説明

ディスプレイ用光学フィルタ

【課題】近赤外線遮蔽剤等を含有する粘着剤層を有するディスプレイ用光学フィルタであって、高いコストをかけることなく近赤外線遮蔽剤等の劣化が抑制され、且つ密着性の低下が抑制されたディスプレイ用光学フィルタを提供する。
【解決手段】近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、ネオンカット機能、及び透過率調整機能からなる群から選択される少なくとも1種の機能を有する機能性材料、アクリル樹脂を含むアクリル樹脂系粘着剤、及び硬化剤を含む粘着剤層12を有するディスプレイ用光学フィルタであって、粘着剤層12が、平均粒径0.1〜20μmの微粒子19を含み、前記硬化剤が、エポキシ化合物系硬化剤であり、且つ当該エポキシ化合物系硬化剤の含有量が、前記アクリル樹脂100質量部に対して0.1〜0.3質量部であることを特徴とするディスプレイ用光学フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(電界発光)ディスプレイ等のディスプレイの画像表示部に用いられるディスプレイ用光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)等のディスプレイには、通常、前面(視聴者側)に光学フィルタが設置されている。光学フィルタは、近赤外線カット、色再現性向上(発光色純度向上)、電磁波シールド、明所コントラスト向上(反射防止)、発光パネルの保護、発光パネルからの熱遮断等を目的として使用される。
【0003】
特に、PDPの発光パネルの発する近赤外線は、家庭用テレビやビデオ等に使用されるリモコンに誤作動を与えることを避けるために、低減する必要がある。またPDPの発光パネルの発する電磁波は、人体や精密機器への悪影響を避けるために、抑制する必要がある。またPDPの発光パネルからの発光を、人間の視覚にとって自然な色に感じられるように、フィルタでの補正によって色再現性向上(発光色純度向上)の工夫も求められている。さらにディスプレイの表示は、明るい室内等の明所においても外部からの光の反射等によって妨げられることなく、十分なコントラストで視認されることが望ましい。加えて、ディスプレイ製品に直接に手で触れたような場合でも、使用者がその高温に驚かされるような事態を避けるために、PDPの発光パネルの発する熱が遮断されることが望ましい。
【0004】
上記の目的に沿ったPDP用光学フィルタとして、一般に、反射防止、近赤外線遮蔽、電磁波遮蔽、更に色再現性向上のためにネオン発光による不要光(波長が560〜610nmの光)をカットする機能(ネオンカット機能)等の各種機能を有する光学フィルタが用いられている。例えば、近赤外線遮蔽機能を有するものとしては、広範囲の波長の近赤外線を遮蔽でき、可視光線透過率が高いセシウム含有酸化タングステンを含むもの、及びシアニン系色素やフタロシアニン系色素等を含むものが開発されている(特許文献1及び2)。また、ネオンカット機能を有するものとしては、特定波長の選択吸収機能を有するスクアリリウム系化合物やアザポルフィリン系化合物を含むものが開発されている(特許文献3)。更に、特許文献3には、近赤外線吸収色素として、ジイモニウム塩化合物を含むものが開示されている。その他、無機顔料、アゾ系色素、金属錯塩アゾ色素、フタロシアニン系色素、アントラキノン系色素等を配合することにより、色調調整機能等が付与されたものも開発されている(特許文献4)。これらの色素を配合することで可視光の透過率を適度に調整する場合もある。
【0005】
一般に、PDP用光学フィルタは、各種機能を有する機能層(一般に、熱硬化性樹脂組成物や紫外線硬化性樹脂組成物等に上記化合物等を分散又は溶解した塗工液をフィルム上に塗工し、硬化して形成させる)を多数回塗工して積層したり、1種又は複数種の機能を有する光学フィルタを適宜組み合わせ、粘着剤層を介して貼り合わせたりすることにより形成されている。このように光学フィルタの構造が複雑になると、各種機能層を積層して塗工する工程や、複数の光学フィルタを貼り合わせる工程が複雑化し、製造コスト上昇の要因になるだけでなく、光学フィルタの重量や厚みが増加することになる。
【0006】
近年、光学フィルタには軽量化や薄膜化が要望されている。そのための手段として、光学フィルタにおいて積層する機能層の層数や張り合わせるフィルタ数を少なくし、構成を簡略することが考えられる。例えば、特許文献5には、近赤外線遮蔽剤として有用なタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物等を粘着剤層に含有させる技術が開示されている。光学フィルタの貼り合わせに必ず使用する粘着剤層に機能を付与することにより、光学フィルタの構成を簡素化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−21998号公報
【特許文献2】特開2009−271179号公報
【特許文献3】特開2005−92196号公報
【特許文献4】特開2000−340986号公報
【特許文献5】特開2009−271514号公報
【特許文献6】特開2010−60617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らの検討により、粘着剤層に近赤外線遮蔽剤等を含有させた場合、上述の熱硬化性樹脂等に配合した場合に比べて、近赤外線遮蔽剤等が劣化しやすくなる場合があること分かった。これは、一般にガラス転移点が低い粘着剤層においては、粘着剤成分、残渣成分、分解成分等と接触することにより、近赤外線遮蔽剤等の劣化が生じ易いものと考えられる。
【0009】
特許文献6には、ハードコート層又は粘着剤層に近赤外線吸収色素等を含有させた樹脂微粒子を用いることで、色素の安定化を図る手段が開示されている。しかしながら、この方法では、色素を含有させた樹脂微粒子の製造が煩雑で、高いコストがかかる点や、色素の分散性が微粒子の分散性に依存することになり、色素配合による近赤外線吸収効果が限定的になる点が問題になる。
【0010】
本発明者らは、特願2010−162556号、特願2010−162560号、特願2010−162648号、特願2010−162652号、特願2010−163055号、特願2010−163064号、特願2010−163078号(すべて未公開)において、ディスプレイ用光学フィルタにおける近赤外線遮蔽剤等を含有する粘着剤層に、平均粒子径0.1〜20μmの微粒子を粘着剤層に配合することで、高いコストをかけることなく、その近赤外線遮蔽剤等の劣化を抑制することができることを見出している。しかしながら、微粒子を粘着剤層に配合した場合、粘着剤層としての密着性が低下する場合がある。
【0011】
従って、本発明の目的は、近赤外線遮蔽剤等を含有する粘着剤層を有するディスプレイ用光学フィルタであって、高いコストをかけることなく近赤外線遮蔽剤等の劣化が抑制され、且つ密着性の低下が抑制されたディスプレイ用光学フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、ネオンカット機能、及び透過率調整機能からなる群から選択される少なくとも1種の機能を有する機能性材料、アクリル樹脂を含むアクリル樹脂系粘着剤、及び硬化剤を含む粘着剤層を有するディスプレイ用光学フィルタであって、前記粘着剤層が、平均粒径0.1〜20μmの微粒子を含み、前記硬化剤が、エポキシ化合物系硬化剤であり、且つ当該エポキシ化合物系硬化剤の含有量が、前記アクリル樹脂100質量部に対して0.1〜0.3質量部であることを特徴とするディスプレイ用光学フィルタによって達成される。
【0013】
粘着剤層に、上記の機能を有する色素や金属酸化物等の機能性材料を含有させることで、粘着剤層に近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、透過率調整機能、及びネオンカット機能の内少なくとも1種の機能を付与する。そして、上記の平均粒径の微粒子を配合することで、煩雑な手段を用いることなく、その機能性材料の劣化を抑制することができる。この作用機作は明らかではないが、微粒子が存在することにより、熱等による粘着剤成分や残渣成分の分解が抑制されることや、機能性材料と粘着剤との接触面積が低下し、粘着剤成分や残渣成分の分解物による機能性材料の劣化が抑制されること、粘着剤成分や残渣成分の分解物を微粒子が吸着すること等が考えられる。また、上記平均粒径の微粒子であれば、ディスプレイ用光学フィルタのヘイズ(くもり価)の上昇が抑えられる。一方、このような微粒子を配合すると、粘着剤層とこれを接着する透明プラスチックフィルム等の基板との密着性が低下する場合がある。本発明においては、アクリル樹脂系粘着剤を含む粘着剤層に対し、硬化剤としてエポキシ化合物系硬化剤を選定し、その硬化剤を上記の範囲の含有量で用いることで、粘着剤層と基板との密着性の低下を抑えることができる。これは、エポキシ化合物系硬化剤は反応速度が比較的遅く、上記の範囲の含有量であれば、ラミネート工程において、粘着剤層と基板との積層体を形成した後にも、未反応のエポキシ基が残存し、更に粘着剤層の硬化が進むため、密着性が向上するものと考えられる。エポキシ化合物系硬化剤が0.1質量部未満の場合は、未反応のエポキシ基があまり残存しないため、密着性を向上する効果が得られず、0.3質量部を超える場合は、未反応のエポキシ化合物系硬化剤が多く残存し過ぎるため、密着性の向上効果が得られない。
【0014】
本発明に係るディスプレイ用光学フィルタの好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記微粒子が、透明樹脂微粒子又はシリカ微粒子である。これにより、微粒子によるヘイズの上昇を、更に抑えることができる。
(2)前記透明樹脂微粒子が、架橋アクリル樹脂微粒子、架橋スチレン樹脂微粒子、架橋(メタ)アクリレート−スチレン共重合体微粒子、メラミン樹脂微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子である。
(3)前記微粒子の含有率が、前記粘着剤層の固形分を基準として、0.1〜20質量%である。これにより、上記機能性材料の劣化を、更に抑制することができ、且つ微粒子を含むことによる粘着剤層の接着力の低下が生じ難い。
(4)前記粘着剤層に接着する透明プラスチックフィルムを有する。粘着剤層を透明プラスチックフィルムに接着させた場合に、特に密着性の低下が問題となるため、本発明はこのような構成に特に有効である。
(5)前記機能性材料が、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物、又は色素である。
(6)前記タングステン酸化物が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素を表し、そして2.2≦z/y≦2.999である)で表され、そして
