説明

デジタルデータ処理装置および方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はデジタルデータ処理装置および方法に関し、例えば衛星を介して伝送される電子番組ガイド情報に基づいてテレビジョン放送を受信する装置に用いて好適なデジタルデータ処理装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、米国においてMPEG(Moving Picture Experts Group)などの高能率符号化技術を応用して、ケーブルテレビジョン(CATV:Cable Television)や、デジタル直接衛星放送(DSS:Digital Satellite System(Hughes Communications社の商標))などにおいて、ビデオ信号とオーディオ信号をデジタル化し、デジタルデータを衛星を介して伝送し、受信側においてこれを受信し、復調するようにしたシステムが普及しつつある。
【0003】これらのシステムにおいては、受信側において、専用のデジタルデータ処理装置(デコーダ)が必要となる。これらのデジタルデータ処理装置においては、伝送されてくるデジタルデータからクロックを生成し、そのクロックを基にビデオデータやオーディオデータを処理する必要がある。
【0004】従来このようなクロックを生成するのに、PLL(Phase LockedLoop)回路が用いられている。すなわち、伝送データにはクロックを生成するための基準となるデータとして、SCR(System Clock Reference)が含まれており、このSCRを基準としてクロックが生成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のデジタルデータ処理装置におけるPLL回路は、何らかの理由により、SCRと受信側において生成しているクロックの位相がある程度以上離れると、許容される範囲内の位相誤差のクロックに戻すのに時間がかかる課題があった。
【0006】また、位相誤差が少ないクロックを生成することが困難であり、デジタルデータを処理するために、一時的にデータを記憶するバッファがオーバーフローしたり、あるいはアンダーフローする恐れがあった。
【0007】本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、迅速に許容誤差の範囲内の位相のクロックを生成するようにするものである。また、より正確な位相のクロックを生成することができるようにするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載のデジタルデータ処理装置は、時刻基準値と計数値との差としての位相誤差と、所定の基準のタイミングにおける前記時刻基準値と計数値との差としての基準位相誤差との差としての差分位相誤差を、所定の許容差分位相誤差と比較する許容差分位相誤差比較手段と、許容差分位相誤差比較手段の比較結果に対応して、基準位相誤差をリセットし、そのときの位相誤差に設定するリセット手段とを備えることを特徴とする。
【0009】請求項6に記載のデジタルデータ処理装置は、比較手段が、時刻基準値と計数値との差としての位相誤差と所定の基準のタイミングにおける時刻基準値と計数値との差としての基準位相誤差との差としての差分位相誤差、そのときの位相誤差、およびそのときの直前の位相誤差の和に、所定の係数を乗算するとともに、そのときの位相誤差とそのときの直前の位相誤差との差としての間隔で除算した制御値を演算し、制御値をそのときの制御信号に加算して新たな制御信号とすることを特徴とする。
【0010】請求項7に記載のデジタルデータ処理方法は、時刻基準値と計数値との差としての位相誤差と、所定の基準のタイミングにおける時刻基準値と計数値との差としての基準位相誤差との差としての差分位相誤差を、所定の許容差分位相誤差と比較し、差分位相誤差が許容差分位相誤差より大きいとき、基準位相誤差をリセットし、そのときの位相誤差に設定することを特徴とする。
【0011】請求項8に記載のデジタルデータ処理方法は、時刻基準値と計数値との差としての位相誤差と所定の基準のタイミングにおける時刻基準値と計数値との差としての基準位相誤差との差としての差分位相誤差、そのときの位相誤差、およびそのときの直前の位相誤差の和に、所定の係数を乗算するとともに、そのときの位相誤差とそのときの直前の位相誤差との差としての間隔で除算した制御値を演算し、制御値をそのときの制御信号に加算して新たな制御信号とすることを特徴とする。
【0012】
【作用】請求項1に記載のデジタルデータ処理装置および請求項7に記載のデジタルデータ処理方法においては、許容差分位相誤差との比較結果に対応して、基準位相誤差をリセットし、そのときの位相誤差に設定する。
【0013】また、請求項6に記載のデジタルデータ処理装置および請求項8に記載のデジタルデータ処理方法においては、差分位相誤差、そのときの位相誤差、およびそのときの直前の位相誤差の和に、所定の係数が乗算されると共に、その和を間隔で除算した制御値が演算される。そして制御値を、そのときの制御信号に加算して、新たな制御信号とされる。
【0014】
【実施例】図1は、本発明を応用したAV(Audio Video)システムの構成例を示している。この実施例の場合、AVシステムは、パラボラアンテナ3で図示せぬ衛星(放送衛星または通信衛星)を介して受信した信号を復調するIRD(Integrated Receiver/Decoder)2と、モニタ装置4により構成されている。モニタ装置4とIRD2は、AVライン11とコントロールライン12により、相互に接続されている。
【0015】IRD2に対しては、リモートコマンダ5により赤外線(IR:Infrared)信号により指令を入力することができるようになされている。即ち、リモートコマンダ5のボタンスイッチ50(図5)の所定のものを操作すると、それに対応する赤外線信号がIR発信部51から出射され、IRD2のIR受信部39(図4)に入射されるようになされている。
【0016】図2は、図1のAVシステム1の電気的接続状態を表している。パラボラアンテナ3は、LNB(Low Noise Block downconverter)3aを有し、衛星からの信号を所定の周波数の信号に変換し、IRD2に供給している。IRD2は、その出力を、例えば、コンポジットビデオ信号線、オーディオL信号線、オーディオR信号線の3本の線により構成されるAVライン11を介してモニタ装置4に供給している。
【0017】さらに、IRD2はAV機器制御信号送受信部2Aを、モニタ装置4はAV機器制御信号送受信部4Aを、それぞれ有している。これらは、ワイヤードSIRCS(Wired Sony Infrared Remote Control System)(商標)よりなるコントロールライン12により、相互に接続されている。
