有効である。
【0007】
上記した1枚のプラスチックフィルムからなるディスプレイ用フィルターの1つの態様として、プラスチックフィルム上に導電層を設け更にその上に、ハードコート層、反射防止層、防眩層等の機能層を積層したディスプレイ用フィルターが提案されている(特許文献1〜3)。
【0008】
上記の特許文献1〜3には、導電性メッシュ上に粒子を含有する防眩層を設けることが記載されている。
【0009】
また、導電性メッシュ上に、該導電性メッシュの凹凸形状に対応した凹凸形状を有するハードコート層を設けることによって防眩性効果(蛍光灯の映り込みの防止)を付与したディスプレイ用フィルターが提案されている(特許文献4、5)。
【特許文献1】特開2007−140282号公報
【特許文献2】特開2007−243158号公報
【特許文献3】WO2008/029709号公報
【特許文献4】特開2008−216734号公報
【特許文献5】特開2008−216770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜3に記載されている構成は、導電性メッシュ上に従来から一般的に知られている粒子を含む防眩層を積層するというものであり、単に、ギラツキや映り込みの防止を目的とした防眩層本来の効果を付与するものである。
【0011】
前述したように、粒子を含有する防眩層は、映り込み防止効果を高めようとすれば、ディスプレイ画像の光沢感や透明感が低下するという問題があり、上記の特許文献1〜3に記載された防眩層も同様な問題が生じる可能性がある。
【0012】
特許文献4、5には、導電性メッシュ上に積層されたハードコート層が、導電性メッシュの凹凸形状に対応した凹凸形状を有することが記載されている。即ち、特許文献4及び5には、導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造を有するハードコート層が記載されている。
【0013】
しかしながら、特許文献4及び5には、厚みが3μm未満の導電性メッシュ上に、厚みが3μm以上のハードコート層を形成することは記載されていない。
【0014】
厚みが3μm未満の導電性メッシュ上にハードコート層を塗工形成して、ハードコート層に映り込み防止効果や後述の異物隠蔽性効果が十分に発現するだけの凹凸形状(導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造)を形成するためには、ハードコート層の厚みは3μm未満にする必要があり、ハードコート層の厚みが3μm未満になるとハードコート性が不足するという問題がある。また、後述の異物隠蔽性は、導電性メッシュ上に積層されるハードコート層の厚みが3μmでは、その効果が十分に発現されないことがある。
【0015】
また、上記特許文献1〜5のような、導電性メッシュを基材(プラスチックフィルム)より視認側(鑑賞者側)に配置し、導電性メッシュ上にはハードコート層や反射防止層等の薄膜の機能層のみしか有しない構成のディスプレイ用フィルターは、導電性メッシュに起因すると考えられる微小異物が目立ちやすくなると言う問題があった。即ち、導電性メッシュの製造時に発生すると考えられる微小異物を見えにくくする、所謂、異物隠蔽性が重要な特性の1つである。
【0016】
そこで、本発明は、上記の従来技術にかかる課題に鑑み、光沢感や透明感があり、かつ映り込みが防止された、低コストのディスプレイ用フィルターを提供することを目的とし、また、本発明は、導電性メッシュを基材より視認側に配置したときに生じる、微小異物の視認性を抑制(異物隠蔽性を高めること)されたディスプレイ用フィルターを提供することを目的とし、また更に、本発明は、薄型大画面のディスプレイの室内装飾用としての機能を高めることができるディスプレイ用フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
1)基材上に凹凸構造を有する導電性メッシュを有し、該導電性メッシュ上に粒子を含むハードコート層が積層されたディスプレイ用フィルターであって、
前記導電性メッシュの厚み(Et)が3μm未満で、
前記ハードコート層の厚み(Ht)が3μm以上であり、
前記粒子の平均粒子径がハードコート層の厚み(Ht)100%に対して60%以上であり、
前記粒子をハードコート層の全成分100質量%に対して3質量%〜18質量%含有し、
かつ前記ハードコート層が導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造を有することを特徴とする、ディスプレイ用フィルター。
2)前記ハードコート層に形成された凹凸構造の高低差(D)が、0.5μm〜5μmである、前記1)に記載のディスプレイ用フィルター。
3)前記ハードコート層の中心線平均粗さRaが150nm以上500nm未満である、前記1)または2)に記載のディスプレイ用フィルター。
4)前記粒子の平均粒子径が、3μm〜20μmである、前記1)〜3)のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
5前記ハードコート層の厚み(Ht)と前記導電性メッシュの厚み(Et)との比(Ht/Et)が、1.5以上である、前記1)〜4)のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光沢感や透明感があり、かつ映り込みの防止性や異物隠蔽性に優れたディスプレイ用フィルターを低コストで提供することができる。また更に、本発明のディスプレイ用フィルターを薄型大画面のディスプレイに装着することによって、室内装飾用としての機能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のディスプレイ用フィルターは、基材上に凹凸構造を有する導電性メッシュを有し、該導電性メッシュ上に粒子を含むハードコート層を有する。ハードコート層は、導電性メッシュ上に直接に積層されることが好ましく、特に導電性メッシュ上に直接に塗工形成されることが好ましい。
【0020】
本発明にかかる導電性メッシュは、その厚み(Et)が3μm未満であることが重要ある。これによって、ディスプレイ用フィルターの低価格化が図られると同時に、ハードコート層を形成する際の塗工安定性が一段と向上する。また、導電性メッシュの厚み(Et)が3μm未満と小さい場合、その導電性メッシュの製造にかかる原材料コストが低減されることはもちろんであるが、その製造工程における生産速度の向上や生産安定性の向上が図られる。また更に、線幅が10μm未満の高精細なメッシュパターンを有する導電性メッシュを容易にかつ安定的に製造することができるようになる。
【0021】
厚みが3μm未満の導電性メッシュ上にハードコート層を積層して、ハードコート層に導電性メッシュの凹凸構造に由来した凹凸構造を形成する場合、映り込み防止効果や異物隠蔽性が十分に発現するだけの凹凸構造を形成するためには、従来はハードコート層の厚みは3μm未満にする必要があった。しかし、厚みが3μm未満のハードコート層は、ハードコート性が不足するという問題がある。また、厚みが3μm未満のハードコート層では、導電性メッシュの製造時に発生していると考えられる微小異物の隠蔽性(微小異物を見えにくくすること)が十分に発現しないという問題がある。
【0022】
そこで、厚みが3μm未満の導電性メッシュ上に、厚みが3μm以上のハードコート層を積層した場合であっても、映り込み防止や異物隠蔽性が十分に発現されるハードコート層について鋭意検討し、本発明を成すに至った。
【0023】
即ち、本発明は、基材上に凹凸構造を有する導電性メッシュを有し、該導電性メッシュ上に粒子を含むハードコート層が積層されたディスプレイ用フィルターであって、前記導電性メッシュの厚み(Et)が3μm未満で、前記ハードコート層の厚み(Ht)が3μm以上であり、前記粒子の平均粒子径がハードコート層の厚み(Ht)100%に対して60%以上であり、該粒子をハードコート層の全成分100質量%に対して3質量%〜18質量%含有し、かつ前記ハードコート層が導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造を有することを特徴とする。
【0024】
(ハードコート層)
本発明にかかるハードコート層は、平均粒子径がハードコート層の厚み(Ht)100%に対して60%以上の粒子をハードコート層の全成分100質量%に対して3質量%〜18質量%含有する。上記のような構成のハードコート層を、厚み(Et)が3μm未満の導電性メッシュ上に、3μm以上の厚みで積層した場合、ハードコート層に導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造が形成され、その結果、映り込み防止効果や異物隠蔽効果が十分に発現するハードコート層が得られる。ハードコート層に含まれる粒子の平均粒子径が、ハードコート層の厚み(Ht)100%に対して60%未満である場合、ハードコート層に導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造が十分に形成されず、映り込み防止効果や異物隠蔽効果が十分に発現しない。
【0025】
ハードコート層の厚み(Ht)100%に対する、ハードコート層に含まれる粒子の平均粒子径(P)の比率、即ち、((P/Ht)×100)は、上述したように60%以上であることが重要であるが、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、特に90%以上であることが好ましい。上記比率の上限は、200%以下が好ましく、180%以下が好ましく、160%以下が更に好ましく、特に150%以下が好ましい。
【0026】
