説明

デッキボード

【課題】車体フロアに収納される物品を確実に保持できるとともに、収納物品を保持する位置の調整が可能なデッキボードの提供。
【解決手段】デッキボード1は、車体のフロアに設けられた収納部の開口を覆うとともにフロアに起伏自在とされ、収納部の開口を覆う裏面側にレール10Aを備える。レール10Aには、収納部に収納される収納物品を保持するバックル20A,20B,20Cがスライド可能に設けられる。そして、バックル20A,20B,20Cは、レール10Aに形成された係止部にバックル20A,20B,20Cを押圧固定するカム23を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のフロアに設けられるデッキボードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バンやワゴンなどの自動車の座席後方フロアなどに設けられるカバー体(デッキボード)の下側に、物品を収納する収納部が設けられており、カバー体の裏側に、収納部に配置された物品を保持するためのフックを設ける構造が提案されている(特許文献1)。この特許文献1におけるカバー体の裏側には蜂の巣状のリブで仕切られた多数のセルが形成されており、このうち数個のセルにフックが設けられている。フックは線状の鋼材によって折り曲げ形成され、その両端がセルの壁に形成された孔に軸支されてカバー体側に倒されている。フックを使用する際は、フロアにカバー体を起立させ、セルからフックを起こし、フックに買い物袋の持ち手を掛けたり、傘を差し込む。
【0003】
【特許文献1】特開2000−25525号公報(図1、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようなフックの取付構造では、フックが撓んでリブから外れやすいという問題がある。特に、収納部の上方に突出する程かさ張って重い物品をこのようなフックに保持することは難しい。また、数個のセルにのみフックが設けられ、物品を保持する位置をフックを掛け変えることによってしか調整できないので、物品を保持する位置の調整が困難であり、取扱に不便な場合がある。
【0005】
以上に鑑みて、本発明の目的は、車体フロアに収納される物品を確実に保持できるとともに、収納物品を保持する位置の調整が可能なデッキボードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車体のフロアに設けられた収納部の開口を覆うデッキボードであって、前記開口を覆うとともに開放可能な構造とされ、前記収納部の開口を覆う際に前記開口に対向する裏面側にレールを備え、前記レールには、収納物品を保持する保持部材がスライド可能かつ任意の位置で固定可能に設けられていることを特徴とする。
【0007】
ここで、デッキボードは、レールが設けられた裏面側が露出するように使用される。すなわち、本発明のデッキボードの使用の形態としては、例えば、車体のフロアに対してデッキボードが略垂直、または所定角度をなすように起立した状態とされることなどが挙げられる。このような場合、デッキ下方の収納部に配置された収納物品をデッキボードの保持部材により保持できるので、背の高い収納物品を良好に保持できる。
さらに、本発明のデッキボードは、収納部の開口を覆う際と表裏が反転され、フロアやデッキ部に配置された状態でもよく、この場合は、デッキボード上に配置された収納物品を保持部材によって保持できる。
【0008】
この発明によれば、保持部材をレールの任意の位置にスライドでき、収納物品の寸法や形状、収納物品が配置された位置などに応じて、収納物品を保持する位置を調整することが可能となる。
加えて、レールの凸条や溝条に対して保持部材を簡易な手段で安定的に固定することが可能であり、保持部材がレールから外れにくい。すなわち、収納物品を適切な位置で確実に保持できるので、収納物品の保持に関して、取扱性を大きく向上できる。
【0009】
また、収納物品の保持に関して、別途、パネル部材などを設置してデッキ上の空間を仕切ったり、デッキ上に一対のレール部材を配置して物品固定用の紐を掛け渡すことなどを不要にできる。すなわち本発明では、フロアの収納部を覆いデッキそのものを構成するデッキボードが利用されているため、車体に付随するデッキボードのほかに、パネルやレール部材などを追加することを不要にできる。
【0010】
前記レールは、溝条とされることが好ましい。
