説明

デジタル放送受信機

【課題】OOB信号のための専用送受信回路、DOCSIS方式のための専用ケーブルモデムを内蔵する必要があり、回路規模が大きくコストが高くなると共に、消費電力が大きくなる。
【解決手段】放送番組に関連するデータの送受信に先立ってデジタル放送受信機に接続されたコンディショナルアクセスカード(119)からのチューニングコマンドに対し、制御手段(115)が、チューニングが成功したことを示す擬似的コンファーメーションレスポンスを返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送を受信するデジタル放送受信機に関し、特にオープンケーブル規格に対応するデジタル放送受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各国において地上波のデジタル放送が始まり、アナログ放送を停止してデジタル放送に移行する動きが進んでいる。またケーブル放送においてもデジタル化が進んでいる。この中で米国や韓国ではオープンケーブルと呼ばれるケーブル放送方式を採用しており、非特許文献1にこの方式に基づく受信装置の要求仕様が開示されている。
【0003】
オープンケーブル方式ではケーブルカードと呼ばれるコンディショナルアクセスカードが定義されており、コンディショナルアクセスの復号のほか、OOB(アウトオブバンド)信号の処理を行う。OOB信号は映像音声チャンネルとは異なる、専用に用意されたチャンネルを使用し、コンディショナルアクセスの情報や電子番組ガイド(EPG)などをケーブルヘッドエンドと端末の間で送受信する際に利用される。ケーブルカードを使用したオープンケーブル対応の受信機の一例が特許文献1に示されている。
【0004】
またOOB信号の伝送方法としては、QPSK変調方式を用いる方法と、QAM変調方式を用いるDOCSIS(Data−Over−Cable Service Interface Specification)方式を基にしたDSG(DOCSIS Set−top Gateway)を用いる方法の2種類があり、前者が非特許文献2、3に、後者が非特許文献4にそれぞれ開示されている。両者は同時に使用される事は無く、ケーブルテレビ局に応じていずれかひとつの方法が使用される。
【0005】
一方、近年はADSLや光ファイバの普及によりインターネットへのブロードバンド常時接続が一般的になってきており、デジタル放送受信機においてもブロードバンド接続環境を利用してインターネットに接続し、ビデオコンテンツをストリーミング再生することを可能にする商用サービスが発展してきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−510352号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】OpenCable Host Device 2.1 Core Functional Requirements; OC−SP−HOST2.1−CFR−I09−090904, Cable Television Laboratories, Inc
【非特許文献2】ANSI/SCTE 55−1 2009, Digital Broadband Delivery System: Out Of Band Transport Part 1:Mode A
【非特許文献3】ANSI/SCTE 55−2 2008, Digital Broadband Delivery System: Out Of Band Transport Part 2:Mode B
【非特許文献4】DOCSIS Set−top Gateway (DSG) Interface Specification, CM−SP−DSG−I14−090529, May 29, 2009, Cable Television Laboratories, Inc
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
オープンケーブル規格に対応するデジタル放送受信機では、OOB信号のための専用チューナ、変調部、復調部からなる送受信回路、DOCSIS方式のための専用チューナ、変調部、復調部からなるケーブルモデムを内蔵する必要があり、回路規模が大きくコストが高くなると共に、消費電力が大きくなるという課題がある。
【0009】
本発明は、これらの課題を解決してコストを削減しながらユーザの利便性を損なわないデジタル放送受信機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、本発明のデジタル放送受信機は、
コンディショナルアクセスカードを接続可能なデジタル放送受信機において、
情報サーバから、放送番組に関連するデータを、インターネットを介して送受信するための送受信手段と、
