説明

デジタルの指紋画像の捕捉方法

本発明はデジタルの指紋認識に関し、より具体的にはバーの長手方向に基本的に直角に、センサーの前面を指が相対的に通過するときに、デジタルの指紋の隆線及び溝線を検出可能な細長い前記バーのセンサーによる認識に関する。本発明による方法は以下の動作を含む。
連続した部分的に重なる画像がプロセッサの制御の下に捕捉され、
第二の画像に対する第一の画像の変位が該二つの画像の間のより良い相関を提供するために探索され、そして前記変位の成分が細長いセンサーに対して直角方向に画像の画素数に関して決定され、
変位成分が少なくとも一つのしきい値と比較され、
該比較の結果に従って次の画像の捕捉前にプロセッサにより課せられた遅れTが維持され、あるいは時間増分dTだけ増加又は減少する。
その結果、相関の探索は指の変位の未知の速度に従って適応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタルの指紋認識に関し、より具体的にはバーの長手方向に基本的に直角な、センサーに対する指の相対運動の間に、デジタルの指紋の隆線及び溝線を検出可能な細長いバーのセンサーに基づく認識に関する。
【背景技術】
【0002】
集められる指の画像よりも小さく、従ってこの画像を相対運動以外によっては集めることが出来ないそのような細長い形状のセンサーはすでに記述されている。これらのセンサーは主として光学式、容量性、熱方式、又は圧電性の検出により動作する。
【0003】
これらのセンサーは指が静止したままの動きのないセンサーに比べて、それらが使用するシリコンの面積の小ささによる低減された価格という利点を有する。しかしながら、この画像は一列ごと又は一度に数列しか捕捉しないため、それらは指の全体画像の再構成を要する。
【0004】
画像がこのように徐々に捕捉される場合、原則としてセンサーに対する指の相対運動速度の基準を持つか、又は固定した移動速度を課す必要がある。これは従って追加の特殊な手段を要する。
【0005】
仏国特許2 749 955号明細書において、指紋の部分的画像を連続的に捕捉するための幾つかの列を備えた細長いセンサーによる検出原理が記述されており、二つの連続した画像の間の相関を探索することによって、センサーに対する指の移動速度を追加手段により確認する必要なしに指の移動とともに変移しそして徐々に指紋の全体画像を再構成する、連続した画像を重ね合わせることができるように、これらの画像は互いに重なっている。
【0006】
このタイプの再構成は良く機能するが、動作が引き続き可能な移動の速度範囲を増すための設備を要する。それはまた良好な精度を保ちながら画像を再構成するために、実行されるべき計算の数を最小限にする設備も要する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、この再構成のために要する計算を過度に増すことなく画像を再構成する可能性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の動作を含む、指を細長い画像センサーの前面で動かすことによりデジタルの指紋画像を捕捉する方法が提案されている。
−プロセッサの制御の下に、連続した互いに重なる部分的画像の捕捉と、
−二つの画像間の最良の相関を与えるような、第二の画像に対する第一の画像の変位の探索及び、細長いセンサーと直角方向への画像の画素数としての、この変位要素の決定と、
−この変位要素の、少なくとも一つのしきい値との比較と、
−該比較の結果に応じ、次の画像の捕捉前にプロセッサにより課せられた遅れTの維持あるいは、時間増分dTによる増加又は減少。
【0009】
部分的画像の捕捉のテンポは従って予期される移動の方向に、センサーに対する指の変位速度に応じて変化する。
【0010】
画像はその後、移動の方向及び移動と直角方向に変位に応じて再構成され、二つの連続した重なり合う画像の間の考慮される変位は、画像間の最良の相関を与えるものである。相関値は二つの画像の間のより大きい、又はより小さい類似性を表わす数学的量であり、また二つの画像(変移した第一の画像及び、第二の画像)が同一のとき、相関量として最大又は(好ましくは)最小を示す機能を選択することが可能である。各々の新たな画像において、捕捉の遅れは考えられるしきい値の近辺でほぼ一定のままである、最良の相関を与える変位を作り出す傾向のある方向に再調整される。
【0011】
