説明

デジタルカメラ、制御装置および撮像素子ユニット

【課題】振動検出専用の電極を廃止する
【解決手段】ローパスフィルタ212に2つの振動板261,262を取り付け、ローパスフィルタ212の前側表面に付着した異物を払い落とすためにローパスフィルタ212を振動させるときには、2つの振動板261,262を同時に駆動するように構成した。また、ローパスフィルタ212の振動状態を検出する際には、振動板261,262のうち、いずれか一方を振動するように駆動し、いずれか他方で発生する電圧に基づいてローパスフィルタ212の振動状態を検出するように構成した。これにより、振動検出の専用の電極が不要となり、コストダウンできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材を振動させることで光学部材に付着した異物を除去するデジタルカメラ、制御装置および撮像素子ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
光学部材を振動させることで光学部材に付着した異物を除去するデジタルカメラが知られている。このデジタルカメラでは、振動させる光学部材(防塵フィルタ)の振動状態を検出することで、防塵フィルタが正しく振動しているか否かを検出できる(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−29145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のデジタルカメラでは、振動検出のためだけの電極が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明によるデジタルカメラは、被写体像を撮像する撮像素子と、撮像素子の被写体側の前面に配設された光学部材と、光学部材を振動させることができ、かつ、光学部材の振動状態を検出できる複数の振動部材と、光学部材に付着した異物を払い落とすために光学部材を振動させるときには、少なくとも2つ以上の振動部材を同時に駆動し、振動部材によって加振される光学部材の振動状態を検出するときには、複数の振動部材のうち少なくとも1の振動部材によって光学部材を振動させ、当該1の振動部材以外の振動部材のうち少なくとも1つの振動部材によって光学部材の振動状態を検出するように振動部材を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
(2) 請求項2の発明は、請求項1に記載のデジタルカメラにおいて、制御手段は、光学部材に付着した異物を払い落とすために少なくとも2つ以上の振動部材を同時に駆動する前に、複数の振動部材のうち少なくとも1の振動部材によって光学部材を振動させ、当該1の振動部材以外の振動部材のうち少なくとも1つの振動部材によって光学部材の振動状態を検出するように振動部材を制御することを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のデジタルカメラにおいて、制御手段によって、振動部材によって加振される光学部材の振動状態を検出したときに、検出した光学部材の振動が所定の強度に達しているか否かを判断する判断手段と、光学部材の振動が所定の強度に達していないと判断手段で判断されると、ユーザに報知する報知手段とをさらに備えることを特徴とする。
(4) 請求項4の発明は、請求項2に記載のデジタルカメラにおいて、制御手段によって、振動部材によって加振される光学部材の振動状態を検出したときに、検出した光学部材の振動が所定の強度に達しているか否かを判断する判断手段をさらに備え、制御手段は、光学部材の振動が所定の強度に達していないと判断手段で判断されると、光学部材に付着した異物を払い落とすために少なくとも2つ以上の振動部材を同時に駆動することを中止することを特徴とする。
(5) 請求項5の発明による制御装置は、光学部材を振動させることができ、かつ、光学部材の振動状態を検出できる複数の振動部材、を振動させる駆動手段と、光学部材の振動状態を振動部材で検出して受信する受信手段とを備えることを特徴とする。
(6) 請求項6の発明によるデジタルカメラは、請求項5に記載の制御装置と、光学部材を振動させることができ、かつ、光学部材の振動状態を検出できる複数の振動部材とを備えることを特徴とする。
(7) 請求項7の発明による撮像ユニットは、被写体像を撮像する撮像素子と、撮像素子の被写体側の前面に配設された光学部材と、光学部材を振動させることができ、かつ、光学部材の振動状態を検出できる複数の振動部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、振動検出のためだけの電極が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜9を参照して、本発明によるデジタルカメラの第1の実施の形態を説明する。図1は本実施形態におけるデジタルスチルカメラを側面から見た断面図である。なお、説明の便宜上、各図に示すように前後左右および上下方向を規定する。左右方向については、デジタルスチルカメラを正面から見たときの左右方向と一致するように規定する。このデジタルスチルカメラCAはレンズ交換式の一眼レフタイプであり、撮影レンズLを有する交換レンズLBがレンズマウント21を介してカメラ本体CBに装着される。撮影レンズLを透過した撮影光束は、レンズマウント21の開口21aを通ってカメラ本体CB内に導かれ、ミラー22で反射されてファインダスクリーン23上に結像され、ペンタプリズム24,接眼レンズ25を介して観察される。