前記複合タングステン酸化物が、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Cs、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素を表し、そして0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3である)で表される。
(7)前記色素が、アントラキノン系色素、テトラアザポルフィリン系色素、黒色金属錯塩系色素、イモニウム塩系色素、シアニン系色素、及びフタロシアニン系色素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
(8)プラズマディスプレイパネル用である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のディスプレイ用光学フィルタによれば、粘着剤層に上記の機能を有する色素や金属酸化物等の機能性材料が配合されているので簡素化された層構成で、近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、透過率調整機能、及びネオンカット機能の内少なくとも1種の機能が付与されている、また、所定の微粒子の配合により、光学フィルタのヘイズを上昇させることなく、その機能性材料の劣化が抑制されている。更に、エポキシ化合物系硬化剤を所定の含有量で配合することで、粘着剤層と透明プラスチックフィルムとの密着性の低下を抑制することができる。従って、高いコストをかけることなく耐候性が高く、且つ密着性に優れたディスプレイ用光学フィルタとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のディスプレイ用光学フィルタの代表的な一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のディスプレイ用光学フィルタの好適態様の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の光学フィルタについて図面を参照しながら説明する。図1は本発明のディスプレイ用光学フィルタの代表的な一例を示す概略断面図である。
【0018】
図1に示すように、本発明のディスプレイ用光学フィルタ20は、矩形状の透明プラスチックフィルム11の表面に、機能性材料として近赤外線遮蔽機能を有する(複合)タングステン酸化物、平均粒径0.1〜20μmの微粒子19、アクリル樹脂を含むアクリル樹脂系粘着剤、及び硬化剤としてエポキシ化合物系硬化剤を含む粘着剤層12が形成されている。エポキシ化合物系硬化剤は、アクリル樹脂100質量部に対して、0.1〜0.3質量部になるように含有されている。
【0019】
ここで機能性材料として用いた(複合)タングステン酸化物は、800〜1100nmの波長範囲の近赤外線吸収性が高く、可視光透過率が高いので、ディスプレイ用光学フィルタの近赤外線遮蔽剤として有用である。通常、(複合)タングステン酸化物を用いる場合は、熱硬化性樹脂組成物等に配合した塗工液を用いて、塗工・硬化することにより、別途、近赤外線遮蔽層を形成する。本発明のように粘着剤層に近赤外線遮蔽機能を付与することにより、層構成を簡素化することができる。ただし、粘着剤層に(複合)タングステン酸化物を配合した場合、(複合)タングステン酸化物が劣化し易くなる場合がある。この原因としては、一般にガラス転移点が低い粘着剤層においては、粘着剤成分、残渣成分、分解成分等と接触することにより、近赤外線遮蔽剤等の劣化が生じるためと考えられる。
【0020】
本発明においては、微粒子19を配合することにより、(複合)タングステン酸化物の劣化が抑制されている。この作用機作は明らかではないが、粘着剤層12に微粒子19が存在することにより、熱や光による粘着剤成分や残渣成分の分解が抑制されることや、(複合)タングステン酸化物と粘着剤との接触面積が低下し、粘着剤成分や残渣成分の分解物による(複合)タングステン酸化物の劣化が抑制されること、粘着剤成分や残渣成分の分解物を微粒子が吸着すること等が考えられる。
【0021】
一方、このような微粒子19を配合すると、粘着剤層12と透明プラスチックフィルム11との密着性が低下する場合がある。例えば、ディスプレイ用光学フィルタ20について、冷却加熱を一定期間で繰り返し行うヒートサイクル試験を行った場合の耐久性が低下する場合がある。本発明においては、アクリル樹脂系粘着剤を含む粘着剤層12に使用する硬化剤としてエポキシ系硬化剤を選定し、これを上記の範囲の含有量で用いることで、粘着剤層12と透明プラスチックフィルム11との密着性の低下を抑えることができることが見出された。
【0022】
硬化剤(架橋剤ともいう)にはエポキシ化合物系硬化剤、イソシアネート化合物系硬化剤、金属キレート化合物系硬化剤、アジリジン化合物系硬化剤及びアミノ樹脂系硬化剤等が挙げられる。この中でエポキシ化合物系硬化剤は、イソシアネート化合物系硬化剤に比べて反応速度が遅く、上記の範囲の含有量であれば、ラミネート工程において、粘着剤層12と透明プラスチックフィルム11との積層体を形成した後にも、未反応のエポキシ基が残存し、更に粘着剤層の硬化が進むため、密着性が向上するものと考えられる。エポキシ化合物系硬化剤が0.1質量部未満の場合は、未反応のエポキシ基があまり残存しないため、密着性を向上する効果が認められず、0.3質量部を超える場合は、未反応のエポキシ化合物系硬化剤が多く残存し過ぎるため、密着性の向上効果が認められない。エポキシ化合物系硬化剤としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物系硬化剤が好ましい。
【0023】
粘着剤層12に配合する機能性材料としては、近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、ネオンカット機能、及び透過率調整機能を有するものが挙げられる。本発明において、このような機能を有する機能性材料であれば、特に制限なく使用することができる。これらは、例えば、(複合)タングステン酸化物等の金属酸化物や有機又は無機系の色素等であり、粘着剤層12に配合した場合に、(複合)タングステン酸化物と同様に、劣化が生じるものである。具体的には、上述のタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の他、アントラキノン系色素、テトラアザポルフィリン系色素、黒色金属錯塩系色素、イモニウム塩系色素、シアニン系色素、及びフタロシアニン系色素が好ましく挙げられる。これらの機能性材料は、単独で、又は互いの安定性を損なうようなことが無い範囲で2種以上を混合して使用することもできる。
【0024】
また、粘着剤層12は、一般に、図1に示すように、透明プラスチックフィルム11等の透明基板の表面に形成され、PDP等のディスプレイパネル本体、ガラス基板、及び別のプラスチックフィルム等との接着に利用される。但し、本発明のディスプレイ用光学フィルタは、機能性材料及び微粒子等を含む粘着剤層12を有していれば良く、透明プラスチックフィルム11は無くても良い。例えば、粘着剤層12の両面に剥離シートを設け、粘着剤シート状の独立したディスプレイ用光学フィルタとして使用しても良い。本発明のディスプレイ用光学フィルタは、特に粘着剤層と透明プラスチックフィルムとの密着性の低下を抑制するので、図1に示すような透明プラスチックフィルム11を有する構成が好ましい。本発明のディスプレイ用光学フィルタは、通常は、後述するように、各種機能を有する他の機能層を組み合わせて、用途に応じたディスプレイ用光学フィルタとして使用する。
【0025】
[微粒子」
本発明において、微粒子19は上記のように平均粒径が0.1〜20μmであれば良い。この平均粒径の微粒子であれば、(複合)タングステン酸化物等の機能性材料の劣化抑制効果を発揮し、且つディスプレイ用光学フィルタのヘイズの上昇が抑えられる。微粒子の平均粒径が20μmより大きい場合は、光散乱によりディスプレイ用光学フィルタ20のヘイズが上昇する場合がある。微粒子19の平均粒径は、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmが更に好ましい。
【0026】
微粒子としては、特に制限はなく、有機系又は無機系の微粒子を適宜使用できる。有機系微粒子としては、架橋又は非架橋の、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート(PMMA)等)、スチレン樹脂、(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、メラミン樹脂(メラミン−ホルムアルデヒド縮合物からなる樹脂(通常、架橋されいている))、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、等の微粒子が挙げられる。無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、カオリナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス等の微粒子が挙げられる。これらの微粒子は、その表面特性を疎水性にしたもの、親水性にしたものの何れでも良く、単独もしくは複数を混合して用いることができる。
【0027】
これらの微粒子は、(複合)タングステン酸化物等の機能性材料の劣化を促進させたり、ヘイズを上昇させたりしないように、(複合)タングステン酸化物等の機能性材料と反応性がないことが好ましい。
【0028】
本発明において、微粒子は、よりヘイズを上昇させないため、透明微粒子が好ましく、透明樹脂微粒子又はシリカ微粒子が好ましい。更に、微粒子の屈折率が、粘着剤の屈折率に近いことが好ましい(例えば、屈折率差が±0.1程度)。
【0029】
また、透明樹脂微粒子の場合は、粘着剤層の組成物中で溶解しないように、架橋構造を有する樹脂製のものが好ましい。即ち、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン樹脂及び、架橋(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、メラミン樹脂等の微粒子が好ましい。
【0030】
シリカ微粒子の場合は、例えば、非晶質(アモルファス)シリカの、疎水性フュームドシリカ、親水性フュームドシリカ、疎水性湿式法シリカ、親水性湿式法シリカ等のシリカ微粒子を挙げることができる。
【0031】
微粒子19の含有率は特に制限はないが、粘着剤層12の固形分を基準として、0.1〜20質量%が好ましい。これにより、(複合)タングステン酸化物等の機能性材料の劣化を、更に抑制することができる。微粒子19の含有率が0.1質量%より小さい場合は、効果が得られない場合があり、20質量%より大きい場合は、粘着剤層12の粘着性が低下する場合がある。微粒子19の含有率は、粘着剤層12の固形分を基準として、1〜10質量%が更に好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。