好ましくは高いしきい値と低いしきい値があり、高いしきい値のオーバーシュートは遅れTをdTだけ減少させ、低いしきい値のアンダーシュートは遅れTをdTだけ増加させる。該しきい値は少数の画素であることが好ましい。高いしきい値と低いしきい値の間の差は好ましくは1画素である。しきい値はそれぞれ2及び3画素であることが好ましい。これは二つの連続した捕捉の間に配置された遅れは、二つの連続した捕捉の間の画像変位が2〜3画素近辺で恒久的に調整されることを示唆する。
【0012】
計算時間に関する許容可能な妥協として、相関はセンサーにより提供された画像の限られた部分について実施される。例えば、相関は部分的画像の列の一つ以上の部分から成る画像部分について行なわれる。探索は、第一の画像のものと同じ構成を有するが、第一の画像の捕捉と第二の画像の捕捉の間に生じた相対変位によって画像内の異なる位置にある部分について、第二の画像の列において実施される。センサーは列の一部分に対する相関のこの探索のために、該部分の画像が、幾つかの画素の変位後に全体的に移動方向に見出され得る小さい長方形領域を備えることが好ましい。
【0013】
特定の実施形態において、相関がセンサーの中央部分のみで行われ、細長いセンサーが実際に中央に小さい長方形の領域(相関及び再構成の目的で変位を検出可能な幾つかの列)と、該中央領域の外側に一本の列(又は厳密には中央の領域よりも少ない列数の幾つかの列)のみを備えた画像検出領域を有することが想定できる。この形状の検出領域は長方形のシリコンチップ上に、画像の相関及び再構成、又は指紋認識のために用いられる信号処理回路を設置する更なる空間を残す。
【0014】
最適な相関を計算する作業を単純化するため、相関のための探索はセンサーに対する指の予期される移動方向に相当する一方向に変移した画像のみについて実施され、反対方向には実施されない。例えば、相関探索の領域は第二の画像の連続的な変位を幾つかの方向及び幾つかの可能な振幅で、しかし予期した移動の理論上の方向との角度が45°未満、又は更に小さい値の方向のみに沿って実行することにより制限される。
【0015】
再構成を目的とした相関計算の間、画素間の整数である変位に対して最適な相関値を与える相関計算を実施することが可能である。しかしながら、変位が遅い場合には近接した距離の画素との相関は十分正確ではあり得ない。この場合、その位置の近傍(近接した画素)に対して得られた最良の相関が観察され、そして補間が、見出された該最良の相関の近傍における二つ(又はそれ以上)の相関に基づいて、それ以上に良い理論的相関に相当すべき中間の変位値を計算するために実施される。この変位の値はそのとき画素間の非整数値であり、この非整数値が再構成に用いられる。これは移動の方向及びその直角方向の双方について行なわれることが好ましい。
【0016】
本発明のその他の特徴及び利点は添付図を参照しながら、以下に続き又提供されている詳細な記述を読むことによって明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本指紋捕捉システムはその前面に指が置かれる細長いバー(一列以上の画素)を含む画像センサーを備える。このバーは指のセンサーに対する相対的な動きのみが全体の指紋画像の再構成を可能にするように、指の画像よりも小さい。
【0018】
図1はセンサーにより連続的に検出された部分的画像に基づく全体画像の再構成に役立つ、このセンサー10及び電子処理回路12を用いた捕捉の原理を示す。
【0019】
センサーは必ずしも従来の感覚での、全ての列が同じ画素数を有するバー又はマトリックスである必要はない。それは基本的に指の全体の画像及び、更に具体的には連続する部分的画像の相関に役立つ中心のマトリックスを形成する少数の行と少数の列のアレイの検出に実際に役立つ一つ以上のN画素の主要な列の問題である。
【0020】
センサー10の活動領域の形状は図2に表わされるように、小さな長方形の中央領域20及び矢印30で表わされる動きの方向に直角に横たわっている二つの細長い翼22と24である。該翼はそれぞれ中央領域の片側に延在している。それらは一直線上にあり中央領域よりも狭い。一直線上の両翼と、それらを合わせることにより延長する中央領域部分は、その長さが検出しようとする画像の幅に相当する画像検出バーを構成する。例えば、列の長さは指の幅(例として約1〜2cm)に相当する。画像検出バーは単列だけの画素で構成されることが好ましいが、再構成を最適化しようとする場合にはバーが数列の画素を含む用意がなされてもよい。それは全体の画像の再構成に役立つ部分的な画像を備える検出バーである。
【0021】