【0018】図3は、IRD2の正面の構成例を表している。IRD2の左側には、電源ボタンスイッチ111が設けられている。この電源ボタンスイッチ111は、電源をオンまたはオフするとき操作される。電源がオンされたときLED112が点灯するようになされている。LED112の右側には、LED113と114が設けられ、LED113は、衛星からの信号を受信し出力するDSSモードを選択したとき点灯し、例えば、ケーブルボックスからRF入力端子に入力されたRF信号を、RFモジュレータ41(図4)を介してRF出力端子より出力するテレビジョン(TV)モードを選択したとき消灯される。LED114は、衛星を介して、このIRD2に対して、所定のメッセージが伝送されてきたとき、点灯するようになされている。ユーザがこのメッセージをモニタ装置4に出力し表示させ、これを確認したとき、LED114は消灯される。
【0019】TV/DSSボタンスイッチ115をオンすると、DSSモードが設定され、オフするとTVモードが設定される。また、メニューボタンスイッチ121は、モニタ装置4にメニューを表示させるとき操作される。
【0020】セレクトボタンスイッチ116の上下左右には、それぞれアップボタンスイッチ117、ダウンボタンスイッチ118、レフトボタンスイッチ119およびライトボタンスイッチ120が配置されている。これらのアップボタンスイッチ117、ダウンボタンスイッチ118、レフトボタンスイッチ119およびライトボタンスイッチ120は、カーソルを上下左右方向に移動するとき操作される。また、セレクトボタンスイッチ116は、選択を確定するとき(セレクトするとき)操作される。
【0021】図4は、前述したDSSを受信するためのIRD2の内部の構成例を示している。パラボラアンテナ3のLNB3aより出力されたRF信号は、フロントエンド20のチューナ21に供給され、復調される。チューナ21の出力は、QPSK復調回路22に供給され、QPSK復調される。QPSK復調回路22の出力は、エラー訂正回路23に供給され、エラーが検出、訂正され、必要に応じて補正される。
【0022】CPU、ROMおよびRAM等からなるICカードにより構成されているCAM(Conditional Access Module)33には、暗号を解読するのに必要なキーが、解読プログラムとともに格納されている。衛星を介して送信される信号は暗号化されているため、この暗号を解読するにはキーと解読処理が必要となる。そこで、カードリーダインタフェース32を介してCAM33からこのキーが読み出され、デマルチプレクサ24に供給される。デマルチプレクサ24は、このキーを利用して、暗号化された信号を解読する。
【0023】尚、このCAM33には、暗号解読に必要なキーと解読プログラムの他、課金情報なども格納されている。
【0024】デマルチプレクサ24は、フロントエンド20のエラー訂正回路23の出力する信号の入力を受け、これをデータバッファメモリ(SRAM:StaticRandom Access Memory)35に一旦記憶させる。そして、適宜これを読み出し、解読したビデオ信号をMPEGビデオデコーダ25に供給し、解読したオーディオ信号をMPEGオーディオデコーダ26に供給する。
【0025】MPEGビデオデコーダ25は、入力されたデジタルビデオ信号をDRAM25aに適宜記憶させ、MPEG方式により圧縮されているデジタルビデオ信号のデコード処理を実行する。デコードされたデジタルビデオ信号は、NTSCエンコーダ27に供給され、NTSC方式の輝度信号(Y)、クロマ信号(C)、およびコンポジット信号(V)に変換される。輝度信号とクロマ信号は、バッファアンプ28Y,28Cを介して、それぞれSビデオ信号として出力される。また、コンポジット信号は、バッファアンプ28Vを介して出力される。
【0026】なお、このMPEGビデオデコーダ25としては、SGS−ThomsonMicroelectronics社のMPEG2復号化LSI(STi3500)を用いることができる。その概略は、例えば、日経PB社「日経エレクトロニクス」1994.3.14(no.603)第101頁乃至110頁に、Martin Bolton氏により紹介されている。
【0027】また、MPEG2−Transportstreamに関しては、アスキー株式会社1994年8月1日発行の「最新MPEG教科書」第231頁乃至253頁に説明がなされている。
【0028】MPEGオーディオデコーダ26は、デマルチプレクサ24より供給されたデジタルオーディオ信号をDRAM26aに適宜記憶させ、MPEG方式により圧縮されているオーディオ信号のデコード処理を実行する。デコードされたオーディオ信号は、D/A変換器30においてD/A変換され、左チャンネルのオーディオ信号は、バッファアンプ31Lを介して出力され、右チャンネルのオーディオ信号は、バッファアンプ31Rを介して出力される。
【0029】RFモジュレータ41は、NTSCエンコーダ27が出力するコンポジット信号と、D/A変換器30が出力するオーディオ信号とをRF信号に変換して出力する。また、このRFモジュレータ41は、TVモードが設定されたとき、ケーブルボックス等のAV機器から入力されるNTSC方式のRF信号をスルーして、VCRや他のAV機器(図示せず)にそのまま出力する。
【0030】この実施例の場合、これらのビデオ信号およびオーディオ信号が、AVライン11を介してモニタ装置4に供給されることになる。
【0031】CPU(Central Processor Unit)29は、ROM37に記憶されているプログラムに従って各種の処理を実行する。例えば、チューナ21、QPSK復調回路22、エラー訂正回路23などを制御する。また、AV機器制御信号送受信部2Aを制御し、コントロールライン12を介して、他のAV機器(この実施例の場合、モニタ装置4)に所定のコントロール信号を出力し、また、他のAV機器からのコントロール信号を受信する。
【0032】このCPU29に対しては、フロントパネル40の操作ボタンスイッチ(図3)を操作して、所定の指令を直接入力することができる。また、リモートコマンダ5を操作すると、IR発信部51より赤外線信号が出射され、この赤外線信号がIR受信部39により受光され、受光結果がCPU29に供給される。従って、リモートコマンダ5を操作することによっても、CPU29に所定の指令を入力することができる。
【0033】また、デマルチプレクサ24は、フロントエンド20から供給されるMPEGビデオデータとオーディオデータ以外に、EPG(Electrical Program Guide)データなどを取り込み、データバッファメモリ35のEPGエリア35Aに供給し、記憶させる。EPG情報は現在時刻から数十時間後までの各放送チャンネルの番組に関する情報(例えば、番組のチャンネル、放送時間、タイトル、カテゴリ等)を含んでいる。このEPG情報は、頻繁に伝送されてくるため、EPGエリア35Aには常に最新のEPGを保持することができる。
