ディスプレイ装置
【課題】複雑な機構を要することなく幻想的な光の演出により、消費者の関心を集めるためのディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】透明板の少なくとも片側表面に互いに平行なヘアライン状の溝4を多数形成した受光板2と、該受光板2に光ビーム3bを照射するための光源3からなるディスプレイ装置1であって、受光板2に光ビーム3bを照射すると、光ビーム3bが受光板2に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出する光軸5が出現させる。
【解決手段】透明板の少なくとも片側表面に互いに平行なヘアライン状の溝4を多数形成した受光板2と、該受光板2に光ビーム3bを照射するための光源3からなるディスプレイ装置1であって、受光板2に光ビーム3bを照射すると、光ビーム3bが受光板2に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出する光軸5が出現させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光軸を立体的に出現させるためのディスプレイ装置及びこれを使用したディスプレイ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、消費者の購買意欲を喚起するために広告等を表記し、店頭で消費者の関心を集めるための美麗なディスプレイ装置は重要である。
【0003】
そして、このようなディスプレイ装置においては、例えば、特許文献1に示されるように、帯状の光源に配設した発光ダイオード(LED)からの光が、透光性を有するパネルの端部からパネル内面を通過して、パネル面に凹部として形成した模様等を照射するものがある。これは、発光ダイオード(LED)からの光が模様等を形成する凹部のエッジ部で乱反射することにより、模様等が明るくかつ立体的な形状としてエスカレータ等の利用者に視認されるため、模様等と利用者との距離や角度が刻々と変化する状況下においても、模様等を容易に認識させることができるというものである。
【0004】
しかしながら、このような従来のディスプレイ装置は、美麗で目立つものではあっても、光の演出効果としては予測できる範囲に留まるため消費者の関心を集めるためには必ずしも十分とはいえなかった。光技術が発達した近年において、消費者の興味を引きつけるためには、幻想的な光の演出効果が重要となる。
【0005】
店頭で消費者の興味をさらに引きつけ、需要を喚起するための広告機能を有する装置として、複雑な機構を要することなく幻想的な光の演出が可能なディスプレイ装置の開発が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−93677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、複雑な機構を要することなく幻想的な光の演出により、消費者の関心を集めるためのディスプレイ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明者が検討を行った結果、透明板の少なくとも片側表面に互いに平行なヘアライン状の溝を多数形成した受光板に光ビームを照射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出する光軸が出現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、透明板の少なくとも片側表面に互いに平行なヘアライン状の溝を多数形成した受光板と、該受光板に光ビームを照射するための光源からなるディスプレイ装置であって、受光板に光ビームを照射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出する光軸が出現することを特徴とするディスプレイ装置である。
【0010】
さらに本発明は、光ビームを照射するための光源が発光ダイオードであることを特徴とするディスプレイ装置である。
【0011】
さらに本発明は、透明板が、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の合成樹脂からなることを特徴とするディスプレイ装置である。
【0012】
さらに本発明は、光ビームを受光板の端部から受光板内部に入射することを特徴とするディスプレイ装置である。
【0013】
さらに本発明は、光ビームを受光板の表面に照射することを特徴とするディスプレイ装置である。
【0014】
さらに本発明は、受光板が、一方向に湾曲した透明板の表面に、湾曲する方向に対して直角にヘアライン状の溝を形成したことを特徴とするディスプレイ装置である。
【0015】
さらに本発明は、受光板が、ヘアライン状の複数の溝の一部に、該溝を覆う透明被膜層を形成したことを特徴とするディスプレイ装置である。
【0016】
さらに本発明は、受光板が、ヘアライン状の複数の溝の一部に、該溝に重ねて断面略V字状の溝を形成したことを特徴とするディスプレイ装置である。
【0017】
また本発明は、前記のディスプレイ装置を使用して、受光板に光ビームを照射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出する光軸を出現させることを特徴とするディスプレイ方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のディスプレイ装置によれば、受光板に光ビームを照射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出する光軸を出現させることができる。
【0019】
すなわち、光ビームを受光板の端部から受光板内部に入射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出するように光軸が1本出現する。
【0020】
また、光ビームを受光板の表面に照射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出するように、2本の光軸が出現する。
【0021】
さらに、受光板が、一方向に湾曲した透明板の表面に、湾曲する方向に対して直角にヘアライン状の溝を形成することにより、受光板の凸面側から見ると凹面側の表面から延出する光軸の角度を面に対して大きくすることができる。
【0022】
ヘアライン状の複数の溝の一部に、かかる溝を覆うように透明被膜層を形成した受光板を用いれば、光軸は透明被膜層を形成した領域で途切れたように出現する。
【0023】
