説明

デコイ成分による選択した生物活性食品成分の保護方法

本発明は、1種もしくは2種以上の生きた微生物と、少なくとも1種の選択した生物活性食品成分とを含有する食品に関し、前記選択した生物活性食品成分は、前記微生物によるその代謝を低減させるように保護されている。この保護は、前記選択した生物活性食品成分を好ましくはカプセル封入する物理的手段、および/または戦記食品中に少なくとも1種のデコイ食品成分を含有させる手段により行われる。より具体的には、本発明は、生きた微生物、選択した生物活性成分、およびデコイ成分を含有する食品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種もしくは2種以上の生きた微生物と、少なくとも1種の選択された生物活性食品成分とを含有する食品であって、該生きた微生物と該選択したの生物活性食品成分が、該微生物による該生物活性食品成分の代謝を低減させるように使用される食品に関する。
【0002】
食品成分、特に生物活性、すなわち機能性のペプチド(すなわち、消費者に対する有益な活性を、消化管において局所的に、または循環系に到達した後の生体内のどこかで遠位的に有するペプチド)の市場はここ数年間で急速に拡大している。
【0003】
生物活性ペプチドとは、それが由来するタンパク質内では不活性であるが、酵素作用により放出(遊離)されると特有の特性を示すようになる、特定されたアミノ酸配列のことである。これらのペプチドは機能性ペプチドとも呼ばれる。このような生物活性ペプチドは、とりわけ、消化器系、生体防御系(例えば、抗菌もしくは免疫調節効果)、心臓血管系(特に抗血栓もしくは抗高血圧効果)、ならびに/または神経系(鎮静効果もしくはオピオイド型の鎮痛効果など)に効果を発揮することができる(下記の表1および表2を参照)。
【0004】
次の表1は人乳および牛乳からタンパク質の加水分解により放出される主要な機能性ペプチドを列挙する。
【0005】
【表1】

【0006】
次の表2は、今日まで知られている乳中に見出された機能性ペプチドの主な生理学的活性をまとめたものである。
【0007】
【表2−1】

【0008】
【表2−2】

【0009】
【表2−3】

【0010】
【表2−4】

【0011】
これらのペプチドは一般に植物タンパク質(例えば、大豆タンパク質)または動物タンパク質(例えば、カゼインまたは乳清タンパク質)の加水分解により得られる。この加水分解は酵素法および/または発酵法により行われ、目的とする「健康増進効果」を与えるのに一般に必要な工程である、活性分画の濃縮を一般に伴う。健康増進効果を提供するためのこれらのペプチドの製造および使用については、文献に十分な背景が説明されている(Danone World Newsletter No. 17, 1998年9月を参照)。
【0012】
このような成分を受容すると思われる食物ベクターの中で、発酵乳製品は、発酵素および発酵産物(すなわち、乳中に存在する基質の乳酸菌による変換により生ずる分子)の存在に起因する健康増進効果を与えるのに良好な立場にある。今日まで、科学界では発酵素(ferment)の性質に最大の注意を払ってきた。研究者は最近、発酵産物に関心を持ち始めており、その中でもある種のペプチドは、非常に多くの特異的な生物学的メッセンジャーであることから特に関心を集めている。従って、発酵乳製品は例えば、カゼインまたは乳清タンパク質のような乳基質から得られた生物活性ペプチド加水分解物に対するベクターとして特に好適である。
【0013】
しかし、次の大きな問題がある:生の(新鮮)乳製品(ヨーグルト、発酵乳製品、乳を主成分とする発酵飲料など)の製造に使用する微生物、特に乳酸菌は、一般にそれらの栄養要求量、より具体的にはそれらの窒素要求量を満たすために、ペプチドを消費することができる。本発明の枠組み内では、このことを「ペプチド代謝」と称する。実際、乳酸菌は、それらがペプチドを代謝するのを可能にする下記のいくつかの分解系および/または輸送系を有し、それによりそれらのペプチドを培地から消失させてしまう。
【0014】
1.タンパク質および大きなペプチドを開裂して、それらの吸収(同化)を促進するタンパク質分解系(細胞壁プロテアーゼ、PRT)(「細胞外代謝系」);
2.細胞内部に向かう輸送系、その一つはサイズが約10アミノ酸のオリゴペプチドに対して特異的にあり、もう一つはジペプチドおよびトリペプチドの輸送に適合している(乳酸桿菌は別にトリペプチドペルミアーゼ系も有する)(「細胞内部指向輸送系」);ならびに
3.ペプチドをアミノ酸に分解できる細胞内酵素系(約15種のエンドペプチダーゼおよびエキソペプチダーゼを含有)(「細胞内代謝系」)。
【0015】
乳中に天然に存在するペプチドの量は乳酸菌の要求量に比べて一般に極めて少ないことを考慮して、ペプチドの補給を行うことによりそれらの増殖を加速するのが普通である。そうすると、発酵中にそれらペプチドは完全に消費される。
【0016】
結局のところ、(i) 乳中でペプチドがその主要供給源となる、乳酸菌の窒素要求量、(ii) 該乳酸菌がペプチドを効率的に消費する能力、および(iii) 賞味期限(UBD)まで乳系発酵製品中に乳酸菌のかなりの集団が生存、という理由により、発酵乳製品中の機能性ペプチド含有成分の使用は、発酵中または賞味期限までの製品の貯蔵中にこのような成分が一般に乳酸菌により消費されてしまうため、不可能ではなくても、困難である。
【0017】
さらに、乳酸菌によるペプチドの「時期尚早の」代謝による分解というこの問題は、ある特定のペプチドに特異的なものではないばかりか、ある特定の発酵素(または発酵を生ずることができる微生物、好ましくは細菌)に特異的なものでもない。
【0018】
この問題は、本質的に普遍的なものであり、考慮するペプチドおよび微生物の種類に関係なく起こる。
1例として、生物活性αS1[91-100]ペプチドの場合を引用することができる(欧州特許EP0714910を参照;αS1[91-100]ペプチドは、特に、51-53, Avenue Fernand Lobbedez BP 946, 62033 ARRAS Cedex, フランス所在のアングルディア(Ingredia)社からラクティウム(R)(Lactium)なる名称で販売されている、乳タンパク質加水分解物に含まれる抗痙攣性を有するペプチドである)。かくして、出願人は、最終製品中の生存乳酸菌集団がその最終製品の貯蔵中に生物活性ペプチドを代謝し続けるため、わずか10日後(その賞味期限が28日間である生製品について)にαS1[91-100]ペプチドの約35〜55%が消失したことを認めた。これは消費者に対して「健康増進」効果を保証する場合には全く許容できないことである(データは示さず)。
【0019】
生物活性ペプチドの消費が発酵素の代謝活性により引き起こされることから、この微生物の全部または一部を、例えば適当な熱処理(高温殺菌<thermization>または低温殺菌<Pasteurization>)を用いて殺すことにより、この現象を低減させることが有用であると考えられるかもしれない。この場合、生物活性αS1[91-100]ペプチドを保存することが可能となる(例えば、75℃に約1分間の加熱後に)。
