説明

デジタル人体モデルの特徴データ構造

【課題】本発明は、デジタル人体モデルを用いて、人体の幾何学的形状の特徴を完全に記録し得る、デジタル人体モデルの特徴データ構造を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のデジタル人体モデルの特徴データ構造は、人体の外観特徴を描写するのに用いられて、複数の個体の人体上の特徴点、複数の前記特徴点を通過する囲線及び各囲線上のうちの対応する特徴点をつないだ複数の経線を含む。このうち、例えば前記人体の腕部分の前記囲線は、腕付け根囲、肘囲及び手首囲を含む。このうち、腕付け根囲は、肩先点、腋窩前点及び腋窩後点を通過し、肘囲は、肘前凹点及び肘後凸点を通過し、手首囲は、手部分と前腕部の太さの変化が最も大きい箇所を指す。また、本発明は、腿部、手部、足部の特徴データ構造も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル人体モデルの特徴データ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の価値がますます重視される時代において、商品や環境の設計も人を主体にすることが強調され、人間工学や服装設計に必ず必要とされる人体計測は重要な鍵となっている。人体計測学は人間工学において重要な研究課題であり、人体計測データは、人間工学における各種設計の際、最も基本的であると同時に最も重要なデータである。これまで、台湾では、国民の人体計測データが不足しており、ほとんどが外国の計測データをやむを得ず使用していたが、その数値には体型やスタイル比率の差異が含まれていた。このため、自国国民の体型を計測したデータベースの構築が急がれていた。
【0003】
人体計測は、重要且つ煩雑な作業である。客観的且つ精確なデータがあってこそ、規格に合った使いやすい製品が生み出される。計測データは、製品、作業環境、手工具設計等にとって、いずれも大きな参考となる価値ある資料である。服装設計において、個人の体型に適合する服装を設計する際、顧客の3D模型を利用してバーチャル試着(Virtual try-on)を行い、誂えた服装が顧客の体型に合うかどうかを確認することで、補正の要否を決めることができる。また、人間工学の応用場面において、デザイナーが、関連する人体のサイズと製品との間の相互関係を充分に考慮して初めて、使用者がその製品を使用したときに、安全で着心地及び効率のよい効果が得られる。医療面においても、計測後のデータ結果を通して統計分析方法の選択に寄与することができる。例えば、糖尿項目を検査する際には、例えば、左右の大腿囲と腰臀部切断面の面積比を体型因子として考慮することができる。
【0004】
3D人体スキャナー技術の進歩は、大量に人体サイズを収集することを可能にした。しかしながら、初期のスキャニング結果は、膨大且つ無構造なポイントクラウド(点群)であり、人体の特徴認識と計測は、依然として人の手によって行われ、人体サイズが点データに取って代わっただけである。このような計測後の結果は、人の主観の影響を受け、且つ、データ再現性も高くない。このため、効果的に3D人体スキャナーの効果が利用できれば、スピーディーで精確且つ客観的な人体自動計測システムの開発が可能となる。
【0005】
したがって、人体計測において、人体特徴点及び特徴線に基づき、デジタル人体モデルの特徴データ構造が構築されて、人間工学に応用されることが必要である。このうち、人体の胴体部分の特徴データ構造は、本発明の発明者が数年の時間を費やして完成させ、すでに特許出願を行い、下記の台湾特許第571592号及び米国特許第7218752号といった特許を取得している。しかしながら、人体の腕部、手部、腿部及び足部については、その特徴データ構造が欠如しているため、本発明者は、研究を重ねて、人体の特徴データ構造を構築させ、人間工学及び人体計測に貢献できるよう希望し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】台湾特許第571592号公報
【特許文献2】米国特許第7218752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、デジタル人体モデルを用いて、人体の幾何学的形状の特徴を完全に記録し得る、デジタル人体モデルの特徴データ構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のデジタル人体モデルの特徴データ構造は、デジタル人体モデルを用いて完全に人体の幾何学的形状の特徴を記録することを特徴とする。