【0034】EEPROM(Electrically Erasable Programable Read Only Memory)38には、電源オフ後も保持しておきたいデータ(例えばチューナ21の4週間分の受信履歴、電源オフの直前に受信していたチャンネル番号(ラストチャンネル))などが適宜記憶される。そして、例えば、電源がオンされたとき、ラストチャンネルと同一のチャンネルを再び受信させる。ラストチャンネルが記憶されていない場合においては、ROM37にデフォルトとして記憶されているチャンネルが受信される。また、CPU29は、スリープモードが設定されている場合、電源オフ時であっても、フロントエンド20、デマルチプレクサ24、データバッファメモリ35など、最低限の回路を動作状態とし、受信信号に含まれる時刻情報から現在時刻を計時し、所定の時刻に各回路に所定の動作(いわゆるタイマ録音など)をさせる制御なども実行する。例えば、外部のVCR(Video Casette Recorder)と連動して、タイマ自動録画を実行する。
【0035】さらに、CPU29は、所定のOSD(On−Screen Display)データを発生したいとき、MPEGビデオデコーダ25を制御する。MPEGビデオデコーダ25は、この制御に対応して所定のOSDデータを生成して、DRAM25aのOSDエリア25aA(図10)に書き込み、さらに読み出して、出力する。これにより、所定の文字、図形など(例えばメニュー、EPGの一種としてのゼネラルプログラムガイド)などを適宜モニタ装置4に出力し、表示させることができる。
【0036】なお、図4への図示は省略されているが、IRD2は、受信したSCR(System Clock Reference)に同期したクロックを生成する回路(図12)を内蔵しており、CPU29の制御の下に、クロックを生成し、MPEGビデオデコーダ25、MPEGオーディオデコーダ26、NTSCエンコーダ27などに出力するようになされている。
【0037】図5は、リモートコマンダ5のボタンスイッチ50の構成例を表している。方向ボタンスイッチ201乃至204は、カーソルを上下左右の4つの方向に移動(方向操作)するとき操作される。ボタンスイッチ200は、リモートコマンダ5の上面に対して垂直方向に押下操作(セレクト操作)することができるようになされている。メニューボタンスイッチ134は、モニタ装置4にメニュー画面を表示させるとき操作される。イグジットボタンスイッチ135は、元の通常の画面に戻る場合などに操作される。
【0038】チャンネルアップダウンボタンスイッチ133は、受信する放送チャンネルの番号を、アップまたはダウンするとき操作される。ボリウムボタンスイッチ132は、ボリウムをアップまたはダウンさせるとき操作される。
【0039】0乃至9の数字が表示されている数字ボタン(テンキー)スイッチ138は、表示されている数字を入力するとき操作される。エンタボタンスイッチ137は、数字ボタンスイッチ138の操作が完了したとき、数字入力終了の意味で、それに続いて操作される。チャンネルを切り換えたとき、新たなチャンネルの番号、コールサイン(名称)、ロゴ、メイルアイコンからなるバーナ(banner)が、3秒間表示される。このバーナには、上述したものからなる簡単な構成のものと、これらの他に、さらに、プログラム(番組)の名称、放送開始時刻、現在時刻なども含む、より詳細な構成のものの2種類があり、ディスプレイボタン136は、この表示されるバーナの種類を切り換えるとき操作される。
【0040】テレビ/ビデオ切換ボタンスイッチ139は、モニタ装置4の入力を、テレビジョン受像機に内蔵されているチューナまたはビデオ入力端子からの入力(VCRなど)に切り換えるとき操作される。テレビ/DSS切換ボタンスイッチ140は、テレビモードまたはDSSモードを選択するとき操作される。数字ボタンスイッチ138を操作してチャンネルを切り換えると、切り換え前のチャンネルが記憶され、ジャンプボタンスイッチ141は、この切り換え前の元のチャンネルに戻るとき操作される。
【0041】ガイドボタンスイッチ143は、メニューを介さずに、直接、ゼネラルガイド(EPG)をモニタ装置4に表示させるとき操作される。
【0042】ケーブルボタンスイッチ145、テレビボタンスイッチ146およびDSSボタンスイッチ147はファンクション切り換え用、すなわち、リモートコマンダ5から出射される赤外線信号のコードの機器カテゴリを切り換えるためのボタンスイッチである。ケーブルボタンスイッチ145は、ケーブルを介して伝送される信号をケーブルボックス(図示せず)で受信し、これをモニタ装置4に表示させるとき操作され、これにより、ケーブルボックスに割り当てられた機器カテゴリのコードが赤外線信号として出射される。同様に、テレビボタンスイッチ146は、モニタ装置4に内蔵されているチューナにより受信した信号を表示させるとき操作される。DSSボタンスイッチ147は、衛星を介して受信した信号をIRD2で受信し、モニタ装置4に表示させるとき操作される。
【0043】これらのボタンスイッチの裏側にはLEDが配置され、それぞれケーブルボタンスイッチ145、テレビボタンスイッチ146またはDSSボタンスイッチ147がオンされたとき点灯される。これにより、各種ボタンが押されたときに、どのカテゴリの機器に対して、コードが送信されたのかが示される。
【0044】ケーブル電源ボタンスイッチ151、テレビ電源ボタンスイッチ152、DSS電源ボタンスイッチ153がそれぞれ操作されたとき、ケーブルボックス、モニタ装置4、またはIRD2の電源がオンまたはオフされる。
【0045】図6は、リモートコマンダ5の内部の構成例を表している。マイクロコンピュータ(以下マイコンと称する)71を構成するCPU72は、ボタンスイッチマトリックス82を常時スキャンして、図5に示したリモートコマンダ5の、ボタンスイッチ50の操作を検知する。CPU72は、ROM73に記憶されているプログラムにしたがって、各種の処理を実行し、適宜必要なデータをRAM74に記憶させる。
【0046】CPU72は、また赤外線信号を出力するとき、LEDドライバ75を介して、LED76を駆動し、赤外線信号を出力させる。
【0047】Direct Broadcast Satellite Systemの詳細は、日経BP社「日経エレクトロニクス」“米国情報スーパーハイウエーを支える技術”1994年10月24日発行第180頁乃至第189頁に、L.W.Butterworth,J.P.Godwin,D.Radbel氏により紹介されている。