中央領域は相関計算を行なうのに役立つものであり、従ってそれは部分的に重なる画像を記録するものである。(中央領域が幾らかの部分的に重なる画像を備える場合は、検出バー自体が必ずしもそれを備える必要はない。)中央領域の画素数は、それにより相関計算の精度を過度に減らすことなく、相関計算にとって許容可能な程度に十分小さくなるよう選択される。中央領域20の列数は原則として翼22及び24よりも多い。
【0022】
画像センサーは指の動きの間、その部分的画像のさまざまな捕捉の速度を決定し、また該部分的画像が全体の指紋画像に到達するために再構成されるべき方法を決定するプロセッサの制御の下に動作する。該プロセッサは一つがその後の計算の観点から部分的画像をメモリ内に格納し、もう一つが相関計算を実行する二つの部分(二つのプロセッサ)から成ってもよいが、原則として該二つのタスクの実行には一つのプロセッサで十分である。
【0023】
プロセッサは画像センサーと同じチップ上にあることが好ましいが、これは必須ではない。図1において、プロセッサは画像センサーを構成しているチップの外側の電子回路12の部分を形成すると見なされている。
【0024】
部分的画像の捕捉は該部分的画像の間に十分な重なりを有するように速くなければならず、それが十分でなければ再構成は実際に不可能である。指の動きの速度は例えば1cm/s〜20cm/sの間で変わりうるが、概して7cm/sのオーダーである。
【0025】
画像の画素サイズは一般に50μmのオーダーであり、上記の範囲の速度においてこれはセンサー上の見掛け速度で200〜4000画素/秒、すなわち0.2〜4画素/msに相当する。
【0026】
その領域内に連続的な画像の一定の重なりが必然的にあるべき故に、相関のために用いられる領域内で画像センサーが8列のみを含むと仮定すると、指が最大速度20cm/sで移動するときでも画像の重なりを得るため、約700〜1000回/秒の連続的な部分的画像の捕捉が必要であることが分かる。従って重なりは2〜3列であり、すなわち第二の画像の最初の2〜3列は原則として第一の画像の最後の2〜3列と同一である。従って第二の画像は第一の画像に対して2〜3列の共通な列及び6〜5列の新たな列を有する。
【0027】
これは、予想されねばならない連続した画像の捕捉テンポの大きさのオーダーを与える。勿論、部分的重なりを、センサーの中央領域20における列数を増加させて改善することは可能である。この数は8列よりむしろ、例えば20又は30列でもよいが、これは勿論シリコンの面積の点から見て費用上の不利益において行なわれる。
【0028】
表示用として、指の全体画像は再構成の後に約300×400画素に相当する。
【0029】
図3において想起される画像捕捉の順序は以下であってもよい。
−待機段階:少数の画像(例えば3つ)の捕捉、及び指の存在の計算による検出。その存在が検出された場合、次の段階に移るか、さもなければ新たな画像の捕捉と新たな存在の検出の前に数10msの間待機する。10msの遅れは指が二つの検出の試みの間に動き始めた場合、たとえ最高速度20cm/sの場合でも数mmの画像以上は失われないことを確実にする。
−捕捉の第一段階:部分的画像が例えば4分の3秒の間に任意に捕捉される。殆どの場合、この持続時間はそれがかなり低い速度における動き(2cm長さの画像に対して2.6cm/s)に相当するため、指の画像の完全な捕捉に十分である。この時間の後、最後の少数の部分的画像における指の存在が計算される。指がまだ存在する場合、次の段階に移る。さもなければ画像の捕捉は終了し、次の段階に行くことができる。
−指の動きが特に遅い場合の、捕捉の第二段階:指が存在する場合、部分的画像の捕捉は4分の1秒間のみ継続し、最後の少しの部分における指の存在がテストされる。指が存在する場合、4分の1秒の新たな期間に対して捕捉が再開される。さもなければ捕捉は終了し、再構成に移る。
【0030】
このように捕捉された部分的画像はそれらの後続の処理を視野に入れて格納されるか、あるいは再構成が捕捉期間の間に徐々に始まってもよい。第一の場合はより削減された計算手段を伴う大きなメモリを必要とする。第二の場合はより削減されたメモリを伴うかなりの手段の計算を必要とする。
【0031】
指の検出は画像の中央部の画素の信号レベルの間の標準偏差の監視によって影響され得る。指が存在しないとき、標準偏差は小さくそれは単にノイズ相当である。指が存在する場合、それは大幅に増大し、相当に高い検出しきい値を選択するのに十分となって、単純なノイズでは捕捉を開始しないようにすることが可能である。
【0032】