【0032】
[アクリル樹脂系粘着剤]
本発明において、アクリル樹脂系粘着剤はアクリル樹脂を主成分として含んでいればどのような粘着性樹脂でも良い。
【0033】
上記好ましいアクリル樹脂の構成成分(モノマー)として、下記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、芳香環含有モノマー、水酸基含有モノマー、分子内にカルボキシル基を有するモノマー、アミノ基含有モノマー等の化合物を挙げることができる。
【0034】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好ましい例として;炭素数1〜12の直鎖又は分岐していても良いアルキル基を分子内に有する(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートを挙げることができる((メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの両方を意味する)。特に、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0035】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの特に好ましい例として;メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0036】
芳香環含有モノマー(分子構造中に芳香族基を含む共重合可能な化合物)の好ましい例としては;フェニルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化β−ナフトールアクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等を挙げることができる。特に、フェニルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0037】
水酸基含有モノマーの例としては;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール等を挙げることができる。特に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0038】
更に、分子内にカルボキシル基を有するモノマーの好ましい例としては、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、3−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、4−カルボキシブチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及び無水マレイン酸等を挙げることができる。特に、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0039】
また、アミノ基含有モノマーの好ましい例としては、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等を挙げることができる。特に、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0040】
上記モノマー成分は、必要とする物性に合わせて適宜採用される。
本発明において、好ましいアクリル樹脂の構成成分(モノマー)混合物の配合量は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル:4.5〜89質量%(特に22.7〜69質量%)、芳香環含有モノマー:10〜85質量%(特に30〜70質量%)、水酸基含有モノマー:1〜10質量%(特に0.05〜0.5質量%)、カルボキシル基を有するモノマー:0〜10質量%(特に0〜5質量%)、アミノ基含有モノマー0〜0.5質量%(特に0〜0.3質量%)である。
【0041】
前記モノマー混合物には、必要に応じて、その他の単量体を混合させても良い。その他の単量体の例としては、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基含有(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、塩化ビニル並びに(メタ)アクリロニトリル等を挙げることができる。その他のモノマーの混合比は、0〜10質量%の割合で含ませることができる。
【0042】
上記アクリル樹脂は、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法及び懸濁重合法等の従来公知の重合法により製造することができるが、乳化剤や懸濁剤等の重合安定剤を含まない溶液重合法及び塊状重合法により製造したものが好ましい。また、前記アクリル系ポリマーのゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、80万〜160万であり、好ましくは80万〜150万である。Mwが、80万未満であると、硬化剤配合を好適な範囲に調製しても、熱時の粘着剤の凝集力が十分でなく、高温条件下での発泡が生じやすく、160万を超えると、粘着剤の応力緩和性が低下しやすい。重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が10〜50であることが好ましい。さらに20〜50であるのが好適である。前記比(Mw/Mn)が大きくなりすぎると、低分子量ポリマーが増加し、発泡が生じやすくなり、逆に前記比(Mw/Mn)が小さくなりすぎると、応力緩和性が低下しやすくなる。
【0043】
[エポキシ化合物系硬化剤]
本発明において、エポキシ化合物系硬化剤は、どのようなものでも良い。好ましくは、分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物系硬化剤が好ましい。
【0044】
分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物系硬化剤としては、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリジル−m−キシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、m−N,N−ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N−ジグリシジルアニリン、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0045】
上記架橋剤の配合量は、上述の通りアクリル樹脂100質量部に対して0.1〜0.3質量部である。
【0046】
なお、本発明において、粘着剤組成物には、透明性、視認性及び本発明の効果を損なわない範囲で有れば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、粘着付与樹脂、可塑剤、消泡剤及び濡れ性調製剤等を配合しても良い。
【0047】
[機能性材料]
本発明において、機能性材料は、上述の通り、近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、ネオンカット機能、及び透過率調整機能を有するものが挙げられる。このような機能を有する機能性材料であれば、特に制限なく使用することができる。具体的には、例えば、近赤外線遮蔽機能を有する機能性材料として上述のタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の他、イモニウム塩系色素、シアニン系色素、及びフタロシアニン系色素が挙げられ、色調調整機能を有する機能性材料としてアントラキノン系色素、ネオンカット機能を有する機能性材料としてテトラアザポルフィリン系色素、透過率調整機能を有する機能性材料として黒色金属錯塩系色素が好ましく挙げられる。
【0048】
[(複合)タングステン酸化物]
本発明において、近赤外線遮蔽機能を有する機能性材料として、例えば、(複合)タングステン酸化物を好ましく使用することができる。(複合)タングステン酸化物は、耐候性が高く、可視光線をほとんど遮断せず、近赤外線(特に、50〜1150nm付近の近赤外線)の遮断機能に優れている点で有用である。
【0049】
上記タングステン酸化物は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表される酸化物であり、複合タングステン酸化物は、上記タングステン酸化物に、元素M(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Cs、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素)を添加した組成を有するものが好ましい。これにより、z/y=3.0の場合も含めて、WyOz中に自由電子が生成され、近赤外線領域に自由電子由来の吸収特性が発現し、1000nm付近の近赤外線吸収材料として有効となる。本発明では、複合タングステン酸化物が好ましい。
【0050】
上述した一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子において、タングステンと酸素との好ましい組成範囲は、タングステンに対する酸素の組成比が3よりも少なく、さらには、当該赤外線遮蔽材料をWyOzと記載したとき、2.2≦z/y≦2.999である。このz/yの値が、2.2以上であれば、赤外線遮蔽材料中に目的以外であるWO2の結晶相が現れるのを回避することが出来るとともに、材料としての化学的安定性を得ることが出来るので有効な赤外線遮蔽材料として適用できる。一方、このz/yの値が、2.999以下であれば必要とされる量の自由電子が生成され効率よい赤外線遮蔽材料となり得る。
【0051】
複合タングステン酸化物の微粒子は、安定性の観点から、一般に、MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Cs、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、(0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3)で表される酸化物であることが好ましい。アルカリ金属は、水素を除く周期表第1族元素、アルカリ土類金属は周期表第2族元素、希土類元素は、Sc、Y及びランタノイド元素である。
【0052】