上記比率((P/Ht)×100)が、60%以上であると、ハードコート層に導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造が形成されやすくなり、映りこみ防止性が向上し、異物遮蔽性が向上する。一方、200%を越えると光沢感や透明感が低下し、ディスプレイの画像の鮮明性が低下したり、室内装飾性が低下する場合があり、好ましくない。
【0027】
本発明のハードコート層に含まれる粒子の平均粒子径は、具体的には、3μm以上であることが好ましく、3.5μm以上がより好ましく、さらに4μm以上が好ましく、特に5μm以上が好ましい。粒子の平均粒子径の上限は、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、12μm以下が更に好ましく、特に10μm以下が好ましい。
【0028】
ハードコート層に含まれる粒子の平均粒子径が3μm以上であると、ハードコート層に導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造が形成されやすくなり、映りこみ防止性や異物遮蔽性が向上する。一方、ハードコート層に含まれる粒子の平均粒子径が20μmより大きくなると、光沢感や透明感が低下し、ディスプレイの画像の鮮明性が低下したり、室内装飾性が低下する場合があり、好ましくない。
【0029】
ここで、粒子の平均粒子径とは、体積平均であり、例えば、レーザー回折法粒子径測定装置を用いたレーザー散乱法によって測定することができる。
【0030】
ハードコート層に含まれる粒子としては、公知の、無機系材料で製造された粒子(無機系粒子)や有機系材料で製造された粒子(有機系粒子)を用いることができるが、中でも有機系粒子が好ましく用いられる。無機系粒子としては、シリカビーズが挙げられ、有機系粒子としては、プラスチックビーズが挙げられる。
【0031】
上記のプラスチックビーズの中でも、透明性が優れているものが好ましく、具体例としては、アクリル系粒子(ポリメチルメタクリレート、架橋ポリメチルメタクリレート等)、スチレン系粒子(ポリスチレン、架橋ポリスチレン等)、アクリル・スチレン系粒子(メチルメタクリレート−スチレン共重合体等)、ウレタン系粒子(ウレタンアクリレート等)、メラミン系粒子、等が挙げられる。本発明では、特に透明性に優れるアクリル系粒子が好ましく用いられる。
【0032】
本発明に用いられる粒子の形状としては、球状(真球状、楕円体状、など)のものが好ましく、より好ましくは真球状のものである。
【0033】
本発明のハードコート層は、ハードコート層の全成分100質量%に対して上記の粒子を3質量%〜18質量%含有する。ハードコート層に含まれる粒子の含有量がハードコート層の全成分100質量%に対して3質量%未満であると、ハードコート層に導電性メッシュに由来する凹凸構造が十分に形成されず、映り込み防止や異物隠蔽の効果が得られない。一方、18質量%を越えると光沢感や透明感が低下し、ディスプレイの画像鮮明性が低下したり、室内装飾性や表面品位が低下する。
【0034】
また、特に、粒子の平均粒子径が、ハードコート層の厚み(Ht)100%に対して60%以上である粒子を、ハードコート層の全成分100質量%に対して18質量%を越えて、ハードコート層に含有させた場合、導電性メッシュの開口部にも粒子による凸部が形成されるために、導電性メッシュの細線上に形成された凸部と区別できなくなる。即ち、全体的に凹凸構造が形成される結果、光沢感や透明感が大幅に低下し、ディスプレイの画像鮮明性、室内装飾性、及び表面品位が著しく低下する。
【0035】
ハードコート層における粒子の含有量は、好ましくはハードコート層の全成分100質量%に対して3.5質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上であり、特に好ましくは4.5質量%以上である。粒子の含有量の上限は、好ましくはハードコート層の全成分100質量%に対して15質量%以下であり、より好ましくは12質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。
【0036】
本発明にかかるハードコート層の厚み(Ht)は、3μm以上とすることが重要である。ハードコート層の厚みを3μm以上とすることによって、高いハードコート性が得られる。また、導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造が形成されたハードコート層の厚みを3μm以上とすることにより、更に異物隠蔽性が向上する。
ハードコート層のハードコート性は、JIS K5600−5−4(1999年)で定義される鉛筆硬度で表すことができる。本発明にかかるハードコート層は、上記鉛筆硬度が、H以上が好ましく、2H以上がより好ましい。上限は9H程度である。
【0037】
本発明にかかるハードコート層の厚みは、高いハードコート性を得るという観点、及び異物隠蔽性を向上させるという観点から、3.5μm以上が好ましく、4μm以上が好ましく、特に4.5μm以上が好ましい。ハードコート層の厚みの上限は、12μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下が特に好ましい。ハードコート層の厚みが12μmを越えるとカールが発生しやすくなったり、ハードコート層に導電性メッシュの凹凸構造が形成しにくくなるので好ましくない。本発明において、ハードコート層の厚みは、導電性メッシュの開口部の重心におけるハードコート層の厚み、即ち、導電性メッシュの開口部の重心における、基材からハードコート層表面までの距離を意味する。
【0038】
また、導電性メッシュ上にハードコート層を均一安定的に塗工形成するという観点、及び異物隠蔽性の観点から、ハードコート層の厚み(Ht)と導電性メッシュの厚み(Et)との比(Ht/Et)が、1.5以上であることが好ましく、1.8以上がより好ましく、特に2.0以上が好ましい。上記の比(Ht/Et)の上限は、大きくなりすぎるとハードコート層に導電性メッシュの凹凸構造が形成されにくくなるので、5.0以下好ましく、4.5以下がより好ましく、特に4.0以下が好ましい。
【0039】
本発明において、ハードコート層が導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造を有するとは、導電性メッシュの凹凸構造、即ち、導電性メッシュを構成する細線(凸部)と、細線と細線で囲まれた開口部(凹部)を利用して、導電性メッシュの細線上にハードコート層の凸部を形成し、導電性メッシュの開口部にハードコート層の凹部を形成することを意味する。
【0040】
図1は、導電性メッシュ上に、ハードコート層が積層された状態の一例を示す模式断面図である。図1は、導電性メッシュ上に、粒子4を含むハードコート層3が積層された状態を示すものである。図1において、導電性メッシュの細線(凸部)2の上に、ハードコート層3の凹凸構造のなかの凸部が形成され、導電性メッシュの開口部(細線と細線の間)にハードコート層3の凹凸構造のなかの凹部が形成されている。符号1は、基材である。
【0041】
本発明にかかるハードコート層に、導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造を形成することによって、導電性メッシュの開口部におけるハードコート層が比較的平滑であっても、蛍光灯などの外光の映り込みが有効に防止され、かつ開口部におけるハードコート層を平滑にすることにより、光沢感や透明感があり、ディスプレイの透過画像鮮明性が良好で、室内装飾性や表面品位も向上する。
【0042】
本発明にかかるハードコート層は、中心線平均粗さRaが150nm以上であることが好ましく、200nm以上がより好ましく、特に210nm以上が好ましい。ハードコート層の中心線平均粗さRaの上限は、500nm未満が好ましく、400nm未満がより好ましい。
【0043】
本発明において、導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造が形成されたハードコート層の中心線平均粗さRaが150nm以上であると、映り込み防止効果が高くなるので好ましい。一方、ハードコート層の中心線平均粗さRaが500nm以上であると、光沢感や透明感が低下し、ディスプレイの画像鮮明性が低下したり、室内装飾性や表面品位が低下する場合があり、好ましくない。
【0044】
また、ハードコート層に形成された凹凸構造(導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造)において、凹凸構造の高低差(D)が、0.5μm〜5μmの範囲が好ましい。
上記の凹凸構造の高低差(D)とは、図1において、ハードコート層の凸部の頂点5と凹部の最低点6との垂直距離である。
【0045】
上記したように、ハードコート層に形成された凹凸構造(導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造)の高低差(D)が、0.5μm以上であると、映り込み防止効果及び異物隠蔽効果が高くなるので好ましい。上記高低差(D)は、好ましくは、0.6μm以上である。一方、上記高低差(D)が大きくなり過ぎると、光沢感や透明感が低下し、ディスプレイの画像鮮明性が低下したり、室内装飾性が低下する場合があるので、上記高低差(D)の上限は、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、特に3μm以下が好ましい。
【0046】