【0009】
すなわち、本発明のデジタル人体モデルの特徴データ構造は、人体の外観特徴を描写するのに用いられて、複数の個体の人体上の特徴点、複数の前記特徴点を通過する囲線及び各前記囲線上のうちの対応する特徴点をつないだ複数の経線を含むことを特徴とするものである。このうち、前記人体の腕部分の前記囲線は、腕付け根囲(Arm hole girth)、肘囲(elbow girth)及び手首囲(Palm base girth)を含む。このうち、前記腕付け根囲は、肩先点、前腋窩点(Front arm pit)及び後腋窩点(Rear arm pit)を通過し、前記肘囲は、肘前凹点及び肘後凸点を通過し、前記手首囲は、手部分と前腕部の太さの変化が最も大きい箇所を指す。
【0010】
一実施例において、前記腕部分のその他の囲線は、前記腕付け根囲、肘囲及び前腕最小囲に基づき、内挿法によって得るようにする。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のデジタル人体モデルの特徴データ構造は、人体の外観特徴を描写するのに用いられて、複数の個体の人体上の特徴点、複数の前記特徴点を通過する囲線及び各前記囲線上のうちの特徴点をつないだ複数の経線を含むことを特徴とするものである。このうち、前記人体の腿部の前記囲線は、足付け根囲(Crotch girth)、大腿囲(Thigh girth)、膝囲(Knee girth)及び下腿最小囲(Minimum shank girth)を含む。このうち、前記大腿囲は大腿の周囲長最大箇所を指し、前記膝囲は膝点を通過し、前記下腿最小囲は下腿の周囲長最小箇所を指す。なお、前記人体の「腿部」は、大腿部と下腿部を含むものである。
【0012】
本発明の実施例において、前記腿部のその他の囲線は、前記大腿囲、膝囲及び下腿最小囲に基づき、内挿法によって得るようにする。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のデジタル人体モデルの特徴データ構造は、人体の外観特徴を描写するのに用いられて、複数の個体の人体上の特徴点、複数の前記特徴点を通過する囲線を含むことを特徴とするものである。このうち、前記人体の手部分の前記囲線は、手首囲(Palm base girth)、指付け根囲(Finger base girth)及び指先囲(Finger tip girth)を含む。このうち、前記手首囲は、手部分と前腕部の太さの変化が最も大きい箇所(すなわち、前腕部軸方向に沿った切断面の面積変化が最も大きい箇所)を指し、前記指付け根囲は、五本の指を揃えてやや曲げた時の指の付け根の周囲長が最大の箇所を指し、前記指先囲は、五本の指を揃えてやや曲げた時の指先の周囲長が最小の箇所を指す。
【0014】
本発明の実施例において、前記手部のその他の囲線は、前記手首囲、指付け根囲及び指先囲に基づき、内挿法によって得るようにする。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明のデジタル人体モデルの特徴データ構造は、人体の外観特徴を描写するのに用いられて、複数の個体の人体上の特徴点、複数の前記特徴点を通過する囲線を含むことを特徴とするものである。このうち、前記人体の足部の前記囲線は、足首囲(Ankle girth)、ヒール囲(Heel girth)及びフットプリント囲(Foot print girth)を含む。このうち、前記足首囲は内踝点と外踝点を通過し、前記ヒール囲は足後部踵の突出点を通過する水平囲線で、前記フットプリント囲は五本の足指を揃えた時地面に接触する部分の囲線である。なお、前記人体の「足部」は、足先から足首までを含むものである。
【0016】
