説明

デジタル放送受信機

【課題】低い受信CN比の状態においても、周波数オフセットを正しく検出し補正する。
【解決手段】隣接キャリア差分回路63は、各サブキャリアの電力レベルからSP、TMCC及びACのパイロット信号を抽出し、正負の極性を有する信号を出力する。SP成分除去回路64は、SPの相関演算を行い隣接キャリア差分回路63の出力信号からSP成分を除去し、TMCC及びACが反映された信号を出力する。TMCC&ACキャリア相関回路65は、TMCC及びACの相関演算を行い、その位置に合致したタイミングでピーク状の信号を出力する。シンボル相関回路66は、複数のシンボルに渡って積分を行って雑音を除去する。波形整形回路67は、正負の極性の信号を1つのピークを有する信号に戻す。波形整形回路67により波形整形された信号に対し、電力レベルが最も高い相関位置を検出することにより、周波数オフセット量(キャリア数)が検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタルテレビジョン放送に用いる受信機に関し、特に、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)及びAC(Auxiliary Channel)のパイロット信号を受信するデジタル放送受信機において、受信レベルが低くCN比が小さい状態で周波数オフセットを検出して補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地上デジタル放送用の伝送方式として直交周波数分割多重方式(OFDM)が用いられており、様々な技術開発が進められている。OFDMは、直交する複数のサブキャリアにより情報を並列伝送する方式である。地上デジタル放送信号を受信するデジタル放送受信機は、OFDM復調の際に、狭帯域の周波数オフセットを検出して補正することにより、狭帯域の周波数同期を行い、また、広帯域の周波数オフセットを検出して補正を行うことにより、広帯域の周波数同期を行う。
【0003】
非特許文献1に、広帯域の周波数同期を行う受信機の例が記載されている。この手法は、特定のサブキャリアを用いて同じ振幅及び同じ位相で多重したCP(Continual Pilots)と呼ばれるパイロット信号と、特定したサブキャリアを用いてシンボル間DBPSK変調して多重したTPS(Transmission Parameter Signalling)と呼ばれる伝送パラメータ情報とを、差動復調、2乗演算及びシンボル間のフィルタリング処理によって抽出することにより、サブキャリア間隔単位の周波数オフセットを検出するものである。これにより、特定のパイロット信号を必要とすることなく、広帯域の周波数同期を行うことができ、雑音及びマルチパス干渉に対する耐性が高くなる。
【0004】
一方、TMCCと呼ばれる伝送信号及びACと呼ばれる付加信号を用いて、緊急地震速報等の緊急情報を伝送する仕組みが検討されている。この緊急情報の伝送を実現するためには、デジタル放送受信機が、地上デジタル放送信号に含まれるTMCC及びACを受信する回路を備える必要がある。
【0005】
日本の地上デジタル放送(ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting for Terrestrial))方式の運用モードがモード3の場合、1シンボルにおいて、4本のTMCCキャリア及び/または8本のACキャリアが存在する。緊急情報を伝送する際には、緊急情報を受信するデジタル放送受信機が、4本のTMCCキャリア及び/または8本のACキャリアに対し緊急情報と同じ変調が行われた信号を受信し、4本のTMCCキャリア及び/または8本のACキャリアをダイバシティ合成する技術が検討されている。デジタル放送受信機は、4本のTMCCキャリア及び/または8本のACキャリアをダイバシティ合成することにより、CN比が0dBまたはマイナスの状態、すなわち、搬送波電力よりも雑音電力の方が大きい状態になるが、そのような状態においても、緊急情報を正しく受信しなければならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】林健一郎、他5名、“OFDM復調における周波数同期方式の検討”、1997年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会、B−5−78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のデジタル放送受信機は、4本のTMCCキャリア及び/または8本のACキャリアをダイバシティ合成することによって対応する必要が生じた領域の状態、すなわち受信レベルが低くCN比が小さい状態では、周波数オフセットを正しく検出し、それを補正することができなかった。
