説明

デュアルディスペンサ装置

【課題】ピストンと保管チャンバの壁との間により優れたシールが実現されるデュアルディスペンサ装置を提供すること。
【解決手段】第1の成分用の第1の保管チャンバ2と、第2の成分用の第2の保管チャンバ3と、第1の保管チャンバ2に貫入する第1のプランジャ7と、第2の保管チャンバ3に貫入する第2のプランジャ8とを有するデュアルディスペンサ装置が提供される。保管チャンバ2、3は隣り合って配置され、それぞれ遠位端5に第1又は第2の成分用の出口21、31を有する。各成分を分配するピストン71、81がそれぞれのプランジャ7、8に成形され、保管チャンバ2、3のそれぞれの壁によって密閉的に案内される。各保管チャンバ2、3は近位端4に少なくとも1つの第1の案内要素11を、各プランジャ7、8はピストン71、81に隣接する少なくとも1つの第2の案内要素12を有し、案内要素11、12は係合するよう構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前提部分による、2つの流動性成分を分配するためのデュアルディスペンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つの成分系を保管及び分配するために、デュアルシリンジなどのデュアルディスペンサ装置がよく用いられる。この2つの成分系において、2つの成分は、例えば、それぞれの適用のために単に互いに接触し、次いで固まるようにすべきである。2つの互いに分離した保管チャンバが設けられ、そのそれぞれが2つの成分の1つを収容する。各保管チャンバには、保管チャンバから出口を通してそれぞれの成分を分配するために、ピストンを有するプランジャが設けられる。2つのプランジャは通常、デュアルプランジャの形で構成される。こうしたディスペンサ装置は、通常は入口領域が2つの保管チャンバの出口に接続されたスタティック・ミキサを備えている。2つの成分は、それを適用する場合に、2つのプランジャに対する圧力作用によりそれぞれの出口を通してスタティック・ミキサ内に運ばれ、そこで2つの成分が完全に混合され、次いで均質な集合体として分配される。
【0003】
そうしたデュアルシリンジの内容物は、複数回の適用の後に使い尽くされることが多い。そのような場合、1回の適用後にスタティック・ミキサが取り外され、デュアルシリンジには、2つの出口を閉じる閉鎖キャップが提供される。次の適用の場合には閉鎖キャップが取り外され、新しいスタティック・ミキサが配置され、ミキサを通して成分が分配される。
【0004】
保管チャンバ内にはそれぞれピストンが設けられ、プランジャによって移動させられることにより出口を通してそれぞれの成分を放出する。この目的のために、ピストンはそれぞれの保管チャンバ内の別個の構成要素として働き、手動で又は機械的に作動されるプランジャによってこれらピストンを移動させる装置が知られている。しかしながら、ピストンがそれぞれプランジャに直接成形される装置、すなわちピストンが別個の構成要素ではなく、プランジャがその端部領域でピストンとして構成される装置も知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのようなデュアルディスペンサ装置では、ピストンとそれぞれの保管チャンバの壁との間のシールがきわめて重要なものになる。この場合、特にピストンがプランジャに成形された装置では、よく問題が起こる。ピストンを移動させる働きをするプランジャによって、曲げモーメント及び捩りモーメントがピストンに直接伝えられ、その結果、それぞれの保管チャンバの長手方向の軸線に対してピストンが傾く。こうしたピストンの傾きによって、望ましくない漏出が生じる可能性、すなわち保管チャンバ内にある成分が、それぞれのピストンと保管チャンバの壁との間を通って出口から遠位の保管チャンバの端部に至り、そこで周囲に出る可能性がある。
【0006】
この問題は、本発明によって解決される。したがって本発明の1つの目的は、特にピストンが各プランジャに成形されたデュアルシリンジとして構成することもできるデュアルディスペンサ装置であって、ピストンと保管チャンバの壁との間により優れたシールが実現され、そのシールは、曲げモーメント及び捩りモーメントがあっても信頼性が高い状態のままであるデュアルディスペンサ装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を満たす本発明の主題は、独立請求項の特徴部分によって特徴付けられる。