【0048】図7は、このDirect Broadcast Satellite Systemのエンコーダで行われている送信データの生成手順を表している。EPGデーには、ガイド(Guide)データ、チャンネル(Channel)データおよびプログラム(Program)データがある。ガイドデータはプログラムガイド全体に関するデータであり、チャンネルデータはチャンネルに関するデータであり、プログラムデータはプログラム(番組)に関するデータである。その詳細については図10を参照して後述する。
【0049】これらのデータのうちのチャンネルデータとプログラムデータは、チャンネル毎に区分され、所定の数のチャンネルのデータがセグメントとしてまとめられる。図7の実施例においては、チャンネル1とチャンネル2のチャンネルデータおよびプログラムデータが、それぞれセグメント1のデータとされ、チャンネル3とチャンネル4のチャンネルデータおよびプログラムデータが、それぞれセグメント2のデータとされ、チャンネル5とチャンネル6のチャンネルデータおよびプログラムデータが、それぞれセグメント3のデータとされている。
【0050】そして、これらのチャンネルデータとプログラムデータは、所定のサイズのパケットに分割され、各パケットにはそれぞれヘッダが付加されて、このパケット単位でデータが伝送される。
【0051】送信側のエンコーダにおいては、図8に示すように、このようなチャンネルデータとプログラムデータだけでなく、ガイドデータ、ビデオデータ、オーディオデータもパケット化し、衛星に搭載されている12.2GHZ〜12.7GHZのBSS帯用高出力トランスポンダに対して伝送する。この場合、各トランスポンダに割り当てられている所定の周波数の信号に、複数(最大9個)のチャンネルのパケットを多重化して伝送する。すなわち、各トランスポンダは1つの搬送波で複数のチャンネルの信号を伝送することになる。したがって、例えばトランスポンダの数が23個あれば、最大207(=9×23)チャンネルのデータの伝送が可能となる。
【0052】IRD2においては、フロントエンド20で所定の1つのトランスポンダに対応する1つの周波数の搬送波を受信し、これを復調する。これにより最大9個のチャンネルのパケットデータが得られる。そして、デマルチプレクサ24は、この復調出力から得られる各パケットを、データバッファメモリ35に一旦記憶させて読み出す。EPGデータ(ガイドデータ、チャンネルデータおよびプログラムデータ)のパケットに関しては、ヘッダを除くデータ部分をEPGエリア35Aに記憶させる。ビデオパケットは、DRAM25aに供給、記憶され、MPEGビデオデコーダ25によりデコード処理される。オーディオパケットは、DRAM26aに供給、記憶され、MPEGオーディオデコーダ26によりデコード処理される。
【0053】図8のエンコーダにおける処理の詳細は、前述の日経エレクトロニクス“米国情報スーパーハイウエーを支える技術”の第180頁乃至第189頁に記載されているが、各トランスポンダにおいては、転送レートが同一になるようにスケジューリングを行う。各トランスポンダに割り当てられている1つの搬送波当りの伝送速度は、40Mbits/secである。
【0054】例えばスポーツ番組のように、動きの激しい画像の場合、MPEGビデオデータは、多くのパケットを占有する。このため、このようなプログラムが多くなると、1個のトランスポンダで伝送可能なプログラムの数は少なくなる。
【0055】これに対して、ニュース番組のアナウンスの場面などのように、動きの少ない画像のMPEGビデオデータは、少ないパケットで伝送することができる。このため、このようなプログラムが多い場合においては、1個のトランスポンダで伝送可能なプログラムの数は大きくなる。
【0056】図9は、DRAM25aの内部の使用状態を表している。いま、例えばモニタ装置4の画面を、720×480の画素で構成し、各画素について輝度を8ビットで表し、色差については2画素に1個の割合で8ビットで表すようにすると、1画面を構成するのに必要なビット数は4147200(=720×480×1.5×8)ビットとなる。1ワードを64ビットで構成するものとすると、この値は64800ワードとなり、これを16進数で表すと0xFD20ワードとなる。
【0057】DRAM25aを管理する、MPEGビデオデコーダ25におけるレジスタに設定することができる値としてはこの値は大きすぎるため、これを5ビットだけLSB側にシフトすると、0xFD20は、0x7EQとなる。またこのレジスタに設定する値は、4の倍数である必要があるところから、0x7EQの値をその値より大きく4の倍数に最も近い値にすると、0x7ECとなる。
【0058】したがって、この実施例においては、Iピクチャ、PピクチャおよびBピクチャの画像データの記憶のために、それぞれバッファメモリ0乃至バッファメモリ2が設けられ、それぞれの容量は64896ワードとされている。またOSDデータの記憶領域として、18176ワードの領域が確保され、入力されたデータを一時的に記憶するビットバッファメモリ領域として、49280ワードの領域が確保されている。
【0059】図10は、データバッファメモリ35のEPGエリア35Aに記憶されたEPGデータ(プログラムガイドデータ)の記憶状態を模式的に表している。CPU29は、図7と図8を参照して説明したように、送信側のエンコーダにおいてエンコードされ、パケット単位で伝送されてくるEPGデータを、EPGエリア35Aに図10に示すように記憶する。
【0060】同図に示すように、プログラムガイドデータ(Data of Program Guide)(EPGデータ)は、ガイドデータ、チャンネルデータおよびプログラムデータの順に、順次記憶されている。
【0061】このガイドデータには、現在の日付を表すDate、現在の時刻を表すTime、セグメントの総数を表すNumber of Segment、各セグメントの番号と、それに対応するトランスポンダの番号がリストとして記憶されているTransponder list、各セグメントの番号とそのセグメントの有しているチャンネルの先頭の番号のリストであるChannel Listが含まれている。
【0062】このようなガイドデータの次には、チャンネルデータがセグメント1、セグメント2、セグメント3・・・の順番に配置されている。各セグメントには、所定の数のチャンネルのデータが配置されている。この実施例においては、セグメント1にチャンネル1とチャンネル2のデータが、セグメント2にチャンネル3とチャンネル4のデータが、それぞれ配置されている。