本発明の実施例において、前記足部のその他の囲線は、足首囲、ヒール囲及びフットプリント囲に基づき、内挿法によって得るようにする。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明のデジタル人体モデルの特徴データ構造は、人体の外観特徴を描写するのに用いられて、複数の個体の人体上の特徴点、複数の前記特徴点を通過する囲線、及び、各前記囲線上のうちの特徴点をつないだ複数の経線を含むことを特徴とするものである。このうち、前記人体の手部分の前記囲線は、手首囲、親指下囲(Lower thumb base girth)、親指上囲(Upper thumb base girth)及び指付け根囲(Finger base girth)を含む。このうち、前記手首囲は手部分と前腕部の太さの変化が最も大きい箇所を指し、前記親指下囲は親指の付け根下方を通過する横断面の手囲であり、前記親指上囲は親指付け根上方を通過する横断面の手囲であり、前記指付け根囲はその他の四指をやや伸ばし気味にして指が分かれる箇所である。
【0018】
本発明の実施例において、前記手部分は、掌部と手指部に分けられ、前記掌部のその他の囲線は、前記手首囲、親指下囲、親指上囲及び指付け根囲に基づき、内挿法によって得るようにする。
【0019】
本発明の実施例において、前記手部分は、掌部と手指部に分けられ、前記手指部は、親指とその他の四指に別れて、親指は5本の囲線を有し、このうち、前4囲はそれぞれ8つの特徴点を有し、末囲は指先の1つの特徴点のみを有して、前記手指部のその他の手指は、7本の囲線を有し、前6囲はそれぞれ8つの特徴点を有し、末囲は指先の1つの特徴点のみを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のデジタル人体モデルの特徴データ構造は、三D人体スキャニングしたノーフォーマット式のポイントクラウド(point cloud)データを、構造化データに整理することで、最も簡単な構造で、人体の幾何学的形状を忠実に描写して、大量の人体データを簡素化することができる。本発明で開示する経線と囲線は、いずれも人体上に設定した特徴点を通過するように分布していて、地球の経度と緯度に類似するが、固定した角度分布ではない。また、本発明の経線、囲線はいずれも人体特徴に基づいており、全ての人間工学が必要とする特徴点及び特徴線が全てその中に含まれていて、例えば、医療工学、人体計測、服裝製造等の分野に応用されることが可能である。当然、全ての関節位置及び運動学パラメーターもまた、経線、囲線が通過する構造点の座標位置によって定義できる。
【0021】
また、本発明のシンプルな特徴データ構造は、保存、読み取り、操作、処理、表示が便利で、迅速にインターネットで転送ができる。さらに、随時必要な部分のデータが取り出せて、人が装着して使用する製品に関する設計ができる。したがって、全世界で先進的且つ標準化された方法で人体を測定することが可能である。この方法によって、世界各国で容易に人体計測データベースを構築させることが期待できる。今後各国の人体のサイズの収集や統計が行われて、人間工学、軍事、医学的学術研究及びアニメ娯楽の推進や人体用品に関するビジネスにとって、大きな助けとなると予想される。したがって、このデジタル人体モデルの特徴データ構造を世界のスタンダードとして広めることができると期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の腕部分を示した図である。
【図2】本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の腕部分における腕付け根囲を示した図である。
【図3】本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の腿部から足部までの正面図及び側面図である。
【図4】本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の手部分を示した図である。
【図5】本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の足部の透視図である。
【図6】本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の手部分を示した図である。
【図7】本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の手首囲を示した図である。
【図8】本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の手部分の親指下囲を示した図である。
【図9】本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の手部分の親指上囲を示した図である。
