説明

デュアル・ワイヤ一体型WAMR/HAMR書込みヘッド

【課題】デュアル・ワイヤ一体型WAMR/HAMR書込みヘッドを提供すること。
【解決手段】導波路と、導波路からの電磁放射を空気軸受面の近傍点に結合させて記憶媒体の一部分を加熱する光トランスデューサと、空気軸受面に近接して配置された第1のワイヤとを有する装置であって、第1のワイヤ内の電流が記憶媒体の加熱された部分に磁界を発生させる、装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国標準技術局(NIST)によって裁定された協定第70NANB1H3056号により米国政府の支援を受けて行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、データ記憶装置に関し、特に、ワイヤ増幅磁気記録(WAMR)と熱支援磁気記録(HAMR)との組合せを利用するデータ記憶装置に関する。
【背景技術】
【0003】
熱支援光/磁気データ記憶装置では、情報ビットが高温において記憶媒体の層に記録され、記憶媒体内の加熱される面積によってデータ・ビット寸法が決まる。熱支援磁気記録(HAMR)は、一般に、熱源によって引き起こされる一時的磁気軟化の間に、加えられた書込み磁界によって記録媒体の磁化がより起こりやすくなるように、記録媒体を局所的に加熱して保磁力を低くする考え方を指す。室温では記録媒体の保磁力を記録時より格段に高くすることにより、記憶密度をより高くし、ビット・セルをより小さくしても、記録されたビットを安定させることが可能である。熱支援磁気記録は、長手磁気記録媒体、垂直磁気記録媒体、パターンドメディアなどを含む任意のタイプの磁気記憶媒体に適用可能である。
【0004】
熱支援磁気記録は、磁気ディスク・ドライブの面記憶密度を0.155Tb/cm(1Tb/in)以上に拡張するために提案されている。この技術を実現するものの1つが光トランスデューサ(OT)である。OTは、記録される磁気マークの寸法にほぼ制限されたスポットの形で、即ち、電磁スペクトラムの可視領域の周囲の回折限界を十分下回る寸法で、光エネルギーを効率的に記録媒体に加えることが可能である。光エネルギーは、磁気記録媒体を加熱して、その保持力を下げる。そうしておいて、所望の方向に磁界を加えることにより、媒体内のビットの磁気スイッチングを行うことが可能である。この磁界を発生させるためには、金属構造物及び/又は磁気構造物を記録ヘッドに組み込み、それらを光トランスデューサに近接して配置することが必要である。従来の「磁極」ベースの磁気記録ヘッド構造物と光トランスデューサとを組み合わせると、構造が複雑になる。さらに、光トランスデューサに近接するすべての金属構造物が、光トランスデューサの光性能に悪影響を与える。したがって、光トランスデューサに近接する金属構造物の数及びサイズを最低限に抑えることが望ましい。
【0005】
さらに、トランスデューサに光パワーを与えるために薄膜光導波路を用いると、この導波路の内側の金属構造物がさらに光の自由伝搬を妨げ、さらには光トランスデューサにおける光エネルギー密度を下げることになるであろう。
【0006】
これまで提案されてきた書込み磁気ヘッドは、書込み磁界を、ヘッドの空気軸受面(ABS)において書込み磁極に近接して配置されたワイヤによって発生させ、及び/又は増幅する。このワイヤは、ワイヤ内の電流密度を大きくすることによって大きな局所磁界を発生させることが可能である。この記録ヘッドは、ワイヤ増幅磁気記録(WAMR)ヘッドと呼ばれている。このワイヤからの磁束密度を十分高くすることにより、隣接する記憶ディスクの磁化に影響を及ぼすこと、又は、書込み磁界を増強するために、書込み磁極を磁化して、適切な磁界方向及び空間特性を有する追加磁束密度を発生させることが可能である。
【0007】
WAMRの磁界受け渡しの考え方を、HAMRヘッドの光要件と組み合わせることが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、導波路と、導波路からの電磁放射を空気軸受面の近傍点に結合させて記憶媒体の一部分を加熱する光トランスデューサと、空気軸受面に近接して配置された第1のワイヤとを有する装置であって、第1のワイヤ内の電流が記憶媒体の加熱された部分に磁界を発生させる装置を提供する。
【0009】
本発明はさらに、データ記憶媒体と、データ記憶媒体にデータを書き込む記録ヘッドと、記録ヘッドをデータ記憶媒体の近傍に位置決めするアームとを有する装置を包含し、その記録ヘッドは、導波路と、該導波路からの電磁放射を空気軸受面の近傍点に結合させて記憶媒体の一部分を加熱する光トランスデューサと、空気軸受面に近接して配置された第1のワイヤとを含み、第1のワイヤ内の電流が記憶媒体の加熱された部分に磁界を発生させる。