捕捉の中止は指が完全にセンサーから離れた(そして不安定性を避けるように以前のものよりも低いしきい値を有する)ことを確かにするため、それに対する十分な持続時間(例えば20ms)にわたり同じ原理で行なわれる。
【0033】
部分的画像に基づく全体の画像再構成を行なうため、一つの画像から次の画像への指の変位を計算することが必要である。
【0034】
これを行なうため、二つの連続した画像の相関が短い時間(長さのオーダー:二つの画像間の最良の相関を見出すのに1ms)となるように、少ない計算労力しか要さない相関の方法を採用することが好ましい。
【0035】
単純で効果的な相関計算は二つの連続した部分的画像における同じ実際の画像ポイントの、二つの可能な位置に相当する画素PiとPjの二つの値の差を計算すること及び、相関領域の全ての画素Piについての偏差(又は代わりに二乗偏差)の絶対値を加算することにある。言い換えれば、Piが第一の画像の画素iの決められた位置の信号値とすると、Pjは第二の画像内で測定された画素jの別の位置の値であり、画素iとjは横座標に沿って距離x及び縦座標に沿って距離yだけ離れている。横座標は細長いバーの長手方向に数えられ、縦座標はその直角方向(すなわち基本的に指の動く方向)に数えられる。
【0036】
テストされるべき相関値は相関領域の全ての画素について、この偏差の合計の絶対値に基づき計算される。相関領域は中央領域20よりも小さい、その中で相関が行われる第一の画像の長方形である。変位(x,y)に対する相関値COR(x,y)は可能な画像の変位x、yに関係し、勿論変位x、yに対する相関値のこの計算の対象を形成する全ての画素i(相関領域内にn個の画素がある場合、iは1〜n迄変化する)は、同じ値x、yにより変位させられる。相関値が小さくなる程、第二の画像は実際に前の捕捉の間に第一の画像によって見られた指の同じ部分の画像である確率が高くなる。偏差Pi−Pjの合計は、画像がより良く相関している場合は常に小さく、その結果最良の相関値は、相関量の最小値に相当することが理解されよう。しかしながら、最良の可能な相関のための最大値の探索に相当する他の相関量も選択され得る。ここで奨励されている解決策(偏差の合計の最小値の探索により最適化される相関)は、計算を単純化することが可能である。
【0037】
様々なx、yの値について幾つかの相関値が計算され、最小値を与える変位x、yが探索される。
【0038】
原則として、x及びyは画素の整数として表わされるが、画素の端数に対する最大の相関の探索を洗練することが可能であることは理解されよう。
【0039】
相関が行われる画素数は制限されることが好ましい。例えば、相関は活性領域の中央領域20において採られた線分について行なわれる。この線分は、画像の変位が僅かに斜めになり得るという事実を考慮に入れるように、中央領域の幅より短い長さを有することが望ましい。該線分はセンサーのこの中央領域の前方部分、すなわち指の画像の新たな部分を最初に見る部位に位置することが好ましい。具体的には、指の動く方向を考慮して、第一の画像の前方部分に最初に現れる指の画像部分は、想定される方向への指の動きと協調して徐々に後方部分へ移動し、最初の画像の前方部分に位置する画像の線の一部分と、更に後方に位置する画像の線の一部分との間の相関について探索することが可能となろう。これは指の移動方向が課せられることを前提とする。逆の場合には、後続の画像における相関がそのために求められる線の部分は中央領域20内にあるべきである。
【0040】
センサーの活性領域の形が単に長方形の場合、領域が十字形である図2に表わされる場合と対比して、例えば活性領域内で採られた幾つかの線分にわたりその相関は違うように行なわれることが注目される。各線分の相対変位が求められよう。
【0041】
相関計算は、該相関計算のための分割を単純化する2進数である例えば64の固定数の画素について行なわれることが好ましい。
【0042】
相関計算は多くの画素において、水平方向及び垂直方向の双方で表わされた画像変位の例えば以下の値について行なわれる。
(0、1)、(0、2)、(0、3)、(0、4)(移動方向の変位)
(1、1)、(1、2)、(1、3)、(1、4)(右へ僅かに斜めの変位)
(−1、1)、(−1、2)、(−1、3)、(−1、4)(左へ僅かに斜めの変位)
また、移動の公称方向から急峻に逸脱している方向へと、変位及び再構成の検出の可能性を広げようと望む場合は、他の更に斜めの変位の値もあり得る。
【0043】
本発明によれば、上記に示された振幅(移動方向に垂直に4画素)よりも大きい変位の振幅に関しては、一般に相関のための探索は必要でない。全体として、16の可能な変位の値の中からの最適な相関の探索は、本発明の原理に対して十分の筈である。