【0008】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、低い受信CN比の状態においても、周波数オフセットを正しく検出し、補正することが可能なデジタル放送受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明によるデジタル放送受信機は、ISDB−T信号を受信してOFDM復調を行うデジタル放送受信機において、前記受信したISDB−T信号のアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路と、前記AD変換された信号に直交復調を行い、複素等化ベースバンド信号に変換する直交復調回路と、狭帯域の周波数オフセットを検出して補正し、狭帯域同期を行う狭帯域AFC回路と、前記狭帯域同期が行われた信号に対し、周波数オフセット量に基づいて広帯域の周波数オフセットを補正し、広帯域同期を行う周波数オフセット補正回路と、前記広帯域同期が行われた信号にFFTを行い、時間領域の信号を周波数領域のキャリアシンボルに変換するFFT回路と、前記FFTにより変換されたキャリアシンボルのうちのTMCC及びACを用いて相関演算を行って周波数オフセット量を検出し、前記周波数オフセット量を前記周波数オフセット補正回路に出力する周波数オフセット検出回路と、を備え、前記周波数オフセット検出回路が、前記FFTにより変換されたキャリアシンボルに対し、電力レベルの絶対値をサブキャリア毎に検出する絶対値回路と、隣接するサブキャリア間で、前記キャリアシンボルにおける電力レベルの絶対値の差分を演算し、SP、TMCC及びACが反映された正極性及び負極性を有する信号を出力する隣接キャリア差分回路と、前記隣接キャリア差分回路により出力された信号に対し、SPの相関演算を行って前記SPを除去し、TMCC及びACが反映された正極性及び負極性を有する信号を出力するSP成分除去回路と、前記SP成分除去回路により出力された信号に対しTMCC及びACの相関演算を行い、TMCC及びACの相関位置を示すパルス状の信号を出力するTMCC&ACキャリア相関回路と、を備え、前記TMCC&ACキャリア相関回路により出力された信号に基づいて、前記相関位置と予め設定された基準位置との間の差であるキャリア数を前記周波数オフセット量として検出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明によるデジタル放送受信機は、前記周波数オフセット検出回路が、さらに、前記絶対値回路により検出された電力レベルの絶対値に対し、自乗の演算を行う自乗回路を備え、前記隣接キャリア差分回路が、隣接するサブキャリア間で、前記自乗回路により自乗の演算がされた電力レベルの絶対値に対し差分を演算し、SP、TMCC及びACが反映された正極性及び負極性を有する信号を出力することを特徴とする。
【0011】
また、本発明によるデジタル放送受信機は、前記周波数オフセット検出回路が、さらに、前記TMCC&ACキャリア相関回路により出力された信号を用いて、シンボル間の相関演算を行うシンボル相関回路を備え、前記シンボル相関回路によりシンボル間の相関演算が行われた信号に基づいて、前記TMCC及びACの相関位置と前記基準位置との間の差であるキャリア数を前記周波数オフセット量として検出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明によるデジタル放送受信機は、前記周波数オフセット検出回路が、さらに、前記TMCC&ACキャリア相関回路により出力された信号、または前記シンボル相関回路によりシンボル間の相関演算が行われた信号に対し、前記正極性及び負極性の2つのピークを有する信号から一つのピークを有する信号を生成し、前記1つのピークを有する信号を出力する波形整形回路を備え、前記波形整形回路により出力された信号に基づいて、前記TMCC及びACの相関位置と前記基準位置との間の差であるキャリア数を前記周波数オフセット量として検出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明によるデジタル放送受信機は、前記SP成分除去回路によるSPの相関演算を、SPのキャリア配置に基づいて、所定のサブキャリア分遅延させる複数の遅延器と、前記複数の遅延器による遅延結果の信号をそれぞれ加算する加算器とにより行い、前記TMCC&ACキャリア相関回路によるTMCC及びACの相関演算を、TMCC及びACのキャリア配置に基づいて、所定のサブキャリア分遅延させる複数の遅延器と、前記複数の遅延器による遅延結果の信号をそれぞれ加算する加算器とにより行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、電界強度が低いこと等を原因とした、受信レベルが低くCN比が小さい状態においても、周波数オフセットを正しく検出し、補正することが可能となる。これにより、TMCC及びACキャリアのみを受信する回路または装置において、受信感度を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態によるデジタル放送受信機におけるOFDM復調部の構成を示すブロック図である。