【0008】
レリーズ操作がなされると、ミラー22が跳ね上げられて撮影光路から退避し、続いてシャッタ装置であるフォーカルプレーンシャッタ100が駆動され、撮影レンズLの透過光束は、撮像ユニット200に設けられたCCDなどの撮像素子250に入射する。撮像素子250の光電変換出力は、後述する画像処理部にて種々の処理が施され、デジタル画像データが生成される。なお、撮像素子250には、CCD以外の撮像素子(例えば、CMOS)を用いてもよい。
【0009】
図2は、デジタルスチルカメラCAの構成を説明するブロック図である。演算回路101は、マイクロコンピュータなどによって構成される。演算回路101は、後述する各部から出力される信号を入力して所定の演算を行い、演算結果に基づく制御信号を各部へ出力する。演算回路101と後述する各部とは互いに接続されている。
【0010】
撮像素子250は、撮影レンズLを通過した被写体光による像を撮像し、撮像信号を画像処理部123へ出力する。画像処理部123は、A/D変換回路やASICなどによって構成される。画像処理部123は、アナログ撮像信号をデジタル信号に変換して、デジタル変換後の画像データにホワイトバランス処理などの画像処理を行う。また画像処理部123は、画像処理後の画像データを所定の形式で圧縮する圧縮処理、圧縮された画像データを伸長する伸長処理などを行う。
【0011】
レリーズスイッチ141は、不図示のレリーズボタンに連動してレリーズ操作信号を演算回路101に出力する。レリーズ操作信号には、レリーズボタンの半押し操作に対応する半押し操作信号と、半押し操作より深く押下される全押し操作に対応する全押し操作信号とがある。操作スイッチ143は、カメラ本体CBに設けられて不図示の各操作ボタンが操作されると、それぞれ操作信号を演算回路101に出力するスイッチ群である。
【0012】
振動板制御装置151は、演算回路101から出力される信号に基づいて後述する振動板261,262を駆動する装置である。また、後述するように、振動板制御装置151は振動板261,262から得られた電気信号を受信する。
【0013】
表示制御部161は、演算回路101から出力される信号に基づいて、たとえばカメラ本体CBの背面に設けられた表示装置7aの表示制御を行う制御部である。レンズ駆動制御部163は、演算回路101から出力される信号に基づいて、合焦動作や焦点距離変更動作を行うように交換レンズLBのレンズ群(撮影レンズL)を駆動する。シーケンスモータ駆動部164は、演算回路101から出力される信号に基づいてシーケンスモータ164aを駆動する。シーケンスモータ164aは、ミラー22の回動や、フォーカルプレーンシャッタ100のチャージ動作などを行うためのモータである。
【0014】
記憶媒体装着部165は、不図示の記憶媒体を着脱可能に保持し、装着された記憶媒体に記録されたデータの読み込みや消去、記憶媒体へのデータの書き込みを行う。記憶媒体には、画像処理後の画像データが記録される。なお、フォーカルプレーンシャッタ100の動作を開始させるためのマグネットや露光制御のための測光センサなどについては本願発明に直接関係しないため記載を省略する。
【0015】
−−−撮像ユニット200−−−
図3は、撮像ユニット200の斜視図であり、図4は、撮像ユニット200の分解図であり、図5は撮像ユニット200を左側から見たときの断面図であり、図6は撮像ユニット200を下方から見たときの断面図である。図3,4に示すように、撮像ユニット200は、ホルダー201と、撮像基板251と、撮像素子250と、マスク202と、ローパスフィルタ211と、固定部材203と、シール部材204と、ローパスフィルタ212と、ローパスフィルタ押さえバネ205と、固定部材押さえバネ206とを備えている。ホルダー201は、撮像素子250や撮像基板251、固定部材203などが取り付けられる部材である。撮像基板251は、撮像素子250が接続される基板であり、上述した画像処理部123に接続される。
【0016】
撮像素子250は、上述したように、CCDなどの固体撮像素子である。撮像素子250は、撮像基板251と電気的に接続された状態で、図4の符号201aで示したホルダー201の凸部に接着されて固定されている。マスク202は、たとえばゴムなどの弾性体で形成された枠状の部材であり、撮像素子250の前方に配設されている。マスク202は、撮像素子250の撮像領域以外への被写体光の進入を遮断するほか、後述するローパスフィルタ211と撮像素子250との間の空間に異物の侵入を防止するとともに、撮像素子250に対するローパスフィルタ211の位置を決定する。
【0017】