【0010】
別の態様では、本発明は、記録ヘッドの製造方法を提供し、該方法は、光導波路に近接する第1のワイヤ構造物を中間構造物の形で形成することと、第1のワイヤを電子ラップ仕上げガイドとして用いて、中間構造物をラップ仕上げして空気軸受面を形成することとを含む。
【実施例】
【0011】
図面を参照すると、図1は、本発明に従って構築することが可能なディスク・ドライブ10の機械的部分を表したものである。ディスク・ドライブ10は、ディスク・ドライブの各種部品を収容するようにサイズ決め及び構築されたハウジング12を含む(この図では、ハウジング12の上側部分が取り外され、下側部分が見えている)。ディスク・ドライブ10は、ハウジング12内で少なくとも1つのデータ記憶媒体16(この事例では磁気ディスク)を回転させるスピンドル・モータ14を含む。少なくとも1つのアーム18がハウジング12内に収容されており、各アーム18は、記録及び/又は読取りヘッド(スライダ)22を有する第1の端部20と、ベアリング26によってシャフトに枢着された第2の端部24とを有する。ヘッド22がディスク16の所望のセクタの上に位置決めされるようにアーム18を枢支するために、アクチュエータ・モータ(ボイス・コイル・モータ28であってよい)がアームの第2の端部24に配置される。アクチュエータ・モータ28は、図示されていない制御器によって制御される。
【0012】
HAMRディスク・ドライブにおいては、記録ヘッド(書込みヘッド)は、電磁放射(例えば、紫外光、赤外光、又は可視光)を記録媒体の表面に向けて媒体の一部分を加熱し、その部分の磁気保持力を下げる構造物を含む。本説明では、この電磁放射を光と呼ぶ。次に記録磁極(書込み磁極)が、媒体の加熱された部分に磁界をかけて、加熱された部分の磁化方向に影響を及ぼす。電磁放射を方向付ける構造物としては、例えば、光を小さなスポットに合焦させる固体浸レンズ、固体浸ミラー、導波路などや、光スポットのサイズをさらに下げる、関連する光トランスデューサがある。光は、レーザなどの光源によって発生可能であり、光ファイバ又は自由空間伝送によってスライダに伝送することが可能である。この光を、グレーティング・カプラなどの既知技術を用いて、電磁放射を方向付ける構造物に結合することが可能である。
【0013】
図2は、記録ヘッド40の等角図であり、記録ヘッドの空気軸受面(ABS)を示している。記録ヘッドは、2つのクラッド層46、48の間にコア層44を有する平面導波路によって形成される固体浸ミラー(SIM)42を含む。その導波路内に光トランスデューサ50が配置される。光トランスデューサの先端部52は、記録ヘッドの空気軸受面54に近接して配置される。第1及び第2の導電性リード/ヒート・シンク56及び58が、SIMの両側に配置される。第1のワイヤ60が、空気軸受面に近接する第1及び第2の導電性リードの間に延びる。第3及び第4の導電性リード/ヒート・シンク62及び64も、SIMの両側に配置される。第2のワイヤ66が、空気軸受面に近接する第3及び第4の導電性リードの間に延びる。これらのワイヤは、光トランスデューサの両側に対向して配置される。ワイヤ間に磁極片68が配置される。各ワイヤは、磁極片の近傍に切り詰め部分70及び72を含む。この例では、導電性リードは、絶縁層74によって分離されている。しかしながら、他の実施例では、絶縁層74を貫通する導体、或いは絶縁層74の上方又は下方にある導体によって、リード58及び64、又はリード54及び56を電気的且つ物理的に互いに結合することが可能である。
【0014】
2つの金属ワイヤは、ダウントラック方向に延び、導波路の両側に対向して配置されている太い金属リードによって供給される電流によって給電されることが可能である。それらの金属ワイヤを通る電流が互いに反対方向に流れると、ワイヤ間の磁界は、ABSに垂直な強い成分を有し、これによって垂直記録システムに最適な磁界となる。それらの金属ワイヤを通る電流が互いに同じ方向に流れると、ワイヤ間の磁界は、ABSに平行な強い面内成分を有し、これによって長手記録システムに最適な磁界となる。リードは、ヒート・シンクとしても動作する。この例では、光トランスデューサは、導波路のコア層の外側に、磁極構造物に近接して配置されている。磁極は、磁極の磁界と光トランスデューサの加熱スポットとの重なりを最大化するために、光トランスデューサに近接して配置される。しかしながら、光トランスデューサと金属磁極との間隔が小さすぎると、光トランスデューサの効率が低下する。光トランスデューサ及び磁極の効率が最大化されるように、光トランスデューサと磁極の両方がABSに近接する。光トランスデューサと磁極の、互いに対する正確な相対位置、並びに導波路のコア層に対する正確な相対位置は、それらの個々の形状及び使用材料によって決まる。形状及び材料によっては、両方をコア層の外側に配置することが有用なケースと、一方又は両方をコア層の内側に配置することが必要なケースとがあろう。