【図2】周波数オフセット検出回路の構成を示すブロック図である。
【図3】SPキャリア相関回路の構成を示すブロック図である。
【図4】TMCC&ACキャリア相関回路の構成を示すブロック図である。
【図5】地上デジタル放送方式のモード3において、セグメント#0に配置されたTMCCとACのキャリア番号を示す図である。
【図6】シンボル相関回路の構成を示すブロック図である。
【図7】波形整形回路の構成を示すブロック図である。
【図8】周波数オフセット検出回路における各ブロックの出力信号を示す波形図である。
【図9】周波数オフセット量を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
まず、緊急情報を受信するデジタル放送受信機に備えたOFDM復調部の全体構成について説明する。図1は、本発明の実施形態によるデジタル放送受信機におけるOFDM復調部の構成を示すブロック図である。このOFDM復調部1は、地上デジタル放送信号であるISDB−T信号を入力し、OFDM復調を行い、データ、AC及びTMCCの各情報を出力する機能を有する。本発明の実施形態では、TMCC及びACキャリアの位置情報に基づいて相関演算を行い、その相関位置と基準位置との間の差(キャリア数)を周波数オフセット量として検出し、周波数オフセットを補正するものである。OFDM復調部1は、AD変換回路10、直交復調回路20、狭帯域AFC(Automatic Frequency Control:自動周波数制御)回路30、周波数オフセット補正回路40、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)回路50、周波数オフセット検出回路60及びキャリアシンボル抽出回路70を備えている。
【0017】
デジタル放送受信機は、地上デジタル放送信号であるISDB−T信号を受信すると、受信信号を中間周波数(IF)帯の信号に変換する。AD変換回路10は、中間周波数帯に変換された信号を入力し、アナログ信号をデジタル信号に変換する。直交復調回路20は、AD変換回路10によりAD変換されたデジタル信号を入力し、直交復調を行い、複素等化ベースバンド信号に変換する。
【0018】
狭帯域AFC回路30は、直交復調回路20により変換された複素等化ベースバンド信号を入力し、OFDM信号の±0.5キャリアの狭い範囲で狭帯域の周波数同期を行う。この狭帯域AFCは、OFDMシンボルがガード期間及び有効シンボル期間により構成され、ガード期間には有効シンボル期間の後ろの一部が巡回的に複写されていることを利用するものである。すなわち、狭帯域AFC回路30は、有効シンボル期間の一部と同じ信号が存在するガード期間と、有効シンボル期間との間の相関を求めることにより、周波数オフセットを検出し、その周波数オフセットを補正する。具体的には、狭帯域AFC回路30は、直交復調回路20により出力された複素等化ベースバンド信号におけるI軸成分の信号と、この信号を有効シンボル期間だけ遅延させた信号とを乗算し、ガード期間幅の移動平均を算出して相関を求める。そして、狭帯域AFC回路30は、求めた相関のピーク値を用いて周波数オフセットを検出し、その周波数オフセットを補正する。これにより、キャリア間隔の±0.5までの周波数オフセットを検出して補正することができる。尚、この狭帯域AFCを実現する手法の詳細については、「関、多賀、石川著、“OFDMにおけるガード期間を利用した新しい周波数同期方式の検討”、テレビジョン学会技術報告、Vol.19、No.38、pp.13−18」を参照されたい。
【0019】
ここで、複素等化ベースバンド信号は、狭帯域AFC回路30において、OFDM信号の±0.5キャリアの範囲で狭帯域同期されるが、周波数オフセットがキャリア単位で発生するため、キャリアを特定することができない。したがって、狭帯域AFC回路30の後段には広帯域同期を行う回路が必要になり、周波数オフセット補正回路40が設けられている。周波数オフセット補正回路40は、キャリア単位で発生する周波数オフセットを補正してキャリアを特定できるようにするための広帯域同期回路である。また、周波数オフセット検出回路60は、周波数オフセット補正回路40が周波数オフセットを補正するために必要な周波数オフセット量を検出する回路である。