ヘアライン状の複数の溝の一部に、かかる溝に重ねて断面V字状の溝を形成した受光板を用いれば、光軸に加えて断面V字状の溝表面が発光し、美麗な外観を呈するディスプレイが可能となる。
【0024】
本発明のディスプレイ装置は、光源となるライトや受光板を着色することにより、多彩なディスプレイが可能となる。そして、受光板に文字を描いて広告塔としたり、受光板を外壁としてケースを作成し、内部にサンプルを展示するなどして利用することができ、幻想的な光の演出により消費者の関心を集めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】受光板の一端部から光ビームを入射した場合の光軸の出現を示す概略図(第1の実施形態)
【図2】背面に不透明板を配置した受光板の一端部から光ビームを入射した場合の光軸の出現を示す概略図(第2の実施形態)
【図3】受光板の両端部から光ビームを入射した場合の光軸の出現を示す概略図(第3の実施形態)
【図4】受光板の両端部から光ビームを入射した場合の光軸の出現を示す概略図(第4の実施形態)
【図5】ヘアライン状の溝を湾曲して配置した受光板の端部から光ビームを入射した場合の光軸の出現を示す概略図(第5の実施形態)
【図6】湾曲した受光板の両端部から光ビームを入射した場合の光軸の出現を示す概略図(第6の実施形態)
【図7】受光板の表面に光ビームを照射した場合の光軸の出現を示す概略図(第7の実施形態)
【図8】湾曲した受光板の表面に光ビームを照射した場合の光軸の出現を示す概略図(第8の実施形態)
【図9】受光板の表面に見る側から光ビームを照射した場合の光軸の出現を示す概略図(第9の実施形態)
【図10】受光板の一部を回転可能とし、受光板の回転により出現する光軸を変化させる例を示す概略図(第10の実施形態)
【図11】ヘアライン状の溝を同心円状に形成した受光板の表面に光ビームを照射した場合の光軸の出現を示す概略図(第11の実施形態)
【図12】ヘアライン状の複数の溝の一部を覆うように透明被膜層を形成した受光板に光ビームを照射した場合の光軸の出現を示す概略図((a)受光板の一端部から光ビームを入射した場合の光軸の出現を示す概略図(第12の実施形態)、(b)受光板の表面に光ビームを照射した場合の光軸の出現を示す概略図(第13の実施形態))
【図13】ヘアライン状の複数の溝の一部に重ねて断面V字状の溝を形成した受光板に光りビーム照射した場合の光軸の出現を示す概略図((a)第14の実施形態、(b)第15の実施形態)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0027】
本発明に用いる受光板(2)は、透明板の少なくとも片側表面に互いに平行なヘアライン状の溝(4)を多数形成したものである(図1)。そして、受光板(2)に光ビームを照射すると、光ビームが受光板に入射した位置(3c)から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角(θ1)をなし、且つ、溝(D)と直角(θ2)に交差して延出する光軸(5)を出現させることができる。
【0028】
例えば、光ビームを受光板の端部(2c)から受光板内部に入射すると、光ビームが受光板に入射した位置(3c)から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角(θ1)をなし、且つ、溝(D)と直角(θ2)に交差して延出するように1本の光軸(5)が出現する(図1)。
【0029】
また、光ビームを受光板の表面(2b)に照射すると、光ビーム(3b)が受光板に入射した位置(3c)から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角(θ1)をなし、且つ、溝(D)と直角(θ2)に交差して延出する2本の光軸(5)が出現する(図5)。
【0030】
透明板(2)の素材は、表面にヘアライン状の溝を形成することができ、光を透過し得るものであれば、特に限定されるものではなく、ガラスや、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂などの合成樹脂を広く採用することができるが、ヘアライン状の溝を設ける加工が容易で、光透過に優れる素材として、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリエステル樹脂から選ばれる1種又は2種以上の合成樹脂であることが好ましい。中でも、加工性に優れ入手が容易な、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートを使用することが特に好ましい。また、材質により出現する光軸の長さが異なり、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートは、ポリエチレンテレフタレートよりも長い光軸が出現するため本発明のディスプレイ装置に好適である。
【0031】
受光板(2)は、透明板に染料を混ぜるなどして着色することもできる。この場合、出現する光軸と受光板とのコントラストが明確になり、さらに美麗なディスプレイ効果を得ることができる。ただし、着色は、受光板が光を透過し得る程度とする必要がある。あまりに着色を濃くすると受光板の表面あるいは端部に光ビームを照射しても光軸が出現しないか、あるいは、出現しても見る側から受光板を通して視認することができないためである。
【0032】
特に、端面(端部(2c)に相当する面)のみを着色した透明板の表面にヘアライン状の溝を施した受光板では、端部から光ビームを入射すると着色した光軸が現れ、光ビームを受光板の表面に照射すると光ビームと同一色の光軸が現れるため多彩なディスプレイ効果が可能となる。
【0033】
また、受光板(2)は、見る側とは反対側の面(2b)を金属蒸着または塗装してもよい。受光板の端部(2c)から光ビームを入射すると光軸(5)が出現する。また、受光板の見る側の表面(2a)に光ビーム(3b)を照射しても光軸(5)を見ることができる。この場合、光軸の色と金属蒸着等の色とのコントラストにより、美麗な光の演出効果が可能となる。
【0034】
さらに、受光板(2)は、見る側とは反対側の面(2b)に多数の微細な凹凸を形成するための、所謂しぼ加工を行っても良い。受光板の端部(2c)から光ビームを入射すると光軸(5)が出現する。また、受光板の見る側の表面(2a)に光ビーム(3b)を照射しても光軸(5)を見ることができる。尚、しぼ加工による凹凸形状が大きすぎると光の乱反射が生じるため、受光板の端部(2c)から光ビームを入射することにより出現する光軸(5)は認識が困難となる場合がある。