特に、赤外線遮蔽材料としての光学特性、耐候性を向上させる観点から、M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちの1種類以上であるものが好ましい。また複合タングステン酸化物が、シランカップリング剤で処理されていることが好ましい。優れた分散性が得られ、優れた赤外線カット機能、透明性が得られる。
【0053】
元素Mの添加量を示すx/yの値が0.001より大きければ、十分な量の自由電子が生成され赤外線遮蔽効果を十分に得ることが出来る。元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、赤外線遮蔽効果も上昇するが、x/yの値が1程度で飽和する。また、x/yの値が1より小さければ、微粒子含有層中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。
【0054】
酸素量の制御を示すz/yの値については、MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物においても、上述のWyOzで表記される赤外線遮蔽材料と同様の機構が働くことに加え、z/y=3.0においても、上述した元素Mの添加量による自由電子の供給があるため、2.2≦z/y≦3.0が好ましく、さらに好ましくは2.45≦z/y≦3.0である。
【0055】
さらに、複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を有する場合、当該微粒子の可視光領域の透過が向上し、近赤外領域の吸収が向上する。
【0056】
この六角形の空隙に元素Mの陽イオンが添加されて存在するとき、可視光領域の透過が向上し、近赤外領域の吸収が向上する。ここで、一般的には、イオン半径の大きな元素Mを添加したとき当該六方晶が形成され、具体的には、Cs、K、Rb、Tl、In、Ba、Sn、Li、Ca、Sr、Feを添加したとき六方晶が形成されやすい。勿論これら以外の元素でも、WO6単位で形成される六角形の空隙に添加元素Mが存在すれば良く、上記元素に限定される訳ではない。
【0057】
六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子が均一な結晶構造を有するとき、添加元素Mの添加量は、x/yの値で0.2以上0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.33である。x/yの値が0.33となることで、添加元素Mが、六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
【0058】
また、六方晶以外では、正方晶、立方晶のタングステンブロンズも赤外線遮蔽効果がある。そして、これらの結晶構造によって、近赤外線領域の吸収位置が変化する傾向があり、立方晶<正方晶<六方晶の順に、吸収位置が長波長側に移動する傾向がある。また、それに付随して可視光線領域の吸収が少ないのは、六方晶<正方晶<立方晶の順である。このため、より可視光領域の光を透過して、より赤外線領域の光を遮蔽する用途には、六方晶のタングステンブロンズを用いることが好ましい。
【0059】
本発明で使用される複合タングステン酸化物微粒子の粒径は、透明性を保持する観点から、800nm以下の粒径(平均粒径)を有していることが好ましい。これは、800nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光線領域の視認性を保持し、同時に効率良く透明性を保持することができるからである。特に可視光領域の透明性を重視する場合は、さらに粒子による散乱を考慮することが好ましい。この粒子による散乱の低減を重視するとき、粒径は400nm以下、好ましくは200nm以下が良い。
【0060】
また、本発明の複合タングステン酸化物微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alの一種類以上を含有する酸化物で被覆されていることは、耐候性の向上の観点から好ましい。
【0061】
本発明の複合タングステン酸化物微粒子は、例えば下記のようにして製造される。
【0062】
上記一般式WyOzで表記されるタングステン酸化物微粒子、または/及び、MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子は、タングステン化合物出発原料を不活性ガス雰囲気もしくは還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。
【0063】
タングステン化合物出発原料には、3酸化タングステン粉末、もしくは酸化タングステンの水和物、もしくは、6塩化タングステン粉末、もしくはタングステン酸アンモニウム粉末、もしくは、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させた後乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、もしくは、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿させこれを乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、もしくはタングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、金属タングステン粉末から選ばれたいずれか一種類以上であることが好ましい。
【0064】
ここで、タングステン酸化物微粒子を製造する場合には製造工程の容易さの観点より、タングステン酸化物の水和物粉末、もしくはタングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、を用いることがさらに好ましく、複合タングステン酸化物微粒子を製造する場合には、出発原料が溶液であると各元素を容易に均一混合可能となる観点より、タングステン酸アンモニウム水溶液や、6塩化タングステン溶液を用いることがさらに好ましい。これら原料を用い、これを不活性ガス雰囲気もしくは還元性ガス雰囲気中で熱処理して、上述した粒径のタングステン酸化物微粒子、または/及び、複合タングステン酸化物微粒子を得ることができる。
【0065】
また、上記元素Mを含む一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物微粒子は、上述した一般式WyOzで表されるタングステン酸化物微粒子のタングステン化合物出発原料と同様であり、さらに元素Mを、元素単体または化合物の形で含有するタングステン化合物を出発原料とする。ここで、各成分が分子レベルで均一混合した出発原料を製造するためには各原料を溶液で混合することが好ましく、元素Mを含むタングステン化合物出発原料が、水や有機溶媒等の溶媒に溶解可能なものであることが好ましい。例えば、元素Mを含有するタングステン酸塩、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酸化物、等が挙げられるが、これらに限定されず、溶液状になるものであれば好ましい。
【0066】
ここで、不活性雰囲気中における熱処理条件としては、650℃以上が好ましい。650℃以上で熱処理された出発原料は、十分な着色力を有し近赤外線遮蔽微粒子として効率が良い。不活性ガスとしてはAr、N2等の不活性ガスを用いることが良い。また、還元性雰囲気中の熱処理条件としては、まず出発原料を還元性ガス雰囲気中にて100〜650℃で熱処理し、次いで不活性ガス雰囲気中で650〜1200℃の温度で熱処理することが良い。この時の還元性ガスは、特に限定されないがH2が好ましい。また還元性ガスとしてH2を用いる場合は、還元雰囲気の組成として、H2が体積比で0.1%以上が好ましく、さらに好ましくは2%以上が良い。0.1%以上であれば効率よく還元を進めることができる。
【0067】
水素で還元された原料粉末はマグネリ相を含み、良好な近赤外線遮蔽特性を示し、この状態で近赤外線遮蔽微粒子として使用可能である。しかし、酸化タングステン中に含まれる水素が不安定であるため、耐候性の面で応用が限定される可能性がある。そこで、この水素を含む酸化タングステン化合物を、不活性雰囲気中、650℃以上で熱処理することで、さらに安定な近赤外線遮蔽微粒子を得ることができる。この650℃以上の熱処理時の雰囲気は特に限定されないが、工業的観点から、N2、Arが好ましい。当該650℃以上の熱処理により、近赤外線遮蔽微粒子中にマグネリ相が得られ耐候性が向上する。
【0068】
本発明の複合タングステン酸化物微粒子は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。シランカップリング剤が好ましい。これにより中間層、ハードコート層、熱線カット層等のバインダとの親和性が良好となり、透明性、熱線カット性の他、各種物性が向上する。
【0069】
シランカップリング剤の例として、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシアクリルシランを挙げることができる。ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、トリメトキシアクリルシランが好ましい。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。また上記化合物の含有量は、複合タングステン酸化物微粒子100質量部に対して5〜20質量部で使用することが好ましい。
【0070】
[イモニウム塩系色素]
本発明において、近赤外線遮蔽機能を有する機能性材料として、イモニウム塩系色素を用いることもできる。イモニウム塩系色素は、近赤外線領域の吸収が大きく、且つ可視光線領域の吸収が小さいため、色目を悪化させることなく近赤外線遮蔽を行うことが出来る点で好ましい。イモニウム塩系色素には、特に制限はないが、下記式(I)及び(II)のいずれかで表されるジイモニウム塩系色素が好ましい。
【0071】
【化1】

【0072】
[前記式(I)および(II)において、R7〜R10は、アルキル基、アリール基、芳香族環を有する基、水素原子及びハロゲン原子の少なくともいずれかであり、X-は1価の負イオンであり、Y2-は2価の負イオンである。]
【0073】
前記式(I)において、Xで表される1価の負イオンとしては、I、Cl-、Br-、F-等のハロゲンイオン、NO3、BF4、PF6-、ClO4、SbF6等の無機酸イオン、CH3COO-、CF3COO、安息香酸イオン等の有機カルボン酸イオン、CH3SO3、CF3SO3、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン等の有機スルホン酸イオン等が挙げられる。
【0074】