【0020】
周波数オフセット補正回路40は、狭帯域AFC回路30により狭帯域の周波数同期が行われた複素等化ベースバンド信号を入力すると共に、周波数オフセット検出回路60から周波数オフセット量(キャリア数)を入力する。そして、周波数オフセット補正回路40は、複素等化ベースバンド信号に対し、周波数オフセット量に基づいて周波数オフセットを補正する。すなわち、周波数オフセット補正回路40は、予め設定された基準位置に対し、周波数オフセット量のキャリア数分ずらすことにより、広帯域の周波数同期を行う。
【0021】
FFT回路50は、周波数オフセット補正回路40により周波数オフセットが補正された複素等化ベースバンド信号を入力し、FFTを行い、時間領域の信号を周波数領域の信号であるキャリアシンボルに変換する。
【0022】
周波数オフセット検出回路60は、FFT回路50からキャリアシンボルを入力し、TMCC及びACキャリアの位置情報に基づいて相関演算を行い、その相関位置と、予め設定された基準位置との間の差(キャリア数)を周波数オフセット量として検出する。周波数オフセット検出回路60により検出された周波数オフセット量は、周波数オフセット補正回路40に出力される。
【0023】
キャリアシンボル抽出回路70は、FFT回路50からキャリアシンボルを入力し、緊急情報等のデータ、AC、TMCC等の各情報を抽出して出力する。
【0024】
〔周波数オフセット検出回路〕
次に、図1に示した周波数オフセット検出回路60について詳細に説明する。図2は、周波数オフセット検出回路60の構成を示すブロック図である。この周波数オフセット検出回路60は、絶対値回路61、自乗回路62、隣接キャリア差分回路63、SP(Scattered Pilot:スキャッタードパイロット)成分除去回路64、TMCC&ACキャリア相関回路65、シンボル相関回路66及び波形整形回路67を備えている。
【0025】
図8は、周波数オフセット検出回路60における各ブロックの出力信号を示す波形図である。(1)は自乗回路62の出力信号を示す波形図であり、(2)は隣接キャリア差分回路63の出力信号を示す波形図であり、(3)はSPキャリア相関回路84の出力信号を示す波形図であり、(4)はSP成分除去回路64の出力信号を示す波形図であり、(5)はTMCC&ACキャリア相関回路65の出力信号を示す波形図であり、(6)はシンボル相関回路66の出力信号を示す波形図であり、(7)は波形整形回路67の出力信号を示す波形図である。縦軸が電力レベル(または振幅)を示し、横軸が1〜432のキャリア番号を示す。
【0026】
図2に戻って、絶対値回路61は、図1に示したFFT回路50からキャリアシンボルを入力し、サブキャリア毎に電力レベルの絶対値を検出する。自乗回路62は、絶対値回路61からサブキャリア毎に電力レベルの絶対値を入力し、サブキャリア毎にその絶対値に対して自乗の演算を行う。このように、絶対値回路61及び自乗回路62により、サブキャリア毎に電力レベルの情報が抽出される。尚、電力レベルの情報は振幅であってもよい。また、周波数オフセット検出回路60は、電力レベルの情報を抽出するために絶対値回路61及び自乗回路62を備えているが、絶対値回路61のみを備えるようにしてもよい。
【0027】
周波数オフセット検出回路60は自乗回路62を備えることにより、サブキャリア毎に、パイロット信号とデータ信号とを一層明確に区別することが可能な電力レベルの情報を抽出することができる。これにより、後段の隣接キャリア差分回路63〜波形整形回路67において、差分処理、相関処理及び波形整形処理のそれぞれの処理を確実に行うことができ、周波数オフセット量を確実に検出することが可能となる。
【0028】
図8(1)に、自乗回路62により出力された信号の波形を示す。自乗回路62により出力されたパイロット信号が存在する位置では、電力レベルが高くなっていることがわかる。
【0029】
隣接キャリア差分回路63は、自乗回路62から、自乗の演算が行われた信号をサブキャリア毎に入力し、隣接するサブキャリア同士で電力レベルの差分演算を行い、パイロット信号(SP、TMCC及びAC)を抽出する。
【0030】
隣接キャリア差分回路63は、減算器81及び遅延器82を備えている。遅延器82は、自乗回路62からの信号を1サブキャリア分遅延させる。減算器81は、自乗回路62からの信号を入力すると共に、遅延器82から1サブキャリア分遅延された信号を入力し、減算を行う。隣接キャリア差分回路63によって、隣接するサブキャリア同士で電力レベルの差分演算が行われるから、パイロット信号が存在する位置において、正の極性を有する信号及び負の極性を有する信号を出力することができ、パイロット信号を抽出することができる。また、隣接キャリア差分回路63は電力レベルの差分演算を行うから、マルチパスを除去することができる。