【0020】
しかし、かかる解決策は下記の多くの難点を与える:
・発酵乳塊の高温殺菌は、熱処理前に添加する安定剤(ペクチン、デンプン、カラジーナン等)の使用を必要とするため、プロセスを複雑化させ、調合コストを著しく増大させる;
・工業用生産ラインがより複雑となり、より大きな比投資額を必要とする;
・製品は、もはや生きた発酵素を含有する製品に関係する品質表示から得られる利益を享受できず(ヨーグルト)、実際、乳酸発酵素の摂取に伴う利益を失うであろう;そして
・一般にマイナス方向の官能性(感覚刺激)衝撃が顕著である。
【特許文献1】EP0714910
【特許文献2】US6514941
【特許文献3】EP0583074
【特許文献4】EP0737690
【特許文献5】EP1302207
【特許文献6】EP0821968
【特許文献7】特開平6−197786号公報
【非特許文献1】Kayser et al., (1996) FEBS Letters 383, 18-20
【非特許文献2】Hata Y. et al., (1996) Am. J. Clin. Nutr. 64, 767-71
【非特許文献3】Nakamura Y. et al., (1995) J. Dairy Sci. 78, 1253-7
【非特許文献4】Migliore-Samour D. et al., (1988) Experimentia 44,188-93
【非特許文献5】Defilippi C. et al., (1995) Nutr. 11, 751-4
【非特許文献6】Tome D. et al., (1987) Am. J. Physiol. 253, G737-44
【非特許文献7】Tome D. et al.,(1988) Reprod. Nutri. Develop. 28, 909-18
【非特許文献8】Ben Mansour A. et al., (1988) Pediatr. Res. 24, 751-5
【非特許文献9】Mahe S. et al., (1989) Reprod. Nutri. Develop. 29, 725-32
【非特許文献10】Schusdziarra V. et al., (1983) Diabetologia 24, 113-6
【非特許文献11】Yvon M. et al., (1994) Reprod. Nutri. Develop. 34, 527-37
【非特許文献12】Zucht H.D. et al., (1995) FEBS Letters 372, 185-8
【非特許文献13】Tomita M. et al.,(1994) Acta Paed. Jap. 36, 585-91
【非特許文献14】Lahov E. et al., (1996) Food Chem. Toxic. 34, 131-145
【非特許文献15】Migliore-Samour D. et al., (1989) Int. Dairy Res. 56, 357-62
【非特許文献16】Jolles P. et al., (1986) Europ. J. Biochem, 158, 379-82
【非特許文献17】Raha S. et al., (1988) Blood 772, 172-8
【非特許文献18】Chabance B. et al., (1995) Brit. J. Nut. 73, 582-90
【非特許文献19】Kohmura M. et al., (1989) Agric. Biol. Chem. 53, 2107-14
【非特許文献20】Masuda O. et al.,(1996) J. Nutr. 126, 3063-8
【非特許文献21】Yamamoto N. et al.,(1994) Biosci. Biotech. Biochem. 58, 776-8
【非特許文献22】Ermisch A. et al.,(1983) J. Neurochem. 41, 1229
【非特許文献23】Umbach M. et al.,(1985) Regul. Pept. 12, 223-30
【非特許文献24】Singh M. et al.,(1989) Pediatr. Res. 26, 34-8
【非特許文献25】Svedberg J.et al.,(1985) Peptides 6, 825-30
【非特許文献26】Teschemacher H. et al.,(1986) J. Dairy Res. 53, 135-8
【非特許文献27】Yoshikawa M. et al.,(1986) Agric. Biol. Chem. 50, 2419-21
【非特許文献28】Chiba H. et al.,(1989) J. Dairy Sci. 72, 363
【非特許文献29】Beucher S. et al., (1994) J. Nutr. Biochem, 5, 578-84
【非特許文献30】Parker F. et al,,(1984) Eur. J. Biochem, 45, 677-82
【非特許文献31】Otani H. et al., (1992) Milchwiss. 47, 512-5
【非特許文献32】Otani H. et al., (1995) J. Dairy Res. 62, 339-48
【非特許文献33】Drouet et al., (1990) Nouv. Rev. Fr. Hermatol, 32, 59-62
【非特許文献34】Mullaly M. et al., (1997) Int. Dairy J. 7, 299-303
【非特許文献35】Meisel H. et al., (1986) FEBS Letters 196, 223-7
【非特許文献36】Garault et al., (2002) J. Biol. Chem. 277: 32-39
【非特許文献37】Danone World Newsletter No. 17 (September 1998)
【非特許文献38】Functional Food Science in Europe (1998) British Journal of Nutrition 80(1): S1-S193
【発明の開示】
【0021】
従って、生きた微生物と1種または2種以上の選択された生物活性食品成分との両方を含有する食品(例、ヨーグルト)であって、その食品の官能的品質を保持しながら、該選択した生物活性食品成分が該生きた微生物による代謝から保護されているような食品が求められている。
【0022】
本発明により、出願人は、既存のニーズを満たす解決策を提供する。
すなわち、本発明は、1種もしくは2種以上の生きた微生物と少なくとも1種の有益な選択した生物活性食品成分とを含有する食品であって、該生きた微生物と該選択した生物活性食品成分とが、該生きた微生物による該生物活性食品成分の代謝を低減させるように使用される食品に関する。