前記式(II)において、Y2-で表される2価の負イオンとしては、スルホン酸基を2個有する芳香族ジスルホン酸イオンが好ましく、例えば、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、R酸、G酸、H酸、ベンゾイルH酸(H酸のアミノ基にベンゾイル基が結合したもの)、p−クロルベンゾイルH酸、p−トルエンスルホニルH酸、クロルH酸(H酸のアミノ基が塩素原子に置換したもの)、クロルアセチルH酸、メタニルγ酸、6−スルホナフチル−γ酸、C酸、ε酸、p−トルエンスルホニルR酸、ナフタリン−1,6−ジスルホン酸、1−ナフトール−4,8−ジスルホン酸等のナフタレンジスルホン酸誘導体、カルボニルJ酸、4,4−ジアミノスチルベン−2,2'−ジスルホン酸、ジJ酸、ナフタル酸、ナフタリン−2,3−ジカルボン酸、ジフェン酸、スチルベン−4,4'−ジカルボン酸、6−スルホ−2−オキシ3−ナフトエ酸、アントラキノン−1,8−ジスルホン酸、1,6−ジアミノアントラキノン−2,7−ジスルホン酸、2−(4−スルホフェニル)−6−アミノベンゾトリアゾール−5−スルホン酸、6−(3−メチル−5−ピラゾロニル)−ナフタレン−1,3−ジスルホン酸、1−ナフトール−6−(4−アミノ−3スルホ)アニリノ−3−スルホン酸などのイオンが挙げられる。これらの中でも、ナフタレンジスルホン酸イオンが好ましく、式(III)で表されるイオンが特に好ましい。
【0075】
【化2】

【0076】
前記式(III)において、R11及びR12は、低級アルキル基、水酸基、アルキルアミノ基、アミノ基、−NHCOR13、−NHSO213、−OSO213(但し、R13は、アリール基及びアルキル基の少なくともいずれかを表す。R13は、置換基を有していてもよい。)、アセチル基、水素原子及びハロゲン原子の少なくともいずれかである。
【0077】
また、ジイモニウム塩系色素としては、下記式(IV)で表されるものも好適に挙げられる。
【0078】
【化3】

【0079】
[式(IV)において、Rは、炭素数1〜8のアルキル基であり、X-は1価の負イオンである。]
前記式(IV)において、Rは、n−ブチル基が特に好ましい。Xとしては、BF4、PF6-、ClO4、SbF6等が好適に挙げられる。
【0080】
本発明において、イモニウム塩系色素の極大吸収波長は特に制限は無いが、近赤外線遮蔽剤として使用するために、800〜1250nmに極大吸収波長を有するイモニウム塩系色素が好ましい。
【0081】
[シアニン系色素]
本発明において、近赤外線遮蔽機能を有する機能性材料として、シアニン系色素を用いることもできる。シアニン系色素は、近赤外線領域の吸収が大きく、且つ可視光線領域の吸収が小さいため、画像の色調を悪化させることなく近赤外線遮蔽を行うことが出来る点で好ましい。
【0082】
本発明において、シアニン系色素は、特に制限はないが、下記式(1)で表されるシアニン系色素が好ましい。
【0083】
【化4】

【0084】
[前記式(1)において、Aはエチレン基を含む2価の連結基であり、R1及びR2は炭素原子を含む1価の基であり、X-は1価の負イオンである。]
【0085】
前記式(1)におけるAは、近赤外線遮蔽性に優れると共に、可視光線の透過性に優れ、色調が良好となる点で、下記式(2)〜(4)の少なくともいずれかで表されるのが好ましい。
【0086】
【化5】

【0087】
前記式(2)〜(4)において、Yは、アルキル基、ジフェニルアミノ基、ハロゲン原子及び水素原子で示される少なくとも1種である。
【0088】
前記式(1)において、Aが、前記式(3)の場合の具体例を下記式(5)に、前記式(4)の場合の具体例を下記式(6)に、前記式(2)の場合の具体例を下記式(7)に、各々示す。
【0089】
【化6】

【0090】
前記式(1)のR1及びR2における炭素原子を含む1価の基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基(直鎖、分枝又は環状である)、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、スルホニルアルキル基、シアノ基、またはアルキルアリール基などが用いられる。また、前記炭素原子を含む1価の基は、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エポキシ基、エーテル基、アミノ基、ニトロ基、ニトリル基、シリル基、スルホン酸基、リン酸基、水素原子、酸素原子、窒素原子、ハロゲン原子、および硫黄原子などをさらに含んでいてもよい。
【0091】
前記式(1)において、Xとしては、I、Br、ClO4、BF4、PF6、SbF6、CH3SO4、NO3及びCH3−C64−SO3などが用いられる。
【0092】
本発明において、シアニン系色素の極大吸収波長は特に制限は無いが、近赤外線遮蔽剤として使用するために、750〜950nmに極大吸収波長を有するシアニン系色素が好ましい。
【0093】
[フタロシアニン系色素]
本発明において、近赤外線遮蔽機能を有する機能性材料として、フタロシアニン系色素を用いることもできる。フタロシアニン系色素は、近赤外線領域の吸収が大きく、且つ可視光線領域の吸収が小さいため、画像の色調を悪化させることなく近赤外線遮蔽を行うことが出来る点で好ましい。本発明において、フタロシアニン系色素としては、特に制限はないが、下記式(I)で表されるフタロシアニン系色素が好ましい。
【0094】
【化7】

【0095】
式(I)中、A1〜A16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシスルホニル基、アミノスルホニル基、チオール基及び、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基、アルコキシ基、炭素原子数6〜20個のアリール基、アリールオキシ基等の置換基のいずれかを表す。炭素原子数1〜20の置換基は、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、及び、ハロゲン原子のいずれかを1個以上含んでいてもよい。又、隣り合う2個の置換基は、連結基を介して繋がっていてもよい。但し、A1〜A16のうち、少なくとも4つは、硫黄原子を介する置換基及び窒素原子を介する置換基の少なくともいずれかである。M1は、2個の水素原子、2価の金属原子、3価又は4価の置換金属原子、及び、オキシ金属のいずれかを表す。
【0096】
式(I)におけるA1〜A16のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。また、置換基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基、メチルチオ基、n−ペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等のアルキルチオ基、フェニルチオ基等のアリールチオ基、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のアラルキルチオ基、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、n−ヘプチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基等のアルキルスルホニル基、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等のアリールスルホニル基、ベンジルスルホニル基、フェネチルスルホニル基等のアラルキルスルホニル基、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基等のアルキルカルボニル基、その他、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、ピロール基、イミダゾール基、ピペリジン基、モルホリン基等の複素環基等が挙げられる。
【0097】
また、金属M1としての2価の金属原子としては、例えば、Cu(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Cd(II)、Hg(II)、Pb(II)、Sn(II)などが挙げられる。3価の置換金属原子としては、例えば、Al−F、Al−Cl、Al−Br、Al−I、Fe−Cl、Ga−F、Ga−Cl、Ga−I、Ga−Br、In−F、In−Cl、In−Br、In−I、Tl−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Al−C65、Al−C64(CH3)、In−C65、In−C64(CH3)、In−C65、Mn(OH)、Mn(OC65)、Mn〔OSi(CH33〕、Ru−Cl等が挙げられる。4価の置換金属原子の例としては、CrCl2、SiF2、SiCl2、SiBr2、SiI2、ZrCl2、GeF2、GeCl2、GeBr2、GeI2、SnF2、SnCl2、SnBr2、TiF2、TiCl2、TiBr2、Ge(OH)2、Mn(OH)2、Si(OH)2、Sn(OH)2、Zr(OH)2、Cr(R12、Ge(R12、Si(R12、Sn(R12、Ti(R12{R1は、アルキル基、フェニル基、ナフチル基またはそれらの誘導体を表す}Cr(OR22、Ge(OR22、Si(OR22、Sn(OR22、Ti(OR22、{R2は、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基またはそれらの誘導体を表す}、Sn(SR32、Ge(SR32{R3は、アルキル基、フェニル基、ナフチル基またはそれらの誘導体を表す}などが挙げられる。オキシ金属の例としては、VO、MnO、TiOなどが挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0098】
本発明において、フタロシアニン系色素の極大吸収波長は特に制限は無いが、近赤外線遮蔽剤として使用するために、750〜950nmに極大吸収波長を有するフタロシアニン系色素が好ましい。
【0099】
[アントラキノン系色素]
本発明において、色調調整機能を有する機能性材料として、例えば、アントラキノン系色素を好ましく使用することができる。アントラキノン系色素は、樹脂材料に相溶性が高く、多くの種類が有り、黄、赤、青、近赤外等、種々の波長に極大吸収を有するため、所望の色調調整を行うことが出来る点で、色調調整剤として有用である。本発明において、アントラキノン系色素は下記式(I)のアントラキノン又はその誘導体を骨格とする構造を有する色素であればどのようなものを用いても良い。
【0100】
【化8】

【0101】