【0031】
図8(2)に、隣接キャリア差分回路63により出力された信号の波形を示す。隣接キャリア差分回路63により出力されたパイロット信号の位置には、正の極性の電力レベルを有する信号と、負の極性の電力レベルを有する信号とが存在していることがわかる。
【0032】
(SPキャリア相関回路)
SP成分除去回路64は、減算器83及びSPキャリア相関回路84を備えている。SPキャリア相関回路84は、隣接キャリア差分回路63から、パイロット成分が正の極性を有する信号及び負の極性を有する信号に反映された信号を入力し、SPの位置を基準にして12キャリア毎の相関演算を行い、SP成分を抽出する。減算器83は、隣接キャリア差分回路63からパイロット成分が反映された信号を入力すると共に、SPキャリア相関回路84からSP成分が反映された信号を入力し、パイロット成分が反映された信号からSP成分が反映された信号を減算し、TMCC及びAC成分が反映された正の極性を有する信号及び負の極性を有する信号を出力する。12キャリア毎の相関演算を行うのは、OFDMセグメントにおいて、SPは12キャリア毎に配置されているからである。
【0033】
図8(3)に、SPキャリア相関回路84により出力された信号の波形を示す。SPキャリア相関回路84により出力された信号のうち、SP成分の信号の位置には、正の極性の電力レベルを有する信号と負の極性の電力レベルを有する信号とが存在していることがわかる。また、図8(4)に、SP成分除去回路64により出力された信号の波形を示す。SP成分除去回路64により出力された信号のうち、TMCC及びAC成分の信号の位置には、正の極性の電力レベルを有する信号と、負の極性の電力レベルを有する信号とが存在していることがわかる。
【0034】
図3は、SPキャリア相関回路84の構成を示すブロック図である。このSPキャリア相関回路84は、n個の遅延器85−1〜85−n、及びn個の加算器86−1〜86−nを備えている。ここで、nは任意の値であり、SP成分除去回路64におけるSPの除去性能に応じて設定される。例えば、SPの除去性能を高める場合は、nを大きくする。
【0035】
SPキャリア相関回路84は、1個の遅延器85と1個の加算器86との対を1段として、n段により構成される。遅延器85−1〜85−nは、入力した信号を12サブキャリア分遅延させる。12サブキャリア分遅延させるのは、SPが12キャリアに1回の割合で信号内に挿入されているからである。加算器86−1は、SPキャリア相関回路84の入力信号と遅延器85−1により遅延された信号とを加算する。加算器86−2〜86−nは、前段の加算器86−1〜86−(n−1)から入力した信号と、遅延器85−2〜85−nにより遅延された信号とをそれぞれ加算する。このように、SP成分除去回路64は、12サブキャリア分の遅延を行う遅延器85と信号の加算を行う加算器86とによってSPの相関演算を行い、SP成分が反映された信号を出力する。
【0036】
(TMCC&ACキャリア相関回路)
図2に戻って、TMCC&ACキャリア相関回路65は、SP成分除去回路64から、TMCC及びAC成分が反映された正の極性を有する信号及び負の極性を有する信号を入力し、TMCC及びACキャリアの位置を基準にして、TMCC及びACキャリアの相関演算を行う。この結果、TMCC及びACキャリアの位置に合致して相関演算が行われた場合、そのタイミングでパルス状の信号が出力される。
【0037】
図8(5)に、TMCC&ACキャリア相関回路65により出力された信号の波形を示す。TMCC&ACキャリア相関回路65によりTMCC及びACキャリアの位置に合致して相関演算が行われた場合に、そのタイミングで正の極性及び負の極性の電力レベルを有するパルス状の信号が出力されていることがわかる。
【0038】
図4は、TMCC&ACキャリア相関回路65の構成を示すブロック図である。このTMCC&ACキャリア相関回路65は、11個の遅延器87−1〜87−11、及び11個の加算器88−1〜88−11を備えている。TMCC&ACキャリア相関回路65は、1個の遅延器87と1個の加算器88との対を1段として、11段により構成される。
【0039】
図5は、地上デジタル放送方式の運用モードがモード3の場合に、セグメント#0に配置されたTMCCとACのキャリア番号を示す図である。キャリア番号は1〜432で表記してある。図5に示すように、AC_8,AC_7,TMCC_4,TMCC_3,AC_6,・・・のパイロット信号は、それぞれキャリア番号408,378,350,287,245,・・・に配置されている。そして、これらのパイロット信号において、互いに隣接するキャリア番号の差は、それぞれ30,28,63,42,・・・である。この隣接キャリア番号の差が、遅延器87−1〜87−11のサブキャリア遅延時間として用いられる。