【0044】
具体的に、部分的画像の捕捉のテンポは後続の相関が小さい変位に対して最適であるような方法で、相関の結果に応じて適合するように選ばれる。これは結局、画像捕捉のテンポを相関計算及び再構成を容易にする傾向がある方向で、指の移動速度に合わせることになる。
【0045】
基本的な仮定は、指が小さな加速を経験するか又は全く加速なしに変位するというものであり、従って変位速度が画像捕捉の瞬間に所定の速度を有する場合は、それは実際に次の捕捉の間にも同じ値を有するであろうと推定することができる。
【0046】
一方、これは実際に次の画像の位置を一つ又は二つの画素の中で(速度の概略の決定を可能にする少数の試みの後で)予測することが可能であると言えよう。しかしながら、二つの捕捉の間の変位が平均で2又は3画素(特に相関領域において8本の列を有するセンサーの場合)にとどまるように、とりわけ二つの捕捉の間の時間間隔を合わせることができる。
【0047】
この2又は3画素の値は、センサーが相関領域において8列より多く持っている場合に増加しうるが、計算を最小限にするために、相関領域の大きさを過度に増やさないことが有益である。
【0048】
捕捉のテンポは、従って指の最大速度に対して2〜3画素(推奨値)の変位を超えないよう、十分であることが出来なければならない。反対に、テンポを維持することは結果的に二つの捕捉の間の、過度に小さい画像変位になるため、このテンポは指の速度が遅い場合は維持されず、また特に相関が変位を近接した画素に対してしか決定することが出来ない場合には、二つの連続した画像間の相関のための探索は僅かな意味しか持たない。
【0049】
従ってテンポは指が2又は3画素分変位したときだけ新たな画像を捕捉するように、遅い変位の場合は減速する。この時間は、センサーのタイプが有効な信号を用意するためにかなり長い統合時間を要する場合に、センサーで検出された信号がより長く統合されるよう利用できることに注目するのは興味深い。これは熱的効果(温度変化又は指紋の隆線と溝線の間の熱伝導の変化)において作動するセンサーの場合である。
【0050】
図4に図式的に示される捕捉テンポの適応アルゴリズムは以下の通りである。
持続する画像の読み取り時間をt1、そして次の画像の読み取り前の時間間隔又は「待機時間」をTと考えると、次のようになる。
−a)当初、二つの捕捉の間の待機時間Tは捕捉テンポが最大であることを示唆するゼロに設定され、これは指の変位が特に高速でなされる場合に対して先験的に準備ができるようにする。
−b)画像の最初の捕捉が行なわれ、次にこのゼロの待機時間をその間に伴う第二の捕捉が続く。
−c)最大の相関に対する探索は、x、yだけずれた第二の画像と第一の画像の間の相関値を計算することにより実施され、これは第一の画像の様々な変位x、yについて行なわれる。最良の相関値を与えるX、Yが決定され、この値は二つの捕捉の間の指の画像の変位ベクトルを表わす。
−d)変位(基本的に指の予期された移動のy方向への)が、好ましくは2画素である低いしきい値よりも小さい場合、待機時間Tは一定値dT(一般的に50ms)だけ増大する。反対にそれが、好ましくは3画素である高いしきい値より大きい場合、それはまだゼロでなければ同じ量だけ減少する。該変位が2又は3画素に等しい場合、待機時間は変更されない。
【0051】
指の速度に適応した待機時間Tへの収束後、指が意味のある加速を経ないため変更は遅くなり、待機時間はT−dTとT+dTの間で振動する。
【0052】
適切な待機時間へのこの収束のための探索では、該待機時間はそれを超えては最早増大しない一定値Tmax(一般的に10ms)に制限される。この最大値は一般的に1cm/sである指の変位に要求される最小速度に依存する。低い方の値では、Tは明らかに0に制限される。
【0053】
低い方又は高い方の変位のしきい値選択は2及び3画素とは異なることがある。しきい値は同じになり得るが、しかしそれらを異なるようにすることにより待機時間の無意味な振動は避けられる。それらは1及び2画素まで減らし得るが、そのとき画像の再構成はより不正確になる。それらは増加し得るが、そのときセンサーがより大きい変位を考慮して相関領域内に十分な列を有することを確かめる必要があり、更に原則として可能な変位x、yのより大きな領域にわたり、より多数の相関値を計算する必要があるため、相関のための探索にはより多くの時間がかかる。
【0054】