例えば、1,4−ジアミノ−2,3−ジフェノキシ−9.10−アントラセンジオン、1,4−ビス(ブチルアミノ)−9,10−アントラキノン、1,4−ビス[(2,6−ジエチル−4−メチルフェニル)アミノ]−9,10−アントラキノン、1−アミノ−4−[[4−[(ジメチルアミノ)メチル]フェニル]アミノ]−9,10−アントラセンジオン、1,5−ジアミノ−4,8−ジヒドロキシアントラキノン、1,5−ジヒドロキシ−4,8−ジニトロアントラキノン、1,8−ジヒドロキシ−4,5−ジニトロアントラキノン、1−アセトアミド−4−ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノン、1−ヒドロキシ−4−ニトロアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、2−アミノ−3−ヒドロキシアントラキノン、アシッドバイオレット43、アリザリン、アリザリンコンプレクソン、アリザリン−5−スルホン酸、アントラルフィン、カルミン酸、クリサジン、コチニール、エモディン、キニザリン、キニザリンブルー、ラッカイン酸、プルプリン、1,4−ジアミノ−2,3−ジクロロアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン1,5−ジアミノアントラキノン、1−(メチルアミノ)アントラキノン、1−アセトアミド−4−ヒドロキシアントラキノン、スダンブルー、1−アミノ−4−ブロモアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム塩、アリザリンアストロール、1,1’−イミノジアントラキノン、1,4−ジクロロアントラキノン、1,5−ジブロモアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン等を挙げることができる。
【0102】
また、カラーインデックス(C.I)番号58000〜72999のアントラキノン系色素、例えば、C.I.P.Y.147(C.I.番号60645)、C.I.P.R.177(C.I.番号65300)を用いることができる。
【0103】
本発明において、アントラキノン系色素の極大吸収波長は特に制限は無いが、色調調整剤として所望の波長の色調を調整するために、350〜700nmに極大吸収波長を有するアントラキノン系色素が好ましい。
【0104】
[テトラアザポルフィリン系色素]
本発明において、ネオンカット機能を有する機能性材料として、例えば、テトラアザポリフィリン系色素を好ましく使用することができる。テトラアザポルフィリン系色素は、例えば、PDPのネオン発光による不要な光線を吸収し、それ以外の可視光波長において吸収が小さい選択吸収性を有する点で、優れたネオンカット効果を示す。本発明において、テトラアザポルフィリン系色素は、テトラアザポルフィリン又はその誘導体を骨格とする構造を有する色素であれば、どのようなものを用いても良い。例えば、下記式(I)のテトラポルフィリン化合物が挙げられる。
【0105】
【化9】

【0106】
[式(I)中、R1〜R8は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基、ハロゲノアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、R1とR2、R3とR4、R5とR6、R7とR8は各々独立に連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価1置換金属原子、4価2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。]
【0107】
式中、R1〜R8の具体例として、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、直鎖、分岐又は環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、3−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、1,2,2−トリメチルブチル基、2−エチルヘキシル基、2,5−ジメチルヘキシル基、2,5,5−トリメチルペンチル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1−シクロペンチル−2,2−ジメチルプロピル基、1−シクロへキシル−2,2−ジメチルプロピル基等の炭素原子数1〜20のアルキル基が挙げられ、ハロゲノアルキル基としては、 クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリフルオロメチル基等の炭素原子数1〜20のハロゲノアルキル基が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−ドデシルオキシ基等の炭素原子数1〜20のアルコキシ基が挙げられ、ハロゲノアルコキシ基としては、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエトキシ基、1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、2−(パーフルオロ−1−メチルブチル)−1−エトキシ基、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エトキシ基、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エトキシ基、2H−ヘキサフルオロ−2−ポロポキシ基、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−1−プロポキシ基等の炭素原子数2〜20の直鎖又は分岐のハロゲノアルコキシ基が挙げられ、アルコキシアルコキシ基としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、3−メトキシプロピルオキシ基等の炭素原子数2〜20のアルコキシアルコキシ基が挙げられ、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基等の炭素原子数6〜20のアリールオキシ基が挙げられ、モノアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基等の炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基が挙げられ、ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ基等の炭素数2〜20のジアルキルアミノ基が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、ニトロベンジル基、シアノベンジル基、ヒドロキシベンジル基、メチルベンジル基、ジクロロベンジル基、メトキシベンジル基、エトキシベンジル基、トリフルオロメチルベンジル基、ニトロナフチルメチル基、メチルナフチルメチル基等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メチルフェニル基、ヒドロキシナフチル基、メチルナフチル基、トリフルオロメチルナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基が挙げられ、ヘテロアリール基としては、ピロリル基、チエニル基、フラニル基、オキサゾイル基、イソオキサゾイル基、ベンゾフラニル基、インドイル基等が挙げられ、アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、1,1−ジメチルプロピルチオ基等の炭素数1〜20のアルキルチオ基が挙げられ、アリールチオ基としては、フェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基等の炭素数6〜20のアリールチオ基を挙げることができる。
【0108】
R1とR2、R3とR4、R5とR6、又はR7とR8が連結基を介して環を形成した例としては、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH(NO2)CH2−、−CH2CH(CH3)CH2CH2−、−CH2CH(Cl)CH2CH2−等を挙げることができる。
【0109】
Mで示される2価金属の例としては、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Mn、Sn、Mg、Hg、Cd、Ba、Ti、Be、Ca等が挙げられ、
1置換の3価金属の例としては、Al−F、Al−Cl、Al−Br、Al−I、Ga−F、Ga−Cl、In−F、In−I、Tl−F、Tl−Cl、Al−C65、Al−C64(CH3)、In−C64(CH3)、Mn(OH)、Mn(OC65)、Mn[OSi(CH33]、Fe−Cl、Ru−Cl等が挙げられ、2置換の4価金属の例としては、CrCl2、SiF2、SiCl2、SiBr2、SnCl2、SnBr2、ZrCl2、GeF2、TiF2、Si(OH)2、Sn(OH)2、TiA2、CrA2、SiA2、SnA2、GeA2[Aはアルキル基、フェニル基、ナフチル基及びその誘導体を表わす。]、Si(OA')2、Sn(OA')2、Ge(OA')2、Ti(OA’)2、Cr(OA’)2[A’はアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基及びその誘導体を表わす。]、Si(SA”)2、Sn(SA”)2、Ge(SA”)2[A”はアルキル基、フェニル基、ナフチル基及びその誘導体を表わす。]等が挙げられ、オキシ金属の例としては、VO、MnO、TiO等が挙げられる。
【0110】
これらの化合物としては、例えば、TAP−2、TAP−5、TAP−9、TAP−10、TAP−12、TAP18、TAP45(以上、山田化学工業社製)等が市販されている。
【0111】
本発明において、テトラアザポルフィリン系色素の極大吸収波長は特に制限は無いが、ネオンカット機能を発揮するために、500〜700nmに極大吸収波長を有するテトラアザポルフィリン系色素が好ましく、更に、560〜610nmに極大吸収波長を有する色素が好ましい。また、ネオンカット機能には、585nm付近のネオン発光の選択吸収性とそれ以外の可視光波長において吸収が小さいことが必要であるため、極大吸収波長が560〜610nmであり、吸収スペクトル半値幅が40nm以下であるものが好ましい。
【0112】
[黒色金属錯塩系色素]
本発明において、透過率調整機能を有する機能性材料として、例えば、黒色系金属錯塩系色素を好ましく使用することができる。黒色金属錯塩系色素をディスプレイ用光学フィルタに用いると、例えば、ディスプレイパネルからの可視光線を適度に調整することにより画面が見やすくなるという効果を示す。黒色金属錯塩系色素としては、どのようなものでも良く、モノアゾ、ジスアゾ又はポリアゾ系色素及びアゾメチン系色素の金属錯塩がいずれも使用可能である。金属錯塩型としては1:1型及び1:2型のいずれでもかまわないが、1:2型の方が好ましい。錯塩を形成せしめる金属としては重金属、例えば銅、ニッケル、鉄、ケイ素、コバルト、クロム、マンガン、チタン又はアルミニウム等が使用可能であるが、特に、錯塩として安定なクロム錯塩系色素が好ましい。