【0008】
したがって本発明によれば、2つの流動性成分を分配するためのデュアルディスペンサ装置が提案され、このデュアルディスペンサ装置は、第1の成分用の第1の保管チャンバと第2の成分用の第2の保管チャンバを有し、2つの保管チャンバは互いに隣り合って配置され、各保管チャンバはその遠位端に、それぞれ第1の成分用又は第2の成分用の出口を有し、またデュアルディスペンサ装置は、第1の保管チャンバに貫入する第1のプランジャと第2の保管チャンバに貫入する第2のプランジャとを有し、それぞれの成分を分配するそれぞれのピストンが各プランジャに成形されて、保管チャンバのそれぞれの壁によって密閉した形で案内され、各保管チャンバは、出口から遠いその端部に少なくとも1つの第1の案内要素を有し、各プランジャは、それぞれのピストンに隣接する少なくとも1つの第2の案内要素を有し、第1の案内要素及び第2の案内要素は、互いに係合するように構成される。
【0009】
したがって、プランジャの作動によって生じる可能性がある曲げモーメント及び捩りモーメントが、2つの互いに係合する案内要素それぞれによって、一方では保管チャンバの近位端、すなわちそれぞれの出口から遠い保管チャンバの端部において、他方ではピストンとして構成されたプランジャの端部の近傍において、少なくとも保管チャンバの壁に伝えられる程度に大きくなり、ピストンとして形成されたそれぞれのプランジャの端部には、前記曲げ及び捩りの要素が、(仮に作用するとしても)実質的に弱められた形で作用するだけにすることができ、その結果、ピストンの傾きが実質的に低減されるか、又は完全に回避される。したがって、ピストンと保管チャンバの壁との間にかなり改善されたシールが生じる。
【0010】
特に好ましい実施例では、第1の案内要素は、保管チャンバの壁における溝であり、第2の案内要素は、溝に係合することができるウェブである。このウェブと溝の間の協働によって、捩りの動きが保管チャンバの壁に特に適切に伝わることが保証される。
【0011】
有利には、各ウェブは案内長に対してそれぞれ、ウェブと協働する溝より長く構成される、すなわち、プランジャがそれぞれの出口の方向に移動するときに溝によって案内される経路は、この手段によって拡大することができる。
【0012】
各プランジャがプランジャの周縁上に等距離に分配された4つのウェブを有する場合に、特に有利であることが分かっている。周縁方向に対して互いに90°ずらして配置された4つの溝及び4つのウェブを有するこの構成によって、傾きに対するピストンの特に適切な保護を実現することができる。
【0013】
好ましい手段は、各溝をそれぞれの出口から遠いその溝の端部で終わるものとして構成することである。それによってウェブは、プランジャの移動時に、シールを弱めることなくより簡単に摺動して、それぞれの溝から外れることが可能になる。
【0014】
実際には、各溝の長さが、それぞれの保管チャンバの長さの少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%になる場合に有利であることが分かっている。このようにして、特に適切なプランジャの案内及び特に小さいピストンの傾きが実現される。
【0015】
好ましい実施例では、各出口はそれぞれの円形断面を有する。これに関して、2つの出口間のクロス・コンタミネーションが回避されるように、出口は完全に互いに分離される。
【0016】
2つの出口は、スタティック・ミキサ又は閉鎖キャップと協働するように構成された結合デバイスの一部であることが好ましい。出口は、この手段によって、分配用のスタティック・ミキサ又は次の利用まで出口を閉じる閉鎖キャップに簡単な方法で接続することが可能になる。
【0017】
実際の態様の下では、結合デバイスがバヨネット接続用に構成される場合、簡単に処理することができるため有利である。
【0018】
有利な手段は、結合デバイスが、スタティック・ミキサ又は閉鎖キャップのコード化要素と協働するように構成されたコード化手段を含むことを包含する。それによって、スタティック・ミキサ又は閉鎖キャップを、結合デバイス、したがって保管チャンバの出口に、正確にある向きにおいてのみ接続可能にすることが保証される。このようにして、出口のクロス・コンタミネーション又は閉塞を効果的に回避することができる。
【0019】
成分の保管に関しては、結合デバイスに解放可能に接続され、2つの出口を閉じる閉鎖キャップが設けられる場合に有利である。