【0015】
本発明では、書込みヘッドの空気軸受面(ABS)において1つ以上の金属ワイヤを使用する。これらのワイヤを流れる電流によって磁界が発生する。ワイヤは、この磁界が光トランスデューサに対して所望の位置に存在するように配置される。磁極は、磁界が光トランスデューサの位置において強められるように、導波路内に配置される。磁極構造物は、光トランスデューサと接触させて配置することや、光トランスデューサ及び/又は装置内のコア層から任意の所望の間隔をおいて配置することが可能である。
【0016】
原則的には、磁極はどのような形状でもよい。図2では、簡単のために、光トランスデューサと同じ形状を有するように描いている。さらに、磁極は、導波路スタック内の任意の場所に配置可能である。光トランスデューサの反対側に第2の磁極(図示せず)を対称に配置して、磁束密度を高めることが可能である。ワイヤの切り詰め部分では、電流が密集して、切り詰め領域内に比較的強い磁界が発生する。
【0017】
ワイヤの非切り詰め部分のクロストラック方向の寸法がミクロン・オーダでありうるのに対し、切り詰め部分の寸法は、HAMR用途に十分な程度の高い磁界を発生させるためには、数十ナノ・オーダでなければならないであろう。
【0018】
図3は、光トランスデューサ80と、光トランスデューサ80の両側に対向して配置される2つの近接ワイヤ82及び84の概略図である。この例では、光トランスデューサは、円形状ディスク86と、書込みヘッドの空気軸受面92に近接して配置される端部90を有する矩形又は円柱形の付加部分88とを含む。この例では、ワイヤの幅は、空気軸受面に平行な方向94の寸法であり、太さは、空気軸受面に垂直な方向96の寸法である。ワイヤ間隔は、矢印98で示されるワイヤ間距離である。
【0019】
この構造物の性能のシミュレーションを行った。光トランスデューサの効率に対するワイヤの影響を、ワイヤ間隔が300nmの場合のワイヤの太さの関数として図4に示す。図4からわかるように、太さ50nm以下のワイヤは、光トランスデューサの効率を顕著に阻害しない。図5は、光トランスデューサの効率に対するワイヤ間隔の影響を示している。250nm以上のワイヤ間隔は、光トランスデューサの効率に顕著な影響を及ぼさない。
【0020】
図6は、記録ヘッドに含まれうる、2つのワイヤ110及び112、並びに関連する導電体114、116、118、及び120の等角図である。面122は、記録ヘッドの空気軸受面の位置を表す。図6の構造物は、中間構造物であって、ワイヤは、空気軸受面の第1の側に第1の部分124及び126を含み、空気軸受面の第2の側に第2の部分128及び130を含む。部分128及び130は、ラップ仕上げ時には取り外されるであろう。図7は、ラップ仕上げ後のワイヤ110並びに関連する導電体114及び116の等角図である。
【0021】
図6は、ラップ仕上げ前の、電子的ラップ仕上げガイド(ELG)としても使用可能な状態のワイヤを示している。図6の構造物においては、2つのワイヤを、例えば、2μmの間隔で分離することが可能であり、各ワイヤの長さ(導電体間の距離)を、例えば、2μmにすることが可能である。これらの寸法の場合、図6に示したワイヤは、R=U/I=0.775Ωの抵抗を有し(銅塊の抵抗率をρ=1.786×10−8Ωmとする)、2つのワイヤの間の中央における、ABSに垂直な磁界成分はH=0.028T(電流が100mAの場合)である(ただし、電流が2つのワイヤを互いに反対の方向に流れる場合)。
【0022】
ラップ仕上げ時には、ワイヤの前側部分が削られて除去され、一例では、ワイヤが最後の断面(100×100nm)に達したときに抵抗がR=4.1Ωまで増える。
【0023】
ワイヤ間隔が200nmに縮まると、垂直磁界がH=0.22Tまで上昇する(電流が100mAの場合)。ABSからの距離が10nmのところでは、磁界が0.2Tに達する。
【0024】
図8、図9及び図10は、ダウントラック磁界特性及びクロストラック磁界特性、並びにABSからの距離に応じた磁界特性を示している。図8、図9及び図10は、図6の形状の2つのワイヤについて、ワイヤ間隔が200nmの場合だけの、ABSから10nmの場所における計算された磁界特性を示している。
【0025】