インターネットを介して前記情報サーバとの間でコンディショナルアクセスの制御のためのデータの送受信を行う送受信手段と、
前記送受信手段により、前記情報サーバから送信された前記放送番組に関連するデータを一時的に蓄積するバッファ手段と、
前記バッファ手段に蓄積されたデータを所定のレートで前記コンディショナルアクセスカードに供給させる制御手段とを備え、
前記コンディショナルアクセスカードから出力されるデータは、前記送受信手段により、インターネットを介して、前記情報サーバに送信され、
前記放送番組に関連するデータの送受信に先立ち、前記コンディショナルアクセスカードからのチューニングコマンドに対し、チューニングが成功したことを示す擬似的コンファーメーションレスポンスを前記制御手段が返す
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の別のデジタル放送受信機は、
コンディショナルアクセスカードを接続可能なデジタル放送受信機において、
情報サーバから、放送番組に関連するデータを、インターネットを介して送受信するための送受信手段と、
インターネットを介して前記情報サーバとの間でコンディショナルアクセスの制御のためのデータの送受信を行う送受信手段と、
前記送受信手段により、前記情報サーバから送信された前記放送番組に関連するデータを一時的に蓄積するバッファ手段と、
前記バッファ手段に蓄積されたデータを所定のレートで前記コンディショナルアクセスカードに供給させる制御手段と、
ケーブルテレビ局から前記ケーブルを介して前記放送番組に関連するデータを送受信するフロントエンドと、
該フロントエンドのためのローカル電源とを備え、
前記制御手段は、前記送受信手段により、インターネットを介して、前記放送番組に関連するデータ受信することができる場合には、前記ローカル電源をオフとして、前記送受信手段により受信した、前記放送番組に関連するデータを利用して、前記放送番組の受信を行う
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のデジタル放送受信機によれば、OOB信号のための専用チューナ、変調部、復調部からなる送受信回路、DOCSIS方式のための専用チューナ、変調部、復調部からなるケーブルモデムを内蔵する必要がなくなるため、回路規模を削減して製造コストを下げることができる効果がある。
【0013】
また、本発明の別のデジタル放送受信機によれば、不要な電力を消費することなく、ネットワークが利用できない場合でも従来OOBデータとして送信されていたのと同じ内容の、放送番組に関連するデータの通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1のデジタル放送受信機を示すブロック図である。
【図2】図1のデジタル放送受信機をケーブルテレビ局の情報サーバ及びストリームサーバとともに示す図である。
【図3】この発明で用いられるアップストリームパケットを示す図である。
【図4】この発明で用いられるダウンストリームパケットを示す図である。
【図5】図1のCPUの動作を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2のデジタル放送受信機を示すブロック図である。
【図7】図6のデジタル放送受信機をケーブルテレビ局の情報サーバ及びストリームサーバとともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1におけるデジタル放送受信機100の構成を示すブロック図であり、図2は、図1のデジタル放送受信機100を、ケーブルテレビ局200の諸機器及びストリームサーバ240とともに示す概略図である。
【0016】
図1及び図2に示されるデジタル放送受信機100は、例えば加入者乃至ユーザ宅に設置されたものであり、ケーブルテレビ局(CATVセンター)200から送出され、ケーブル250を介して配信される放送番組を受信するように接続されるとともに、加入者宅内のモデム252により、インターネット254を介してケーブルテレビ局200内の情報サーバ204に接続され、さらにストリームサーバ240にも接続されている。
【0017】
ケーブルテレビ局200は、放送番組の映像音声データの送信を行うものであり、情報サーバ204のほか、受信部206、ストリームサーバ208、及びヘッドエンド210を有する。
受信部206は、他のテレビ局(図示しない)から伝送されたデジタル放送番組を受信して送信するものである。ストリームサーバ208は、ビデオコンテンツを蓄積し、放送番組として出力する。
【0018】
ヘッドエンド210は、受信部206及び/又はストリームサーバ208から出力される放送番組のデータストリームを混合してケーブル250に送出し、ケーブル250を介して加入者に配信する。