【0020】
2つの成分の分配のためには、結合デバイスに解放可能に接続されるスタティック・ミキサが設けられることが好ましく、各出口は、スタティック・ミキサの入口に接続される。ミキサと結合デバイスの間に、結合デバイスのコード化手段と協働するコード化手段を有するアダプタが設けられるような実施例も可能である。
【0021】
本発明のさらに有利な手段及び実施例は、従属請求項から得ることができる。
【0022】
以下では実施例及び図面を参照しながら、本発明についてさらに詳しく説明する。概略図は、一部が断面で示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるデュアルディスペンサ装置の一実施例の斜視図。
【図2】保管チャンバの斜視図。
【図3】出口から遠い端部から保管チャンバの中を見た、保管チャンバの斜視図。
【図4】図2の線IV-IVに沿った保管チャンバの1つを通る縦断面図。
【図5】溝の領域内の、2つの保管チャンバの1つを通る概略断面図である。
【図6】溝の1つを有する保管チャンバの壁からの断面図。
【図7】実施例の2つのプランジャの斜視図。
【図8】2つのプランジャの平面図。
【図9】ウェブの1つを断面で示す、プランジャからの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、全体として参照番号1によって示され、デュアルシリンジ1として構成された、本発明によるデュアルディスペンサ装置の一実施例を斜視図として示している。デュアルシリンジ1は、適用の直前に単に互いに接触させる又は互いに混合するべきである2つの流動性成分を保管及び分配するように設計される。そうした2つの成分系は、例えば2成分接着剤である。互いに別々に保管された2つの成分を混合した後、接着剤は固くなり、それによってその接着力を生じさせる。
【0025】
デュアルシリンジ1は、互いに隣り合って配置された2つの保管チャンバ、すなわち第1の成分用の第1の保管チャンバ2、及び第2の成分用の第2の保管チャンバ3を有し、各保管チャンバは、長手方向の軸線Aの方向に近位端4から遠位端5まで延びる。保管チャンバ2、3は、デュアルカートリッジを形成する。さらによく理解するために、図2は2つの保管チャンバ2、3の斜視図を示し、図3は、近位端4に向かって2つの保管チャンバ2、3の近位端領域を見た、保管チャンバ2、3の斜視図を示している。2つの保管チャンバ2、3は、デュアルシリンジ1の手動操作のための指の支持体として構成された接続部分41を介して、それらの近位端4で互いに接続される。
【0026】
各保管チャンバ2、3は、遠位端5に、第1の成分又は第2の成分のためのそれぞれの出口21、31を有する(図2参照)。各出口21、31は、各ケースにおいてそれぞれの成分のための流れ断面として円形断面を有する別個の出口21、31として構成される。2つの構成要素21、31は互いに間隔を置いて配置され、スタティック・ミキサ10(図1参照)又は閉鎖キャップ9と協働するように構成された結合デバイス6の一部を形成する。図1は、出口21、31上に配置され係止された閉じたキャップ9を有するデュアルシリンジ1を示している。図2では、出口21、31を見るのに妨げがないようにこの閉鎖キャップが除かれている。この実施例では、結合デバイス6はバヨネット(差し込み)接続用に構成される。したがって、閉鎖キャップ9又はスタティック・ミキサ10は、結合デバイス6を介して、バヨネット接続の形で2つの出口21、31に選択的に接続することが可能である。
【0027】
デュアルディスペンサ装置1はさらに、第1の保管チャンバ2に貫入する第1のプランジャ7、並びに第2の保管チャンバ3に貫入する第2のプランジャ8を含む。ここで記述する実施例では、第1のプランジャ7及び第2のプランジャ8は、保管チャンバ2、3に貫入しないそれらの端部で、2つのプランジャ7、8が共通の圧力プレート79を介して互いに接続されたデュアルプランジャ78として構成される。
【0028】
保管チャンバ2、3及びプランジャ7、8はどちらも、プラスチックで製造されることが好ましく、プランジャ7、8に用いられるプラスチックは、保管チャンバ2、3に用いられるものと同じである必要はない。デュアルカートリッジを形成する保管チャンバ2、3、及びデュアルプランジャ78を形成するプランジャ7、8はどちらも、通常は射出成形プロセスによって製造される。
【0029】