この発明によれば、デッキボードの裏面がフラットな状態とされるので、外観および取扱性に優れる。特に、デッキボードを反転させて使用する際に、収納物品を安定して載置できる。
【0011】
前記レールには、当該デッキボードを前記車体に保持するロック部材が設けられることが好ましい。
この発明によれば、ロック部材により、デッキボードが車体に対して固定されるので、取扱性がより一層向上する。
【0012】
前記保持部材は、2つ以上設けられ、これらの保持部材にはそれぞれ、紐部材が取付けられることが好ましい。
この発明によれば、保持部材が2つ以上設けられているので、これらの保持部材に紐部材の一端側と他端側とをそれぞれ取り付け、紐部材とデッキボードの裏面との間に収納物品を挟んで保持することができる。これにより、1つの収納物品取付部だけでは保持が難しい大型あるいは重い物品などを保持することが可能となる。
また、保持部材が3つ以上設けられている場合は、紐部材とデッキボード裏面との間の空間を2つ以上形成することが可能となり、各空間に収納物品を別々に保持することができる。
なお、保持部材にフックなどが設けられ、このフックなどを介して紐部材が保持部材に取付けられていてもよい。
【0013】
前記レールは、当該レールの幅方向内側に係止部を有する溝条とされ、前記保持部材は、前記レールの内側に摺接してスライド可能に設けられるスライド部と、前記レールの外側に設けられる本体と、前記本体および前記スライド部の一方に軸支され前記スライド部を前記本体に対して近接離隔させるカムと、前記本体に設けられ前記収納物品を保持する収納物品取付部とを備え、前記スライド部は、前記カムの回動によって前記本体に近接した際に、前記レールの内側から外側に向かって前記係止部に押圧固定されることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、カムを回動させることで保持部材をレールに簡単に固定できるので、取扱性がより一層向上する。
【0015】
前記保持部材のうち前記レールの端部側に配置される少なくとも1つは、前記ロック部材を兼ねていることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、保持部材の少なくとも1つをロック部材として兼用できるので、別途、ロック部材を製作しなくても済む。
【0017】
前記スライド部は、前記ロック部材として、前記レールに沿って前記本体の外側に突出する突出部を有し、前記突出部は、前記本体が前記レールの端部までスライドされた際に、前記車体に形成された凹部に挿入されることが好ましい。
【0018】
この発明によれば、保持部材をスライドさせるとスライド部の突出部と車体の凹部(車体に形成された穴などを含む)とが係合し、デッキボードが起立姿勢に保持されるので、デッキボードを車体に簡単にロックできる。
【0019】
当該デッキボードは、前記収納部の開口の一部を覆う寸法とされていてもよい。
【0020】
この発明によれば、本発明のデッキボードが設けられた収納部の部分には背が高い物品などを配置し、それ以外の部分には、デッキ下方に納まる物品を収納するというように、収納部の部分部分を使い分けることが可能となり、使い勝手が良い。このようにすれば、本発明のデッキボードが起立された際に露出する範囲が収納部の全体ではないので、見栄えも良い。
なお、本発明のデッキボードによって覆われない収納部の部分に、本発明のデッキボードを1枚以上設けたり、本発明の構成を持たない他のデッキボードを設けてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以降の説明では、既に説明した構成と略同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
図1、図2は、車体の座席後方に設けられた略矩形状のデッキボード1を示す。デッキボード1は、車体のフロア100に対して起伏自在とされ、フロア100に設けられた各種物品を収納する収納部101の開口101Aを覆い、デッキDK全体がフラットな図1の状態から、フロア100に対して図2のように略垂直に起立される。起立状態のデッキボード1は、車体の幅方向両側における内装部150に設けられた溝151に保持されている。デッキボード1の裏面には、デッキボード1の長手方向一端から他端まで延びるレール10Aが設けられ、このレール10Aに、収納部101に配置された物品を保持する保持部材としての3つのバックル20A,20B,20Cがそれぞれ設けられている。
