説明

ディーゼルエンジン

【課題】 DPFの再生処理を燃焼空気供給用のコンプレッサを要することなく実施できるようにする。
【解決手段】 エンジン本体1の吸気流路4にスロットル弁5を設ける。排気ガス流路6におけるDPF7の設置個所の上流側位置に、DPF再生処理用のバーナ8を設ける。吸気流路4におけるスロットル弁5の設置個所の上流側位置より分岐させたバイパスライン12を、バーナ8の燃焼器9に接続する。DPF7の再生処理を行なう場合は、スロットル弁5を絞ることで、その上流側の吸気流路4内で圧力が高まる空気13を、バイパスライン12を通してバーナ8の燃焼器9へ燃焼用空気として導いてバーナ8を運転し、バーナ8で発生する高温の燃焼ガス18によりDPF7を昇温させて、堆積したPMを燃焼させて除去させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスの流路にディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)とその再生用バーナを具備したディーゼルエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス中には、粒子状物質(Particulate Matter、以下PMと記す)が含まれており、該PM等の浮遊粒子状物質は環境基準の対象となる。
【0003】
そのために、ディーゼルエンジンでは、排気流路の途中にディーゼルパティキュレートフィルター(以下、DPFと記す)を設けて、排気ガス中に含まれるPMを捕集することで、排気ガスを浄化して大気中に排出されるPMの量を低減させるようにする対策が採られるようになってきている。
【0004】
ところで、上記DPFの機能は、基本的には、上記排気ガス中のPMを漉し取ることで捕集するようにしてあるため、捕集したPMが堆積して目詰まりを起こすと、圧力損失が上昇し、エンジン性能の低下を招く虞が生じる。
【0005】
なお、高速高負荷運転では排気温度が高くなるため、上記DPFに捕集されたPMが再燃焼されるため、目詰まりが生じる虞は生じないが、低速や低負荷のような排気温度が低くなる運転条件においては、目詰まりが生じ易くなることから、DPFの温度を積極的に上昇させて、該DPFに堆積したPMを強制的に燃焼させて除去する再生処理が必要になる。
【0006】
上記DPFを再生処理する手法の1つとしては、ディーゼルエンジンの排気流路におけるDPFの設置個所よりも上流側となる個所に、バーナを設置した構成として、該バーナにて燃料を燃焼させて発生させる高温の燃焼ガスを、上記DPFへ導くことで、該DPFを、所要温度まで昇温させて、堆積したPMを燃焼させて除去するようにする手法が従来提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
なお、近年では、ディーゼルエンジンにおいて、低負荷時等、燃料噴射量が少ない場合にエンジンに吸入される空気量を制限することで、DPF等の排気ガス流路に設けたガス処理機器へ導かれる排気の温度を高く保持することや、排気ガス再循環(EGR)を行う際に排気ガスの循環量を調整すること等によるエンジン性能の向上を目的として、吸気流路にスロットル弁を設けた構成とすることが行われるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−260944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記特許文献1に示されたように、ディーゼルエンジンの排気ガスの流路におけるDPF設置個所よりも上流側位置にDPF再生用のバーナを設ける場合は、該バーナの燃焼器にて燃料を燃焼させるために燃焼用空気(酸素)の供給が必要であり、そのために、上記バーナには燃焼用空気の供給装置としてコンプレッサを装備する必要が生じているというのが実状である。
【0010】
したがって、ディーゼルエンジンの製造コストが嵩むと共に、上記コンプレッサを駆動するための動力が必要になることから、該コンプレッサの駆動に消費される動力の分、ディーゼルエンジンの燃費が低下してしまうというのが実状である。
【0011】