【0023】
かくして、出願人は、1種もしくは2種以上の選択した生物活性食品成分を生きた微生物と一緒に使用する時の使用条件が適切であるなら、この成分を該微生物による代謝から効果的に保護することができることを示した。
【0024】
この適切な使用条件としては、下記を含む多様な手段を利用することができる:
a)該生物活性成分を代謝する能力が低減している、生きた微生物を使用;
b)生きた微生物に意図的に「供される」デコイ食品成分を使用;および/または
c)特に該生物活性成分のカプセル封入により、生物活性成分の物理的保護を実施。
【0025】
この点に関し、これらの手段の1または2以上、さらには全部を同じ食品に有利に組み合わせることができることに留意すべきである。
かくして、本発明の1目的は、1種もしくは2種以上の生きた微生物と少なくとも1種の選択した生物活性食品成分とを含有し、該生物活性食品成分が、該生きた微生物による該生物活性食品成分の代謝が低減するように、下記手段により保護されている食品である:
・物理的手段により、好ましくは該選択した生物活性食品成分のカプセル封入;および/または
・該食品中に含有される少なくとも1種のデコイ食品成分により。
【0026】
前述の背景技術に関して簡単に触れたように、本発明に関して「代謝する」または「代謝」とは、1種または2種以上の生きた微生物による或る物質の変換または分解を意味し、その物質は栄養分の供給源として消費され、最終結果は培地からのその物質のほぼ完全な消失となる。
【0027】
本発明の意味において、ある成分の代謝が「低減する」とは、同じ成分が本発明の枠組みの範囲内で提供された手段の少なくとも一つにより保護されていない時のその成分の代謝より低くなっている場合である。
【0028】
有利には、そして理想的には、この低減した代謝はゼロに近づき、さらにはゼロに到達することであり、そうなるとその成分の代謝はほとんど、実質的に全く、さらには全く起こらなくなる。
【0029】
本発明にある特定の態様によると、その食品中の選択した生物活性食品成分の残留量が、その製造直後の食品中に存在する選択した生物活性食品成分の量に対して、その製造から3週間後で、約50〜100%である。
【0030】
好ましくは、この残留量は約80〜100%である。
本発明によると、「食品中の選択した生物活性食品成分の残留量」とは、選択した生物活性食品成分の最初の割合、すなわち、その食品の製造直後の割合に対する、その食品を適切な貯蔵条件下(例えば、生の食品については約4〜10℃)で3週間保持した時の該食品中に存在する選択した生物活性食品成分の割合を意味する。
【0031】
好ましくは、本発明に係る食品は少なくとも1種のデコイ食品成分を含有する。
本発明によると、「デコイ食品成分」とは、生きた微生物に対して栄養分の供給源(特に窒素の供給源)として作用することができる食品成分(好ましくはペプチドもしくはタンパク質またはそれらの類似物もしくは誘導体、またはそれらの混合物)であって、その生きた微生物を、選択した生物活性食品成分(もちろん、これが優先的に保存しようとする成分である)からそらすように、該微生物によって身代わりに代謝されることを優先的に意図したものである。すなわち、デコイ成分は微生物に対する栄養分の供給源であって、選択した生物活性成分をできるだけ防護するように意図的に犠牲となるものを意味する。この点に関し、デコイ食品成分は、選択した生物活性成分の輸送の競合的阻害剤として作用する。
【0032】
極めて有利な様式では、食品中のデコイ成分の存在によって、該食品の製造に対して任意の好適な生きた微生物を、その微生物が持つ生物活性成分の代謝能力を考慮することを必要とせずに使用することが可能となる。
【0033】
本発明のある特定の態様によると、本発明の食品は最終製品の全重量に対してデコイ食品成分を約0.001〜2重量%含有する。
好ましくは、食品は最終製品の全重量に対して約0.001〜0.2重量%のデコイ食品成分を含有する。
【0034】
本発明のある特定の態様によると、食品中のデコイ食品成分の代謝速度は、その製造から3週間後で、生物活性食品成分の代謝速度に少なくとも等しい。デコイ食品成分の代謝速度は、好ましくは、選択した生物活性食品成分の代謝速度より高い。
【0035】
本発明のある特定の態様によると、前記選択した生物活性食品成分および/または前記デコイ食品成分は下記の群から選ばれる:
・タンパク質、
・ペプチド、
・それらの類似物もしくは誘導体、ならびに
・それらの混合物。
【0036】
好ましくは、選択した生物活性食品成分は下記の群から選ばれる:生物活性αS1[91-100]ペプチド(欧州特許EP0714910を参照)、C6−αS1[194-199]ペプチド(米国特許US6514941を参照)、C7−β[177-183]ペプチド(米国特許US6514941を参照)、C12−αS1[23-34]ペプチド(米国特許US6514941を参照)、カゼイノホスホペプチド(CPP)、α−カゾモルフィン、α-カゼインエキソルフィン、カゾキニン(casokinin)、β−カゾモルフィン、カゼイノマクロペプチド(CMP)、これはグリコマクロペプチド(GMP)もしくはカゼイノグリコマクロペプチド(CGMP)とも呼ばれる、カゾキシン(casoxin)、カゾプラテリン(casoplatelins)、フラグメント50-53、β−ラクトルフィン(β-lactorphins)、ラクトフェロキシン(lactoferroxin)、Val-Pro-Proペプチド(欧州特許EP0583074を参照)、Lys-Val-Leu-Pro-Val-Pro-Glnペプチド(欧州公開EP0737690を参照)、Tyr-Lys-Val-Pro-Gln-Leuペプチド(欧州公開EP0737690を参照)、Tyr-Proペプチド(欧州公開EP1302207および欧州特許EP0821968を参照)、Ile-Pro-Proペプチド(Nakamura et al., 1995および特開平6−197786号を参照)、それらのフラグメント、類似物および誘導体、それらを含むタンパク質および/もしくはペプチド、ならびにそれらの混合物(概説については、Danone World Newsletter No. 17, 1998年9月を参照)。
【0037】
より一層好ましくは、選択した生物活性食品成分は下記の群から選ばれる:生物活性αS1[91-100]ペプチド、そのフラグメント、類似物および誘導体、それを含むタンパク質および/もしくはペプチド、ならびにそれらの混合物。
【0038】
「類似物」とは、初期化合物(この場合はタンパク質またはペプチド)の任意の改変物を意味し、この改変物は天然または合成物質であり、炭素、水素もしくは酸素原子のような1もしくは2以上の原子、または窒素、硫黄もしくはハロゲンのようなヘテロ原子が初期化合物の構造に付加またはこれから除去されることにより新たな分子化合物となったものである。
【0039】