【0022】
図3は、デッキボード1の分解斜視図である。デッキボード1は、矩形板状のボード本体10と、ボード本体10の表面および長辺側の側面に設けられる断面コ字状の表皮材11と、ボード本体10の短辺側の端面に取付けられるキャップ121,122とを備えている。なお、キャップ121,122は、ボード本体10の両方の短辺側の端面にそれぞれ取付けられるが、図3の奥側に取付けられる一方の図示は省略されている。
【0023】
ボード本体10は、アルミニウム又はアルミニウム合金などで押出成形され、軽量かつ高剛性なものとなっている。ボード本体10の中央には、長手方向に沿って、断面略H字状のレール10Aが形成され、このレール10Aの溝10Dにバックル20A,20B,20Cが設けられる。レール10Aのボード本体10裏面側の端部には、図6、図7に示すように、レール10Aの幅方向内側に突出する係止部としての傾斜部10Bが、レール10Aの長手方向に沿って形成されている。
【0024】
キャップ121,122は、レール10A両側の中空部10Cにそれぞれ設けられている。キャップ121,122の裏側には、図示しないリブが形成され、このリブが中空部10Cに嵌合する。
【0025】
図4は、バックル20Aの斜視図であり、図5は、バックル20Aの分解斜視図である。なお、バックル20A,20B,20Cの構造は同様であるため、ここでは、バックル20Aを例にとり説明する。
バックル20Aは、レール10Aに設けられるスライド部21と、レール10Aの外側でスライド部21の一部が挿通される本体22と、スライド部21に軸支されるカム23と、テープTP(図9、図10)が取付けられる収納物品取付部としての略コ字状のテープ取付部24とを有する。このバックル20Aは(バックル20B,20Cも同じ)、レール10A(図3)にスライド自在とされ、カム23が操作されることにより、バックル20A自体がレール10Aに固定される。
【0026】
スライド部21は、レール10Aの溝10Dの内側に摺接する基部211と、基部211からレール10Aの外側に突出する先端部212とを有する。基部211の両端部は、レール10Aに沿って、本体22の外側に突出するロック部材としての突出部211Aとなっている。また、基部211には、先端部212を挟んで両側にそれぞれ、リブ211Bおよび傾斜部211Cが形成され、傾斜部211Cがレール10Aの傾斜部10Bと係合することにより、バックル20Aがレール10Aの内側に係止される。
先端部212には、レール10Aに沿って孔212Aが形成されている。
【0027】
本体22は、スライド部21の先端部212が挿通される矩形状の開口221と、この開口221の両短辺から立ち上がり、孔222Aを有する一対の起立部222と、両方の起立部222の内側でカム23の側面を受ける一対の受け部223と、これらの受け部223の裏側にそれぞれ突出する一対の突起224と、テープ取付部24が回動自在に取付けられる一対の軸部225とを有する。突起224は、基部211のリブ211B間に配置される。
【0028】
カム23は、スライド部21に軸支される一対のカム部231と、これらのカム部231と一体のレバー部232とを有する。このカム23が本体22の起立部222の間に配置されると、各カム部231の間にスライド部21の先端部212が配置される。この状態で、合成樹脂で形成されたピン25をカム部231の軸孔231A、およびスライド部21の孔212Aに通すことにより、本体22と、カム23と、スライド部21とが互いに組み付けられる。
【0029】
図6、図7は、バックル20Aをレール10Aに固定する手順について示す。図6のように、カム23のレバー部232を本体22側から引き上げた状態では、スライド部21の基部211がレール10Aの溝10Dに遊嵌された状態であり、バックル20Aはレール10Aに固定されていない。この状態から、図7のように、カム23のレバー部232を本体22側に回動すると、受け部223に当接されるカム23の側面とカム23の軸(ピン25)との距離が大となり、これらカム23およびピン25に連動してスライド部21の基部211が本体22に近接し、本体22の下面と基部211との間にレール10Aの一部が挟持される。この際、基部211の傾斜部211Cがレール10Aの内側から外側に向かって傾斜部10Bに押圧固定される。また、本体22と、本体22側に回動されたレバー部232のカム面との圧接によって、図7中、反時計回り方向へのカム部231の回転が規制されるため、バックル20Aがレール10Aに固定された状態が維持される。尚、レバー部232の回転の規制は、例えば本体22に設けた凹部とレバー部232に設けた凸部との係合などによって行ってもよい。