図4は該処理のこの部分のフローチャートを想起させる。勿論、新たな遅れTの計算を生じさせる各画像の捕捉後に、捕捉された第二の画像はそれに続く捕捉シーケンス及び相関探索のための第一の画像になる。
【0055】
指の変位速度に応じて徐々に変移する指の様々な画像の捕捉後に、指の全体画像は再構成される。計算労力、及び部分的画像の格納に利用可能なメモリが、より大きいかそうでないかに従って、再構成は捕捉と並行して又は全ての捕捉の終了後に実施される。
【0056】
どちらの場合も、二つの捕捉の間の画像変位が一定(平均2又は3画素)になるような方法で捕捉のテンポが安定した瞬間以降は、このテンポの値を考慮に入れることは実際に必要ではない。指が確かに移動の方向に変位する場合、指の全体画像を再構成するには可能な最良の相関を与え、そして移動の方向(垂直)に平均2又は3画素で、直角方向(水平)にゼロ近くである変位の値によって毎回変移する連続的な画像を並置すれば十分である。
【0057】
しかしながら、画像の再構成を洗練するには、最大の相関を近接した一つの画素よりも良い垂直及び水平の双方向に探し求めることが好ましい。具体的には、2又は3画素のような小さい変位において、画素の整数と等しい画像変位に相当する機会のほとんどない相関値が見出されよう。
【0058】
従って、幾つかの相関値が画素の整数として表わされる様々な変位に対して見出される場合、及び二つの相関値COR(x,y−1)とCOR(x,y+1)が最高の相関値COR(x,y)を囲む場合、それらの三つの値から、或る画素内に明らかに最良の相関を与え、変位x、yよりも相関のピークに良く相当する、移動の方向に画素の端数で表わされる変位x、y’を差し引くことが可能である。
【0059】
図5は近くの一つの画素においてなされた計算からの、近接した一つの画素に対するよりも良い最良の相関を与える、変位のこの近似の計算方法を示す。アルゴリズムは実際においてと同様、グラフに基づいて説明されるように次の通りであり、該アルゴリズムは勿論グラフ上のプロットを表わす等式に基づいてソフトウェアにより実行される。グラフ(横軸に沿って変位y、縦軸に沿って相関値)上に記されているのは、三つの値COR(x,y)、COR(x,y−1)、及びCOR(x,y+1)で、その間に最小の相関値COR(x,y)を有する最良の相関の点、最大の相関値を有する点(他の二点のうちの一つ)、及び中間の相関値(他の二点のうちのもう一つ)を有する点がある。最大の相関の点と最小の相関の点を結ぶ線分がプロットされている。縦軸において中間の相関値を有する、この線分の点の横軸y”が決定される。そして横軸y’と中間の相関(y+1又はy−1)の横軸の点との間の中点である横軸の値y’が計算される。
【0060】
従って、例えば中間の相関値を有する点が横軸x、y+1と縦軸及びCOR(x,y+1)の点である場合、近接した一つの画素に対するよりも良い、近似の最適相関点は横軸
y’=(y”+y+1)/2
の点であろう。
【0061】
反対の場合、中間の相関点がCOR(x,y−1)のとき、近接した一つの画素に対するよりも良い最大の相関の点は、横軸y’=(y”+y−1)/2の点であろう。
【0062】
移動方向における第二の画像と第一の画像間の変位の値Yを構成するのは、このy’の値である。
【0063】
同じ補間が最良の相関値COR(x,y)を囲む二つの相関値COR(x−1,y)及びCOR(x+1,y)に基づいて、移動に直角な方向における、近接した一つの画素に対するよりも良い変位Xを決定するために行なわれてもよい。
【0064】
画像の再構成の間、各画像は前の画像に対して計算された変位X,Yに関連し、このように徐々に変移した画像は全体画像を再構成するために並置される。この並置は近接した一つの画素に対するよりも良い変位X、Yが求められる場合には、該センサーの画素よりも大きい解像度のマトリックスにおいてなされてもよい。しかしながら、該並置を解像度1の画素のマトリックスにおいて行なうことは可能であり、また好ましくもあるが、これは該再構成方法の適応を前提とする。この適応は以下の通りである。
全体画像内における部分的画像の重ね合わせに関して(そこで近接した一つの画素に対するよりも良い変位を、近接した画素用に定義された画像内に戻すために計算したのでは役に立たないであろうため)、前の画像に関連せず、捕捉された第一の画像全体に関連して採られた変位値が定義される。