情報サーバ204は、放送番組以外のデータを送受信するもので、例えば、従来の構成において、OOBサーバと呼ばれるものがケーブルを介して送受信するのと同様のデータの送受信を行う。これらのデータは、OOB規格に従うものとするのが好ましく、本願でも「OOBデータ」と呼ぶことがある。
【0019】
ストリームサーバ240は、映像音声のデータストリームを、インターネット254を介して配信する。ストリームサーバ240は、ケーブルテレビ局200内に設けられていても良く、別の場所に設けられていても良い。ケーブルテレビ局200内に設けられる場合には、ストリームサーバ240はストリームサーバ208と同じものであっても良い。
【0020】
ケーブルテレビ局200とデジタル放送受信機100の間では、ケーブル250を介して放送番組の映像音声データが送信されるだけでなく、放送番組の映像音声データの送信に付随乃至関連した情報の送受信が行われる。
【0021】
このような情報には、コンディショナルアクセスのための制御情報(コンディショナルアクセスの復号、即ちスクランブルの解除のための鍵、機器固有情報を含む)、電子番組表、VODのためのアプリケーション、その他のアプリケーションなどがある。以下では、これらの情報を「関連情報」と言う。関連情報は、情報の伝送方向により、ダウンストリームのデータ、即ちFDC(forward data channel)情報とアップストリームのデータ、即ちRDC(reverse data channel)情報とに分けることもできる。
【0022】
デジタル放送受信機100はさらに、インターネット254を介してストリームサーバ240から映像音声のデータを受信することも可能であり、その場合に、インターネット254を介して情報サーバ204とデジタル放送受信機100との間で、映像音声のデータの送信に付随乃至関連したデータ(関連情報)の送受信を行うことも可能である。
【0023】
デジタル放送受信機100は、デジタルケーブル信号の入力端子101と、所望の映像音声チャンネルにチューニングするチューナ102と、ケーブル信号の復調を行う復調部103と、カードインターフェース104と、復号された信号を映像音声に分離するデマルチプレクサ(DEMUX)105と、分離した映像音声をデコードするデコーダ106と、画質や音声の調整を行う映像音声処理部107と、映像の表示及び音声の出力を行う表示出力部108と、ネットワークに接続するイーサネット端子111(「イーサネット」は登録商標)と、通信インターフェースとして用いられているイーサネットコントローラ112と、関連情報を一時蓄えるバッファ113と、クロック発生回路114と、CPU115と、プログラムメモリ116と、ワーキングメモリ117と、操作指示受信部118とを有する。
【0024】
上記のうち、チューナ102と、復調部103とで受信手段が構成され、デマルチプレクサ105と、デコーダ106と、映像音声処理部107と、表示出力部108とで、データ処理手段が構成されている。
【0025】
操作指示受信部118は、ユーザにより操作指示入力が行なわれる、例えばキー入力手段やリモコンで構成される操作指示入力部(図示しない)からの信号を受け、CPU115に伝える。
【0026】
デジタル放送受信機100には、コンディショナルアクセスカードとしてのケーブルカード119を挿入するためのスロット(図示しない)が設けられており、ケーブルカード119は、スロットに挿入されたときに、カードインターフェース104と接続され、後述のように復調部103から入力される映像、音声データのコンディショナルアクセスの復号(スクランブル解除)を行う。ケーブルカード119は、さらに、コンテンツ保護のための複製防止の機能を有する。
【0027】
CPU115は、プログラムメモリ116に記憶されたプログラムに従って動作する。例えば、従来と同様のケーブルカード制御ソフトウェアがプログラムメモリ116に格納されており、CPU115はこれを実行する。CPU115はまた、イーサネット端子111、イーサネットコントローラ112、バッファ113及びクロック発生回路114を制御する。CPU115はチューナ102、復調部103、デマルチプレクサ105、デコーダ106、映像音声処理部107、表示出力部108に対して制御を行う。制御のための制御信号を伝える信号線が図では点線で示されている。
【0028】
イーサネット端子111は、モデム252を通してインターネット254により情報サーバ204及びストリームサーバ240に接続されている。イーサネットコントローラ112は、イーサネット端子111を介して行われる通信の制御を行う。
【0029】
ケーブルテレビ局200のヘッドエンド210からの放送番組を構成する映像音声信号の伝送には、例えば54MHz〜864MHzの周波数帯が用いられ、各チャンネルには、6MHzの帯域幅が割り当てられ、QAM64又はQAM256変調方式で変調された映像音声信号が伝送される。デジタル放送受信機100では、配信された映像音声信号を入力端子101で受ける。