【図10】本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の手部分の親指を示した図である。
【図11】本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の手部分の親指以外の指を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図を参照しながら、本発明の好適なデジタル人体モデルの特徴データ構造について説明する。
【0024】
図1は、本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の腕部分を示した図である。
【0025】
特徴データ構造は、人体の外観を描写するのに用いられて、複数の個体の人体上の特徴点(例えば、図1中の黒い点で示す。このうち、例えば、腕部分の肩先点、前後の腋窩点、肘後凸点等を含む)、それら複数の特徴点を通過する囲線及び各囲線上のうちの対応する特徴点をつないだ複数の経線を含む。
【0026】
ここで、囲線は、腕部分の一横断面方向に平行の場合を例とする。このうち、前記腕部分の囲線は、腕付け根囲(Arm hole girth)、肘囲(elbow girth)及び手首囲(Palm base girth)を含む。このうち、腕付け根囲の平面図は、図2に示したとおりである。それは、肩先点、前腋窩点(Front arm pit)及び後腋窩点(Rear arm pit)を通過する。このうち、肩先点は、服装設計と人体計測においてよく用いられる定義であるため、ここでは詳述しない。従来の定義では、腋窩点のみを用いたが、三次元計測装置では、腋窩点をスキャニングするのは容易ではないため、本発明では特に腋窩点を前腋窩点と後腋窩点にまで拡大した。前腋窩点は、人体前方から人体正面に向って見たときに見える腋窩点で、後腋窩点は、人体後方から人体背面に向って見たときに見える腋窩点である。
【0027】
肘囲は、図1に示すように、肘前凹点及び肘後凸点を通過する。肘前凹点は、腕をやや曲げた時、肘の前方の最もくぼむ箇所を指す。肘後凸点は、腕をやや曲げた時、肘後方の最も突出する箇所を指す。手首囲は、手部分と前腕部の太さの変化が最も大きい箇所を指す。一般に、人体の腕部分は、上から下の方向に沿って腕囲は徐々に小さくなっていて、手部分に移行する箇所で再び大きくなる。手首囲とは、周囲長が小さいものから大きいものに変わる箇所を指す。腕部分のその他の囲線は、腕付け根囲、肘囲及び前腕部最小囲に基づき、内挿法によって得ることができる。各経線は、各囲線上のうちの特徴点をつないだものから形成される。
【0028】
本実施例において、腕部分の特徴データ構造は、全部で20本の経線を有し、また、どの経線も20の特徴点を有するように構成される。そして、各経線上の対応する同一点によって、一つの「囲(girth)」が構成される。例えば、各経線の第19点をつなぐことによって一つの「囲(girth)」が構成されるため、腕部分は20の「囲(girth)」を有することになる。したがって、もし腕付け根囲を計算に入れなければ、腕部分の特徴データ構造の特徴点は合計400点あることになる。
【0029】
図3は、本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の腿部及び足部を示した図であり、その正面図及び側面図を併記してある。
【0030】
特徴データ構造は、人体の外観特徴を描写するのに用いられて、複数の個体の人体上の特徴点、複数の前記特徴点を通過する囲線及び各前記囲線上のうちの特徴点をつないだ複数の経線を含む。
【0031】
ここで、人体の腿部の前記囲線は、足付け根囲(Crotch girth)A、大腿囲(Thigh girth)B、膝囲(Knee girth)D及び下腿最小囲(Minimum shank girth)Gを含む。このうち、大腿囲Bは大腿の周囲長最大箇所を指す。膝囲Dは膝点を通過する水平囲線で、膝点は人体前方から人体正面を見た時の膝頭の突出点を指す。下腿最小囲Gは下腿の周囲長最小箇所を指す。また、腿部のその他の囲線は、大腿囲、膝囲及び下腿最小囲に基づき、内挿法によって得る。
【0032】