【0063】各チャンネルのデータには、チャンネルの番号を表すChannel Number、放送局のコールサイン(名称)を表すChannel Name、放送局のLogo(ロゴ)を識別するためのLogo ID、MPEGビデオデータとMPEGオーディオデータを識別するData IDs、そのチャンネル(例えばチャンネル1)の有する番組(プログラム)数を表すNumber ofPrograms、所定のチャンネルの最初のプログラムデータの記憶されている場所(アドレス)(例えばチャンネル2の場合、その最初のプログラムデータProgram2−1が記憶されているアドレスまでの、プログラムセグメントの先頭(図10の場合、Program 1−1の先頭)からのオフセット値)を表すFirst Program’s Offsetが含まれている。
【0064】また、プログラムデータには、番組名を表すProgram Title、放送開始時刻を表すStart Time、プログラムの放送時間を表すTimeLength、プログラムのジャンル(カテゴリ)を表すCategory、そのジャンル(カテゴリ)のさらに細かい分類を表すSubcategory、プログラムの年齢制限を表すRating、プログラムの詳しい内容が格納されているProgram Description(例えば、ペイパービュー(Pay per Viewの暗号化されている番組のデータを復号する条件もここに含まれる)により構成されている。
【0065】このようなプログラムデータも、セグメント毎にまとめて配置されている。この実施例においては、セグメント1のプログラムデータはProgram1−1乃至Program1−8の8個のチャンネル1のデータと、Program2−1乃至Program2−7の7個のチャンネル2のデータとにより構成されている。
【0066】図11は、モニタ装置4にゼネラルガイドの画面を表示するまでのデータの処理を、模式的に表している。
【0067】CPU29は、デマルチプレクサ24に内蔵されているレジスタ24aに、フロントエンド20より入力されるデータの転送先を予め設定しておく。そしてフロントエンド20より供給されたデータは、データバッファメモリ35に一旦記憶された後、デマルチプレクサ24により読み出されれ、レジスタ24aに設定されている転送先に転送される。
【0068】例えば、データバッファメモリ35に記憶されたデータのうち、デマルチプレクサ24のレジスタ24aに記憶されているDATA ID of ‘MPEGVideo’と一致するヘッダを有するパケットのデータ部分のみが、MPEGビデオデコーダ25に転送される。また、レジスタ24aに記憶されているDATA ID of ‘MPEG Audio’と一致するヘッダを有するパケットのデータ部分が、MPEGオーディオデコーダ26に転送される。
【0069】同様に、レジスタ24aに記憶されているDATA ID of ‘Guide’と一致するヘッダを有するパケットのデータ部分は、レジスタ24aに記憶されているAddress of ‘Guide’で指定されるデータバッファメモリ35のEPGエリア35aに転送され、書き込まれる。このようにしてEPGエリア35Aには、EPGデータが図10に示すように記憶される。
【0070】なお、ヘッダはこの転送が完了したとき不要となるため、廃棄される。
【0071】このようにして、例えば120Kbyteの容量を有するEPGエリア35Aにその容量分のEPGデータが記憶されると、デマルチプレクサ24はCPU29に対して、フルアップステータス信号を出力する。CPU29は、この制御信号の入力を受けると、EPGデータの取り込みを中止し、その後、EPGを表示する時点で、圧縮されているEPGデータの伸長、ソート、デコード処理などの解読処理を実行する。
【0072】このようにして、例えば200チャンネル分の現在時刻から4.5時間後までのEPGデータをEPGエリア35Aに取り込むのであるが、このEPGデータ(ガイドデータ、チャンネルデータおよびプログラムデータ)は、どのトランスポンダからも受信することが可能とされている。すなわち、どのトランスポンダにおいても同一のEPGデータが伝送されてくる。
【0073】次にCPU29は、EPGエリア35Aに記憶されているEPGデータから所定のチャンネルのデータを検索するためのソートテーブル230を作成し、SRAM36に記憶させる。このソートテーブル230は、全てのチャンネル(例えば200チャンネル)の現在時刻から4.5時間後までの各番組を検索するための全EPGテーブル240に対応している。CPU29は、この全EPGテーブル240から所定の範囲の表示領域250のチャンネルの所定の範囲の時間のプログラム(番組)のデータをEPGエリア35Aから読み出し、DRAM25aのOSDエリア25aAに、ビットマップデータとして書き込ませる。そして、MPEGビデオデコーダ25が、OSDエリア25aAのビットマップデータを読み出して、モニタ装置4に出力することで、モニタ装置4に、ゼネラルガイドなどのガイドEPGを表示させることができる。
【0074】OSDデータとして文字などを表示する場合、EPGエリア35Aに記憶されている文字データは圧縮されているため、辞書を使って元に戻す処理を行う。このためROM37には、圧縮コード変換辞書が記憶されている。この圧縮コード変換辞書には音節の辞書と単語の辞書があり、音節の辞書は1つ、単語の辞書は3種類用意されている。
【0075】単語は2バイトのデータにより表され、最初の1バイトは、この3種類の単語の辞書の種類を表す数字とされ、0,1または2とされる。2バイトのデータのうち、残りの1バイトにより、0乃至255の順番に予め用意された単語が配列され、その番号で1つの単語が表されるようになされている。送信側のエンコーダは、所定の単語を伝送するとき、この2バイトのコードを伝送することで、その単語を伝送する。ROM37には、エンコーダ側において用意されているこの変換辞書と同一の辞書が用意され、この変換辞書を用いて2バイトのコードを元の単語に復元する。
【0076】また、予め用意された単語以外の文字を伝送する場合においては、予め用意された252種類の音節のうち、所定のものを組み合わせて1つの単語を伝送するようにする。この音節は、1バイトのコードで表される。
【0077】ROM37にはまた、文字コードとフォントのビットマップデータの格納位置との対応表(アドレス変換テーブル)が記憶されている。この変換テーブルを参照することで、所定の文字コードに対応するビットマップデータを読み出し、OSDエリア25aAに書き込むことができる。勿論ROM37には、このビットマップデータ自体も所定のアドレスに記憶されている。
【0078】さらにROM37には、Logoを表示するためのLogoデータが記憶されているとともに、Logo IDと、そのIDに対応するLogoデータ(ビットマップデータ)を呼び出すためのアドレスの変換テーブルが記憶されている。Logo IDが判ったとき、そのIDに対応するアドレスに記憶されているLogoデータを読み出し、OSDエリア25aAに書き込むことにより、各放送局のLogoなどをモニタ装置4に表示することができるようになされている。