【0040】
図4に戻って、遅延器87-1は、AC_8とAC_7との間の隣接キャリア番号の差30に従って、TMCC&ACキャリア相関回路65の入力信号を30サブキャリア分遅延させる。また、遅延器87−2は、AC_7とTMCC_4との間の隣接キャリア番号の差28に従って、遅延器87-1により出力された信号を28サブキャリア分遅延させる。遅延器87−3〜87−11についても、図5に示した隣接キャリア番号の差に従った遅延処理を行う。
【0041】
加算器88−1は、TMCC&ACキャリア相関回路65の入力信号と遅延器87−1により遅延された信号とを加算する。加算器88−2〜88−11は、前段の加算器88−1〜88−10から入力した信号と、遅延器87−2〜87−11により遅延された信号とをそれぞれ加算する。このように、TMCC&ACキャリア相関回路65は、TMCC及びACの配置に応じた遅延器87と、信号の加算を行う加算器88とによってTMCC及びACキャリアの相関演算を行い、TMCC及びACキャリアの位置に合致して相関演算を行った場合、そのタイミングでパルス状の信号を出力する。
【0042】
(シンボル相関回路)
図2に戻って、シンボル相関回路66は、TMCC&ACキャリア相関回路65から、TMCC及びACキャリアの位置に合致して相関演算が行われたことを示すパルス状の信号を入力し、複数のシンボルに渡って積分を行ってシンボル間の相関演算を行う。これにより、雑音を除去することができる。
【0043】
図8(6)に、シンボル相関回路66により出力された信号の波形を示す。シンボル相関回路66により、図8(6)に示すような、雑音が除去された信号が出力される。
【0044】
図6は、シンボル相関回路66の構成を示すブロック図である。このシンボル相関回路66は、乗算器91、加算器92、遅延器93及び乗算器94を備えている。
【0045】
乗算器91は、TMCC&ACキャリア相関回路65から、TMCC及びACの位置に合致して相関演算が行われたことを示すパルス状の信号を入力し、予め設定された定数Kを0<K<1として、入力した信号に(1−K)を乗算する。加算器92は、乗算器91により乗算された信号を入力すると共に、乗算器94により乗算された信号を入力し、これらの信号を加算する。遅延器93は、加算器92により加算された信号を入力し、432サブキャリア(1シンボル)分遅延させる。乗算器94は、遅延器93により遅延された信号を入力し、予め設定された定数Kを乗算する。この乗算結果の信号が加算器92に出力される。このように、シンボル相関回路66は、入力した信号を複数のシンボルに渡って積分を行うから、雑音を除去し、ノイズを抑制することができる。
【0046】
(波形整形回路)
図2に戻って、波形整形回路67は、シンボル相関回路66から、雑音が除去された信号を入力し、隣接キャリア差分回路63により生成された正の極性及び負の極性の2つのピークを有する信号から、1つのピークを有する信号を生成する。すなわち、2つのピークを有する信号から1つのピークを有する信号に戻す。
【0047】
図8(7)に、波形整形回路67により出力された信号の波形を示す。波形整形回路67により、正の極性及び負の極性の2つのピークを有する信号が1つのピークを有する信号に戻され出力されていることがわかる。
【0048】
図7は、波形整形回路67の構成を示すブロック図である。この波形整形回路67は、正側信号抽出回路95、遅延器96、負側信号抽出回路97及び減算器98を備えている。
【0049】
正側信号抽出回路95は、波形整形回路67の入力信号に対し、正の極性を有する信号のみを通過させ、負の極性を有する信号の通過を阻止する。遅延器96は、正側信号抽出回路95から正の極性を有する信号を入力し、1サブキャリア(サンプル)分遅延させる。
【0050】
負側信号抽出回路97は、波形整形回路67の入力信号に対し、負の極性を有する信号のみを通過させ、正の極性を有する信号の通過を阻止する。減算器98は、遅延器96から1サブキャリア分遅延した正の極性を有する信号を入力すると共に、負側信号抽出回路97から負の極性を有する信号を入力し、正の極性を有する信号から負の極性を有する信号を減算する。すなわち、減算器98は、負の極性を有する信号を反転させ、その反転信号と正の極性を有する信号とを合成する。これにより、隣接キャリア差分回路63により生成された正の極性及び負の極性の2つのピークを有する信号を、1つのピークを有する信号に戻すことができる。