ワイヤの磁界を増幅するために、ヘッド構造物に磁極を組み込むことが可能である。FeCo磁極の磁気特性の電磁シミュレーションを実施した。FeCo磁極は、直径200nmの円柱状ディスク部分と、可変長(スロート高さt={20,70,120}nm)のスロート部分とを含んでいた。磁極の太さは、L=50〜100nmの間で変化させた。FeCoに関して用いた材料パラメータは、M=2.4T、K=−4800J/m、及びA=13×10−12J/mであった。
【0026】
図11は、磁極140の形状を示している。磁極140は、一部のHAMRヘッド設計の光トランスデューサ(ピン)142と同様の形状を有する。磁極140は、ディスク形状部分144とスロート部分146とを含む。光トランスデューサ142は、ディスク形状部分148とスロート部分150とを含む。
【0027】
一例では、磁極140は、スロート高さt=120nm及び太さL=100nmであることが可能である。図12は、図11のピン形状の磁極の減磁曲線を、様々なスロート長さt及び太さLについて示したものである。異なる4つの磁極形状についての減磁曲線を、エネルギー最小化法を用いる有限要素マイクロマグネティクス・コードにより計算した。最長スロート高さ(t=120nm)を有する磁極は、最小の(それでも正である)核形成磁界0.27Tを有するが、これは、その形状異方性が磁極の飽和を維持するのに役立っているからである。結果として、最小磁界が飽和(−0.3T)に達することも必要である。スロートが最短の場合は、核形成及び飽和の磁界が0.48Tの、ほぼリニアなヒステリシス曲線になる。
【0028】
図13は、スロート長t=20nm及び太さL=100nmのピン形状の磁極についてのヒステリシス曲線及び磁化分布スナップショットである。磁化は、ABSに対して垂直である。ヒステリシス曲線は、短いスロートを有する太い磁極の場合は、ほぼリニアである。軟磁性「ナノドット」中の残留磁気において見られる、磁束が閉じた状態(うず状態)は、軟磁性円柱形状ナノ構造に特有である。したがって、これらの磁極は、残留状態では、磁界をほとんど発生させない。
【0029】
図14は、様々な磁極形状に対する(外部磁界が均一な場合の)飽和状態の垂直磁界成分のダウントラック磁界特性を示している。図14で示しているのは、スロート長t及び太さLが様々であるピン形状磁極についての、ABSから20nmの場所での計算されたダウントラック磁界特性である。スロート長が最短である太い磁極は、ABSから20nmの場所において約0.7Tの最大磁界を発生させる。しかしながら、この磁界は、磁極からのダウントラック距離が増えるにつれ、急速に減衰する。したがって、上述のように設計された磁極は、光スポットと「磁気スポット」との重なりを最大限にするためには、ピンに非常に近接して配置されなければならない。
【0030】
金属磁極は、光トランスデューサの光特性への干渉を防ぐために、光ピンから一定距離だけ隔てられる必要がある。或いは、光伝送係数が金属よりかなり高いフェライト又はガーネットを磁極に用いることも可能である。
【0031】
代替構造物は、光ピンと、ピンから一定の距離(>50nm)での飽和磁化が高い金属磁極と、光ピンと金属磁極とにはさまれた、光学的な浸食性が低めであって、低モーメント磁性材料でできた磁極(例えば、フェライト又はガーネット)とを含む。図15は、メイン磁極とピンとにはさまれた低モーメント磁性材料がある場合とない場合の均質なヘッド構造物の計算された磁界特性を示している。図15で示しているのは、磁極とピンとの間に非磁性ギャップがある、太さ150nmの「均質な」磁極のダウントラック磁界特性と、ギャップ内に低モーメント(1T)磁性材料を有する「複合」ヘッドのダウントラック磁界特性である。
【0032】
図16は、光トランスデューサの光性能に対する記録磁極の影響を、光トランスデューサと磁極との間隔の関数として示したものである。間隔がゼロの場合、記録磁極は、光トランスデューサと直に積層されている。このシミュレーションでは、記録磁極の光特性として鉄塊の光特性を選択したが、波長830nmにおいては、鉄、コバルト、及びニッケルの間に差はほとんどない。記録層内のピーク磁界強度によって測定される結合効率は、間隔が40nmを下回ると急に低下する。グラフは、いくつかの太さの記録磁極について示している。磁極が太くなるにつれて結合効率は低下するが、その影響はさほど大きくない。したがって、間隔を50nm以上にすれば、所望の太さで記録磁極を作成することが可能である。光トランスデューサに対して反対側に第2の磁極を配置することが可能である。そのような配置は、媒体内の記録位置で正味磁界を傾斜させるリング・ヘッド形状の場合に有用であろう。しかしながら、第2の磁極が光効率を大幅に低下させるようであれば、コア層内部に第2の磁極を配置してはならない。したがって、光トランスデューサから第2の磁極までの距離は、光トランスデューサから第1の磁極までの距離より長くなるであろうし、第2の磁極によって発生する垂直磁界はほんのわずかにすぎないであろう。