【0079】なおSRAM36に記憶されるソートテーブルは、チャンネル番号順に用意されるのであるが、これをカテゴリなどを使って、特定のチャンネルあるいはプログラムを抽出したり、順序を入れ換える場合には、このソートテーブルを書き換えるようにする。ただし、このソートテーブルは後述するように、チャンネルデータとプログラムデータの位置情報(ポインタ)が格納されたテーブルであり、プログラムデータとチャンネルデータのポインタは組になっている。そこでこのプログラムデータとチャンネルデータを書き換える場合においては、組単位で書き換えることになる。
【0080】図12は、IRD2において、MPEGビデオデコーダ25や、MPEGオーディオデコーダ26などが、以上のような処理を実行する上において必要とされるクロックを生成するためのデジタルPLL回路の構成例を表している。デマルチプレクサ24より供給されたデータ(ビットストリーム)は、トランスポートIC301のSCR検出回路311と、SCRラッチ信号生成回路312に供給される。このビットストリーム中には、ビデオデータやオーディオデータをデコードするときの基準となる時刻基準値としてのSCR(System Clock Reference)が含まれている。すなわち、図8に示したエンコーダは、このSCRもエンコードして伝送する。
【0081】SCRは、MPEG1(ISO/IEC 11172)においては、複数のパケットにより構成されるパックのヘッダに配置され、MPEG2(ISO/IEC 13818)においては、MPEG2−PSではパックヘッダに、MPEG2−TSではトランスポートパケットに、それぞれ配置されるようになされている。
【0082】あるいはまた、図13のビットストリームに示すように、ビデオデータを収容するビデオパケットの前に、対応するビデオAUXパケットを配置し、そこにビデオ用のSCRを収容し、オーディオデータを収容するオーディオパケットの前に、対応するオーディオAUXパケットを配置し、そこにオーディオ用のSCRを収容するようにしてもよい。このビデオ用とオーディオ用のSCRは、通常同一の値となるが、両者は同期しているので異なる値となっていてもよい。
【0083】SCR検出回路311は、入力されたビットストリーム中に含まれるSCRを検出し(図13に示すように、ビデオ用とオーディオ用のSCRがある場合においては、その一方を検出し)、位相比較部321に出力する。SCRラッチ信号生成回路312は、ビットストリームからSCRを検出したとき、そのSCRの検出タイミングに同期したSCRラッチ信号を生成し、レジスタ313のクロック端子に供給する。
【0084】レジスタ313は、SCRラッチ信号生成回路312よりSCRラッチ信号が供給されたタイミングにおいて、カウンタ314が出力しているカウント値を保持し、これをSTC(System Time Clock)としてのLTIMEとして、位相比較部321に出力する。
【0085】CPU29により構成される位相比較部321は、SCR検出回路311の出力するSCRと、レジスタ313が出力するLTIMEとの位相を比較し、その位相誤差に対応するprecisePCを生成して、トランスポートIC301の位相比較出力部315に出力する。位相比較出力部315は、位相比較部321より供給されたprecisePCをD/A変換して、ローパスフィルタ322に出力するようになされている。
【0086】ローパスフィルタ322は、位相比較出力部315より供給されたアナログ信号を平滑し、電圧制御発振器(VCO:Voltage ControledOscillator)323に出力するようになされている。VCO323は、ローパスフィルタ322から供給される制御電圧に対応する位相の27MHzの周波数のクロックを生成し、このクロックをMPEGビデオデコーダ25、MPEGオーディオデコーダ26、NTSCエンコーダ27などに供給する。またこのクロックは、カウンタ314に供給され、カウントされるようになされている。以上のようにして図12に示す回路は、いわゆるデジタルPLL回路を構成している。
【0087】次に、図12に示す実施例の動作について説明する。SCR検出回路311は、ビットストリームに含まれるSCRを検出する。このSCRは、図8に示すエンコーダ側において、ビデオデータやオーディオデータなどをエンコードするときの基準となるクロックをカウントすることにより生成した値とされている。したがってこの値は、図14に示すように1番最初のタイミング(所定の基準のタイミング(0のタイミング))において、SCR(0)となり、タイミングm,nにおいてSCR(m),SCR(n)となる。SCR検出回路311は、このようなSCR(0),SCR(m),SCR(n)などを検出し、位相比較部321に出力する。
【0088】一方、カウンタ314がVCO323が出力するクロックをカウントする。SCRラッチ信号生成回路312は、ビットストリーム中にSCRを検出したとき、SCRラッチ信号を生成し、レジスタ313に出力する。その結果、レジスタ313には、ビットストリーム中にSCRが検出されたタイミングにおけるカウンタ314のカウント値がLTIMEとして保持される。したがって、このレジスタ313に保持されるLTIMEの値も、図14に示すように、時間の経過と共に変化する。すなわち、0の(所定の基準の)タイミングにおいては、LTIME(0)となり、mのタイミングにおいては、LTIME(m)となり、nのタイミングにおいては、LTIME(n)となる。
【0089】これらのLTIME(0),LTIME(m),LTIME(n)は、SCRとの位相誤差が存在しない場合においては、それぞれSCR(0),SCR(m),SCR(n)と同一の値となる。しかしながら実際には、それらの間には、位相誤差d(0)(=SCR(0)−LTIME(0)),d(m)(=SCR(m)−LTIME(m)),d(n)(=SCR(n)−LTIME(n))が存在することになる。
【0090】そこで位相比較部321は、SCRとLTIMEとの位相を比較し、その位相誤差precisePCを求める。位相比較出力部315は、位相比較部321が出力する位相誤差precisePCをD/A変換して位相誤差PCとし、ローパスフィルタ322を介して、VCO323に供給する。その結果、VCO323の発生するクロックの位相がSCRの位相と一致するように(位相誤差PCが0となるように)サーボがかかることになる。
【0091】次に図15を参照して、位相比較部321における位相比較処理についてさらに詳細に説明する。最初にステップS1においてCPU29は、そのタイミング(いまの場合nのタイミング)における、差分位相誤差D(n)の絶対値が、このPLL回路のドリフ1、許容値Aより大きいか否かを判定する。
【0092】すなわち、次式が成立するか否かを判定する。
|D(n)|>A・・・(1)