【0113】
クロム錯塩系色素としては、具体的には、バリファーストブラック 1802、同1807、同3804、同3806,同3808、同3810、同3820、同3830(以上、オリエント化学工業社製)、アイゼンスピロンブラック RLH スペシャル、同BH スペシャル、同MH スペシャル(以上、保土谷化学工業社製)、Savinyl Black RLS、同RL2S(以上、サンド社製)、NEOPEN Black 同X53、同X55、NEOZAPON Black X51、ZAPON Black X51(以上、BASF社製)、ORASOL Black CN、同RL、同RLI(以上、日本チバガイギー社製)、オレオゾールファーストブラック RL(以上、田岡化学工業社製)、ネオスーパーブラック C−832、同C−834(以上、中央合成化学社製)などが挙げられる。
【0114】
[ディスプレイ用光学フィルタ]
図2は、本発明のディスプレイ用光学フィルタの好適態様の1例を示す概略断面図である。図2に示すディスプレイ用光学フィルタは、特に、画像表示の発光部に高周波パルス放電を行っているPDP用の光学フィルタとして好ましく使用される。
【0115】
図示の通り、ディスプレイ用光学フィルタ30においては、矩形状の透明プラスチックフィルム21の表面全域にメッシュ状の導電層23が形成されている。その上に紫外線硬化性樹脂組成物からなるハードコート層24が形成され、さらにその上に、反射防止層として、高屈折率層25及び低屈折率層26が形成されている。そして、透明プラスチックフィルム21の導電層23が形成された面の他方の表面に、近赤外線遮蔽機能を有する機能性材料として(複合)タングステン酸化物、平均粒径0.1〜20μmの微粒子29及びアクリル樹脂系粘着剤、及び所定の含有量でエポキシ化合物系硬化剤を含む粘着剤層22が形成されている。上述のように、粘着剤層22に近赤外線遮蔽機能を付与することにより、ディスプレイ用光学フィルタの層構成を簡素化することができ、且つ(複合)タングステン酸化物の熱等による劣化が抑制され、更に、粘着剤層22と透明プラスチックフィルム21との密着性の低下が抑制されている。
【0116】
なお、ディスプレイ用光学フィルタ30には、導電層23から外部への導通を図るため、ディスプレイ用光学フィルタ30の周囲のハードコート層等の機能層をレーザー照射等により除去して導電層を露出させたり、導電性粘着テープを導電層に挟みこんで外部に接地させたりする等の構造が含まれる(図示していない)。また、ハンドリング性向上のため、粘着剤層22上に剥離シートを設けても良い。
【0117】
一般に、ディスプレイ用光学フィルタ30は、粘着剤層22を介してPDP表面に直接貼着されるか、粘着剤層22を介してガラス板に貼着されPDPの前面に配置されて使用される。本発明の好適態様であるディスプレイ用光学フィルタ30は、粘着剤層22に近赤外線遮蔽機能を有する機能性材料として(複合)タングステン酸化物が含有されているが、上述の通り、(複合)タングステン酸化物の熱等による劣化が抑制されており、耐候性が高く、密着性に優れたディスプレイ用光学フィルタである。
【0118】
また、一般に、ディスプレイ用光学フィルタをPDP表面に直接貼着した場合、粘着剤層はPDPから発生する熱等の影響を受けやすいが、本発明のディスプレイ用光学フィルタ30であれば、その場合であっても、粘着剤層22に含有された(複合)タングステン酸化物の劣化を抑制することができる。
【0119】
本発明のディスプレイ用光学フィルタは、粘着剤層22を含んでいればどのような構成を有していても良く、図2に示した以外の構成を有するもの、例えば、上記で示した層の位置は適宜変更したものであっても良く、用途に応じて、反射防止層(高屈折率層25、低屈折率層26)のいずれか又は両方を省略したものでも良い。また、機能性材料は、上述のように、他の近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、ネオンカット機能、及び透過率調整機能を有する機能性材料が、単独又は2種以上含まれていても良い。
【0120】
本発明のディスプレイ用光学フィルタは、本発明の効果を阻害しない限り、既知のどのような材料を用いても良い。以下に使用される材料の一例について説明する。
【0121】
[透明プラスチックフィルム]
透明プラスチックフィルムの材料としては、透明(「可視光に対して透明」を意味する。)のプラスチックフィルムであれば特に制限はない。例えば、ポリエステル[例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート]、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる。これらの中でも、加工時の負荷(熱、溶剤、折り曲げ等)に対する耐性が高く、透明性が特に高い等の点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が好ましい。特に、PETが、加工性に優れているので好ましい。透明基材の表面には各機能層の密着性を良くするための易接着層を設けても良い。易接着層は、例えば、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂のみ、又はそれらの樹脂に、SiO2、ZrO2、TiO2、Al23等の金属酸化微粒子、好ましくは平均粒径1〜100nmの金属酸化微粒子を配合して、屈折率を調整したものが用いられる。
【0122】
透明基材の厚さとしては、光学フィルタの用途等によっても異なるが、一般に1μm〜10mm、1μm〜5mm、特に25〜250μmが好ましい。
【0123】
[導電層]
導電層は、得られる光学フィルタの表面抵抗値が、一般に10Ω/□以下、好ましくは0.001〜5Ω/□の範囲、特に0.005〜5Ω/□のとなるように設定される。メッシュ(格子)状の金属導電層、又は気相成膜法により得られる層(金属酸化物(ITO等)の透明導電薄膜)でも良い。さらに、ITO等の金属酸化物の誘電体膜とAg等の金属層との交互積層体(例、ITO/銀/ITO/銀/ITOの積層体)であっても良い。
【0124】
メッシュ状の金属導電層としては金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属を網状にしたもの、透明基板上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、透明基板上に導電性インクをメッシュ状に印刷したもの、等を挙げることができる。また、フィルム面に、溶剤に対して可溶な材料によってドットを形成し、フィルム面に溶剤に対して不溶な導電材料からなる導電材料層を形成し、フィルム面を溶剤と接触させてドット及びドット上の導電材料層を除去することによって得られるメッシュ状の金属導電層を用いても良い。金属導電材料としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン、タングステン、錫、鉛、鉄、銀、炭素又はこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、ニッケルが挙げられる。
導電性を向上させるために、メッシュ状金属導電層上に、さらに銅又は銅合金等の金属メッキ層を設けても良い。また、防眩性能を付与させるため、導電層の表面に、金属膜の酸化処理、クロム合金等の黒色メッキ、黒又は暗色系のインクの塗布等により黒化処理防を行っても良い。
【0125】
[ハードコート層]
ハードコート層は、アクリル樹脂層、エポキシ樹脂層、ウレタン樹脂層、シリコン樹脂層等の合成樹脂を主成分とする樹脂組成物層である。通常、ハードコート層の厚さは透明基材表面から1〜50μm、層厚を厚くせず、高度な平面性を得るために、好ましくは5〜20μmである。合成樹脂は、一般にフェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂などの熱硬化性樹脂、又は紫外線硬化性樹脂であり、上述の通り、短時間で硬化させることができ、生産性に優れる点から紫外線硬化性樹脂が好ましい。紫外線硬化性樹脂を用いる場合は、紫外線硬化性樹脂組成物(紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤等からなる)として使用する。
【0126】
さらに、ハードコート層は、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含んでいても良い。特に、紫外線吸収剤(例、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はベンゾフェノン系紫外線吸収剤)を含むことが好ましく、これによりフィルタの黄変等の防止が効率的に行うことができる。その量は、樹脂組成物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0127】
[反射防止層]
反射防止層の内、高屈折率層は、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に、ITO,ATO,Sb23,SbO2,In23,SnO2,ZnO、AlをドープしたZnO、TiO2等の導電性金属酸化物微粒子(無機化合物)が分散した層(硬化層)とすることが好ましい。金属酸化物微粒子としては、平均粒径10〜10000nm、好ましくは10〜50nmのものが好ましい。特にITO(特に平均粒径10〜50nmのもの)が好ましい。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
【0128】
反射防止層の内、低屈折率層は、シリカ、フッ素樹脂等の微粒子、好ましくは中空シリカを10〜40重量%(好ましくは10〜30質量%)がポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に分散した層(硬化層)であることが好ましい。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。中空シリカとしては、平均粒径10〜100nm、好ましくは10〜50nm、比重0.5〜1.0、好ましくは0.8〜0.9のものが好ましい。
【0129】
ハードコート層と上記2層より構成される場合、例えば、ハードコート層の厚さは全体で5〜20μm、高屈折率層の厚さは50〜150nm、低屈折率層の厚さは50〜150nmであることが好ましい。
【0130】