ハードコート層における凸部の頂点5とは、導電性メッシュの開口部の重心を通り、かつ導電性メッシュの細線に平行に引いた直線上において、凸部の最も高い部分が頂点5となり、かつ凹部の最も低い部分が最低点6となる。例えば、本発明に好ましく用いられる格子状の導電性メッシュの場合は、凸部の頂点5は開口部を囲む4辺それぞれに存在し、高低差(D)もそれぞれ存在するが、本発明の凹凸構造の高低差(D)は、それらの中で最も大きい値を採用する。このようにして、ある1つの開口部における高低差(D)が求められるが、この操作を任意に選択した10の開口部で実施し、平均することによって、本発明における凹凸構造の高低差(D)が得られる。
【0047】
上記の凹凸構造の高低差(D)は、レーザー顕微鏡(例えば、株)キーエンスの「VK−9700」)を用いて行うことができる。
【0048】
本発明にかかるハードコート層は、樹脂成分としては、モノマー、オリゴマー、ポリマーを含むことができる。かかる樹脂成分として、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂等が挙げられるが、性能、コスト、生産性などのバランスを考慮するとアクリル系樹脂が好ましく適用される。
【0049】
樹脂成分としてアクリル系硬化型樹脂を含むハードコート層は、例えば、多官能(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物を硬化せしめることによって得られる。ここで、多官能(メタ)アクリレート化合物とは、多官能アクリレート化合物と多官能メタクリレート化合物の総称であり、以降の説明において、「(メタ)・・・・」は上記と同義である。
【0050】
以下に、ハードコート層の好ましい態様の1つとして、上記の多官能(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物を硬化せしめることによって形成されるハードコート層について説明する。
【0051】
上記の多官能(メタ)アクリレート化合物としては、(メタ)アクリロイル基を分子内に3〜10個有する多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましく用いられる。
【0052】
かかる多官能(メタ)アクリレート化合物の具体的例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどが挙げられる。これらの化合物は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0053】
上記の多官能(メタ)アクリレート化合物の使用割合は、硬化性組成物の全成分(有機溶剤を除く)100質量%に対して30〜90質量%の範囲が好ましく、40〜80質量%の範囲がより好ましい。
【0054】
上記の多官能(メタ)アクリレート化合物以外にハードコート層の剛直性を緩和させたり、硬化時の収縮を緩和させたりする目的で、分子中に1〜2個のエチレン性不飽和基を有する化合物を併用するのが好ましい。ここで、エチレン性不飽和基とは例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等である。
【0055】
分子中に2個のエチレン性不飽和基を有する化合物としては、下記(a)〜(f)の化合物を例示することができる。
【0056】
(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート。
【0057】
(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート。
【0058】
(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート。
【0059】
(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン。
【0060】
(e)ジイソシアネート化合物と2個のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類。
【0061】
(f)分子内に2個のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類。
【0062】
分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−及びi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、およびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの化合物は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
【0063】
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和基合を有する化合物の使用割合は、硬化性組成物の全成分100質量%に対して5〜40質量%の範囲が適当であり、10〜40質量%の範囲が好ましい。
【0064】
また、ハードコート層の改質剤として、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、有機高分子化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料あるいは安定剤などを用いることができ、これらは活性線または熱による反応を損なわない範囲内で、硬化性組成物に含有させることができる。
【0065】
本発明において、上記の硬化性組成物を硬化させる方法としては、例えば、活性線として紫外線や電子線等を照射する方法や高温加熱法等を用いることができ、これらの方法を用いる場合には、硬化性組成物に、光重合開始剤または熱重合開始剤等を加えることが好ましい。
【0066】
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0067】
また、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイドまたはジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。
【0068】
光重合開始剤または熱重合開始剤の使用量は、硬化性組成物の全成分100質量%に対して、0.01〜10質量%の範囲が適当である。電子線またはガンマ線を硬化手段とする場合には、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。また200℃以上の高温で熱硬化させる場合には熱重合開始剤の添加は必ずしも必要ではない。
【0069】
ハードコート層を形成するときの熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、硬化性組成物には更に、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルまたは2,5−t−ブチルハイドロキノンなどの熱重合防止剤を加えることができる。熱重合防止剤の添加量は、硬化性組成物の全成分100質量%に対して、0.005〜0.05質量%の範囲が好ましい。
【0070】
硬化性組成物を硬化せしめるために用いられる活性線としては、紫外線、電子線および放射線(α線、β線、γ線など)などが挙げられ、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯または炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができる。また更に、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、硬化性組成物中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点で有利である。
【0071】
硬化性組成物を熱硬化せしめる場合に必要な熱源としては、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターあるいは遠赤外線ヒーターなどが挙げられる。これらの熱源を用いて140℃以上に加熱された空気や不活性ガスを基材や塗膜に吹きあてることによって、硬化性組成物を加熱することができる。中でも200℃以上の空気による加熱が好ましく、更には200℃以上の窒素による加熱であることが、硬化速度が早める上で好ましい。
【0072】
硬化性組成物の硬化方法としては、ハードコート層に高い硬度を付与するという観点、生産性の観点から、活性線を照射する方法が好ましく、特に紫外線を照射する方法が好ましい。従って、本発明のハードコート層は、紫外線硬化型の硬化性組成物に紫外線を照射して硬化されたハードコート層であることが好ましい。
【0073】
また、ハードコート層は、高屈折率化することによって、後述する高屈折率層を兼ねることができる。ハードコート層を高屈折率化する手段としては、ハードコート層に、後述する金属酸化物微粒子、あるいは後述する高屈折率有機化合物を含有させる方法が挙げられる。
【0074】
(反射防止層)
本発明において、ハードコート層上に更に反射防止層を積層することができる。反射防止層としては、高屈折率層と低屈折率層とを低屈折率層が最表面になるように積層した構成、あるいは低屈折率層のみの構成が挙げられる。
【0075】
高屈折率層の屈折率としては、1.50〜1.80の範囲が好ましく、1.55〜1.75の範囲がより好ましく、特に1.60〜1.70の範囲が好ましい。
また、低屈折率層(積層構成の場合及び低屈折率層のみの場合を含む)の屈折率としては、1.20〜1.45の範囲が好ましく、1.25〜1.40の範囲がより好ましい。
【0076】