ローパスフィルタ211は、モアレなどを防止するための光学部材である。ローパスフィルタ211は、後述する固定部材203を介して固定部材押さえバネ206の付勢力によってマスク202に対して押圧されることで、撮像素子250に対して位置決めされて固定される。なお、ローパスフィルタ211の前面または後面に赤外光をカットする赤外カットフィルタが設けられていてもよい。
【0018】
固定部材203は、後述するローパスフィルタ212や、シール部材204、ローパスフィルタ押さえバネ205が取り付けられるとともに、ローパスフィルタ211やマスク202をホルダー201に向かって押圧する部材である。シール部材204は、固定部材203とローパスフィルタ212との間で挟持されて、ローパスフィルタ212の後側の空間に異物が侵入するのを防止する部材である。ローパスフィルタ212は、上述したローパスフィルタ211と同様にモアレなどを防止するための光学部材である。ローパスフィルタ212の前面の左右端近傍には後述する振動板261,262が接着されて固定されている。
【0019】
ローパスフィルタ押さえバネ205は、ローパスフィルタ212を固定部材203に向かって付勢して固定するための略矩形形状の枠状の部材であり、図3に示すように、左右方向内側に向かって延在する腕部205aを有する。ローパスフィルタ押さえバネ205は、固定部材203に対してネジ291などで固定されると、腕部205aがローパスフィルタ212の前面に当接して撓む。この腕部205aの撓みによって発生する付勢力で、ローパスフィルタ押さえバネ205はローパスフィルタ212を固定部材203に向かって付勢する。なお、腕部205aが振動板261,262よりも左右方向外側でローパスフィルタ212の前面に当接してローパスフィルタ212を付勢する。これにより、ローパスフィルタ押さえバネ205は、振動板261,262によるローパスフィルタ212の振動を阻害しない。ローパスフィルタ押さえバネ205は、ローパスフィルタ押さえバネ205に設けられた穴205bに、固定部材203のボス203bがはめ込まれることにより位置決めされる(図3)。また。ローパスフィルタ212は、固定部材203のボス203aによって、固定部材203に対する上下左右方向の位置が決定される。
【0020】
固定部材押さえバネ206は、固定部材203をホルダー201に固定するためのバネ部材である。固定部材押さえバネ206は、ネジ292によってホルダー201に取り付けられると、ローパスフィルタ212や、シール部材204、ローパスフィルタ押さえバネ205が取り付けられた固定部材203をホルダー201に向かって付勢しつつ、固定部材203をホルダー201に固定する(図3)。
【0021】
また、ネジ292によって固定部材押さえバネ206がホルダー201に取り付けられると、上述したように、固定部材押さえバネ206によって付勢された固定部材203がローパスフィルタ211やマスク202をホルダー201に向かって押圧して固定する。このようにして、撮像基板251と、撮像素子250と、マスク202と、ローパスフィルタ211と、固定部材203と、シール部材204と、ローパスフィルタ212とがホルダー201に対して固定される。これらの各部材が取り付けられたホルダー201、すなわち撮像ユニット200は、カメラ本体CBに取り付けられて固定される。
【0022】
上述した構成により、図5,6に示すように、撮像素子250の前側表面からローパスフィルタ211の後側表面まで、および、ローパスフィルタ211の前側表面からローパスフィルタ212の後側表面までは、密閉された空間が形成されている。したがって、これらの空間内に外部から異物が侵入することはない。しかし、ローパスフィルタ212の前側表面はカメラ本体CB内の空間に露出しているため、異物が付着することがある。そこで、本実施の形態のデジタルスチルカメラCAでは、振動板261,262を振動させることによってローパスフィルタ212を振動させて、ローパスフィルタ212の前側表面に付着した異物を払い落とす。
【0023】
図7は、ローパスフィルタ212および振動板261,262を示す斜視図である。振動板261,262は圧電素子であり、ローパスフィルタ212の前側表面の左右端近傍で、ローパスフィルタ212の上下方向に延在する辺(短辺)に沿って延在する。振動板261,262は、上述したようにローパスフィルタ212の前面に接着されて固定されている。振動板261,262は、それぞれ可撓性を有するフレキシブルプリント基板(以下、FPCと呼ぶ)263,264によって振動板制御装置151と電気的に接続されている。振動板261,262は、振動板制御装置151から出力される所定周波数の駆動信号によって駆動されると振動する。この振動がローパスフィルタ212に伝達されると、ローパスフィルタ212自体が振動して前側表面に付着した異物を払い落とす。
【0024】
上述したように振動板261,262は圧電素子であるので、外力が加えられると電圧を発生させる。振動板制御装置151は、振動板261,262で発生した電圧を検出でき、演算回路101は、振動板制御装置151で検出した振動板261,262の電圧からローパスフィルタ212の振動状態を検出できる。したがって、振動板261,262のうち、いずれか一方を振動するように駆動し、いずれか他方で発生する電圧に基づいてローパスフィルタ212の振動状態を検出することで、振動板261,262によるローパスフィルタ212の振動状態の良否を判定できる。