【0035】
受光板は、透明板を一方向に湾曲させ、透明板の表面に湾曲する方向に対して直角にヘアライン状の溝を形成してもよい(図6,8)。この場合、受光板の表面(2b)から延出する光軸(5)の表面に対する角度は大きくなる。
【0036】
ヘアライン状の溝とは、受光板の平滑面に設けた毛髪状の微細な溝のことを指す。ヘアライン状の溝は、例えば、(a)透明板の表面をサンドペーパー等の研磨具を用いて一定方向にのみ研磨する、あるいは(b)スクラッチ装置等を使用し、透明板をブラシロールに通すことにより板の表面を一方向にのみ擦る、などの方法により形成することができる。生産性の観点からは(b)の方法を用いることが好ましく、この方法は一般にヘアライン加工と称される。受光板にヘアライン加工を施す場合には、通常、アルミニウム等の金属に行うヘアライン加工を適用することができ、その場合は溝の幅や深さ等の条件にとらわれることなく光軸を出現させることができる。
【0037】
複数のヘアライン状の溝(4)は、相互に平行になるように設ける。ヘアライン状の溝をランダムに設け、かかる溝が交差するような場合には、光の乱反射が生じ光軸が出現しないか、もしくは出現しても明確に認識することは困難となる。尚、平行なヘアライン状の溝に、これに交差する溝が混じる程度であれば、光軸の出現に問題はない。
【0038】
ヘアライン状の溝は、光軸を見る側の透明板の表面(2a)、或いは、見る側と反対側の表面(2b)のいずれに設けてもよい。また、透明板の両側表面(2a,2b)に設けてもよい。但し、両面(2a,2b)に設ける場合には、両側の表面の溝は、交差することなく平行になるように配置する必要がある。溝が交差すると光の乱反射を招き、光軸を認識することが困難となる可能性があるためである。
【0039】
また、ヘアライン状の溝(4)は、相互に平行であれば、直線である必要はなく、曲線であってもよい。この場合、光軸(5)は、見る側とは反対側の表面(2b)から、溝(D)に対して直角(θ2)に交差しながら、面(2b)に対して鋭角(θ1)に延び出すように出現する(図5)。
【0040】
ヘアライン状の複数の溝(4)の一部に、かかる溝を覆うように透明被膜層(8)を形成した受光板(2)を用いれば、光軸(5)は透明被膜層(8)を形成した領域で途切れたように出現する(図12)。透明被膜層(8)は、ヘアライン状の溝を埋め平滑な面とするものである。たとえば、透明板の全表面にヘアライン加工を施し、その後、所定の領域に透明被覆層を形成すれば、様々な長さの光軸を容易に出現させることができる。
【0041】
透明被膜層(8)は、ヘアライン状の複数の溝(4)の一部を覆うように透明塗料を塗布することにより形成することができる。透明塗料としては、例えば、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、酢酸ビニル−アクリル共重合体樹脂系、塩化ビニル樹脂系、アクリルシリコ−ン樹脂系、フッ素樹脂系等の塗料を広く用いることができるが、紫外線硬化型の塗料を使用すれば、生産効率にすぐれ好適である。
【0042】
ヘアライン状の複数の溝(4)の一部に、かかる溝(4)に重ねて断面V字状の溝(9)を形成すれば、光軸(5)が出現するとともに、断面V字状の溝(9)表面が発光し、実施例に示すように、美麗な外観を呈するディスプレイが可能となる(図13)。
【0043】
光源は、特に限定されることなく、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの球状あるいは棒状等の発光物全般を用いることができるが、設置が容易で光の強度が高く発熱量が小さいことから、発光ダイオード(LED)を用いることが好ましい。
【0044】
発光ダイオード(LED)の種類は、狭指向角タイプのものが、より好適に用いられる。発光ダイオードの色は、白色、青色等任意のものを利用することができる。これらの発光ダイオードを使用すれば、多色の光軸を出現させることができ、多彩なディスプレイ効果を奏することができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0046】
受光板(2)の端部(2c)から光ビームを入射して光軸(5)を出現させた種々の実施態様(図1乃至6)について説明する。
【0047】
図1は、表面(2a)にヘアライン状の溝(4)を設けた受光板(2)の端部(2c)に光源(3)である発光ダイオード(LED)(3a)の光ビームを入射した状態を示すものである。光ビームは、複数のLEDを直線上に配設した光源から照射している。
【0048】
図1のように受光板(2)に光ビームを照射すると、観者(A)からは、光ビームが受光板(2)に入射する位置(3c)から、見る側とは反対側の受光板の表面(2b)から面に対して鋭角(θ1)をなし、溝(D)に対して直角(θ2)に交差しながら延出する光軸(5)が出現して見える。
【0049】
図2は、受光板(2)の見る側とは反対側に着色不透明板(6)を受光板(2)に重ねて配置し、受光板(2)の端部(2c)に光ビームを入射した状態を示すものである。この場合にも、観者(A)からは、光ビームが受光板(2)に入射する位置(3c)から、見る側とは反対側の受光板の表面(2b)から面に対して鋭角をなし、溝(D)に対して直角に交差しながら光軸が延出しているように見える。このことから、出現する光軸(5)は、光ビームの屈折や受光板からの反射光ではなく、光ビームが受光板を伝搬することにより生じる虚像によるものであるといえる。
【0050】
図3は、2本の光源(3,3)を使用し、受光板(2)の対向する両端部(2c,2c)から光ビームを入射した状態を示すものである。2本の光軸(5)は、受光板の表面(2b)から延出し交差するように出現する。また、板の厚さを厚くした受光板(2)を使用して同様に実施したところ、同じように光軸(5)が出現することを確認した(図4)。
【0051】
図5は、ヘアライン状の溝(4)を相互に平行しながら湾曲して設け、受光板の端部から光ビーム(3b)を入射したときの状態を示すものである。光軸(5)は溝(4)を施した部位に生じ、溝(D)とは直角(θ2)に交差しながら、見る側とは反対側の表面から鋭角(θ1)に延出するように出現した。
【0052】
図6は、湾曲した受光板の両端部(2c,2c)から光ビームを入射した状態を示すものであるが、この場合の光軸(5)は、湾曲したものとなる。
【実施例2】
【0053】
受光板(2)の表面(2a又は2b)に光ビーム(3b)を照射して光軸(5)を出現させた種々の実施態様(図7乃至9)について説明する。
【0054】