本実施例において、腿部の囲線はさらに、膝上囲C、膝下囲E、下腿最大囲Fを含む。この三つの「囲(girth)」は、内挿ではなく、その構造上の意義を有する。一般に、下腿部分は、上から下に周囲長が徐々に大きくなり、再び小さくなる。下腿最大囲Fは、すなわち、周囲長が増加から減少に変わる箇所を指す。膝上囲C、膝下囲Eは、人体が直立した時、膝頭の骨の上縁と下縁における水平囲線である。
【0033】
本実施例において、腿部の特徴データ構造は25本の囲線の場合を例とする。どの「囲(girth)」も38の特徴点を有し、全部で950点ある。
【0034】
図4は、本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の手部分を示した図である。
【0035】
特徴データ構造は、人体の外観特徴を描写するのに用いられて、複数の個体の人体上の特徴点、複数の前記特徴点を通過する囲線を含む。
【0036】
ここで、人体の簡素化された手部分(例えば、手の指を揃えた状態)の前記囲線は、手首囲(Palm base girth)、指付け根囲(Finger base girth)及び指先囲(Finger tip girth)を含む。このうち、手首囲は、手部分と前腕部の太さの変化が最も大きい箇所を指し、指付け根囲は、五本の指を揃えてやや曲げた時の手部分全体の四本の指の付け根部分の周囲長が最大の箇所を指し、この指の付け根囲は、横に親指を横切るが、親指の付け根部分を通過しない。指先囲は、五本の指を揃えてやや曲げた時の指先の周囲長が最小の箇所を指す。指先囲は、中指に近い指先箇所である。また、手部分のその他の囲線は、手首囲、指の付け根囲及び指先囲に基づき、内挿法によって得る。
【0037】
本実施例において、手部分の特徴データ構造は、7本の囲線の場合を例とする。このうち、最後の一「囲(girth)」(指先囲)は1つの特徴点しかない。その他の6本の囲線はそれぞれ20の特徴点を有し、したがって片手の手部分は合計121の特徴点を有する。すなわち、一対の手部分の特徴点は242点ということになる。
【0038】
図5は、本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の足部の透視図である。また、腿部及び足部の特徴データ構造は図3に示した。
【0039】
特徴データ構造は、人体の外観特徴を描写するのに用いられて、複数の個体の人体上の特徴点及び複数の前記特徴点を通過する囲線を含む。
【0040】
ここで、前記人体の足部の前記囲線は、足首囲(Ankle girth)H、ヒール囲(Heel girth)I及びフットプリント囲(Foot print girth)Jを含む。このうち、足首囲は内踝点と外踝点を通過し、踝部の上側から下側の方向に周囲長が徐々に大きくなり再び小さくなる。足首囲は、すなわち、周囲長が大きいものから小さいものに変化する箇所を指す。内踝点は、人体内側に向う踝点を指し、外踝点は、人体外側に向う踝点を指す。ヒール囲は足後部踵の突出点を通過する水平囲線で、この足後部踵については製靴業と人体計測面ですでに定義されているため、ここでは詳述しない。フットプリント囲は五本の足指を揃えた時の地面に接触する部分の囲線である。また、足部のその他の囲線は、足首囲、ヒール囲及びフットプリント囲に基づき、内挿法によって得る。
【0041】
本実施例において、足部の特徴データ構造は、6本の囲線の場合を例とする。このうち、足首囲及びヒール囲の間には、2つの「囲(girth)」が内挿され、ヒール囲とフットプリント囲の間には、「囲(girth)」が1つ内挿されて足指付け根囲となる。どの「囲(girth)」もそれぞれ38の特徴点を有し、合計228点ある。一対の足部の特徴点は、すなわち456点ということになる。足部の特徴データ構造は、人体計測を靴や靴下製造業に応用できる。
【0042】
図6は、本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の手部分を示した図である。図4に示した手部分の特徴データ構造は簡易版と見なされ、図6に示した手部分の特徴データ構造は精密版と見なされる。
【0043】
特徴データ構造は、人体の外観を描写するのに用いられて、複数の個体の人体上の特徴点(例えば、図中の大きな黒点)、複数の前記特徴点を通過する囲線及び各囲線上のうちの特徴点をつないだ複数の経線を含む。
【0044】