高屈折率層は、上記のハードコート層と同様に多官能(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物を硬化せしめることによって形成することができる。かかる硬化性組成物に、金属酸化物微粒子及び/または高屈折率有機化合物を含有させることによって、屈折率を高めることができる。
【0077】
上記の金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化鉄、アンチモン酸亜鉛、酸化錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ酸化錫等が挙げられ、これらの金属酸化物微粒子は単独で用いても良いし、複数併用しても良い。金属酸化物微粒子の含有量は、硬化性組成物の全成分100質量%に対して、30〜90質量の範囲が好ましい。
【0078】
上記の高屈折率有機化合物としては、フッ素以外のハロゲン原子を含む樹脂(例えば臭素原子を含む樹脂、塩素原子を含む樹脂、ヨウ素原子を含む樹脂)、硫黄原子を含む樹脂、窒素原子を含む樹脂、燐原子を含む樹脂、芳香族環を含む樹脂(例えばフルオレン骨格を含む樹脂、フェニル基を含む樹脂等)が挙げられる。これらの中でも、芳香族環を含む樹脂が好ましく、例えば、9,9−ビスフェノキシフルオレン骨格を有するアクリル樹脂、ビフェニル基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。高屈折率有機化合物の含有量は、硬化性組成物の全成分100質量%に対して10〜70質量%の範囲が好ましい。
【0079】
高屈折率層の厚みは、0.02〜0.2μmの範囲が好ましく、0.05〜0.15μmの範囲がより好ましい。
【0080】
低屈折率層の好ましい態様として、シリカ系微粒子と結合してなるシロキサンポリマーを主成分とする構成を採用することができる。なお、ここで言う「結合」とは、シリカ系微粒子のシリカ成分とマトリックスのシロキサンポリマーが反応して均質化している状態を意味する。シリカ系微粒子と結合してなるシロキサンポリマーは、該シリカ系微粒子の存在下、多官能性シラン化合物を溶剤中、酸触媒により、公知の加水分解反応によって、一旦シラノール化合物を形成し、公知の縮合反応を利用することによって得ることができる。
【0081】
かかる多官能性シラン化合物としては、多官能性フッ素含有シラン化合物や多官能性フッ素非含有シラン化合物を用いることができるが、低屈折率化や防汚性の観点から、多官能性フッ素含有シラン化合物が好ましく用いられる。
【0082】
上記の多官能性フッ素含有シラン化合物としては、例えば、トリフルオロメチルメトキシシラン、トリフルオロメチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランなどの3官能性フッ素含有シラン化合物、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシランなどの2官能性フッ素含有シラン化合物などが挙げられるが、表面硬度の観点から、トリフルオロメチルメトキシシラン、トリフルオロメチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシランが、好ましく用いられる。
【0083】
上記の多官能性フッ素非含有シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシシプロピルトリメトキシシランなどの3官能性シラン化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシランなどの2官能性シラン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性シラン化合物などが挙げられるが、表面硬度の観点からビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが、好ましく用いられる。
【0084】
また、上述のシリカ系微粒子としては、平均粒子径1nm〜200nmのシリカ系微粒子であることが好ましく、特に平均粒子径1nm〜70nmのシリカ系微粒子が好ましく用いられる。平均粒子径が1nmを下回ると、マトリックス材料との結合が不十分となり、硬度が低下することがある。一方、平均粒子径が200nmを越えると、粒子を多く導入して生じる粒子間の空隙の発生が少なくなり、低屈折率化の効果が十分発現しないことがある。上記のシリカ系微粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡観察による数平均粒子径である。
【0085】
シリカ系微粒子として、内部に空洞を有する構造のものが、屈折率を低下させるために、特に好ましく用いられる。
【0086】
かかる内部に空洞を有するシリカ系微粒子とは、外殻によって包囲された空洞部を有するシリカ系微粒子、多数の空洞部を有する多孔質のシリカ系微粒子等が挙げられ、いずれも好適に用いられる。このような内部に空洞を有するシリカ微粒子としては、例えば、特許第3272111号公報に開示されている方法によって製造することができる。
【0087】
上記のシリカ系微粒子における空洞の占める体積、すなわち空隙率は、5%以上が好ましく、30%以上がさらに好ましい。空隙率は、例えば、水銀ポロシメーター(商品名:ボアサイザー9320−PC2、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
また、内部に空洞を有するシリカ系微粒子自体の屈折率は、1.20〜1.40であるのが好ましく、1.20〜1.35であるのがより好ましい。
【0088】
本発明における低屈折率層の他の好ましい態様として、含フッ素化合物、及び上記した内部に空洞を有するシリカ系微粒子を含有する硬化性組成物を硬化せしめた低屈折率層が挙げられる。
【0089】
即ち、多官能(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物に、含フッ素化合物及び内部に空洞を有するシリカ系微粒子を含有させた硬化性組成物を硬化せしめて低屈折率層を形成することができる。
【0090】
上記の多官能(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物は、上述のハードコート層における硬化性組成物と同様の構成をとることができる。
上記の含フッ素化合物としては、含フッ素モノマー、含フッ素高分子化合物が挙げられる。
【0091】
含フッ素モノマーとしては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0092】
含フッ素高分子化合物としては、例えば、含フッ素モノマーと架橋性基付与のためのモノマーを構成単位とする含フッ素共重合体が挙げられる。含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等である。架橋性基付与のためのモノマーとしてはグリシジルメタクリレートのように分子内にあらかじめ架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有する(メタ)アクリレートモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート等)が挙げられる。
【0093】
低屈折率層の厚みは、0.01〜0.2μmの範囲が好ましく、0.02〜0.15μmの範囲がより好ましい。
【0094】
(導電性メッシュ)
本発明にかかる導電性メッシュは、ディスプレイから発生される電磁波を有効に遮蔽するという観点から、導電性メッシュの面抵抗は3Ω/□以下が好ましく、1Ω/□以下がより好ましく、特に0.5Ω/□以下が好ましい。面抵抗は低いほど電磁波遮蔽性が向上するために好ましいが、現実的な下限は0.01Ω/□程度と考えられる。
【0095】
本発明のディスプレイ用フィルターは基材上に導電性メッシュを有するが、少なくともディスプレイの画像表示領域に相当する部分は導電性メッシュで構成されていればよく、画像表示領域の外周に相当する部分は、導電性メッシュで構成されていても、金属ベタ部で構成されていてもよい。
【0096】
本発明にかかる導電性メッシュは、その厚み(Et)が3μm未満であることが重要である。これによって、ディスプレイ用フィルターの低価格化が図られると同時に、ハードコート層を形成する際の塗工安定性が一段と向上する。また、導電性メッシュの厚み(Et)が3μm未満と小さい場合、その導電性メッシュの製造にかかる原材料コストが低減されることはもちろんであるが、その製造工程における生産速度の向上や生産安定性の向上が図られる。
【0097】
本発明にかかる導電性メッシュの厚み(Et)は、上記の観点から小さい方が好ましく、具体的には、2.6μm未満であることが好ましく、2.2μm未満であることがより好ましく、特に2.0μm未満であることが好ましい。導電性メッシュの下限の厚みは、導電性メッシュ上に積層されたハードコート層に導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造を形成するという観点、及び電磁波遮蔽性を確保すると言う観点から、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。なお、凹凸構造を有する導電性メッシュとは、一般的な導電性メッシュを意味し、凹凸構造の凸部は導電性メッシュの細線であり、凹凸構造の凹部とは導電性メッシュの細線部分で囲まれた開口部である。
【0098】