【0025】
たとえば、振動板261,262のローパスフィルタ212に対する固定状態(接着状態)が良好でない場合、振動板を振動させてもローパスフィルタ212に対して十分な振動を伝達できないため、ローパスフィルタ212を十分に加振できない。また、ローパスフィルタ212の振動を検出する際には、ローパスフィルタ212の振動が振動板に伝達され難くなるので、振動板で発生する電圧が低下し、ローパスフィルタ212が十分に振動していても、見かけ上はローパスフィルタ212が十分に振動していないように観察される。
【0026】
たとえば、振動板261,262とFPC263,264との接続状態が良好でない場合、振動板制御装置151から振動板に駆動信号を与えても駆動信号が振動板に十分に伝わらず、振動板が十分に振動できないため、ローパスフィルタ212を十分に加振できない。また、ローパスフィルタ212の振動を検出する際には、ローパスフィルタ212の振動によって振動板で発生した電圧(電気信号)が振動板制御装置151に十分伝達できず、見かけ上はローパスフィルタ212が十分に振動していないように観察される。
【0027】
そこで、具体的には、演算回路101は次のようにして振動板261,262によるローパスフィルタ212の振動状態の良否を判定し、その後、ローパスフィルタ212の前側表面に付着した異物を払い落とすようにローパスフィルタ212を振動させる。デジタルスチルカメラCAの不図示の電源スイッチがオンされて、デジタルスチルカメラCAの電源が投入された状態で不図示の操作ボタンが操作され、塵落としモードに設定されると、演算回路101は、振動板261,262のうち、いずれか一方(たとえば振動板261)を振動するように駆動し、いずれか他方(たとえば振動板262)で発生する電圧を検出するよう振動板制御装置151を制御する。
【0028】
その結果、振動板制御装置151は、振動板261が振動するように振動板261に駆動信号を出力する。また、振動板制御装置151は、振動板262で発生した電圧を検出して、演算回路101に検出結果を表す情報(たとえば電圧値や振動周波数の値などの情報)を出力する。演算回路101は、振動板制御装置151から出力された情報に基づいて、ローパスフィルタ212の振動状態の良否を判定する。たとえば、演算回路101は、振動板制御装置151から出力された情報に基づいて、振動板262で発生した電圧が所定の値を上回っていると判断される場合には、ローパスフィルタ212の振動状態が良好であると判定する。また、演算回路101は、振動板制御装置151から出力された情報に基づいて、振動板262で発生した電圧が所定の値に達していないと判断される場合には、ローパスフィルタ212の振動状態が不良であると判定する。
【0029】
その後、演算回路101は、先ほどとは逆に、振動板261,262のうち、いずれか他方(たとえば振動板262)を振動するように駆動し、いずれか一方(たとえば振動板261)で発生する電圧を検出するよう振動板制御装置151を制御する。
【0030】
その結果、振動板制御装置151は、振動板262が振動するように振動板262に駆動信号を出力する。また、振動板制御装置151は、振動板261で発生した電圧を検出して、演算回路101に検出結果を表す情報を出力する。演算回路101は、振動板制御装置151から出力された情報に基づいて、ローパスフィルタ212の振動状態の良否を判定する。たとえば、演算回路101は、振動板制御装置151から出力された情報に基づいて、振動板261で発生した電圧が所定の値を上回っていると判断される場合には、ローパスフィルタ212の振動状態が良好であると判定する。また、演算回路101は、振動板制御装置151から出力された情報に基づいて、振動板261で発生した電圧が所定の値に達していないと判断される場合には、ローパスフィルタ212の振動状態が不良であると判定する。
【0031】
演算回路101は、上述したように振動板261,262を交互に駆動させたときに、いずれの振動板261,262を駆動させた場合にもローパスフィルタ212の振動状態が良好であると判定された場合には、振動板261,262の加振機能は正常であると判断する。すなわち、この場合には、演算回路101は、ローパスフィルタ212の前側表面に付着した異物を払い落とすのに十分な振動力を与えることができるものと判断する。そして、演算回路101は、振動板261,262を同時に駆動させることでより強くローパスフィルタ212を振動させるよう、振動板制御装置151に制御信号を出力する。演算回路101からの制御信号を受信すると振動板制御装置151は、あらかじめ定められた一定の時間だけ振動板261,262の双方に駆動信号を出力する。これにより、振動板261,262が一定の時間だけ同時に振動するので、振動板261,262のいずれか一方だけが振動した場合と比べてローパスフィルタ212が強く振動する。この強い振動によって、ローパスフィルタ212の前側表面に付着した異物が払い落とされる。なお、各振動板261,262の振動により、ローパスフィルタ212が共振する周波数(または共振周波数付近)にて振動するよう、振動板制御装置151から出力される駆動信号は、その位相および周波数が適宜決定されて出力される。