本発明の意味において、「誘導体」とは、参考化合物(タンパク質またはペプチド)との類似性またはこれと共通する構造モチーフを有する任意の化合物である。やはりこの定義に該当するものは、単独でもしくは他の化合物と共に、1もしくは2以上の化学反応を経た参考化合物の合成において前駆体もしくは中間体となることができる化合物、ならびに単独でもしくは他の化合物と共に、1もしくは2以上の化学反応を経て該参考化合物から形成されうる化合物である。
【0040】
すなわち、上記「誘導体」の定義に包含される化合物として、タンパク質および/またはペプチドの加水分解物、特にトリプシンの作用で生じる加水分解物、加水分解物の画分、ならびに加水分解物および/もしくは加水分解物画分の混合物が挙げられる。
【0041】
さらに、上述した「類似物」ならびに「ペプチドもしくはタンパク質誘導体」は、例えば、グリコシル化(糖付加)もしくはリン酸化(ホスホリル化)されたペプチドもしくはタンパク質、または化学基の付加を受けたものも包含する。
【0042】
本発明の別の態様において、選択した生物活性食品成分および/またはデコイ食品成分は、糖または脂肪酸であることができる。
有利には、該デコイ食品成分は、生きた微生物のための窒素の栄養源である。
【0043】
有利には、このデコイ食品成分は下記から選ばれる:
・アラタール(Alatal)(R)821(乳清タンパク質加水分解物を含有、80 Avenue de la Grande Armee, 75017 Paris, フランス所在のフォンテラ(ウロプ)社[Fonterra (Europe) GmbH]から販売)、
・ビタラルモール(Vitalarmor)950 (アーマー・プロテインズ [Armor Proteins]、フランス)、
・それらのフラグメント、類似物もしくは誘導体、
・それらを含むタンパク質および/もしくはペプチド、ならびに
・それらの混合物。
【0044】
本発明のある特定の態様によると、前記生きた微生物は、前記選択した生物活性食品成分に対して無傷の又は低下した代謝能力を有する。
本発明によると「低下した代謝能力」とは、発酵中に代謝された(すなわち、培地から消失した)選択した生物活性食品成分の量が、その成分の初期(発酵前)の量の40%以下であるものである。これは下記の数式により表される:
r ≧ 0.6Q0 (1)
式中、Qrは生物活性成分の残留量(発酵後の培地中に存在する量)、Q0は生物活性成分の初期の量である。
【0045】
生物活性成分の残留量(Qr)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)をMS/MS検出器と組み合わせて用いる方法により測定することができる。実験手順の1例は、後で実施例中に示される。
【0046】
生きた微生物として使用するのは、生きた細菌、好ましくは生きた乳酸菌が好ましい。
より具体的には、生きた細菌は下記の群から選ばれる:
・ストレプトコッカス属(Streptococcus)の種、好ましくはストレプトコッカス・テルモフィラス(Streptococcus thermophilus)、
・ラクトバシラス属(Lactobacillus)の種、
・ラクトコッカス属(Lactococcus)の種、および
・ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)の種。
【0047】
好ましくは、生きた細菌は下記の群から選ばれる:
・2002年1月24日にCNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes [パスツール研究所、フランス、パリ])に寄託された番号I-2774のストレプトコッカス・テルモフィラス;
・1995年10月24日にCNCMに寄託された番号I-1630のストレプトコッカス・テルモフィラス;
・2004年5月10日にCNCMに寄託された番号I-3211のストレプトコッカス・テルモフィラス;
・2004年9月16日にCNCMに寄託された番号I-3301のストレプトコッカス・テルモフィラス;および
・2004年9月16日にCNCMに寄託された番号I-3302のストレプトコッカス・テルモフィラス。
【0048】
より好ましくは、この生きた細菌は、2004年5月10日にCNCMに寄託された番号I-3211のストレプトコッカス・テルモフィラスである。
有利には、本発明の食品は、生きた細菌のストレプトコッカス・テルモフィラスおよびラクトバシラス属の種を少なくとも含有する。
【0049】
好ましくは、この生きたストレプトコッカス・テルモフィラス細菌は、下記の群から選ばれる:2002年1月24日にCNCMに寄託された番号I-2774のストレプトコッカス・テルモフィラス;1995年10月24日にCNCMに寄託された番号I-1630のストレプトコッカス・テルモフィラス;2004年5月10日にCNCMに寄託された番号I-3211のストレプトコッカス・テルモフィラス;2004年9月16日にCNCMに寄託された番号I-3301のストレプトコッカス・テルモフィラス;および2004年9月16日にCNCMに寄託された番号I-3302のストレプトコッカス・テルモフィラス。
【0050】
本発明に係る食品中の生きた微生物の含有量は変動してもよく、その分野の一般的理解に照らして当業者により選択されよう。実際には、好ましくは、例えば、食品1グラムあたりの細菌数が約107〜109となるような標準的な総含有量が追求されよう。
【0051】
好ましくは、本発明に係る食品は発酵食品である。
より好ましくは、発酵食品は乳製品または植物性製品である。
本発明によれば、「乳製品」とは、乳(ミルク)に加えて、クリーム、アイスクリーム、バター、チーズおよびヨーグルトといった乳から誘導された製品;乳清(ホエー)およびカゼインのような二次製品;ならびに主成分として乳または乳の成分を含む任意の加工食品を意味する。
【0052】
「植物性製品」とは、とりわけ、例えば、豆乳、オート麦乳および米乳を包含する果汁および野菜汁といった、植物ベースから得られた製品を意味する。
さらに、上記の「乳製品」および「植物性製品」の定義のそれぞれは、例えば、乳と果汁との混合物といった、乳製品と植物性製品の混合物を含有する任意の製品も包含する。
【0053】
本発明はまた、上述したような食品の製造方法も課題とする。この製造方法では、1種または2種以上のデコイ食品成分を、前記食品を構成するための混合物に、好ましくはその発酵後に添加する。
【0054】
1態様によると、1種もしくは2種以上の生きた微生物と1種もしくは2種以上の選択した生物活性食品成分ならびに/または1種もしくは2種以上のデコイ食品成分を、前記食品を構成するための混合物に逐次的に順に添加する。
【0055】
別の態様では、前記選択した生物活性食品成分および/または前記生きた微生物および/または前記デコイ食品成分を該混合物に同時に添加する。