【0030】
チューナ102は例えばキー入力手段やリモコン(図示しない)の操作により指定されたユーザが所望する特定の映像音声チャンネルにチューニングし、復調部103は、チューナ102の出力を復調してビットストリームを出力する。このビットストリームはコンディショナルアクセスのためにスクランブルされており、スクランブル解除(デスクランブル)するためにケーブルカード119に入力される。
【0031】
ケーブルカード119においてデスクランブルされたビットストリームは、デマルチプレクサ105において映像ストリームと音声ストリームに分離され、デコーダ106によってデコードされる。その後映像音声処理部107によって画質や音声の調整を行い、表示出力部108によって映像の表示及び音声の出力を行う。これらの動作もCPU115によって制御される。
【0032】
一方、ストリームサーバ240や情報サーバ204から配信された、インターネット254上のIPパケットはイーサネットコントローラ112を通してCPU115に伝送される。
【0033】
CPU115は予め用意され、プログラムメモリ116に格納されたアクセスソフトウェアを実行し、インターネット254を介してストリームサーバ240に接続して認証動作を行い、映像音声のストリーム配信を受ける。
【0034】
映像音声のストリームデータはUDP(User Datagram Protocol)トランスポートプロトコルを用いたものであり、図4に示されるようにUDPパケットのペイロードに分割して搭載されて、該UDPパケットを含むIPパケットがCPU115に配信される。
【0035】
CPU115はワーキングメモリ117を利用してストリームデータを蓄積再現し、デマルチプレクサ105に出力する。デマルチプレクサ105、デコーダ106、映像音声処理部107、及び表示出力部108は前記したケーブル信号の場合と同様に動作し、表示出力部108によって、ケーブル信号の場合と同様に映像を表示し、又音声を出力する。
【0036】
情報サーバ204はストリームサーバ240と同様にインターネット254に接続されて設置される。
【0037】
従来のケーブルテレビ局に設けられた情報サーバは、OOBデータを、ケーブル250を介して伝送するものであり、QPSK変調に基づく物理レイヤーと、MACサブレイヤーを含むデータリンクレイヤーを用いるが、本発明で想定している情報サーバ204はインターネット254の物理レイヤー及びデータリンクレイヤーによりOOBデータの伝送を行う。
【0038】
情報サーバ204からのOOBデータは、ストリームサーバ240からのストリームデータと同様にインターネット254のUDPトランスポートプロトコルを用いたものであり、図4に示されるようにUDPパケットに分割して搭載され、該UDPパケットを含むIPパケットがCPU115に配信される。
【0039】
ケーブルテレビ局200の情報サーバ204からインターネット254を介してデジタル放送受信機100にOOBデータが送信される場合(ダウンストリームの場合)、CPU115はワーキングメモリ117を利用してストリームデータを蓄積し、UDPパケットからOOBデータを取り出してバッファ113に供給する。
【0040】
クロック発生回路114ではケーブルカード119に伝送するためのOOBクロックを発生し、バッファ113に供給する。
【0041】
クロック発生回路114で発生されるクロックは、データ伝送を同期させるために用いられるものであり、従来のようにOOB信号がQPSK変調され、ケーブル250を介して伝送される場合に用いられるクロックと同じ周波数に設定されている。なお、従来の技術では、QPSK復調回路又はQPSK変調回路にクロックを発生する回路が設けられているが、インターネット254を介してOOBデータを受ける場合には、QPSK復調回路及びQPSK変調回路が不要となるので、その代わりにクロック発生回路114のみを設けているのである。なお、ここで言うクロック発生回路114は、発振器を内蔵するものとは限らず、外部の発振器からの信号を受けて所望の周波数のクロックを発生するものであっても良い。
【0042】
バッファ113ではクロック発生回路114で発生されるクロックに基づき、受信したOOBデータをケーブルカード119に供給する。そのためケーブルカード119は従来と同じように(QPSK変調されたOOBデータがケーブル250を介して伝送される場合と同じように)動作することができる。
【0043】
一方、デジタル放送受信機100から情報サーバ204にインターネット254を介してOOBデータを送信する場合(アップストリームの場合)、クロック発生回路114で発生したクロックをケーブルカード119に供給しケーブルカード119で発生されたデータをバッファ113で受信する。この場合に使用されるクロックも従来と同じ周波数に設定する。