【0030】
このように、バックル20Aは、カム23を利用して本体22の下面と、傾斜部211Cとでレール10Aを強固に挟持することができるので、レール10A上の任意の位置で確実に固定することができる。ここで、傾斜部211C,10Bが互いに係合することにより、このような傾斜部211C,10Bがない場合と比べて、基部211が本体22側により強く押圧され、レール10Aが強固に挟持される。なお、傾斜部211C,10Bがない場合とは、例えば、レール10Aの溝10Dの両側面と、スライド部21の基部211の両側面とがそれぞれ、デッキボード1の厚み方向に沿って平坦に形成されている場合であり、レール10Aおよびスライド部21の構成が簡略となるから、このような構成を採用してもよい。
【0031】
図8は、バックル20Aにより、デッキボード1が起立姿勢にロックされた状態を示す。デッキボード1の端部を溝151に保持した際に、レール10Aの位置と内装部150に形成された凹部としての穴152の位置とが合い、図6のようにカム23を引き上げた状態でバックル20Aの本体22をレール10Aの端部までスライドすることにより、スライド部21の突出部211Aがレール10Aから突出し、穴152に挿入される。そして、図7のようにカム23を倒してバックル20Aをレール10Aに固定すれば、突出部211Aと穴152との係合により、デッキボード1が起立姿勢にロックされる。このように、バックル20Aは、収納物品を保持する部材であるとともに、デッキボード1を起立姿勢に保つロック部材としても兼用されている。
【0032】
なお、図9に示すように、レール10Aにおいてバックル20Aと反対側に設けられたバックル20Cについても、バックル20Aと同様に、レール10Aの端部までスライドされ、内装部150に形成された穴152に突出部211Aが挿入される。
【0033】
図9には、バックル20A,20BにテープTPの両端をそれぞれ取り付け、フロア100の収納部101に配置された収納物品9Aを保持した状態を示した。テープTPは、面ファスナなどで形成され、テープ取付部24に挿通されて取り付けられている。なお、テープTPは、例えばラバーなどの弾性部材などで形成されていてもよい。
このテープTPとデッキボード1裏面との間に収納部101の開口101Aから突出する収納物品9Aが挟まれ、保持される。本実施形態では、デッキボード1裏面からレール10Aが突出していないので、収納物品9Aが安定的に保持される。
ここで、バックル20Bをスライドさせることにより、収納物品9Aを保持する位置の調整が可能である。
このとき、ロック部材としての突出部211Aは、デッキボード1の両端側にあるバックル(本実施形態ではバックル20A,20C)にのみ設けられていればよく、その他のバックル(本実施形態ではバックル20B)には必ずしもこのようなロック部材としての突出部211Aが設けられている必要はない。
【0034】
図10には、バックル20A,20CにテープTPの両端部をそれぞれ取り付け、図9の収納物品9Aよりも大きな収納物品9Bを保持した状態を示した。図10において、バックル20Bの図示は省略してある。このように、収納物品9A,9Bのサイズや形状、収納部101に配置された位置などに応じて、バックル20A,20B,20Cを使い分けることが可能である。
なお、図9、図10では、バックル20A,20Cによりデッキボード1の両端部が内装部150にロックされていたが、デッキボード1は溝151に保持されているので、必要に応じてバックル20A,20Cの片方または両方をレール10Aの中央側にスライドしてもよい。
【0035】
また、バックル20A〜20Cによる物品の保持は、これ以外にも様々な態様が考えられ、例えば、バックル20A,20B,20Cのいずれか1つのテープ取付部24に1本のテープTPの両端側を取付けてもよく、これにより、テープTPで作られた輪の中に収納物品9A,9Bを保持することが可能である。
さらに、デッキボード1は、主として、収納部101から突出する背の高い収納物品9A,9Bを保持することを目的とするが、収納部101から浮いた状態で物品が保持されていてもよい。これには、例えば、バックル20A,20Bの間に物品を保持するためのネット部材を設けることなどが考えられる。