図7は、ヘアライン状の溝(4)を設けた受光板(2)の表面(2a)に光源(3)である発光ダイオード(LED)(3a)から光ビーム(3b)を照射した状態を示すものである。光ビームは、複数のLEDを直線上に配設した光源から複数照射している。
【0055】
図7に示すように受光板(2)に光ビーム(3b)を照射すると、観者(A)からは、光ビーム(3b)が受光板(2)に入射する位置(3c)から、見る側とは反対側の受光板の表面(2b)から面に対して鋭角(θ1)をなし、溝(D)に対して直角(θ2)に交差しながら延出する湾曲した光軸が2本出現して見える。
【0056】
図8は、湾曲した受光板の表面(2c,2c)から光ビームを入射した状態を示すものであり、図7よりさらに湾曲した光軸(5)が出現する。
【0057】
図9は、受光板(2)の見る側の表面(2a)に光ビーム(3b)を照射したときの出現する光軸(5)の状態を示すものである。図7のように受光板(2)の見る側と反対側の表面(2b)に光ビーム(3b)を照射したときと同様に、光軸(5)は見る側とは反対側の受光板の表面(2b)から面に対して鋭角(θ1)をなし、溝(D)に対して直角(θ2)に交差しながら延出して見える。
【実施例3】
【0058】
図10は、ヘアライン状の溝(4)を設けた受光板(2)から複数枚の円板(7)をくり抜き、これら円板の外周には歯車状の凹凸(7a)を設け、隣合う円板外周の凹凸(7a)を噛み合わせながらふたたび受光板(2)に配置したものである。一部の円板が回転すると隣合う円板が順次回転し、円板(7)表面のヘアライン状の溝(4)が回転することで、光軸(5)が回転しながら表出し、幻想的で動きのあるディスプレイが可能となる。
【実施例4】
【0059】
図11は、板面の中央に複数のヘアライン状の溝(4)を同心円状に設けた受光板(2)に光ビーム(3b)を照射したときに出現する光軸(5)の状態を示すものである。光ビーム(3b)が照射された、ヘアライン状の溝(4)の各位置からは、見る側とは反対側の受光板の表面から面に対して鋭角(θ1)に、溝(D)に対して直角(θ2)に交差しながら延出する光軸(5)が出現する。また、同心円の中心からは、ヘアライン状の溝に対して直角に交差するように複数の光軸(5)が放射状に出現する。そして、受光板(2)(又は光ビーム(3b))を横方向にスライド移動させると、放射状の光軸(5)は同心円の中心を軸としてあたかも回転しているように見える。
【実施例5】
【0060】
図12(a)は、ヘアライン状の溝(4)の一部に、かかる溝を覆うように透明被膜層(8)が形成された受光板(2)に一端部から光ビーム(3b)を入射した場合に、出現する光軸(5)の状態を示すものである。光ビーム(3b)が受光板(2)に入射する位置(3c)から、見る側とは反対側の受光板の表面(2b)から面に対して鋭角(θ1)をなし、ヘアライン状の溝(D)に対して直角(θ2)に交差しながら延出する光軸(5)が出現して見えるが、透明被膜層(8)が存在する領域では、光軸(5)が途切れて見える。また図12(b)は、図12(a)と同一の受光板の表面に、光ビーム(3b)を照射した場合の、光軸の状態を示すものであるが、この場合にも、透明被膜層が存在する領域では、光軸(5)が途切れたように見える。
【実施例6】
【0061】
図13は、ヘアライン状の溝(4)の一部に、かかる溝(4)に重ねて断面V字状の溝(9)が形成された受光板(2)の表面に光ビーム(3b)を照射した場合の状態を示すものである。図(a)は、板表面の3箇所を中心とした3つの放射線を断面V字状の細い溝で描いた模様であり、図(b)は、板表面の中央に断面V字状の太い溝により大小2つの同心円を描き、かかる2つの円周を、円弧に対して直角の溝で等間隔に結んだ形状の模様である。
【0062】
このようにヘアライン状の溝(4)と断面V字状の溝(9)を重ねて形成すると、図13(a)、(b)に示すように、ヘアライン状の溝に対して垂直に光軸が現れるとともに、断面V字状の溝(9)の表面が、明るく発光するため、美麗な外観を呈することができる。
【符号の説明】
【0063】
A 観者(見る側)
D ヘアライン状の溝の方向を示す軸線
1 ディスプレイ装置
2 受光板
2a 見る側の表面
2b 見る側と反対側の表面
2c 端部
3 光源
3a 発光ダイオード(LED)
3b 光ビーム
3c 光ビームが入射する位置
4 ヘアライン状の溝
5 光軸
6 着色不透明版
7 円板
7a 凹凸(歯車)
8 透明被膜層
9 断面V字状の溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、光軸を立体的に出現させるためのディスプレイ装置及びこれを使用したディスプレイ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、消費者の購買意欲を喚起するために広告等を表記し、店頭で消費者の関心を集めるための美麗なディスプレイ装置は重要である。
【0003】
そして、このようなディスプレイ装置においては、例えば、特許文献1に示されるように、帯状の光源に配設した発光ダイオード(LED)からの光が、透光性を有するパネルの端部からパネル内面を通過して、パネル面に凹部として形成した模様等を照射するものがある。これは、発光ダイオード(LED)からの光が模様等を形成する凹部のエッジ部で乱反射することにより、模様等が明るくかつ立体的な形状としてエスカレータ等の利用者に視認されるため、模様等と利用者との距離や角度が刻々と変化する状況下においても、模様等を容易に認識させることができるというものである。
【0004】
しかしながら、このような従来のディスプレイ装置は、美麗で目立つものではあっても、光の演出効果としては予測できる範囲に留まるため消費者の関心を集めるためには必ずしも十分とはいえなかった。光技術が発達した近年において、消費者の興味を引きつけるためには、幻想的な光の演出効果が重要となる。
【0005】
店頭で消費者の興味をさらに引きつけ、需要を喚起するための広告機能を有する装置として、複雑な機構を要することなく幻想的な光の演出が可能なディスプレイ装置の開発が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−93677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、複雑な機構を要することなく幻想的な光の演出により、消費者の関心を集めるためのディスプレイ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明者が検討を行った結果、透明板の少なくとも片側表面に互いに平行なヘアライン状の溝を多数形成した受光板に光ビームを照射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出する光軸が出現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、透明板の少なくとも片側表面に互いに平行なヘアライン状の溝を多数形成した受光板と、該受光板に光ビームを照射するための光源からなるディスプレイ装置であって、受光板に光ビームを照射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出する光軸が出現することを特徴とするディスプレイ装置である。