【0032】
演算回路101は、上述したように、振動板制御装置151が振動板261,262の双方を振動させている間、塵落とし動作中である旨のメッセージを表示装置7aに表示するよう表示制御部161を制御する。その結果、表示装置7aには、図8(a)に示すように、塵落とし動作中である旨のメッセージが表示される。振動板制御装置151による振動板261,262の双方の同時駆動が終了すると、振動板制御装置151は、振動板216,262の駆動終了の信号(塵落とし終了信号)を演算回路101に出力する。演算回路101は、振動板制御装置151から出力された塵落とし終了信号を受信すると、塵落としモードを解除して撮影モード(撮影待機状態)に移行するよう各部を制御する。
【0033】
なお、演算回路101は、上述したように振動板261,262を交互に駆動させた際に、少なくともいずれか一方の振動板261,262を駆動させた場合にローパスフィルタ212の振動状態が不良であると判定された場合には、振動板261,262の加振機能は正常に機能していないと判断する。すなわち、この場合には、演算回路101は、ローパスフィルタ212の前側表面に付着した異物を払い落とすのに十分な振動力を与えることができないものと判断する。そして、演算回路101は、ローパスフィルタ212の振動状態が不良である旨のメッセージを一定時間だけ表示装置7aに表示してユーザに報知するよう表示制御部161を制御する。その結果、表示装置7aには、図8(b)に示すように、ローパスフィルタ212の振動状態が不良である旨のメッセージが一定時間だけ表示される。これにより、ユーザは、ローパスフィルタ212の振動状態が良好でないことを認識できる。その後、演算回路101は、振動板261,262を振動させることなく、塵落としモードを解除して撮影モード(撮影待機状態)に移行するよう各部を制御する。
【0034】
−−−フローチャート−−−
図9は、上述したローパスフィルタ212の振動状態の良否の判定、および、ローパスフィルタ212を振動させるための処理を行うプログラムの処理内容を示すフローチャートである。デジタルスチルカメラCAの不図示の電源スイッチがオンされて、デジタルスチルカメラCAの電源が投入された状態で不図示の操作ボタンが操作され、塵落としモードに設定されると、この処理を行うプログラムが起動されて、演算回路101で実行される。
【0035】
ステップS1において、振動板261,262のうち、いずれか一方(たとえば振動板261)を振動するように駆動し、いずれか他方(たとえば振動板262)で発生する電圧を検出するよう、振動板制御装置151を制御する信号を出力してステップS3へ進む。ステップS3において、振動板262で発生した電圧に関して振動板制御装置151から出力される情報を取得してステップS5へ進む。ステップS5において、ステップS3で取得した情報に基づいて、ローパスフィルタ212の振動状態の良否を判定してステップS7へ進む。
【0036】
ステップS7において、振動板261,262のうち、いずれか他方(たとえば振動板262)を振動するように駆動し、いずれか一方(たとえば振動板261)で発生する電圧を検出するよう、振動板制御装置151を制御する信号を出力してステップS9へ進む。ステップS9において、振動板261で発生した電圧に関して振動板制御装置151から出力される情報を取得してステップS11へ進む。ステップS11において、ステップS9で取得した情報に基づいて、ローパスフィルタ212の振動状態の良否を判定してステップS13へ進む。
【0037】
ステップS13において、ステップS5およびステップS11で判定したローパスフィルタ212の振動状態がいずれも良好であったか否か、すなわち、振動板261,262の加振機能は正常であるか否かを判断する。ステップS13が肯定判断されるとステップS15へ進み、振動板261,262を同時に駆動させることでより強くローパスフィルタ212を振動させるよう、振動板制御装置151に制御信号を出力してステップS17へ進む。ステップ17において塵落とし動作中である旨のメッセージを表示装置7aに表示するよう表示制御部161を制御してステップS19へ進む。
【0038】
ステップS19において、振動板216,262の駆動が終了するまで、すなわち振動板制御装置151から出力された塵落とし終了信号を受信するまで待機し、塵落とし終了信号を受信するとステップS21へ進む。ステップS21において、ステップS17で表示させたメッセージの表示を中止するよう表示制御部161を制御するとともに、塵落としモードを解除して撮影モード(撮影待機状態)に移行するよう各部を制御してリターンする。
【0039】
ステップS13が否定判断されるとステップS31へ進み、ローパスフィルタ212の振動状態が不良である旨のメッセージを一定時間だけ表示装置7aに表示するよう表示制御部161を制御してステップS33へ進む。ステップS33において、ステップS31の制御により表示装置7aで表示されるメッセージの表示時間に対応する一定時間だけ待機した後、ステップS21へ進む。