【0036】
以上のように、レール10Aとバックル20A,20B,20Cとを備えるデッキボード1によれば、バックル20A,20B,20Cをレール10Aの任意の位置にスライドすることで収納物品9A,9Bを保持する位置の調整ができる。
加えて、カム23によりバックル20A〜20Cがそれぞれレール10Aの傾斜部10Bに強固に固定されるので、収納物品9A(鉢植えなど)や収納物品9B(灯油が充填されたポリタンクなど)の重量物をも適切な位置で確実に保持できる。
【0037】
本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が許容される。
【0038】
〔第1変形例〕
図11には、4つのバックル20A,20B,20C,20Dが設けられたデッキボード2を示した。このデッキボード2の構成は、バックルの数を除いて、前記実施形態のデッキボード1と同様である。
【0039】
図12は、デッキボード2の使用状態を示す。レール10A両端側のバックル20A,20Dの各突出部211Aは、デッキボード2を起立姿勢に保持するロック部材として機能している。そして、レール10Aにおいて互いに隣り合うバックル20A,20BにテープTPの両端がそれぞれ取り付けられ、互いに隣り合うバックル20C,20Dにも、別のテープTPの両端がそれぞれ取り付けられる。このようにすれば、テープTPとデッキボード2の裏面との間の空間SP1,SP2にそれぞれ別の収納物品9A,9Bがそれぞれ保持され、良好に輸送できる。
なお、図12に示した以外にも、各バックル20A〜20DとテープTPとを適宜使用して、様々な寸法、形状の収納物品を保持できる。また、例えば、バックル20B,20Cの各テープ取付部24にも別のテープTPを設け、3つの収納物品を保持することも考えられる。
また、突出部(ロック部材)211Aは、レール10Aに複数設けられたバックル20A〜20Dのうち、レール10Aの両端側にそれぞれ配置されたバックル20A,20Dにのみ設けられていればよく、残りのバックル20B,20Cには必ずしも必要ではない。さらに、バックル20A,20Dにおいても、このような突出部211Aが本体22の両側から突出するようにそれぞれ設けられている必要はない。すなわち、これらのバックル20A,20Dをレール10Aの端部までスライドさせた際に、当該レール10Aの端縁に臨む片側(図12中、バックル20Aでは上側、バックル20Dでは下側)にのみ、突出部211Aが設けられていてもよい。
【0040】
〔第2変形例〕
図13には、レール10Aが平行に2つ設けられたデッキボード3を示す。このようにレール10Aを二段構成とすることで、より背が高い収納物品を高さ方向における2箇所で安定的に保持できる。
ここで、本変形例では、各レール10Aの端部にそれぞれスライドされたバックル20Aにより、デッキボード3がフロア100に起立した状態でロックされている。このように、デッキボード3は内装部150に2箇所で安定的にロックされており、内装部150には、前述のようにデッキボード3の端部を保持する溝151(図11)が形成されていない。前述の構成では、デッキボード1のより安定的な保持のためと、デッキボード1を起立させる際の便宜のために、溝151が形成されていたが、特に本変形例では、このような溝は必須ではない。
また、デッキボード3の長辺にヒンジを設け、このヒンジによってデッキボード3をフロア100に対して起伏自在とし、ロック部材を兼ねるバックル20Aによってデッキボード3を車体に固定することも考えられる。
なお、デッキボードに設けられるレールの数、位置などは特に限定されない。レールが延びる向きについても任意であり、例えば、デッキボード1などの長手方向に対してレールが斜めに延びていてもよい。これは、高さが異なる複数の収納物品を保持する際に便利である。
【0041】
〔第3変形例〕
図14には、収納部101の車体の幅方向における一部をそれぞれ覆うデッキボード4,5を示した。収納部101は、車体の幅方向において第1収納部1011と第2収納部1012とに略二等分され、第1収納部1011には、デッキボード4が設けられ、第2収納部1012には、デッキボード5が設けられている。デッキボード4は、前記実施形態などで述べたデッキボードと同様の構成であるが、デッキボード5は、裏面側にレールやバックルが設けられていない普通のデッキボードとして構成されている。なお、図14には、バックル20Aにより、デッキボード4の片側が車体にロックされた状態を示した。
