説明

ディテントスプリング

【課題】自動変速機のセレクトレバーを保持するためのディテントスプリングにおいて、ボルトの締付のみのよって自動変速機ケースへの位置決め及び固定を可能にする。
【解決手段】ディテントスプリング12の基部13に位置決め部19を形成する。ディテントスプリング12の基部13にボルト23を挿通して、ケース20の取付ボス部22にねじ込んで締付けると、ディテントスプリング12がボルト23の締付方向に回転して、位置決め部19がケース20の内壁21に当接し、その回転を規制してディテントスプリング12を位置決めする。これにより、ボルト23の締付のみによってディテントスプリング12を位置決め及び固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトによって取付部に固定される板状のディテントスプリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に自動車の自動変速機は、P(駐車)、R(後退)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)等の作動モードを有しており、これらの作動モードは、運転者がセレクトレバーを操作することによって選択される。セレクトレバーは、ディテント機構によって各作動モード位置で弾性的に保持され、運転者の操作によって選択した作動モード位置へ移動できるようになっている。ディテント機構は、例えば、セレクトレバーの移動に連動して回動するディテントプレートに各作動モードに対応する凹凸を形成し、これらの凹凸にディテントスプリングに支持されたディテントローラを係合させることにより、セレクトレバーを各作動モードで弾性的に保持する構造となっている。
【0003】
従来のディテントスプリングの位置決め構造の一例について、図8を参照して説明する。図8に示すように、ディテントスプリング1は、板ばねであり、その基部2が自動変速機のケース3のボス部4にボルト5によって固定されており、基部2から、やや湾曲したアーム部6が延ばされている。アーム部6の先端部7は、二股状に形成され、その間にディテントローラ8が回転可能に取付けられている。基部2のアーム部6の反対側には、回り止め用の爪部9が延ばされており、爪部9の先端部がケース3に形成された位置決め穴10に挿入されている。また、ディテントスプリング1の基部2には、スプリングカバー11が重ねられてボルト5によってボス部4に共締めされており、スプリングカバー11によってアーム部6が撓む際の支点の位置を規定している。
【0004】
この構成により、ディテントスプリング1をケース3のボス部4に取付ける際、爪部9を位置決め穴10に挿入することによって、ディテントスプリング1を位置決めすることができ、ボルト5の締付時にディテントスプリング1が回転するのを防止することができる。
【0005】
また、特許文献1には、ケースのボス部に取付けられた位置決めピンをディテントスプリングのピン穴に挿入することにより、回り止めを行うようにしたディテントスプリングの位置決め構造が記載されている。
【特許文献1】特開平11−300332号公報
【0006】
しかしながら、図8に示す従来のディテントスプリングの位置決め構造では、次のような問題がある。爪部9は、ケース3内の他の部品との干渉を避けるため、細長く延ばされて複雑な形状となっており、爪部9を形成するための材料及びプレス加工等の工程が必要である。また、爪部9を挿入するための位置決め穴10を形成するための穴あけ及び面取り加工が必要である。このため、製造工程が煩雑であり、製造コストもかかる。
【0007】
一方、特許文献1に記載されたものでは、位置決めピンが設けられているため、部品点数が多く、また、ピンの抜け止めを行う必要があり、やはり、製造工程が煩雑で製造コストがかかるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で容易に位置決め及び固定が可能なディテントスプリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、ボルトによって取付部に固定される板状のディテントスプリングであって、前記取付部側の部材に当接して当該ディテントスプリングの前記ボルトの締付方向への回転を規制する位置決め部が一体に形成されていることを特徴とする。
請求項2の発明に係るディテントスプリングは、上記請求項1の構成において、自動変速機の作動モードを切換えるセレクトレバーを各作動モード位置で保持するためのディテントスプリングであることを特徴とする。
請求項3の発明に係るディテントスプリングは、上記請求項2の構成において、前記取付部は、前記自動変速機のケースであり、前記取付部側の部材は、前記ケースの内壁であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るディテントスプリングによれば、ボルトを締付けることによって、ディテントスプリングがボルトの締付方向に回転して、位置決め部が取付部側の部材に当接し、その回転を規制することにより、所定位置に位置決めして固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1実施形態について、図1乃至図5を参照して説明する。図4及び図5に示すように、本実施形態に係るディテントスプリング12は、板状のばね部材であり、略矩形の基部13に取付穴14が設けられ、基部13から、やや湾曲したたアーム部15が延ばされている。アーム部15の先端部には、二股状のローラ支持部16が形成されている。ローラ支持部16の二股形状の間には、ディテントローラ17がピン18によって回転可能に取付けられている。ディテントスプリング12の基部13には、アーム部15の側部に位置決め部19が一体に形成されている。位置決め部19は、基部13と同一平面上に形成され、図4に示す平面視において、アーム部15と略平行に延ばされている。
【0012】