【0033】
図17は、本発明に従って構築された別の書込みヘッド170の空気軸受面の一部分の平面図である。コア層178を有する導波路176の両側にワイヤ172及び174が対向して配置され、コア層178の両側にクラッド層180及び182が対向して配置される。導波路内に、コア層に近接して光トランスデューサ184が配置される。導波路内には磁極186も配置される。導波路は、内部クラッド層、コア層、及び外部クラッド層を含む。光トランスデューサ及び磁極は、共に小さく、ABSに近接して導波路に埋め込まれるので、スタックを乱さない。
【0034】
ワイヤの切り詰め部分188及び190は、ワイヤ内の電流によって発生する磁界を磁極の近傍に集中させる。この例では、磁極に最大磁界が存在するようにワイヤが切り詰められている。他の形状も考えられる。例えば、コア層の内側に磁極を配置することなども可能であろう。ワイヤの切り詰め、アンペア・ワイヤの形状、及びその、磁極及び光トランスデューサに対する位置も、適宜調整可能である。このような「ABS構造」の利点は、磁極及び光トランスデューサに対してナノワイヤを1つのスライダ・バーに沿ってシフトすることによって、様々な装置を容易に作成することが可能なことである。さらに、ワイヤは、ABSパターンの前で形成され、保護層で覆われるであろう。
【0035】
図18は、代替ピン/磁極構成の等角図である。この構成では、光トランスデューサ202と高モーメント磁極204との間に低モーメント磁極200が配置される。
【0036】
高モーメント磁極は、例えば、FeCo、FeCoNi、又はFeCoCuで作成可能である。低モーメント磁極は、例えば、フェライト又はガーネットで作成可能である。光トランスデューサの性能に対する磁極の影響を小さくするためには、磁極材料を光学的に透過性にしなければならない。ワイヤ及び導電性ヒート・シンクは、例えば、Cu、Ag、Al、Au、又はAuTaの多層で作成可能である。光トランスデューサは、例えば、Au、Al、Ag、又はCuで作成可能である。導波路は、例えば、Al、TiO、Ta、SiO、又はZrOで作成可能である。
【0037】
以上、列挙した材料はすべて、このヘッドの設計に好適である。最適な選択は、最終設計の各種パラメータによって決まる。例えば、光トランスデューサに最適な材料は、光の波長によって決まる。
【0038】
これらの記録ヘッドは、所望の太さのワイヤを製造する自己整合プロセスにより製造可能である。また、電気的ラップ仕上げガイド(ELG)をやめて、ワイヤを同じ目的に用いることにより、装置全体の製造の複雑さをさらに緩和することが可能である。ワイヤの切り詰めは、いくつかの方法で形成可能である。加工上の観点では、ピンと同じ形状を含む磁極を作成するのが簡単であろう。
【0039】
本発明の記録ヘッドは、固体浸ミラーの形を定めることにも用いられるリソグラフィ・ステップでワイヤの形を定めることにより、製造可能である。SIM装置の製造においては、深さ約2ミクロンのエッチングを導波路スタック基板に同時に行うことが必要である。印刷されるパターンは、周辺の導波路材料が深くエッチングされながら、何らかの好適なマスキング材料でSIM面を保護する溝構造物である。このプロセスの間に垂直方向の側壁を得るのが有益である。この側壁を金属化し、ギャップに好適な材料を補充し、ウェハを端まで加工する。このウェハを切断して棒にし、これらの棒を所望のSIM開口に合うようにラップ仕上げすることによってABSを生成する。この装置の側壁が金属化され、フォトマスクの形状が調整されていれば、金属の一部がABS面で保持されるように装置をラップ仕上げすることが可能である。
【0040】
図19、図20及び図21は、ABSにおいて金属構造物を得るために本発明の製造方法で用いる中間構造物を示している。側壁210は、エッチングされてから金属化212される。矢印214で示されるラップ仕上げプロセスは、側壁の内側の金属化を止めるために、線216の高さまで材料を除去する。
【0041】
図21は、ダウントラック方向に2つのワイヤ222及び224を作成するために使用可能なマスク・パターン220のABS領域の概略図である。ワイヤの製造に必要な形体だけを、最終ABS線226に沿って示している。エッチング後、側壁を金属化してから、素子を最終的にターゲット線までラップ仕上げし、その後に2つのワイヤを所定の太さで残す。これらのワイヤを電子的ラップ仕上げガイドとして用いてラップ仕上げプロセスを制御することが可能である。
【0042】