そこで、本発明は、排気ガスの流路に設けたDPFを再生するためのバーナに、動力を要することなく燃焼用空気を供給することができて、コストの削減化を計ることができると共に、燃費を改善することができるディーゼルエンジンを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、エンジン本体の排気ガス流路にDPFを備えたディーゼルエンジンにおいて、上記エンジン本体の吸気流路にスロットル弁を設けると共に、上記排気ガス流路におけるDPF設置個所の上流側位置にDPF再生処理用のバーナを設け、上記吸気流路におけるスロットル弁の設置個所の上流側位置より分岐させたバイパスラインを、上記バーナに接続してなる構成とする。
【0013】
又、上記構成において、吸気流路におけるスロットル弁の設置個所の上流側位置より分岐させてバーナに接続したバイパスラインに、開閉弁を設けた構成とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のディーゼルエンジンによれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)エンジン本体の排気ガス流路にDPFを備えたディーゼルエンジンにおいて、上記エンジン本体の吸気流路にスロットル弁を設けると共に、上記排気ガス流路におけるDPF設置個所の上流側位置にDPF再生処理用のバーナを設け、上記吸気流路におけるスロットル弁の設置個所の上流側位置より分岐させたバイパスラインを、上記バーナに接続してなる構成としてあるので、スロットル弁を絞ることで該スロットル弁設置個所より上流側の吸気流路内で圧力が高まる空気を、バイパスラインを通して排気ガス流路に設けてあるDPF再生処理用のバーナへ燃焼用の空気として導くことができるようになるため、該DPF再生処理用のバーナに燃焼用空気を供給するためのコンプレッサを別途設ける必要をなくすことができる。
(2)よって、本発明のディーゼルエンジンに要するコストの削減化を計ることができると共に、上記燃焼空気供給用のコンプレッサを駆動するための動力が不要になることで、燃費を改善する効果が期待できる。
(3)吸気流路におけるスロットル弁の設置個所の上流側位置より分岐させてバーナに接続したバイパスラインに、開閉弁を設けた構成とすることにより、通常運転時は、上記バイパスライン上に設けてある開閉弁を閉止しておくことで、吸気流路と、排気ガス流路に設けたバーナとの間でバイパスラインを経て空気が吹き抜けたり、排気ガスが逆流する現象を阻止できるため、エンジン本体の運転をより正確に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のディーゼルエンジンの実施の一形態における通常運転状態を示す概要図である。
【図2】図1のディーゼルエンジンによるDPFの再生処理状態を示す概要図である。
【図3】本発明の実施の他の形態を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1及び図2は本発明のディーゼルエンジンの実施の一形態を示すもので、以下のような構成としてある。
【0018】
すなわち、エンジン本体1の吸気ポート2に接続してある吸気流路4の途中位置に、スロットル弁5を設ける。
【0019】
一方、上記エンジン本体1の排気ポート3に接続してある排気ガス流路6の途中位置に、DPF7を設ける。
【0020】
更に、上記排気ガス流路6におけるDPF7の設置個所よりも所要量上流側位置に、燃焼器9と、燃料噴射装置10と、点火装置11を備えたDPF再生処理用のバーナ8を設け、且つ上記吸気流路4におけるスロットル弁5の設置個所の直ぐ上流側位置より分岐させたバイパスライン12を、上記バーナ8の燃焼器9に接続した構成とする。これにより、上記スロットル弁5を、図2に示すように絞る(全閉ではない)ことで、上記吸気流路4における該スロットル弁5の設置個所の上流側部分で圧力が高くなる空気13を、上記バイパスライン12を通して上記バーナ8の燃焼器9へ導くことができるようにしてある。
【0021】
なお、上記DPF7の再生処理のために上記バーナ8を燃焼させる際の燃料噴射量は、上記エンジン本体1を運転する場合の燃料噴射量の数%程度でよいため、この燃料噴射量に応じた燃焼用の空気の量と、上記スロットル弁5を絞ることで上記吸気流路4における該スロットル弁5設置個所よりも上流側部分で高まる空気13の圧力とを考慮して、該圧力の高まった状態の空気13を、上記バーナ8の燃焼時における空気要求量に見合う量で導くことができるように、上記バイパスライン12の流路断面積を、たとえば、吸気流路4の流路断面積の数%程度となるように定めるようにすればよい。
【0022】
14はエンジン本体1に装備した燃料噴射装置、15は吸気バルブ、16は排気バルブである。又、17は上記エンジン本体1より排出される排気ガスを示す。