【0040】
上述したデジタルスチルカメラCAでは、次の作用効果を奏する。
(1) ローパスフィルタ212に2つの振動板261,262を取り付け、ローパスフィルタ212の前側表面に付着した異物を払い落とすためにローパスフィルタ212を振動させるときには、2つの振動板261,262を同時に駆動するように構成した。また、ローパスフィルタ212の振動状態を検出する際には、振動板261,262のうち、いずれか一方を振動するように駆動し、いずれか他方で発生する電圧に基づいてローパスフィルタ212の振動状態を検出するように構成した。これにより、振動検出の専用の電極が不要となり、コストダウンできる。また、ローパスフィルタ212を振動させるときには、2つの振動板261,262を同時に駆動するので、ローパスフィルタ212の十分な加振力を得ることができ、ローパスフィルタ212の前側表面に付着した異物を払い落とす能力が高い。
【0041】
(2) 2つの振動板261,262を同時に駆動するのに先だって、振動板261,262のうち、いずれか一方を振動するように駆動し、いずれか他方で発生する電圧に基づいてローパスフィルタ212の振動状態を検出するように構成した。これにより、異物の払い落とし動作である振動板261,262の同時駆動の前に、ローパスフィルタ212を十分に振動させることができるか否かを、すなわち、振動板261,262やFPC263,264などに不具合があるか否か、振動板261,262とFPC263,264との接着強度、振動板261,262とローパスフィルタ212との接着強度、振動板261,262とFPC263,264との電気導通性能、ローパスフィルタ212の固定状態等に不具合があるか否かを判断できる。
【0042】
(3) 振動板261,262を交互に駆動させた際にローパスフィルタ212の振動状態が不良であると判定されると、ローパスフィルタ212の振動状態が不良である旨のメッセージを一定時間だけ表示装置7aに表示するように構成した。これにより、ユーザは、ローパスフィルタ212の振動状態が良好でないことを認識できる。したがって、塵落としモードに設定して異物の払い落とし動作を行っているにもかかわらず、実際にはローパスフィルタ212の前側表面に付着した異物を十分に払い落とすことができずユーザの期待した効果を得ることができない、といった不具合を回避できる。
【0043】
(4) 振動板261,262を交互に駆動させた際にローパスフィルタ212の振動状態が不良であると判定された場合には、その後に振動板261,262を同時に振動させないように構成した。これにより、不具合があるために実施したとしても異物払い落とし効果の低い、振動板261,262の同時駆動を省略できるので、デジタルスチルカメラCAの消費電力を抑制できる。
【0044】
(5) 振動板制御装置151から出力される所定周波数の駆動信号によって振動板261,262を振動させるとともに、振動板261,262で発生した電圧を振動板制御装置151で検出できるように構成した。これにより、振動板261,262とFPC263,264との接続箇所の数を最小限に留めることができるので、当該接続箇所の接続不良に起因する不具合の発生確率を減らして信頼性を向上できる。
(6) ホルダー201に撮像素子250や、ローパスフィルタ211,212、振動板261,262などを取り付けて、撮像ユニット200として一体的に構成した。これにより、撮像ユニット200自体の組み立てが容易になるとともに、カメラ本体CBに対する撮像ユニット200の取り付けが容易となる。
【0045】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、振動板261,262の数は2つであるが、振動板の数は2つに限らず3つ以上であってもよい。また、ローパスフィルタ212の前側表面だけではなく、ローパスフィルタ212の後側表面に配設してもよい。なお、振動板を3つ以上設けた場合、ローパスフィルタ212の振動状態を検出する際には、ある1つまたは2つ以上の振動板を振動させ、当該振動させた振動板以外の振動板のうちの1つまたは2つ以上の振動板でローパスフィルタ212の振動を検出するようにしてもよい。また、振動板を3つ以上設けた場合、ローパスフィルタ212の前側表面に付着した異物を払い落とす際には、少なくとも2つ以上の振動板を振動させることが望ましい。
【0046】
(2) 上述の説明では、ローパスフィルタ212を振動させる振動板と、ローパスフィルタ212の振動を検出する振動板を交互に入れ替えて、ローパスフィルタ212の振動状態が良好であるか否かを判定するように構成しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ローパスフィルタ212を振動させる振動板と、ローパスフィルタ212の振動を検出する振動板とを交互に入れ替えることなく、ローパスフィルタ212の振動状態が良好であるか否かを判定するように構成してもよい。この場合であっても、振動板制御装置151が検出する振動板の電圧は、振動板261側および振動板262側の双方に不具合がなければ、正常な値である所定の電圧を上回ることになり、振動板261側または振動板262側のいずれか一方に不具合があれば、正常な値である所定の電圧を下回ることになるからである。