【0010】
さらに本発明は、光ビームを照射するための光源が発光ダイオードであることを特徴とするディスプレイ装置である。
【0011】
さらに本発明は、透明板が、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の合成樹脂からなることを特徴とするディスプレイ装置である。
【0012】
さらに本発明は、光ビームを受光板の端部から受光板内部に入射することを特徴とするディスプレイ装置である。
【0013】
さらに本発明は、光ビームを受光板の表面に照射することを特徴とするディスプレイ装置である。
【0014】
さらに本発明は、受光板が、一方向に湾曲した透明板の表面に、湾曲する方向に対して直角にヘアライン状の溝を形成したことを特徴とするディスプレイ装置である。
【0015】
さらに本発明は、受光板が、ヘアライン状の複数の溝の一部に、該溝を覆う透明被膜層を形成したことを特徴とするディスプレイ装置である。
【0016】
さらに本発明は、受光板が、ヘアライン状の複数の溝の一部に、該溝に重ねて断面略V字状の溝を形成したことを特徴とするディスプレイ装置である。
【0017】
また本発明は、前記のディスプレイ装置を使用して、受光板に光ビームを照射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出する光軸を出現させることを特徴とするディスプレイ方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のディスプレイ装置によれば、受光板に光ビームを照射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出する光軸を出現させることができる。
【0019】
すなわち、光ビームを受光板の端部から受光板内部に入射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出するように光軸が1本出現する。
【0020】
また、光ビームを受光板の表面に照射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出するように、2本の光軸が出現する。
【0021】
さらに、受光板が、一方向に湾曲した透明板の表面に、湾曲する方向に対して直角にヘアライン状の溝を形成することにより、受光板の凸面側から見ると凹面側の表面から延出する光軸の角度を面に対して大きくすることができる。
【0022】
ヘアライン状の複数の溝の一部に、かかる溝を覆うように透明被膜層を形成した受光板を用いれば、光軸は透明被膜層を形成した領域で途切れたように出現する。
【0023】
ヘアライン状の複数の溝の一部に、かかる溝に重ねて断面V字状の溝を形成した受光板を用いれば、光軸に加えて断面V字状の溝表面が発光し、美麗な外観を呈するディスプレイが可能となる。
【0024】
本発明のディスプレイ装置は、光源となるライトや受光板を着色することにより、多彩なディスプレイが可能となる。そして、受光板に文字を描いて広告塔としたり、受光板を外壁としてケースを作成し、内部にサンプルを展示するなどして利用することができ、幻想的な光の演出により消費者の関心を集めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】受光板の一端部から光ビームを入射した場合の光軸の出現を示す概略図(第1の実施形態)
【図2】背面に不透明板を配置した受光板の一端部から光ビームを入射した場合の光軸の出現を示す概略図(第2の実施形態)
【図3】受光板の両端部から光ビームを入射した場合の光軸の出現を示す概略図(第3の実施形態)
【図4】受光板の両端部から光ビームを入射した場合の光軸の出現を示す概略図(第4の実施形態)
【図5】ヘアライン状の溝を湾曲して配置した受光板の端部から光ビームを入射した場合の光軸の出現を示す概略図(第5の実施形態)
【図6】湾曲した受光板の両端部から光ビームを入射した場合の光軸の出現を示す概略図(第6の実施形態)
【図7】受光板の表面に光ビームを照射した場合の光軸の出現を示す概略図(第7の実施形態)
【図8】湾曲した受光板の表面に光ビームを照射した場合の光軸の出現を示す概略図(第8の実施形態)
【図9】受光板の表面に見る側から光ビームを照射した場合の光軸の出現を示す概略図(第9の実施形態)
【図10】受光板の一部を回転可能とし、受光板の回転により出現する光軸を変化させる例を示す概略図(第10の実施形態)
【図11】ヘアライン状の溝を同心円状に形成した受光板の表面に光ビームを照射した場合の光軸の出現を示す概略図(第11の実施形態)
【図12】ヘアライン状の複数の溝の一部を覆うように透明被膜層を形成した受光板に光ビームを照射した場合の光軸の出現を示す概略図((a)受光板の一端部から光ビームを入射した場合の光軸の出現を示す概略図(第12の実施形態)、(b)受光板の表面に光ビームを照射した場合の光軸の出現を示す概略図(第13の実施形態))
【図13】ヘアライン状の複数の溝の一部に重ねて断面V字状の溝を形成した受光板に光りビーム照射した場合の光軸の出現を示す概略図((a)第14の実施形態、(b)第15の実施形態)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0027】
本発明に用いる受光板(2)は、透明板の少なくとも片側表面に互いに平行なヘアライン状の溝(4)を多数形成したものである(図1)。そして、受光板(2)に光ビームを照射すると、光ビームが受光板に入射した位置(3c)から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角(θ1)をなし、且つ、溝(D)と直角(θ2)に交差して延出する光軸(5)を出現させることができる。
【0028】
例えば、光ビームを受光板の端部(2c)から受光板内部に入射すると、光ビームが受光板に入射した位置(3c)から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角(θ1)をなし、且つ、溝(D)と直角(θ2)に交差して延出するように1本の光軸(5)が出現する(図1)。