【0023】
以上の構成としてある本発明のディーゼルエンジンを使用する場合、通常時は、吸気流路4のスロットル弁5を、図1に示すように開状態とする。これにより、吸気流路4を流通する空気13は、ほぼ全量が吸気ポート2を経てエンジン本体1へ供給されて、該エンジン本体1の運転が行われるようになる。
【0024】
上記エンジン本体1の運転により生じる排気ガス17は、排気ポート3より排気ガス流路6を経てDPF7へ導かれ、該DPF7において図示しないPMの捕集が行われて浄化されるようになる。
【0025】
なお、上記バイパスライン12は、吸気流路4と排気ガス流路6に設けたバーナ8の燃焼器9とを連通させているため、上記スロットル弁5を開状態としているときに吸気流路4の圧力の方が排気ガス流路6の圧力よりも高ければ、上記吸気流路4よりバイパスライン12を通して排気ガス流路6側へ空気13が流れることになるが、この場合、上記バイパスライン12は、上記吸気流路4の流路断面積の数%程度の小さい流路断面積に設定してあると共に、上記スロットル弁5が開状態としてあることで、上記吸気流路4内の圧力は比較的低いため、上記バイパスライン12を通して空気13が排気ガス流路6側へ吹き抜けるとしても少量に過ぎないため、上記エンジン本体1の運転に特に影響を及ぼす虞はない。
【0026】
一方、上記スロットル弁5を開状態としているときに、DPF7が目詰まり傾向にある等の原因によって排気ガス流路6の圧力が高まると、該排気ガス流路6の圧力が上記吸気流路4の圧力よりも高くなる現象が生じる可能性があり、この場合、上記排気ガス流路6より排気ガス17がバイパスライン12を通って吸気流路4へ逆流することになる。しかし、この場合であっても、上記バイパスライン12は、上記吸気流路4の流路断面積の数%程度の小さい流路断面積に設定してあるため、吸気流路4側へ逆流する排気ガス17は少量であって、一般に行われている排気ガス再循環で循環させる排気ガス量よりも大幅に多くなることはないため、上記エンジン本体1の運転に特に影響を及ぼす虞はない。
【0027】
上記本発明のディーゼルエンジンにて、上記排気ガス17中の図示しないPMの捕集処理を所要時間行うことでPMが堆積したDPF7の再生処理を行う場合は、図2に示すように上記吸気流路4のスロットル弁5を絞る。これにより、該吸気流路4における上記スロットル弁5の設置個所の上流側部分の空気13の圧力が高まるため、該圧力が高まった空気13が、上記バイパスライン12を通して排気ガス流路6における上記DPF7よりも上流側位置に設けてあるバーナ8の燃焼器9へ導かれるようになる。よって、この状態で上記バーナ8にて燃料噴射装置10より所要量の燃料を噴射すると共に、点火装置11を作動させることで、該バーナ8にて、上記燃料噴射装置10より噴射される燃料が、上記バイパスライン12を通して吸気流路4より導かれるフレッシュな空気13を燃焼用空気として燃焼されるようになる。よって、この燃焼により生じる高温の燃焼ガス18が、上記排気ガス流路6を通して上記DPF7へ導かれることで、該DPF7が昇温され、堆積したPMの燃焼による除去が行われるようになる。
【0028】
なお、上記バーナ8の燃焼を実施させる際に、その燃料噴射装置10より噴射する燃料の量が、上記バイパスライン12を経て吸気流路4より導かれる空気13の量に対して過剰となったとしても、未燃の燃料は排気ガス流路6を通してDPF7に導かれた時点で、触媒燃焼の様に燃焼させられて該DPF7の昇温に利用されるため、何ら機能上の問題が生じる虞はない。
【0029】
このように、本発明のディーゼルエンジンによれば、吸気流路4に設けてあるスロットル弁5を絞る操作のみで、上記排気ガス流路6におけるDPF7よりも上流側位置に設けたDPF再生処理用のバーナ8に燃焼用の空気13を供給することができるため、該バーナ8に燃焼用空気を供給するためのコンプレッサを別途設ける必要はない。
【0030】
したがって、本発明のディーゼルエンジンに要するコストの削減化を計ることができると共に、上記燃焼空気供給用のコンプレッサを駆動するための動力が不要になるため、本発明のディーゼルエンジンの燃費を改善することが可能となる。
【0031】
なお、上記においては、DPF7の再生処理を行なう場合に吸気流路4のスロットル弁5を絞るものとして説明したが、低負荷時等、燃料噴射量が少ない場合にエンジン本体1に吸入される空気量を制限することで、排気ガス17の温度を高く保持するためや、排気ガス再循環(EGR)を行う際に排気ガスの循環量を調整するため等のエンジン性能の向上を目的として上記吸気流路4のスロットル弁5を絞る操作に合わせて、上記DPF再生処理用のバーナ8の運転を開始させてDPF7の再生処理を行うようにしてもよい。