ここでD(n)は、次式で表される。
D(n)=d(n)−d(0)・・・(2)
また、図14を参照して説明したようにd(n)=SCR(n)−LTIME(n)・・・(3)
である。
【0093】ステップS1において、差分位相誤差D(n)の絶対値が、許容値Aより大きいと判定された場合、ステップS2に進み、現在のnのタイミングにおける位相誤差d(n)を、基準のタイミング(0のタイミング)における位相誤差d(0)に設定する。すなわち、差分位相誤差D(n)の絶対値が許容値Aを超えるほど大きい場合においては、PLL回路でこの誤差を吸収しようとしても時間がかかるため、目標とする位相誤差d(0)をリセットし、現在の位相誤差d(n)を設定するのである。そして、このときからあらためて位相誤差の制御を行うようにする。これにより、PLL回路をより迅速にロックさせることが可能となる。したがってステップS1において、差分位相誤差D(n)の絶対値が、許容値Aに等しいか、それより小さいと判定された場合においては、ステップS2の処理はスキップされる。
【0094】次にステップS3に進み、間隔intervalが、最小間隔Bより大きいか否かを判定する。すなわち次式を判定する。
【0095】interval>B・・・(4)
ここで、間隔intervalは次式で表される。
interval=SCR(n)−SCR(m)・・・(5)
このmのタイミングは、現在のnのタイミングの直前のSCRが検出されたときのタイミングを表している。
【0096】ステップS3において、間隔intervalが最低間隔Bより大きいと判定された場合、タイミングmからタイミングnまでの間に、調整すべき位相誤差が発生したことが考えられる。そこでこの場合においては、ステップS4に進み、次式を演算する。
Control_value=[D(n)+d(n)−d(m)]×K/(interval)
・・・(6)
precisePC=precisePC+Control_value・・・(7)
ここで係数Kは、定数である。
【0097】上記(6)式におけるD(n)は、Control_valueを、d(0)を中心に振動させる成分であり、(d(n)−d(m))は、Control_valueを、0に収束させる成分である。従来、このControl_valueを求めるのに、D(n)または(d(n)−d(m))のうちの一方のみを考慮していた。その結果、Control_valueの値を正確に設定することができず、ビデオデータやオーディオデータがDRAM25aまたは、DRAM26aにおいてオーバーフローしたり、アンダーフローするようなことがあった。本実施例においては、2つの成分を考慮してControl_valueを求め、この値を前回の位相誤差precisePCに加算して、今回の位相誤差precisePCを求めるようにしているため、正確な位相誤差を求めることができ、メモリにオーバーフローやアンダーフローが発生することを抑制することができる。
【0098】ステップS4において、以上のような演算が行われた後、ステップS5に進み、ステップS4で求めた詳細な位相誤差precisePCの絶対値が、上下の限界値Cより小さいか否かを判定する。すなわち次式を演算する。
|precisePC|<C・・・(8)
【0099】precisePCの絶対値が限界値Cと等しいか、それより大きいとステップS5において判定された場合においてはステップS6に進み、位相誤差precisePCの値をその限界値にクリップする。すなわちprecisePCの値が必要以上に大きな値になることを禁止する。これによりPLL回路で生成したクロックの位相が、必要以上に逆極性の位相に移動してしまい、その収束にかえって時間がかかるようになることが防止される。ステップS5において、precisePCの絶対値が限界値Cより小さいと判定された場合においては、ステップS6の処理はスキップされる。
【0100】次にステップS7に進み、ステップS4またはステップS6で設定した位相誤差precisePCの値を位相比較出力部315に出力し、アナログ信号に変換させる。
【0101】ステップS3において、間隔intervalが最低間隔Bと等しいか、それより小さいと判定された場合においては、直前のmのタイミングから現在のnのタイミングまで時間が経過したとしても、その間隔intervalが短いため、その間に調整を要するほど位相誤差がずれることは考えにくい。そこで、この場合においては特別な処理を実行せず、前のタイミングにおける位相誤差PCをそのまま出力する。
【0102】以上の実施例においては、本発明をIRD2に応用した場合を例として説明したが、このIRDは、実質的にモニタ装置4(テレビジョン受像機)に内蔵させることも可能である。また、本発明は、IRD2の他、デジタル信号をクロックに同期して処理するその他のデジタルデータ処理装置に応用することが可能である。
【0103】
【発明の効果】以上の如く請求項1に記載のデジタルデータ処理装置および請求項7に記載のデジタルデータ処理方法によれば、差分位相誤差の許容差分位相誤差との比較結果に対応して基準位相誤差をそのときの位相誤差に設定するようにしたので、クロックを迅速に生成することが可能となる。
【0104】また請求項6に記載のデジタルデータ処理装置および請求項8に記載のデジタルデータ処理方法によれば、差分位相誤差、そのときの位相誤差、および直前の位相誤差の和に、所定の係数を乗算すると共に、間隔で除算した制御値を演算し、制御値をそのときの制御信号に加算して新たな制御信号とするようにしたので、位相誤差が少ないクロックを生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を応用したAVシステムの構成例を示す斜視図である。
【図2】図1のAVシステムの電気的接続状態を示すブロック図である。
【図3】図1のIRD2の正面の構成例を示す正面図である。
【図4】図1のIRD2の内部の構成例を示すブロック図である。
【図5】図1のリモートコマンダ5の上面の構成例を示す平面図である。
【図6】図5のリモートコマンダ5の内部の構成例を示すブロック図である。
【図7】チャンネルデータとプログラムデータのセグメント化を説明する図である。
【図8】送信側のエンコーダにおける処理とその出力を受信するIRD2の処理を示す図である。
【図9】図4のDRAM25aの記憶領域の区分を説明する図である。
【図10】図4のEPGエリア35Aに記憶されるEPGデータを説明する図である。
【図11】デマルチプレクサの動作を説明する図である。
【図12】クロックを生成するデジタルPLL回路の構成例を示すブロック図である。
【図13】SCRを伝送するビットストリームを証明する図である。
【図14】図12の実施例の動作を説明するタイミングチャートである。