本発明にかかる導電性メッシュは、公知の製造方法で製造することができる。例えば、1)基材上に導電性インキをパターン状に印刷する方法。2)メッキの触媒核を含むインキでパターン印刷した後にメッキを施す方法、3)基材上に金属箔を接着剤で貼り合わせた後にパターニングする方法、4)基材上に気相製膜法あるいはメッキ法により金属薄膜を形成した後にパターニングする方法、5)基材上に、剥離可能な樹脂で導電性メッシュのパターンとは逆パターンの樹脂層を形成し、次いで前記基材の樹脂層が形成された側の面に、気相製膜法により金属薄膜を積層し、次いで樹脂層を剥離する方法、6)感光性銀塩を用いる方法、及び7)金属薄膜をレーザーアブレーションする方法等が挙げられる。以下に、上記1)〜7)の導電性メッシュの製造方法について説明する。
【0099】
1)基材上に導電性インキをパターン状に印刷する方法は、基材上に導電性インキを、スクリーン印刷、グラビア印刷等の公知の印刷法によりパターン状に印刷する方法である。
【0100】
2)メッキの触媒核を含むインキでパターン印刷した後にメッキを施す方法は、例えば、パラジウムコロイド含有ペーストからなる触媒インクを用いてパターン状に印刷し、これを無電解銅メッキ液中に浸漬して無電解銅メッキを施し、続いて電解銅メッキを施し、さらにNi−Sn合金の電解メッキを施して導電メッシュパターンを形成する方法である。
【0101】
3)基材上に金属箔を接着剤で貼り合わせた後にパターニングする方法は、基材上に金属箔(銅、アルミニウム、又はニッケル等)を接着剤または粘着材を介して貼り合わせた後、この金属箔をフォトリソグラフィー法あるいはスクリーン印刷法などを利用してレジストパターンを作製した後、金属箔をエッチングする方法である。上記のレジストパターンを形成する方法としては、フォトリソグラフィー法が好ましく、フォトリソグラフィー法は、金属箔上に感光性レジストを塗工又は感光性レジストフィルムをラミネートし、パターンマスクを密着させて露光後、現像液で現像してエッチングレジストパターンを形成し、さらに適当なエッチング液でパターン部以外の金属を溶出させて所望の導電メッシュを形成する方法である。
【0102】
4)基材上に気相製膜法あるいはメッキ法により金属薄膜を形成した後にパターニングする方法は、基材上に金属薄膜(銅、アルミニウム、銀、金、パラジウム、インジウム、スズ、あるいは銀とそれ以外の金属の合金などからなる金属)を、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の気相製膜法、あるいはメッキ法によって形成し、この金属薄膜をフォトリソグラフィー法あるいはスクリーン印刷法などを利用してレジストパターンを作製した後、金属薄膜をエッチングする方法である。上記のレジストパターンを形成する方法としては、フォトリソグラフィー法が好ましく、フォトリソグラフィー法は、金属薄膜上に感光性レジストを塗工又は感光性レジストフィルムをラミネートし、パターンマスクを密着させて露光後、現像液で現像してエッチングレジストパターンを形成し、さらに適当なエッチング液でパターン部以外の金属を溶出させて所望の導電メッシュを形成する方法である。この方法では、接着剤や粘着剤を介さずに、透明基材上に金属薄膜を形成することが好ましい。
【0103】
5)の導電性メッシュは、先ず基材上に、剥離可能な樹脂で導電性メッシュのパターンとは逆パターンの樹脂層を形成し、次いで、前記基材の樹脂層が形成された側の面に、気相製膜法により金属薄膜を積層し、次いで樹脂層を剥離し、それと同時に樹脂層上の金属薄膜を除去することによって形成される。ここで、金属薄膜の積層に用いられる気相製膜法は、上記4)の導電性メッシュの製造方法に用いられる気相製膜法と同じである。
【0104】
上記の導電性メッシュの製造方法は、一般にリフトオフと呼ばれる方法であり、基材上に予め剥離可能な樹脂を用いて導電性メッシュとは逆パターンの樹脂層を形成し、基材の樹脂層が形成された側の面に気相製膜法で金属薄膜を積層し、次いで、前記逆パターンの樹脂層を剥離する方法である。前記の逆パターンの樹脂層を剥離するときに、同時に樹脂層上の金属薄膜も一緒に剥離され、樹脂層が存在しない部分の金属薄膜はそのまま基材上に残るために、金属薄膜のメッシュパターンが基材上に形成される。従って、この製造方法では、剥離可能な樹脂層は導電性メッシュとは逆パターンに形成する必要がある。
【0105】
基材上に、予め形成される剥離可能な樹脂層に用いられる剥離可能な樹脂としては、溶剤に可溶な樹脂が好ましく用いられる。かかる樹脂としては、水溶性樹脂、有機溶剤に可溶な樹脂、及びアルカリに可溶な樹脂を用いることができる。これらの樹脂の中でも、作業環境等の観点から、水溶性樹脂が好ましく、特に水溶性の高分子樹脂が好ましく用いられる。
【0106】
水溶性高分子樹脂としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの部分ケン化物、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、酢酸ビニル−マレイン酸交互共重合体、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられ、これらの水溶性高分子樹脂の1種もしくは2種以上の混合物を用いることができる。
【0107】
有機溶剤に可溶な樹脂としては、例えば、ポリイミドエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリヒダントイン樹脂、ポリパラバン樹脂や溶剤可溶型ポリイミド樹脂などがある。またシリコーングリースや油性インクなどを用いることもできる。
【0108】
溶剤に可溶な剥離可能な樹脂を用いて、基材上に導電性メッシュとは逆パターンの樹脂層を形成する方法としては、印刷法やフォトリソグラフィー法などを用いることができる。印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、インクジェット、凹版印刷、凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷など様々な方法を用いることができる。
【0109】
フォトリソグラフィー法は、基材上にフォトレジスト層を積層し、フォトマスクを介して露光、あるいはレーザーで直接に走査露光し、現像して、導電性メッシュのパターンとは逆パターンのレジスト層を形成する方法である。基材上にフォトレジスト層を積層する方法としては、例えば、レジストフィルムを貼り付ける方法、あるいは液状レジストを塗布する方法が用いられる。
【0110】
導電性メッシュとは逆パターンの樹脂層が形成された面に金属薄膜が積層された後、該樹脂層は剥離されるが、この樹脂層の剥離方法としては、樹脂層が可溶な溶剤中に浸漬する方法、前記溶剤を吹き付ける方法等が挙げられ、更にこれらの方法と組み合わせて物理的に剥離する手段、例えば布、スポンジ、ローラ等で擦る方法を適用することができる。
【0111】
6)感光性銀塩を用いる方法は、ハロゲン化銀などの銀塩乳剤層を基材上にコーティングし、フォトマスク露光あるいはレーザー露光の後、現像処理して銀のメッシュを形成する方法がある。形成された銀メッシュはさらに銅、ニッケルなどの金属でメッキするのが好ましい。この方法は、WO2004/7810号公報、特開2004−221564号公報、特開2006−12935号公報などに記載されており、参照することができる。
【0112】
7)金属薄膜をレーザーアブレーションする方法は、上記4)と同様の方法で基材上に形成された金属薄膜をレーザーアブレーション方式で、金属薄膜のメッシュパターンを作製する方法である。
【0113】
レーザーアブレーションとは、レーザー光を吸収する固体表面へエネルギー密度の高いレーザー光を照射した場合、照射された部分の分子間の結合が切断され、蒸発することにより、照射された部分の固体表面が削られる現象である。この現象を利用することで固体表面を加工することが出来る。レーザー光は直進性、集光性が高い為、アブレーションに用いるレーザー光の波長の約3倍程度の微細な面積を選択的に加工することが可能であり、レーザーアブレーション法により高い加工精度を得ることが出来る。
【0114】
かかるアブレーションに用いるレーザーは金属が吸収する波長のあらゆるレーザーを用いることが出来る。例えばガスレーザー、半導体レーザー、エキシマレーザー、または半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーを用いることが出来る。また、これら固体レーザーと非線形光学結晶を組み合わせることにより得られる第二高調波光源(SHG)、第三高調波光源(THG)、第四高調波光源(FHG)を用いることが出来る。
【0115】
かかる固体レーザーの中でも、プラスチックフィルムを加工しないという観点から、波長が254nmから533nmの紫外線レーザーを用いることが好ましい。中でも好ましくはNd:YAG(ネオジウム:イットリウム・アルミニウム・ガーネット)などの固体レーザーのSHG(波長533nm)、さらに好ましくはNd:YAG などの固体レーザーのTHG(波長355nm)の紫外線レーザーを用いることが好ましい。
【0116】
かかるレーザーの発振方式としてはあらゆる方式のレーザーを用いることが出来るが,加工精度の点からパルスレーザーを用い,さらに望ましくはパルス幅がns以下のQスイッチ方式のパルスレーザーを用いることが好ましい。
【0117】
金属薄膜の上(視認側)に更に0.01〜0.1μmの金属酸化物層を形成した後に、金属薄膜と金属酸化物層とをレーザーアブレーションするのが好ましい。金属酸化物としては銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、クロム、チタン、すずなどの金属酸化物を用いることができるが、価格や膜の安定性などの点から銅酸化物が好ましい。