さらによく理解するために、図7は、デュアルプランジャ78として形成された2つのプランジャ7、8の斜視図を示しでいる。図8はさらに、長手方向の軸線Aに垂直な方向からの2つのプランジャ7、8の平面図を示している。特に図7及び8に表現されるように、プランジャ7、8はそれぞれ骨組構造によって製造される。この骨組構造は、できるだけ少ない材料消費量と、できるだけ適切な剛性、特に曲げ剛性との間でのきわめて妥当な折衷案である。特に図8も示すように、プランジャ7、8はそれぞれ、大体それらの周縁部の半分より大きい部分を端から端まで延びる壁72、82で覆うように構成される。このことは、一方では、保管チャンバ2、3でのプランジャ7、8の摺動を容易にし、プランジャ7、8の剛性を高め、他方では、射出成形プロセスにおけるデュアルシリンジ78又はプランジャ7、8の取り出しを可能にする。
【0030】
ピストン71及び81はそれぞれ、それぞれのケースにおいて、その端部でプランジャ7、8のそれぞれに成形される。ピストン71、81は、それぞれ保管チャンバ2及び3から2つの成分を分配するように働き、各ピストンは、それぞれ関連付けられた保管チャンバ2及び3の壁によって密閉した形で案内される。ピストン71、81は別個の構成要素として構成されるのではなく、むしろ、それぞれプランジャ7及び8と共に一部片の形で生成される。
【0031】
2つの成分を分配するために、まず図1に示す閉鎖キャップ9が結合デバイス6、したがって2つの出口21、31から外され、スタティック・ミキサ10がバヨネット式のラッチングによって結合デバイス6に接続される。それによって、出口21、31のそれぞれに、関連付けられたスタティック・ミキサ10の入口へのそれぞれの流れ連通が生じる。ここで2つのプランジャ7、8は、例えば手で押すことによる圧力プレート79への圧力作用によって、それらに関連付けられた保管チャンバ2、3の中にさらに深く押し込まれ、それにより、2つのピストン71、81がそれぞれ、第1の成分又は第2の成分をそれぞれの出口21又は31を通してスタティック・ミキサの中へ運ぶ。2つの成分は、公知の方法でスタティック・ミキサ10の中で完全に混合され、本質的に均質な集合体を形成し、次いで適用のために、保管チャンバ2、3から遠いスタティック・ミキサ10の端部から出る。適用が終了した後、スタティック・ミキサ10は結合デバイス6から取り外され、閉鎖キャップ9と取り替えられ、したがって閉鎖キャップ9が2つの出口21及び31を再び閉じる。
【0032】
結合デバイス6は、閉鎖キャップ9又はスタティック・ミキサ10を、保管チャンバ又は出口21、31の上に正確に特定の向きでのみ配置することができるように、スタティック・ミキサ10又は閉鎖キャップ9のコード化要素(encoding element)と協働するように構成されたコード化手段61を有することが好ましい。
【0033】
従来技術によって知られているデュアルディスペンサ実施例とは異なり、本発明によるデュアルディスペンサ装置1における各保管チャンバ2、3は、その近位端4、すなわちそれぞれ出口21、31から遠い端部に、少なくとも1つの第1の案内要素11を有し、各プランジャ7、8は、それぞれのピストン71、81に隣接して、少なくとも1つの第2の案内要素12を有し、第1の案内要素11及び第2の案内要素12は、互いに係合するように構成される。
【0034】
本明細書に記載する実施例では、第1の案内要素は、内部空間の境界を定める保管チャンバ2、3の壁の中の各溝11であり、第2の案内要素は、それぞれプランジャ71及び81の外面に配置され、それぞれの溝11に係合するように構成された各ウェブ12である。溝11及びウェブ12はどちらも、それぞれ長手方向の軸線Aの方向に延びる。
【0035】
溝11及びウェブ12を互いに係合することによって、プランジャ7、8、したがって特にピストン71、81の非常に改善され且つ長く延びた案内が得られる。前記ピストンは、傾く傾向がずっと小さくなり、その結果、一方ではピストン71、81と、他方では保管チャンバ2、3の壁との間で実質的に改善されたシールが得られる。したがって、例えば圧力プレート79に対する圧力によってデュアルプランジャ78を手動で作動するときに生じることがある曲げモーメント又は捩りモーメント、並びに捩れが、協働する溝11及びウェブ12を介して保管チャンバ2又は3の壁にそれぞれ伝えられ、したがってピストン71、81には、(仮に作用するとしても)著しく弱められた形で作用するだけにすることができる。ピストン71、81に力を作用させ得るレバー・アームは、互いに係合する溝11及びウェブ12によって曲げモーメントと共に特に小さくなり、それにより、ピストンがそうした力によって傾きにくくなるようにすることができる。