クロストラック方向のワイヤ寸法は、任意に選択可能である。即ち、それらは、従来のフォトリソグラフィ技術を用いてパターンを印刷することが可能であるように、1ミクロンのオーダで選択することが可能である。リードの製造中には、これらのワイヤを電気的ラップ仕上げガイドとして用いることが可能である。これにより、非常に厳密な太さのワイヤが製造され、ABSの非常に高精度な位置決めが行われるであろう。さらに、ヘッド全体の作成の全体的な複雑さが軽減されるであろう。
【0043】
導波路スタックは、ワイヤのヒート・シンクとして動作させることと、ワイヤをスライダ上のボンディング・パッドに接続することのために、太い金属リードの上に配置する。SIMをエッチングし、構造を平坦化した後、その太いリードを、電気的接続のために装置の一番上に配置する。これらのリードがABS面にかからないように、これらのリードをABSに対してへこませることが可能である。図示した例では、これらのリードは隔てられている。しかしながら、構造の複雑さをさらに軽減するために、これらのリード同士を短絡させることも可能である。
【0044】
所望のワイヤをナノメートル尺度の寸法で得るためには、ウェハをスライスし、それらをその最終位置までラップ仕上げする必要がある。スライダが通常であればABSパターン化される段階で、電子ビーム・リソグラフィの後にエッチング・プロセスを行って、必要な切り詰めを作成することが可能である。また、集束イオン・ビーム(FIB)・ツールを用い、所望の場所でワイヤの断片を切り抜くことによってワイヤを巧みに処理することも可能である。別のアプローチとして、前述の手法ではなく、リソグラフィ、エッチング及びリフトオフの手法を用いてワイヤ全体を製造することも可能である。
【0045】
電子ビーム・リソグラフィ及びエッチングにより、ABS生成点においてワイヤをパターン化することが可能である。代替として、電子ビーム・リソグラフィ及びリフトオフを行うことも可能である。リードの一番上と一番下に接続することによってワイヤ全体を作成することが可能である。FIB構造化を行うことも可能である。
【0046】
いくつかの実施例に関して本発明を説明してきたが、当業者であれば、説明した実施例に対し、添付の特許請求項で示される本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更を加えることが可能であることは自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に従って構築可能なディスク・ドライブの機械的部分を表した図である。
【図2】固体浸ミラー(SIM)・ベースのHAMR記録ヘッドの空気軸受面(ABS)を示す図である。
【図3】光トランスデューサと2つの隣接ワイヤの概略図である。
【図4】光トランスデューサの効率をワイヤの太さの関数として示したグラフである。
【図5】光トランスデューサの効率をワイヤ間隔の関数として示したグラフである。
【図6】2つのワイヤ及び対応する導体の等角図である。
【図7】1つのワイヤ及び対応する導体の等角図である。
【図8】図7の構造物の磁界特性のグラフである。
【図9】図7の構造物の磁界特性のグラフである。
【図10】図7の構造物の磁界特性のグラフである。
【図11】光トランスデューサ及び磁極の等角図である。
【図12】ピン形状の磁極の減磁曲線を示す図である。
【図13】ピン形状の磁極のヒステリシス曲線を示す図である。
【図14】ダウントラック方向に対する磁界特性のグラフである。
【図15】ダウントラック方向に対する磁界特性のグラフである。
【図16】光トランスデューサと磁極との間隔に対する磁界強度のグラフである。
【図17】本発明に従って構築された書込みヘッドの空気軸受面を示す図である。
【図18】代替ピン/磁極構成の等角図である。
【図19】SIM構造物を導波路スタックにエッチングするために用いられる可能なマスク設計の1つの一部分の上面図である。最終ABS領域の近傍のみを図示している。
【図20】SIM構造物を導波路スタックにエッチングするために用いられる可能なマスク設計の1つの一部分の上面図である。最終ABS領域の近傍のみを図示している。
【図21】図19及び20と同様の概略図である。図21に示した代替マスク設計を用いると、2つのワイヤをダウントラック方向で製造することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路と、
前記導波路からの電磁放射を空気軸受面の近傍点に結合させて記憶媒体の一部分を加熱する光トランスデューサと、
前記空気軸受面に近接して配置された第1のワイヤとを有し、
前記第1のワイヤ内の電流が前記記憶媒体の前記加熱された部分に磁界を発生させる装置。
【請求項2】