【0051】
波形整形回路67により、正の極性及び負の極性の2つのピークを有する信号よりも一層際立った1つのピークを有する信号が生成されるから、周波数オフセット検出回路60は、周波数オフセット量を確実に検出することができる。
【0052】
そして、周波数オフセット検出回路60は、波形整形回路67により波形整形された信号に基づいて、432キャリアのうち、電力レベルが最も高い相関位置を求め、その相関位置を周波数オフセットの検出位置として設定する。周波数オフセット検出回路60は、予め設定された基準位置と検出位置との間の差(キャリアの数)を周波数オフセット量として検出し、周波数オフセット補正回路40に出力する。
【0053】
図9は、周波数オフセット量を説明する図である。図9に示すように、周波数オフセット検出回路60は、432キャリア分の電力レベルに対し、電力レベルの最も高い位置を求め、予め設定された基準位置と検出位置との間のキャリア数を周波数オフセット量として検出する。
【0054】
尚、周波数オフセット検出回路60は、正の極性及び負の極性の2つのピークを有する信号を1つのピークを有する信号に戻す波形整形回路67を備えるようにしたが、波形整形回路67は必ずしも必要であるとは限らない。周波数オフセット検出回路60は、波形整形回路67を備えていない場合、シンボル相関回路66の出力信号に基づいて、電力レベルが最も高い相関位置を求め、その相関位置を周波数オフセットの検出位置として設定し、予め設定された基準位置と検出位置との間の差(キャリアの数)を周波数オフセット量として検出する。
【0055】
以上のように、本発明の実施形態によるデジタル放送受信機によれば、OFDM復調部1の周波数オフセット検出回路60において、隣接キャリア差分回路63が、SP、TMCC及びACのパイロット信号を抽出して、正の極性を有する信号及び負の極性を有する信号を出力するようにし、SP成分除去回路64が、SPの相関演算を行いSP成分の信号を抽出し、SP,TMCC及びACのパイロット信号からSP成分の信号を減算してTMCC及びACの信号を抽出し、TMCC及びAC成分が反映された正の極性を有する信号及び負の極性を有する信号を出力するようにした。そして、TMCC&ACキャリア相関回路65が、TMCC及びACキャリアの相関演算を行い、その位置に合致した場合にそのタイミングでピーク状の信号を出力するようにした。そして、シンボル相関回路66が、複数のシンボルに渡って積分を行って雑音を除去するようにし、波形整形回路67が、正の極性及び負の極性の2つのピークを有する信号を、1つのピークを有する信号に戻すようにした。そして、周波数オフセット検出回路60は、波形整形回路67により波形整形された信号に対し、電力レベルが最も高い相関位置を検出し、その検出位置と基準位置との差である周波数オフセット量(キャリア数)を検出するようにした。そして、周波数オフセット補正回路40は、周波数オフセット検出回路60により検出された周波数オフセット量に基づいて周波数オフセットを補正する。
【0056】
これにより、広帯域の周波数同期を行うことができる。すなわち、4本のTMCC及び/または8本のACの各キャリアをダイバシティ合成することによって生じる低い受信CN比の状態においても、4本のTMCC及び8本のACの各キャリアの相関演算を行って周波数オフセット量を検出することができるから、周波数オフセットを正しく検出し、補正することができる。その結果、TMCC及びACキャリアのみを受信するデジタル放送受信機において、受信感度を著しく向上させることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 OFDM復調部
10 AD変換回路
20 直交復調回路
30 狭帯域AFC回路
40 周波数オフセット補正回路
50 FFT回路
60 周波数オフセット検出回路
61 絶対値回路
62 自乗回路
63 隣接キャリア差分回路
64 SP成分除去回路
65 TMCC&ACキャリア相関回路
66 シンボル相関回路
67 波形整形回路
70 キャリアシンボル抽出回路
81,83,98 減算器
82,85,87,93,96 遅延器
84 SPキャリア相関回路
86,88,92 加算器
91,94 乗算器
95 正側信号抽出回路
97 負側信号抽出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISDB−T信号を受信してOFDM復調を行うデジタル放送受信機において、
前記受信したISDB−T信号のアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路と、