【図15】図12の実施例の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1 AVシステム
2 IRD
3 パラボラアンテナ
4 モニタ装置
4A CRT
5 リモートコマンダ
21 チューナ
23 エラー訂正回路
24 デマルチプレクサ
25 MPEGビデオデコーダ
25a DRAM
26 MPEGオーディオデコーダ
26a DRAM
29 CPU
35 データバッファメモリ
35A EPGエリア
36 SRAM
37 ROM
38 EEPROM
39 IR受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 デジタルデータを処理する基準となるクロックを生成するための時刻基準値を検出する検出手段と、所定の制御信号に対応して前記クロックを生成する生成手段と、前記生成手段が生成する前記クロックを計数する計数手段と、前記検出手段により前記時刻基準値が検出されたタイミングにおける前記計数手段の計数値を取得する取得手段と、前記生成手段を制御する前記制御信号を生成するために、前記検出手段により検出された前記時刻基準値と、前記取得手段により取得された前記計数値との位相を比較する比較手段と、を備えるデジタルデータ処理装置において、前記比較手段は、前記時刻基準値と計数値との差としての位相誤差と、所定の基準のタイミングにおける前記時刻基準値と計数値との差としての基準位相誤差との差としての差分位相誤差を、所定の許容差分位相誤差と比較する許容差分位相誤差比較手段と、前記許容差分位相誤差比較手段の比較結果に対応して、前記基準位相誤差をリセットし、そのときの前記位相誤差に設定するリセット手段とを備えることを特徴とするデジタルデータ処理装置。
【請求項2】 前記比較手段は、前記差分位相誤差、そのときの前記位相誤差、およびそのときの直前の前記位相誤差の和に、所定の係数を乗算するとともに、そのときの前記位相誤差とそのときの直前の前記位相誤差との差としての間隔で除算した制御値を演算する演算手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のデジタルデータ処理装置。
【請求項3】 前記演算手段は、前記制御値をそのときの前記制御信号に加算して新たな前記制御信号とすることを特徴とする請求項2に記載のデジタルデータ処理装置。
【請求項4】 前記制御値を加算して得られた前記制御信号が所定の制限値より大きいとき、前記制御信号の値を前記制限値に制限する制限手段をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のデジタルデータ処理装置。
【請求項5】 伝送されてきた前記デジタルデータを前記生成手段により生成された前記クロックを用いてデコードするデコード手段をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のデジタルデータ処理装置。
【請求項6】 デジタルデータを処理する基準となるクロックを生成するための時刻基準値を検出する検出手段と、所定の制御信号に対応して前記クロックを生成する生成手段と、前記生成手段が生成する前記クロックを計数する計数手段と、前記検出手段により前記時刻基準値が検出されたタイミングにおける前記計数手段の計数値を取得する取得手段と、前記生成手段を制御する前記制御信号を生成するために、前記検出手段により検出された前記時刻基準値と、前記取得手段により取得された前記計数値との位相を比較する比較手段と、を備えるデジタルデータ処理装置において、前記比較手段は、前記時刻基準値と計数値との差としての位相誤差と所定の基準のタイミングにおける前記時刻基準値と計数値との差としての基準位相誤差との差としての差分位相誤差、そのときの前記位相誤差、およびそのときの直前の前記位相誤差の和に、所定の係数を乗算するとともに、そのときの前記位相誤差とそのときの直前の前記位相誤差との差としての間隔で除算した制御値を演算し、前記制御値をそのときの前記制御信号に加算して新たな前記制御信号とすることを特徴とするデジタルデータ処理装置。
【請求項7】 デジタルデータを処理する基準となるクロックを生成するための時刻基準値を検出し、所定の制御信号に対応して前記クロックを生成し、生成した前記クロックを計数し、前記時刻基準値が検出されたタイミングにおける前記クロックの計数値を取得し、検出された前記時刻基準値と、取得された前記計数値との位相を比較し、その位相誤差に対応して前記制御信号を生成するデジタルデータ処理方法において、前記時刻基準値と計数値との差としての位相誤差と、所定の基準のタイミングにおける前記時刻基準値と計数値との差としての基準位相誤差との差としての差分位相誤差を、所定の許容差分位相誤差と比較し、前記差分位相誤差が前記許容差分位相誤差より大きいとき、前記基準位相誤差をリセットし、そのときの前記位相誤差に設定することを特徴とするデジタルデータ処理方法。
【請求項8】 デジタルデータを処理する基準となるクロックを生成するための時刻基準値を検出し、所定の制御信号に対応して前記クロックを生成し、生成した前記クロックを計数し、前記時刻基準値が検出されたタイミングにおける前記クロックの計数値を取得し、検出された前記時刻基準値と、取得された前記計数値との位相を比較し、その位相誤差に対応して前記制御信号を生成するデジタルデータ処理方法において、前記時刻基準値と計数値との差としての位相誤差と所定の基準のタイミングにおける前記時刻基準値と計数値との差としての基準位相誤差との差としての差分位相誤差、そのときの前記位相誤差、およびそのときの直前の前記位相誤差の和に、所定の係数を乗算するとともに、そのときの前記位相誤差とそのときの直前の前記位相誤差との差としての間隔で除算した制御値を演算し、前記制御値をそのときの前記制御信号に加算して新たな前記制御信号とすることを特徴とするデジタルデータ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【特許番号】特許第3400166号(P3400166)
【登録日】平成15年2月21日(2003.2.21)
【発行日】平成15年4月28日(2003.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−26397
【出願日】平成7年2月15日(1995.2.15)
【公開番号】特開平8−223034
【公開日】平成8年8月30日(1996.8.30)
【審査請求日】平成13年2月21日(2001.2.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【参考文献】
【文献】特開 平8−46605(JP,A)
【文献】特開 平8−149428(JP,A)
【文献】特開 平8−212701(JP,A)
【文献】特開 平3−243034(JP,A)