微生物の培養条件はその微生物に依存し、当業者には知られている。1例として、ストレプトコッカス・テルモフィラスの場合の最適増殖温度は一般にほぼ36℃〜42℃の範囲内であり、ラクトバシラス・デルブリュッキイ・スピーシーズ・ブルガリカス( L. delbrueckii spp. bulgaricus)(ヨーグルト中に普通に存在)の場合のこの温度範囲はほぼ42℃〜46℃であると特定することができる。
【0056】
通常、発酵は所望pHに達した時に急冷により停止され、こうして微生物の代謝活性を低下させる。
本発明のある特定の態様によると、該選択した生物活性食品成分および/または該デコイ食品成分を、該食品を構成するための混合物中で直接調製する。これを、生物活性成分および/またはデコイ成分の「その場合成」と称する。
【0057】
その場合成の場合、該生きた微生物を、生物活性成分および/またはデコイ成分のその場合成前、合成中、または合成後に、該食品を構成するための混合物に添加することが、同じ程度に考えられる。
【0058】
本発明はまた、上述したような食品の機能性食品としての使用を課題とする。
「機能性食品」とは、その栄養効果とは別に、生体の1または2以上の目標機能に有利に影響する食品を意味する。従って、機能性食品は、その食品の通常量を摂取した消費者に健康改善および/または安寧および/または疾病発症の危険性の低減を生ずることができる。機能性食品の活性(作用)の例として、抗がん活性、免疫促進(増強)活性、骨健康増進活性、抗ストレス活性、オピエート(阿片様の抑制)活性、抗高血圧活性、カルシウムの生物学的利用能向上活性、および抗菌活性を挙げることができる(Functional Food Science in Europe, 1998)。
【0059】
かかる機能性食品は、人間用および/または動物用のものとすることができる。
本発明はまた、1種もしくは2種以上の生きた微生物と少なくとも1種の選択した生物活性食品成分とを含有する食品における、該選択した生物活性食品成分を該生きた微生物による代謝から保護するための少なくとも1種のデコイ食品成分の使用を課題とする。
【0060】
本発明を添付図面により説明するが、それらは制限を意図したものではない。
本発明の他の特徴および利点は、以下の実施例を読むと明らかとなろう。実施例は例示のみを目的として示すものである。
【実施例】
【0061】
実施例1:本発明を適用しない選択した生物活性成分の使用
1.1)ラクティウム(R)加水分解物中に含有される生物活性αS1[91-100]ペプチドによる例
しばしば粉末形態で供給されるペプチドまたはタンパク質成分の使用は、この成分を、調合乳(milk "mix")を製造(ミルクを粉末化)する時に、衛生用熱処理(すなわち、95℃、8分間)の前、従って発酵前に添加すると、より簡単となる。この場合、活性ペプチドが代謝される危険性は非常に高い。これは、例えば、生物活性ペプチド(αS1−カゼインのフラグメント91-100)を含有するラクティウム(R)(アングルディア社、フランス)のような機能性成分を使用する場合にそうである。
【0062】
手順
脱脂粉乳を120g/Lに水和し、1.5g/Lのラクティウム(R)(約30mg/Lの生物活性αS1[91-100]ペプチドに対応)を添加し、次いで95℃で8分間の低温殺菌処理(パスチャリゼーション)を行うことにより培地を調製した。
【0063】
乳酸発酵素を0.02%の割合で添加し、使用発酵素に最適の温度(37〜42℃)でpHが4.70になるまで発酵を行った。
残留ペプチドの分析、特に生物活性αS1[91-100]ペプチドの分析は、MS/MS検出器と連結させた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、次のように実施した。
【0064】
・水、メタノールおよびトリフルオロ酢酸(50/50/0.1%)の混合液中に発酵させた培地を約1:6の比率で希釈することによりサンプルを調製した。遠心分離後の上清が発酵培地のペプチド含有量の表示サンプルとなった。
【0065】
・このサンプルを、ペプチド分析に適したウォーターズ・シメトリー(R) (Waters Symetry) カラム(5μm、2.1×150mm、WAT056975、Waters France社、5 rue Jacques Monod, 78280 Guyancourt)をとりつけたアギレント (Agilent) 1100 HPLCシステム (Agilent Technologies France社、1 rue Galvani, 91745 Massy Cedex, フランス)に、40℃の温度および0.25mL/分の流量で注入した。ペプチドの溶離は、常法により、溶媒A(水およびギ酸0.106%)中の溶媒B(アセトニトリルおよびギ酸0.100%)の増大する濃度勾配で、所望の解像度に応じて40分間から2時間の時間にわたって行った。
【0066】
・検出は、ペプチド含有量の全体分析(MS−MSモード)用、またはその固有フラグメントからあるペプチドの正確かつ特異的な定量用にセットされた、例えば、エスクァイア(Esquire)3000+ (Bruker Daltonique社、rue de l'Industrie, 67166 Wissembourg Cedex)のようなイオントラップ型の、MS/MS型の特異検出器を用いて行った。例えば、αS1[91-100]ペプチドを、その質量から単離し(質量634.5Daの二重荷電イオン)、フラグメンテーション後のその固有娘イオン(m/z=991.5Da、771.5Daおよび658.3Daのイオン)の強度からそれを定量した。より一層正確なやり方では、同じ二重に重水素化された合成ペプチド(993.5Daの固有フラグメント)からなる内部標準により、マトリックスに関係する可能な干渉を考慮し、それを排除することが可能であった。
【0067】
結果を図1に示す。
この段階、すなわち、菌株I-2783(2002年1月24日にCNCMに寄託)、I-2774(2002年1月24日にCNCMに寄託)、I-2835(2002年4月4日にCNCMに寄託)およびI-1968(1998年1月14日にCNCMに寄託)の混合物からなる発酵素、またはYC−380(Chr. Hansen SA社、Le Moulin d'Aulnay, BP64, 91292 ARPAJON Cedex フランス)のような発酵素による発酵の前の段階でペプチドを使用すると、生物活性αS1[91-100]ペプチドの95%以上が発酵後には消費されたことが実証された。
【0068】
これらの知見は、上記の例に従った生物活性ペプチドの配合は、消費者が望む効果を認めることができるよう経時的に十分に安定した量の生物活性ペプチドおよび/またはタンパク質を添加した食品、特に乳製品、を得るのには、そのままでは適用できないことを示している。
【0069】
1.2)別の選択した生物活性ペプチドによる例
結果は図2および3に示す。