前記AD変換された信号に直交復調を行い、複素等化ベースバンド信号に変換する直交復調回路と、
狭帯域の周波数オフセットを検出して補正し、狭帯域同期を行う狭帯域AFC回路と、
前記狭帯域同期が行われた信号に対し、周波数オフセット量に基づいて広帯域の周波数オフセットを補正し、広帯域同期を行う周波数オフセット補正回路と、
前記広帯域同期が行われた信号にFFTを行い、時間領域の信号を周波数領域のキャリアシンボルに変換するFFT回路と、
前記FFTにより変換されたキャリアシンボルのうちのTMCC及びACを用いて相関演算を行って周波数オフセット量を検出し、前記周波数オフセット量を前記周波数オフセット補正回路に出力する周波数オフセット検出回路と、を備え、
前記周波数オフセット検出回路は、
前記FFTにより変換されたキャリアシンボルに対し、電力レベルの絶対値をサブキャリア毎に検出する絶対値回路と、
隣接するサブキャリア間で、前記キャリアシンボルにおける電力レベルの絶対値の差分を演算し、SP、TMCC及びACが反映された正極性及び負極性を有する信号を出力する隣接キャリア差分回路と、
前記隣接キャリア差分回路により出力された信号に対し、SPの相関演算を行って前記SPを除去し、TMCC及びACが反映された正極性及び負極性を有する信号を出力するSP成分除去回路と、
前記SP成分除去回路により出力された信号に対しTMCC及びACの相関演算を行い、TMCC及びACの相関位置を示すパルス状の信号を出力するTMCC&ACキャリア相関回路と、を備え、
前記TMCC&ACキャリア相関回路により出力された信号に基づいて、前記相関位置と予め設定された基準位置との間の差であるキャリア数を前記周波数オフセット量として検出する、
ことを特徴とするデジタル放送受信機。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタル放送受信機において、
前記周波数オフセット検出回路は、さらに、
前記絶対値回路により検出された電力レベルの絶対値に対し、自乗の演算を行う自乗回路を備え、
前記隣接キャリア差分回路は、隣接するサブキャリア間で、前記自乗回路により自乗の演算がされた電力レベルの絶対値に対し差分を演算し、SP、TMCC及びACが反映された正極性及び負極性を有する信号を出力する、
ことを特徴とするデジタル放送受信機。
【請求項3】
請求項1または2に記載のデジタル放送受信機において、
前記周波数オフセット検出回路は、さらに、
前記TMCC&ACキャリア相関回路により出力された信号を用いて、シンボル間の相関演算を行うシンボル相関回路を備え、
前記シンボル相関回路によりシンボル間の相関演算が行われた信号に基づいて、前記TMCC及びACの相関位置と前記基準位置との間の差であるキャリア数を前記周波数オフセット量として検出する、
ことを特徴とするデジタル放送受信機。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載のデジタル放送受信機において、
前記周波数オフセット検出回路は、さらに、
請求項1または2のTMCC&ACキャリア相関回路により出力された信号、または請求項3のシンボル相関回路によりシンボル間の相関演算が行われた信号に対し、前記正極性及び負極性の2つのピークを有する信号から一つのピークを有する信号を生成し、前記1つのピークを有する信号を出力する波形整形回路を備え、
前記波形整形回路により出力された信号に基づいて、前記TMCC及びACの相関位置と前記基準位置との間の差であるキャリア数を前記周波数オフセット量として検出する、
ことを特徴とするデジタル放送受信機。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載のデジタル放送受信機において、
前記SP成分除去回路によるSPの相関演算は、SPのキャリア配置に基づいて、所定のサブキャリア分遅延させる複数の遅延器と、前記複数の遅延器による遅延結果の信号をそれぞれ加算する加算器とにより行い、
前記TMCC&ACキャリア相関回路によるTMCC及びACの相関演算は、TMCC及びACのキャリア配置に基づいて、所定のサブキャリア分遅延させる複数の遅延器と、前記複数の遅延器による遅延結果の信号をそれぞれ加算する加算器とにより行う、
ことを特徴とするデジタル放送受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−213026(P2010−213026A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57438(P2009−57438)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【Fターム(参考)】