【0036】
この改善された傾きに対する抵抗力によって、ピストン71及び81の軸線方向の高さHをより小さく構成することが可能になる(図8参照)。
【0037】
保管チャンバ2、3が近位端5から充填される場合、溝11は、充填を終えた後、プランジャ7、8の保管チャンバ2、3への挿入時に、有利な形で通気するように働く。
【0038】
本明細書に記載する実施例では、各プランジャ7又は8にはそれぞれ、4つのそれぞれのウェブ12が設けられ、それぞれのプランジャ7、8の周縁部の上に等距離に分配される。すなわち、プランジャ7又は8の隣接するウェブ12は、各ケースにおいて周縁方向に対して互いに90°の間隔を有している。さらによく理解するために、図9は、プランジャ7又は8からの断面を、ウェブ12の1つを断面内に示す断面図として示している。
【0039】
それに応じて同様に、保管チャンバ2、3のそれぞれに、4つのそれぞれの溝11が設けられ、実質的に円筒形の保管チャンバ2及び3の内壁上に等距離に分配される。このことをさらに明確に図示するために、図4は、線IV-IVに沿った保管チャンバ2、3の1つを通る縦断面図を示し、図5は、溝11のある領域内で2つの保管チャンバ2又は3の1つを通る、長手方向の軸線Aに垂直な図式化した断面図を示している。図6はさらに、溝11の1つを有する2つの保管チャンバ2又は3の1つの壁の断面を、断面図として示している。
【0040】
特に図4が示すように、溝11はそれぞれ近位端4の近くで始まり、そこから長手方向の軸線Aの方向に長さL1にわたって延びている。
【0041】
各保管チャンバ2、3の内壁には、近位端4の領域内に、保管チャンバ2、3の内側の空間にわずかに突出し、保管チャンバ2、3の内側周縁部全体に沿って周縁方向に延びるリング形のリブとして構成された保持部13がさらに設けられる。溝11のそれぞれは、溝11が保持部13を横断するように配置される。すなわち、溝11はそれぞれ、保持部13の一方の側で長手方向の軸線Aによって画定される軸線方向に始まって、保持部13の他方の側で終わる。
【0042】
プランジャ7、8にあるウェブ12(特に図8参照)はそれぞれ、出口21、31から遠いピストン71、81の端部(すなわちピストン71又は81がそれぞれ、プランジャ7及び8の残余部分とそれぞれ合体するところ)で始まり、そこから長手方向の軸線Aの方向に長さL2にわたって、共通の圧力プレート79に向かって延びている。ウェブ12が始まる、ピストン71及び81の端部それぞれにおける軸線方向の同じ位置には、プランジャ7及び8の周縁部に、保持部13と協働して、デュアルプランジャ78が意図せずに引き出されにくくする複数のラッチ・ノーズ14が設けられる。デュアルプランジャ78が保管チャンバ2、3から引き出される場合、ラッチ・ノーズ14は保持部13と係合し、それによって、デュアルプランジャ78の移動が妨げられる。ラッチ・ノーズ14は、さらに高い力を加えることによってのみ保持部13の上に引き上げられ、デュアルプランジャを保管チャンバ2、3から完全に取り外すことができる。
【0043】
保管チャンバ2又は3ごとに4つの溝11、及びプランジャ7又は8ごとに4つのウェブ12を有する実施例によって、特に安定したクロスガイドが得られ、それによって、捩りモーメント及び曲げモーメントを、保管チャンバの壁にきわめて簡単に伝えることが可能になる。
【0044】
各ウェブ12がそれぞれ、それと協働する溝11より長いことが特に有利である。これは、長さL2が長さL1より長いことを意味する。プランジャ7、8、したがってピストン71、81は、この手段によって、出口21、31の方向におけるピストン71、81の移動時にさらに長く、この移動において、圧力プレート79に面するウェブ12の端部がそれぞれ関連付けられた溝11から出るまで案内される。
【0045】
長手方向の軸線Aの方向に延びる移動であって、それぞれの溝11から外れるウェブ12の移動を簡単にするため、すなわち前記移動をより小さい力を加えることによって可能にするために、溝11は特に、保管チャンバ2又は3内にさらに配置されたそれら溝11の端部で終わるものとして構成される(図6参照)。図6に関して、図面におけるその右端では、溝11は軸線方向に緩やかに且つ絶えずより平坦になっており、したがって、ウェブ12は軸線方向に摺動して、それぞれの溝11からより簡単に外れることが可能になる。それに応じてウェブ12にも同じことがあてはまり、ウェブ12は、やはり軸線方向において終わるものとして構成される。