ラクティウム(R)は多くの他のペプチドを含有しており、その一部は潜在的な生物学的活性を示す(DMV International社からC12(R)としても販売されているαS1−カゼインのフラグメント23-24のように)。ラクティウム(R)の添加により供給されたペプチドの実質的に全ての種類が発酵中にかなり消費されてしまうことは留意点として興味深い。
【0070】
それらの出所(多様なαS1−、αS2−、κ−およびβ−カゼインから生ずる)およびそれらのサイズ(2〜3残基から12残基およびそれ以上まで)に関係なく、これらのペプチドはすべて発酵プロセス中に完全に消費されてしまう。
【0071】
1.3)生物活性αS1[91-100]ペプチド(ラクティウム(R))の他の発酵素との併用
この現象が上記1.1)節で使用した2種類の発酵素に特異的ではないことを証明するために、主要な工業用発酵素ならびに上記発酵素の組成中に使用されている各種の純菌株を同じ試験法を用いて検査した:粉乳から戻した還元乳にラクティウム(R)を1.5g/Lの量で添加したものを標準的条件下で発酵させた(37〜42℃の該発酵素にとっての至適温度、発酵はpH4.7で停止、2回反復)。次いで、生物活性αS1[91-100]ペプチドの濃度の分析を発酵の前後のサンプルについて行った。
【0072】
純菌株について得られた結果を次の表3に示す。
【0073】
【表3】

【0074】
上記表3において、使用した純菌株はそれらのCNCM(パスツール研究所、フランス、パリ)での寄託番号と寄託日とで表示されており、この表は、1.5g/Lのラクティウム(R)を含有する調合乳の発酵中の各種発酵素および工業用菌株による生物活性αS1[91-100]ペプチドの消費を示している。
【0075】
表3は、試験した発酵素および菌株の全てが、標準的な調合乳の発酵中に生物活性αS1[91-100]ペプチドの94%から100%を代謝してしまうことを示している。従って、この成分を使用しても、消費者にある効果を生じさせるのに経時的に十分に安定した量の生物活性ペプチドおよび/またはタンパク質を含有する食品、特に乳製品を製造することは慣用条件下では不可能である。
【0076】
また、この現象がラクティウム(R)に特異的ではないことを証明するために、発酵素と生物活性ペプチドを含有する他の成分とのいくつかの組み合わせについて、同じ試験(粉乳からの還元乳と1.5g/Lの量の被試験成分とを標準的条件下で発酵、発酵はpH4.7で停止、2回反復)を実施することにより検討した。試験した各種組み合わせを次の表4に示す。
【0077】
【表4】

【0078】
DMV International社製の成分C12(R)およびCPP(R)は、それぞれ高血圧のコントロールおよびミネラル分の同化を目的とする生物活性ペプチドを含有する乳タンパク質加水分解物である。
【0079】
全ての実験を通して、試験した全ての発酵素が、ペプチドの性質やサイズに関係なく、ペプチドを代謝する顕著な能力を有することは明らかである。
1.4)発酵後の添加
上で検討した手順に対する論理的な別法は、発酵後に機能性成分を、例えば、発酵塊に風味づけするのに用いるシロップと共に導入することである(「遅延差別化」手法)。このプロトコルに従って同じ量のラクティウム(R)を使用すると、図4に示した結果になった。
【0080】
図4に示したように、発酵後に低温(4℃)で添加した場合でも、活性ペプチド(最終製品1kgあたりラクティウム(R)1.5gに等しい量で供給)は貯蔵中にすぐに分解され、賞味期限(UBD)までに初期量の30〜40%しか残らない。
【0081】
従って、最終製品中の生きた乳酸菌の集団が最終製品の貯蔵中に生物活性ペプチドを代謝し続けるので、わずか10日後には(その賞味期限が28日である生製品について)、αS1[91-100]ペプチドの35〜50%が消失しており、これは消費者が求める効果を得るには許容できない事実である。
【0082】
1.5)選択した生物活性成分を含有する発酵乳製品の加熱処理
この場合、αS1[91-100]ペプチドの安定性を確保することができる(図5)が、最終製品の総合品質を害する。この解決策は実際、次のような多くの難点を生ずる:
・発酵乳塊の高温熱処理は熱処理前に添加される安定剤(ペクチン、デンプン、カラジーナン等)の使用を伴い、従ってプロセスを複雑にすると共に、調合コストを著しく増大させる;
・工業用生産ラインがより複雑となり、より大きな比投資額を必要とする;
・製品は、もはや生きた発酵素を含有する製品に関係する品質表示から得られる利益を享受できず(ヨーグルト)、実際、乳酸発酵素の摂取に伴う利益を失うであろう;そして
・官能性(感覚刺激)衝撃(一般にマイナス方向)が顕著である。
【0083】
実施例2:本発明を適用した選択した生物活性成分の使用
計画は、保護しようとするペプチドに比べて優先される1種または2種以上のペプチド(「デコイ」ペプチド)を十分な量で添加することにより乳酸菌のタンパク質分解およびペプチド輸送系を飽和させることからなる。この保護効果は、発酵中と最終製品の賞味期限までの貯蔵中の両方で発揮される。図6は上述した試験のモデルに基づいた例を示す。
【0084】
図6に示すように、発酵後にラクティウム(R)の形態で供給されたαS1[91-100]ペプチドは、Vitalarmor (ビタラルモール) 950 カゼイン加水分解物 (Armor Proteins社製、フランス)の存在下で、対照に比べて著しく保護される。
【0085】
十分に有効な保護を達成するのに使用するデコイペプチドの性質および量の選択が重要である。すなわち、下の表5にまとめたように、多くの市販の加水分解物(主に牛乳タンパク質の発酵素加水分解物)を試験および評価した。
【0086】
表5は、各種市販加水分解物(1.5g/Lの同一濃度)の存在下における菌株I-2783、I-2774、I-2835およびI-1968を含有する発酵素による発酵中のαS1[91-100]ペプチド(ラクティウム(R)1.5g/Lに等価の量で供給)の消費を示す。
【0087】
【表5】

【0088】
・MPH 955:カゼインタンパク質加水分解物、NZMP GmbH社 (Siemensstrasse 6-14, D-25462, Rellingen, ドイツ);
・Alaco 70-14:乳清タンパク質加水分解物、NZMP GmbH社 (Siemensstrasse 6-14, D-25462, Rellingen, ドイツ);
・WPH 917:乳清タンパク質加水分解物、NZMP GmbH社 (Siemensstrasse 6-14, D-25462, Rellingen, ドイツ);
・WPH 955:乳清タンパク質加水分解物、NZMP GmbH社 (Siemensstrasse 6-14, D-25462, Rellingen, ドイツ);
・Alra 20-21:乳清タンパク質加水分解物、Alra Foods Amba Ingredients社 (2 rue Victor Griffuelhes, 92772 Boulogne Cedex フランス);
・WPH 926:乳清タンパク質加水分解物、NZMP GmbH社 (Siemensstrasse 6-14, D-25462, Rellingen, ドイツ);