【0044】
ケーブルカード119のデータはバッファ113に蓄積され、CPU115の指令によってワーキングメモリ117に転送され、図3に示されるUDPパケットにまとめられる。このUDPパケットを含むIPパケットはイーサネットコントローラ112を通じてインターネット254上の情報サーバ204に伝達され処理される。
【0045】
次に、図3を参照してアップストリームの場合のパケット構成を説明する。
ケーブルカード119で生成されるデータリンクレイヤーのプロトコルデータユニット301は、リンクレイヤヘッダ302と、プロトコルデータユニット303と、パディングデータとしてのヌルデータ304と、リンクレイヤトレーラ305とから構成されている。
【0046】
これらのデータユニット301はOOB規格に従って48バイト単位のデータ311に分割され、UDPパケット321のデータとして搭載される。
【0047】
UDPパケット321は、48バイト単位のデータ311を搭載したデータブロック326のほかに、送信元すなわちデジタル放送受信機100が使用しているポート番号322と、宛先すなわち情報サーバ204が使用しているポート番号323と、メッセージ長324と、チェックサム325とを有する。
【0048】
次に図4を参照してダウンストリームの場合のパケット構成を説明する。MACサブレイヤのプロトコルデータユニット401は、ヘッダ402と、メッセージ403と、CRC404とから構成されている。
これらのデータ401は一旦OOB規格に従いMPEG2トランスポートストリームのプライベートストリーム411として再構成され、UDPパケット421のデータとして搭載される。
【0049】
UDPパケット421は、プライベートストリーム411を搭載したデータブロック426のほかに、送信元すなわち情報サーバ204が使用しているポート番号422と、宛先すなわちデジタル放送受信機100が使用しているポート番号423と、メッセージ長424と、チェックサム425とを有する。
【0050】
上記のように、従来と同様のケーブルカード制御ソフトウェアがプログラムメモリ116に格納されており、CPU115はこれを実行する。
【0051】
情報サーバ204とデジタル放送受信機との間で、OOBデータのやり取りを開始する際に行われる処理の一部を図5に示す。図5はCPU115とケーブルカード119のコマンドとレスポンスを示すもので、情報サーバ204からのサインオン要求に基づきケーブルカード119より送信周波数のチューニングコマンド501が送信された場合は、CPU115はチューニングが成功したことを示す値「0」を以って擬似のコンファメーションレスポンス502のみを返す。
【0052】
即ち、従来の構成では、ケーブルを介してOOB信号を受信するチューナによるチューニングが成功した場合には、成功したことを示す値「0」のコンファメーションレスポンスをCPU115がケーブルカード119に返すが、インターネット254を介して配信を受ける場合には、そのようなチューニングは行われないため、チューニングを確認することなく、擬似コンファメーションレスポンスを返すこととし、これにより、ケーブルカード119は、ケーブル250を介してOOBデータの送受信を行う場合と同様の信号を受けて処理を行うことができる。
【0053】
また、情報サーバ204から受信周波数のチューニングコマンド503が送信された場合も、CPU115はチューニングが成功したことを示す値「0」を以って擬似のコンファメーションレスポンス504のみを返す。これにより従来のケーブルカードが使用されている場合であっても(ケーブル250を介してデータの伝送を行うことを前提としたケーブルカードが使用されている場合であっても)、擬似レスポンスを返すことによって通信を継続することができ、情報サーバより必要な信号の伝送を行うことができる。
【0054】
また、情報サーバ204とのインターネット接続が途切れた場合、即ち、イーサコントローラ112が情報サーバ204との接続を確認できない場合、CPU115はケーブルカード119に通知してデスクランブルをキャンセルする(即ちコンディショナルアクセスの復号を行わないようにする)。これにより、放送コンテンツの保護を行うことができる。
【0055】
インターネット伝送のアプリケーション層として様々なものを利用することができ、例えばセキュアな通信(暗号化技術を用いた通信)においてよく使用されるSSH(Secure Shell)技術や、HTML(Hyper Text Markup Language)などを使用することができる。またトランスポートプロトコルとしてUDPを用いたが、TCP(Transmission Control Protocol)又はその他の技術を使用しても同様の効果が得られる。