【0029】
また、光ビームを受光板の表面(2b)に照射すると、光ビーム(3b)が受光板に入射した位置(3c)から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角(θ1)をなし、且つ、溝(D)と直角(θ2)に交差して延出する2本の光軸(5)が出現する(図5)。
【0030】
透明板(2)の素材は、表面にヘアライン状の溝を形成することができ、光を透過し得るものであれば、特に限定されるものではなく、ガラスや、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂などの合成樹脂を広く採用することができるが、ヘアライン状の溝を設ける加工が容易で、光透過に優れる素材として、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリエステル樹脂から選ばれる1種又は2種以上の合成樹脂であることが好ましい。中でも、加工性に優れ入手が容易な、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートを使用することが特に好ましい。また、材質により出現する光軸の長さが異なり、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートは、ポリエチレンテレフタレートよりも長い光軸が出現するため本発明のディスプレイ装置に好適である。
【0031】
受光板(2)は、透明板に染料を混ぜるなどして着色することもできる。この場合、出現する光軸と受光板とのコントラストが明確になり、さらに美麗なディスプレイ効果を得ることができる。ただし、着色は、受光板が光を透過し得る程度とする必要がある。あまりに着色を濃くすると受光板の表面あるいは端部に光ビームを照射しても光軸が出現しないか、あるいは、出現しても見る側から受光板を通して視認することができないためである。
【0032】
特に、端面(端部(2c)に相当する面)のみを着色した透明板の表面にヘアライン状の溝を施した受光板では、端部から光ビームを入射すると着色した光軸が現れ、光ビームを受光板の表面に照射すると光ビームと同一色の光軸が現れるため多彩なディスプレイ効果が可能となる。
【0033】
また、受光板(2)は、見る側とは反対側の面(2b)を金属蒸着または塗装してもよい。受光板の端部(2c)から光ビームを入射すると光軸(5)が出現する。また、受光板の見る側の表面(2a)に光ビーム(3b)を照射しても光軸(5)を見ることができる。この場合、光軸の色と金属蒸着等の色とのコントラストにより、美麗な光の演出効果が可能となる。
【0034】
さらに、受光板(2)は、見る側とは反対側の面(2b)に多数の微細な凹凸を形成するための、所謂しぼ加工を行っても良い。受光板の端部(2c)から光ビームを入射すると光軸(5)が出現する。また、受光板の見る側の表面(2a)に光ビーム(3b)を照射しても光軸(5)を見ることができる。尚、しぼ加工による凹凸形状が大きすぎると光の乱反射が生じるため、受光板の端部(2c)から光ビームを入射することにより出現する光軸(5)は認識が困難となる場合がある。
【0035】
受光板は、透明板を一方向に湾曲させ、透明板の表面に湾曲する方向に対して直角にヘアライン状の溝を形成してもよい(図6,8)。この場合、受光板の表面(2b)から延出する光軸(5)の表面に対する角度は大きくなる。
【0036】
ヘアライン状の溝とは、受光板の平滑面に設けた毛髪状の微細な溝のことを指す。ヘアライン状の溝は、例えば、(a)透明板の表面をサンドペーパー等の研磨具を用いて一定方向にのみ研磨する、あるいは(b)スクラッチ装置等を使用し、透明板をブラシロールに通すことにより板の表面を一方向にのみ擦る、などの方法により形成することができる。生産性の観点からは(b)の方法を用いることが好ましく、この方法は一般にヘアライン加工と称される。受光板にヘアライン加工を施す場合には、通常、アルミニウム等の金属に行うヘアライン加工を適用することができ、その場合は溝の幅や深さ等の条件にとらわれることなく光軸を出現させることができる。
【0037】
複数のヘアライン状の溝(4)は、相互に平行になるように設ける。ヘアライン状の溝をランダムに設け、かかる溝が交差するような場合には、光の乱反射が生じ光軸が出現しないか、もしくは出現しても明確に認識することは困難となる。尚、平行なヘアライン状の溝に、これに交差する溝が混じる程度であれば、光軸の出現に問題はない。
【0038】
ヘアライン状の溝は、光軸を見る側の透明板の表面(2a)、或いは、見る側と反対側の表面(2b)のいずれに設けてもよい。また、透明板の両側表面(2a,2b)に設けてもよい。但し、両面(2a,2b)に設ける場合には、両側の表面の溝は、交差することなく平行になるように配置する必要がある。溝が交差すると光の乱反射を招き、光軸を認識することが困難となる可能性があるためである。
【0039】
また、ヘアライン状の溝(4)は、相互に平行であれば、直線である必要はなく、曲線であってもよい。この場合、光軸(5)は、見る側とは反対側の表面(2b)から、溝(D)に対して直角(θ2)に交差しながら、面(2b)に対して鋭角(θ1)に延び出すように出現する(図5)。
【0040】
ヘアライン状の複数の溝(4)の一部に、かかる溝を覆うように透明被膜層(8)を形成した受光板(2)を用いれば、光軸(5)は透明被膜層(8)を形成した領域で途切れたように出現する(図12)。透明被膜層(8)は、ヘアライン状の溝を埋め平滑な面とするものである。たとえば、透明板の全表面にヘアライン加工を施し、その後、所定の領域に透明被覆層を形成すれば、様々な長さの光軸を容易に出現させることができる。
【0041】
透明被膜層(8)は、ヘアライン状の複数の溝(4)の一部を覆うように透明塗料を塗布することにより形成することができる。透明塗料としては、例えば、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、酢酸ビニル−アクリル共重合体樹脂系、塩化ビニル樹脂系、アクリルシリコ−ン樹脂系、フッ素樹脂系等の塗料を広く用いることができるが、紫外線硬化型の塗料を使用すれば、生産効率にすぐれ好適である。
【0042】
ヘアライン状の複数の溝(4)の一部に、かかる溝(4)に重ねて断面V字状の溝(9)を形成すれば、光軸(5)が出現するとともに、断面V字状の溝(9)表面が発光し、実施例に示すように、美麗な外観を呈するディスプレイが可能となる(図13)。