各層を形成するには、例えば、前記の通り、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)に必要に応じ上記の微粒子を配合し、得られた塗工液を、前記の矩形透明プラスチックフィルム等の透明基板の表面に塗工し、次いで乾燥した後、紫外線照射して硬化すればよい。この場合、各層を1層ずつ塗工し硬化させてもよく、全層を塗工した後、まとめて硬化させてもよい。連続加工の場合各層の塗工後に硬化をしないと、塗工面に傷が付く場合があるので、各層を1層ずつ塗工し硬化するのが好ましい。
【0131】
塗工の具体的な方法としては、アクリル系モノマー等を含む紫外線硬化性樹脂をトルエン、n−ヘキサン、メチルエチルケトン等の溶媒で溶液にした塗工液をグラビアコータ等によりコーティングし、その後乾燥し、次いで紫外線により硬化する方法を挙げることができる。このウェットコーティング法であれば、高速で均一に且つ安価に成膜できるという利点がある。このコーティング後に例えば紫外線を照射して硬化することにより密着性の向上、膜の硬度の上昇という効果が得られる。
【0132】
紫外線硬化の場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加熱し、これに紫外線を照射してもよい。
【0133】
[剥離シート]
粘着剤層上に剥離シートを設ける場合、剥離シートの材料としては、ガラス転移温度が50℃以上の透明のポリマーが好ましく、このような材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等のポリマーを主成分とする樹脂を用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートが好適に用いることができる。厚さは10〜200μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
【実施例】
【0134】
以下、本発明を実施例により説明する。
[実施例1〜3、比較例1〜3]
1.粘着剤層の形成
(1)液Aの調製
下記の配合:
アクリル系粘着剤(SKダイン2094(綜研化学社製)、固形分25%);1000質量部
エポキシ系硬化剤(E−AX(綜研化学社製)、固形分5%);表1に記載の質量部
トルエン;100質量部
を混合・撹拌して液Aを調製した。
(2)液Bの調製
次に別の容器を用いて、下記配合:
架橋アクリル樹脂微粒子(平均粒径;2μm)(テクポリマーSSX−102(架橋PMMA製)(積水化成品工業社製);7.5質量部(但し、比較例3のみ添加なし)
セシウムタングステン酸化物(住友金属鉱山社製);0.7質量部
トルエン;100質量部
メチルエチルケトン;100質量部
酢酸エチル;10質量部
を混合・撹拌して液Bを調製した。
(3)粘着剤組成物の調製
続いて、液Aに液Bを加えて30分間混合・撹拌して粘着剤組成物を調製した。
(4)粘着剤層の形成
粘着剤組成物をギャップが300μmのアプリケーターを使用して、セパレータフィルム(フィルムバイナ75E−0010 No.23(藤森工業社製))上に塗工し、オーブン中で100℃、3分間乾燥、熱硬化を行い、粘着剤層を形成した。粘着剤層の厚さは23μmであった。
2.光学フィルタサンプルの作製
セパレータフィルム上に形成された粘着剤層をPETフィルム(ダイアホイルT680E100−W07(三菱樹脂社製)厚さ;100μm)にハンドローラーを用いて貼り合わせた。次いで、セパレータフィルムを粘着剤層から除去し、露出した粘着剤層上にハンドローラーを用いて、PETフィルム(同上)を貼り合わせた。このPET/粘着剤層/PET積層体をオーブン中で40℃、3日間養生し、光学フィルタサンプルを作製した。
【0135】
[実施例4、比較例4]
実施例1(2)のセシウムタングステン酸化物を、アントラキノン系色素(KAYASORB Yellow C−10(日本化薬社製);0.65質量部とした以外は、実施例1と同様に、光学フィルタサンプルを作製した。
【0136】
[実施例5、比較例5]
実施例1(2)のセシウムタングステン酸化物を、テトラアザポルフィリン系色素(TAP−18(山田化学工業社製);0.36質量部とした以外は、実施例1と同様に光学フィルタサンプルを作製した。
【0137】
[実施例6、比較例6]
実施例1(2)のセシウムタングステン酸化物を、黒色系金属錯塩系色素(ブラックMHスペシャル(保土谷化学社製);0.2質量部とした以外は、実施例1と同様に光学フィルタサンプルを作製した。
【0138】
[評価方法]
(1)透過率変化量
複合タングステン酸化物の劣化を評価するため、保存試験(温度80℃、及び温度60℃、湿度90%)を行い、初期と100時間保存試験後の波長850nmの透過率を測定し、透過率の差を求めた。透過率は分光光度計U−4100(日立ハイテク社製)を用い、JIS−R−3106に準拠して測定した。
(2)ヒートサイクル試験
粘着剤層と透明プラスチックフィルムとの密着性について調べるため、ヒートサイクル試験(−20℃から30分かけて60℃に昇温し、60℃で60分維持後、30分かけて−20℃に冷却し、−20℃で60分維持するサイクルを繰り返す)を行った。初期と100時間試験後のヘイズを測定し、ヘイズの差を求めた。粘着剤層と透明プラスチックフィルムの密着性が低下すると界面の剥離、気泡等によりヘイズが上昇することになる。ヘイズ値はヘイズコンピューターNHD4000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K 7136に準拠して測定した。
【0139】
[評価結果]
表1に実施例1〜6、及び比較例1〜6の評価結果を示す。
【0140】
【表1】

【0141】
表1に示すように、(複合)タングステン酸化物と微粒子を配合し、且つエポキシ化合物系硬化剤をアクリル樹脂(固形分)100質量部に対して0.1〜0.3質量部配合した実施例1〜3は、微粒子を配合していない比較例3に比べて、保存試験後の透過率の変化量が小さかった。更に、エポキシ化合物系硬化剤を上記範囲外で配合した比較例1及び2と比べて、ヒートサイクル試験後のヘイズ値の変化量が小さかった。エポキシ化合物系硬化剤の配合量と、ヒートサイクル試験後のヘイズ値の変化量については、アントラキノン系色素を配合した実施例4及び比較例4、テトラアザポルフィリン系色素を配合した実施例5及び比較例5、並びに黒色金属錯塩系色素を配合した実施例6及び比較例6においても同様な結果であった。従って、本発明により粘着剤層に配合した各種機能性材料の劣化が抑制され、且つ粘着剤層と透明プラスチックフィルムとの密着性の低下が抑制できることが示された。
【0142】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明により、十分な近赤外線遮蔽効果を有し、簡素化した構成であり、低コストで、且つ耐候性が高い、密着性に優れたPDP等に有効なディスプレイ用光学フィルタを提供することができる。
【符号の説明】
【0144】
11、21 透明基材
12、22 粘着剤層
19、29 微粒子
20、30 ディスプレイ用光学フィルタ
23 導電層
24 ハードコート層
25 高屈折率層
26 低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、ネオンカット機能、及び透過率調整機能からなる群から選択される少なくとも1種の機能を有する機能性材料、アクリル樹脂を含むアクリル樹脂系粘着剤、及び硬化剤を含む粘着剤層を有するディスプレイ用光学フィルタであって、
前記粘着剤層が、平均粒径0.1〜20μmの微粒子を含み、
前記硬化剤が、エポキシ化合物系硬化剤であり、且つ当該エポキシ化合物系硬化剤の含有量が、前記アクリル樹脂100質量部に対して0.1〜0.3質量部であることを特徴とするディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項2】
前記微粒子が、透明樹脂微粒子又はシリカ微粒子である請求項1に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項3】
前記透明樹脂微粒子が、架橋アクリル樹脂微粒子、架橋スチレン樹脂微粒子、及び架橋(メタ)アクリレート−スチレン共重合体微粒子、メラミン樹脂微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子である請求項2に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項4】
前記微粒子の含有率が、前記粘着剤層の固形分を基準として、0.1〜20質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項5】
前記粘着剤層に接着する透明プラスチックフィルムを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項6】
前記機能性材料が、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物、又は色素である請求項1〜5のいずれか1項に記載のディスプレイ用工学フィルタ。
【請求項7】
前記タングステン酸化物が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素を表し、そして2.2≦z/y≦2.999である)で表され、そして
前記複合タングステン酸化物が、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Cs、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素を表し、そして0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3である)で表される請求項6に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項8】
前記色素が、アントラキノン系色素、テトラアザポルフィリン系色素、黒色金属錯塩系色素、イモニウム塩系色素、シアニン系色素、及びフタロシアニン系色素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項6に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項9】
プラズマディスプレイパネル用である請求項1〜8のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−163877(P2012−163877A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25654(P2011−25654)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】