ここで、人体の精密な手部分(例えば、図6の如く手指を開いた状態)の前記囲線は、手首囲(Palm base girth)、親指下囲(Lower thumb base girth)、親指上囲(Upper thumb base girth)及び指付け根囲(Finger base girth)を含む。このうち、手首囲は手部分と前腕部の太さの変化が最も大きい箇所を指し、親指下囲は親指の付け根下方を通過する横断面の手囲であり、親指上囲は親指付け根上方の手囲であり、指付け根囲はその他の四指をやや伸ばし気味にして指が分かれる箇所の囲線である。また、手部のその他の部分の囲線は、手首囲、親指下囲、親指上囲及び指付け根囲に基づき、内挿法によって得る。
【0045】
本実施例において、手部分は、掌部と手指部に分かれる。掌部は、6本の囲線の場合を例とする。このうち、手首囲から親指下囲の間には1つの「囲(girth)」が内挿される。親指上囲から指付け根囲の間には1つ「囲(girth)」が存在するが、この「囲(girth)」は、内挿によるものではなく、四本の指の根元の関節の突出点を結んで得たものである。前3囲(手首囲、親指下囲及び両者間に内挿された1つの「囲(girth)」)は20の特徴点を有し、後3囲は16の特徴点を有する。
【0046】
また、手指部分は、親指とその他の四指である。図10に示したように、手指部の親指は、5本の囲線の場合を例とし、前4囲は、それぞれ8つの特徴点を有し、末囲は1つの特徴点を有する。このうち、親指の第3囲は、指骨関節(Interphalangeal, IP)を通過し、親指の第5囲は指先(Finger tip)を通過する。手指部のその他の指は、図11に示す如く、7本の囲線の場合を例とする。前6囲はそれぞれ8つの特徴点を有し、指先にある末囲は1つの特徴点を有する。このため、いずれの手指の経線も、最後は全て指先に集中する。図11は、このうちの一つの手指の囲線を表示したものであり、このうち、第1囲は指付け根囲(Finger base girth)を、第2囲は基節骨(Proximal phalanx)を通過する囲線を、第3囲は近位指節間関節(Proximal interphalangeal, PIP)平面を通過する囲線を、第4囲は中節骨(middle phalanx)を通過する囲線を、第5囲は遠位指節間関節(Distal interphalangeal, DIP)平面を通過する囲線を、第6囲は末節骨(distal phalanx)を通過する囲線を、第7囲は指先(Finger tip)を通過する末囲を、それぞれ意味する。このうち、第1、3、5、7囲は、それぞれ手指の自然特徴、例えば、指根、PIP関節、DIP関節、及び指先の位置を通過し、第2、4、6囲は、それら各囲の前後の囲の間への内挿により得られる。図式において示された内挿囲の角度はただ例を挙げたに過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0047】
また、図7は、本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の手首囲の横断面図を示したものである。図7は、左手の手首囲の20個の特徴点を示したものである。これらの特徴点は、それぞれ属する経線は異なるが、属する囲線は同一である。このうち、主な特徴点(1、6、11、16)の意義は、表1に示したとおりである(このうち、一つめのアルファベットL、Rは、それぞれ左右の手を、二つめのアルファベットWは、腕(wrist)を、三つめのアルファベットL、T、M、Pは、それぞれ外側(Lateral)、親指側(Thumb)、内側(Medial)、小指側(Pinky))を意味する。
【0048】
【表1】

【0049】
図8は、本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の手部分の親指下囲を示したものである。図8は、左手の親指下囲の20個の特徴点を示し、これらの特徴点は、それぞれ属する経線は異なるが、属する囲線は同一である。このうち、主な特徴点(1、6、11、16)の意義は、表2に示したとおりである(このうち、一つめのアルファベットL、Rは、それぞれ左右の手を、二つめのアルファベットP、Fは、それぞれ後端(Palm base side)及び前端(Finger side)を、三つめのアルファベットL、T、M、Pは、それぞれ外側(Lateral)、親指側(Thumb)、内側(Medial)、及び小指側(Pinky))を意味する。図9は、本発明の好適な実施例におけるデジタル人体モデルの特徴データ構造の手の親指上囲を示したものである。図9は、左手の親指上囲の16個の特徴点(このうち、第5点から第8点は該当なしである。その原因は、親指上囲は親指を経ないからであり、したがって、4点少なくなっている)を表示しており、これらの特徴点は、それぞれ属する経線は異なるが、属する囲線は同一である。このうち、主な特徴点(1、4、11、16)の意義は、表2に示したとおりである。