【0118】
上記した導電性メッシュの製造方法の中でも、厚みが3μm未満の導電性メッシュを、安定的に容易に製造することができ、かつ高い電磁波遮蔽性を確保できるという観点から、上記の2)、4)、6)及び7)の製造方法が好ましく用いられ、また、ハードコート層を形成する際の塗工性、及びハードコート層の密着性の観点から、上記の2)、4)及び7)の製造方法で製造された導電メッシュが好ましく用いられ、特に、上記4)の製造方法は、ハードコート層を形成する際の塗工性が良好であり、高精細な導電メッシュを低コストで製造することができることから、特に好ましく用いられる。ここで、高精細な導電性メッシュとは、線幅が10μm未満である導電性メッシュのことを指す。
【0119】
上記4)の製造方法について、更に詳細に説明する。
【0120】
基材上に金属薄膜を形成する方法としては、気相製膜法が好ましく用いられ、特に気相製膜法のみで金属薄膜を形成することが好ましい。上記の気相製膜法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等が挙げられるが、これらの中でも、スパッタリング及び真空蒸着が好ましい。金属薄膜を形成するための金属としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、クロム、チタンなどの金属の内、1種または2種以上を組合せた合金あるいは多層のものを使用することができる。これらの中でも、良好な電磁波遮蔽性が得られ、メッシュパターン加工が容易で、かつ低価格であるなどの点から、銅が好ましく用いられる。
【0121】
また、金属薄膜の金属として銅を用いる場合は、基材と銅薄膜との間に、5〜100nmの厚みのニッケル薄膜を用いるのが好ましい。これによって、基材と銅薄膜の接着性が向上する。
【0122】
また、金属薄膜の表面に、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物等の金属化合物を、気相製膜法で積層することができる。この金属化合物の積層によって、後述する黒化処理を省略することができるので好ましい。かかる金属化合物としては、金、白金、銀、水銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、鉄、スズ、亜鉛、インジウム、パラジウム、イリジウム、コバルト、タンタル、アンチモン、及びチタン等の金属の酸化物、窒化物、あるいは硫化物が挙げられる。
【0123】
上記の金属化合物の厚みは、5〜200nmの範囲が好ましく、10〜100nmの範囲がより好ましい。この金属化合物層は、金属薄膜の一部を構成し、更に導電性メッシュの一部を構成する。
【0124】
金属薄膜上にレジストパターンを形成する方法としては、フォトリソグラフィーが好ましく用いられる。かかるフォトリソグラフィー法は、金属薄膜上に感光性レジスト層を積層し、該レジスト層をメッシュパターン状に露光し、現像してレジストパターンを形成し、次いで、金属薄膜をエッチングしてメッシュパターン化し、メッシュ上のレジスト層を剥離除去する方法である。
【0125】
感光性レジスト層としては、露光部分が硬化するネガレジスト、あるいは逆に露光部分が現像によって溶解するポジレジストを用いることができる。感光性レジスト層は金属薄膜上に直接に塗工して積層してもよいし、あるいはフォトレジストからなるフィルムを貼り合わせてもよい。フォトレジスト層を露光する方法としては、フォトマスクを介して紫外線等で露光する方法、もしくはレーザーを用いて直接に走査露光する方法を用いることができる。
【0126】
また、上記したエッチングレジストパターンを形成するためのレジスト層に、カーボンブラックやチタンブラック等の黒顔料を含有させて、黒色化することができる。この黒色化したレジスト層である黒色レジストで形成されたエッチングレジストパターンは、除去せずに、導電性メッシュ上にそのまま残すことによって、後述する黒化処理を省略することができるので好ましい。
【0127】
エッチングする方法としては、ケミカルエッチング法等がある。ケミカルエッチングとは、レジストパターンで保護された金属部分以外の金属をエッチング液で溶解し、除去する方法である。エッチング液としては、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、アルカリエッチング液等がある。
【0128】
本発明にかかる導電メッシュは、黒化処理が施されていることが好ましい。黒化処理を施すことにより、導電メッシュの金属光沢による視聴者側からの反射やディスプレイ側からの反射も低減することができ、さらに画像視認性の低下を低減することができ、コントラスト・視認性に優れたディスプレイ用フィルターが得られる。
【0129】
本発明にかかる導電性メッシュのメッシュパターンの形状(開口部の形状)としては、例えば、正方形、長方形、菱形等の4角形からなる格子状メッシュパターン、三角形、5角形、6角形、8角形、12角形のような多角形からなるメッシュパターン、円形、楕円形からなるメッシュパターン、前記の複合形状からなるメッシュパターン、及びランダムメッシュパターンが挙げられる。上記の中でも、4角形からなる格子状メッシュパターン、6角形からなるメッシュパターンが好ましく、更に規則的なメッシュパターンが好ましく用いられる。
【0130】
本発明にかかる導電性メッシュの線幅は、3〜30μmの範囲が好ましく、5〜20μmの範囲がより好ましい。導電メッシュの線幅が、3μmより小さくなると電磁波遮蔽性が低下する傾向にあり、一方、線幅が30μmより大きくなるとディスプレイ用フィルターの透過率が低下する傾向にある。
【0131】
本発明にかかる導電性メッシュのピッチは、50〜500μmの範囲が好ましく、75〜450nmの範囲がより好ましく、75〜350μmの範囲が更に好ましい。
導電メッシュのピッチが50μmより小さくなると透過率が低下する傾向にあり、500μmより大きくなると導電性が低下する傾向があり好ましくない。
【0132】
(基材)
本発明のディスプレイ用フィルターには、基材が用いられるが、本発明のディスプレイ用フィルターは1枚のみの基材で構成されることが好ましい。本発明にかかる基材としては、プラスチックフィルムが好ましく用いられる。
【0133】
かかるプラスチックフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アートン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びセルロース樹脂が好ましく、特にポリエステル樹脂が好ましく用いられる。プラスチックフィルムの厚みとしては、50〜300μmの範囲が適当であるが、コストの観点及びディスプレイ用フィルターの剛性を確保するという観点から80〜250μmの範囲が特に好ましい。またプラスチックフィルムとしては、複数の層を積層した積層フィルムを用いることもできる。
【0134】
また、基材として、導電性メッシュ、ハードコート層あるいは後述する近赤外線遮蔽層との密着性(接着強度)を強化するための易接着層が予め積層されたプラスチックフィルムが好ましく用いられる。即ち、本発明のディスプレイ用フィルターには、基材として、易接着層を有するプラスチックフィルムが好ましく用いられる。
【0135】
(ディスプレイ用フィルター)
本発明のディスプレイ用フィルターには、更に近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、あるいは可視光透過率調整機能の中から選ばれる少なくとも一つの機能を有する層を付与するのが好ましい。
【0136】
近赤外線遮蔽機能は、波長800〜1100nmの範囲における光線透過率の最大値が15%以下となるように調整するのが好ましい。近赤外線遮蔽機能は、プラスチックフィルムや機能層、あるいは後述する接着層に近赤外線吸収剤を混錬、分散することによって付与してもよいし、近赤外線遮蔽層を新たに設けてもよい。近赤外線遮蔽機能は、近赤外線吸収剤を用いることによって、あるいは導電性薄膜のような金属の自由電子によって近赤外線を反射する層を設けることによって付与することができる。
【0137】
本発明においては、近赤外線吸収剤を樹脂バインダー中に分散もしくは溶解した塗料を塗布乾燥して形成した近赤外線遮蔽層を用いること、あるいは後述する接着層に上記近赤外線吸収剤を含有させる態様が好ましく用いられる。
【0138】
近赤外線吸収剤としては、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、ジイモニウム系化合物等の有機系近赤外線吸収剤、あるいは酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、硫化亜鉛、セシウム含有酸化タングステン等の無機系近赤外線吸収剤を用いることができる。
【0139】
上記した近赤外線遮蔽層を新たに設ける場合は、基材と導電性メッシュとの間、もしくは基材に対して導電性メッシュとは反対面に、基材に塗工形成して設けることができる。
【0140】
近赤外線遮蔽機能を基材より視認側に付与する場合は、耐光性に優れる無機系近赤外線吸収剤を用いるのが好ましい。
【0141】
色調調整機能は、ディスプレイから発光される特定波長の光を吸収して色純度や白色度を向上させるための機能である。特に赤色発光の色純度を低下させるオレンジ光を遮蔽するのが好ましく、波長580〜620nmの範囲に吸収極大を有する色素、例えばテトラアザポルフィリン系色素を含有させるのが好ましい。更に、白色度を向上させるために波長480〜500nmに吸収極大を有する色素を含有させるのが好ましい。色調調整機能は、上記した波長の光を吸収する色素を含有する層を新たに設けてもよいし、上述の近赤外線遮蔽層、ハードコート層あるいは後述する接着層に色素を含有させてもよい。