【0032】
更に、上記においては、スロットル弁5を絞るときにDPF再生処理用のバーナ8の燃焼を開始させるものとして説明したが、一般に、ディーゼルエンジンは空気過剰な条件で燃料を燃焼させるようにしてあるため、排気ガス17中には十分な酸素が含まれていることに鑑みて、上記構成としてある本発明のディーゼルエンジンにおける排気ガス流路6に設けてあるDPF再生処理用のバーナ8を、燃料噴射装置10より少ない噴射量で噴射する燃料を上記排気ガス流路6を流通する排気ガス17中に含まれている酸素を利用して燃焼させることで常時運転するようにしておき、上記スロットル弁5を絞るときに、燃料噴射装置10より噴射する燃料の噴射量を増加させて、該噴射量が増加された燃料を、上記バイパスライン12を通して吸気流路4より導かれる空気13を助燃空気として燃焼させるようにしてもよい。
【0033】
次に、図3は本発明の実施の他の形態として、図1及び図2の実施の形態の応用例を示すもので、図1及び図2に示したと同様の構成において、バイパスライン12に開閉弁19を設けてなる構成としたものである。
【0034】
その他の構成は図1及び図2に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0035】
本実施の形態のディーゼルエンジンによれば、通常運転時は、上記バイパスライン12上に設けてある開閉弁19を閉止しておくことで、吸気流路4と、排気ガス流路6に設けたDPF再生処理用のバーナ8の燃焼器9との間でバイパスライン12を経て空気13が吹き抜けたり、排気ガス17が逆流する現象が生じなくなるため、エンジン本体1の運転をより正確に制御することが可能になる。
【0036】
又、DPF7の再生処理を行う場合は、上記バイパスライン12上の開閉弁19を開操作した状態で、図2に示したと同様に、吸気流路4のスロットル弁5を絞り、これにより、該スロットル弁5の設置個所の上流側部分で圧力が高まる空気13を上記バイパスライン12を通してバーナ8の燃焼器9へ導いて、該空気13を燃焼用空気としてバーナ8の運転を開始させることで、該バーナ8で生じる高温の燃焼ガス18(図2参照)によるDPF7の昇温を行わせて、堆積したPMの燃焼による除去を行わせることができるようになる。
【0037】
よって、本実施の形態によっても、図1及び図2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、排気ガス流路6に設けるバーナ8の燃焼器9の形状やサイズは適宜変更してよい。又、燃焼器9の形状やサイズに応じて、燃料噴射装置10や点火装置11の形状、サイズ、取付位置は適宜変更してもよい。
【0039】
本発明のディーゼルエンジンは、DPFを装着したディーゼルエンジンであれば、いかなる形式のものにも適用してよい。
【0040】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 エンジン本体
4 吸気流路
5 スロットル弁
6 排気ガス流路
7 DPF
8 バーナ
12 バイパスライン
13 空気
19 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体の排気ガス流路にDPFを備えたディーゼルエンジンにおいて、上記エンジン本体の吸気流路にスロットル弁を設けると共に、上記排気ガス流路におけるDPF設置個所の上流側位置にDPF再生処理用のバーナを設け、上記吸気流路におけるスロットル弁の設置個所の上流側位置より分岐させたバイパスラインを、上記バーナに接続してなる構成を有することを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項2】
吸気流路におけるスロットル弁の設置個所の上流側位置より分岐させてバーナに接続したバイパスラインに、開閉弁を設けた請求項1記載のディーゼルエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−21549(P2011−21549A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167432(P2009−167432)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】