前記第1のワイヤが前記光トランスデューサの近傍に切り詰め部分を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記磁界を集中させる磁極をさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記磁極が前記光トランスデューサと隔てられている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記磁極と前記光トランスデューサとの間に配置された低モーメント磁極をさらに有する、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記低モーメント磁極がフェライト又はガーネットを有する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の磁極と対向して、前記光トランスデューサの側に配置された第2の磁極をさらに有する、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記第1のワイヤに対向して、前記導波路の側に、前記空気軸受面に近接して配置された第2のワイヤをさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記導波路の両側に対向して配置され、前記第1のワイヤに電気的に接続された、第1及び第2の導電性リードと、
前記導波路の両側に対向して配置され、前記第2のワイヤに電気的に接続された、第3及び第4の導電性リードとをさらに有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
データ記憶媒体と、
前記データ記憶媒体にデータを書き込む記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを前記データ記憶媒体の近傍に位置決めするアームとを有する装置であって、
前記記録ヘッドが、導波路と、前記導波路からの電磁放射を空気軸受面の近傍点に結合させて前記データ記憶媒体の一部分を加熱する光トランスデューサと、前記空気軸受面に近接して配置された第1のワイヤとを有し、前記第1のワイヤ内の電流が前記データ記憶媒体の前記加熱された部分に磁界を発生させる、装置。
【請求項11】
前記第1のワイヤが前記光トランスデューサの近傍に切り詰め部分を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記磁界を集中させる磁極をさらに有する、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記磁極が前記光トランスデューサと隔てられている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記磁極と前記光トランスデューサとの間に配置された低モーメント磁極をさらに有する、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記低モーメント磁極がフェライト又はガーネットを有する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記第1の磁極と対向して、前記光トランスデューサの側に配置された第2の磁極をさらに有する、請求項11に記載の装置。
【請求項17】
前記第1のワイヤに対向して、前記導波路の側に、前記空気軸受面に近接して配置された第2のワイヤをさらに有する、請求項10に記載の装置。
【請求項18】
前記導波路の両側に対向して配置され、前記第1のワイヤに電気的に接続された、第1及び第2の導電性リードと、
前記導波路の両側に対向して配置され、前記第2のワイヤに電気的に接続された、第3及び第4の導電性リードとをさらに有する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
記録ヘッドの製造方法であって、
光導波路に近接する第1のワイヤ構造物を中間構造物の形で形成することと、
前記第1のワイヤを電子的ラップ仕上げガイドとして用いて、前記中間構造物をラップ仕上げして空気軸受面を形成することとを含む方法。
【請求項20】
前記第1のワイヤと前記光導波路とが、1つのリソグラフィ・ステップで形成される、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図4】
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【図5】
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【図16】
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