第一の画像全体に関する、或る画像の変位は各々計算された近接した一つの画素に対するよりも良い連続した変位の全体の統合であり、全体画像の再構成マトリックス内の近くの画素に戻されるのは、この統合である。部分的画像は従って第一の画像と、考慮対象である部分的画像の間で捕捉された部分的画像の連続した変位を統合することにより、捕捉された第一の画像に対して計算された変位値だけ変移する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】全体の指紋捕捉システムを表わす。
【図2】画像センサーの活性領域の好ましい形状を表わす。
【図3】画像捕捉の全体段階の例示的フローチャートを示す。
【図4】可変のテンポにおける捕捉の例示的フローチャートを示す。
【図5】近接した一つの画素に対するよりも良い最適の相関を決定するための補間計算図表を表わす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指を細長い画像センサーの前面で動かすことによりデジタルの指紋画像を捕捉する方法であって、
−プロセッサの制御の下に、連続した互いに重なる部分的画像の捕捉と、
−二つの画像間の最良の相関を与えるような、第二の画像に対する第一の画像の変位の探索及び、細長いセンサーと直角方向への画像の画素数としての、この変位要素の決定と、
−変位要素の、少なくとも一つのしきい値との比較と、
−該比較の結果に応じ、次の画像の捕捉前にプロセッサにより課せられた遅れTの維持あるいは、時間増分dTによる増加又は減少の動作を含む方法。
【請求項2】
最良の相関が画像センサーの長手方向及び幅方向の双方の変位に基づいて探索され、指の全体画像が連続する画像の間の最良の相関を与える、変移した画像を重ね合わせることにより再構成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各々の新たな画像において、一つの捕捉から次の捕捉へと考慮されるしきい値の近辺でほぼ一定のままである、最良の相関を与える変位を作り出す傾向がある方向に捕捉の遅れが再調整されることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
高いしきい値及び低いしきい値の双方が備えられ、高いしきい値のオーバーシュートは遅れTの減少dTをもたらし、低いしきい値のアンダーシュートは遅れTの増加dTをもたらすことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
高いしきい値と低いしきい値の間の差が1画素であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記しきい値がそれぞれ2画素及び3画素であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
相関がセンサーにより提供された画像の限定された部分において実施されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
相関がセンサーの中央領域内のみで行われ、センサーがその幅の全体にわたる少数の列と、中央の相関領域を構成するようにその中央部分における短い長さの追加的な列とを有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
相関計算が整数の画素空間である変位について実行され、そして補間計算がそれ以上に良い理論的相関に相当すべき、近接した一つの画素に対するよりも良い中間の変位値を見出すように計算された、最良の相関の近傍における二つ(又はそれ以上)の相関に基づいて実施され、またこの中間の変位値が変移した部分的画像の並置により全体画像の再構成の間に使用されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
全体画像の再構成のために、第一の画像と考慮対象である部分的画像との間で捕捉された部分的画像の連続的変位を統合することによって、捕捉された第一の画像に関して計算された変位値につき部分的画像が変移することを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−514058(P2009−514058A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519937(P2006−519937)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051527
【国際公開番号】WO2005/015481
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(507370909)
【Fターム(参考)】