・DSE 6441:乳清タンパク質加水分解物、NZMP GmbH社 (Siemensstrasse 6-14, D-25462, Rellingen, ドイツ);
・WPH 948:乳清タンパク質加水分解物、NZMP GmbH社 (Siemensstrasse 6-14, D-25462, Rellingen, ドイツ);
・Biozate 1:乳清タンパク質加水分解物、Davisco Foods International社, 11000 West 78th Street, Suite 210, Eden Prairie, Minnesota 米国 55344);
・MPH 910:カゼインタンパク質加水分解物、NZMP GmbH社 (Siemensstrasse 6-14, D-25462, Rellingen, ドイツ);
・DSE 6060:乳清タンパク質加水分解物、NZMP GmbH社 (Siemensstrasse 6-14, D-25462, Rellingen, ドイツ);
・Alatal 821:乳清タンパク質加水分解物、NZMP GmbH社 (Siemensstrasse 6-14, D-25462, Rellingen, ドイツ);
・Vitalramor 950:カゼイン加水分解物、Armor Proteins社 (35460 Saint Brice en Cogles, フランス);
DMV C12:乳タンパク質加水分解物、DMV International社 (P.O. Box 105, Redhill Surrey RH1 3YH, 英国)。
【0089】
表5によると、一部の加水分解物はごくわずか又は全く効果がない(それらの存在下でもわずか数%のαS1[91-100]ペプチドが発酵後に残存)。他方、別の加水分解物は、αS1[91-100]ペプチドの50%以上もが発酵後に見出され、良好な保護効果を示す。
【0090】
デコイペプチドの濃度もまた重要な因子であり、図7に示すように、その濃度が高いほど、そのペプチドの保護効果が強力となる。
図8に示すように、全体として、保護効果がそのペプチドに対して多少とも効果があるか否かを決めるのは、該ペプチド:デコイペプチドの比である。
【0091】
このようにして得られる保護はαS1[91-100]ペプチドに特異的なものではなく、選択対象となるペプチド加水分解物の大多数に適用される。
すなわち、適切に選択されたデコイ成分を十分な量で供給することにより、広範囲のサイズの任意の種類のペプチドを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】乳酸発酵中のラクティウム(R)成分に含有される生物活性αS1[91-100]ペプチドの消失を示すLC−MSクロマトグラム。MS/MS検出器は、m/z=634.5Da(二重荷電αS1[91-100]ペプチドの質量)のイオンシグナルだけを検出するように調整。これは、フラグメンテーション後に、m/z=991.5Da、771.5Daおよび658.3Daの娘イオン(αS1[91-100]ペプチドに固有のフラグメント)を生ずる。
【図2】菌株I-2783(2002年1月24日にCNCMに寄託)、I-2774(2002年1月24日にCNCMに寄託)、I-2835(2002年4月4日にCNCMに寄託)およびI-1968(1998年1月14日にCNCMに寄託)の混合物からなる発酵素による調合乳の発酵前および発酵後のLC−MS/MSによるラクティウム(R)の主成分ペプチドの同定および定量。発酵後、該ペプチドは痕跡量で見出されるだけであり、基線と見分けがつかない。疑問符記号(?)は、配列の同定が可能ではなかったか不確実であることを意味し、その場合はペプチドの質量だけを報告する。
【図3】ハンセン(Hansen)YC−380乳酸発酵素でpH4.7まで発酵する前(1)と発酵後(2)の、DMV C12 (R)加水分解物1.5g/Lを含有する調合乳のペプチドプロファイル(LC−MS/MSクロマトグラム)の比較。生物活性のC12ペプチド(αS1[23-34]フラグメント)を含む、加水分解物ペプチドの実質的に全てが該発酵素菌株による代謝後に消失した。
【図4】菌株I-2783、I-2774、I-2835およびI-1968を含有する発酵素により発酵させた発酵生成物95%と、αS1[91-100]ペプチドを含有する香味づけ砂糖シロップ5%とからなる最終製品における10℃での貯蔵中の生物活性αS1[91-100]ペプチドの残留含有量の変化を示す曲線。本実験は4つの独立した試験:E1、E2、E3およびE4から構成された。
【図5】生物活性αS1[91-100]ペプチドを発酵後の発酵生成物に添加し、それを次いで75℃で1分間熱処理した後、賞味期限(UBD)まで10℃で貯蔵した時の該ペプチドの残留含有量の変化を示す曲線。
【図6】I-2774菌株とギ酸エステルとを含有する発酵素により発酵させた発酵生成物95%と、αS1[91-100]ペプチドを含有する香味づけ砂糖シロップ5%とからなる最終製品(該ペプチドは最終製品1.5g/kgの量のラクティウム(R)の形態で供給)における10℃で賞味期限まで貯蔵中の生物活性αS1[91-100]ペプチドの残留含有量の変化を示す曲線。
【図7】増大する量(0.5、1.0および1.5g/L)の「デコイ」加水分解物(アーマープロテインズ社のビタラルモール950;フォンテラ社のMPH955)の存在下での、未発酵の対照(菌株I-2783、I-2774、I-2835およびI-1968を含有する発酵素)に対する発酵後の残留αS1[91-100]ペプチドの割合を示すグラフ。
【図8】乳培地中で菌株I-2783、I-2774、I-2835およびI-1968を含有する発酵素により発酵させた後のαS1[91-100]ペプチドの残留量の定量を、この有益成分の初期量(ラクティウム <Lactium>(R)、1X=1.5g/L)およびデコイ成分の初期量(ビタラルモール <Vitalarmor> 950加水分解物、1X=1.5g/L)との関係として示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種もしくは2種以上の生きた微生物と少なくとも1種の選択した生物活性食品成分とを含有する食品であって、該生きた微生物による該選択した生物活性食品成分の代謝を低減させるように、該食品中に含有されている少なくとも1種のデコイ食品成分によって該選択した生物活性食品成分が保護されている食品。
【請求項2】
前記食品中の選択した生物活性食品成分の残留量が、その製造直後の食品中に存在する選択した生物活性食品成分の量に対して、その製造から3週間後で、約50〜100%である、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
前記残留量が、その製造直後の食品中に存在する選択した生物活性食品成分の量に対して約80〜100%である、請求項2に記載の食品。
【請求項4】