【0047】
すなわち、振動板261側および振動板262側の双方に不具合がなければ、下記の(a)〜(g)に挙げた電気信号または振動の発生・伝達が阻害されないので、所定の電圧を上回る電圧が振動板制御装置151で検出されることになる。また、振動板261側または振動板262側のいずれか一方に不具合があれば、下記の(a)〜(g)のいずれかで電気信号または振動の発生・伝達が阻害されるので、所定の電圧を下回る電圧が振動板制御装置151で検出されることになる。
(a) 振動板制御装置151から振動板への駆動信号の伝達
(b) 駆動信号による振動板での振動発生
(c) 振動板の振動のローパスフィルタ212への伝達
(d) ローパスフィルタ212自体の振動伝達
(e) ローパスフィルタ212の振動の振動板への伝達
(f) 振動させられた振動板における電圧発生
(g) 振動板で発生した電圧(電気信号)の制御装置151への伝達
【0048】
(3) 上述の説明では、撮像ユニット200上の光学部材のうち、最も前方に配設されてカメラ本体CB内の空間に露出している光学部材はローパスフィルタ212であるが、本発明はこれに限定されない。撮像ユニット200上の光学部材のうち、最も前方に配設されてカメラ本体CB内の空間に露出している光学部材が、たとえば、カバーガラスなどの他の光学部材であってもよく、当該他の光学部材が振動板261,262によって振動させられるように構成してもよい。
【0049】
(4) 上述の説明では、振動板261,262に圧電素子を用いているが、本発明はこれに限定されない。振動板261,262には、たとえば圧電素子以外にも、マグネットとコイルを組み合わせた部材のように振動と電気信号とを相互に変換できる部材を用いることができる。
【0050】
(5) 上述の説明では、撮像ユニット200をカメラ本体CBに取り付けた後に、ローパスフィルタ212の振動状態が良好であるか否かを判定するように構成しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、撮像ユニット200をカメラ本体CBに取り付ける前に、すなわち、デジタルスチルカメラCAの組み立て段階でローパスフィルタ212の振動状態が良好であるか否かを判定するようにしてもよい。この場合には、たとえば、ローパスフィルタ212や、シール部材204、ローパスフィルタ押さえバネ205が固定部材203に取り付けられた段階(すなわち、固定部材203をホルダー201に取り付ける前の段階)で、ローパスフィルタ212の振動状態が良好であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0051】
なお、ローパスフィルタ212の振動状態が良好であるか否かを判定するには、FPC263,264を介して振動板261,262に振動板制御装置151、または、振動板制御装置151と同等の装置を接続する。そして、一方の振動板に駆動信号を与え、他方の振動板からの電気信号を検出するようにすればよい。ここで、振動板制御装置151と同等の装置とは、少なくとも振動板に駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、振動板からの電気信号を検出する電気信号検出回路とを備える装置である。
【0052】
(6) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、被写体像を撮像する撮像素子と、撮像素子の被写体側の前面に配設された光学部材と、光学部材を振動させることができ、かつ、光学部材の振動状態を検出できる複数の振動部材と、光学部材に付着した異物を払い落とすために光学部材を振動させるときには、少なくとも2つ以上の振動部材を同時に駆動し、振動部材によって加振される光学部材の振動状態を検出するときには、複数の振動部材のうち少なくとも1の振動部材によって光学部材を振動させ、当該1の振動部材以外の振動部材のうち少なくとも1つの振動部材によって光学部材の振動状態を検出するように振動部材を制御する制御手段とを備える各種構造のデジタルカメラを含むものである。本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、光学部材を振動させることができ、かつ、光学部材の振動状態を検出できる複数の振動部材、を振動させる駆動手段と、光学部材の振動状態を振動部材で検出して受信する受信手段とを備える各種構造の制御装置を含むものである。また、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、被写体像を撮像する撮像素子と、撮像素子の被写体側の前面に配設された光学部材と、光学部材を振動させることができ、かつ、光学部材の振動状態を検出できる複数の振動部材とを備える各種構造の撮像ユニットを含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】デジタルスチルカメラCAを側面から見た断面図である。