このように構成することにより、デッキボード4が設けられた第1収納部1011の部分には、背が高い物品などを配置し、デッキボード5が設けられた第2収納部1012の部分には、背の低い物品を収納するというように使い分けが可能となり、使い勝手が良い。また、デッキボード4が起立された際に露出する範囲が収納部101の全体ではないので、見栄えも良い。
また、デッキボード4,5の両方を、レール10Aおよびバックル20A,20Bなどを有する本発明のデッキボードとして構成してもよい。いずれにしても、車体の幅方向においてデッキボードが複数設けられることにより、前述と同様に、収納部101の部分部分を便利に使うことができる。
【0042】
〔第4変形例〕
さらに、前記実施形態および前記変形例ではいずれも、デッキボードをフロアに対して起立させ、収納部の開口を開放した状態で使用していたが、例えば工具などの比較的小さな収納物品を前記保持部材に保持固定した後、デッキボードを倒し、収納部の開口を閉じた状態で使用してもよい。これにより、車の運転時における荷台の騒音が減少する。
【0043】
〔第5変形例〕
そして、図15には、本発明の第4変形例に係るデッキボード6を示した。デッキボード6のレール10Aには、4つのバックル30A,20B,20C,30Dが並んでいる。ここで、レール10Aの両端側に配置されたバックル30A,30Dは、テープ取付部24を有していないこと以外は、バックル20B,20Cと同様の構成であり、バックル30A,30Dそれぞれの突出部211Aが内装部150の穴152に挿入されることにより、デッキボード6が起立姿勢にロックされる。つまり、前述した構成においてレール10Aの両端側に配置されたバックル20A,20D(図12)等は、収納物品9A,9Bが保持されるテープ取付部24と、ロック部材としての突出部211Aとを兼ね備えていたが、本変形例のように、レール10Aの両端側に、収納物品を保持せずにデッキボード6の姿勢のロックのみ行うバックル30A,30Dが設けられていてもよい。
【0044】
なお、以上で述べたデッキボードは、ボード本体10とレール10Aとが押出成形により一体に形成されていたが、これに限らず、ボード本体とは別に形成されたレールがボード本体に取り付けられていてもよい。また、ボードの形状やレールの形状なども、前記実施形態に何ら限定されない。
また、前述したバックル20A等では、スライド部21およびカム23をピン25が貫通することにより、カム23がスライド部21に軸支されていたが、これに限らず、本体22の孔222Aなどにカム23を軸支する構成も採用し得る。要するに、本発明において、デッキボードに設けられたレールにスライド可能かつ任意の位置で固定可能に設けられる保持部材の構成は、例示したバックル20Aなどに何ら限定されず、保持部材は、レールにスライド可能であり、かつ、レールに対して何らかの固定手段を有していればよい。
【0045】
以上、本発明を実施するための最良の構成について具体的に説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形および改良を加えることができるものである。
上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のデッキボードは、各種車体のフロアに設けられるデッキ(荷台)に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態のデッキボードを車体と共に示す斜視図。
【図2】図1において、デッキボードを起立させた状態を示す図。
【図3】前記実施形態のデッキボードの分解斜視図。
【図4】前記実施形態のバックルの斜視図。
【図5】前記実施形態のバックルの分解斜視図。
【図6】前記実施形態のバックルの固定手順を示す側断面図。
【図7】前記実施形態のバックルの固定手順を示す側断面図。
【図8】前記実施形態のバックルにより、デッキボードがロックされた状態を示す図。
【図9】前記実施形態のデッキボードの使用例を示す上面図。
【図10】前記実施形態のデッキボードの使用例を示す上面図。
【図11】本発明の第1変形例におけるデッキボードの裏面側を示す図。
【図12】前記変形例のデッキボードの使用例を示す上面図。
【図13】本発明の第2変形例におけるデッキボードの裏面側を示す図。