【0050】
【表2】

【0051】
このように、本発明のデジタル人体モデルの特徴データ構造は、三D人体スキャニングしたノーフォーマット式のポイントクラウド(point cloud)データを、構造化データに整理することで、最も簡単な構造で、人体の幾何学的形状を忠実に描写して、大量の人体データを簡素化することができる。本発明で開示する経線と囲線は、いずれも人体上に設定した特徴点を通過するように分布していて、地球の経緯度に類似するが、固定した角度分布ではない。また、本発明の経線、囲線はいずれも人体特徴に基づいており、全ての人間工学が必要とする特徴点及び特徴線が全てその中に含まれていて、例えば、医療工学、人体計測、服裝製造等の分野に応用されることが可能である。当然、全ての関節位置及び運動学パラメーターもまた、経線、囲線が通過する構造点の座標位置によって定義できる。
【0052】
また、本発明のシンプルな特徴データ構造は、保存、読み取り、操作、処理、表示が便利で、迅速にインターネットで転送ができる。さらに、随時必要な部分のデータが取り出せて、人が装着して使用する製品に関する設計ができる。したがって、全世界で先進的且つ標準化された方法で人体を測定することが可能である。この方法によって、世界各国で容易に人体計測データベースを構築させることが期待できる。今後各国の人体のサイズの収集や統計が行われて、人間工学、軍事、医学的学術研究及びアニメ娯楽の推進や人体用品に関するビジネスにとって、大きな助けになると予想される。したがって、このデジタル人体モデルの特徴データ構造を、世界のスタンダードとして広めることができる。
【0053】
以上、本発明の実施例を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更などがあっても、本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は以上の如く構成したので、本発明によるときは、デジタル人体モデルを用いて完全に人体の幾何学的形状の特徴を記録することができる、デジタル人体モデルの特徴データ構造を提供し得るものである。
【符号の説明】
【0055】
A 足付け根囲
B 大腿囲
C 膝上囲
D 膝囲
E 膝下囲
F 下腿最大囲
G 下腿最小囲
H 足首囲
I ヒール囲
J フットプリント囲
LWL 手の甲、手と手首の接合箇所の中間位置
LWT 手の親指に近い部分の側辺、手と手首の接合箇所
LWM 掌、手と手首の接合箇所の中間位置
LWP 手の小指に近い部分の側辺、手と手首の接合箇所
LPL 親指下囲、手の甲の中間位置
LPT 親指下囲、手の親指に近い部分の側辺
LPM 親指下囲、掌の中間箇所
LPP 親指下囲、手の小指に近い部分の側辺
LFL 親指上囲、手の甲、中指の関節箇所
LFT 親指上囲、手側辺の親指上方付け根に近い部分
LFM 親指上囲、掌の中指MCP箇所
LFP 親指上囲、手の小指に近い側辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の外観特徴を描写するのに用いられるデジタル人体モデルの特徴データ構造であって、前記デジタル人体モデルの特徴データ構造は、
複数の個体の人体上の特徴点と、
複数の前記特徴点を通過する囲線と、
各前記囲線上のうちの特徴点をつないだ複数の経線とを含み、
このうち、前記人体の腕部分の前記囲線は、腕付け根囲、肘囲及び手首囲を含み、前記腕付け根囲は、肩先点、前腋窩点及び後腋窩点を通過し、前記肘囲は、肘前凹点及び肘後凸点を通過し、前記手首囲は、手部分と前腕部の太さの変化が最も大きい箇所を指すことを特徴とするデジタル人体モデルの特徴データ構造。
【請求項2】
前記腕部分のその他の囲線は、前記腕付け根囲、肘囲及び前腕最小囲に基づき、内挿法によって得ることを特徴とする請求項1に記載のデジタル人体モデルの特徴データ構造。
【請求項3】