【0142】
可視光透過率調整機能は、可視光の透過率を調整するための機能であり、染料や顔料を含有させて調整することができる。可視光透過率調整機能は、基材、近赤外線遮蔽層、あるいは後述する接着層に付与してもよいし、新たに透過率調整層を設けてもよい。
【0143】
上述した色調調整機能を有する層及び可視光透過率調整機能を有する層をそれぞれ新たに設ける場合、これらの層は基材と導電性メッシュとの間、もしくは基材に対して導電性メッシュとは反対面に設けることができる。
【0144】
本発明のディスプレイ用フィルターは、ディスプレイに直接、あるいはガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板等の公知の高剛性基板を介して装着することができる。本発明のディスプレイ用フィルターには、ディスプレイあるいは高剛性基板に貼り付けるための接着層を設けるのが好ましい。
【0145】
上記の高剛性基板は、通常、0.5〜5mmの厚みを有する基板であって、かかる高剛性基板は、本発明のディスプレイ用フィルターを構成する基材には含まれない。
【0146】
接着層には、前述したように近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、あるいは可視光透過率調整機能を付与することができる。また、接着層に、ディスプレイを衝撃から保護するための衝撃緩和機能を付与することは好ましい態様である。接着層に衝撃緩和機能を付与するには、接着層の厚みを100μm以上にすることが好ましく、300μm以上がより好ましい。上限の厚みは、接着層のコーティング適性を考慮して3000μm以下が好ましい。
【0147】
接着層には、公知の接着材あるいは粘着材を用いることができる。粘着材としては、アクリル、シリコーン、ウレタン、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニルなどが挙げられる。接着材としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1、2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1、3−ブタジエン、ポリ−1、3−ブタジエンなどの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルフォン、フェノキシ樹脂などが挙げられる。
【実施例】
【0148】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0149】
(評価方法)
(1)ハードコート層の2次元の表面形状プロファイルの測定方法
レーザー顕微鏡VK−9700((株)キーエンス)を用いて測定する。まず、観察・測定ソフトウェアVK−H1V1を用いて、5cm×5cmサイズのサンプルを導電性メッシュの任意のメッシュの細線が画面の中央に垂直になるようにセットし、測定する。
【0150】
次に、得られた測定データを解析ソフトウェアVK−H1A1を用いて解析する。まず、測定データの画像ノイズを自動で除去し、測定時に対象物が微妙に傾いていた場合などの傾きを補正する。その後、中央のメッシュの細線に対して垂直な方向にプロファイル解析を行う。得られたプロファイルから、メッシュの細線上にハードコート層の凸部が存在するかどうか、及び導電性メッシュの開口部にハードコート層の凹部が存在するかどうかを確認し、ハードコート層に導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造が形成されているかどうかを判断した。
(2)ハードコート層の中心線平均粗さRaの測定方法
ハードコート層の中心線平均粗さRaを、表面粗さ測定器SE−3400((株)小坂研究所製)を用いて測定した。
【0151】
20cm×20cmサイズのサンプル1枚から任意の5箇所以上について計測し、その平均値をハードコート層のRa値とした。尚、上記の計測に際し、測定針の移動方向を、導電性メッシュの細線に平行で、かつ導電性メッシュの開口部のほぼ中心を通るようにセットし、測定によって得られた波形のピッチが導電性メッシュのピッチとほぼ同じように表れている計測値を5つ採用し、平均した。
・測定条件:
送り速さ;0.5mm/S
カットオフ値λc;
Raが20nmより大きく100nm以下の場合、λc=0.25mm
Raが100nmより大きく2000nm以下の場合、λc=0.8mm
評価長さ;8mm
・Ra:表面粗さ測定器SE−3400((株)小坂研究所製)でRaと定義されたパラメータ。JIS B0601−1982の方法に基づいて測定した。
(3)ハードコート層の凹凸構造の高低差(D)の測定方法
高低差(D)を、レーザー顕微鏡VK−9700((株)キーエンス)を用いて測定した。20cm×20cmサイズのサンプル1枚から任意の10箇所について計測し、その平均値を高低差(D)とした。
【0152】
測定方法としては、観察・測定ソフトウェアVK−H1V1を用いて、まず5cm×5cmサイズのサンプルを導電性メッシュの開口部の上辺と下辺が画面に平行になるようにし、ある1つの開口部の重心が画面の中心になるように設置する。倍率は、導電性メッシュの少なくとも1つの開口部全体が入るように設定する。焦点を合わせ、測定高さ範囲を設定した後、測定を開始する。
【0153】
次に、測定データを解析ソフトウェアVK−H1A1を用いて解析する。まず、測定データの画像ノイズを自動で除去し、測定時に対象物が微妙に傾いていた場合などの傾きを補正する。その後に、線粗さを測定する。このとき、画面に対して重心を通る水平線および垂直線で解析ラインを設定する。それぞれの解析ラインについて各種補正(高さスムージング→±12単純平均、傾き補正→直線(自動))を行い、カットオフ値λc=0.08mm(λs及びλfは設定せず)で、うねり曲線を算出し、JIS B0633−2001の規格に基づき算出される最大高さWzを測定する。得られたWzの最も大きい値を高低差(D)とした。
(4)導電性メッシュの厚み(Et)の測定方法
ミクロトームにてサンプル断面を切り出し、その断面を電解放射型走査電子顕微鏡((株)日立製S―800、加速電圧26kV、観察倍率3000倍)にて観察し、導電性メッシュの厚みを計測した。
【0154】
20cm×20cmサイズのサンプル1枚から任意の5箇所について計測し、その平均値を導電性メッシュの厚みとした。
(5)導電性メッシュの線幅及びピッチの測定方法
(株)キーエンス製デジタルマイクロスコープ(VHX−200)を用いて、倍率450倍で表面観察を行った。その測長機能を用いて、格子状導電性メッシュのピッチを測長した。20cm×20cmサイズのサンプル1枚から、任意の25箇所について計測し、その平均値を導電性メッシュの線幅、ピッチとした。なお、導電性メッシュのピッチとは、メッシュ構造のある開口部と、この開口部と1辺を共有する隣接する開口部との重心間の距離とする。
(6)ハードコート層の厚み(Ht)の測定方法
20cm×20cmサイズのサンプル1枚から任意の開口部5箇所を選び、ミクロトームにてサンプル断面を切り出し、その断面を電解放射型走査電子顕微鏡((株)日立製S―800、加速電圧15kV、観察倍率2000倍)にて観察し、導電性メッシュの開口部の重心におけるハードコート層の厚み、即ち、基材からハードコート層表面までの距離を計測し、平均する。
(7)映り込み防止性の評価
ディスプレイ用フィルターサンプル(20cm×20cm)を視認面側(低屈折率層側)が上になるように黒紙(王子特殊紙(株)製 ACカード #300)の上に貼り付ける。得られたサンプルを暗室中で、フィルターサンプルの直上200cmの場所に3波長蛍光灯(ナショナル パルック 3波長形昼白色(F.L 15EX-N 15W))を設置する。フィルターの視認面を、正面から30cmの距離で肉眼観察し、フィルター視認面に映り込んだ蛍光灯像の輪郭の鮮明性を評価する。
・映り込み像の輪郭が不鮮明 : ○(良)
・映り込み像の輪郭が僅かに不鮮明 : △(可)
・映り込み像の輪郭が鮮明に見える : ×(不可)
(8)異物隠蔽性の評価
ディスプレイ用フィルターサンプル(20cm×20cm)を視認面側(低屈折率層側)が上になるように黒紙(王子特殊紙(株)製 ACカード #300)の上に貼り付ける。得られたサンプルを暗室中で、フィルターサンプルの直上200cmの場所に3波長蛍光灯(ナショナル パルック 3波長形昼白色(F.L 15EX-N 15W))を設置する。フィルターの視認面を正面30cmの距離から肉眼観察し、導電性メッシュの細線上及び細線近傍に異物が視認されるかどうかを評価する。
・異物が全く視認されないか、異物が視認されても3個以内である : ○(可)
・異物が10個以上視認される : ×(不可)
(9)ハードコート層の鉛筆硬度の評価
JIS K5600−5−4(1999年)に従って、鉛筆硬度を測定した。
・2H以上 : ○(良)
・H以上2H未満 : △(可)
・H未満 : ×(不可)
(10)ディスプレイの室内装飾性の評価
市販の50インチサイズのプラズマディスプレイ(プラズマテレビ)の前面フィルターを取り外して、実施例及び比較例のディスプレイ用フィルターを装着した。このプラズマディスプレイを、照度が500ルックス、広さが25平方メートルの室内の壁際に設置した。ディスプレイを消灯した状態で、ディスプレイ画面の光沢感を目視で評価し、室内装飾性とした。評価基準を以下に示す。
・光沢感があり、室内装飾性が良好である。 : ○(良)