【0056】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2のデジタル放送受信機120を示すブロック図であり、図7は、図6のデジタル放送受信機120を、ケーブルテレビ局200内の諸機器及びストリームサーバ240とともに示す概略図である。
【0057】
図6に示すデジタル放送受信機120は、図1のデジタル放送受信機100と概して同じであり、図1と同じ番号は、同様の部材を示すが、図1に示される要素のほかに、ダイプレクサ121と、OOBフロントエンド131と、ローカル電源140と、選択部141及び142とを備えている点で異なる。
【0058】
また、図7に示される情報サーバ204は、実施の形態1と同様に、インターネット254に接続されるのみならず、ヘッドエンド210にも接続され、関連情報をOOBデータとして、インターネット254を介して送受信するだけでなく、ヘッドエンド210及びケーブル250を介してOOB信号として送受信することもできる構成となっている。
【0059】
ヘッドエンド210は、図2のヘッドエンド210と同様に、受信部206及びストリームサーバ208からの放送番組のデータストリーム、並びに情報サーバ204からの関連情報を混合して出力する。情報サーバ204からの関連情報の送信に用いられる周波数帯域は、映像音声データの送信に用いられる周波数帯域とは異なる。
【0060】
ヘッドエンド210はさらに、後述のようにデジタル放送受信機120からのデータを受信し、情報サーバ204に供給する。情報サーバ204は、従来の構成において、OOB信号として加入者のデジタル放送受信機との間でデータの送受信を行うOOBサーバに相当するものである。
【0061】
デジタル放送受信機120のOOBフロントエンド131は、QPSK方式のOOB信号にチューニングするチューナ132と、QPSK信号の復調を行うQPSK復調部133と、QPSK方式に変調するQPSK変調部134と、QAM方式に変調するQAM変調部135と、QPSK変調部134又はQAM変調部135のいずれかの信号を選択出力する選択部136と、QAM方式のDSG信号にチューニングするチューナ137と、QAM信号の復調を行う復調部138とを有する。
【0062】
ローカル電源140は、OOBフロントエンド131のために設けられた専用の電源であり、CPU115によりそのオン、オフが制御される。
【0063】
選択部141は、QPSK復調部133からのOOB信号とバッファ113からのOOB信号のいずれかを選択してカードインターフェース104を介してケーブルカード119に供給し、選択部142は、ケーブルカード119からカードインターフェース104を介して出力される信号を、QPSK変調部134又はバッファ113のいずれかに供給する。
【0064】
選択部141と選択部142は連動して動作するものであり、選択部141がQPSK復調部133の出力を選択しているときは、選択部142は、QPSK変調部134へ信号を供給し、選択部141がバッファ113の出力を選択しているときは、選択部142は、バッファ113へ信号を供給する。
【0065】
映像音声信号及びOOB信号を含むヘッドエンド210からのRF信号は入出力端子101に入力される。
入出力端子101に接続されたダイプレクサ121はダウンストリームとアップストリームの分離を行う。
【0066】
ダウンストリームはチューナ102、132及び137に供給される。チューナ102に供給された信号に対する処理は、実施の形態1の動作と同じである。
【0067】
QPSK変調されたOOB信号は、チューナ132によりチューニングされ、QPSK復調部133により復調されて選択部141に供給され、バッファ113の出力のOOB信号も選択部141に供給され、いずれかひとつ(QPSK復調部133の出力又はバッファ113の出力)が、ケーブルカード119に供給される。
【0068】
CPU115はデジタル放送受信機100の起動時、或いはケーブルカード119の挿入時に情報サーバ204との接続を行う。
CPU115は、情報サーバ204がネットワーク上に存在してOOB信号が得られる場合は選択部141にバッファ113の出力を選択させ、得られない場合はQPSK復調部133の出力を選択させる。
【0069】
一方、DSG方式によるOOB信号はチューナ137によりチューニングされ、QAM復調部138により復調されて、CPU115に供給され、CPU115とケーブルカード119の制御空間に規定された拡張チャンネル(extended channel)を通じてケーブルカード119に供給される。
【0070】