人体の外観特徴を描写するのに用いられるデジタル人体モデルの特徴データ構造であって、前記デジタル人体モデルの特徴データ構造は、
複数の個体の人体上の特徴点と、
複数の前記特徴点を通過する囲線と、
各前記囲線上のうちの特徴点をつないだ複数の経線とを含み、
このうち、前記人体の腿部の前記囲線は、足付け根囲、大腿囲、膝囲及び下腿最小囲を含み、前記大腿囲は大腿の周囲長最大箇所を指し、前記膝囲は膝点を通過し、下腿最小囲は下腿の周囲長最小箇所を指すことを特徴とするデジタル人体モデルの特徴データ構造。
【請求項4】
前記腿部のその他の囲線は、前記大腿囲、膝囲及び下腿最小囲に基づき、内挿法によって得ることを特徴とする請求項3に記載のデジタル人体モデルの特徴データ構造。
【請求項5】
人体の外観特徴を描写するのに用いられるデジタル人体モデルの特徴データ構造であって、前記デジタル人体モデルの特徴データ構造は、
複数の個体の人体上の特徴点と、
複数の前記特徴点を通過する囲線とを含み、
このうち、前記人体の手部分の前記囲線は、手首囲、指付け根囲及び指先囲を含み、前記手首囲は、手部分と前腕部の太さの変化が最も大きい箇所を指し、前記指付け根囲は、五本の指を揃えてやや曲げた時の指の付け根の周囲長が最大の箇所を指し、前記指先囲は、五本の指を揃えてやや曲げた時の指先の周囲長が最小の箇所を指すことを特徴とするデジタル人体モデルの特徴データ構造。
【請求項6】
前記手部分のその他の囲線は、前記手首囲、指付け根囲及び指先囲に基づき、内挿法によって得ることを特徴とする請求項5に記載のデジタル人体モデルの特徴データ構造。
【請求項7】
人体の外観特徴を描写するのに用いられるデジタル人体モデルの特徴データ構造であって、前記デジタル人体モデルの特徴データ構造は、
複数の個体の人体上の特徴点と、
複数の前記特徴点を通過する囲線とを含み、
このうち、前記人体の足部の前記囲線は、足首囲、ヒール囲及びフットプリント囲を含み、前記足首囲は内踝点と外踝点を通過し、前記ヒール囲は足後部踵の突出点を通過する水平囲線であり、前記フットプリント囲は五本の足指を揃えた時地面に接触する部分の囲線であることを特徴とするデジタル人体モデルの特徴データ構造。
【請求項8】
前記足部のその他の囲線は、前記足首囲、ヒール囲及びフットプリント囲に基づき、内挿法によって得ることを特徴とする請求項7に記載のデジタル人体モデルの特徴データ構造。
【請求項9】
人体の外観特徴を描写するのに用いられるデジタル人体モデルの特徴データ構造であって、前記デジタル人体モデルの特徴データ構造は、
複数の個体の人体上の特徴点と、
複数の前記特徴点を通過する囲線と、
各前記囲線上のうちの特徴点をつないだ複数の経線とを含み、
このうち、前記人体の手部分の前記囲線は、手首囲、親指下囲、親指上囲及び指付け根囲を含み、前記手首囲は手部分と前腕部の太さの変化が最も大きい箇所を指し、前記親指下囲は親指の付け根下方を通過する横断面の手囲であり、前記親指上囲は親指付け根上方を通過する横断面の手囲であり、前記指付け根囲はその他の四本の指をやや伸ばし気味にして指が分かれる箇所であることを特徴とするデジタル人体モデルの特徴データ構造。
【請求項10】
前記手部分は、掌部と手指部に分けられ、前記掌部のその他の囲線は、前記手首囲、親指下囲、親指上囲及び指付け根囲に基づき、内挿法によって得ることを特徴とする請求項9に記載のデジタル人体モデルの特徴データ構造。
【請求項11】
前記手部分は、掌部と手指部に分けられ、前記手指部は、親指とその他の四指に別れて、親指は5本の囲線を有し、このうち、前4囲はそれぞれ8つの特徴点を有し、末囲は指先の1つの特徴点のみを有して、前記手指部のその他の手指は、7本の囲線を有し、前6囲はそれぞれ8つの特徴点を有し、末囲は指先の1つの特徴点のみを有することを特徴とする請求項9に記載のデジタル人体モデルの特徴データ構造。

【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−69262(P2013−69262A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−134220(P2012−134220)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(504455908)国立成功大学 (18)
【Fターム(参考)】