・光沢感がやや劣るが、室内装飾性は維持できる : △(可)
・光沢感が無く、室内装飾性に劣る。 : ×(不可)
(12)表面品位の評価
ディスプレイ用フィルターサンプル(20cm×20cm)を視認面側(樹脂層側)が上になるように黒紙(王子特殊紙(株)製 ACカード #300)の上に貼り付ける。得られたサンプルを暗室中で、フィルターサンプルの直上200cmの場所に3波長蛍光灯(ナショナル パルック 3波長形昼白色(F.L 15EX-N 15W))を設置する。フィルターの視認面を正面30cmの距離から肉眼観察し、フィルター視認面表面の品位(ざらつき感)を目視評価する。
・表面形状が均一でざらつき感が見られない : ○(良)
・表面形状均一だが僅かにざらつき感がある : △(可)
・疎らに凸部がありざらつき感がある : ×(不可)
(13)ハードコート層に含まれる粒子の平均粒子径
粒子の平均粒子径は、レーザー回折法粒子径測定装置「MASTERSIZER2000(MALVERN社製)」を用いて測定されたものである。
【0155】
[実施例1]
以下の要領でディスプレイ用フィルターを作製した。
<導電性メッシュの作製>
光学用ポリエステルフィルム(東レ(株)製のルミラー(登録商標)、厚み100μm)の片面に、スパッタリング法によりニッケル層(厚み0.02μm)を形成した。さらにその上に、真空蒸着法により銅層(厚み2.5μm)を形成した。その後、この銅層側の表面にフォトレジスト層を塗工形成し、格子状メッシュパターンのマスクを介してフォトレジスト層を露光、現像し、次いでエッチング処理を施して、導電性メッシュを作製した。さらに、導電性メッシュに黒化処理(酸化処理)を施した。この導電性メッシュは、線幅が20μm、ピッチが300μm、厚みが2.5μmであった。
<ハードコート層の形成>
ウレタンアクリレート(新中村化学工業(株)製のNKオリゴU−4HA)45質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製DPHA)45質量部、メチルイソブチルケトン150質量部、イソプロピルアルコール20質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカル(製)イルガキュア184)4質量部、及びレベリング剤(共栄社化学(株)製の「ポリフローKL−600」)を1質量部、平均粒子径8μmのアクリル粒子を5質量部、含有するハードコート層形成用塗工液を調製した。
【0156】
この塗工液をマイクログラビアコーターで、上記で作製した導電性メッシュ上に塗工し、90℃で乾燥後、紫外線1.0J/cmを照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。このハードコート層の厚みは、7μmであった。また、このハードコート層におけるアクリル粒子の含有比率は、ハードコート層の全成分(有機溶媒は除く)100質量%に対して5質量%である。
<近赤外線遮蔽層の積層>
上記の導電性メッシュとハードコート層を有するPETフィルムの導電性メッシュとハードコート層とは反対側のPETフィルム面に、オレンジ光遮蔽機能を併せ持つ近赤外線遮蔽層(近赤外線吸収色素としてのフタロシアニン系色素とジイモニウム系色素、およびオレンジ光吸収色素としてのテトラアザポルフィリン系色素をアクリル系樹脂に混合した塗料を、乾燥膜厚みが12μmになるように塗工した層)を設けた。
<接着層の積層>
セパレートフィルム上に紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(日立化成ポリマー(株)製のハイボン(登録商標))をスリットダイコーターで、厚みが100μmになるように塗布した後、UV照射装置を用いて塗布膜を硬化し、続いてセパレートフィルムを貼り付けて、セパレートフィルムにサンドウィッチされた接着層を得た。次に、上記で作製した近赤外線遮蔽層の上に、一方のセパレートフィルムを剥離しながら接着層を積層し、ディスプレイ用フィルターを得た。
[実施例2〜10、比較例1〜5]
実施例1のハードコート層の形成において、アクリル粒子の平均粒子径、粒子の含有量、及びハードコート層の厚みを変更して、各種ハードコート層を形成した。
【0157】
実施例2〜10及び比較例1〜5におけるハードコート層の構成を表1に示す。
【0158】
ハードコート層を表1のように変更する以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜10及び比較例1〜5のディスプレイ用フィルターを作製した。
[実施例11〜14]
<導電性メッシュの作製>
光学用ポリエステルフィルム(東レ(株)製のルミラー(登録商標)、厚み100μm)の片面に、スパッタリング法によりニッケル層(厚み0.02μm)を形成し、その上に、真空蒸着法により銅層(厚み1.4μm)を形成し、更にその上に、スパッタリング法により窒化銅層(厚み0.08μm)を形成した。その後、この窒化銅層側の表面にフォトレジスト層を塗工形成し、格子状メッシュパターンのマスクを介してフォトレジスト層を露光、現像し、次いでエッチング処理を施して、導電性メッシュを作製した。この導電性メッシュは、線幅が6μm、ピッチが100μm、厚みが1.5μmであった。
<ハードコート層の形成>
実施例1のハードコート層の形成において、アクリル粒子の平均粒子径、粒子の含有量、及びハードコート層の厚みを変更して、各種ハードコート層を形成した。実施例11〜14におけるハードコート層の構成を表1に示す。
【0159】
上記の導電性メッシュ上に上記のハードコート層を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例11〜14のディスプレイ用フィルターを作製した。
(評価)
上記で作製したそれぞれのディスプレイ用フィルターについて、評価した結果を表1に示す。
【0160】
【表1】

【0161】
表1の結果から、本発明の実施例は、映り込み防止性、異物隠蔽性、室内装飾性、鉛筆硬度、及び表面品位のいずれも良好もしくは可以上であることが分かる。
【0162】
一方、比較例1は、ハードコート層に含まれる粒子の平均粒子径が、ハードコート層の厚み100%に対して60%未満であり、ハードコート層に凹凸構造が十分に形成されず、映り込み防止性、及び異物隠蔽性が劣っている。
【0163】
比較例2は、ハードコート層の厚みが3μm未満であり、異物隠蔽性、及び鉛筆硬度が劣っている。
【0164】
比較例3は、ハードコート層に導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造が形成されず、映り込み防止性、及び異物隠蔽性が劣っている。
【0165】
比較例4は、ハードコート層に粒子が18質量%より多く含まれるために、開口部にも凹凸構造が形成され、室内装飾性、及び表面品位が著しく低下している。
【0166】
比較例5は、ハードコート層に含まれる粒子の含有量が3質量%未満のために、ハードコート層に導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造が形成されず、映り込み防止性、及び異物隠蔽性が劣っている。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明のディスプレイ用フィルターの一例の模式断面図。
【符号の説明】
【0168】
1 基材
2 導電性メッシュの細線
3 ハードコート層
4 粒子
5 凸部の頂点
6 凹部の最低点
D 凹凸構造の高低差
L ハードコート層の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に凹凸構造を有する導電性メッシュを有し、該導電性メッシュ上に粒子を含むハードコート層が積層されたディスプレイ用フィルターであって、
前記導電性メッシュの厚み(Et)が3μm未満で、
前記ハードコート層の厚み(Ht)が3μm以上であり、
前記粒子の平均粒子径が、ハードコート層の厚み(Ht)100%に対して60%以上であり、
前記粒子をハードコート層の全成分100質量%に対して3質量%〜18質量%含有し、
かつ前記ハードコート層が、導電性メッシュの凹凸構造に由来する凹凸構造を有することを特徴とする、ディスプレイ用フィルター。
【請求項2】
前記ハードコート層に形成された凹凸構造の高低差(D)が、0.5μm〜5μmである、請求項1に記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項3】
前記ハードコート層の中心線平均粗さRaが150nm以上500nm未満である、請求項1または2に記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項4】
前記粒子の平均粒子径が、3μm〜20μmである、請求項1〜3のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項5】
前記ハードコート層の厚み(Ht)と前記導電性メッシュの厚み(Et)との比(Ht/Et)が、1.5以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。

【図1】
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【公開番号】特開2010−151887(P2010−151887A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327109(P2008−327109)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】