図1乃至図3に示すように、自動変速機のケース20には、その内壁の近傍に取付ボス部22(取付部)が突出されている。ディテントスプリング12は、基部13の取付穴14にボルト23が挿通され、このボルト23によって取付ボス部22に固定されている。このとき、位置決め部19は、ケース20の内壁21(取付部側の部材)に当接して、ディテントスプリング12のボルト23を中心とする右回り(ボルト23の締付方向)の回転を規制することにより、ディテントスプリング12を所定位置に位置決めするようになっている。
【0013】
ディテントスプリング12の基部13には、スプリングカバー24が重ねられてボルト23によって取付ボス部22に共締めされている。スプリングカバー24は、ディテントスプリング12の基部13と略同一形状で、位置決め部25を有しており、ディテントスプリング12と同様、位置決め部25がケース20の内壁21に当接することによって位置決めされるようになっている。そして、スプリングカバー24は、ディテントスプリング12の基部13に重ねられることにより、アーム部15が撓む際に支点の位置を規定している。
【0014】
以上のように構成した本実施形態の作用について次に説明する。
ディテントスプリング12は、ケース20の取付ボス部22にボルト23によって取付けられ、ディテントローラ17をセレレクトレバーの移動に連動して回動するディテントプレートの凹凸に係合させて、セレクトレバーを各作動モード位置で弾性的に保持する。
【0015】
ディテントスプリング12は、スプリングカバー24を重ねて、ボルト23を取付穴14に挿通させて取付ボス部22のねじ穴にねじ込むことにより、ボス部22に取付けられる。このとき、ディテントスプリング12は、ボルト23を締付けると、右回り(ボルト23の締付方向)に回転し、位置決め部19がケース20の内壁21に当接することにより、その回転が規制されて位置決めされる。これにより、ディテントスプリング12は、ボルト23を締付けるだけで、所定位置に位置決めして固定することができる。
【0016】
ディテントスプリング12の位置決め部19は、簡単な形状であるから、プレス加工等によって容易に成形することができる。また、ケース20の内壁21を利用して位置決めを行うので、ケース20側に位置決めのための基準を別途設ける必要がない。
【0017】
次に、本発明の第2及び第3実施形態について、それぞれ図6及び図7を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記第1実施形態に対して、同様の部分には同一の符号を付して、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0018】
図6に示す第2実施形態では、ディテントスプリング26及びスプリングカバー27(仮想線で示す)の位置決め部28、29は、略矩形に形成され、また、ケース21の側壁には、位置決め部28、29と係合する位置決めボス部30が形成されている。これにより、ディテントスプリング26及びスプリングカバー27の位置決め部28、29と位置決めボス部30との係合によって、これらの回転を規制することができ、上記第1実施形態と同様、ボルト23の締付のみによって、ディテントスプリング26及びスプリングカバー27を所定位置に位置決めして固定することができる。
【0019】
図7に示す第3実施形態では、ディテントスプリング31及びスプリングカバー32(仮想線で示す)の位置決め部33、34は、略矩形に形成されているが、上記第2実施形態に対して、ケース20の内壁21に当接する部分の寸法が大きくなっている。これにより、位置決め部33、34のみによってディテントスプリング31及びスプリングカバー32の回転を規制することができるので、ケース20側の位置決めボス部30は省略されている。そして、ディテントスプリング31及びスプリングカバー32の位置決め部33、34とケース20の内壁21との当接によって、これらの回転を規制することができ、上記第1及び第2実施形態と同様、ボルト23の締付のみによって、ディテントスプリング31及びスプリングカバー32を所定位置に位置決めして固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るディテントスプリングが自動変速機のケースに取付けられた状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すディテントスプリングが自動変速機のケースに取付けられた状態を示す平面図である。
【図3】図2のA−A線による矢視図である。
【図4】図1に示すディテントスプリングの平面図である。
【図5】図4に示すディテントスプリングの側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るディテントスプリングが自動変速機のケースに取付けられた状態を示す平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るディテントスプリングが自動変速機のケースに取付けられた状態を示す平面図である。
【図8】従来のディテントスプリングの位置決め構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
12 ディテントスプリング、19 位置決め部、21 内壁(取付部側の部材)、22 取付ボス部(取付部)、23 ボルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトによって取付部に固定される板状のディテントスプリングであって、前記取付部側の部材に当接して当該ディテントスプリングの前記ボルトの締付方向への回転を規制する位置決め部が一体に形成されていることを特徴とするディテントスプリング。
【請求項2】
自動変速機の作動モードを切換えるセレクトレバーを各作動モード位置で保持するためのディテントスプリングであることを特徴とする請求項1に記載のディテントスプリング。
【請求項3】
前記取付部は、前記自動変速機のケースであり、前記取付部側の部材は、前記ケースの内壁であることを特徴とする請求項2に記載のディテントスプリング。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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