説明

デッキプレートの接合構造

【課題】 建築現場において、溝形鋼の梁材にデッキプレートを容易、かつ確実に接合させることができるデッキプレートの接合構造を提供する。
【解決手段】 溝形鋼の梁材11の上に敷設したデッキプレート12と梁材11との重ね合せ部位に、デッキプレート12を貫通する孔13と、梁材11に設けた所定深さのめくら穴14とからなるねじ下穴15を加工し、ねじ下穴15にタッピンねじ16を螺着して、梁材11にデッキプレート12を接合したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマンション、ビル等の建築物の構造体である鉄骨構造の床スラブに用いるデッキプレートの接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄骨構造は、一般に、鋼材を高力ボルトで接合して組み立てられ、図6に示すように、溝形鋼の梁材1の上にデッキプレート2を敷設して、床スラブの骨格となる構造体としている。このようなデッキプレート2を溝形鋼の梁材1に接合するには、例えば図4に示すように、梁材1とデッキプレート2との重ね合せ部位を、通称「沸し付け」と称せられるアーク溶接によって、溶接肉3がデッキプレート2の表面側から裏側の梁材1に達するように、接合する方法が一般的であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のようにデッキプレート2をアーク溶接によって梁材1に接合する方法では、溶接作業中に降雨があると、しばしば漏電事故が発生するという問題があった。また、デッキプレート2の表側から裏側の梁材1も溶融させて接合するため、裏側の梁材1と表側のデッキプレート2が確実に接合していることを確認することが困難であり、図5に示すように、溶接肉3が梁材1に達していない場合でもデッキプレート2の表面に溶接肉3の盛り上がりができておれば良しとせざるを得ないというのが実状である。このような溶接不良は、作業者の手抜きだけではなく、デッキプレート2と梁材1との重ね合せ部位に隙間が生じることによっても発生するので、実際上、避けることが困難であった。
【0004】
このため、デッキプレートの接合手段として、ボルト・ナットを用いたねじ締結が求められてきたが、デッキプレートと溝形鋼の梁材に予めねじ挿通孔を加工しても、現場での施工時における位置合せが困難なため実現していない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、建築現場において、溝形鋼の梁材にデッキプレートを容易、かつ確実に接合させることができるデッキプレートの接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は溝形鋼の梁材の上に敷設したデッキプレートと前記梁材との重ね合せ部位に、前記デッキプレートを貫通する孔と、前記梁材に設けた所定深さのめくら穴とからなるねじ下穴を加工し、前記ねじ下穴にタッピンねじを螺着して、前記梁材に前記デッキプレートを接合したことを特徴とするデッキプレートの接合構造である。
【0007】
前記梁材の溝形鋼には、通常、H形鋼が使用され、その厚みは20mm〜40mmである。また、デッキプレートの厚みは約1.0mmてあるから、そのねじ締結に必要とされるタッピンねじのねじ径は5mm前後で十分である。そして、前記梁材に設けるめくら穴の深さは、前記梁材の厚みの1/2以下が好ましく、具体的には、深さ約7.0〜11.0mm、直径約5.0mmが好適である。
【0008】
また、貫通孔とめくら穴とからなる前記ねじ下穴を加工するには、後述するストッパ付きドリルを用いれば、所定深さの前記ねじ下穴が容易、かつ作業性良く加工することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の接合構造は、デッキプレートと梁材との重ね合せ部位に、建築現場で加工したねじ下穴にタッピンねじを螺着して、前記デッキプレートを前記梁材に接合するものであるから、従来のアーク溶接による問題点が解消され、溝形鋼の梁材にデッキプレートを容易、かつ確実に接合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、建築現場において、H形鋼の梁材11(図面には一方の梁材11のみ示している。)の上に敷設した床スラブの構造体を構成するデッキプレート12と梁材11との重ね合せ部位に、デッキプレート12を貫通する孔13と、梁材11に設けた所定深さHのめくら穴14とからなるねじ下穴15を切削加工した準備工程を示している。該ねじ下穴15の切削加工は、図3に示すように、電動工具20に装着したドリル21にストッパ金具22を取り付けることにより、均一深さのねじ下穴15が容易、かつ迅速に加工できる。ストッパ金具22は筒状本体23の側壁に軸方向へ延びる切粉排出用開口部24が設けられていて、止めねじ25でドリル21に対する取付け位置を調整することにより、ドリル21先端からストッパ金具22の前端までの距離を加減調節して、ドリル21によるねじ下穴15の加工深さが任意に設定できるようになっている。
【0012】
ねじ下穴15の深さは、めくら穴14の深さHにデッキプレート12の厚みを加えた寸法となる。該ねじ下穴15は、具体的には深さ約8.0〜12.0mm、直径約5.0mmとしている。
【0013】
図2は、図1に示した準備工程で切削加工した孔13とめくら穴14とからなるねじ下穴15にタッピンねじ16を螺着し、そのねじ部17でねじ下穴15に雌ねじを加工しながらねじみ込んで梁材11にデッキプレート12を接合した状態を示している。このようにタッピンねじ16でデッキプレート12を梁材11に接合すると、両者の接合が確実であると共に、接合状態を目視によって確認することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるデッキプレートの接合構造の準備工程を示す要部縦断正面図である。
【図2】本発明によるデッキプレートの接合構造の接合状態を示す要部縦断正面図である。
【図3】図1に示した準備工程でねじ下穴を切削加工するのに使用するドリル装置の要部正面図である。
【図4】従来のデッキプレートの接合構造を示す要部縦断正面図である。
【図5】従来のデッキプレートの接合構造における接合不良を説明する要部縦断正面図である。
【図6】梁材の上にデッキプレートを敷設した床スラブの構造体を示す側面図である。
【符号の説明】
【0015】
11 溝形鋼の梁材
12 デッキプレート
13 貫通孔
14 めくら穴
15 ねじ下穴
16 タッピンねじ
17 ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝形鋼の梁材の上に敷設したデッキプレートと前記梁材との重ね合せ部位に、前記デッキプレートを貫通する孔と、前記梁材に設けた所定深さのめくら穴とからなるねじ下穴を加工し、
前記ねじ下穴にタッピンねじを螺着して、前記梁材に前記デッキプレートを接合したことを特徴とするデッキプレートの接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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