【0043】
光源は、特に限定されることなく、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの球状あるいは棒状等の発光物全般を用いることができるが、設置が容易で光の強度が高く発熱量が小さいことから、発光ダイオード(LED)を用いることが好ましい。
【0044】
発光ダイオード(LED)の種類は、狭指向角タイプのものが、より好適に用いられる。発光ダイオードの色は、白色、青色等任意のものを利用することができる。これらの発光ダイオードを使用すれば、多色の光軸を出現させることができ、多彩なディスプレイ効果を奏することができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0046】
受光板(2)の端部(2c)から光ビームを入射して光軸(5)を出現させた種々の実施態様(図1乃至6)について説明する。
【0047】
図1は、表面(2a)にヘアライン状の溝(4)を設けた受光板(2)の端部(2c)に光源(3)である発光ダイオード(LED)(3a)の光ビームを入射した状態を示すものである。光ビームは、複数のLEDを直線上に配設した光源から照射している。
【0048】
図1のように受光板(2)に光ビームを照射すると、観者(A)からは、光ビームが受光板(2)に入射する位置(3c)から、見る側とは反対側の受光板の表面(2b)から面に対して鋭角(θ1)をなし、溝(D)に対して直角(θ2)に交差しながら延出する光軸(5)が出現して見える。
【0049】
図2は、受光板(2)の見る側とは反対側に着色不透明板(6)を受光板(2)に重ねて配置し、受光板(2)の端部(2c)に光ビームを入射した状態を示すものである。この場合にも、観者(A)からは、光ビームが受光板(2)に入射する位置(3c)から、見る側とは反対側の受光板の表面(2b)から面に対して鋭角をなし、溝(D)に対して直角に交差しながら光軸が延出しているように見える。このことから、出現する光軸(5)は、光ビームの屈折や受光板からの反射光ではなく、光ビームが受光板を伝搬することにより生じる虚像によるものであるといえる。
【0050】
図3は、2本の光源(3,3)を使用し、受光板(2)の対向する両端部(2c,2c)から光ビームを入射した状態を示すものである。2本の光軸(5)は、受光板の表面(2b)から延出し交差するように出現する。また、板の厚さを厚くした受光板(2)を使用して同様に実施したところ、同じように光軸(5)が出現することを確認した(図4)。
【0051】
図5は、ヘアライン状の溝(4)を相互に平行しながら湾曲して設け、受光板の端部から光ビーム(3b)を入射したときの状態を示すものである。光軸(5)は溝(4)を施した部位に生じ、溝(D)とは直角(θ2)に交差しながら、見る側とは反対側の表面から鋭角(θ1)に延出するように出現した。
【0052】
図6は、湾曲した受光板の両端部(2c,2c)から光ビームを入射した状態を示すものであるが、この場合の光軸(5)は、湾曲したものとなる。
【実施例2】
【0053】
受光板(2)の表面(2a又は2b)に光ビーム(3b)を照射して光軸(5)を出現させた種々の実施態様(図7乃至9)について説明する。
【0054】
図7は、ヘアライン状の溝(4)を設けた受光板(2)の表面(2a)に光源(3)である発光ダイオード(LED)(3a)から光ビーム(3b)を照射した状態を示すものである。光ビームは、複数のLEDを直線上に配設した光源から複数照射している。
【0055】
図7に示すように受光板(2)に光ビーム(3b)を照射すると、観者(A)からは、光ビーム(3b)が受光板(2)に入射する位置(3c)から、見る側とは反対側の受光板の表面(2b)から面に対して鋭角(θ1)をなし、溝(D)に対して直角(θ2)に交差しながら延出する湾曲した光軸が2本出現して見える。
【0056】
図8は、湾曲した受光板の表面(2c,2c)から光ビームを入射した状態を示すものであり、図7よりさらに湾曲した光軸(5)が出現する。
【0057】
図9は、受光板(2)の見る側の表面(2a)に光ビーム(3b)を照射したときの出現する光軸(5)の状態を示すものである。図7のように受光板(2)の見る側と反対側の表面(2b)に光ビーム(3b)を照射したときと同様に、光軸(5)は見る側とは反対側の受光板の表面(2b)から面に対して鋭角(θ1)をなし、溝(D)に対して直角(θ2)に交差しながら延出して見える。
【実施例3】
【0058】
図10は、ヘアライン状の溝(4)を設けた受光板(2)から複数枚の円板(7)をくり抜き、これら円板の外周には歯車状の凹凸(7a)を設け、隣合う円板外周の凹凸(7a)を噛み合わせながらふたたび受光板(2)に配置したものである。一部の円板が回転すると隣合う円板が順次回転し、円板(7)表面のヘアライン状の溝(4)が回転することで、光軸(5)が回転しながら表出し、幻想的で動きのあるディスプレイが可能となる。
【実施例4】
【0059】
図11は、板面の中央に複数のヘアライン状の溝(4)を同心円状に設けた受光板(2)に光ビーム(3b)を照射したときに出現する光軸(5)の状態を示すものである。光ビーム(3b)が照射された、ヘアライン状の溝(4)の各位置からは、見る側とは反対側の受光板の表面から面に対して鋭角(θ1)に、溝(D)に対して直角(θ2)に交差しながら延出する光軸(5)が出現する。また、同心円の中心からは、ヘアライン状の溝に対して直角に交差するように複数の光軸(5)が放射状に出現する。そして、受光板(2)(又は光ビーム(3b))を横方向にスライド移動させると、放射状の光軸(5)は同心円の中心を軸としてあたかも回転しているように見える。
【実施例5】
【0060】
図12(a)は、ヘアライン状の溝(4)の一部に、かかる溝を覆うように透明被膜層(8)が形成された受光板(2)に一端部から光ビーム(3b)を入射した場合に、出現する光軸(5)の状態を示すものである。光ビーム(3b)が受光板(2)に入射する位置(3c)から、見る側とは反対側の受光板の表面(2b)から面に対して鋭角(θ1)をなし、ヘアライン状の溝(D)に対して直角(θ2)に交差しながら延出する光軸(5)が出現して見えるが、透明被膜層(8)が存在する領域では、光軸(5)が途切れて見える。また図12(b)は、図12(a)と同一の受光板の表面に、光ビーム(3b)を照射した場合の、光軸の状態を示すものであるが、この場合にも、透明被膜層が存在する領域では、光軸(5)が途切れたように見える。
【実施例6】
【0061】