前記食品が最終製品の全重量に対して約0.001〜2重量%のデコイ食品成分を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の食品。
【請求項5】
前記食品が最終製品の全重量に対して約0.001〜0.2重量%のデコイ食品成分を含有する、請求項4に記載の食品。
【請求項6】
前記食品中のデコイ食品成分の代謝速度が、その製造から3週間後で、選択した生物活性食品成分の代謝速度に少なくとも等しい、請求項1〜5のいずれかに記載の食品。
【請求項7】
前記選択した生物活性食品成分および/または前記デコイ食品成分が下記から選ばれる、請求項1〜6のいずれかに記載の食品:
・タンパク質、
・ペプチド、
・それらの類似物もしくは誘導体、ならびに
・それらの混合物。
【請求項8】
前記選択した生物活性食品成分が下記から選ばれる、請求項7に記載の食品:αS1[91-100]ペプチド、C6−αS1[194-199]ペプチド、C7−β[177-183]ペプチド、C12−αS1[23−34]ペプチド、カゼインホスホペプチド、α−カゾモルフィン、α-カゼインエキソルフィン、カゾキニン、β−カゾモルフィン、カゼインマクロペプチドおよびグリコマクロペプチド、カゾキシン、カゾプラテリン、フラグメント50-53、β−ラクトルフィン、ラクトフェロキシン、Val-Pro-Proペプチド、Lys-Val-Leu-Pro-Val-Pro-Glnペプチド、Tyr-Lys-Val-Pro-Gln-Leuペプチド、Tyr-Proペプチド、Ile-Pro-Proペプチド、それらのフラグメント、類似物および誘導体、それらを含むタンパク質および/もしくはペプチド、ならびにそれらの混合物。
【請求項9】
前記選択した生物活性食品成分が下記から選ばれる、請求項8に記載の食品:αS1[91-100]ペプチド、そのフラグメント、類似物および誘導体、それを含むタンパク質および/もしくはペプチド、ならびにそれらの混合物。
【請求項10】
前記デコイ食品成分が前記生きた微生物に対する窒素の栄養源である、請求項7に記載の食品。
【請求項11】
前記デコイ食品成分が下記から選ばれる、請求項10に記載の食品:
・アラタール(Alatal)(R)821
・ビタラルモール(Vitalarmor)950
・それらのフラグメント、類似物もしくは誘導体、
・それらを含むタンパク質および/もしくはペプチド、ならびに
・それらの混合物。
【請求項12】
前記生きた微生物が前記選択した生物活性食品成分の無傷または低下した代謝能力を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の食品。
【請求項13】
前記生きた微生物が生きた細菌、好ましくは生きた乳酸菌である、請求項1〜12のいずれかに記載の食品。
【請求項14】
前記生きた細菌が下記から選ばれる、請求項13に記載の食品:
・ストレプトコッカス属の種、好ましくはストレプトコッカス・テルモフィラス(Streptococcus thermophilus)、
・ラクトバシラス属の種、
・ラクトコッカス属の種、および
・ビフィドバクテリウム属の種。
【請求項15】
前記食品が生きた細菌のストレプトコッカス・テルモフィラスおよびラクトバシラス属の種を少なくとも含有する、請求項14に記載の食品。
【請求項16】
前記生きたストレプトコッカス・テルモフィラスが下記から選ばれる、請求項14または15に記載の食品:
・2002年1月24日にCNCMに寄託された番号I-2774のストレプトコッカス・テルモフィラス;
・1995年10月24日にCNCMに寄託された番号I-1630のストレプトコッカス・テルモフィラス;
・2004年5月10日にCNCMに寄託された番号I-3211のストレプトコッカス・テルモフィラス;
・2004年9月16日にCNCMに寄託された番号I-3301のストレプトコッカス・テルモフィラス;および
・2004年9月16日にCNCMに寄託された番号I-3302のストレプトコッカス・テルモフィラス。
【請求項17】
前記生きた微生物が2004年5月10日にCNCMに寄託された番号I-3211のストレプトコッカス・テルモフィラスである、請求項16に記載の食品。
【請求項18】
前記食品が発酵食品である、請求項1〜17のいずれかに記載の食品。
【請求項19】
前記食品が乳製品または植物性製品である、請求項18に記載の食品。
【請求項20】
前記デコイ食品成分を、その発酵後の前記食品を構成するための混合物に添加する、請求項1〜19のいずれかに記載の食品の製造方法。
【請求項21】
前記生きた微生物および/または前記選択した生物活性食品成分および/または前記デコイ食品成分を、前記食品を構成するための混合物に順に添加する、請求項1〜19のいずれかに記載の食品の製造方法。
【請求項22】
前記生きた微生物および/または前記選択した生物活性食品成分および/または前記デコイ食品成分を、前記食品を構成するための混合物に同時に添加する、請求項1〜19のいずれかに記載の食品の製造方法。
【請求項23】
前記選択した生物活性食品成分および/または前記デコイ食品成分を、前記食品を構成するための混合物中で直接調製する、請求項1〜19のいずれかに記載の食品の製造方法。
【請求項24】
前記生きた微生物を、前記選択した生物活性食品成分および/または前記デコイ食品成分のその場合成の前に、前記食品を構成するための混合物に添加する、請求項23に記載の食品の製造方法。
【請求項25】
前記生きた微生物を、前記選択した生物活性食品成分および/または前記デコイ食品成分のその場合成の間に、前記食品を構成するための混合物に添加する、請求項23に記載の食品の製造方法。
【請求項26】
前記生きた微生物を、前記選択した生物活性食品成分および/または前記デコイ食品成分のその場合成の後に、前記食品を構成するための混合物に添加する、請求項23に記載の食品の製造方法。
【請求項27】
請求項1〜19のいずれかに記載の食品の機能性食品としての使用。
【請求項28】
1種もしくは2種以上の生きた微生物と少なくとも1種の選択した生物活性食品成分とを含有する食品における、該選択した生物活性食品成分を該生きた微生物による代謝から保護するための少なくとも1種のデコイ食品成分の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−516619(P2008−516619A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537259(P2007−537259)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055297
【国際公開番号】WO2006/042836
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(506375923)
【氏名又は名称原語表記】COMPAGNIE GERVAIS DANONE
【Fターム(参考)】