アップストリームの場合、ケーブルカード119からの信号が選択部142に供給され、選択部142は、CPU115の制御に従いQPSK変調部134又はバッファ113のいずれかに供給する。即ち、QPSK方式による場合には、QPSK変調部134に供給し、ネットワークによる配信の場合には、バッファ113に供給する。
【0071】
OOB信号がQPSK変調部134に供給された場合には、QPSK変調部134では、OOB信号をQPSK変調し、選択部136に供給する。一方、OOB信号がバッファ113に供給された場合の動作は、実施の形態1と同じである。
【0072】
即ち、ケーブルカード119のデータはバッファ113に蓄積され、CPU115の指令によってワーキングメモリ117に転送され、UDPパケットにまとめられる。
このUDPパケットを含むIPパケットはイーサネットコントローラ112を通じてインターネット254上の情報サーバ204に伝達され処理される。
【0073】
一方、DSG方式によるOOB信号は、拡張チャンネル(extended channel)を通じてケーブルカード119からCPU115に供給され、CPU115よりQAM変調部135に供給される。
【0074】
QPSK変調部134とQAM変調部135の出力は選択部136に供給される。
選択部136は、CPU115の制御のもとで動作し、ヘッドエンド210がQPSK方式を選択している場合はQPSK変調部134の出力を選択し、DSG方式を選択している場合はQAM変調部135の出力を選択し、選択した出力をダイプレクサ121、及び入出力端子12を介して、ヘッドエンド210に伝達される。
【0075】
これらのOOB信号の伝送に関与するチューナ132、137や復調部133、138、変調部134、135、及び選択部136は、フロントエンド131を構成し、このフロントエンド131には専用のローカル電源140によって電源が供給される。
【0076】
CPU115はデジタル放送受信機100の起動時、或いはケーブルカード119の挿入時に情報サーバ204との接続を試み、情報サーバ204がネットワーク上に存在してOOB信号が得られる場合はローカル電源140を制御してフロントエンド131に電源を供給しないようにし、情報サーバ204がネットワーク上に存在せずOOB信号が得られない場合はローカル電源140を制御してフロントエンド131に電源を供給し、従来と同様フロントエンド131を用いてOOBの送受信を行う。
これにより不要な電力を消費することなく、ネットワークが利用できない場合でもOOB通信を行うことができる。
【0077】
なお、実施の形態1においても情報サーバ204がインターネット254に接続され、ヘッドエンド210に接続されていないものとして説明したが、情報サーバ204がヘッドエンド210を介してケーブルに接続され、ケーブル250に関連情報を常に出力している構成であっても良い。その場合にも、デジタル放送受信機の側で、ケーブル250を介して送信された関連情報を受信する機能を持たないデジタル放送受信機においては、ケーブル250を介して送信される関連情報を受信せず、実施の形態1で説明したように、インターネット254を介して関連情報のやり取りを行うことになる。
【符号の説明】
【0078】
100 デジタル放送受信機、 111 イーサネット端子、 112 イーサネットコントローラ、 113 バッファ、 114 クロック発生回路、 115 CPU、 119 ケーブルカード、 131 フロントエンド、 140 ローカル電源、 141、142 選択部、 200 ケーブルテレビ局、 204 情報サーバ、 210 ヘッドエンド、 240 ストリームサーバ、 254 インターネット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンディショナルアクセスカードを接続可能なデジタル放送受信機の制御手段と、情報サーバとの間で、放送番組に関連するデータを、インターネットを介して送受信し、
前記コンディショナルアクセスカードが前記デジタル放送受信機に接続された状態で、前記情報サーバから送信され、前記制御手段で受信された、前記放送番組に関連するデータを、前記デジタル放送受信機内のバッファ手段により一時的に保持し、所定のレートで前記コンディショナルアクセスカードに供給するステップと、
前記放送番組に関連するデータの送受信に先立って前記デジタル放送受信機に接続されたコンディショナルアクセスカードからのチューニングコマンドに対し、前記制御手段が、チューニングが成功したことを示す擬似的コンファーメーションレスポンスを返すステップとを有する
ことを特徴とするデータ送受信方法。
【請求項2】
ケーブルテレビ局から前記デジタル放送受信機に、ケーブルを介して放送番組の映像音声データを送信するステップと、
前記放送番組の映像音声データを前記デジタル放送受信機から前記コンディショナルアクセスカードに供給するステップとをさらに有し、