【図2】デジタルスチルカメラCAの構成を説明するブロック図である。
【図3】撮像ユニット200の斜視図である。
【図4】撮像ユニット200の分解図である。
【図5】撮像ユニット200を左側から見たときの断面図である。
【図6】撮像ユニット200を下方から見たときの断面図である。
【図7】ローパスフィルタ212および振動板261,262を示す斜視図である。
【図8】表示装置7aの表示例を示す図である。
【図9】ローパスフィルタ212の振動状態の良否の判定、および、ローパスフィルタ212を振動させるための処理を行うプログラムの処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
7a 表示装置 101 演算回路
151 振動板制御装置 161 表示制御部
200 撮像ユニット 211,212 ローパスフィルタ
250 撮像素子 261,262 振動板
263,264 フレキシブルプリント基板(FPC)
CA デジタルスチルカメラ CB カメラ本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子の被写体側の前面に配設された光学部材と、
前記光学部材を振動させることができ、かつ、前記光学部材の振動状態を検出できる複数の振動部材と、
前記光学部材に付着した異物を払い落とすために前記光学部材を振動させるときには、少なくとも2つ以上の前記振動部材を同時に駆動し、前記振動部材によって加振される前記光学部材の振動状態を検出するときには、前記複数の振動部材のうち少なくとも1の振動部材によって前記光学部材を振動させ、前記1の振動部材以外の振動部材のうち少なくとも1つの振動部材によって前記光学部材の振動状態を検出するように前記振動部材を制御する制御手段とを備えることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタルカメラにおいて、
前記制御手段は、前記光学部材に付着した異物を払い落とすために少なくとも2つ以上の前記振動部材を同時に駆動する前に、前記複数の振動部材のうち少なくとも1の振動部材によって前記光学部材を振動させ、前記1の振動部材以外の振動部材のうち少なくとも1つの振動部材によって前記光学部材の振動状態を検出するように前記振動部材を制御することを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のデジタルカメラにおいて、
前記制御手段によって、前記振動部材によって加振される前記光学部材の振動状態を検出したときに、検出した前記光学部材の振動が所定の強度に達しているか否かを判断する判断手段と、
前記光学部材の振動が前記所定の強度に達していないと前記判断手段で判断されると、ユーザに報知する報知手段とをさらに備えることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項4】
請求項2に記載のデジタルカメラにおいて、
前記制御手段によって、前記振動部材によって加振される前記光学部材の振動状態を検出したときに、検出した前記光学部材の振動が所定の強度に達しているか否かを判断する判断手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記光学部材の振動が前記所定の強度に達していないと前記判断手段で判断されると、前記光学部材に付着した異物を払い落とすために少なくとも2つ以上の前記振動部材を同時に駆動することを中止することを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項5】
光学部材を振動させることができ、かつ、前記光学部材の振動状態を検出できる複数の振動部材、を振動させる駆動手段と、
前記光学部材の振動状態を前記振動部材で検出して受信する受信手段とを備えることを特徴とする振動部材の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の制御装置と、
光学部材を振動させることができ、かつ、前記光学部材の振動状態を検出できる複数の振動部材とを備えることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項7】
被写体像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子の被写体側の前面に配設された光学部材と、
前記光学部材を振動させることができ、かつ、前記光学部材の振動状態を検出できる複数の振動部材とを備えることを特徴とする撮像ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−38741(P2009−38741A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203172(P2007−203172)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】