【0046】
実際には、各溝11の長さL1は、それぞれの保管チャンバ2及び3の長さのそれぞれ少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%であることが分かっている。すべての溝11は、同じ長さL1を有することが好ましい。
【0047】
すべてのウェブ12は、同じ長さL2を有することが好ましい。
【0048】
デュアルディスペンサ装置1を充填するには、原則として2つの選択肢がある。どちらの保管チャンバ2、3も出口21、31を通して充填されるか、又は近位端から充填される。
【0049】
第1の方法において、デュアルプランジャ78は、ピストン71、81がそれぞれの保管チャンバ2、3の遠位端5に接触するまで、保管チャンバ2、3の中に導入される。次に、第1の成分が第1の出口21を通して、第2の成分が第2の出口31を通して導入される。2つのピストン71、81は、ラッチ・ノーズ14が保持部13と係合するまで、流入する成分によって近位端4の方向に戻るように動かされる。次いで、充填の手順を終了し、出口21、31が閉鎖キャップ9によって閉じられる。
【0050】
第2の方法において、デュアルプランジャ78は、依然として保管チャンバ2、3の中に導入されない。第1の保管チャンバ2及び第2の保管チャンバ3はそれぞれ、近位端4からそれぞれ第1の成分及び第2の成分で充填され、出力部21及び31が閉じられる。軸線方向において、第1の成分又は第2の成分と、ピストン71、81の軸線方向の高さHにちょうど対応する保持部分との間になお自由な空間が存在するときに、最大の充填高さに達する。保管チャンバ2、3はもちろん、より少なく充填することもできる。充填後、デュアルプランジャ78は保管チャンバ2及び3の中に導入され、ラッチ・ノーズ14が保持ホルダ13を乗り越え、そこでラッチされるまで前方へ動かされる。このプロセスにおいて、溝11は、デュアルプランジャの導入時に空気が逃げるのを助ける。
【0051】
保管チャンバ2、3を空けるとき、すなわち出口21、31を通して2つの成分をスタティック・ミキサ内に分配するとき、溝11の中に係合するウェブ12が、ピストン71、81の確実で安定した案内を可能にする。出口21、31の方向におけるデュアルプランジャ78又はピストン71、81の移動時に、ピストン71、81は、溝11及びウェブ12によって、長い間、圧力プレート79に面するウェブ12の端部が溝11から出るまで案内される。ウェブ12の高さ、並びにプランジャ7、8及び保管チャンバ2、3を製造する材料の弾性特性は、ウェブ12が保管チャンバ2又は3の壁に沿って摺動するとき、溝11を離れた後、ウェブ12がピストンに沿った漏れを引き起こさないように選択される。
【0052】
本発明によるデュアルディスペンサ装置1は、例えば、保管チャンバ2、3の充填体積が、それぞれの場合において25mlになるデュアルシリンジ1に適している。
【0053】
本明細書に記載する実施例では、2つの保管チャンバ2、3が同じ大きさ、特に同じ直径を有している。これは特に、2つの成分を1対1の比で混合すべき場合である。もちろん、2つの保管チャンバ2、3が、同じ軸線方向の長さで、異なる大きさ、特に異なる直径を有する実施例も可能である。そのような実施例は、2対1、4対1又は10対1など他の混合比を実現するのに有利である。
【符号の説明】
【0054】
1 デュアルシリンジ
2 第1の保管チャンバ
3 第2の保管チャンバ
4 近位端
5 遠位端
6 結合デバイス
7 第1のプランジャ
8 第2のプランジャ
9 閉鎖キャップ
10 スタティック・ミキサ
11 第1の案内要素、溝
12 第2の案内要素、ウェブ
13 保持部
14 ラッチ・ノーズ
21、31 出口、出力部
41 接続部分
61 コード化手段
71、81 ピストン
72、82 壁
78 デュアルプランジャ
79 圧力プレート
A 長手方向の軸線
H ピストンの軸線方向の高さ
L1 溝の長さ
L2 ウェブの長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの流動性成分を分配するためのデュアルディスペンサ装置であって、