図13は、ヘアライン状の溝(4)の一部に、かかる溝(4)に重ねて断面V字状の溝(9)が形成された受光板(2)の表面に光ビーム(3b)を照射した場合の状態を示すものである。図(a)は、板表面の3箇所を中心とした3つの放射線を断面V字状の細い溝で描いた模様であり、図(b)は、板表面の中央に断面V字状の太い溝により大小2つの同心円を描き、かかる2つの円周を、円弧に対して直角の溝で等間隔に結んだ形状の模様である。
【0062】
このようにヘアライン状の溝(4)と断面V字状の溝(9)を重ねて形成すると、図13(a)、(b)に示すように、ヘアライン状の溝に対して垂直に光軸が現れるとともに、断面V字状の溝(9)の表面が、明るく発光するため、美麗な外観を呈することができる。
【符号の説明】
【0063】
A 観者(見る側)
D ヘアライン状の溝の方向を示す軸線
1 ディスプレイ装置
2 受光板
2a 見る側の表面
2b 見る側と反対側の表面
2c 端部
3 光源
3a 発光ダイオード(LED)
3b 光ビーム
3c 光ビームが入射する位置
4 ヘアライン状の溝
5 光軸
6 着色不透明版
7 円板
7a 凹凸(歯車)
8 透明被膜層
9 断面V字状の溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明板の少なくとも片側表面に互いに平行なヘアライン状の溝を多数形成した受光板と、該受光板に光ビームを照射するための光源からなるディスプレイ装置であって、
受光板に光ビームを照射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出する光軸が出現することを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】
光ビームを照射するための光源が発光ダイオードであることを特徴とする請求項1記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
透明板は、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の合成樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2記載のディスプレイ装置。
【請求項4】
光ビームを受光板の端部から受光板内部に入射することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【請求項5】
光ビームを受光板の表面に照射することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【請求項6】
受光板は、一方向に湾曲した透明板の表面に、湾曲する方向に対して直角にヘアライン状の溝を形成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【請求項7】
受光板は、ヘアライン状の複数の溝の一部に、該溝を覆う透明被膜層を形成したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【請求項8】
受光板は、ヘアライン状の複数の溝の一部に、該溝に重ねて断面V字状の溝を形成したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のディスプレイ装置を使用して、受光板に光ビームを照射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出する光軸を出現させることを特徴とするディスプレイ方法。
【請求項1】
透明板の少なくとも片側表面に互いに平行なヘアライン状の溝を多数形成した受光板と、該受光板に光ビームを照射するための光源からなるディスプレイ装置であって、
受光板に光ビームを照射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出する光軸が出現することを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】
光ビームを照射するための光源が発光ダイオードであることを特徴とする請求項1記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
透明板は、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の合成樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2記載のディスプレイ装置。
【請求項4】
光ビームを受光板の端部から受光板内部に入射することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【請求項5】
光ビームを受光板の表面に照射することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【請求項6】
受光板は、一方向に湾曲した透明板の表面に、湾曲する方向に対して直角にヘアライン状の溝を形成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【請求項7】
受光板は、ヘアライン状の複数の溝の一部に、該溝を覆う透明被膜層を形成したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【請求項8】
受光板は、ヘアライン状の複数の溝の一部に、該溝に重ねて断面V字状の溝を形成したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のディスプレイ装置を使用して、受光板に光ビームを照射すると、光ビームが受光板に入射した位置から見ている側とは反対側に、受光板と鋭角をなし、且つ、溝と直角に交差して延出する光軸を出現させることを特徴とするディスプレイ方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−33246(P2013−33246A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150103(P2012−150103)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【出願人】(505323172)株式会社 東洋マーク (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【出願人】(505323172)株式会社 東洋マーク (2)
【Fターム(参考)】
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