【図14】本発明の第3変形例におけるデッキボードを車体と共に示す斜視図。
【図15】本発明の第5変形例におけるデッキボードの使用例を示す上面図。
【符号の説明】
【0048】
1〜6・・・デッキボード、9A,9B・・・収納物品、10A・・・レール、10B・・・傾斜部(係止部)、20A,20B,20C,20D,30A,30D・・・バックル(保持部材)、21・・・スライド部、22・・・本体、23・・・カム、24・・・テープ取付部(収納物品取付部)、100・・・フロア、101・・・収納部、101A・・・開口、152・・・穴(凹部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロア(100)に設けられた収納部(101)の開口(101A)を覆うデッキボード(1,2,3,4)であって、
前記開口(101A)を覆うとともに開放可能な構造とされ、
前記収納部(101)の開口(101A)を覆う際に前記開口(101A)に対向する裏面側にレール(10A)を備え、
前記レール(10A)には、収納物品(9A,9B)を保持する保持部材(20A,20B,20C,20D)がスライド可能かつ任意の位置で固定可能に設けられている
ことを特徴とするデッキボード(1,2,3,4)。
【請求項2】
前記レール(10A)は、溝条とされる
ことを特徴とする請求項1に記載のデッキボード(1,2,3,4)。
【請求項3】
前記レール(10A)には、当該デッキボード(1,2,3,4)を前記車体に保持するロック部材(211A)が設けられる
ことを特徴とする請求項1または2に記載のデッキボード(1,2,3,4)。
【請求項4】
前記保持部材(20A,20B,20C,20D)は、2つ以上設けられ、これらの保持部材(20A,20B,20C,20D)にはそれぞれ、紐部材が取付けられる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のデッキボード(1,2,3,4)。
【請求項5】
前記レール(10A)は、当該レール(10A)の幅方向内側に係止部(10B)を有する溝条とされ、
前記保持部材(20A,20B,20C,20D)は、前記レール(10A)の内側に摺接してスライド可能に設けられるスライド部(21)と、前記レール(10A)の外側に設けられる本体(22)と、前記本体(22)および前記スライド部(21)の一方に軸支され前記スライド部(21)を前記本体(22)に対して近接離隔させるカム(23)と、前記本体(22)に設けられ前記収納物品(9A,9B)を保持する収納物品取付部(24)とを備え、
前記スライド部(21)は、前記カム(23)の回動によって前記本体(22)に近接した際に、前記レール(10A)の内側から外側に向かって前記係止部(10B)に押圧固定される
ことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のデッキボード(1,2,3,4)。
【請求項6】
前記保持部材(20A,20B,20C,20D)のうち前記レール(10A)の端部側に配置される少なくとも1つは、前記ロック部材を兼ねている
ことを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のデッキボード(1,2,3,4)。
【請求項7】
前記スライド部(21)は、前記ロック部材として、前記レール(10A)に沿って前記本体(22)の外側に突出する突出部(211A)を有し、
前記突出部(211A)は、前記本体(22)が前記レール(10A)の端部までスライドされた際に、前記車体に形成された凹部(152)に挿入される
ことを特徴とする請求項6に記載のデッキボード(1,2,3,4)。
【請求項8】
前記収納部(101)の開口(101A)の一部を覆う寸法とされている
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のデッキボード(4)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−261468(P2007−261468A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90556(P2006−90556)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【出願人】(000133065)株式会社タケヒロ (16)
【Fターム(参考)】