第1の成分用の第1の保管チャンバ(2)と、
第2の成分用の第2の保管チャンバ(3)であって、前記2つの保管チャンバ(2、3)が互いに隣り合って配置され、また各保管チャンバ(2、3)が、それらの遠位端(5)に前記第1の成分用又は前記第2の成分用の出口(21、31)をそれぞれ有している第2の保管チャンバ(3)と、
前記第1の保管チャンバ(2)に貫入する第1のプランジャ(7)と、
前記第2の保管チャンバ(3)に貫入する第2のプランジャ(8)であって、前記それぞれの成分を分配するためのそれぞれのピストン(71、81)が各プランジャ(7、8)に成形され、且つ前記保管チャンバ(2、3)のそれぞれの壁によって密閉状態で案内される第2のプランジャ(8)と
を有する装置において、
各保管チャンバ(2、3)が、前記出口(21、31)から遠いその端部(4)に少なくとも1つの第1の案内要素(11)を有し、各プランジャ(7、8)が、前記それぞれのピストン(71、81)に隣接する少なくとも1つの第2の案内要素(12)を有し、前記第1の案内要素(11)及び前記第2の案内要素(12)が、互いに係合するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1の案内要素が、前記保管チャンバ(2、3)の前記壁における溝(11)であり、前記第2の案内要素が、前記溝(11)内に係合可能なウェブ(12)である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各ウェブ(12)が、いずれの場合にも、該ウェブ(12)と協働する前記溝(11)より長い請求項2に記載の装置。
【請求項4】
各プランジャ(7、8)が、該プランジャ(7、8)の周縁上に等距離に分配された4つのウェブ(12)を有する請求項2又は請求項3に記載の装置。
【請求項5】
各溝(11)が、それぞれの前記出口(21、31)に面するそれぞれの端部で終わるものとして構成される請求項2から4までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
各溝の長さ(L1)が、前記それぞれの保管チャンバ(2、3)の長さの少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%である請求項2から5までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
各出口(21、31)が円形断面をそれぞれ有する請求項1から6までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
2つの前記出口(21、31)が、スタティック・ミキサ(10)又は閉鎖キャップ(9)と協働するように構成された結合デバイス(6)の一部である請求項1から7までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記結合デバイス(6)がバヨネット接続用に構成されている請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記結合デバイス(6)が、スタティック・ミキサ(10)又は閉鎖キャップ(9)のコード化要素と協働するように構成されたコード化手段(61)を含む請求項8又は請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記結合デバイス(6)に解放可能に接続される、2つの前記出口(21、31)を閉じる閉鎖キャップ(9)を有する請求項8から10までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置が、前記結合デバイス(6)に解放可能に接続されるスタティック・ミキサ(10)を有し、各出口(21、31)が前記スタティック・ミキサ(10)の入口に接続される請求項8から10までのいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−86896(P2012−86896A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230245(P2011−230245)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(508105773)スルザー ミックスパック アクチェンゲゼルシャフト (14)
【Fターム(参考)】