前記コンディショナルアクセスカードにおいてコンディショナルアクセスの復号が行われることを特徴とする請求項1に記載のデータ送受信方法。
【請求項3】
前記放送番組に関連するデータが、前記コンディショナルアクセスカードにおける前記コンディショナルアクセスの復号に必要なデータを含むことを特徴とする請求項2に記載のデータ送受信方法。
【請求項4】
コンディショナルアクセスカードを接続可能なデジタル放送受信機において、
情報サーバから、放送番組に関連するデータを、インターネットを介して送受信するための送受信手段と、
インターネットを介して前記情報サーバとの間でコンディショナルアクセスの制御のためのデータの送受信を行う送受信手段と、
前記送受信手段により、前記情報サーバから送信された前記放送番組に関連するデータを一時的に蓄積するバッファ手段と、
前記バッファ手段に蓄積されたデータを所定のレートで前記コンディショナルアクセスカードに供給させる制御手段とを備え、
前記コンディショナルアクセスカードから出力されるデータは、前記送受信手段により、インターネットを介して、前記情報サーバに送信され、
前記放送番組に関連するデータの送受信に先立ち、前記コンディショナルアクセスカードからのチューニングコマンドに対し、チューニングが成功したことを示す擬似的コンファーメーションレスポンスを前記制御手段が返す
ことを特徴とするデジタル放送受信機。
【請求項5】
ケーブルテレビ局からケーブルを介して配信された放送番組のデータを受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した放送番組のコンディショナルアクセスのためのコンディショナルアクセスカードに接続可能で、前記コンディショナルアクセスカードが接続された状態において、前記受信手段で受信した放送番組のデータを前記コンディショナルアクセスカードに送るインターフェースと、
前記コンディショナルアクセスカードで復号されたデータを処理し、出力するデータ処理手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のデジタル放送受信機。
【請求項6】
前記放送番組に関連するデータが、前記コンディショナルアクセスカードにおける前記コンディショナルアクセスの復号に必要なデータを含むことを特徴とする請求項5に記載のデジタル放送受信機。
【請求項7】
前記送受信手段が前記情報サーバと接続ができない場合、前記コンディショナルアクセスカードに通知して、コンディショナルアクセスの復号を行わないようにしたことを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載のデジタル放送受信機。
【請求項8】
前記情報サーバから前記ケーブルを介して前記コンディショナルアクセスの制御のための情報を送受信するフロントエンドと、
前記フロントエンドのためのローカル電源とをさらに備え、
前記制御手段は、前記送受信手段により、インターネットを介して、前記コンディショナルアクセスの制御のための情報を受信することができる場合には、前記ローカル電源をオフとして、前記送受信手段により受信した、前記コンディショナルアクセスのための制御情報により、前記コンディショナルアクセスの制御を行う
ことを特徴とする請求項4から7のいずれかに記載のデジタル放送受信機。
【請求項9】
コンディショナルアクセスカードを接続可能なデジタル放送受信機において、
情報サーバから、放送番組に関連するデータを、インターネットを介して送受信するための送受信手段と、
インターネットを介して前記情報サーバとの間でコンディショナルアクセスの制御のためのデータの送受信を行う送受信手段と、
前記送受信手段により、前記情報サーバから送信された前記放送番組に関連するデータを一時的に蓄積するバッファ手段と、
前記バッファ手段に蓄積されたデータを所定のレートで前記コンディショナルアクセスカードに供給させる制御手段と、
ケーブルテレビ局から前記ケーブルを介して前記放送番組に関連するデータを送受信するフロントエンドと、
該フロントエンドのためのローカル電源とを備え、
前記制御手段は、前記送受信手段により、インターネットを介して、前記放送番組に関連するデータ受信することができる場合には、前記ローカル電源をオフとして、前記送受信手段により受信した、前記放送番組に関連するデータを利用して、前記放送番組の受信を行う
ことを特徴とするデジタル放送受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−254252(P2011−254252A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126135(P2010−126135)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】